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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-26996(P2020-26996A)
(43)【公開日】2020年2月20日
(54)【発明の名称】携帯機位置推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20200124BHJP
   G01S 13/76 20060101ALI20200124BHJP
【FI】
   G01S5/14
   G01S13/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-151310(P2018-151310)
(22)【出願日】2018年8月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】楠本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三治 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 卓士
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC11
5J070AB01
5J070AC01
5J070AC02
5J070AE09
5J070AF03
5J070BC15
(57)【要約】
【課題】位置推定のための携帯機と車載システムとの無線通信の実行回数を抑制可能な携帯機位置推定システムを提供する。
【解決手段】車載システム1は携帯機2とインパルス信号を送受信するホスト機と、インパルス信号の受信のみを行う複数の傍聴機と、を備える。ホスト機は、携帯機2に向けたインパルス信号を送信してから、携帯機2が発したインパルス信号を受信するまでのラウンドトリップ時間を計測して位置推定装置11に報告する。傍聴機は、ホスト機が発したインパルス信号を受信してから携帯機2が発したインパルス信号を受信するまでのパルス受信間隔を計測して位置推定装置11に報告する。位置推定装置11は、ラウンドトリップ時間に基づいて携帯機−ホスト機間の信号伝搬時間である第1伝搬時間を特定する。また、パルス受信間隔と第1伝搬時間に基づいて携帯機−傍聴機間の信号の伝搬時間である第2伝搬時間を特定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている車載システム(1)と、前記車両のユーザに携帯される携帯機(2)とが所定の通信方式に準拠した無線通信を実施することによって前記車両に対する前記携帯機の相対位置を推定する携帯機位置推定システムであって、
前記車載システムは、
前記携帯機と無線信号を送受信可能に構成された通信モジュールである送受信機(12X)と、
前記携帯機及び前記送受信機から発せられる無線信号を受信可能に構成されている、複数の傍聴機(12A、12B、12C)と、
前記送受信機での前記携帯機との通信結果と、複数の前記傍聴機のそれぞれでの無線信号の受信状況に基づいて前記携帯機の位置を推定する位置推定部(F3)と、を備え、
前記送受信機は、前記携帯機に向けた無線信号として所定の応答要求信号を送信するように構成されており、
前記携帯機は、前記送受信機からの前記応答要求信号を受信した場合に応答信号を返送するように構成されており、
前記位置推定部は、
前記送受信機が前記応答要求信号を送信してから前記送受信機が前記携帯機からの前記応答信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間に基づいて、前記送受信機から前記携帯機までの無線信号の伝搬時間である第1伝搬時間を特定する第1伝搬時間特定部(S105)と、
複数の前記傍聴機のそれぞれについて、前記携帯機から前記傍聴機までの無線信号の伝搬時間である第2伝搬時間を、前記傍聴機が前記応答要求信号を受信してから前記応答信号を受信するまでの時間である信号受信間隔と前記ラウンドトリップ時間とに基づいて特定する第2伝搬時間特定部(S107)と、
前記第1伝搬時間特定部によって特定されている前記第1伝搬時間と、前記第2伝搬時間特定部によって特定されている前記第2伝搬時間とに基づいて前記携帯機の位置を推定する位置推定処理部(S108)と、を備える携帯機位置推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記送受信機が送信した無線信号が前記傍聴機で受信されるまでの時間である車載機間伝搬時間の想定値と、前記携帯機が前記応答要求信号を受信してから前記応答信号を返送するまでに要する時間である応答処理時間の想定値を記憶しているパラメータ記憶部(112)と、を備え、
前記第1伝搬時間特定部は、前記ラウンドトリップ時間から前記応答処理時間の想定値を減算した値を2で除算することにより前記第1伝搬時間を算出し、
前記第2伝搬時間特定部は、前記信号受信間隔に対して前記車載機間伝搬時間の想定値を加算するとともに、前記第1伝搬時間を減算し、さらに、前記応答処理時間の想定値を減算することにより、前記第2伝搬時間を算出するように構成されている携帯機位置推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記携帯機は、前記応答要求信号を受信してから前記応答信号を返送するまでにかかった前記応答処理時間を計測するとともに、その計測した前記応答処理時間を示す無線信号を処理時間通知信号として送信するように構成されており、
前記位置推定部は、前記携帯機から送信された前記処理時間通知信号を受信した場合には、当該処理時間通知信号に示されている前記応答処理時間を実処理時間として保持する応答処理時間保持部(113)を備え、
前記第1伝搬時間特定部は、前記応答処理時間保持部が前記実処理時間を保持している場合には、予め登録されている前記応答処理時間の想定値の代わりに当該実処理時間を用いて前記第1伝搬時間を特定し、
前記第2伝搬時間特定部は、前記応答処理時間保持部が前記実処理時間を保持している場合には、予め登録されている前記応答処理時間の想定値の代わりに、当該実処理時間を用いて前記第2伝搬時間を特定するように構成されている携帯機位置推定システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記送受信機を複数備えており、
複数の前記送受信機のうちの1つを、前記携帯機にむけて前記応答要求信号を送信する役割を担うホスト機に設定するとともに、当該ホスト機以外の前記送受信機は、前記傍聴機として機能させる役割設定部(F2)を備え、
前記役割設定部は、所定の周期で前記ホスト機とする前記送受信機を変更するように構成されている携帯機位置推定システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記送受信機は、前記ラウンドトリップ時間を計測し、その計測結果を示すデータを前記位置推定部に提供するように構成されており、
複数の前記傍聴機はそれぞれ、前記信号受信間隔を計測し、その計測結果を示すデータを前記位置推定部に提供するように構成されており、
前記第1伝搬時間特定部は、前記送受信機から提供される前記ラウンドトリップ時間に基づいて前記第1伝搬時間を特定し、
前記第2伝搬時間特定部は、前記傍聴機毎の前記第2伝搬時間を、対象とする前記傍聴機から提供された前記信号受信間隔と、前記第1伝搬時間とに基づいて特定するように構成されている携帯機位置推定システム。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記送受信機は、前記応答要求信号を送信した時刻を示すデータ、及び、前記携帯機からの前記応答信号を受信した時刻を示すデータを前記位置推定部に逐次提供するように構成されており、
複数の前記傍聴機はそれぞれ、前記応答要求信号を受信した時刻を示すデータ、及び、前記応答信号を受信した時刻を示すデータを前記位置推定部に逐次提供するように構成されており、
前記第1伝搬時間特定部は、前記送受信機から提供されるデータに基づいて、前記ラウンドトリップ時間を特定するとともに、当該ラウンドトリップ時間に基づいて前記第1伝搬時間を特定するように構成されており、
前記第2伝搬時間特定部は、前記傍聴機から提供されるデータに基づいて、前記傍聴機毎の前記信号受信間隔を特定し、前記傍聴機毎の前記第2伝搬時間を、前記傍聴機毎の前記信号受信間隔と、前記第1伝搬時間とに基づいて特定するように構成されている携帯機位置推定システム。
【請求項7】
請求項6に記載の携帯機位置推定システムであって、
前記傍聴機は、前記応答信号を受信した時刻を示すデータは前記位置推定部に提供する一方、前記応答要求信号を受信した時刻を示すデータについては前記位置推定部に提供しない動作モードを備えている携帯機位置推定システム。
【請求項8】
車両に搭載されている車載システム(1)と、前記車両のユーザに携帯される携帯機(2)とが所定の通信方式に準拠した無線通信を実施することによって前記車両に対する前記携帯機の相対位置を推定する携帯機位置推定システムであって、
前記携帯機は、前記車載システムに対して応答信号の返送を要求する無線信号である応答要求信号を送信するとともに、前記応答信号を受信した場合には、前記応答要求信号を受信してから前記応答信号を受信するための時間であるラウンドトリップ時間を示す無線信号である時間差通知信号を前記車載システムに送信するように構成されており、
前記車載システムは、
所定の通信方式にて前記携帯機と無線信号を送受信可能に構成されている通信モジュールである送受信機(12X)と、
前記携帯機及び前記送受信機から発せられる無線信号を受信可能に構成されている、複数の傍聴機(12A、12B、12C)と、
前記送受信機での前記携帯機との通信結果と、複数の前記傍聴機のそれぞれでの無線信号の受信状況に基づいて前記携帯機の位置を推定する位置推定部(F3)と、を備え、
前記送受信機は、前記携帯機からの前記応答要求信号を受信した場合には前記応答信号を返送するように構成されており、
前記位置推定部は、
前記時間差通知信号に示されている前記ラウンドトリップ時間に基づいて、前記送受信機から前記携帯機までの無線信号の伝搬時間である第1伝搬時間を特定する第1伝搬時間特定部(S105)と、
複数の前記傍聴機のそれぞれについて、前記携帯機から前記傍聴機までの無線信号の伝搬時間である第2伝搬時間を、前記傍聴機が前記応答要求信号を受信してから前記応答信号を受信するまでの時間である信号受信間隔と前記ラウンドトリップ時間とに基づいて特定する第2伝搬時間特定部(S107)と、
前記第1伝搬時間特定部によって特定されている前記第1伝搬時間と、前記第2伝搬時間特定部によって特定されている前記第2伝搬時間とに基づいて前記携帯機の位置を推定する位置推定処理部(S108)と、を備える携帯機位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、携帯機から車両に搭載されている通信機までの信号の伝搬時間に基づいて、車両に対する携帯機の位置を推定する携帯機位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車載システムとユーザによって携帯される携帯機とが無線通信を実施することにより、車両に対する携帯機の位置を推定する構成(つまり携帯機位置推定システム)が種々提案されている。
【0003】
また、特許文献1には車載システムと携帯機とがUWB(Ultra Wide Band)通信可能に構成されており、車載システムが、UWB通信で用いられるインパルス信号を送信してから携帯機からの応答信号を受信するまでの時間(以降、ラウンドトリップ時間)に基づいて車両に対する携帯機の距離を推定する構成が開示されている。便宜上、車載システムが備える、携帯機と無線通信を実施するための構成を車載通信機と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6093647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように携帯機−車載通信機間の信号の伝搬時間を用いて、車両に対する携帯機の相対位置を推定するためには、車載システムが車載通信機を複数(少なくとも3以上)備えていることを前提として、各車載通信機から携帯機までの距離をそれぞれ推定する必要がある。各車載通信機から携帯機までの距離を推定するためには、各車載通信機が個別に携帯機と無線通信を実施する必要がある。携帯機と車両とが通信を実施する回数が増えるほど、位置推定に要する時間は長くなるとともに、通信にかかる消費電力が増大してしまう。
【0006】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、携帯機から車載システムまでの無線信号の伝搬時間に基づいて携帯機の位置を推定する携帯機位置推定システムにおいて、位置推定のための携帯機と車載システムとの無線通信の実行回数を抑制可能な携帯機位置推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための第1構成としての携帯機位置推定システムは、車両に搭載されている車載システム(1)と、車両のユーザに携帯される携帯機(2)とが所定の通信方式に準拠した無線通信を実施することによって車両に対する携帯機の相対位置を推定する携帯機位置推定システムであって、車載システムは、携帯機と無線信号を送受信可能に構成された通信モジュールである送受信機(12X)と、携帯機及び送受信機から発せられる無線信号を受信可能に構成されている、複数の傍聴機(12A、12B、12C)と、送受信機での携帯機との通信結果と、複数の傍聴機のそれぞれでの無線信号の受信状況に基づいて携帯機の位置を推定する位置推定部(F3)と、を備え、送受信機は、携帯機に向けた無線信号として所定の応答要求信号を送信するように構成されており、携帯機は、送受信機からの応答要求信号を受信した場合に応答信号を返送するように構成されており、位置推定部は、送受信機が応答要求信号を送信してから送受信機が携帯機からの応答信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間に基づいて、送受信機から携帯機までの無線信号の伝搬時間である第1伝搬時間を特定する第1伝搬時間特定部(S105)と、複数の傍聴機のそれぞれについて、携帯機から傍聴機までの無線信号の伝搬時間である第2伝搬時間を、傍聴機が応答要求信号を受信してから応答信号を受信するまでの時間である信号受信間隔とラウンドトリップ時間とに基づいて特定する第2伝搬時間特定部(S107)と、第1伝搬時間特定部によって特定されている第1伝搬時間と、第2伝搬時間特定部によって特定されている第2伝搬時間とに基づいて携帯機の位置を推定する位置推定処理部(S108)と、を備える。
【0008】
以上の構成によれば、位置推定部は、送受信機と携帯機とが無線信号の送受信を1回行うことによって、送受信機から携帯機までの信号の伝搬時間である第1伝搬時間だけでなく、携帯機から各傍聴機までの信号の伝搬時間である第2伝搬時間を特定することができる。第1伝搬時間は、送受信機から携帯機までの距離を示す指標として機能するとともに、傍聴機毎の第2伝搬時間は、各傍聴機から携帯機までの距離の指標として機能する。故に、位置推定部は、第1伝搬時間と傍聴機毎の第2伝搬時間とに基づいて携帯機の位置は推定可能である。そして、上記構成によれば、携帯機の位置を推定するための種々の情報(具体的には第1伝搬時間と第2伝搬時間)は、1回の無線通信によって揃う。つまり、上記構成によれば、携帯機から車載システムまでの無線信号の伝搬時間に基づいて携帯機の位置を推定する携帯機位置推定システムにおいて、位置推定のための携帯機と車載システムとの無線通信の実行回数を抑制できる。
【0009】
また、上記目的を達成するための第2構成としての携帯機位置推定システムは、車両に搭載されている車載システム(1)と、車両のユーザに携帯される携帯機(2)とが所定の通信方式に準拠した無線通信を実施することによって車両に対する携帯機の相対位置を推定する携帯機位置推定システムであって、携帯機は、車載システムに対して応答信号の返送を要求する無線信号である応答要求信号を送信するとともに、応答信号を受信した場合には、応答要求信号を受信してから応答信号を受信するための時間であるラウンドトリップ時間を示す無線信号である時間差通知信号を車載システムに送信するように構成されており、車載システムは、所定の通信方式にて携帯機と無線信号を送受信可能に構成されている通信モジュールである送受信機(12X)と、携帯機及び送受信機から発せられる無線信号を受信可能に構成されている、複数の傍聴機(12A、12B、12C)と、送受信機での携帯機との通信結果と、複数の傍聴機のそれぞれでの無線信号の受信状況に基づいて携帯機の位置を推定する位置推定部(F3)と、を備え、送受信機は、携帯機からの応答要求信号を受信した場合には応答信号を返送するように構成されており、位置推定部は、時間差通知信号に示されているラウンドトリップ時間に基づいて、送受信機から携帯機までの無線信号の伝搬時間である第1伝搬時間を特定する第1伝搬時間特定部(S105)と、複数の傍聴機のそれぞれについて、携帯機から傍聴機までの無線信号の伝搬時間である第2伝搬時間を、傍聴機が応答要求信号を受信してから応答信号を受信するまでの時間である信号受信間隔とラウンドトリップ時間とに基づいて特定する第2伝搬時間特定部(S107)と、第1伝搬時間特定部によって特定されている第1伝搬時間と、第2伝搬時間特定部によって特定されている第2伝搬時間とに基づいて携帯機の位置を推定する位置推定処理部(S108)と、を備える。
【0010】
以上の第2構成によっても、第1構成と同様に、位置推定部は、送受信機と携帯機とが無線信号の送受信を1回行うことによって第1伝搬時間と、傍聴機毎の第2伝搬時間を特定できる。故に、上記第2構成もまた、第1構成と同様の効果を奏する。
【0011】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】携帯機位置推定システム100の全体構成を概略的に示したブロック図である。
図2】車載通信機12の構成を示すブロック図である。
図3】位置推定装置11の機能ブロック図である。
図4】車載システム1と携帯機2との通信態様を示す概念図である。
図5】位置推定装置11の作動を説明するフローチャートである。
図6】携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
図7】ラウンドトリップ時間Tpとパルス受信間隔Tqの関係を説明するための図である。
図8】携帯機2の位置の推定方法を説明するための図である。
図9】変形例1における携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
図10】変形例2における携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
図11】変形例5における携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
図12】変形例6における携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
図13】変形例9における携帯機2、ホスト機、及び傍聴機の作動を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<携帯機位置推定システム100の概略的な構成について>
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本開示の携帯機位置推定システム100の概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように携帯機位置推定システム100は、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯機2と、を備えている。
【0014】
車載システム1と携帯機2は、所定の周波数帯の電波を用いて双方向に無線通信を実施するための構成を有している。ここでは一例として車載システム1と携帯機2は、UWB−IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信を実施可能に構成されている。すなわち、車載システム1と携帯機2は、超広帯域(UWB :Ultra Wide Band)通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ns)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
【0015】
なお、UWB通信に利用できる周波数帯(以降、UWB帯)としては、3.2GHz〜10.6GHzや、3.4GHz〜4.8GHz、7.25GHz〜10.6GHz、22GHz〜29GHz等がある。これら種々の周波数帯のうち、本実施形態におけるUWB帯とは、一例として3.2GHz〜10.6GHz帯を指すものとする。つまり、本実施形態におけるインパルス信号は3.2GHz〜10.6GHz帯の電波を用いて実現される。インパルス信号に使用される周波数帯は、当該携帯機位置推定システム100が使用される国に応じて適宜選定されればよい。なお、インパルス信号の帯域幅は、500MHz以上であればよく、1.5GHz以上の帯域幅を備えていても良い。
【0016】
UWB−IR通信の変調方式としては、パルスの発生位置で変調を行うPPM(pulse position modulation)方式など、多様なものを採用可能である。具体的には、オンオフ変調(OOK:On Off Keying)方式や、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)、パルス振幅変調(PAM:Pulse-Amplitude Modulation)方式、パルス符号変調(PCM:Pulse-Code Modulation)などを採用可能である。なお、オンオフ変調方式はインパルス信号の存在/欠如によって情報(例えば0と1)を表現する方式であり、パルス幅変調方式はパルス幅によって情報を表現する方式である。パルス振幅変調方式は、インパルス信号の振幅によって情報を表現する方式である。パルス符号変調方式はパルスの組み合わせによって情報を表現する方式である。
【0017】
以降では便宜上、UWB通信を実施可能な通信機のことをUWB通信機と称する。UWB通信機には、携帯機2のほか、車載システム1が備える後述の車載通信機12が含まれる。携帯機2は、車載システム1からのインパルス信号を受信した場合、応答信号としてインパルス信号を返送するように構成されている。以下、車載システム1及び携帯機2の具体的な構成について順に説明する。
【0018】
<携帯機2の構成について>
まずは、携帯機2の構成及び作動について説明する。携帯機2は種々の用途に供される通信端末を援用して実現することができる。例えば携帯機2はスマートフォンである。携帯機2は、タブレット端末などの情報処理端末であってもよい。また、携帯機2は、従来スマートキーとして知られている長方形型、楕円型(フォブタイプ)、又はカード型の小型デバイスであってもよい。その他、携帯機2は、ユーザの指や腕等に装着されるウェアラブルデバイスとして構成されていてもよい。
【0019】
携帯機2は、図1に示すように、携帯機側受信回路21、携帯機側制御部22、及び携帯機側送信回路23を備える。携帯機側制御部22は、携帯機側受信回路21及び携帯機側送信回路23のそれぞれと通信可能に接続されている。
【0020】
携帯機側受信回路21は、UWB帯のインパルス信号を受信するための構成である。携帯機側受信回路21は、インパルス信号を受信すると、その信号を復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号を携帯機側制御部22に出力する。携帯機側受信回路21は、車載システム1からの無線信号を受信するための構成に相当する。
【0021】
携帯機側制御部22は、携帯機側受信回路21から受信信号が入力されると、この信号に対応する応答信号に相当するベースバンド信号を生成し、このベースバンド信号を携帯機側送信回路23に出力する。携帯機側制御部22が携帯機側送信回路23に出力したベースバンド信号は、携帯機側送信回路23にて変調され無線信号として送信される。
【0022】
携帯機側制御部22は、CPU、RAM、及びROM等を備えた、コンピュータを用いて実現されればよい。なお、携帯機側制御部22は、1つ又は複数のICを用いて実現されていても良い。加えて、携帯機側制御部22は、MPUやGPUを用いて実現されていても良い。なお、後述の通り携帯機側送信回路23は、ベースバンド信号をインパルス信号に変換して送信する構成である。故に、携帯機側制御部22は、携帯機側受信回路21がインパルス信号を受信した場合に、携帯機側送信回路23に応答信号としてのインパルス信号を送信させる構成に相当する。
【0023】
携帯機側送信回路23は、携帯機側制御部22から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつ送信信号を生成し、この送信信号をUWB通信により送信する。携帯機側送信回路23は、車載システム1への応答信号を送信するための構成に相当する。なお、携帯機2が車載システム1からのインパルス信号を受信してから応答信号としてのインパルス信号を送信するまでには所定の時間(以降、応答処理時間Tα)がかかる。応答処理時間Tαは、携帯機2のハードウェア構成に応じて定まる。応答処理時間Tαの想定値は、試験等によって予め特定しておくことができる。
【0024】
その他、携帯機2は動作モードとして、アクティブモードとスリープモードとを備えていても良い。アクティブモードは車載システム1から送信される信号に対する応答信号の生成等の処理(受信及び応答に係る処理)を実施可能な動作モードである。スリープモードは、携帯機側制御部22が備える機能の一部又は全部を停止することで、消費電力を低減する動作モードである。例えばスリープモードは、図示しないクロック発振器の動作を停止するモードとすることができる。携帯機側制御部22は、スリープモード中において携帯機側受信回路21から、インパルス信号に相当する電気信号が入力された場合にアクティブモードへと移行するように構成されていればよい。
【0025】
<車載システム1の構成について>
次に、車載システム1の構成について説明する。車載システム1は図1に示すように、位置推定装置11と、複数の車載通信機12を備える。位置推定装置11は、各車載通信機12での携帯機2からの無線信号の受信状況に基づいて、携帯機2の位置を推定する処理(以降、位置推定処理)を実行する電子制御装置(いわゆるECU:Electronic Control Unit)である。位置推定装置11は、CPU111、フラッシュメモリ112、RAM113、I/O、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えた、コンピュータとして構成されている。なお、位置推定装置11は、CPUの代わりに、GPUやMPUを用いて実現されていても良い。さらにCPUやGPU、MPUを組み合わせて実現されていてもよい。
【0026】
フラッシュメモリ112は、不揮発性且つ書き換え可能なメモリである。フラッシュメモリ112には、コンピュータを位置推定装置11として機能させるためのプログラム(以降、車両用プログラム)等が格納されている。車両用プログラムの具体的な記憶媒体としては、多様な非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を採用可能である。CPUが車両用プログラムを実行することは、車両用プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。なお、フラッシュメモリ112には、その他、車両Hvにおける各車載通信機12の搭載位置を示すデータ(以降、通信機位置データ)や、携帯機2での応答処理時間Tαの想定値、車載機間伝搬時間T1Aの想定値などが保存されている。フラッシュメモリ112はパラメータ記憶部に相当する。想定値は、シミュレーションによって定まる設計値であってもよいし、実試験によって測定された値であってもよい。
【0027】
位置推定装置11は、複数の車載通信機12のそれぞれと、例えば、専用の信号線を介して相互通信可能に接続されている。なお、位置推定装置11は、複数の車載通信機12のそれぞれと車両内に構築されている通信ネットワークを介して相互通信可能に接続されていてもよい。
【0028】
また、位置推定装置11は、通信ネットワークを介して、図示しないボディECUやエンジンECUとも相互通信可能に接続されている。ボディECUは、車体制御に関する各種の処理を実行するECUである。例えばボディECUは、位置推定装置11からの指示に基づき、各ドアに設けられたドアロックモータを駆動し、各ドアの施錠及び開錠を行う。エンジンECUは、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECUは、位置推定装置11からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは動力源としてエンジンとモータを備える、いわゆるハイブリッド車であってもよいし、モータのみを動力源として備える電気自動車であってもよい。
【0029】
車載通信機12は、携帯機2と無線通信(ここではUWB通信)を実施するための通信機である。各車載通信機12の動作は位置推定装置11によって制御される。複数の車載通信機12のそれぞれは、車両Hvに搭載されている他の車載通信機12ともUWB通信を実施可能に構成されている。つまり、各車載通信機12は、携帯機2及び他の車載通信機12と無線通信可能に構成されている。車載システム1は車載通信機12を少なくとも3つ備えていればよい。複数の車載通信機12のうちの少なくとも1つは、車両Hvの車室内に配置されていることが好ましい。また、各車載通信機12は、車室内及び車室外を見通せる位置に配置されていることが好ましい。
【0030】
本実施形態の車載システム1は、車載通信機12として、右側通信機12A、左側通信機12B、後部通信機12C、及び前部通信機12Xを備える。右側通信機12Aは、例えば車両右側のCピラーに配置されている。Cピラーは前から3番目のピラーである。左側通信機12Bは、例えば車両左側のCピラーに配置されている。後部通信機12Cはリアウインドウの上端部に配置されている。前部通信機12Xは、オーバヘッドコンソールに配置されている。
【0031】
各車載通信機12は、車室内と車室外の両方に対して見通しが良い位置に配置されていることが好ましい。これは以下の理由による。まず前提として、UWB通信で使用される電波は金属によって反射(換言すれば遮蔽)されやすいため、遮蔽物に対しては回折して伝搬する。本実施形態のように電波の伝搬時間を用いて測距を行う構成においては、回折による距離の誤差が生じうる。また、電波の伝搬時間を特定するためには他のUWB通信機から送信された信号を受信する必要があるが、遮蔽物による回折により、電波強度は大幅に低下し得る。つまり、本実施形態のように電波の伝搬時間を用いて測距を行う構成においては、回折に由来する電波強度の減衰より、他のUWB通信機から送信された信号の受信は正常に受信可能なように構成されていることが好ましい。
【0032】
以上の観点から、各車載通信機12は、車室内と車室外の両方の見通しの良い場所に搭載されることが好ましい。なお、車室内と車室外の両方に対して見通しの良い場所とは、室内天井、及び各種ピラー(特に窓部の高さに位置する部分)である。つまり、上述したように各種車載通信機12の配置態様は、各車載通信機12を車室内及び車室外を見通しやすい位置に配置した態様の一例に相当する。
【0033】
なお、車載通信機12の設置態様(具体的には設置位置や設置数)は上述した態様に限らない。例えば右側通信機12Aは、車両右側のAピラーや、前部座席用のドアに配置されているアウタードアハンドル付近に設けられていてもよい。左側通信機12Bもまた、車両左側のAピラーや、前部座席用のドアに配置されているアウタードアハンドルに設けられていてもよい。アウタードアハンドルとは、ドアの外側面に設けられた、ドアを開閉するための把持部材(いわゆるドアハンドル)を指す。アウタードアハンドル付近には、アウタードアハンドルの内部も含まれる。
【0034】
また、前部通信機12Xは他の態様として、車室内の天井の中央部に配されていてもよい。前部通信機12Xは、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部や、センターコンソールボックス付近に設けられていてもよい。ここでは前部通信機12Xを1つしか図示していないが、前部通信機12Xは車室内に複数設けられていてもよい。
【0035】
また、車載通信機12は車両HvのBピラーに配置されていても良い。もちろん、AピラーやDピラーの外側面に配置されていても良い。さらに、車載通信機12は、車両Hvの側面部と屋根部との境界付近(以降、側面上端部)に配置されていても良い。このような構成は、車載通信機12をサイドウインドウの上側に位置するフレーム部分に設けた構成に相当する。側面上端部は、車両Hvの屋根部において車両Hvのドアの上端部が接する部分に相当する。また、車載システム1は、トランク内部を通信エリアとする車載通信機12を備えていてもよい。また、車載システム1は車両Hvの外面部に配置された車載通信機12を備えていても良い。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。
【0036】
車両Hvにおける各車載通信機12の設置位置は、例えば、車両Hvの任意の位置を中心とし、車両水平面に平行な2次元座標(以降、車両2次元座標系)上の点として表されていれば良い。ここでの車両水平面とは車両の高さ方向に直交する平面である。車両2次元座標系を形成するX軸は車両の前後方向に平行とし、Y軸は車幅方向に平行な軸とすればよい。2次元座標系の中心は、例えば、後輪車軸の中心などとすればよい。各車載通信機12の設置位置を示す通信機位置データは、フラッシュメモリ112に格納されている。なお、本実施形態ではより好ましい態様として、各車載通信機12には固有の通信機番号が設定されている。通信機番号は、複数の車載通信機12を識別するための情報として機能する。フラッシュメモリ112には、通信機位置データとして、各車載通信機12の設置位置が通信機番号と対応付けられて保存されている。
【0037】
複数の車載通信機12のそれぞれは、図2に示すように、制御IC31、送信回路32、及び受信回路33を備える。制御IC31は送信回路32及び受信回路33のそれぞれと接続されている。また、制御ECU31は、位置推定装置11とも相互通信可能に接続されている。制御IC31は、位置推定装置11から入力されたベースバンド信号を送信回路32に出力し、無線送信させるとともに、受信回路33が受信したデータを位置推定装置11に出力する。制御IC31の詳細については別途後述する。
【0038】
送信回路32は、制御IC31から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつインパルス信号を生成し、このインパルス信号を電波として放射する構成である。送信回路32は例えば、変調回路321、及び送信アンテナ322を用いて実現されている。
【0039】
変調回路321は、制御IC31から入力されたベースバンド信号を変調する回路である。変調回路321は、位置推定装置11から入力されたベースバンド信号が示すデータ(以降、送信データ)に対応する変調信号を生成し、送信アンテナ322に向けて送信する。変調信号は、送信データを所定の変調方式(例えばPCM変調方式)で変調した信号である。変調信号は、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列を意味する。
【0040】
変調回路321は、電気的なインパルス信号を生成する回路(以降、パルス生成回路)や、インパルス信号を増幅したり整形したりする回路を含む。送信アンテナ322は、変調回路321が出力した電気的なインパルス信号を電波に変換して空間に放射する構成である。つまり、送信アンテナ322は、UWB帯において所定の帯域幅を有するパルス状の電波をインパルス信号として放射する。また、変調回路321は、送信アンテナ322へ電気的なインパルス信号を出力した場合には、それと同時に、インパルス信号を出力したことを示す信号(以降、送信通知信号)を制御IC31に出力する。
【0041】
なお、本実施形態の送信回路32は、インパルス信号の立上り時間が1ナノ秒となるように構成されている。立上り時間とは、信号強度が初めて最大振幅の10%を越えてから最大振幅の90%を越えるまでに要する時間である。インパルス信号の立上がり時間は、送信回路32の回路構成などのハードウェア構成に応じて定まる。インパルス信号の立上り時間は、シミュレーションや実試験によって特定できる。なお、一般的にUWB帯のインパルス信号の立上り時間は、1ナノ秒程度である。
【0042】
受信回路33は、携帯機2から送信される応答信号としてのインパルス信号など、携帯機位置推定システム100で採用されている通信規格に準拠した無線信号を受信するための構成である。受信回路33は、例えば受信アンテナ331、及び復調回路332を備える。受信アンテナ331は、インパルス信号を受信するためのアンテナである。受信アンテナ331は、携帯機2が送信したインパルス信号に対応する電気的なインパルス信号を復調回路332に出力する。
【0043】
復調回路332は、受信アンテナ331がUWB帯のインパルス信号を受信すると、その信号を復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号を位置推定装置11に出力する。すなわち復調回路332は、携帯機2や他の車載通信機12から送信された複数のインパルス信号からなる一連の変調信号(以降、パルス系列信号)を復調し、変調前のデータを復元する構成である。例えば復調回路332は、受信アンテナ331から入力されるインパルス信号に基づいて、携帯機2や他の車載通信機12が送信したパルス系列信号を取得する。
【0044】
復調回路332が取得するパルス系列信号は、受信アンテナ331から入力される複数のインパルス信号を、実際の受信間隔をおいて時系列に並べたものである。なお、復調回路332は、受信アンテナ331で受信したインパルス信号の周波数を、ベースバンド帯の信号に変換して出力する周波数変換回路や、信号レベルを増幅する増幅回路などを備える。その他、受信回路33は、受信アンテナ331からインパルス信号が入力された場合には、インパルス信号を受信したことを示す信号(以降、受信通知信号)を制御IC31に出力する。
【0045】
なお、ここでは車載通信機12は送信用のアンテナ(つまり送信322)と、受信用のアンテナ(つまり受信アンテナ331)とが別々に設けた態様を示しているが、方向性結合器を用いて送信と受信とで1つのアンテナ素子を共用するように構成されていても良い。また、変調回路321や復調回路332は制御IC31に内蔵されていても良い。つまり、車載通信機12は、1つのアンテナと、種々の回路機能を有する1つの専用ICとを用いて実現されていても良い。
【0046】
<制御IC31の機能について>
本実施形態の車載通信機12が備える制御IC31は、位置推定装置11からの指示に基づいて車載通信機12の動作モードを制御する。本実施形態の車載通信機12は動作モードとしてホストモードと、傍聴モードとを備える。ホストモードは、インパルス信号の送信が許可された(換言すればインパルス信号の送信権を有する)動作モードである。ホストモードは、携帯機2を含む他のUWB通信機との無線通信を実施可能な動作モードに相当する。傍聴モードは、携帯機2や他の車載通信機12が送信するインパルス信号の受信のみを実施する動作モードである。つまり、傍聴モードは、携帯機2や他の車載通信機12が送信するインパルス信号をスニファリング(sniffering)する動作モードである。傍聴モードは、別の観点によれば、インパルス信号の送信が禁止された(つまり発言権がない)動作モードに相当する。
【0047】
各車載通信機12がホストモードで動作するか、傍聴モードで動作するかは、位置推定装置11によって制御される。つまり、制御IC31は、位置推定装置11から入力される制御信号に基づいて動作モードを切り替える。便宜上以降では、ホストモードで動作している車載通信機12のことをホスト機と称するとともに、傍聴モードで動作している車載通信機12のことを傍聴機と称する。ホスト機が送受信機に相当する。
【0048】
また、制御IC31は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を用いてラウンドトリップ時間計測処理やパルス受信間隔計測処理を実施する。ラウンドトリップ時間計測処理は、送信回路32がインパルス信号を送信してから、受信回路33がインパルス信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間Tpを計測する処理である。パルス受信間隔計測処理は、受信回路33がインパルス信号を受信してから再びインパルス信号を受信するまでの時間であるパルス受信間隔Tqを計測する処理である。
【0049】
ラウンドトリップ時間Tpやパルス受信間隔Tqの計測は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を計数することによって実現されれば良い。制御IC31は、例えばホストモードで動作している場合であって、位置推定装置11からラウンドトリップ時間Tpの計測が指示された場合に、ラウンドトリップ時間計測処理を実行する。また、制御IC31は、傍聴モードで動作している場合であって、位置推定装置11からパルス受信間隔Tqの計測が指示された場合に、パルス受信間隔計測処理を実施する。送信回路32がインパルス信号を送信したタイミングは送信回路32からの送信通知信号の入力によって特定されればよい。また、受信回路33がインパルス信号を受信したタイミングは受信回路33からの受信通知信号の入力によって特定されればよい。その他、制御IC31は位置推定装置11からの指示に基づき、所定の他の車載通信機12と双方向に無線通信を実施するように構成されている。
【0050】
<位置推定装置11の機能について>
位置推定装置11は、CPUがフラッシュメモリ112に保存されている車両用プログラムを実行することによって実現される機能として、図3に示すように、車両情報取得部F1、役割設定部F2、及び位置推定部F3を備える。なお、位置推定装置11が備える種々の機能ブロックの一部又は全部は、ハードウェアとして実現されていてもよい。或る機能がハードウェアとして実現されている態様には、1つ又は複数のIC等を用いて実現されている態様も含まれる。また、種々の機能ブロックの一部又は全部は、CPU等によるソフトウェアの実行とハードウェア構成との協働によって実現されていても良い。
【0051】
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやスイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報とは、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、シフトポジションセンサが検出するシフトポジション、車両Hvの電源状態(例えばイグニッション電源のオン/オフ)、パーキングブレーキの作動状態等などである。なお、車両情報に含まれる情報の種類は、上述したものに限らない。図示しないブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。
【0052】
車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件を適用することができる。
【0053】
役割設定部F2は、各車載通信機12の動作モードを制御する。役割設定部F2は、複数の車載通信機12のうちの何れか1つをホスト機として動作させ、残りは全て傍聴機として動作させる。本実施形態の役割設定部F2は一例として、前部通信機12Xをホスト機として動作させ、右側通信機12A、左側通信機12B、及び後部通信機12Cは傍聴機として動作させる。なお、ホスト機として動作させるということは、ホストモードで動作させること、つまり携帯機2との通信係を担当させることに相当する。また、傍聴機として動作させるということは、傍聴モードで動作させることに相当する。
【0054】
図4は、上記の役割設定が成されている場合の携帯機位置推定システム100が備える各構成間の無線信号の流れを概念的に表したものである。前部通信機12Xがホスト機として動作するため、携帯機2との無線通信は前部通信機12Xによって実行される。すなわち、位置推定装置11は前部通信機12Xから携帯機2にむけてインパルス信号(実際には複数のビット列を示すパルス系列信号)を送信させる。携帯機2は、ホスト機からのインパルス信号を受信すると、応答信号としてのインパルス信号を送信する。この携帯機2が送信したインパルス信号は、ホスト機としての前部通信機12Xによって受信される。ホスト機としての前部通信機12Xが送信したインパルス信号、及び、携帯機2が応答信号として返送するインパルス信号は、図中の破線で示すように、傍聴機としての右側通信機12A等の各傍聴機によっても受信される。
【0055】
位置推定部F3は、位置推定処理を実施する構成である。位置推定処理については図5に示すフローチャートを用いて説明する。本実施形態の位置推定処理は一例としてステップS101からステップS108を備える。各ステップは主として位置推定部F3によって実行される。
【0056】
なお、当該位置推定処理は、例えば車両が駐車されている間に所定周期で定期的に(例えば200ミリ秒毎に)実行されればよい。また、位置推定処理は、携帯機2との暗号通信による携帯機2の認証処理が成功していることを条件として、所定の周期で実行するように構成されていても良い。携帯機2の認証は、例えばチャレンジ−レスポンス方式によって実施されればよい。認証が成功したということは、車載システム1の通信相手は正規の携帯機2であると判定したことに相当する。
【0057】
まず、ステップS101ではホスト機に対してラウンドトリップ時間Tpの計測準備を指示する。これにより、ホスト機は、ラウンドトリップ時間Tpの計測準備状態に移行する。ラウンドトリップ時間Tpの計測準備状態とは、次回インパルス信号を送信した時に、ラウンドトリップ時間Tpの計測を開始する状態である。ステップS102では各傍聴機に対してパルス受信間隔Tqの計測準備を指示する。これにより、各傍聴機は、パルス受信間隔Tqの計測準備状態に移行する。パルス受信間隔Tqの計測準備状態とは、次回インパルス信号を受信した時に、パルス受信間隔Tqの計測を開始する状態である。
【0058】
ステップS103ではホスト機に対してインパルス信号の送信を指示する。当該指示に基づき、ホスト機は携帯機2に向けてインパルス信号を送信するとともに、ラウンドトリップ時間Tpの計測を開始する。また、各傍聴機は、ホスト機がインパルス信号を受信したことをトリガとしてパルス受信間隔Tqの計測を開始する。その後、ホスト機は携帯機2からのインパルス信号を受信したことをトリガとしてラウンドトリップ時間Tpの計測を終了する。また、傍聴機もまた、携帯機2からのインパルス信号を受信したことをトリガとしてパルス受信間隔Tqの計測を終了する。パルス受信間隔Tqが信号受信間隔に相当する。なお、傍聴機は、受信したインパルス信号の送信元が、ホスト機なのか携帯機2なのかを、信号の周波数帯や、信号に含まれるコード等によって識別可能に構成されていることが好ましい。
【0059】
ステップS104ではホスト機としての前部通信機12Xからラウンドトリップ時間Tpを取得する。ステップS105では、ラウンドトリップ時間Tpに基づいて、前部通信機12Xから携帯機2までのインパルス信号の伝搬時間である第1伝搬時間T12を算出する。また、当該第1伝搬時間T12に基づいて、ホスト機から携帯機2までの距離を推定する。具体的には、ラウンドトリップ時間Tpから携帯機2での応答処理時間Tαの想定値を減算し、さらに当該算出値を2で除算することによって片道分の信号飛行時間を算出する。ホスト機から携帯機2までの片道分の信号飛行時間が第1伝搬時間T12に相当する。信号飛行時間は無線信号の伝搬時間に相当する。そして、第1伝搬時間T12に空気中の電波の伝搬速度を乗算することによって、ホスト機としての前部通信機12Xから携帯機2までの距離を算出する。ステップS105が第1伝搬時間特定部に相当する。
【0060】
ステップS106では各傍聴機からパルス受信間隔Tqを取得する。ステップS107では、各傍聴機が観測したパルス受信間隔Tqとラウンドトリップ時間Tpに基づいて、傍聴機ごとの第2伝搬時間T2Aを推定する。或る傍聴機についての第2伝搬時間T2Aとは、携帯機2が送信したインパルス信号が、携帯機2からその傍聴機まで伝搬するまでの信号飛行時間に相当する。そして、傍聴機毎の第2伝搬時間に、電波の伝搬速度を乗じることで、各傍聴機から携帯機までの距離を算出する。ステップS107が第2伝搬時間特定部に相当する。
【0061】
ここで図6及び図7を用いて、ラウンドトリップ時間Tpと或る1つの傍聴機(例えば右側通信機12A)で観測されたパルス受信間隔Tqと関係について説明するとともに、ラウンドトリップ時間Tp及びパルス受信間隔Tqから、携帯機2と当該傍聴機までの信号の伝搬時間(ひいては距離)が算出可能であることを説明する。図6及び図7は、一回の位置推定処理における、ホスト機としての前部通信機12X、傍聴機としての右側通信機12A、及び携帯機2の作動を概念的に示したものである。
【0062】
図中のT12は、前部通信機12Xが送信したインパルス信号が携帯機2まで伝搬するまでの時間(つまり第1伝搬時間)を表しており、T21は携帯機2が送信したインパルス信号が前部通信機12Xまで伝搬するまでの信号飛行時間を表している。前部通信機12Xから携帯機2までのインパルス信号の伝搬時間は往路と復路とで同一とみなせるので、T12=T21である。また、T1Aは、前部通信機12Xが送信したインパルス信号が右側通信機12Aまで伝搬するまでの信号飛行時間(以降、車載機間伝搬時間)を表している。T2Aは携帯機2が送信したインパルス信号が右側通信機12Aまで伝搬するまでの信号飛行時間(つまり第2伝搬時間)を表している。
【0063】
ラウンドトリップ時間Tpは、前部通信機12Xが送信したインパルス信号が携帯機2まで伝搬するまでの時間T12と、携帯機2での応答処理時間Tαと、携帯機2が送信したインパルス信号が前部通信機12Xまで伝搬するまでの時間との合算値に相当する。つまり、Tp=T12+T21+Tαの関係が成り立つ。故に、第1伝搬時間T12は、ホスト機で観測されたラウンドトリップ時間Tpを以下の式1に代入することによって特定できる。なお、応答処理時間Tαとしては、フラッシュメモリ112に登録されている想定値が適用されればよい。また、応答処理時間Tαとしては、変形例1として別途後述するように、携帯機2で計測された実際の値を適用しても良い。
【0064】
(式1) T12=(Tp−Tα)/2
次に、第2伝搬時間T2Aの算出方法について述べる。第2伝搬時間T2Aに第1伝搬時間T12と、携帯機2での応答処理時間Tαを加算した値は、パルス受信間隔Tqに車載機間伝搬時間T1Aを加算した値に等しい。故に、第2伝搬時間T2Aは下記の式2によって特定可能である。
【0065】
(式2) T2A=Tq+T1A−(T12+Tα)
=Tq+T1A−Tp/2+Tα/2
つまり、上記式2で示すように、携帯機2から右側通信機12Aまでの距離の指標として機能する第2伝搬時間T2Aは、パルス受信間隔Tqと、ラウンドトリップ時間Tpと、車載機間伝搬時間T1A、及び応答処理時間Tαに基づいて算出可能である。つまり上記式2は、第2伝搬時間T2Aが第1伝搬時間T12を用いて算出可能であることを示している。
【0066】
ここで、車載機間伝搬時間T1Aは、前部通信機12Xから右側通信機12Aまでの距離に応じて定まるパラメータである。前部通信機12Xから右側通信機12Aまでの距離は一定であるため、車載機間伝搬時間T1Aは概ね一定の値となる。本実施形態のフラッシュメモリ112には、前述の通り、車載機間伝搬時間T1Aの想定値が保存されている。
【0067】
位置推定部F3は、ラウンドトリップ時間Tp、パルス受信間隔Tq、及びフラッシュメモリ112に保存されている各種パラメータを式2に代入することにより、第2伝搬時間T2Aを算出する。そして、位置推定部F3は、上記によって定まる第2伝搬時間T2Aに空気中の電波の伝搬速度を乗算することにより携帯機2から右側通信機12Aまでの距離を算出する。
【0068】
以上では一例として、ラウンドトリップ時間Tpと右側通信機12Aで観測されたパルス受信間隔Tqに基づいて右側通信機12Aから携帯機2までの第2伝搬時間T2A及び距離を算出する方法について記載した。他の傍聴機から携帯機2までの第2伝搬時間T2A及び距離(つまり傍聴機−携帯機間距離)についても同様に、その傍聴機で観測されたパルス受信間隔Tqとラウンドトリップ時間Tpとから算出される。
【0069】
図5に戻り、ステップS107において各傍聴機についての携帯機2との距離の算出が完了するとステップS108を実行する。ステップS108では、ホスト機及び各傍聴機(つまり各車載通信機)から携帯機2までの距離と、各車載通信機の搭載位置に基づいて、車両に対する携帯機2の位置を推定する。ホスト機から携帯機2までの距離は第1伝搬時間T12に由来するとともに、傍聴機から携帯機2までの距離は第2伝搬時間T2Aに由来する。故に、車載通信機から携帯機2までの距離に基づいて携帯機2の位置を推定することは、第1伝搬時間と傍聴機毎の第2伝搬時間T2Aに基づいて携帯機2の位置を推定することに相当する。ステップS108が位置推定処理部に相当する。
【0070】
各車載通信機の設置位置と、各車載通信機から携帯機2までの距離情報を用いて携帯機2の位置を算出する方法としては、衛星測位システムなどで使用される算出アルゴリズムを援用することができる。車両Hvに対する携帯機2の位置は、路面平面に平行な2次元座標系(つまり車両2次元座標系)の点として表現することができる。
【0071】
なお、携帯機2の位置は、少なくとも3つの車載通信機12からの距離と、それらの3つの車載通信機12の設置位置とに基づいて、携帯機2の位置は推定可能である。携帯機2の位置は、概念的には図8に示すように、車載通信機12の設置位置を中心とし、且つ、その車載通信機12から携帯機2までの推定距離を半径とする、車載通信機12ごとの円(又は球)が重なる座標に相当する。図8における実線で示す円Cxは、前部通信機12Xを中心とする半径Rxの円を表している。半径Rxは、前部通信機12Xから携帯機2までの推定距離に設定される。また、一点線で示す円Caは、右側通信機12Aを中心とする半径Raの円を表している。半径Raは、右側通信機12Aから携帯機2までの推定距離に設定される。二点鎖線で示す円Cbは、左側通信機12Bを中心とする半径Rbの円を表している。半径Rbは左側通信機12Bから携帯機2までの推定距離に設定される。点線で示す円Ccは、後部通信機12Cを中心とする半径Rcの円を表している。半径Rcは後部通信機12Cから携帯機2までの推定距離に設定される。図8の点Pmが、携帯機2の位置を示す。なお、携帯機2の位置は、各円からの距離が最小となる点とすればよい。
【0072】
<実施形態のまとめ>
上述した実施形態では、ホスト機としての前部通信機12Xは携帯機2にむけて位置推定用のインパルス信号を送信するとともに、携帯機2は、ホスト機が発したインパルス信号に対する応答信号としてのインパルス信号を返送する。この際、ホスト機は、携帯機2に向けたインパルス信号を送信してから、受信回路33がインパルス信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間Tpを計測して位置推定装置11に報告する。また、ホスト機以外の車載通信機12(つまり傍聴機)は、ホスト機が送信したインパルス信号を受信してから、携帯機2が送信したインパルス信号を受信するまでのパルス受信間隔Tqを計測して位置推定装置11に報告する。そして、位置推定装置11は、1つのラウンドトリップ時間と、各傍聴機で観測された複数のパルス受信間隔Tqに基づいて、車両Hvに対する携帯機2の相対位置を算出(換言すれば推定)する。
【0073】
このような構成によれば車載システム1と携帯機2とが信号の送受信を一回行うことにより、携帯機2の位置を推定可能である。換言すれば、複数の車載通信機12が個別に携帯機2と無線通信を実施する必要がない。故に、無線信号の伝搬時間に基づいて車両Hvに対する携帯機2の位置を推定する携帯機位置推定システムにおいて、位置推定のための携帯機2との無線通信の実行回数を抑制することができる。
【0074】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
【0075】
[変形例1]
上述した実施形態では応答処理時間Tαとして、フラッシュメモリ112に予め登録されている設計値(換言すれば想定値)を使用する態様を開示したがこれに限らない。携帯機2は、ホスト機からの信号を受信してから応答信号を返送するまでにかかった応答処理時間を図示しないタイマーを用いて計測するとともに、その計測した応答処理時間Tαを無線通信によってホスト機に送信するように構成されていてもよい。
【0076】
携帯機2が計測した応答処理時間Tαは、図9に示すように、位置推定用のインパルス信号Psとは別のデータ通信によって通知されればよい。例えば携帯機2は、位置推定用のインパルス信号を送信してから所定時間経過したタイミングで応答処理時間Tαの実測値(換言すれば実処理時間)を示すパルス系列信号(以降、処理時間通知信号Sg)を送信するように構成されている。なお、仮に1つのインパルス信号で実際の応答処理時間Tαを表現可能である場合には、位置推定処理において携帯機2は、実際の応答処理時間Tαを示すインパルス信号を送信するように構成されていても良い。
【0077】
本変形例のホスト機は、携帯機2からの処理時間通知信号を受信すると、受信した処理時間通知信号Sgに示される応答処理時間の実測値を示すデータを位置推定装置11に提供する。位置推定装置11は、ホスト機から応答処理時間の実測値を取得した場合には、当該データをRAM113に保存し、第1伝搬時間T12や傍聴機毎の第2伝搬時間T2Aの算出に使用する。当該構成においてはRAM113が応答処理時間保持部に相当する。
【0078】
本変形例1に開示の構成によれば、車載システム1は携帯機2での実際の応答処理時間Tαを用いて、各車載通信機12から携帯機2までの距離を算出可能となる。このような構成によれば、各車載通信機12から携帯機2までの距離の推定精度を高めることができる。また、携帯機2での応答処理時間Tαが一定でなくとも良いため、携帯機2のソフトウェアの拡張性を高めることができる。
【0079】
[変形例2]
位置推定装置11が備える役割設定部F2は、図10に示すように、ホスト機として動作させる車載通信機12を動的に変更するように構成されていてもよい。例えば役割設定部F2は、位置推定処理を実行する度に、前部通信機12X、右側通信機12A、左側通信機12B、後部通信機12Cの順にホスト機とする車載通信機12を変更する(換言すれば入れ替える)ように構成されていても良い。当該構成は、ホスト機を交代制にする構成に相当する。
【0080】
このような構成によれば、仮に前部通信機12Xに不具合が生じた場合であっても、他の車載通信機12が正常に動作している場合には、その正常な車載通信機12がホスト機として作動することによって携帯機2の位置を推定可能となる。つまり、携帯機位置推定システムとしてのロバスト性を高めることができる。
【0081】
また、ホスト機を入れ替えることによって得られる複数回の位置推定処理の結果を平均化した位置を携帯機2の現在位置として採用するように構成されていても良い。各車載通信機12の設置位置は異なるため、ホスト機とする車載通信機12を入れ替えることにより、ラウンドトリップ時間Tpやパルス受信間隔Tqに対するマルチパスの影響度合いが変化する。故に、当該構成によれば、車両Hvの周囲の環境に由来するマルチパスの影響を低減することができる。
【0082】
[変形例3]
上述した実施形態では、ホスト機から傍聴機までの車載機間伝搬時間T1Aとして、フラッシュメモリ112に登録されている設計値(換言すれば想定値)を使用する態様を開示したがこれに限らない。車載機間伝搬時間T1Aは、所定のタイミングで実際にホスト機と各傍聴機とが無線通信を実施することによって測定された値(つまり実測値)が適用されても良い。
【0083】
例えば位置推定装置11は、複数の傍聴機のなかから測定対象とする傍聴機(以降、測定対象機)を選定し、当該測定対象機を、ホスト機からのインパルス信号を受信した場合に応答信号としてインパルス信号を返送する動作モードで動作させる。そして、位置推定装置11はホスト機から測定対象とする傍聴機に対してインパルス信号を送信させる。
【0084】
測定対象とする傍聴機は、ホスト機からのインパルス信号を受信した際には、応答信号としてのインパルス信号を送信するため、ホスト機は、インパルス信号を送信してから測定対象とする傍聴機からのインパルス信号を受信するまでの時間(つまり、ラウンドトリップ時間)を取得する。上記の処理によって得られるラウンドトリップ時間から、測定対象機での応答処理時間を減算した値をさらに2で除算した値は、ホスト機から測定対象機までの車載機間伝搬時間T1Aを示す。当該演算処理は例えば位置推定部F3によって自校されれば良い。測定対象機での応答処理時間としては所定の想定値を適用することができる。
【0085】
車載機間伝搬時間T1Aを測定するための無線通信は、例えば、位置推定処理の準備動作として、車両の走行用電源がオフになったときやシフトポジションがパーキングポジションに設定されたときなどに実行されればよい。測定対象機は順次変更されればよい。つまり、車載機間伝搬時間T1Aを測定するための無線通信は、車載通信機12の組み合わせ毎に実施されれば良い。また、車載機間伝搬時間T1Aの特定のための無線通信は、位置推定処理とは独立して所定の周期で定期的に実行するように構成されていても良い。
【0086】
[変形例4]
上記変形例3に関連して、位置推定装置11は、車載通信機12間で双方向無線通信を実施させることにより得られる車載機間伝搬時間T1Aに基づいて、車載通信機12が車両の所定位置に取り付けられているか否かを判定するように構成されていても良い。車載通信機12が車両の所定位置に取り付けられているかを判定することは、車載通信機12が通信モジュールごと車両Hvから取り外され、かつ、ベースバンド信号レベルでの中継が行われているか否かを判定することに相当する。
【0087】
仮に車載通信機12が車両Hvから取り外され、かつ、ベースバンドレベルでの中継がなされている場合には、車載通信機12間の距離が延びるため、車載機間伝搬時間T1Aが相対的に大きい値となる。一方、車載通信機12が正常に車両に搭載されている場合には取りうる車載機間伝搬時間T1Aは一定の範囲内に収まることが期待される。そのため、車載通信機12同士が実際に無線通信して得られた車載機間伝搬時間T1Aが、所定の正常範囲外となっている場合には、車載通信機12が車両Hvから取り外され、かつ、ベースバンド信号レベルでの中継が行われている恐れがあることを示す。車載機間伝搬時間T1Aの正常範囲は、予め試験等によって特定され、フラッシュメモリ112に登録されていれば良い。なお、正常範囲の下限値は適宜設定されればよく、例えば0秒であってもよい。また、正常範囲は、上限値のみによって規定されていても良い。正常範囲の上限値は、例えば33ナノ秒など、車載通信機12が車両Hvに取り付けられている状態においては観測され得ないレベルの値に設定されていれば良い。なお、33ナノ秒は、車載通信機12間の距離が10m程度となっていることを示唆する長さである。
【0088】
本変形例の位置推定装置11は、例えば車両Hvが駐車されている間、互いに無線通信可能な位置関係にある車載通信機12の組み合わせ毎に、定期的に双方向無線通信を実施させることにより、車載通信機12の組み合わせ毎の車載機間伝搬時間T1Aを取得する。そして、それらの車載機間伝搬時間T1Aが正常値であるか否かを判定する。複数の車載機間伝搬時間T1Aの中に、車載通信機12の組み合わせに応じた正常範囲を逸脱している車載機間伝搬時間T1Aが存在する場合には、車両Hvに配されている車載通信機12が、通信モジュールごと車両Hvから取り外され、かつ、ベースバンド信号レベルでの中継が行われていると判定すればよい。
【0089】
なお、上記の中継行為(いわゆるリレーアタック)が行われていると判定した場合には、位置推定装置11は、例えば車両用電子キーシステムの作動を禁止する。ここでの車両用電子キーシステムとは、車載システム1と携帯機2とがそれぞれ、互いに所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで車載システム1が携帯機2を認証し、ドアの開錠やエンジン始動などの所定の車両制御を実施するシステムを指す。車両用電子キーシステムとは、いわゆるスマートエントリーシステムに相当する。
【0090】
また、位置推定装置11は、上記の中継行為が行われていると判定した場合、図示しない広域通信装置と協働して、緊急連絡先としてフラッシュメモリ112に予め登録されている連絡先(例えばユーザや警備会社の電話番号又はメールアドレス)に通知するように構成されていても良い。ここでの広域通信装置とは、携帯電話網やインターネット等の、電気通信事業者によって提供される公衆通信ネットワークに無線アクセスするための通信装置を指す。
【0091】
本変形例として開示の上記構成によれば、車両Hvに配されている車載通信機12が、モジュールごと車両Hvから取り外され、かつ、ベースバンド信号レベルでの中継が行われてしまった場合であっても、車両Hvが不正に使用される恐れを抑制できる。
【0092】
[変形例5]
位置推定用に送受信する信号は、単発のインパルス信号ではなく、図11に示すように一定の長さを有するパルス系列信号であってもよい。上記の思想に対応する実施の形態を変形例5として以下に説明する。
【0093】
本変形例におけるホスト機は、携帯機2に対して応答信号の返送を要求する、一定のビット列を示すパルス系列信号(以降、応答要求信号Sa)を送信する。ホスト機は、例えば応答要求信号Saの最初のインパルスを送信したタイミングから、携帯機2からの応答信号Sbを受信し終えるまでの時間をラウンドトリップ時間Tpとして計測する。携帯機2は、ホスト機からの応答要求信号Saを受信した場合には、応答信号Sbとして一定のビット列を示すパルス系列信号を返送する。応答信号Sbの長さTγ(換言すればビット数)は、後述の計算処理を簡単化するために、応答要求信号Saの長さTβと同じに設定されていることが好ましい。ここでは一例としてTγ=Tβに設定されているものとする。
【0094】
このような設定によれば、前部通信機12Xが送信した無線信号が携帯機2まで伝搬するまでの時間(つまり第1伝搬時間T12)は、下記の式3によって特定できる。各種信号の長さTβ、Tγは、フラッシュメモリ112に保存されている想定値を使用することができる。
【0095】
(式3) T12=(Tp−Tα−Tβ−Tγ)/2=(TP−Tα−2・Tβ)/2
また、ホスト機から傍聴機までの距離を示すT2Aは、下記式4によって特定できる。
【0096】
(式4) T2A=Tq+T1B−Tγ−(T12+Tβ+Tα)
=Tq+T1A+Tβ−T12−Tβ−Tα
=Tq+T1A+T12−Tα
上記式4において、車載機間伝搬時間T1Aはフラッシュメモリ112に登録されている値、又は、変形例3に記載の方法によって特定される実測値を採用する事ができる。また、第1伝搬時間T12は、上記式3によって特定可能である。携帯機2での応答処理時間Tαは、フラッシュメモリ112に登録されている値、又は、変形例1にて上述したように携帯機2から通知される実測値を採用する事ができる。
【0097】
位置推定部F3は、上記式4を演算することにより、携帯機2から傍聴機までの距離の指標として機能する第2伝搬時間T2Aは特定可能である。また、それに伴い、携帯機2から傍聴機までの距離もまた算出可能である。つまり、本変形例においても上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0098】
なお、応答要求信号Saは、宛先が携帯機2であることを示すコードを含んでいることが好ましい。また応答信号Sbは、宛先がホスト機であることを示すコードや、応答処理時間Tαを含んでいることが好ましい。なお、応答信号Sbは、チャレンジ−レスポンス方式の認証処理で使用されるレスポンスコードを含む信号として構成されていても良い。
【0099】
[変形例6]
上述した実施形態では、各車載通信機12は、位置推定装置11に対してラウンドトリップ時間Tpや、パルス受信間隔Tqといった、所定のイベントが起きてから所定のイベントが起きるまでの時間の長さを報告する態様を開示したが、これに限らない。各車載通信機12は、位置推定装置11に対して図12に示すように、インパルス信号を送信したタイミングや、インパルス信号を受信したタイミングを逐次報告するように構成されていても良い。なお、ここでのイベントとは、インパルス信号の送信や、インパルス信号の受信を指す。
【0100】
本変形例の車載システム1は、各車載通信機12が所定のイベントが発生したことを位置推定装置11に逐次報告することによって、位置推定装置11が各種イベントの発生時刻を認識し、携帯機2の位置を推定するように構成されている。各車載通信機12から位置推定装置11への各種イベントの発生の通知(換言すれば報告)は電気的なパルス信号の出力によって行われればよい。
【0101】
例えばホスト機はインパルス信号を送信した場合や、携帯機2からのインパルス信号を受信した場合に、電気的なパルス信号を位置推定装置11に送信することで、インパルス信号を送信したタイミングや、インパルス信号を受信したタイミングを逐次報告する。これにより、位置推定装置11は、ホスト機がインパルス信号を送信したタイミングを示す第1時刻Tm1や、ホスト機が携帯機2からのインパルス信号を受信したタイミングを示す第2時刻Tm2を特定する。また、傍聴機は、インパルス信号を受信する度に、その旨を示す電気的なパルス信号を位置推定装置11に出力する。これにより、位置推定装置11は、傍聴機がホスト機によって送信されたインパルス信号を受信したタイミングを示す第3時刻Tm3や、傍聴機が携帯機2によって送信されたインパルス信号を受信したタイミングを示す第4時刻Tm4を特定する。そのような構成によっても、位置推定装置11内で、ラウンドトリップ時間Tpやパルス受信間隔Tqを算出可能であり、ひいては上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0102】
ただし、車載通信機12と位置推定装置11との通信は、車載通信機12から位置推定装置11までの電気的な配線長に由来する遅延や、通知用のパルス信号の立ち上がり時間等の影響を受ける。そのため、本変形例として開示の方法では、実施形態に比べて相対的に誤差を含みやすくなる。換言すれば、上述した実施形態の構成によれば傍聴機から携帯機2までの距離を算出する上で、車載通信機12から位置推定装置11までの電気的な配線長等の影響を受けないため、本変形例として開示の構成よりも精度良く携帯機2の位置を推定可能となる。
【0103】
なお、本変形例の位置推定装置11は、予め試験によって特定されている、車載通信機12から位置推定装置11までの電気的な配線長やパルス信号の生成及び検出処理に由来する遅延時間を用いて車載機間伝搬時間T1Aを算出するように構成されていても良い。そのような構成によれば、実施形態に対する携帯機2の位置の推定精度の劣化を低減する事ができる。
【0104】
[変形例7]
変形例6では、ホスト機や各傍聴機は位置推定装置11に対して電気的なパルス信号を出力することによって位置推定装置11にインパルス信号を送信/受信したタイミングを通知する態様を開示したが、これに限らない。各車載通信機12が時計機能を有する場合には、各車載通信機12は所定のイベントの発生を検出した場合、当該イベントの発生時刻を示すデータを位置推定装置11に出力するように構成されていても良い。
【0105】
例えばホスト機は、自身が保持している時刻情報に基づいて定まる、インパルス信号の送信時刻や受信時刻を示すデータを逐次提供するように構成されていても良い。また、傍聴機は、自身が保持している時刻情報に基づいて定まる、インパルス信号の受信時刻を示すデータを逐次提供するように構成されていても良い。送信時刻や受信時刻は、例えばUTC(協定世界時:Coordinated universal time)などで表現されれば良い。各種イベントの発生時刻は、セシウム原子の振動数を基準にした時系(いわゆる原子時)で表現されれば良い。
【0106】
[変形例8]
変形例7においては、位置推定装置11は、ホスト機がインパルス信号を送信したタイミングを把握できる。また、ホスト機から各傍聴機までの車載機間伝搬時間T1Aは、ホスト機と傍聴機との距離に応じて定まるため、本来一定値であり、フラッシュメモリ112に登録されている値を適用できる。そのため、位置推定装置11は、ホスト機がインパルス信号を送信したタイミングに相当する第1時刻Tm1に対して、傍聴機毎の車載機間伝搬時間T1Aを加算することにより、各傍聴機がホスト機が発したインパルス信号を受信する第3時刻Tm3を特定できる。
【0107】
故に、変形例7の傍聴機の作動/構成としては、ホスト機が送信したインパルス信号を受信した時刻を位置推定装置11に報告する構成は省略可能である。換言すれば、傍聴機は第4時刻Tm4のみを報告するように構成されていても良い。そのような構成は、傍聴機の動作モードとして、携帯機2は発したインパルス信号の受信時刻(つまり第4時刻)を示すデータは位置推定装置11に提供する一方、ホスト機が発したインパルス信号の受信時刻(つまり第3時刻)を示すデータについては位置推定装置11に提供しない、部分報告動作モードを備える構成に相当する。なお、部分報告モードを適用する場合とは、例えば位置推定装置11と、傍聴機との時刻情報が同期している場合、又は、時刻情報のズレ量が既知となっている場合とすることが好ましい。本変形例8に開示の思想は変形例6にも適用可能である。
【0108】
なお、各車載通信機における時刻情報は完全には一致していない(換言すればズレが生じている)ことが想定される。そのため、本変形例の各車載通信機12は、位置推定装置11又は外部から入力される信号を用いて同期が取れている状態で運用されることが好ましい。例えば本変形例の位置推定装置11は、装置間での時刻情報のズレを解消するため(換言すれば同期をとるため)の信号を各車載通信機12に出力することが好ましい。
【0109】
また他の態様として本変形例の位置推定装置11は、ホスト機と傍聴機との時刻情報のズレ量を特定し、当該ズレ量を用いて傍聴機が報告する時刻情報を補正した上で、ラウンドトリップ時間Tpやパルス受信間隔Tqを算出するように構成されていても良い。例えば位置推定装置11は、ホスト機が発したインパルス信号の送信時刻に対して車載機間伝搬時間T1Aを加えることで、ホスト機が発したインパルス信号を傍聴機が受信する想定時刻を算出する。そして、当該想定時刻と実際に傍聴機が報告した受信時刻との差を、ホスト機と傍聴機との時刻情報のズレ量として採用する。
【0110】
なお、上述した実施形態によれば、携帯機2の位置推定に使用するラウンドトリップ時間Tpやパルス受信間隔Tqは各車載通信機12内に計測されるため、車載通信機12同士が同期している必要はない。つまり、上述した実施形態の構成は、車載通信機12間の同期をとる必要無いといった利点や、同期ずれによる推定誤差が生じにくいといった利点を有する。また、上述した実施形態の各車載通信機12は、或る所定のイベントから所定のイベントが発生するまでの時間を計測する機能(いわゆるタイマー)さえ備えていれば良く、時刻情報を保持する機能(つまり時計機能)を備えている必要はない。故に、実施形態として開示の構成によれば、変形例7、8に開示の構成よりも車載通信機12の構成を簡素化できるといった利点も有する。
【0111】
[変形例9]
上述した実施形態ではホスト機がインパルス信号を送信し、携帯機2が当該インパルスに対する応答信号を送信することで、携帯機2の位置を推定する態様を開示したが、これに限らない。図13に示すように携帯機2がインパルス信号を送信し、当該携帯機2からのインパルス信号に対する応答としてホスト機がインパルス信号を返送することによって、携帯機2の位置を推定するように構成されていても良い。そのような構成を変形例9として以下に説明する。
【0112】
本変形例における携帯機2は、ホスト機に向けたインパルス信号を送信してから、ホスト機からのインパルス信号を受信するまでの時間をラウンドトリップ時間Tpとして計測する。また、その計測したラウンドトリップ時間Tpを示すパルス系列信号(以降、時間差通知信号Sp)を別途送信する。
【0113】
ホスト機は携帯機2からのインパルス信号を受信すると、当該インパルス信号に対する応答としてのインパルス信号を携帯機2にむけて返送する。つまり本変形例におけるホスト機とは、携帯機2から送信される応答要求信号に対して、所定の応答信号を返送する車載通信機12に相当する。また、ホスト機は携帯機2からの時間差通知信号Spを受信すると、当該信号に示されているデータ(具体的には、ラウンドトリップ時間Tp)を位置推定装置11に通知する。
【0114】
本変形例の傍聴機は、携帯機2からのインパルス信号を受信したことをトリガとして、パルス受信間隔Tqの計測を開始する。つまり、傍聴機は、携帯機2からのインパルス信号を受信してから、ホストからのインパルス信号を受信するまでの時間を、パルス受信間隔Tqとして計測し、位置推定装置11に報告する。
【0115】
このような構成においては、携帯機2からホスト機までの信号の伝搬時間T21(=T12)は、以下の式によって定まる。なお、図13に示すTδは、ホスト機での応答処理時間を表しており、試験等によって具体的な値が特定されているパラメータである。換言すれば、応答処理時間Tδは、フラッシュメモリ112に登録されている値が適用されればよい。本変形例の位置推定部F3は、ステップS105に相当する処理として、時間差通知信号Spに示されているラウンドトリップ時間Tpを下記5に代入することにより第1伝搬時間T12を算出する。
【0116】
(式5) T12=(Tp−Tδ)/2
また、携帯機2から右側通信機12Aまでの距離を示すT2Aは、以下の式6によって算出可能である。
【0117】
(式6) T2A=T21+Tδ+T1A−Tq
ここで、車載機間伝搬時間T1Aとしては、フラッシュメモリ112に登録されている値、又は、変形例として上述した方法によって特定される実測値を採用する事ができる。T21は上記式5を用いて特定可能であり、Tqは傍聴機によって観測されるパラメータである。Tδは上述の通り、ホスト機での応答処理時間であって、フラッシュメモリ112に登録されている値を適用可能である。故に、上記の方法によっても、携帯機2の位置を推定することができる。本変形例の位置推定部F3は、ステップS107に相当する処理として式6の演算処理を実行すればよい。
【0118】
上記構成によれば、携帯機2が車載システム1からの信号を受信可能なように、常時受信待機状態で動作する必要がない。故に、携帯機2での消費電力を抑制可能である。
【0119】
[変形例10]
以上では各車載通信機12は何れも送信機能と受信機能の両方を備えているものとする態様を開示したがこれに限らない。仮にホスト機や傍聴機として機能させる車載通信機12を固定する場合には、傍聴機として機能させる車載通信機12は送信回路32を備えている必要はない。傍聴機は受信機能を備えていれば良い。具体的には、前部通信機12Xをホスト機とし、右側通信機12A、左側通信機12B、及び後部通信機12Cを傍聴機として使用する場合には、右側通信機12A、左側通信機12B、及び後部通信機12Cは送信回路32を備えている必要はない。送信回路32はホスト機として機能しうる車載通信機12が備えていればよい。
【0120】
<付言>
位置推定装置が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。位置推定装置11が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。位置推定装置11が備える機能の一部又は全部が、ハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。位置推定装置11は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置を介してリンクされた1組のコンピュータ資源によって提供されうる。
【符号の説明】
【0121】
100 携帯機位置推定システム、1 車載システム、2 携帯機、11 位置推定装置、12 車載通信機、12X 前部通信機(ホスト機)、12A 右側通信機(傍聴機)、12B 左側通信機(傍聴機)、12C 後部通信機(傍聴機)、112 フラッシュメモリ、113 RAM、F1 車両情報取得部、F2 役割設定部、F3 位置推定部、S105 ステップ(第1伝搬時間特定部)、S107 ステップ(第2伝搬時間特定部)、S108 ステップ(位置推定処理部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13