特開2020-25863(P2020-25863A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-25863吸着剤の流出物の分析に基づく精密透析療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-25863(P2020-25863A)
(43)【公開日】2020年2月20日
(54)【発明の名称】吸着剤の流出物の分析に基づく精密透析療法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20200124BHJP
【FI】
   A61M1/16 163
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-142907(P2019-142907)
(22)【出願日】2019年8月2日
(31)【優先権主張番号】62/718,460
(32)【優先日】2018年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/435,976
(32)【優先日】2019年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント ジェイ. プディル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム. ホボット
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ティー. ガーバー
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB03
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH14
4C077HH17
4C077JJ02
4C077JJ03
4C077JJ16
4C077KK25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸着剤の流出物の分析に基づく精密透析療法を提供する。
【解決手段】システムは、アンモニウム除去溶液供給源105に流体的に接続可能なアンモニウム除去流路101を含み、アンモニウム除去プロセス中に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102からの流出物の分析に基づいて、精密透析療法セッションを実施する。精密透析療法セッションのための設定は、特定の患者に連結された特定の吸着剤モジュールの流出物の分析に基づいて、BUNレベルなどの患者の生理学的状態を推定することによって得られ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウム除去溶液流出物の少なくとも1つの流体パラメータに基づいて、患者に対する後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定するステップを含み、前記アンモニウム除去溶液流出物の前記少なくとも1つの流体パラメータが、リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュール(102)に流体的に接続された流出物ライン(109)内、または前記流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ(107)内のいずれかで測定される、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの流体パラメータが、前記流出物ライン内、または前記流出物ラインに流体的に接続された前記リザーバ内のセンサから受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体パラメータが、前記吸着剤モジュールの前記アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量を含み、前記アンモニウム除去溶液流出物中の前記総アンモニア含有量が、アンモニアセンサから受信される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンモニウム除去溶液流出物の前記総アンモニア含有量に基づいて、患者の透析前BUNレベルを推定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する前記ステップが、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを設定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する前記ステップが、以前の透析セッションの患者の透析前BUNレベルを下回る患者の透析前BUNレベルに応じて、透析液流量を減少させること、血液流量を減少させること、透析器のサイズを減少させること、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズを減少させること、吸着剤カートリッジのサイズを減少させること、重炭酸塩添加プロファイルを増加させること、透析セッションの頻度を低下させること、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのセンサが、pHセンサまたは温度センサをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、吸着剤再装填器を使用し、かつ吸着剤モジュールを通して1つ以上の再装填溶液を導入することによって、リン酸ジルコニウムを吸着剤モジュール内に再装填するステップをさらに含み、前記1つ以上の再装填溶液が、少なくとも水およびブライン溶液を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、吸着剤再装填器のプロセッサによって実施される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、予め設定された間隔でまたは連続的に、前記アンモニウム除去溶液流出物のアンモニア含有量を受信するようにプログラムされている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アンモニウム除去流路(101)であって、少なくとも1つのアンモニウム除去溶液供給源(105)、リン酸ジルコニウムモジュール(102)の入口(103)に流体的に接続可能な前記アンモニウム除去溶液供給源、ポンプ(106)、およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口(104)に流体的に接続可能な流出物ライン(109)、を備え、前記流出物ラインが、少なくとも1つのセンサ(108)を備えるか、または前記流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ(107)をさらに備えるかのいずれかであり、前記リザーバが、少なくとも1つのセンサを備える、アンモニウム除去流路(101)と、
前記少なくとも1つのセンサと通信するプロセッサと、を備え、前記プロセッサが、前記少なくとも1つのセンサに基づいて、患者の後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する、システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサが、前記流出物ライン内に位置付けられている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのセンサが、前記流出物ラインに流体的に接続された前記リザーバ内に位置付けられている、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのセンサが、アンモニアセンサである、請求項11〜13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのセンサが、pHセンサまたは温度センサをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの透析パラメータが、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、療法のために最低限必要とされるリン酸ジルコニウムの量、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項11〜14のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの透析パラメータが、重炭酸塩添加プロファイルである、請求項11〜16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記システムが、吸着剤再装填器を備え、アンモニウム除去流路が、少なくとも1つの再装填溶液供給源に流体的に接続されたリン酸ジルコニウム再装填流路であり、少なくとも1つの再装填溶液供給源が、少なくとも水供給源およびブライン供給源を含む、請求項11〜17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、患者の透析前BUNレベルをさらに推定する、請求項11〜18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサが、予め設定された間隔でまたは連続的に、前記少なくとも1つのセンサから流体パラメータを受信するようにプログラムされている、請求項11〜19のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月14日に出願された米国仮特許出願第62/718,460号の利益および優先権を主張し、その開示内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通してアンモニウム除去溶液を導入するときに得られるパラメータに基づいて、精密なまたは個別化された透析療法セッションを実施するためのデバイス、システム、および方法に関する。精密透析療法セッションのための設定は、アンモニウム除去溶液の流出物の分析に基づいて、血液尿素窒素(BUN)レベルなどの患者の生理学的状態を推定することによって得られ得る。本システムおよび方法は、吸着剤モジュール内のリン酸ジルコニウムを通してアンモニウム除去溶液を導入し、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量またはpHを判定して患者の透析前の生理学的状態を推定する間にデータを得ることを含む。
【背景技術】
【0003】
既知の透析システムおよび治療方法は、典型的には、患者の生理学的パラメータをほとんどまたは全く監視せず、かつ患者の生理学的状態に基づいて透析パラメータを調整することなく、固定されたパラメータセットを用いて透析を施す。既知のシステムは概して、患者の血液尿素窒素(BUN)レベルに基づいて、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウムの量、吸着剤モジュールのサイズもしくは容量、重炭酸塩添加プロファイル、またはそれらの組み合わせなどのパラメータを調整することができない。既知の透析療法は概して、毎月の血液分析を使用し、次いで、その血液分析を使用して、クリアランスを改善するために調整が必要かどうかを判定する。食事、疾患状態、またはセッションの変動による患者の生理学的状態の日々の変動または週ごとの変動を考えると、月ごとの分析は役に立たない可能性がある。したがって、既知の透析システムおよび方法は、精密なまたは個別化された透析療法を提供することも、患者の生理学的状態について得られたフィードバックに基づいて更新または調整された療法を提供することもできない。
【0004】
尿素は、透析療法セッションのための透析パラメータの設定を考慮に入れることができる血液透析治療における透析の適正のための重要なマーカーである。患者の血液尿素窒素(BUN)レベルを測定するために、既存のシステムおよび方法は通常、技師が患者から血液サンプルを得ることを必要とする。次いで、技術者は、BUNを判定するために、血液ガス分析器を使用して血液サンプルを分析する。BUNを得るための既知の方法は、高価で時間がかかり、容易に自動化できない多くの手動ステップに依存する。そのため、BUNは、重要な適正指標ではあるが、透析パラメータを調整するためにはあまり使用されない。
【0005】
したがって、患者のBUNレベルなどの患者の生理学的パラメータに基づいて、精密透析療法セッションを実施するためのシステムおよび方法が必要とされている。必要性には、観察された患者の生理学的状態に基づいて、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、重炭酸塩添加プロファイル、セッションの頻度およびタイミング、またはそれらの組み合わせなどのパラメータをリアルタイムに近い方法で調整することが含まれる。必要性には、患者の生理学的状態についての情報を非侵襲的形態で得ることが含まれる。必要性には、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して導入されたアンモニウム除去溶液の流出物を分析して、アンモニアの量などの患者の生理学的状態を判定することが含まれる。必要性は、患者の血液以外の体液からの測定値を使用して、透析前BUN、すなわち、BUN前のレベルを測定することにまで及ぶ。必要性は、患者の生理学的状態を推定し、かつ分析に基づいて透析療法を調整するための自動化されたシステムおよび方法にまで及ぶ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、方法に関する。いずれの実施形態においても、本方法は、アンモニウム除去溶液流出物の少なくとも1つの流体パラメータに基づいて、患者に対する後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定するステップを含み得、アンモニウム除去溶液流出物の少なくとも1つの流体パラメータは、リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュールに流体的に接続された流出物ライン、または流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ内のいずれかで判定される。
【0007】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つの流体パラメータは、流出物ライン内、または流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ内のセンサから受信され得る。
【0008】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つの流体パラメータは、吸着剤モジュールのアンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量を含み得、アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量は、アンモニアセンサから受信される。
【0009】
いずれの実施形態においても、本方法は、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量に基づいて、患者の透析前BUNレベルを推定するステップを含み得る。
【0010】
いずれの実施形態においても、後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定するステップは、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、治療のための最低限のリン酸ジルコニウム要件、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを設定することを含み得る。
【0011】
いずれの実施形態においても、後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定するステップは、以前の透析セッションの患者の透析前BUNレベルを下回る患者の透析前BUNレベルに応じて、透析液流量を減少させること、血液流量を減少させること、透析器のサイズを減少させること、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズを減少させること、吸着剤カートリッジのサイズを減少させること、重炭酸塩添加プロファイルを増加させること、透析セッションの頻度を低下させること、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0012】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、pHセンサまたは温度センサを含み得る。
【0013】
いずれの実施形態においても、本方法は、吸着剤再装填器を使用することができ、かつ本方法は、吸着剤モジュールを通して1つ以上の再装填溶液を導入することによって、リン酸ジルコニウムを吸着剤モジュール内に再装填するステップを含み得、1つ以上の再装填溶液は、少なくとも水およびブライン溶液を含む。
【0014】
いずれの実施形態においても、本方法は、吸着剤再装填器のプロセッサによって実施され得る。
【0015】
いずれの実施形態においても、プロセッサは、予め設定された間隔でまたは連続的に、アンモニウム除去溶液流出物のアンモニア含有量を受信するようにプログラムされ得る。
【0016】
本発明の第1の態様の一部として開示される特徴は、本発明の第1の態様内に単独もしくは組み合わせのいずれかで存在し得るか、または記載される要素のうちの1つ以上の好ましい配置に従い得る。
【0017】
本発明の第2の態様は、システムに関する。いずれの実施形態においても、本システムは、アンモニウム除去流路であって、少なくとも1つのアンモニウム除去溶液供給源、リン酸ジルコニウムモジュールの入口に流体的に接続可能なアンモニウム除去溶液供給源、ポンプ、およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口に流体的に接続可能な流出物ラインを備え、流出物ラインが、少なくとも1つのセンサを備えるか、または流出物ラインに流体的に接続されたリザーバをさらに備えるかのいずれかであり、リザーバが、少なくとも1つのセンサを備える、アンモニウム除去流路と、少なくとも1つのセンサと通信するプロセッサとを備えることができ、プロセッサは、少なくとも1つのセンサに基づいて、患者の後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する。
【0018】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、流出物ライン内に位置付けられ得る。
【0019】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ内に位置付けられ得る。
【0020】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、アンモニアセンサであり得る。
【0021】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、pHセンサまたは温度センサをさらに含み得る。
【0022】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つのセンサは、導電センサであり得る。
【0023】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つの透析パラメータは、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0024】
いずれの実施形態においても、少なくとも1つの透析パラメータは、重炭酸塩添加プロファイルであり得る。
【0025】
いずれの実施形態においても、本システムは、吸着剤再装填器を備えることができ、アンモニウム除去流路は、少なくとも1つの再装填溶液供給源に流体的に接続されたリン酸ジルコニウム再装填流路であり得、少なくとも1つの再装填溶液供給源は、少なくとも水供給源およびブライン供給源を含む。
【0026】
いずれの実施形態においても、プロセッサはさらに、患者の透析前BUNレベルを推定し得る。
【0027】
いずれの実施形態においても、プロセッサは、予め設定された間隔でまたは連続的に、少なくとも1つのセンサから流体パラメータを受信するようにプログラムされ得る。
【0028】
本発明の第2の態様の一部として開示される特徴は、本発明の第2の態様内に単独もしくは組み合わせのいずれかで存在し得るか、または記載される要素のうちの1つ以上の好ましい配置に従い得る。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
アンモニウム除去溶液流出物の少なくとも1つの流体パラメータに基づいて、患者に対する後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定するステップを含み、前記アンモニウム除去溶液流出物の前記少なくとも1つの流体パラメータが、リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュール(102)に流体的に接続された流出物ライン(109)内、または前記流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ(107)内のいずれかで測定される、方法。
(項目2)
前記少なくとも1つの流体パラメータが、前記流出物ライン内、または前記流出物ラインに流体的に接続された前記リザーバ内のセンサから受信される、上記項目に記載の方法。
(項目3)
前記少なくとも1つの流体パラメータが、前記吸着剤モジュールの前記アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量を含み、前記アンモニウム除去溶液流出物中の前記総アンモニア含有量が、アンモニアセンサから受信される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記アンモニウム除去溶液流出物の前記総アンモニア含有量に基づいて、患者の透析前BUNレベルを推定するステップをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する前記ステップが、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを設定することを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する前記ステップが、以前の透析セッションの患者の透析前BUNレベルを下回る患者の透析前BUNレベルに応じて、透析液流量を減少させること、血液流量を減少させること、透析器のサイズを減少させること、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズを減少させること、吸着剤カートリッジのサイズを減少させること、重炭酸塩添加プロファイルを増加させること、透析セッションの頻度を低下させること、またはそれらの組み合わせを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記少なくとも1つのセンサが、pHセンサまたは温度センサをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記方法が、吸着剤再装填器を使用し、かつ吸着剤モジュールを通して1つ以上の再装填溶液を導入することによって、リン酸ジルコニウムを吸着剤モジュール内に再装填するステップをさらに含み、前記1つ以上の再装填溶液が、少なくとも水およびブライン溶液を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記方法が、吸着剤再装填器のプロセッサによって実施される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記プロセッサが、予め設定された間隔でまたは連続的に、前記アンモニウム除去溶液流出物のアンモニア含有量を受信するようにプログラムされている、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
アンモニウム除去流路(101)であって、少なくとも1つのアンモニウム除去溶液供給源(105)、リン酸ジルコニウムモジュール(102)の入口(103)に流体的に接続可能な前記アンモニウム除去溶液供給源、ポンプ(106)、およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口(104)に流体的に接続可能な流出物ライン(109)、を備え、前記流出物ラインが、少なくとも1つのセンサ(108)を備えるか、または前記流出物ラインに流体的に接続されたリザーバ(107)をさらに備えるかのいずれかであり、前記リザーバが、少なくとも1つのセンサを備える、アンモニウム除去流路(101)と、
前記少なくとも1つのセンサと通信するプロセッサと、を備え、前記プロセッサが、前記少なくとも1つのセンサに基づいて、患者の後続の透析セッションのための少なくとも1つの透析パラメータを設定する、システム。
(項目12)
前記少なくとも1つのセンサが、前記流出物ライン内に位置付けられている、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目13)
前記少なくとも1つのセンサが、前記流出物ラインに流体的に接続された前記リザーバ内に位置付けられている、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目14)
前記少なくとも1つのセンサが、アンモニアセンサである、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目15)
前記少なくとも1つのセンサが、pHセンサまたは温度センサをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目16)
前記少なくとも1つの透析パラメータが、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ、吸着剤カートリッジのサイズ、療法のために最低限必要とされるリン酸ジルコニウムの量、重炭酸塩添加プロファイル、透析セッションのタイミング、透析セッションの時間、透析セッションの頻度、またはそれらの組み合わせから選択される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目17)
前記少なくとも1つの透析パラメータが、重炭酸塩添加プロファイルである、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目18)
前記システムが、吸着剤再装填器を備え、アンモニウム除去流路が、少なくとも1つの再装填溶液供給源に流体的に接続されたリン酸ジルコニウム再装填流路であり、少なくとも1つの再装填溶液供給源が、少なくとも水供給源およびブライン供給源を含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目19)
前記プロセッサが、患者の透析前BUNレベルをさらに推定する、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目20)
前記プロセッサが、予め設定された間隔でまたは連続的に、前記少なくとも1つのセンサから流体パラメータを受信するようにプログラムされている、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(摘要)
本発明は、アンモニウム除去プロセス中に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールからの流出物の分析に基づいて、精密透析療法セッションを実施するためのデバイス、システム、および方法に関する。精密透析療法セッションのための設定は、特定の患者に連結された特定の吸着剤モジュールの流出物の分析に基づいて、BUNレベルなどの患者の生理学的状態を推定することによって得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】吸着剤モジュール内のリン酸ジルコニウムからアンモニウムイオンを除去するためのアンモニウム除去流路である。
図2】患者の透析前BUNレベルの推定に基づいて、少なくとも1つの透析パラメータを設定するための方法を例示するフローチャートである。
図3】リン酸ジルコニウムを吸着剤モジュール内に再装填するための再装填流路である。
図4】吸着剤モジュールへのリン酸ジルコニウムの再装填中に得られた患者の透析前BUNレベルの推定に基づいて、少なくとも1つの透析パラメータを設定するための方法を例示するフローチャートである。
図5】吸着剤再装填器の非限定的な実施形態である。
図6】リン酸ジルコニウムを再装填するように構成された吸着剤再装填器である。
図7A】少なくとも1つの透析パラメータ設定構成要素、識別子、およびプロセッサを有する透析パラメータ設定システムの例を示しており、本システムの構成要素内で信号が転送されている。
図7B】少なくとも1つの透析パラメータ設定構成要素、識別子、およびプロセッサを有する透析パラメータ設定システムの例を示しており、本システムの構成要素内で信号が転送されている。
図7C】少なくとも1つの透析パラメータ設定構成要素、識別子、およびプロセッサを有する透析パラメータ設定システムの例を示しており、本システムの構成要素内で信号が転送されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別様に定義されていない限り、使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0031】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0032】
「アンモニアセンサ」は、流体中のアンモニア濃度を判定することができる任意の構成要素または構成要素のセットであり得る。ある特定の実施形態では、アンモニアセンサは、流体中のアンモニアもしくはアンモニウム、またはアンモニアとアンモニウムの両方のイオン濃度を判定し得る。
【0033】
「アンモニア」は、溶液中の任意の量のアンモニアおよび/またはアンモニウムを指すことができる。この用語はまた、溶液中の総アンモニア量または溶液中のアンモニアとアンモニウムの総量を指すことができる。
【0034】
「アンモニウム除去流路」は、中を通って流体が進行する間にアンモニウムイオンを材料から除去することができる経路であり得る。1つの非限定的な材料は、吸着剤材料であり得る。
【0035】
「アンモニウム除去溶液」は、材料からのアンモニウムイオンの放出を促進する溶質を含有する任意の溶液である。1つの非限定的な材料は、吸着剤材料であり得る。
【0036】
「アンモニウム除去溶液供給源」という用語は、吸着剤材料などの材料からのアンモニウムイオンの放出を促進する溶質を含有する溶液の供給源を指す。ある特定の実施形態では、アンモニウム除去溶液供給源は、酸、塩基、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0037】
「療法のために最低限必要とされるリン酸ジルコニウムの量」という用語は、アンモニアの破過が発生することなく、透析セッションで使用され得るリン酸ジルコニウムの最低量を指すことができる。
【0038】
「重炭酸塩添加プロファイル」は、透析治療中の透析液への重炭酸塩の添加速度である。重炭酸塩添加プロファイルは、時間および/または体積流と共に変化する関数、または代替的には重炭酸塩添加の一定の速度を指すことができる。重炭酸塩添加プロファイルは、複数の速度、開始/停止命令、および時間の長さのうちのいずれか1つ以上を含み得る。プロファイル重炭酸塩添加はまた、時間および/または体積流に対する、特定の患者または対象に特異的な一定または可変の速度を指すことができる。重炭酸塩添加プロファイルは、曲線もしくは線、または設定期間などの関数をさらに含み得る。
【0039】
「血液流量」は、所与の期間内に体外回路を通して送出された血液の量を指す。
【0040】
「ブライン溶液」は、塩および/または吸着剤材料を再装填する際に使用される溶質を含有する緩衝剤を含有する溶液であり得る。ある特定の実施形態では、ブライン溶液は、ナトリウム塩、酢酸、酢酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせの溶液であり得る。
【0041】
「ブライン供給源」という用語は、塩および/または吸着剤材料を再装填する際に使用される溶質を含有する緩衝剤の溶液の供給源を指す。ある特定の実施形態では、ブライン供給源は、ナトリウム塩、酢酸、酢酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含有し得る。
【0042】
ある材料に関して使用される場合、「含有する(contain)」、「含有する(to contain)」、および「含有する(containing)」という用語は、その材料を、コンパートメント、モジュール、デバイス、または構造の含有物として保持することを指す。
【0043】
「通信」または「電子通信」という用語は、電気的接続、または2つの構成要素の間もしくはシステムの間の他の任意の電気的伝送を介して、電子データ、命令、情報を無線で伝送する能力を指すことができる。
【0044】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(comprising)」という語の後に続くものすべてを含むが、これらに限定されない。当該用語の使用は、列挙された要素が必要または必須であるが、他の要素が任意選択であり、存在し得ることを示す。
【0045】
「からなる」という用語は、「からなる」という語句の後に続くものすべてを含み、それらに限定される。当該語句は、限定された要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【0046】
「から本質的になる」という用語は、「から本質的になる」という用語の後に続くものすべて、および記載される装置、構造、もしくは方法の基本的な操作に影響を与えない追加の要素、構造、行為、または特徴を含む。
【0047】
測定の頻度を指す場合、「連続的に」という用語は、プロセス中に停止することなく測定を行うことを指すことができる。
【0048】
「制御する(control,)」、「制御する(controlling)」、または「制御する(controls)」という用語は、1つの構成要素が第2のまたは1つ以上の構成要素の行為を指示する能力を指す。
【0049】
「判定する(determining)」および「判定する(determine)」という用語は、特定の状態または所望の状態を確認または識別することを指すことができる。例えば、システムもしくは流体、またはシステムもしくは流体の任意の測定された変数(複数可)もしくは特徴(複数可)は、センサデータを得ること、データを回収すること、計算を実施すること、または他の任意の既知の方法によって判定され得る。
【0050】
「透析液流量」は、所与の期間内に透析液流路を通して送出された透析液の量を指す。
【0051】
「透析パラメータ」は、透析療法の性能、ならびに/または透析療法中およびその後の患者の健康に影響を及ぼし得る透析セッションを示す任意の因子または変数であり得る。
【0052】
「透析セッション」は、その間に患者が透析、血液透析、血液濾過、限外濾過、または他の体液除去療法によって治療されるかまたはそれらを受ける任意の長さの任意の期間であり得る。
【0053】
「透析セッションの頻度」という用語は、所与の期間内に患者が受ける透析セッションの数を指す。
【0054】
「透析セッションの時間」は、透析セッションの長さを指す。
【0055】
「透析セッションのタイミング」は、透析セッション間の時間の長さを指す。
【0056】
「透析器のクリアランス」という用語は、溶質が透析器膜を通過する速度を指す。
【0057】
「透析器のサイズ」という用語は、透析器内の透析器膜の表面積を指す。
【0058】
「流出物」という用語は、容器、コンパートメント、またはカートリッジから出る液体、ガス、またはそれらの組み合わせを指すことができる。
【0059】
「流出物ライン」は、容器、モジュール、または構成要素から出る液体、ガス、またはそれらの組み合わせが流れることができる流体通路、チューブ、または任意の種類の経路であり得る。
【0060】
「推定される(estimated)」、「推定する(estimating)」、「推定する(to estimate)」、または「推定(estimation)」は各々、1つ以上の変数を使用して間接的に1つ以上のパラメータを判定することを指すことができる。
【0061】
「流体的に接続可能な」という用語は、ある地点から別の地点までの流体、ガス、またはそれらの組み合わせの通路を提供するための能力を指す。かかる通路を提供する能力は、流体、ガス、またはそれらの組み合わせの流れを可能にするための、2つの地点の間の任意の接続、締結、または形成であり得る。2つの地点は、本明細書に記載されるように、任意のタイプのコンパートメント、モジュール、システム、構成要素、再装填器など、のうちのいずれか1つ以上の内部またはそれらの間にあり得る。
【0062】
「流体的に接続された」という用語は、流体、ガス、またはそれらの組み合わせの通路がある地点から別の地点まで提供されるような特定の状態を指す。接続状態はまた、流れを中断するために2つの地点が互いに切断されているような未接続状態を含み得る。上で定義されるように、2つの「流体的に接続可能な」地点は、「流体的に接続された」状態から生じことがさらに理解されよう。2つの地点は、任意のすべてのタイプのコンパートメント、モジュール、システム、構成要素、および再装填器のうちのいずれか1つ以上の内部またはそれらの間にあり得る。
【0063】
「流体パラメータ」は、液体、ガス、またはそれらの組み合わせの任意の特性、特徴、または測定可能な要因である。
【0064】
「積分する(integrating)」または「積分する(to integrate)」という用語は、特定の関数の曲線下の総面積を判定することを指す。
【0065】
「導入する(introducing)」、「導入された(introduced)」、または「導入する(to introduce)」という用語は、当業者に既知の任意の手段によって、流体、ガス、またはそれらの組み合わせを方向的に移動または流動させることを指す。
【0066】
「透析セッションの時間の長さ」は、単一の透析セッションの開始から終了までの総時間量を指す。
【0067】
「pHを安定させるために必要な」という用語は、再装填溶液の体積を指す場合、流出物再装填溶液のpHが一定またはほぼ一定の値に近づく前に吸着剤モジュールを通して導入または送出された再装填溶液の量である。
【0068】
「患者」または「対象」は、任意の動物種、好ましくは哺乳類種、任意選択でヒトの一員であり得る。対象は、見かけ上健康な個体、疾患に罹患している個体、または疾患について治療されている個体であり得る。ある特定の実施形態では、患者は、ヒト、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、または他の任意の動物であり得る。
【0069】
「患者透析前血液尿素窒素(BUN)レベル」という用語は、透析セッション前の患者の体内の尿素の量を指すことができる。BUN測定値は、概して、mg/dlの単位で所与される。
【0070】
「患者の水分量」は、患者の総水分量を指す。
【0071】
「pHセンサ」という用語は、流体のpHまたは水素イオン濃度を測定するためのデバイスを指す。
【0072】
「位置付けられている」という用語は、参照される特徴に接続されているかまたは接触している構成要素を指す。接触は流体または電気であり得、最も広い合理的な解釈で使用されることを意図するものである。
【0073】
「精密透析」は、透析パラメータが特定の患者、患者群、もしくは患者クラスによって具体的に適用または使用されるようにカスタマイズ化または個別化されている透析治療を指す。精密透析は、いかなる特定の標準にも限定されないが、所望の透析状態を達成するために入力変数に依存する。精密透析は、個体間変動を考慮に入れることができ、1つ以上のパラメータを含み得るアプローチである。概して、精密透析は、より正確で効果的および/または経済的な透析を提供し得る。このアプローチは、透析が、いかなる具体的な条件、特徴、および要因、または具体的な透析に影響を与える可能性がある他の任意の変数も考慮することなしに平均値に依拠する汎用的なアプローチとは対照的である。
【0074】
「予め設定された間隔」または「提示間隔」は、事象の前に判定される、事象間の期間であり得る。
【0075】
「以前の透析セッション」は、すでに行われた透析セッションである。
【0076】
使用される場合、「プロセッサ」という用語は、広義の用語であり、その通常の慣習的な意味が当業者に与えられるべきである。この用語は、コンピュータを駆動する基本命令に応答してそれを処理する論理回路を使用して算術演算または論理演算を実施するように設計されたコンピュータシステム、状態機械、プロセッサなどを指すが、これらに限定されない。第1、第2、第3、および第4のいずれの実施形態においても、当該用語は、それらに関連付けられたROM(「読み取り専用メモリ」)および/またはRAM(「ランダムアクセスメモリ」)を含み得る。
【0077】
「プログラムされる」という用語は、プロセッサを指す場合、プロセッサにある特定のステップを実施させる一連の命令を意味することができる。
【0078】
「ポンプ」という用語は、吸引力または圧力を加えることによって流体またはガスを移動させる任意のデバイスを指す。
【0079】
「受信する(receiving)」、「受信する(to receive)」、または「受信される(received)」という用語は、直接の電気接触、無線伝送、およびネットワーク接続を含む任意の手段によって任意の供給源から情報またはデータを得ることを指す。
【0080】
「再装填溶液(recharge solution)」または「再装填溶液(recharge solutions)」は、具体的な吸着剤材料を再装填するための適切なイオンを含有する溶液であり得る。再装填溶液は、吸着剤材料を再装填するために必要なすべてのイオンを含有する単一の溶液であり得る。代替的に、再装填溶液は、吸着剤材料を再装填するためのイオンの一部を含有することができ、本明細書に記載されるように、吸着剤材料を再装填するために、1つ以上の他の再装填溶液を使用して複合「再装填溶液」を形成することができる。
【0081】
「再装填溶液供給源」は、そこから再装填溶液を貯蔵、入手、または送達することができる任意の流体または濃縮物の供給源であり得る。
【0082】
「再装填する」は、吸着剤材料を処置して、吸着剤材料を再使用または新しい透析セッションで使用するための状態に戻す、吸着剤材料の機能的能力を回復させることを指す。場合によっては、「再装填可能な」吸着剤材料の総質量、重量、および/または量は同じままである。場合によっては、「再装填可能な」吸着剤材料の総質量、重量、および/または量は変化する。発明のいずれか1つの理論に限定されることなく、再装填プロセスは、吸着剤材料に結合したイオンを異なるイオンと交換することを伴うことがあり、場合によっては、システムの総質量を増減させ得る。しかしながら、吸着剤材料の総量は、場合によっては、再装填プロセスによって変化しないであろう。吸着剤材料が「再装填」を受けると、吸着剤材料は「再装填された」と言うことができる。
【0083】
「減少させる(reducing)」または「減少させる(to reduce)」という用語は、以前の設定と比較して、1つ以上のパラメータをより低い量に設定することを指す。
【0084】
「リザーバ」は、液体、流体、ガス、またはそれらの組み合わせを保持し得る容器または構成要素である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「センサ」という用語は、溶液、液体、またはガス中の物質の物理的性質または量を測定することができ、かつその測定値を、電子機器によって読み取ることができる信号に変換することができる任意のタイプの変換器であり得る。
【0086】
「設定する(setting)」または「設定する(to set)」という用語は、プロセスまたはシステムで使用するために変数を所望の値に調整または制御するプロセスを指す。
【0087】
「吸着剤カートリッジモジュール」または「吸着剤モジュール」は、吸着剤カートリッジの目立たない構成要素を意味する。複数の吸着剤カートリッジモジュールを一緒に嵌合して、2つ、3つ、またはそれ以上の吸着剤カートリッジモジュールの吸着剤カートリッジを形成することができる。「吸着剤カートリッジモジュール」または「吸着剤モジュール」は、吸着剤透析で使用するための任意の選択された材料を含有することができ、「吸着剤材料」または吸着体、ただし、必要な吸着剤材料の完全補体未満、を含有しても、含有しなくてもよい。換言すれば、「吸着剤カートリッジモジュール」または「吸着剤モジュール」は、概して、吸着剤ベースの透析、例えば、REDY(再循環透析)における「吸着剤カートリッジモジュール」または「吸着剤モジュール」の使用を指し、「吸着剤カートリッジモジュール」または「吸着剤モジュール」に必ずしも含有される「吸着剤材料」ではない。
【0088】
「吸着剤カートリッジのサイズ」という用語は、吸着剤モジュール内の1つ以上の吸着剤材料の量を指すことができる。吸着剤カートリッジのサイズは、1つ以上の吸着剤材料の質量、体積、または機能的能力を指すことができる。
【0089】
「吸着剤再装填器」または「再装填器」は、少なくとも1つの吸着剤材料を再装填するように設計された装置である。
【0090】
「後続の透析セッション」は、将来起こるであろう透析セッションである。
【0091】
「温度センサ」という用語は、導管、容器、または流体ライン内のガス、液体、またはそれらの組み合わせの温度を測定するためのデバイスを指す。
【0092】
「総アンモニア含有量」という用語は、流体中に溶解しているアンモニアの量を指すことができる。総アンモニア含有量は、流体中に溶解しているアンモニアの量の濃度、質量、または他の任意の値を指すことができる。ある特定の実施形態では、アンモニア含有量という用語は、流体のアンモニア含有量および/またはアンモニウムイオン含有量の合計を指すことができる。
【0093】
「尿素減少率」または「URR」は、治療中に患者の尿素レベルが減少した量を指す。URRは、患者の開始尿素レベルに対する患者の終了尿素レベルの比から1を引いたものとして表すことができる。
【0094】
「体積平均総アンモニア含有量」という用語は、流体の総アンモニア含有量を流体の総体積で割ったものを指すことができる。
【0095】
「水供給源」は、そこから水を貯蔵、入手、または送達することができる流体供給源であり得る。
【0096】
「リン酸ジルコニウム」は、流体からカチオンを除去し、除去されたカチオンを異なるカチオンと交換する吸着剤材料である。
【0097】
「リン酸ジルコニウムモジュールの入口」という用語は、それを通して流体、ガス、またはそれらの組み合せを吸着剤モジュール内に引き込むことができる、リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュールの一部分を指すことができる。
【0098】
「リン酸ジルコニウムモジュールの出口」という用語は、それを通して流体、ガス、またはそれらの組み合せを吸着剤モジュールから引き出すことができる、リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュールの一部分を指すことができる。
【0099】
「リン酸ジルコニウム再装填流路」は、中を通って流体が進行する間にリン酸ジルコニウムを吸着剤モジュール内に再装填することができる経路であり得る。
【0100】
「リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズ」という用語は、吸着剤モジュール内のリン酸ジルコニウムの量を指すことができる。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールのサイズは、リン酸ジルコニウムの質量、体積、または機能的能力を指すことができる。
【0101】
リン酸ジルコニウムのアンモニウム除去
本発明は、患者の生理学的状態について得られたデータに基づいて透析パラメータの調整を提供し得るシステムおよび方法に関する。本システムおよび方法は、以前の透析セッション中に患者によって使用されたリン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュールからのアンモニウムイオンの除去中の吸着剤モジュールの流出物の分析に基づいて、1つ以上の透析パラメータを設定することができる。設定は、流出物の分析に基づいて、正確なまたは個別化された透析を患者に送達することができる。特定の患者によって使用される吸着剤カートリッジのアンモニウムイオンの除去中に、吸着剤カートリッジの分析を使用してフィードバックを提供することによって、精密または個別化されたケアを実施することができる。例えば、特定の患者に連結された吸着剤カートリッジからのアンモニウム除去溶液流出物を使用して、患者の血液尿素窒素レベルを推定することができる。次いで、得られた情報を使用して、その同じ患者に対する将来の透析療法セッションを調整することができる。精密透析療法セッションのための設定は、特定の患者に連結された特定の吸着剤モジュールに対するアンモニウムイオンの除去中の流出物の分析に基づいて、患者の血液尿素窒素(BUN)レベルを推定することによって得られ得る。
【0102】
本システムおよび方法を使用して、吸着剤透析システム内のリン酸ジルコニウムによって吸収されたアンモニウムイオンの量を判定することができる。リン酸ジルコニウムを使用して、透析液からアンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンを含む廃棄物および不要な溶質を除去する。リン酸ジルコニウムは通常、吸着剤カートリッジの内部に包含されている。酸化ジルコニウムを使用して、透析液からリン酸イオンを除去する。ウレアーゼを使用して、尿素を、それらの除去を容易にするために、二酸化炭素とアンモニウムとに分解する。治療中、アンモニウムイオンは、リン酸ジルコニウムによって吸着され、患者に戻されるのを回避する。本システムおよび方法は、交換プロセス中に、リン酸ジルコニウムに置換されたアンモニウムイオンの量を測定することができる。本システムは、測定値をとり、患者のための将来の透析療法セッションを設定するための自動化された推奨値を提供することができる。
【0103】
図1は、本システムの非限定的な実施形態を例示する。本システムは、アンモニウム除去溶液供給源105に流体的に接続可能なアンモニウム除去流路101を含み得る。アンモニウム除去溶液供給源105は、治療中にリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102内のリン酸ジルコニウムに結合したアンモニウムイオンを置換するであろう1つ以上の溶質の溶液を含有し得る。透析セッション中に、リン酸ジルコニウムは、アンモニウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む使用済み透析液からカチオンを除去し、カチオンを水素イオンおよびナトリウムイオンに交換するのに役立つ。アンモニアは、処置中に、吸着剤カートリッジ内のウレアーゼによる尿素の分解によって形成される。したがって、リン酸ジルコニウムによって吸着されるアンモニアの量は、処置中に除去される尿素の量の関数である。アンモニウム除去溶液供給源105中のアンモニウム除去溶液は、アンモニウムイオンをリン酸ジルコニウムに置換するであろう任意の溶質を含有し得る。ある特定の実施形態では、アンモニウム除去溶液は、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、酸、または塩基を含有し得る。カルシウムおよびマグネシウムはリン酸ジルコニウムにより強く結合するので、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102が単回使用の場合は、カルシウムまたはマグネシウムを含有するアンモニウム除去溶液を使用することができる。
【0104】
リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102は、リン酸ジルコニウムモジュールの入口103およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口104を通してアンモニウム除去流路101に流体的に接続可能であり得る。ある特定の実施形態では、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102は、再使用可能であり得る。代替的に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102は、単回使用であってもよい。ポンプ106は、流路を通して流体を移動させるための駆動力を提供する。アンモニウム除去溶液からの溶質がリン酸ジルコニウムによって吸着されたときに置換されたアンモニウムイオンは、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール102から、リン酸ジルコニウムモジュールの出口104を通って流出物ライン109へと出る。ある特定の実施形態では、流出物ライン109内に位置付けられたアンモニアセンサ108は、流出物ライン109内のアンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア濃度を測定することができる。記載されるように、アンモニアセンサ108と通信するプロセッサは、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を使用して、患者の透析前BUNレベルを推定することができる。代替的にまたは追加として、アンモニウム除去溶液流出物は、流出物リザーバ107内に収集され得る。流出物リザーバ107内に収集されたアンモニウム除去溶液流出物をプールし、試験して、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を測定することができる。プールしたアンモニウム除去流出物は、流出物リザーバ107内のセンサを用いて試験され得るか、あるいは試験紙または他の携帯用もしくは使い捨ての試験方法を用いて試験され得る。
【0105】
図1に単一のアンモニアセンサ108として示されているが、アンモニアセンサ108は代替的に、アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量の計算を可能にするために、アンモニウム除去溶液流出物の固体パラメータを判定する複数のセンサであってもよい。例えば、アンモニアセンサ108は、pHセンサおよびアンモニアセンサの組み合わせ、pHセンサおよびアンモニウムイオンセンサの組み合わせ、アンモニアセンサおよびアンモニウムイオンセンサの組み合わせ、またはアンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量の計算を可能にする任意の1つ以上のセンサであり得る。アンモニアセンサ108は、任意の手段によってアンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア濃度を検出することができる。例えば、1つ以上のアンモニア感知膜をアンモニウム除去溶液流出物と接触させることができ、アンモニア感知膜は、アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量に応じて色または他の任意の光学パラメータを変化させる。アンモニア感知膜の光学的変化を光検出器によって検出して、アンモニア含有量、アンモニウム含有量、pH、またはそれらの組み合わせを判定することができる。アンモニア含有量、アンモニウム含有量、またはpHを判定するための任意の数の検知膜をアンモニアセンサ108内に含めることができる。ある特定の実施形態では、アンモニアセンサ108は、アンモニウム除去溶液流出物中のアンモニアガスの分圧を測定し、次いでヘンリーの法則およびヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を使用して総アンモニア含有量を判定することができる。代替的に、アンモニアセンサ108は、アンモニウム除去溶液流出物中のアンモニウムイオンを測定するイオン選択電極であり得る。温度を知ることを必要とする方法を用いて、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を判定するために、温度センサ(図示せず)のような追加のセンサを含めることができる。
【0106】
図2は、患者の透析前BUNレベルを推定し、その推定に基づいて1つ以上の透析パラメータを調整する方法を例示するフローチャートである。ステップ201において、以前の透析セッションで使用されたリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを、図1に例示されるように、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールの入口および出口を流路に流体的に接続することによってアンモニウムイオンを除去するためのシステム内に留置することができる。ステップ202において、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通してアンモニウム除去溶液を導入することができる。記載されるように、アンモニウム除去溶液は、酸、塩基、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、またはリン酸ジルコニウムに結合したアンモニウムイオンを置換し得る他の任意のイオンを含有し得る。ステップ203において、プロセッサは、連続的にまたは予め設定された間隔のいずれかで、アンモニアセンサからアンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量を受信し得る。ある特定の実施形態では、プロセッサは、1秒〜30秒の間、1秒〜1分の間、30秒〜2分の間、1分〜3分の間、または2分〜5分の間を含む1秒〜5分の間の予め設定された間隔で、アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニア含有量を受信し得る。ある特定の実施形態では、プロセッサは、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を一回受信し、ルックアップテーブルまたは他の比較方法を使用して、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニウム含有量を既知のまたは特徴付けられた吐出/容量曲線と比較することができる。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して導入されたアンモニウム除去溶液の流量をプロセッサによって受信することもできる。アンモニウム除去溶液流出物中の流量および総アンモニア含有量を使用して、プロセッサは、流出物の体積平均総アンモニア含有量を判定し得る。プロセッサは、次いで、ステップ204において、アンモニアセンサから受信した流出物の分析に基づいて、記載されるように本明細書に提供される式(1〜9)を使用して、患者の透析前BUNレベルを推定し得る。代替的に、アンモニウム除去溶液流出物をリザーバ内に収集し、総アンモニア含有量をリザーバ内で測定することができる。収集されたアンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量に、使用されたアンモニウム除去溶液の総体積を掛けることによって、除去された総アンモニウムイオンを判定することができる。ステップ205において、プロセッサは、患者の透析前BUNレベルに基づいて、患者の後続の透析セッションのための1つ以上の透析パラメータを設定し得る。表1は、患者の透析前BUNレベルに基づいて設定され得る非限定的な透析パラメータを例示している。
【表1】
【0107】
患者の透析前BUNレベルが低いと、患者の除去される必要がある尿素が少ないため、患者の以前の透析セッションと比較して、減少した血液流量、透析器流量、および/または透析器のサイズを用いた効果的な透析治療を可能にすることができる。逆に、患者の透析前BUNレベルが増加している場合、患者内の増加した尿素を補正するために、以前の透析セッションと比較して、増加された血液流量、透析器流量、および/または透析器のサイズを使用することができる。患者の透析前BUNレベルが低いということは、より少ないアンモニウムイオンがリン酸ジルコニウムによって吸着されるということ、およびその結果、より小さいリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを使用することができるということも意味する。同様に、療法のために最低限必要とされるリン酸ジルコニウムの量は、より少ないアンモニウムイオンがリン酸ジルコニウムによって吸着されるので、より低い透析前BUNレベルを有する患者ではより少ない。患者のBUNレベルが低い場合は、より小さい吸着剤カートリッジを使用することもできる。BUNレベルが低いということは、患者が減少したクリアランス要件を有することになり、患者の体重が通常小さいサイズをサポートしない場合でも、より小さい吸着剤カートリッジでの治療が可能になる。患者の透析前BUNレベルが低いと、吸着剤カートリッジ内の尿素の分解によって生成される二酸化炭素の量もより低くなる。二酸化炭素は使用済み透析液中の重炭酸塩と平衡状態にあるので、吸着剤カートリッジによって生成される二酸化炭素が少なくなると、透析液中の重炭酸塩が少なくなる。結果として、治療中の透析液への重炭酸塩の添加速度を、より高い透析前BUNレベルを有する患者と比較して増加させることができる。患者の透析前BUNレベルが低いと、透析セッションのタイミング、透析セッションの頻度、および透析セッションの時間の調整を可能にすることもできる。患者の透析前BUNレベルが低い患者は、セッション当たりのより短い期間の間、または透析セッション間のより長い期間で、より少ない頻度で透析を受けることができる可能性がある。
【0108】
リン酸ジルコニウムの再装填
リン酸ジルコニウムによって吸着されたアンモニウムイオンの量を、リン酸ジルコニウムをリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール内に再装填しながら判定することもできる。リン酸ジルコニウムを含有する吸着剤モジュールの再装填は、米国特許出願第14/642,847号(US2015/0367055A1)のように実施することができ、その内容全体が本明細書に組み込まれる。図3は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402内にリン酸ジルコニウムを再装填するためのリン酸ジルコニウム再装填流路401の非限定的な実施形態を例示している。図3に例示される再装填流路401は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402からアンモニウムイオンを除去するためのアンモニウム除去流路としても役立ち得る。ある特定の実施形態では、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402は、再使用可能な吸着剤モジュールであり得る。透析後、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を透析システムから除去し、再装填器内に留置することができる。代替的に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402は、単回使用であっても、使い捨て吸着剤モジュールであってもよい。リン酸ジルコニウムを吸着剤モジュールから除去し、透析で使用して、再装填用の新しい吸着剤モジュール内に留置することができる。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402は、リン酸ジルコニウムモジュールの入口403およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口404を通ってリン酸ジルコニウム再装填流路401に流体的に接続可能であり得る。ポンプ407は、リン酸ジルコニウム再装填流路401を通って流体を移動させるための駆動力を提供する。リン酸ジルコニウム再装填流路401は、ブライン供給源405および水供給源406を含む1つ以上の再装填溶液供給源を含み得る。ブライン供給源405は、塩化ナトリウムなどの塩のブライン溶液、ならびに酢酸ナトリウムと酢酸との混合物などの緩衝剤を含有し得る。再装填溶液はアンモニウム除去溶液として作用し、再装填溶液中のナトリウムおよび水素イオンは以前の透析セッション中にリン酸ジルコニウムにより吸着されたアンモニウムイオンを置換する。単一のブライン供給源405として示されているが、複数の再装填溶液供給源を使用することができる。例えば、塩化ナトリウムを含有する第1の再装填溶液供給源および酢酸緩衝剤を含有する第2の再装填溶液供給源。代替的に、3つの再装填溶液供給源を、別個の再装填溶液供給源中の塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、および酢酸と共に使用することができる。複数の再装填溶液供給源を使用する場合、再装填溶液は、リン酸ジルコニウム再装填流路401内で混合され得るか、またはリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通って順次送出され得る。ナトリウムイオンおよび水素イオンと、アンモニウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムとの交換を引き起こすことができるナトリウム塩および緩衝剤の任意の組み合わせを再装填溶液として使用することができる。ブライン供給源405または水供給源406のいずれかからの流体の移動を制御するために、任意選択のバルブ408を含めることができる。代替的に、各再装填溶液供給源に流体的に接続された流体ライン上の別個のポンプを使用することができる。プロセッサ(図示せず)は、ポンプまたはバルブを制御して、再装填溶液供給源からの再装填溶液を、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通して方向付けるようにプログラムされ得る。当業者は、複数のポンプおよびバルブ配置を使用して、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通して必要な再装填溶液を送出することができることを理解されよう。
【0109】
流出物ライン409内に位置付けられたセンサ410は、流出物ライン409内の流出物再装填溶液の少なくとも1つの流体パラメータを判定し得る。ある特定の実施形態では、センサ410は、アンモニアセンサ、pHセンサ、またはそれらの組み合わせであり得る。ある特定の実施形態では、導電センサを使用して、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を測定することができる。記載されるように、流出物ライン409内のアンモニアセンサを使用して、患者の透析前BUNレベルを推定することができる。
【0110】
透析セッション中に、リン酸ジルコニウムは、アンモニウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含む使用済み透析液からカチオンを除去し、カチオンを水素イオンおよびナトリウムイオンに交換するのに役立つ。リン酸ジルコニウムの再装填時に使用される塩化ナトリウムおよび緩衝剤溶液は、ナトリウムイオンおよび水素イオンでの処置中に吸収されたカチオンを置換するのに役立ち、リン酸ジルコニウムの再使用を容易にする。
【0111】
アンモニアは、処置中に、吸着剤カートリッジ内のウレアーゼによる尿素の分解によって形成される。したがって、リン酸ジルコニウムによって吸着されるアンモニアの量は、処置中に除去される尿素の量の関数である。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402からの置換されたアンモニアは、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402から、リン酸ジルコニウムモジュールの出口404を通って流出物ライン409へと出ることになる。流出物ライン409内のアンモニアセンサは、流出物再装填溶液の総アンモニア含有量を判定することができ、これは、図1図2に記載されるアンモニウム除去溶液流出物と同様である。当業者は、いくつかの方法を使用して流出物ライン409中の総アンモニア含有量を判定することができることを理解されよう。ある特定の実施形態では、センサ410は、流出物ライン409中のアンモニアイオンおよびアンモニウムイオンの両方の濃度を判定することができる。代替的に、アンモニアセンサがアンモニアまたはアンモニウムのイオン濃度およびpHのいずれかを判定し、それによって、ヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を使用して総アンモニア含有量を判定することを可能にすることができる。ある特定の実施形態では、アンモニアセンサは、ヘンリーの法則およびヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を使用して判定された流出物の総アンモニア含有量を用いてアンモニアガスの分圧を測定することができる。温度センサなどの追加のセンサも使用することができる。単一のセンサ410が図3に例示されているが、アンモニアセンサは代替的に、流出物再装填溶液中の総アンモニア含有量の計算を可能にするために、流出物再装填溶液の固体パラメータを判定する複数のセンサであってもよい。アンモニアセンサは、アンモニアセンサから受信した流出物の分析に基づいて患者の透析前BUNレベルを推定するようにプログラムされたプロセッサ(図示せず)と通信することができ、プロセッサは、患者の透析前BUNレベルを使用して、患者に対して1つ以上の透析パラメータを設定することができる。ある特定の実施形態では、流出物リザーバ(図示せず)は、流出物ライン409に流体的に接続可能であり得る。収集された流出物の総アンモニア含有量を測定して、再装填中にリン酸ジルコニウムから除去されたアンモニウムイオンの総量を判定することができる。
【0112】
アンモニウム除去プロセス中に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通してアンモニウム除去溶液をいずれかの方向に導入することができる。アンモニウム除去溶液は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通して、療法中の透析液の流れと同じ方向または逆方向に導入され得る。概して、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を再装填する際、再装填溶液の流れの方向は、治療中の透析液の流れと比較して逆方向である。しかしながら、療法中にアンモニウム除去溶液が透析液の流れと同じ方向に導入されると、流出物中にアンモニアが検出される前に必要とされる時間量は、療法中にリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402によって除去されるアンモニウムイオンの量の指標を提供し得る。概して、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402の最近位部分のみが療法中にアンモニウムイオンで飽和することになり、療法中にアンモニウムイオンがリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール402を通って進行する距離は、除去されるアンモニウムイオンの量の関数である。流出物中のアンモニアを検出する前のアンモニウム除去中の時間の長さは、療法中に除去されるアンモニウムイオンの量の関数である。
【0113】
図4は、再装填中に患者の透析前BUNレベルを推定し、患者の透析前BUNレベルに応じて患者に対して1つ以上の透析パラメータを設定する方法のフローチャートを例示している。ステップ501において、図3に例示されるように、以前の透析セッションで使用されたリン酸ジルコニウムを含有するリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを吸着剤再装填器の受容コンパートメント内に留置して、リン酸ジルコニウムモジュールの入口およびリン酸ジルコニウムモジュールの出口に流体的に接続することができる。ステップ502において、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して水供給源からの水を導入または送出して、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールをすすぐことができる。好ましい実施形態では、プロセッサは、ステップ502の間に流出物再装填溶液中の総アンモニア含有量の受信を開始し得る。しかしながら、ある特定の実施形態では、ステップ503において、総アンモニア含有量の判定は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通してブライン溶液を導入した後、送出した後、または流した後に開始し得る。記載されるように、ブライン溶液は、ナトリウム塩および緩衝剤を含有し得る。ステップ503において、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して単一の溶液としてブライン溶液を導入もしくは送出することができるか、または代替的に、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通してナトリウム塩、酸、および塩基の任意の組み合わせを順次送出することができる。ステップ504において、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール内に依然として残っているブライン溶液を除去するために、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して水を再度送出または導入することができる。プロセッサは、アンモニアセンサからの流出物再装填溶液中の総アンモニア含有量またはpHセンサからのpHを、連続的に、予め設定された間隔で、または一回だけのいずれかで受信することができる。総アンモニア含有量の単回判定が行われる場合、プロセッサは、ルックアップテーブルまたは他の比較方法を使用して、単一の時点における流出物のアンモニウム含有量を既知のまたは特徴付けられた吐出/容量曲線と比較することができる。総アンモニアの判定が予め設定された間隔で行われる場合、プロセッサは、その間隔での流出物のアンモニウム含有量を既知の曲線と比較することができ、計算におけるより高いレベルの精度および信頼性を提供する。連続的なアンモニア含有量の判定またはより短い間隔での判定により、プロセッサは、流出物の総アンモニア含有量を積分してリン酸ジルコニウムから除去されたアンモニウムイオンの量を計算するか、または複数の総アンモニア測定値を既知の曲線および高い信頼度と比較することができる。ある特定の実施形態では、プロセッサは、1秒〜30秒の間、1秒〜1分の間、30秒〜2分の間、1分〜3分の間、または2分〜5分の間を含む1秒〜5分の間の予め設定された間隔で、流出物再装填溶液中の総アンモニア含有量を受信し得る。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通して送出された再装填溶液の流量をプロセッサによって受信することもできる。吸着剤再装填器流出物再装填溶液中の流量および総アンモニア含有量を使用して、プロセッサは、体積平均流出物再装填溶液の総アンモニア含有量を判定し得る。プロセッサは、次いで、ステップ505において、アンモニアセンサから受信した流出物の分析に基づいて、記載される式(1〜9)を使用して、患者の透析前BUNレベルを推定し得る。記載されるように、ステップ506において、プロセッサは、患者の透析前BUNレベルに基づいて、患者の後続の透析セッションのための1つ以上の透析パラメータを設定し得る。図5は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703内にリン酸ジルコニウムを再装填するための吸着剤再装填器701の非限定的な実施形態を例示している。吸着剤再装填器701は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703を受容するための受容コンパートメント702を含み得る。流体接続部(図5には図示せず)は、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703の中へ、それを通して、およびそれから再装填溶液を渡すために、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703の頂部および底部に接続する。記載されるように、再装填流体は、透析中に吸着剤材料に結合したイオンを新しいイオンで置き換え、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703内のリン酸ジルコニウムを再装填し、透析時のリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール703の再使用を可能にする。吸着剤再装填器701はまた、第2の吸着剤モジュール705を受容するための任意選択の第2の受容コンパートメント704を有することができ、第2の受容コンパートメント704もまた、第2の吸着剤モジュール705を再装填するための再装填溶液供給源に流体的に接続されている。ある特定の実施形態では、第2の吸着剤モジュール705はまた、リン酸ジルコニウムを含有し得、複数のリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを同時に再装填することを可能にする。代替的に、第2の吸着剤モジュール705は、酸化ジルコニウムなどの異なる吸着剤材料を含有し得る。ユーザによる再装填プロセスを開始または制御し、吸着剤再装填器701からの情報、患者の透析前BUNレベルなどを受信するために、ユーザインターフェース706を設けることができる。ユーザインターフェース706は、各再装填ステップの完了までの時間、または再装填プロセス全体を完了するまでの時間など、再装填プロセスの状態をユーザに提供することもできる。漏れ、閉塞、ポンプの故障、化学物質の不一致など、再装填中に何らかの問題が検出された場合、ユーザインターフェース706は警告メッセージを提供する。吸着剤再装填器701のドア707は、操作中に受容コンパートメント702および704へのアクセスを制御する。
【0114】
吸着剤再装填器701は、再装填器流出物中のアンモニアレベルを判定するための1つ以上のプロセッサを有し得る。吸着剤再装填器701は、センサから得たデータを無線接続または有線接続で伝送し得る。総アンモニア含有量の判定を行うために必要なデータを、後で総アンモニア含有量を判定し、データを特定の患者に一致させ、その患者に対して透析療法セッションを実施するための特定のパラメータを調整し得る透析機械などの別の構成要素と通信させることができる。吸着剤再装填器701は、必要な命令またはデータを、データを処理するかもしくは命令のセットを実施する構成要素に伝送するローカルエリアネットワーク(LAN)または安全なインターネット接続に接続され得る。再装填器流出物中の総アンモニア含有量の判定および計算は、再装填器に物理的に取り付けられた構成要素または透析システムにローカルな他の構成要素に限定されないが、クラウドインフラストラクチャを含む任意のローカルもしくはリモートデータセンタ、またはデータを記憶、管理、および処理し得るインターネット上でホストされている他のリモートサーバのネットワークで実施され得ることが理解されよう。ネットワーク化システムは、当業者に知られているような任意の既知の方法および手順によって確保することができる。
【0115】
図5には2つの受容コンパートメント702および704を有するものとして例示されているが、単一の吸着剤材料を再装填するための吸着剤再装填器は、単一の受容コンパートメント、または同じ吸着剤材料を包含する複数のモジュールを受容および再装填するための複数の受容コンパートメントを有し得る。任意の数もしくは組み合わせの酸化ジルコニウムおよび/またはリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを再装填するための任意の数の受容コンパートメントを有する吸着剤再装填器を構築することができる。例えば、2つのリン酸ジルコニウム受容コンパートメントと2つの酸化ジルコニウム受容コンパートメントとを有する吸着剤再装填器を同様に構築することができる。再装填器は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の受容コンパートメントを有することができ、各々は、酸化ジルコニウムまたはリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを受容することができる。
【0116】
図6は、リン酸ジルコニウムを再装填するためにセットアップされた吸着剤再装填器801の非限定的な実施形態を例示している。リン酸ジルコニウムを再装填するために、1つ以上の再装填流体をリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールに通過させることができる。図6に示されるように、吸着剤再装填器801は、水供給源804、塩化ナトリウム供給源805、緩衝剤供給源806、および消毒剤供給源807などの1つ以上の再装填流体供給源に流体的に接続され得る。記載されるように、塩化ナトリウムと緩衝剤とを組み合わせて単一のブライン供給源(図6には図示せず)とすることができる。代替的に、緩衝剤供給源806を別個の酸供給源および塩基供給源によって置き換えることができる。任意の数の再装填溶液供給源を含めることができる。吸着剤再装填器801は、リン酸ジルコニウム受容コンパートメント802を有する。任意選択で、吸着剤再装填器801は、第2のリン酸ジルコニウム吸着剤モジュール、または酸化ジルコニウムなどの異なる吸着剤材料を含有する吸着剤モジュールを受容するための第2の受容コンパートメント803を含み得る。吸着剤再装填器801はまた、再装填流体を流体供給源から吸着剤モジュールに選択的に送達するための1つ以上のポンプおよびバルブ(図6には図示せず)を含み得る。図6に示されるように、再装填流体供給源は、吸着剤再装填器801の外部に収容されている。代替的に、再装填流体供給源を吸着剤再装填器801内に収容することができる。吸着剤モジュールから出る廃棄流体を廃棄処分するために、ドレインライン(図示せず)を吸着剤再装填器801に接続することができる。ドレインラインをドレインに流体的に接続することができるか、または代替的に、ドレインラインを、貯蔵のためおよび後で廃棄処分するために1つ以上の廃棄リザーバに流体的に接続することができる。図6に例示されるように、吸着剤再装填器801は、テーブル808の頂部に嵌合するのに十分に小さくあり得る。しかしながら、より大きな吸着剤再装填器を使用することができる。ユーザインターフェース809は、再装填プロセスのユーザ制御を可能にし、再装填に関するメッセージを提供することができる。ドア810は、再装填中に受容コンパートメント802および803へのアクセスを制御する。
【0117】
透析パラメータ設定システムおよび方法
アンモニウム除去中に吸着剤カートリッジから得られた流出物の分析に基づいて透析パラメータを設定するためのシステムおよび方法が提供される。透析パラメータ設定システムは、透析パラメータを設定または調整するためにデータまたは命令を透析機械に伝送する少なくとも1つの透析パラメータ設定構成要素またはプロセッサを有し得る。透析パラメータの非限定的な群には、透析液流量、血液流量、透析器のサイズ、リン酸ジルコニウムの量、吸着剤モジュールのサイズもしくは容量、重炭酸塩添加プロファイル、またはそれらの組み合わせが含まれる。本システムは、透析機械、吸着剤カートリッジもしくはモジュール、吸着剤カートリッジもしくはモジュールを再装填するための再装填器、またはアンモニウム除去システムのうちのいずれか1つ以上の上に固設された、透析プロセスで使用するためのデータを有する無線周波数識別(RFID)マーカータグなどの識別子を含み得る。識別子は、情報をRFIDタグ、1−Wireのセキュリティ構成要素、または無線認証構成要素から、またはバーコードをスキャンすることによって受信することができる構成要素であり得る。識別子は、スマートカードに接着されたRFIDチップおよびメモリチップを含有し得る。本システムは、透析機械、吸着剤カートリッジもしくはモジュール、再装填器、またはアンモニウム除去システムのうちのいずれか1つの間でデータおよび/もしくは命令を通信または転送し得る。例えば、本システムおよび方法は、再装填器またはアンモニウム除去システムからセンサデータを受信し、受信したセンサデータに基づいて患者のBUNを推定し、適切な透析パラメータを判定し、適切な透析パラメータの設定を透析療法セッション中に使用するための透析機械に通信することができる。代替的に、透析機械のプロセッサは、再装填器から受信したデータを直接処理し、透析パラメータの設定を調整することができる。
【0118】
本システムおよび方法における制御システムは、アンモニウム除去溶液流出物中の流体特性から得られた推定される患者の透析前BUNレベルに基づいて、最適な透析パラメータセッションを判定することができる。得られたデータは、患者の治療前の尿素レベルに基づく患者のpHを含み得る。代替的に、ユーザが、推定された患者の透析前BUNレベルに基づいて所望の最適な透析パラメータセッションを直接入力するユーザインターフェースを提供することができる。制御システムは、透析機械の状態を監視し影響を与えることができる任意の構成要素であり得る。制御システムは、プロセッサ、メモリ、およびコンピュータ構成要素を使用して、記載される関数を実行することができる。制御システムは、透析機械流路のポンプおよびバルブと通信し得、記憶された命令に従ってポンプおよびバルブを制御することができる。制御システムは、透析機械、再装填器、またはアンモニウム除去システムのいずれかのセンサからデータを受信し、透析機械、再装填器、またはアンモニウム除去システムのいずれかのポンプおよびバルブを制御することができる。制御システムは、推定されたアンモニアに基づいて、数学的アルゴリズムまたはルックアップテーブルを使用して最適な透析パラメータ設定を自動的に判定し、再装填流路のポンプおよびバルブを操作して、透析療法を制御することができる。
【0119】
図7A図7Cは、透析パラメータ設定システムの異なる例を示している。図7Aは、間のデータ転送を介して識別子920と通信するために透析構成要素930の上に固設された透析パラメータ設定構成要素910を含有する透析パラメータ設定システムを示している。透析構成要素930は、吸着剤カートリッジ、再装填器、アンモニウム除去システム、または透析機械などの任意の構成要素であり得る。本明細書に記載されるように、識別子920を透析構成要素930に固設して、無線信号または有線信号を透析パラメータ設定構成要素910に伝送し、透析パラメータ設定構成要素910を読み取り、さらに、透析パラメータ設定構成要素910から受信したデータを、透析構成要素930の上に位置しているか、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して接続されているか、またはリモートサーバに接続されているプロセッサ940に転送することができる。
【0120】
図7Bは、第1の透析構成要素930の透析パラメータ設定構成要素910と通信するために第2の透析構成要素930’に固設された識別子920を有する透析パラメータ設定システムを示している。2つの透析構成要素が一緒に組み立てられているかまたは互いに接近している場合、識別子920と透析パラメータ設定構成要素910との間でデータ通信が行われ得る。識別子920によって受信されたデータをプロセッサ940にさらに転送することができる。例えば、識別子920を有する吸着剤カートリッジは、透析構成要素930によって示される透析機械に接続され得る。
【0121】
識別子は、再装填器、アンモニウム除去システム、吸着剤カートリッジ、または透析機械などの透析システムの異種の構成要素間でデータを伝送することもできる。図7Cは、識別子920が異なる透析設定構成要素930および930’の透析パラメータ設定構成要素910および910’と通信し得ることを示している。次いで、透析パラメータ設定構成要素910および910’から受信したデータを、識別子920を介してプロセッサ940に転送することができる。次いで、プロセッサ940は、透析構成要素930および930’が互いに一致しているかどうかなど、複数の透析構成要素930および930’に関する判定を行い、再装填器流出物中の推定されたアンモニアレベルを伝送することができる。非限定的な例では、透析構成要素930は再装填器であり得、透析構成要素930’は、推定アンモニアレベルまたは1つ以上のセンサから得られた測定値が伝送される再使用可能なモジュールを有する吸着剤カートリッジであり得る。
【0122】
識別器920は、透析構成要素に取り付けられていてもよいし、または別個のデバイスであってもよい。識別子920は、少なくとも2つの異なるタイプの透析パラメータ設定構成要素と通信し得るマルチモードタイプのリーダであり得る。少なくとも2つの透析パラメータ設定構成要素が同時に識別子に対して利用可能である場合、識別子920は、透析パラメータ設定構成要素のうちの少なくとも2つを互いに区別することができる。識別子920はまた、異なる透析パラメータ設定構成要素から以前に受信されたものを含む予め記憶された患者情報などの他の情報供給源からの追加の情報を含むことができる。識別子920に受信または記憶された情報をプロセッサ940にさらに転送することができる。識別子920はまた、プロセッサ940から情報を受信することができる。プロセッサ940は、1つ以上の透析構成要素930に関して、識別子920から受信したデータに基づいて判定を行うことができる。プロセッサ940は、識別子920の一部であっても、透析構成要素930の一部であっても、コンソールもしくは透析キャビネットなどの透析システムの他の任意の構成要素であってもよい。代替的に、プロセッサは、独立型分析システムの一部であっても、電子医療記録システムと通信するプロセッサであってもよい。プロセッサ940はまた、有線通信または無線通信を介して透析システムに接続され得るデバイスであり得る。次いで、プロセッサ940によって行われた判定をスクリーン(図示せず)上に表示して、ユーザに時宜を得て通知することができる。スクリーンは、プロセッサ940の一部であっても、透析構成要素930の一部であっても、識別子920の一部であっても、別個のデバイスであってもよい。音声信号、光信号、または任意の他の好適な情報伝達手段を介してプロセッサ940の判定結果をユーザに通知することもできる。
【0123】
プロセッサ940は、情報がプロセッサ940によって受信されると、透析構成要素固有の一意の情報をユーザ固有の一意の情報と相関させ、製造者固有の一意の識別子を透析構成要素の一意の情報と相関させることができる。プロセッサ940はまた、再装填可能な構成要素が完全に再装填されているかどうか、吸着剤カートリッジが透析システムと一致するかどうか、および透析システムの透析パラメータ設定が患者にとって適切かどうかなど、透析構成要素の他の特性を判定することができる。プロセッサ940はさらに、血液の流れ、限外濾過速度、および限外濾過プロファイルなど、透析システムの透析パラメータ設定を制御することができる。
【0124】
非限定的な例では、透析パラメータ設定システムの起動は、特定の事象に応じて、1つ以上の識別子920と1つ以上の透析パラメータ設定構成要素910との間の通信から開始することができる。特定の事象は、ユーザが識別子を透析パラメータ設定構成要素に接近させると発生する可能性がある。例えば、透析パラメータ設定構成要素と識別子とをそれぞれ担持する2つの透析構成要素が透析システムに設置されている場合。識別子と透析パラメータ設定構成要素との間の通信は、再装填プロセスなどの操作が開始されたときにも発生し得る。RFID構成要素から通信または受信される信号のためのRFIDシステムなどの透析パラメータ設定システムの起動は、再装填プロセスの第1のステップのうちの1つであり得る。識別子920と透析パラメータ設定構成要素910との間の通信プロセスを、通信プロセスの任意の段階でユーザによって手動で開始することもできる。非限定的な例では、いったん通信が開始すると、識別子920は、透析パラメータ設定構成要素910と連続的に通信し得る。通信は、ユーザのコマンドによって中断されても、自動プロセスによって制御して停止してもよい。例えば、再使用可能なモジュールが再装填器に適していないと判定された場合、識別器920は、透析パラメータ設定構成要素910との通信を停止することができる。
【0125】
患者BUNの推定
アンモニウム除去流路または再装填流路の流出物ライン内のアンモニアセンサから受信した流出物の分析に基づいて、またはリザーバ内の収集された流出物の総アンモニア含有量に基づいて、プロセッサは、プロセス中の各時点においてアンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を積分して、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールから除去されたアンモニアの総量を判定することができ、これは、以前の透析セッション中にリン酸ジルコニウムによって除去されたアンモニアの総量に等しくなるであろう。リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールの再装填中にアンモニウム除去溶液で、またはリン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを通してアンモニウム除去溶液を導入するための独立型装置で洗い流すかもしくは逆流させることができる。記載されるように、プロセッサは代替的に、アンモニウム除去溶液流出物の総アンモニア含有量を一回だけまたは予め設定された間隔で受信することができる。アンモニウム除去溶液流出物中の総アンモニアを、流出物ライン中の体積平均総アンモニア含有量または収集された流出物の総アンモニア含有量として判定することができる。尿素の各分子は2分子のアンモニアを生成するので、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールから除去される総アンモニアは、透析セッション中に吸着剤カートリッジによって除去される尿素の量の2倍である。吸着剤カートリッジによって除去される尿素の総量は、式(1)に示されるように、処置中に吸着剤カートリッジを通して供給される尿素の総量掛ける吸着剤カートリッジ内のウレアーゼによる尿素の平均変換率に等しいとして近似することができる。
【数1】
式中、Xは、吸着剤カートリッジ中の平均尿素変換率に等しい。透析セッション中の透析液中の総尿素は、式(2)によって与えられる。
【数2】
式中、Qは透析液流量であり、tは透析セッションの長さであり、
【化1】
は透析液中の平均尿素濃度である。式(3)は、透析セッション中に透析液中の総尿素量を判定するための代替方法を提供する。
【数3】
式中、Vprpが透析セッション前の患者の水分量である場合、Vpostは透析セッション後の患者の水分量であり、CBurea、prpは透析セッション前の患者の血液尿素レベルであり、CBurea、postは透析セッション後の患者の血液尿素レベルである。透析セッション前の患者の水分量は、生体インピーダンスを介して判定されても、患者の体重に基づいて推定されてもよい。ある特定の実施形態では、透析セッション前の患者の水分量を0.58×患者の体重と仮定することができる。透析セッション後、患者の水分量は、生体インピーダンスによって判定されても、体重に基づいて推定されても、セッション前の患者の水分量から透析セッション中の総限外濾過を差し引くことによって判定されてもよい。式(4)に示されるように、CBrea、postを尿素減少率(URR)に基づいて推定することができる。
【数4】
【0126】
式(5)に示されるように、尿素減少率を患者の容積、透析器のクリアランス、およびセッション時間に基づいて推定することができる。
【数5】
【0127】
式中、kは透析器のクリアランスであり、tは透析セッションの長さであり、vは患者の容積である。透析器のクリアランスは、式(5)を使用して判定され得る。
【数6】
式中、QBは透析セッション中の血液流量であり、Qは透析セッション中の透析液流量であり、KAは透析器の仕様書から得られ得る透析器の物質移動係数である。代替的に、透析器のクリアランスを、当技術分野において既知の技術を使用して、オンラインクリアランスモニタリングで判定することができる。ある特定の実施形態では、NaClのボーラスを透析液に添加することができ、透析器を横切る導電デルタを使用してクリアランスを推定することができる。しかしながら、透析器のクリアランスを判定する任意の既知の方法を使用することができる。
【0128】
記載されるように、リン酸ジルコニウムによって除去された総アンモニアを式(7)によって判定することができる。
【数7】
式中、
【化2】
は、アンモニアセンサによって判定されるアンモニウム除去溶液流出物中の体積平均総アンモニア含有量であり、Veffは、リン酸ジルコニウム吸着剤モジュールを介して導入されたアンモニウム除去溶液の総体積である。記載されるように、総NHを、リザーバまたは容器内に収集された流出物の総アンモニア含有量を測定することによって測定することもできる。吸着剤カートリッジによって除去された総尿素は、式(8)によって与えられる。
【数8】
【0129】
総尿素の式を式(1〜6)に代入して並べ替えると、患者の透析前BUNレベル、式(9)に示されるCBurea、prpの推定が可能になる。
【数9】
【0130】
実施例1
透析セッション中の0.3L/分の血液流量、0.5L/分の透析液流量、および1.1−L/分の透析器の物質移動係数(KoA)を使用する、患者の透析前BUN推定の非限定的な実施例として、式(6)は、0.2679L/分の透析器のクリアランスを提供する。患者の体重を80kgと仮定すると、透析前の患者の水分量は、0.58×80kgまたは46.4Lと仮定され得る。240分の透析セッション中、URRは、URR=URR=1−e−(0.2679)(240)/46.4=0.750として計算され得る。2.0Lの透析セッション中の限外濾過量は、44.4Lの患者の透析後の水分量をもたらすであろう。
【0131】
400mMの流出物再装填溶液中の体積平均総アンモニア含有量、6.0Lの総流出物再装填溶液体積、および0.90の吸着剤カートリッジによる平均尿素変換率を仮定すると、式(9)は、
【化3】
の尿素として、患者の透析前BUN推定を提供する。
【0132】
当業者は、例示的な患者の透析前BUN推定に使用される値は単に例示目的のためであることを理解されよう。実際の患者の実際の値は変動する。しかしながら、式(1〜9)を任意の開始値と共に使用して、患者の透析前BUNレベルの推定を提供することができる。
【0133】
場合によっては、リン酸ジルコニウムのアンモニウム容量を超えると、アンモニアの破過が発生することがある。透析システムは、透析液流路内のアンモニアセンサを用いてアンモニアの破過を検出することができ、かつアンモニアの破過時間を記録することができる。既知の透析液流量およびアンモニアの破過時間について記載されるように、患者の透析前BUNレベルを、式(1〜9)を使用して依然として推定することができる。
【0134】
当業者は、操作に対する具体的な必要性に応じて、記載されるシステムおよび方法において様々な組み合わせ、ならびに/または修正および変形を行うことができることを理解されよう。さらに、本発明の態様の一部として例示または記載される特徴は、本発明の態様において単独もしくは組み合わせのいずれかで使用され得るか、または記載される要素のうちの1つ以上の好ましい配置に従い得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C