【解決手段】成形体の製造方法は、被加工材と、被加工材よりも高い柔軟性を有するクッション材とを重ね合わせることと、被加工材と対面するように打抜金型を配置することと、クッション材と対面するように背面部材を配置することと、打抜金型と背面部材とで被加工材及びクッション材を挟圧して、打抜金型をクッション材にめり込ませることにより、打抜金型に対応する形状に被加工材を打ち抜くこととを含む。
前記被加工材を打ち抜くことは、前記被加工材と対面するように配置されたストリッパによって前記被加工材及び前記クッション材を前記背面部材との間で挟持した状態で、前記打抜金型と前記背面部材とで前記被加工材及び前記クッション材を挟圧して、前記打抜金型に対応する形状に前記被加工材を打ち抜くことを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[打抜装置の構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、打抜装置10の構成について説明する。打抜装置10は、
図1に示されるように、クッション材2に重ね合わされた状態の被加工材1を所定形状に打ち抜いて、打抜部材W(成形体)(
図4参照)を形成するように構成されている。
【0011】
被加工材1としては、例えば、金属板、セラミックス板、グリーンシートが挙げられる。金属板は、例えば、電磁鋼板、アモルファス金属板、コバルトニッケル合金板、銅合金、42アロイ、炭素鋼板などの合金板であってもよい。セラミックス板は、例えば、ガラス板、ファインセラミックス板などであってもよい。ファインセラミックス材料としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコニア、アルミナ、フェライト等が挙げられる。被加工材1の厚さは、特に限定されないが、例えば、5mm以下であってもよいし、1mm以下であってもよいし、0.5mm以下であってもよいし、0.3mm以下であってもよいし、0.1mm以下であってもよいし、50μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよいし、3μm以下であってもよい。被加工材1は、上記の材質からなる複数の板状体が積層されて構成されていてもよい。
【0012】
クッション材2は、被加工材1から打ち抜かれた打抜部材Wがクッション材2にめり込むことができるように、被加工材1よりも高い柔軟性を有している。「柔軟性が高い」とは、弾性率又は動的弾性率が相対的に小さいことをいうものと定義されていてもよいし、硬さ(例えば、ビッカース硬さ、ロックウェル硬さなど)が小さいことをいうものと定義されていてもよい。クッション材2は、例えば、紙、樹脂フィルム、スポンジ、ゴム、金属(例えば、鉛、スズ、金など)であってもよい。クッション材2の厚さは、被加工材1の厚さよりも薄くてもよいし、被加工材1の厚さと同程度であってもよいし、被加工材1の厚さよりも大きくてもよい。クッション材2は、例えば、被加工材1の0.3倍以上の厚さを有していてもよいし、被加工材1の1倍以上の厚さを有していてもよいし、被加工材1の2倍以上の厚さを有していてもよいし、被加工材1の4倍以上の厚さを有していてもよいし、被加工材1の6倍以上の厚さを有していてもよい。クッション材2は、上記の材質からなる複数の板状体が積層されて構成されていてもよい。
【0013】
打抜装置10は、背面部材11と、打抜金型12と、支持板13と、駆動機構14と、ストリッパ15と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0014】
背面部材11は、クッション材2と対面するように配置されている。
図1の例では、背面部材11は、クッション材2の下方に位置しており、クッション材2及び被加工材1を支持するように構成されている。背面部材11は、クッション材2と対面する側の表面(
図1では上面)に形成された開口部11aを含む。
【0015】
開口部11aは、
図1に示されるような窪み(凹部)であってもよいし、背面部材11を貫通する貫通孔であってもよい。開口部11aは、
図2に示されるように、打抜金型12の外形に沿った形状を呈しており、打抜金型12の外形よりも小さい。すなわち、上方から見たときに、開口部11aの周縁は、打抜金型12の輪郭よりも若干内側を、当該輪郭に沿って延びている(
図2(b)参照)。
【0016】
打抜金型12は、被加工材1と対面するように配置されている。
図1の例では、打抜金型12は、被加工材1の上方に位置している。打抜金型12は、上方から見て、背面部材11と重なり合うように位置している。そのため、打抜金型12は、背面部材11との間で被加工材1及びクッション材2を挟圧可能に構成されている。
図1の例では、打抜金型12はパンチとして機能する。すなわち、打抜金型12は、その外形に沿う形状に被加工材1を打ち抜くように構成されている。
【0017】
支持板13は、打抜金型12の基端部を支持している。支持板13は、複数の貫通孔(図示せず)を含む。複数の貫通孔は、例えば、支持板13の各隅部に配置されていてもよい。複数の貫通孔にはそれぞれ、案内シャフト16が挿通されている。
【0018】
駆動機構14は、支持板13に接続されている。駆動機構14は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、打抜金型12及び支持板13を一体的に上下動させるように構成されている。駆動機構14は、例えば、プレス機(機械式プレス、液圧式プレスなど)であってもよいし、アクチュエータであってもよい。
【0019】
ストリッパ15は、被加工材1と対面するように配置されている。
図1の例では、ストリッパ15は、被加工材1の上方に位置している。ストリッパ15は、打抜金型12で被加工材1を打ち抜く際に、打抜金型12の周囲において被加工材1を背面部材11との間で挟持する機能を有する。ストリッパ15は、中央部に位置する貫通孔15aを含む。貫通孔15a内には打抜金型12が挿通されている。すなわち、駆動機構14の動作時において、打抜金型12は、貫通孔15a内を通って上下動する。
【0020】
ストリッパ15には、複数の案内シャフト16が取り付けられている。ストリッパ15と支持板13との間には、複数の弾性体17が配置されている。弾性体17は、ストリッパ15を支持板13から離間させる方向の弾性力をストリッパ15に付与するように構成されている。弾性体17は、例えば、円筒状を呈する圧縮コイルばねであってもよいし、ガススプリングであってもよい。当該圧縮コイルばねは、
図1に例示されるように、案内シャフト16に挿通されていてもよい。
【0021】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、駆動機構14を動作させるための指示信号を生成し、駆動機構14に当該指示信号を送信するように構成されている。
【0022】
[打抜部材の製造方法]
続いて、
図1、
図3及び
図4を参照して、打抜装置10を用いて被加工材1から打抜部材Wを製造する方法を説明する。
【0023】
まず、
図1に示されるように、被加工材1が重ね合わされた状態のクッション材2を、背面部材11上に載置する。これにより、背面部材11は、クッション材2と直接対面する。次に、駆動機構14、ストリッパ15などと共に、打抜金型12を被加工材1の上方に配置する。これにより、打抜金型12は、被加工材1と直接対面する。
【0024】
続いて、コントローラCtrが駆動機構14に指示して、打抜金型12を被加工材1に向けて降下させる。このとき、
図3に示されるように、打抜金型12と共にストリッパ15も降下して、打抜金型12の周囲において被加工材1と当接する。
【0025】
コントローラCtrから駆動機構14に対する指示がさらに継続すると、
図4に示されるように、打抜金型12は駆動機構14によって更に降下していくが、ストリッパ15は被加工材1及びクッション材2の存在によりそれ以上降下しなくなる。
【0026】
このとき、支持板13とストリッパ15との間の弾性体17が圧縮されるので、圧縮量に比例する弾性力がストリッパ15を介して被加工材1及びクッション材2に作用する。すなわち、ストリッパ15と背面部材11との間で被加工材1及びクッション材2が挟持される。一方、打抜金型12は、背面部材11との間で被加工材1及びクッション材2を挟圧しつつ、クッション材2にめり込む状態となるまで降下して、その過程で、打抜金型12の外形に沿った形状に被加工材1を打ち抜く。この際、クッション材2の一部は、開口部11a内に押し出される。
【0027】
以上により、打抜部材Wが形成される。その後は、例えば、被加工材1が電磁鋼板、アモルファス金属板等の金属材料である場合には、複数の打抜部材Wを積層することで積層鉄心(回転子又は固定子)を得ることができる。
【0028】
[作用]
以上の実施形態では、クッション材2と共に被加工材1を背面部材11と打抜金型12とで挟圧して、打抜金型12をクッション材2にめり込ませることにより、打抜金型12に対応する形状に被加工材1を打ち抜いている。そのため、被加工材1を打ち抜く従来の方法とは異なり、ダイとパンチとの位置合わせが不要となる。従って、より簡易に被加工材1を打ち抜くことが可能となる。また、ダイ孔とパンチとの位置合わせが不要であるので、被加工材1を搬送するためのパイロット孔等を被加工材1に設ける必要がなくなる。そのため、被加工材1における打ち抜きのレイアウトの自由度が高まるので、歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0029】
ところで、従来の方法では、ダイとパンチとの間の隙間(クリアランス)を被加工材1の厚さの10%程度に設定する必要がある。すなわち、薄い被加工材1を打ち抜く場合には、被加工材1が薄くなるのに比例してクリアランスが小さくなってしまう。そのため、ダイとパンチとを極めて精密に位置合わせしなければならない。従って、従来のようにパンチ及びダイで薄い被加工材1を打ち抜こうとすると、製造コストが嵩んでしまいうる。しかしながら、以上の実施形態では、ダイとパンチとの位置合わせが必要ないので、打抜部材Wの製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0030】
以上の実施形態では、打抜金型12によって被加工材1が加圧される際に、打抜金型12の近傍における被加工材1の反り上がりがストリッパ15によって抑制される。そのため、打抜金型12の加圧力が被加工材1により適切に伝わる。従って、打抜金型12に対応する形状の打抜部材Wをより精度よく製造することが可能となる。
【0031】
以上の実施形態では、背面部材11に設けられている開口部11aの周縁が、打抜金型12の輪郭よりも若干内側を、当該輪郭に沿って延びている。そのため、被加工材1のうち打抜金型12の中央部と接触する部分に加わる応力は開口部11aの存在によって軽減される一方で、被加工材1のうち打抜金型12の周縁部と接触する部分には、背面部材11の存在によって大きな応力が作用する。従って、打抜金型12の周縁近傍に応力が集中するので、打抜金型12に対応する形状の打抜部材Wをより精度よく製造することが可能となる。
【0032】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0033】
(1)以上の実施形態では背面部材11に開口部11aが設けられていたが、背面部材11に開口部11aが設けられておらず、背面部材11の表面が平坦であってもよい。
【0034】
(2)
図5に、打抜装置10の他の例を示す。当該打抜装置10において、打抜金型12の先端面(打抜面)には、開口部12aが設けられている。開口部12aは、
図5に示されるような窪み(凹部)であってもよいし、打抜金型12を貫通する貫通孔であってもよい。このような打抜装置10を用いて被加工材1を打抜加工すると、
図6に示されるように、被加工材1が打抜金型12の外形に沿って打ち抜かれると共に、被加工材1のうち開口部12aに対応する部分が開口部12aの形状に沿って被加工材1から打ち抜かれる。すなわち、製造される打抜部材Wには、開口部12aの形状に対応する貫通孔が形成される。従って、
図5及び
図6に示される例によれば、被加工材1からの打抜部材Wの打ち抜きと同時に、打抜部材Wに貫通孔を形成することが可能となる。なお、開口部12aの深さを浅く設定することにより、開口部12aに対応する部分を半抜き加工することもできる。この場合、打抜部材Wの打ち抜きと同時に、打抜部材Wに突起を形成することが可能となる。当該突起は、被加工材1同士を締結するカシメとして用いられてもよいし、被加工材1同士の位置合わせに用いられてもよい。
【0035】
(3)
図7に、打抜装置10のさらに他の例を示す。当該打抜装置10において、打抜金型12が設置面Bに設けられており、背面部材11が打抜金型12の上方に位置しており、背面部材11に接続された駆動機構14が背面部材11を上下動させるように構成されている。打抜金型12は打抜孔12bを含んでいる。この場合、打抜金型12は、打抜孔12bの周縁に沿った形状に被加工材1を打ち抜くように構成されたダイとして機能する。打抜孔12b内には、ストリッパ15及び弾性体17が配置されている。ストリッパ15は、弾性体17によって背面部材11に向けて付勢されている。このような打抜装置10を用いて被加工材1を打抜加工すると、
図8に示されるように、被加工材1が打抜孔12bの周縁に沿って打ち抜かれる。この際、打抜部材Wがストリッパ15及び弾性体17によって弾性的に支持されているので、打抜部材Wがストリッパ15と背面部材11との間で挟持される。
【0036】
図7及び
図8に示される例において、背面部材11の外形は、打抜孔12bの周縁に沿った形状を呈しており、打抜孔12bの周縁よりも大きくてもよい。すなわち、上方から見たときに、打抜孔12bの周縁は、背面部材11の輪郭よりも若干内側を、当該輪郭に沿って延びていてもよい。この場合、被加工材1のうち背面部材11の中央部と接触する部分に加わる応力は打抜孔12bの存在によって軽減される一方で、被加工材1のうち打抜孔12bの周縁部と接触する部分には、背面部材11の周縁部の存在によって大きな応力が作用する。従って、打抜孔12bの周縁近傍に応力が集中するので、打抜孔12bに対応する形状の打抜部材Wをより精度よく製造することが可能となる。
【0037】
(4)
図1及び
図5に例示される装置は、ストリッパ15を備えていなくてもよい。また、
図7に例示される装置において、打抜孔12b内にストリッパ15及び弾性体が配置されていなくてもよい。
図7及び
図8に示される例において、背面部材11は、クッション材2の全面又は大部分と重なり合っていてもよい。
【0038】
(5)
図9(a)に例示されるように、被加工材1及びクッション材2が帯状を呈しており、それぞれが送出ロール20,21(搬送機構)によって間欠的に送り出されながら、打抜装置10によって被加工材1が打抜加工されてもよい。具体的には、送出ロール20による被加工材1の搬送方向と、送出ロール20によるクッション材2の搬送方向とは交差しており、被加工材1とクッション材2との交差部分において被加工材1及びクッション材2が背面部材11と打抜金型12とで挟圧されてもよい。この場合、複数の打抜部材Wを効率的に製造することが可能となる。なお、送出ロール20,21は、コントローラCtrからの指示に基づいて駆動する。
【0039】
図9(a)に例示されるように、被加工材1がクッション材2の上方に位置している場合には、被加工材1とクッション材2との交差部分において打ち抜かれた打抜部材Wは、クッション材2に載置された状態で送出ロール21によって下流側に順次搬送される。また、打抜部材Wの打抜加工に伴い貫通孔1aが形成された被加工材1の領域も、送出ロール20によって下流側に順次搬送される。
【0040】
図9(b)に例示されるように、一つのクッション材2に対して複数の被加工材1が交差するように、被加工材1及びクッション材2が搬送されてもよい。図示はしていないが、複数のクッション材2に対して一つ又は複数の被加工材1が交差するように、被加工材1及びクッション材2が搬送されてもよい。図示はしていないが、二組以上の被加工材1及びクッション材2が上下に並んでおり、各組の交差部分が上下方向で重なり合うように、被加工材1及びクッション材2が搬送されてもよい。
【0041】
(6)
図10(a)に例示されるように、被加工材1及びクッション材2が帯状を呈しており、互いの長手方向が一致するように重ね合わされた被加工材1及びクッション材2が送出ロール20(搬送機構)によって間欠的に送り出されながら、打抜装置10によって被加工材1が打抜加工されてもよい。この場合も、複数の打抜部材Wを効率的に製造することが可能となる。なお、送出ロール20は、コントローラCtrからの指示に基づいて駆動する。
【0042】
図10(a)に例示されるように、被加工材1がクッション材2の上方に位置している場合には、被加工材1から打ち抜かれた打抜部材Wは、クッション材2に載置された状態で送出ロール21によって下流側に順次搬送される。このとき、下流側において被加工材1とクッション材2とを別々に巻き取ることにより、被加工材1から打ち抜かれた打抜部材Wがクッション材2に載置された状態で、打抜加工後の被加工材1とクッション材2とを分離することができる。
【0043】
(7)
図10(b)に例示されるように、背面部材11及び打抜金型12が円柱状を呈していてもよい。この場合、互いの長手方向が一致するように重ね合わされた帯状の被加工材1及びクッション材2が背面部材11及び打抜金型12によって送り出されながら挟圧され、打抜金型12によって被加工材1が打抜加工される。なお、背面部材11及び打抜金型12の少なくとも一方は、コントローラCtrからの指示に基づいて駆動する。
【0044】
(8)
図11に例示されるように、重ね合わされた状態の被加工材1及びクッション材2をXYステージ等により2方向に順次搬送しながら、打抜装置10によって被加工材1を打抜加工してもよい。あるいは、打抜装置10の背面部材11及び打抜金型12が2方向(例えば、XY方向)に順次移動しながら、重ね合わされた状態の被加工材1及びクッション材2を挟持して、被加工材1を打抜加工してもよい。
【0045】
(9)
図12に例示されるように、被加工材1及びクッション材2が円形状を呈しており、重ね合わされた状態の被加工材1及びクッション材2を、図示しない回転機構により間欠的に回転させながら、打抜装置10によって被加工材1を打抜加工してもよい。この場合、被加工材1の周方向において、被加工材1から打抜部材Wが順次打ち抜かれる。そのため、複数の打抜部材Wを効率的に製造することが可能となる。なお、被加工材1及びクッション材2が回転せずに、背面部材11及び打抜金型12が被加工材1の周縁部の上方を移動してもよい。
【0046】
(10)背面部材11及び打抜金型12の一方が上方に位置しており、他方が下方に位置していてもよい。
【0047】
(11)駆動機構14は、背面部材11及び打抜金型12の少なくとも一方を駆動するように構成されていてもよい。
【0048】
(12)例えば、積層鉄心、半導体パッケージの内部配線として用いられるリードフレーム、燃料電池用のセパレータなどの種々の成形体に本技術を適用してもよい。
【0049】
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る成形体(W)の製造方法は、被加工材(1)と、被加工材(1)よりも高い柔軟性を有するクッション材(2)とを重ね合わせることと、被加工材(1)と対面するように打抜金型(12)を配置することと、クッション材(2)と対面するように背面部材(11)を配置することと、打抜金型(12)と背面部材(11)とで被加工材(1)及びクッション材(2)を挟圧して、打抜金型(12)をクッション材(2)にめり込ませることにより、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くこととを含む。この場合、被加工材を打ち抜く従来の方法とは異なり、ダイとパンチとの位置合わせが不要となる。そのため、より簡易に被加工材を打ち抜くことが可能となる。また、ダイ孔とパンチとの位置合わせが不要であるので、被加工材を搬送するためのパイロット孔等を被加工材に設ける必要がなくなる。そのため、被加工材における打ち抜きのレイアウトの自由度が高まるので、歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0050】
ところで、従来の方法では、ダイとパンチとの間の隙間(クリアランス)を被加工材の厚さの10%程度に設定する必要がある。すなわち、薄い被加工材を打ち抜く場合には、被加工材が薄くなるのに比例してクリアランスが小さくなってしまう。そのため、ダイとパンチとを極めて精密に位置合わせしなければならない。従って、従来のようにパンチ及びダイで薄い被加工材を打ち抜こうとすると、製造コストが嵩んでしまいうる。しかしながら、例1によれば、ダイとパンチとの位置合わせが必要ないので、成形体の製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0051】
例2.例1の方法において、被加工材(1)を打ち抜くことは、被加工材(1)と対面するように配置されたストリッパ(15)によって被加工材(1)及びクッション材(2)を背面部材(11)との間で挟持した状態で、打抜金型(12)と背面部材(11)とで被加工材(1)及びクッション材(2)を挟圧して、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くことを含んでいてもよい。この場合、打抜金型によって被加工材が加圧される際に、打抜金型の近傍における被加工材の反り上がりがストリッパによって抑制される。そのため、打抜金型の加圧力が被加工材により適切に伝わる。従って、打抜金型に対応する形状の成形体を、より精度よく製造することが可能となる。
【0052】
例3.例1又は例2の方法において、打抜金型(12)はその外形に沿う形状に被加工材(1)を打ち抜くように構成されたパンチであり、背面部材(11)には打抜金型(12)の外形よりも小さい開口部(11a)が設けられていてもよい。この場合、被加工材のうちパンチの周縁部と接触する部分は、背面部材の存在によって特に大きな応力が打抜金型から作用する。そのため、打抜金型の周縁近傍に応力が集中するので、打抜金型に対応する形状の成形体をさらに精度よく製造することが可能となる。
【0053】
例4.例1又は例2の方法において、打抜金型(12)は、打抜孔(12b)の周縁に沿う形状に被加工材(1)を打ち抜くように構成されたダイであり、背面部材(11)の外形は、打抜孔(12b)よりも大きく且つ打抜金型(12)の外形よりも小さくてもよい。この場合、被加工材のうち打抜孔の周縁と接触する部分の近傍に対して、大きな応力が打抜金型から作用する。そのため、打抜孔の周縁近傍に応力が集中するので、打抜金型に対応する形状の成形体をさらに精度よく製造することが可能となる。
【0054】
例5.例1〜例4のいずれかの方法において、被加工材(1)及びクッション材(2)は帯状を呈しており、被加工材(1)を打ち抜くことは、互いの長手方向が一致するように重ね合わされた被加工材(1)及びクッション材(2)を所定方向に間欠的に搬送しながら、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を順次打ち抜くこと、又は、被加工材(1)とクッション材(2)とが交差するように被加工材(1)及びクッション材(2)を所定方向に間欠的にそれぞれ搬送しながら、被加工材(1)とクッション材(2)との交差部分において打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を順次打ち抜くことを含んでいてもよい。この場合、複数の成形体を効率的に製造することが可能となる。
【0055】
例6.例1〜例4のいずれかの方法において、被加工材(1)及びクッション材(2)は円板状を呈しており、被加工材(1)を打ち抜くことは、被加工材(1)及びクッション材(2)を間欠的に回転させながら、被加工材(1)の周方向において順次、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くことを含んでいてもよい。この場合、複数の成形体を効率的に製造することが可能となる。
【0056】
例7.本開示の一つの例に係る成形体(W)の製造装置(10)は、被加工材(1)と対面するように配置される打抜金型(12)と、クッション材(2)と対面するように配置される背面部材(11)と、打抜金型(12)及び背面部材(11)の少なくとも一方を駆動して、打抜金型(12)及び背面部材(11)を近接及び離間させるように構成された駆動機構(14)と、制御部(Ctr)とを備える。制御部(Ctr)は、被加工材(1)及びクッション材(2)が重ね合わされた状態で、打抜金型(12)と背面部材(11)とで被加工材(1)及びクッション材(2)を挟圧して、打抜金型(12)をクッション材(2)にめり込ませることにより、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くように駆動機構(14)を制御する処理を実行する。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。
【0057】
例8.例7の装置(10)は、被加工材(1)と対面するように配置されたストリッパ(15)をさらに備え、制御部(Ctr)は、重ね合わされた被加工材(1)及びクッション材(2)をストリッパ(15)と背面部材(11)との間で挟持した状態で、打抜金型(12)と背面部材(11)とで被加工材(1)及びクッション材(2)を挟圧して、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くように駆動機構(14)を制御してもよい。この場合、例2と同様の作用効果が得られる。
【0058】
例9.例7又は例8の装置(10)において、打抜金型(12)はその外形に沿う形状に被加工材(1)を打ち抜くように構成されたパンチであり、背面部材(11)には打抜金型(12)の外形よりも小さい開口部(11a)が設けられていてもよい。この場合、例3と同様の作用効果が得られる。
【0059】
例10.例7又は例8の装置(10)において、打抜金型(12)は、打抜孔(12b)の周縁に沿う形状に被加工材(1)を打ち抜くように構成されたダイであり、背面部材(11)の外形は、打抜孔()11bよりも大きく且つ打抜金型(12)の外形よりも小さくてもよい。この場合、例4と同様の作用効果が得られる。
【0060】
例11.例7〜例10のいずれかの装置(10)は、帯状を呈する被加工材(1)及びクッション材(2)を所定方向に搬送するように構成された搬送機構(20)をさらに備え、制御部(Ctr)は、互いの長手方向が一致するように重ね合わされた被加工材(1)及びクッション材(2)を所定方向に間欠的に搬送しながら、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を順次打ち抜くように駆動機構(14)及び搬送機構(20,21)を制御するか、又は、被加工材(1)とクッション材(2)とが交差するように被加工材(1)及びクッション材(2)を所定方向に間欠的にそれぞれ搬送しながら、被加工材(1)とクッション材(2)との交差部分において打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を順次打ち抜くように駆動機構(14)及び搬送機構(20)を制御してもよい。この場合、例5と同様の作用効果が得られる。
【0061】
例12.例7〜例10のいずれかの装置(10)は、円板状を呈する被加工材(1)及びクッション材(2)を回転させるように構成された回転機構をさらに備え、制御部(Ctr)は、重ね合わされた状態の被加工材(1)及びクッション材(2)を間欠的に回転させながら、被加工材(1)の周方向において順次、打抜金型(12)に対応する形状に被加工材(1)を打ち抜くように駆動機構(14)及び回転機構を制御してもよい。この場合、例6と同様の作用効果が得られる。