【解決手段】車載システムは、携帯端末と無線通信を実施するための構成として、車室内に通信エリアを形成する複数の車室内通信機と、車室外に通信エリアを形成する少なくとも1つの車室外通信機とを備える。車室内通信機のうちの1つは送信担当機として動作するとともに、他の車室内通信機は受信担当機として動作する。受信担当機は送信担当機から受信した信号の受信強度を吸収体量推定部に報告する。認証ECU11には空車状態における各受信担当機での送信担当機からの信号の受信強度を示す強度想定値が予め登録されている。認証ECU11は強度想定値と、各受信担当機から報告される受信強度とを差から、車室内に存在する電波吸収体の量を推定する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
以下、本開示に係る位置判定システムの実施形態の一例について、図を用いて説明する。
図1は、本開示に係る位置判定システムが適用された車両用電子キーシステムの概略的な構成の一例を示す図である。
図1に示すように車両用電子キーシステムは、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。
【0015】
車載システム1及び携帯端末2はそれぞれ、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離通信とする)を実施可能に構成されている。ここでの近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。本実施形態の車載システム1と携帯端末2とは一例としてBluetooth Low Energy規格に準拠して無線通信を実施するように構成されている。
【0016】
携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は、上述の近距離通信機能を備えた、ユーザが携帯可能な装置であればよい。例えばスマートフォンを携帯端末2として用いることができる。もちろん、携帯端末2は、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機等であってもよい。携帯端末2が近距離通信として送信する信号には、送信元情報が含まれている。送信元情報は、例えば携帯端末2に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末2とを識別するための情報として機能する。
【0017】
また、携帯端末2は、送信元情報を含む通信パケットを所定の送信間隔で無線送信することで、近距離通信機能を備えた周囲の通信端末に対して、自分自身の存在を通知する(すなわちアドバタイズする)。以降では便宜上、アドバイズを目的として定期的に送信される通信パケットのことをアドバタイズパケットと称する。
【0018】
アドバタイズパケットの送信間隔は携帯端末2の動作状況に応じて可変であってもよい。例えば携帯端末2において近距離通信機能を利用する所定のアプリケーションがフォアグラウンドで動作している場合、送信間隔は相対的に短い時間(例えば50ミリ秒)に設定される。一方、当該アプリケーションがフォアグラウンドで動作していない場合、送信間隔は相対的に長い時間(200ミリ秒)に設定される。携帯端末2は、車両用電子キーシステムが規定する所定の時間(例えば200ミリ秒)に少なくとも一回はアドバタイズパケットを送信するように構成されていればよい。
【0019】
車載システム1は、上述した近距離通信機能によって携帯端末2から送信されてくる信号(例えばアドバタイズパケット)を受信することで、携帯端末2が車載システム1と近距離通信可能な範囲内に存在することを検出する。以降では、車載システム1が近距離通信機能によって携帯端末2と相互にデータ通信が可能な範囲のことを通信エリアとも記載する。
【0020】
なお、本実施形態では一例として携帯端末2から逐次送信されるアドバタイズパケットを受信することで、車載システム1は通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、車載システム1がアドバタイズパケットを逐次送信し、携帯端末2との通信接続(いわゆるコネクション)が確立したことに基づいて、通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されていてもよい。
【0021】
<車両Hvの構成について>
まずは、車両Hvの構成について説明する。車両Hvは例えば乗車定員人数が5人の乗用車である。ここでは一例として車両Hvは、前部座席と後部座席とを備えるとともに、右側に運転席(換言すればハンドル)が設けられている。車両Hvの車室内空間の後端部には、荷室(換言すればトランクルーム)として機能する空間が配置されている。換言すれば、車両Hvの後部座席用の空間は、後部座席用の背もたれ部42の上方を介して荷室と連通している。
【0022】
なお、車両Hvは上述した例以外の構造を有する車両であってもよい。例えば車両Hvは左側に運転席が設けられている車両であってもよい。また、後部座席を備えない車両をであってもよい。加えて、車両Hvは車室内空間とは独立した荷室を備える車両であっても良い。後部座席を複数列備える車両であっても良い。車両Hvは、トラックなどの貨物自動車などであってもよい。また、車両Hvはキャンピングカーであってもよい。
【0023】
その他、車両Hvは、車両貸出サービスに供される車両(いわゆるレンタカー)であってもよいし、カーシェアリングサービスに供される車両(いわゆるシェアカー)であってもよい。シェアカーには、個人所有の車両をこの車両の管理者が使用していない時間帯に他者に貸し出すサービスに用いられる車両も含まれる。車両Hvが上記サービスに供される車両(以下、サービス車両)である場合には、それらのサービスの利用契約を行っている人物がユーザとなりうる。つまり、車両Hvを使用する権利を有する人物がユーザとなりうる。
【0024】
車両Hvが備える種々のボディパネルは金属部材を用いて実現されている。ここでのボディパネルとは、車両Hvの外観形状を提供する部品群である。ボディパネルには、ボディシェルに対して組み付けられるサイドボディパネルや、ルーフパネル、リアエンドパネル、ボンネットパネル、ドアパネル、ピラーなどが含まれる。以降では、種々のボディパネルを組み合わせてなる構成をボディと称する。
【0025】
金属板は電波を反射する性質を有するため、車両Hvのボディパネルは電波を反射する。すなわち、車両Hvは、電波の直進的な伝搬を遮断するボディを備える。ここでの電波とは、車載システム1と携帯端末2との無線通信に使用される周波数帯(ここでは2.4GH帯)の電波のことを指す。なお、ボディシェル自体は、鋼板などの金属部材を用いて実現されていても良いし、カーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。ここではより好ましい態様としてボディシェルも金属製とする。
【0026】
また、ここでの遮断とは、理想的には反射であるが、これに限らない。電波を所定のレベル(以降、目標減衰レベル)以上減衰できる構成が、電波の伝搬を遮断する構成に相当する。目標減衰レベルは、車室内外で電波の信号強度に有意な差が生じる値とすればよく、例えば10dBとする。なお、目標減衰レベルは5dB以上の任意の値(例えば10dBや20dB)に設定することができる。
【0027】
また、車両Hvは、ルーフパネルによって提供される屋根部を有し、このルーフパネルを支持するための部材である複数のピラーを備える。複数のピラーは、前端から後端に向けて、順に、Aピラー、Bピラー、Cピラーと呼ばれる。車両Hvは、ピラーとして、Aピラー、Bピラー、及びCピラーを備える。Aピラーは前部座席の前方に設けられたピラーである。Bピラーは、前部座席と後部座席の間に設けられたピラーである。Cピラーは後部座席斜め後ろに設けられているピラーである。
【0028】
なお、他の態様として、車両Hvは、前方から4つ目のピラーであるDピラーや、前方から5つめのピラーであるEピラーを備えていてもよい。各ピラーの一部又は全部は、高張力鋼鈑等の金属部材を用いて実現されている。なお、他の態様としてピラーは、カーボンファイバー製であっても良いし、樹脂製であってもよい。さらに、種々の材料を組み合わせて実現されていても良い。以降における右側、左側とは車両の前後方向を基準として定まる右側及び左側を指す。例えば右側Bピラーとは車両の右側に配されているBピラーを指す。
【0029】
本明細書では便宜上、車室内空間のうち、前部座席の背もたれ部41よりも車両前方となる空間のことをフロントエリアと称する。フロントエリアには、インストゥルメントパネル44の上方となる車室内空間も含まれる。また、前部座席の背もたれ部41よりも車両後方であり、且つ、後部座席の背もたれ部42よりも車両前方となる車室内空間をリアエリアと称する。さらに、後部座席の背もたれ部42よりも車両後方に位置する車室内空間をトランクエリアと称する。トランクエリアは荷室に相当するエリアである。
【0030】
<車載システム1の構成について>
次に、車載システム1の構成及び作動について述べる。車載システム1は、
図2に示すように、認証ECU11、データ通信機12、車室内通信機13、車室外通信機14、ドアハンドルボタン15、スタートボタン16、エンジンECU17、及びボディECU18を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
【0031】
認証ECU11は、概略的に、データ通信機12等との連携(換言すれば協働)によって、携帯端末2の位置を判定し、その判定結果に応じた車両制御を他のECUとの協働によって実現するECUである。認証ECU11は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、認証ECU11は、CPU111、RAM112、フラッシュメモリ113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。なお、認証ECU11は、CPU111の代わりに、MPUやGPUを用いて実現されていてもよい。また、認証ECU11は、CPU111や、MPU、GPUを組み合せて実現されていてもよい。
【0032】
CPU111は、種々の演算処理を実行する演算処理装置である。RAM112は揮発性の記憶媒体であり、フラッシュメモリ113は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。I/O114は、認証ECU11が、データ通信機12など、車両Hvに搭載されている他の装置と通信するためのインターフェースとして機能する回路モジュールである。I/O114は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
【0033】
フラッシュメモリ113には、ユーザが所有する携帯端末2に割り当てられている端末IDが登録されている。また、フラッシュメモリ113には、コンピュータを認証ECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置判定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置判定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置判定プログラムを実行することは、位置判定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
【0034】
フラッシュメモリ113には、認証ECU11が携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定するための閾値(以降、判定用閾値)として、車室内相当値Pinと車室外相当値Poutの2つのパラメータが保存されている。車室内相当値Pinは、携帯端末2は車室内に存在すると判定するための閾値である。車室外相当値Poutは、携帯端末2は車室外に存在すると判定するための閾値である。車室内相当値Pinが車室内判定値に相当し、車室外相当値Poutが車室外判定値に相当する。車室内相当値Pinや車室外相当値Poutの技術的な意義及び設定方法については別途後述する。また、フラッシュメモリ113には、後述する吸収体量推定処理で使用される通信機間強度モデルデータや、吸収体量−閾値マップデータが保存されている。認証ECU11の詳細については別途後述する。
【0035】
データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14は何れも、車両Hvに搭載されている、近距離通信を実施するための通信モジュール(以降、車載通信機)である。データ通信機12は、認証ECU11が携帯端末2とデータを送受信する役割を担う。車室内通信機13及び車室外通信機14は、携帯端末2から送信された信号の受信強度を認証ECU11に提供する役割を担う。
【0036】
データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14はそれぞれ、担当する役務が異なるだけであり、同一の構成を有する車載通信機3を用いて実現することができる。以降では、データ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14を区別しない場合には、車載通信機3と記載する。各車載通信機3は専用の通信線又は車両内ネットワークを介して認証ECU11と相互通信可能に接続されている。各車載通信機3には、固有の通信機番号が設定されている。通信機番号は、携帯端末2にとっての端末IDに相当する情報である。通信機番号は、複数の車載通信機3を識別するための情報として機能する。
【0037】
図3は、車載通信機3の電気的な構成を概略的に示したものである。
図3に示すように車載通信機3は、基板30、アンテナ31、送受信部32、及び通信マイコン33を備える。基板30は、例えばプリント基板である。基板30には、例えばアンテナ31等の車載通信機3を構成する電子部品が設けられている。
【0038】
アンテナ31は、近距離通信に用いられる周波数帯(例えば2.4GHz帯)の電波を送受信するためのアンテナである。本実施形態では一例としてアンテナ31は無指向性アンテナとする。他の態様としてアンテナ31は指向性を備えるものであってもよい。アンテナ31は、車載通信機3の厚みを抑制するために、基板30上にパターン形成されたもの(つまりパターンアンテナ)であることが好ましい。アンテナ31は送受信部32と電気的に接続されている。
【0039】
送受信部32は、アンテナ31で受信した信号を復調し、通信マイコン33に提供する。また、通信マイコン33を介して認証ECU11から入力された信号を変調して、アンテナ31に出力し、電波として放射させる。送受信部32は通信マイコン33と相互通信可能に接続されている。
【0040】
また、送受信部32は、アンテナ31で受信した信号の強度を逐次検出する受信強度検出部321を備える。受信強度検出部321は多様な回路構成によって実現可能である。受信強度検出部321が検出した受信強度は、受信データに含まれる端末IDと対応付けられて通信マイコン33に逐次提供される。なお、受信強度は、例えば電力の単位[dBm]で表現されればよい。便宜上、受信強度と端末IDとを対応づけたデータを受信強度データと称する。
【0041】
通信マイコン33は、認証ECU11とのデータの受け渡しを制御するマイクロコンピュータである。通信マイコン33は、MPUやRAM、ROM等を用いて実現されている。通信マイコン33は、送受信部32から入力された受信データを順次又は認証ECU11からの要求に基づいて認証ECU11に提供する。つまり、送受信部32が受信したデータは、通信マイコン33を介して認証ECU11に提供される。
【0042】
また、通信マイコン33は、携帯端末2の端末IDを認証するとともに、認証ECU11からの要求に基づき、携帯端末2と暗号通信を実施する機能を備える。暗号化の方式としては、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。IDの認証方式についても、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。
【0043】
その他、通信マイコン33は、受信強度検出部321から受信強度データを取得すると、図示しないRAMに蓄積していく。逐次取得される受信強度データは、例えば、最新の受信データの受信強度が先頭となるように時系列順にソートされてRAMに保存されれば良い。保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていく。つまり、受信強度データはRAMに一定時間保持される。通信マイコン33は、認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを提供する。認証ECU11に提供した受信強度データについてはRAMから削除されれば良い。
【0044】
なお、本実施形態では送受信部32が出力する受信強度データはRAMにいったん保持され、通信マイコン33が認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを認証ECU11に提供するものとするが、これに限らない。受信強度データは、認証ECU11に逐次提供される構成を採用しても良い。
【0045】
データ通信機12は、ユーザ等の操作に基づいて、携帯端末2と鍵交換プロトコルの実行(いわゆるペアリング)を実施済みの車載通信機3である。ペアリングによって取得した携帯端末2についての情報(以降、端末情報)は、通信マイコン33が備える不揮発性のメモリに保存されている。端末情報とは、例えば、ペアリングによって交換した鍵や、端末IDなどである。交換した鍵の保存はボンディングとも称される。なお、車両Hvが複数のユーザによって使用される場合には、各ユーザが保有する携帯端末2の端末情報が保存される。
【0046】
データ通信機12は、携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信すると、保存済みの端末情報を用いて自動的に携帯端末2との通信接続を確立する。そして、認証ECU11が携帯端末2とデータの送受信を実施する。なお、データ通信機12は、携帯端末2との通信接続を確立すると、通信接続している携帯端末2の端末IDを認証ECU11に提供する。
【0047】
なお、Bluetooth規格によれば、暗号化されたデータ通信は、周波数ホッピング方式で実施される。周波数ホッピング方式は、通信につかうチャンネルを時間で次々に切り替えていく通信方式である。具体的にはBluetooth規格では、周波数ホッピング・スペクトル拡散方式(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)によってデータ通信が行われる。
【0048】
Bluetooth Low Energy(以降、Bluetooth LE)では、0番から39番までの40のチャンネルが用意されており、そのうちの0番から36番までの37チャンネルがデータ通信に使用可能である。なお、37番から39番までの3チャンネルは、アドバタイズパケットの送信に供されるチャンネルである。
【0049】
データ通信機12は、携帯端末2との通信接続が確立している状態では、37個のチャンネルを逐次変更しながら携帯端末2とデータの送受信を実施する。その際、データ通信機12は、認証ECU11に対して、携帯端末2との通信に使用するチャンネルを示す情報(以降、チャンネル情報)を逐次提供する。チャンネル情報は、具体的なチャンネル番号であっても良いし、使用チャンネルの遷移規則を示すパラメータ(いわゆるhopIncrement)であってもよい。HopIncrementは、通信接続時にランダムに決定される5から16までの数字である。チャンネル情報は、現在のチャンネル番号と、HopIncrementを含むことが好ましい。
【0050】
データ通信機12は、車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置に配置されていることが好ましい。車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置とは、例えば車室内の天井部分である。また、仮に車両Hvが樹脂製のピラーを備える場合には、当該ピラー部分もまた、車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置に相当する。本実施形態のデータ通信機12は一例として、車室内の天井部分の中央付近に配置されている。
【0051】
或る車載通信機3にとっての見通し内とは、当該車載通信機3から送信された信号が直接到達可能な領域である。なお、無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る車載通信機3にとっての見通し内とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該車載通信機3が直接的に受信可能な領域に相当する。
【0052】
また、或る車載通信機3にとっての見通し外とは、当該車載通信機3から送信された信号が直接到達しない領域である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る車載通信機3にとっての見通し外とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該車載通信機3が直接的には受信できない領域に相当する。なお、携帯端末2が車載通信機3の見通し外に存在する場合であっても、携帯端末2から送信された信号は種々の構造物で反射されることによって見通し外にも到達しうる。つまり、携帯端末2がデータ通信機12の見通し外に存在する場合であっても、構造物での反射等によって携帯端末2とデータ通信機12とは無線通信を実施し得る。
【0053】
なお、本実施形態では車両Hvに設けられているデータ通信機12の数は1つであるが、これに限らない。データ通信機12としての車載通信機3は車両Hvに複数設けられていても良い。また、後述する車室内通信機13や車室外通信機14の一部が、データ通信機12として機能するように設定されていても良い。
【0054】
車室内通信機13は車室内に配されている車載通信機3である。車室内通信機13は、車室内に少なくとも1つ設けられている。
図2では便宜上、車室内通信機13を1つしか図示していないが、車載システム1は車室内通信機13を複数備えうる。本実施形態の車載システム1は
図4に示すように、車室内通信機13として、フロント通信機13A、トランク通信機13B、リア第1通信機13C、及びリア第2通信機13Dを備える。なお、前述のデータ通信機12もまた、本実施形態においては車室内に配されているため、データ通信機12もまた車室内通信機13の1つとして作動させることもできる。
【0055】
なお、
図4は車両Hvの概念的な上面図であって、種々の車室内通信機13、及び種々の車室外通信機14の設置位置を説明するために屋根部を透過させて示している。また、以降で述べる各車室内通信機13の設置位置は適宜変更可能である。さらには、車載システム1が備える車室内通信機13の個数も適宜変更可能である。車室内通信機13の数は、1個や2個、3個など、4個未満であっても良い。車室内通信機13の数は5個以上であってもよい。
【0056】
フロント通信機13Aは、車室内のフロントエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。ここでの強電界エリアとは、車載通信機3から送信した信号が所定の閾値(以降、強電界閾値)以上の強度を保って伝搬するエリアである。強電界閾値は、近距離通信の信号としては十分に強いレベルに設定されている。例えば強電界閾値は−35dBm(−0.316μW)である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、強電界エリアは別の観点によれば、車載通信機3での携帯端末2から送信された信号の受信強度が強電界閾値以上となるエリアでもある。車載通信機3から0.8m以内となる領域は、強電界エリアとなる傾向がある。携帯端末2がフロント通信機13Aの強電界エリアに存在する場合、携帯端末2からの信号の受信強度は十分に強いレベルとなる。
【0057】
フロント通信機13Aは、車室外が見通し外となる位置に設けられていることが好ましい。フロント通信機13Aは、例えばセンターコンソール43とインストゥルメントパネル44との境界付近に配置されている。なお、フロント通信機13Aの設置位置は、これに限らない。例えば運転席の足元や、運転席用のドアの車室内側の側面に配置されていても良い。フロント通信機13Aは、フロントエリアが強電界エリアとなるように、前部座席周辺の適宜設計される位置に配置されていればよい。
【0058】
トランク通信機13Bは、トランクエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。トランク通信機13Bもまた、車室外が見通し外となりやすい位置に配置されていることが好ましい。例えばトランク通信機13Bは、荷室の床部に配置されている。
【0059】
リア第1通信機13C及びリア第2通信機13Dは、主としてリアエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13である。リア第1通信機13C及びリア第2通信機13Dもまた、車室外が見通し外となりやすい位置に配置されていることが好ましい。
【0060】
リア第1通信機13Cは、例えば、右側Bピラーの室内側の面部に配置されている。なお、リア第1通信機13Cは、後部座席用のドアとして車両Hvの右側に設けられているドア(以降、後部右側ドア)の車室内側の面に設置されていてもよい。リア第1通信機13Cは、後部座席の床面の右側部分に配置されていても良いし、後部座席の着座面の右側部分に埋没されていても良い。
【0061】
リア第2通信機13Dは、例えば左側Bピラーの室内側の面部に配置されている。なお、リア第2通信機13Dは、後部座席用のドアとして車両Hvの左側に設けられているドア(以降、後部左側ドア)の車室内側の面に設置されていてもよい。また、リア第2通信機13Dは、後部座席の床面の左側部分に配置されていても良いし、後部座席の着座面の左側部分に埋没されていても良い。その他、リア第1通信機13Cやリア第2通信機13Dは、背もたれ部41の後部座席側の面の下端付近に配置されていても良い。
【0062】
なお、本実施形態の車載システム1は、リアエリアを強電界エリアとするための車室内通信機13を左右に1つずつ合計2つ備えるが、車室内通信機13の配置態様はこれに限らない。車載システム1は、1つの車室内通信機13によってリアエリアが強電界エリアとなるように構成されていても良い。リアエリア用の車室内通信機13は、例えば後部座席の着座面の車幅方向中央部付近に埋設されていてもよい。
【0063】
以上の車室内通信機13の配置態様によれば、
図5に示すように車室内全域が強電界エリアとなる。つまり、車室内全域が強電界閾値以上の電波で充填される。
図5は
図4に示す構成において、各車載通信機3が提供する強電界エリアを概念的に示したものである。
図5における実線の円は、車室内通信機13が提供する強電界エリアを表している。また、破線の円弧は、次に説明する車室外通信機14が提供する強電界エリアを表している。
図5に於いてドットパターンのハッチングを施している領域は、車室内通信機13が形成する漏れ領域を概念的に表している。車室内通信機13が形成する漏れ領域とは、車室内通信機13が提供する強電界エリアが車室外にはみ出ている領域である。換言すれば、車室内通信機13が送信した信号が所定の強電界閾値以上の強度を保って車室外に到達する領域である。
【0064】
上述した構成は、近距離通信に供される周波数の電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、当該エリアを強電界エリアとするべく車室内通信機13を配置した構成に相当する。近距離通信に供される周波数の電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物とは、前部座席の背もたれ部41や後部座席の背もたれ部42である。車室内構造物で区切られてなるエリアとは、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアである。
【0065】
車室外通信機14は、車両Hvの外面部に配されている車載通信機3である。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。
図2では便宜上、車室外通信機14を1つしか図示していないが、車載システム1は車室外通信機14を複数備えうる。車室外通信機14は、車室外の所定範囲が強電界エリアとなるように、例えば、運転席用ドアの外側面や、車両Hvの屋根部、ボンネット、ピラー等に少なくとも1つ配置されている。
【0066】
本実施形態の車載システム1は
図4に示すように、車室外通信機14として、右側面第1通信機14A、右側面第2通信機14B、左側面第1通信機14C、左側面第2通信機14D、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fを備える。なお、車載システム1が備える車室外通信機14の数は、適宜変更可能である。車室外通信機14は、2個や3個、4個など、6個以下であっても良いし、8個以上であってもよい。
【0067】
右側面第1通信機14Aは、車両Hvの右側に設けられている前部座席用のドア(以降、前部右側ドア)の周辺を強電界エリアとするための車室外通信機14である。ここでは運転席が車両Hvの右側に配置されているため、前部右側ドアは運転席用のドアに相当する。前部右側ドアの周辺とは、前部右側ドアの外側面に配置されているドアハンドルから所定距離(例えば1m)以内となる領域である。右側面第1通信機14Aは、例えば、前部座席用ドアの外側ドアハンドル付近に配置されている。ドアハンドル付近には、ドアハンドルの内部も含まれる。なお、他の態様として、右側面第1通信機14Aは、右側前輪付近に配置されていてもよい。また、右側面第1通信機14Aは前部右側ドア下のロッカー部分や、車両Hvの屋根部において前部右側ドアの上端部が接する部分などに配置されていてもよい。
【0068】
右側面第2通信機14Bは、後部右側ドアの周辺を強電界エリアとするための車室外通信機14である。後部右側ドアの周辺とは、後部右側ドアの外側面に配置されているドアハンドルから所定距離(例えば1m)以内となる領域である。右側面第2通信機14Bは、例えば後部座席用ドアの外側ドアハンドル付近に配置されている。ドアハンドル付近には、ドアハンドルの内部も含まれる。なお、他の態様として、右側面第2通信機14Bは、右側後輪付近に配置されていてもよい。また、右側面第2通信機14Bは後部右側ドア下のロッカー部分や、車両Hvの屋根部において後部右側ドアの上端部が接する部分などに配置されていてもよい。
【0069】
左側面第1通信機14C、及び左側面第2通信機14Dは、既に説明した右側面第1通信機14A、及び右側面第2通信機14Bのそれぞれと対をなす車室外通信機14である。左側面第1通信機14Cは、車両Hvの左側の側面部において、右側面第1通信機14Aと反対側となる位置に配置されている。左側面第2通信機14Dも同様に、車両Hvの左側の側面部において、右側面第2通信機14Bと反対側となる位置に配置されている。
【0070】
背面第1通信機14Eは、車両後端部の右コーナー付近に配置されている車室外通信機14である。背面第2通信機14Fは、車両後端部の左コーナー付近に配置されている車室外通信機14である。背面第1通信機14E及び背面第2通信機14Fは車両後方に強電界エリアを形成するための(つまり車両後方用の)車室外通信機14である。なお、ここでは車両後方用の車室外通信機14を2つ備える構成を開示しているが、これに限らない。車両後方用の車室外通信機14は1つであってもよい。その場合、車両後方用の車室外通信機14は、トランクドアやリアバンパなどにおける車幅方向の中央部に配置されていることが好ましい。車両後方用の車室外通信機14は、トランクドアのドアハンドルや、ナンバープレート付近に設けられていても良い。
【0071】
各車室外通信機14の設置位置は、上述した態様に限らない。車室外通信機14は、車室内通信機13が形成する漏れ領域を強電界エリアで覆うように車両Hvの外面部に配置されていればよい。車両Hvの左右側面に配されている種々の車室外通信機14(例えば右側面第2通信機14B)は、車室内通信機13(例えばリア第1通信機13C)とは側面視において重ならない位置に設けられている。
【0072】
車室外通信機14は、金属製のボディパネルの表面付近に設けられることが好ましい。換言すれば、車室外通信機14の背面には金属板が存在するように配置されることが好ましい。車室外通信機14の背面とは車室外通信機14から見て車室内空間が存在する方向である。金属製のボディパネルの表面に車室外通信機14を配置した態様によれば、当該ボディパネルが反射板として作用し、車室外通信機14の指向性の中心を車室外へと向けることができる。また、ボディパネルが反射板として作用するため、車室外通信機14にとって車室内が見通し外となり、車室外通信機14の電波が車室内に入り込んだり、車室内に存在する携帯端末2からの電波を車室外通信機14が受信したりする恐れを低減することができる。
【0073】
本実施形態では種々のボディパネルは金属製である。そのため、上述したように車室外通信機14をドアパネル等に設置する態様によれば、種々の車室外通信機14にとって車室内は見通し外となるとともに、指向性の中心が車室外方向に向く。ここでの車室外方向とは、車両水平面に平行であって、車両の中心から車室外に向かう方向である。車両水平面は車両Hvの高さ方向に直交する平面である。
【0074】
なお、車室外通信機14を金属ボディ上に配置する場合、金属ボディとアンテナ31との距離に応じて車室外方向の利得が変わりうる。金属ボディとアンテナ31との距離に応じて金属ボディでの反射波と直接波の位相差が変化し、電波を強め合ったり弱め合ったりするためである。電波を弱め合うポイントは、半波長毎に発生しうる。
【0075】
2.4GHzの電波の波長は約12cmであるため、金属ボディとアンテナ31との距離が6cmとなる場合には、車室外方向への反射波と直接波が弱め合い、車室外方向への放射利得が低下してしまう。一方、金属ボディとアンテナ31との距離が1.5cm〜4.5cmである場合には、車室外方向と車室内方向との感度比が20dB以上となり、本実施形態において好適である。故に、種々の車室外通信機14は、内蔵しているアンテナ31と、車室外通信機14の背面に存在する金属体との離隔が1.5cm程度となるように配置されていることが好ましい。
【0076】
車室内通信機13、及び、車室外通信機14は何れも主として携帯端末2からの信号の受信強度を認証ECU11に報告するための構成である。故に、以降では種々の車室内通信機13及び車室外通信機14のことを、強度観測機とも記載する。各強度観測機は、携帯端末2から送信された信号の受信強度を認証ECU11に提供する。なお、前述の通り、強度観測機の一部又は全部はデータ通信機12としての役割を担っていても良い。
【0077】
ドアハンドルボタン15は、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するためのボタンである。車両Hvの各ドアハンドルに設けられればよい。ドアハンドルボタン15は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、認証ECU11に出力する。ドアハンドルボタン15は、認証ECU11がユーザの開錠指示及び施錠指示を受け付けるための構成に相当する。なお、ユーザの開錠指示及び施錠指示の少なくとも何れか一方を受け付けるための構成としては、タッチセンサを採用することもできる。タッチセンサは、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する装置である。ユーザの開錠指示又は施錠指示を受け付けるための構成としてのタッチセンサは、車両Hvの各ドアハンドルに装備されていればよい。
【0078】
スタートボタン16は、ユーザが駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン16は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号を認証ECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、スタートボタン16は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
【0079】
エンジンECU17は、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECU17は、認証ECU11からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。
【0080】
ボディECU18は、認証ECU11からの要求に基づいて車載アクチュエータ19を制御するECUである。ボディECU18は、種々の車載アクチュエータ19や、種々の車載センサと通信可能に接続されている。ここでの車載アクチュエータ19とは、例えば、各ドアのロック機構を構成するドアロックモータや、座席位置を調整するためのアクチュエータ(以降、シートアクチュエータ)などである。また、ここでの車載センサとは、ドア毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドアの開閉を検出するセンサである。ボディECU18は、例えば認証ECU11からの要求に基づいて、車両Hvの各ドアに設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドアを施錠したり開錠したりする。
【0081】
<認証ECU11の機能について>
認証ECU11は、上述した位置判定プログラムを実行することで、
図6に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、認証ECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、通信処理部F2、認証処理部F3、吸収体量推定部F4、閾値調整部F5、位置判定部F6、及び車両制御部F7を備えている。
【0082】
なお、認証ECU11が実行する機能の一部又は全部は、論理回路等を用いたハードウェアとして実現されていてもよい。ハードウェアとして実現される態様には1つ又は複数のICを用いて実現される態様も含まれる。また、認証ECU11が備える機能ブロックの一部又は全部は、CPU111によるソフトウェアの実行と電子回路の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0083】
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU(例えばボディECU18)、スイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、ドアハンドルボタン15の押下の有無、スタートボタン16の押下の有無等が該当する。
【0084】
また、車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件等を適用することができる。
【0085】
なお、各ドアの施錠/開錠状態を示す情報を取得することは、各ドアの施錠/開錠状態を判定すること、及び、ユーザによるドアの施錠操作/開錠操作を検出することに相当する。また、ドアハンドルボタン15やスタートボタン16からの電気信号を取得することは、これらのボタンに対するユーザ操作を検出することに相当する。つまり、車両情報取得部F1はドアの開閉や、ドアハンドルボタン15の押下、スタートボタン16の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。以降における車両情報には、車両Hvに対するユーザ操作も含まれる。
【0086】
加えて、車両情報に含まれる情報の種類は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。パーキングブレーキの作動状態もまた車両情報に含めることができる。
【0087】
通信処理部F2は、データ通信機12と協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。例えば通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、データ通信機12に出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。また、通信処理部F2は、データ通信機12が受信した携帯端末2からのデータを受信する。本実施形態ではより好ましい態様として認証ECU11と携帯端末2との無線通信は、暗号化して実施されるように構成されている。通信処理部F2としての認証ECU11は、データ通信機12からチャンネル情報を取得する。これにより、認証ECU11は、データ通信機12が携帯端末2との通信に使用されるチャンネルを特定する。
【0088】
また、認証ECU11は、データ通信機12から、データ通信機12が通信接続している携帯端末2の端末IDを取得する。このような構成によれば、車両Hvが複数のユーザによって共有される車両であっても、認証ECU11は、データ通信機12が通信接続している携帯端末2の端末IDに基づいて車両Hv周辺に存在するユーザを特定する事ができる。
【0089】
その他、通信処理部F2は、データ通信機12から取得したチャンネル情報及び端末IDを、各強度観測機に参照情報として配信する。参照情報に示されるチャンネル情報によって、各強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、何れのチャンネルを受信すれば、携帯端末2からの信号を受信できるのかを認識可能となる。また、強度観測機は、参照情報に示される端末IDによって、複数のデバイスからの信号を受信している場合であっても、何れのデバイスからの信号の受信強度を認証ECU11に報告すべきかを特定可能となる。
【0090】
認証処理部F3は、データ通信機12と連携して、携帯端末2を認証する処理(以降、認証処理)を実施する。認証のための近距離通信は、データ通信機12によって、暗号化されて実施される。つまり、認証処理は暗号通信によって実施される。認証処理自体は、チャレンジ−レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。ここではその詳細な説明は省略する。認証処理に必要なデータ(例えば暗号鍵)などは携帯端末2と認証ECU11のそれぞれに保存されているものとする。
【0091】
認証処理部F3が認証処理を実施するタイミングは、例えばデータ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したタイミングとすればよい。認証処理部F3は、データ通信機12と携帯端末2とが通信接続している間、所定の周期で認証処理を実施するように構成されていても良い。また、ユーザによってスタートボタン16が押下された場合など、車両Hvに対する所定のユーザ操作をトリガとして認証処理のための暗号通信を実施するように構成されていても良い。
【0092】
なお、本実施形態ではセキュリティ向上のために認証ECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化して実施するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、認証ECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化せずに実施するように構成されていても良い。
【0093】
ところで、Bluetooth規格においてデータ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したということは、データ通信機12の通信相手が予め登録されている携帯端末2であることを意味する。故に、認証ECU11は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立したことに基づいて、携帯端末2の認証が成功したと判定するように構成されていても良い。
【0094】
吸収体量推定部F4は、車室内に配されている車載通信機3同士の通信状況(例えば受信信号の強度)に基づいて、近距離通信の電波を吸収しうる物体である電波吸収体が車室内に存在する量を推定する構成である。閾値調整部F5は、吸収体量推定部F4の推定結果に基づいて、車室内相当値Pinを調整する。吸収体量推定部F4や閾値調整部F5の作動については別途後述する。
【0095】
なお、ここでの電波吸収体とは、例えば人である。また、肉や水などの食品や、ペットなどの小動物なども電波吸収体に該当する。これらの物体は、水分を含んでおり、2.4GHzの電波を吸収しうるためである。また、チャイルドシートも電波吸収体となりうる。ここでの電波吸収体は、車室内に存在する量や位置が動的に(例えば走行ごとに)変化しうる要素である。電波吸収体は、車両Hvの通常の用途において車室内に持ち込まれうる、近距離通信の電波を吸収する性質を有する物体であればよい。車両Hvの通常の用途とは、例えば、買い物や、行楽、通勤、送迎などを指す。ここでの電波吸収体は、上記の通り乗員などを指すものであって、電波の吸収を目的として製造された物体(例えば電波吸収シートなど)に限定されない。なお、仮にユーザによって電波吸収シートが車室内に持ち込まれている場合には、当該電波吸収シートもまた、本明細書における電波吸収体に該当しうる。
【0096】
位置判定部F6は、複数の強度観測機のそれぞれから提供される、携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて、携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する構成である。携帯端末2は基本的にはユーザに携帯されるものであるため、携帯端末2の位置を判定することはユーザの位置を判定することに相当する。この位置判定部F6は、携帯端末2の位置を判定するための準備処理として、車載システム1が備える複数の強度観測機から、携帯端末2からの信号の受信強度を逐次取得するとともに、取得した受信強度を取得元毎に区別してRAM112に保存していく。
【0097】
そして、位置判定部F6は、RAM112に保存されている強度観測機毎の受信強度と、フラッシュメモリ113に登録されている種々の判定用閾値に基づいて携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する。位置判定部F6の具体的な作動、すなわち位置判定部F6が強度観測機毎の受信強度に基づいて携帯端末2の位置を判定する方法の詳細については別途後述する。なお、位置判定部F6の判定結果は、車両制御部F7によって参照される。
【0098】
車両制御部F7は、認証処理部F3による携帯端末2の認証が成功している場合に、携帯端末2(換言すればユーザ)の位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を、ボディECU18等と協働して実行する構成である。車両Hvの状態は車両情報取得部F1によって判定される。携帯端末2の位置は位置判定部F6によって判定される。
【0099】
例えば車両制御部F7は、車両Hvが駐車されている状況下で、携帯端末2が車室外に存在し、ユーザによってドアハンドルボタン15が押下された場合には、ボディECU18と連携してドアのロック機構を開錠する。また、例えば位置判定部F6によって携帯端末2は車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートボタン16がユーザによって押下されたことを検出した場合には、エンジンECU17と連携してエンジンを始動させる。
【0100】
車両制御部F7は、基本的には、車両Hvへのユーザ操作をトリガとして、ユーザの位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を実行するように構成されている。ただし、車両制御部F7が実施可能な車両制御の中には、車両Hvへのユーザ操作を必要とせずに、ユーザの位置に応じて自動的に実行するものがあってもよい。
【0101】
<接続関連処理>
次に
図7に示すフローチャートを用いて車載システム1が実施する接続関連処理について説明する。接続関連処理は、車載システム1が携帯端末2との通信接続の確立に係る処理である。
図7に示す接続関連処理は、例えばデータ通信機12が携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信した場合に開始されれば良い。
【0102】
なお、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立されていない場合には、強度観測機に関しては暗電流抑制のために動作を停止させていてもよい。データ通信機12に関しては、ユーザの接近に対する応答性を高めるために、常に待受状態で動作させておくことが好ましい。待受状態は携帯端末2からの信号(例えばアドバタイズパケット)を受信可能な状態である。
【0103】
まずステップS101ではデータ通信機12が携帯端末2との通信接続(換言すればコネクション)を確立してステップS102に移る。なお、データ通信機12は携帯端末2との通信接続が確立すると、データ通信機12と通信接続している携帯端末2の端末IDを認証ECU11に提供する。また、認証ECU11は、データ通信機12は携帯端末2との通信接続が確立した時点において、強度観測機が休止モードとなっている場合には、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、待受状態に移行させる。休止モードは、例えば信号の受信機能を停止している状態である。休止モードは電源がオフになっている状態も含まれる。
【0104】
ステップS102ではデータ通信機12が認証ECU11からの指示に基づいて定期的に暗号通信を実施する。この際にやり取りされるデータの内容は、携帯端末2に対して応答信号の返送を要求するものであれば何でもよい。チャレンジコードなど、携帯端末2を認証するためのデータであってもよい。定期的に携帯端末2と無線通信を実施することで、認証ECU11は、通信エリア内に携帯端末2が存在することを確認することができる。
【0105】
ステップS103ではデータ通信機12及び認証ECU11が協働して、参照情報の共有を開始する。具体的には、データ通信機12が、通信接続している携帯端末2の端末ID、及び、チャンネル情報を認証ECU11に逐次提供する。また、認証ECU11はデータ通信機12から提供されたチャンネル情報及び端末IDを参照情報として各強度観測機に逐次配信する。
【0106】
ステップS104では各強度観測機が、認証ECU11から提供される参照情報を用いて、携帯端末2からの信号の受信強度を観測し始める。すなわち、強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、チャンネル情報に示されている番号のチャンネルを受信対象に設定する。また、強度観測機は、受信対象とするチャンネルを、認証ECU11から提供されるチャンネル情報に応じて順次変更する。
【0107】
このような構成によれば、携帯端末2とデータ通信機12とが周波数ホッピング方式の無線通信を実施する場合であっても、携帯端末2からの信号の受信強度を取得して、認証ECU11に逐次報告される。つまり、車載システム1と携帯端末2との通信の秘匿性(換言すればセキュリティ)を確保している状態で、車載システム1が備える種々の車載通信機3が携帯端末2からの信号の受信強度を検出可能となる。
【0108】
ステップS105では強度観測機が、参照情報に示される端末IDを含む信号を受信したか否かを判定する。参照情報に示される端末IDを含む信号を受信した場合には、ステップS106に移る。ステップS106では当該受信信号の受信強度を認証ECU11に報告する。つまり、ステップS105〜S106では種々の強度観測機が、チャンネル情報に示されるチャンネルで受信した信号のうち、参照情報に示される端末IDを含む信号の受信強度を認証ECU11に報告する。なお、ステップS105において一定時間、携帯端末2からの信号を受信しなかった場合にはステップS108が実行されればよい。
【0109】
ステップS107では認証ECU11が、各強度観測機から提供される受信強度を、提供元としての強度観測機毎に区別してRAM112に保存する処理を実行し、ステップS108に移る。ステップS108では認証ECU11及びデータ通信機12が協働して、携帯端末2との通信接続が終了したか否かを判定する。携帯端末2との通信接続が終了した場合とは、例えばデータ通信機12が携帯端末2からの信号を受信できなくなった場合である。携帯端末2との通信接続が終了した場合にはステップS108が肯定判定されてステップS109を実行する。一方、携帯端末2との通信接続がまだ維持されている場合には、ステップS105に戻る。
【0110】
ステップS109では認証ECU11が、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、携帯端末2からの信号の受信強度を観測する処理を終了させる。例えば認証ECU11は、例えば強度観測機を休止モードに移行させる。ステップS109での処理が完了すると本フローを終了する。
【0111】
<吸収体量推定処理>
次に、
図8に示すフローチャートを用いて認証ECU11が実施する吸収体量推定処理について説明する。吸収体量推定処理は、車室内に存在する電波吸収体の量(つまり、吸収体量)を判定するための処理である。この吸収体量推定処理は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の吸収体量推定周期で実施される。吸収体量推定周期は、例えば1秒である。もちろん、吸収体量推定周期は400ミリ秒であってもよい。
【0112】
なお、吸収体量推定処理は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立された時点や、開かれているドアが閉じられた時点、スタートボタン16が押下された時点など、所定のイベントの発生をトリガとして実施するように構成されていても良い。吸収体量推定処理は、ドアの開閉や、スタートボタン16の押下、シフトレバー操作など、ユーザが車両Hvを使用するための所定の車両操作をトリガとして実行するように構成されていても良い。本実施形態の吸収体量推定処理は一例としてステップS201〜S205を備える。
【0113】
ステップS201では吸収体量推定部F4が、吸収体量を推定するための無線通信に係る車室内通信機13毎の役割を設定する。具体的には複数の車室内通信機13のうちのいずれか1つを送信担当機に設定するとともに、他の車室内通信機13のうちの少なくとも1つを受信担当機に設定する。送信担当機は無線信号を送信する役割を担う通信機であり、受信担当機は送信担当機が送信した信号を受信してその受信強度を認証ECU11に報告する役割を担う通信機である。送信担当機や受信担当機は車室内に設置されている車室内通信機13から選定されればよい。
【0114】
本実施形態では一例として、フロント通信機13Aが送信担当機に設定されるとともに、他の3つの車室内通信機13のそれぞれが受信担当機に設定される。つまり、トランク通信機13B、リア第1通信機13C、及びリア第2通信機13Dは受信担当機として動作する。なお、他の態様として、送信担当機はトランク通信機13Bであってもよいし、その他の車室内通信機13であってもよい。また、受信担当機は少なくとも1つあればよく、必ずしも送信担当機以外の全ての車室内通信機13を受信担当機として作動させる必要はない。
【0115】
ステップS202で吸収体量推定部F4が、通信処理部F2と協働して、送信担当機としてのフロント通信機13Aに、通信機番号を含む所定の無線信号を送信させる。当該ステップにて送信担当機としてのフロント通信機13Aが送信する信号は、例えばアドバタイズ信号とすることができる。また、本実施形態では一例として認証ECU11の指示に基づいて送信担当機が無線信号を送信するものとするがこれに限らない。送信担当機が自発的にアドバタイズ信号を定期送信するように構成されていてもよい。なお、車室内通信機13が送信担当機として動作するか否か(換言すれば動作モード)は認証ECU11(具体的には吸収体量推定部F4)の指示によって制御される。送信担当機が送信する、通信機番号を含む所定の無線信号が室内機送信信号に相当する。なお、送信担当機の通信機番号が送信元情報に相当する。
【0116】
ステップS203では、受信担当機としての各車室内通信機13が、送信担当機から送信された無線信号(例えばアドバタイズ信号)の受信強度を認証ECU11に報告する。便宜上、今回の吸収体量推定処理にてトランク通信機13B、リア第1通信機13C、リア第2通信機13Dで観測された、フロント通信機13Aからの信号の受信強度を順に、Po(AB)、Po(AC)、Po(AD)と記載する。なお、「Po」の「P」は電力(Power)を指すとともに、「o」は観測値であることを意味するものとして用いている。観測値Po(AB)、Po(AC)、及びPo(AD)を互いに区別しない場合には観測値Poと記載する。
【0117】
なお、ここでは一例として車室内通信機13ごとの観測値Poは、その車室内通信機13での1回の受信結果ではなく、直近所定時間以内における複数の(具体的には直近M回分の)受信強度の平均値とする。このような構成によれば、瞬間的な受信強度の変動の影響を緩和できるためである。なお、観測値Poは、直近M個の受信強度の中央値や最大値であってもよい。また、観測値Poは、直近M個の受信強度から、最大値と最小値を除去した受信強度の平均値であってもよい。Mは例えば5である。Mの値は3や10などとすることができる。なお、他の態様としてMは1であってもよい。M=1とする構成は、最新の受信強度をそのまま観測値Poとして採用する構成に相当する。車室内通信機13での直近M回分の受信強度をもとに算出される観測値Poが受信機個別強度代表値に相当する。
【0118】
ところで、本実施形態の種々の車載通信機3はBluetoothの規格に準拠して無線通信を実施するように構成されている。つまり、周波数ホッピングによって無線通信に使用する周波数を逐次変更する。このような構成は、送信担当機が複数の周波数を用いて室内機送信信号としての無線信号を送信する構成の一例に相当する。本実施形態の受信担当機は、複数の周波数で順次送信された室内機送信信号の受信強度を逐次検出するように構成されている。複数時点における受信強度をもとに観測値Poを算出する吸収体量推定部F4は、周波数ごとの受信強度を用いて受信機個別強度代表値としての観測値Poを算出する構成に相当する。
【0119】
ステップS204では、複数の受信担当機のそれぞれから報告された、送信担当機からの信号の受信強度と、予めフラッシュメモリ113に保存されている通信機間強度モデルデータに基づいて、車室内に存在する電波吸収体によって電波が吸収される量を表す減衰量Sを算出する。通信機間強度モデルデータは、車室内に備え付けられている構成以外の物が存在しない状態(以降、空車状態)における、各受信担当機での送信担当機からの信号の受信強度の想定値を示すデータである。
【0120】
本実施形態の通信機間強度モデルデータは、空車状態において送信担当機の送信信号に対する各受信担当機での受信強度の想定値を示す。
図9は、本実施形態の車載機間強度モデルデータの構造を概念的に示したものである。図中のPm(AB)は、送信担当機としてのフロント通信機13Aから送信された信号に対するトランク通信機13Bでの受信強度の想定値を表す。Pm(AC)やPm(AD)もそれぞれ順に、送信担当機としてのフロント通信機13Aから送信された信号に対するリア第1通信機13C、リア第2通信機13Dでの受信強度の想定値を表す。なお、「Pm」の「m」は想定値(換言すればモデル値)であることを意味するものとして用いている。
【0121】
受信強度の想定値は、当該位置推定システム100の製造者(例えば設計者)によって決定されればよい。或る車室内通信機13での受信強度の想定値は、車室内を空車状態に設定した状態においてフロント通信機13Aに複数回信号送信を実施させて得られる、複数の実測値の平均値とすることができる。上記想定値Pm(AB)、Pm(AC)、及びPm(AD)を互いに区別しない場合には想定値Pmと記載する。想定値Pmが強度想定値に相当する。また、車室内を空車状態に設定した状態がモデル環境に相当する。加えて、通信機間強度モデルデータを記憶しているフラッシュメモリ113が強度モデル記憶部に相当する。
【0122】
なお、車室内に備え付けられている構成とは例えばシートやハンドル等を指す。空車状態は、ユーザ等によって何も車室内に持ち込まれておらず、且つ、1人も乗車していない状態に相当する。空車状態は、例えば工場出荷/納品時の車室内環境に相当する。
【0123】
ところで、送信担当機から送信される信号の各受信担当機での受信強度は、運転席などのシート位置の影響も受けうる。本実施形態の車載機間強度モデルデータは、エンプディ状態であって、且つ、シートポジションが所定のデフォルト位置に設定されている状態において送信担当機に信号を複数回送信させることによって得られる、各受信担当機での受信強度の観測値をもとに決定されているものとする。
【0124】
ステップS203において吸収体量推定部F4は、車載機間強度モデルデータとして登録されている受信強度の想定値と、今回の吸収体量推定処理にて各車室内通信機13で観測された受信強度との差分(以降、モデル差分値)を算出する。例えば、トランク通信機13Bでの受信強度の想定値Pm(AB)からトランク通信機13Bで観測された受信強度Po(AB)を減算した値をモデル差分値ΔP(AB)として算出する。他の車室内通信機13についても同様に、想定値と実測値との差分であるモデル差分値ΔP(AC)、ΔP(AD)を算出する。そして、それらの平均値を減衰量Sとして採用する。なお、モデル差分値ΔP(AB)、ΔP(AC)、及びΔP(AD)を互いに区別しない場合にはモデル差分値ΔPと記載する。モデル差分値ΔPは想定値Pmから観測値Poを引いた値である。減衰量Sは、車室内通信機13毎のモデル差分値ΔPの中央値であってもよいし、所定の重み付け係数を用いて重み付け加算されたものでもよい。
【0125】
以上で算出される車室内通信機13毎の想定値Pmと観測値Poとの差分であるモデル差分値ΔPや、その平均値としての減衰量Sは、車室内に持ち込まれた電波吸収体の影響度合い(実体としては受信強度の減衰量)を示す。つまり、減衰量Sが大きいほど、電波吸収体量が多いことを示唆する。故に、減衰量Sは車室内に存在する電波吸収体の量の指標として機能するパラメータである。
【0126】
ステップS205では閾値調整部F5が、フラッシュメモリ113に保存されている吸収体量−閾値マップデータを参照し、ステップS204で算出された減衰量Sに対応する値を車室内相当値Pinに設定する。吸収体量−閾値マップデータは、
図10に示すように、吸収体量(実質的には減衰量S)に応じた車室内相当値Pinの値を示すマップである。図中に示すP0は減衰量Sが0dBである場合に適用される車室内相当値Pinを表しており、P2は減衰量Sが2dBである場合に適用される車室内相当値Pinを表している。P4は減衰量Sが4dBである場合に適用される車室内相当値Pinを表しており、P6は減衰量Sが6dBである場合に適用される車室内相当値Pinを表している。P8は減衰量Sが8dBである場合に適用される車室内相当値Pinを表している。各減衰量Sに応じた車室内相当値Pinは適宜試験等によって設計されればよい。なお、P0は、空車状態において適用される車室内相当値Pin(以降、デフォルト閾値)に相当する。
【0127】
デフォルト閾値P0は、空車状態の車室内に携帯端末2のみが存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値を基準として設計されればよい。室内機強度代表値は、各車室内通信機13での受信強度を代表的に示すパラメータであって、その定義(算出方法)については別途後述する。車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値は、車室内の各観測地点での室内機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。
【0128】
仮に、空車状態の車室内に携帯端末2のみが存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値が−35dBmであるという試験結果が得られている場合、デフォルト閾値P0は最小値‐35dBmに所定の裕度を与えた−38dBmに設定されれば良い。なお、デフォルト閾値P0は、車室内に携帯端末2だけが存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値に基づいて決定される車室内相当値Pinである。そのため、デフォルト閾値P0は、車両Hvに誰も乗っていない状態を想定して設定される車室内相当値Pinに相当する。そのような観点からデフォルト閾値P0のことを空車想定値とも記載する。
【0129】
また、P5は、大人が5人乗車している状態において、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値に所定の裕度を与えた値に設定されれば良い。車両Hvに乗車定員一杯に人が乗車している状態(以降、満員状態)を想定して設定される車室内相当値Pinのことを、満員想定値と称する。満員状態は乗車率が100%の状態を指す。満員想定値は、例えば車両Hvに大人が5人乗車している状態を指す。
【0130】
吸収体量−閾値マップデータは、減衰量Sが大きいほど車室内相当値Pinが小さくなるように構成されていればよい。例えば各減衰量Sに応じた車室内相当値Pinは、P0から減衰量Sを減算した値とすることができる。減衰量Sに応じた車室内相当値Pinは、車室内に存在する乗員の人数や着座位置を変更してなる、試験結果に基づいて決定されれば良い。
【0131】
ステップS205での処理が完了すると本フローは終了する。本フローで決定された車室内相当値Pinは、位置判定処理において利用される。なお、本実施形態では一例として吸収体量に応じた車室内相当値Pinをマップ形式で表した態様を開示しているが、吸収体量に応じた車室内相当値Pinの表現方法はマップ形式に限定されない。多様な方法で表現可能である。また、減衰量Sが0より大きい場合に適用する車室内相当値Pinは、デフォルト閾値P0に減衰量Sに応じた値を減算した値に設定されてもよい。例えば減衰量Sが0より大きい場合に適用する車室内相当値Pinは、デフォルト閾値P0から吸収体量推定部F4によって特定されている減衰量Sを減算した値とすることもできる。
【0132】
閾値調整部F5は、吸収体量推定部F4が推定した吸収体量(実体的には減衰量S)に応じて車室内相当値Pinを一意に決定可能に構成されていれば良い。また、
図10では吸収体量の増加に対して車室内相当値Pinを直線的に減少させる態様を開示しているが、吸収体量に応じた車室内相当値Pinの設定態様はこれに限らない。車室内相当値Pinは、吸収体量の増加に応じて階段状に減少するように設定されていてよいし、曲線的に減少するように設定されていても良い。
【0133】
<位置判定処理>
次に、
図11に示すフローチャートを用いて認証ECU11が実施する位置判定処理について説明する。位置判定処理は、携帯端末2の位置を判定するための処理である。この位置判定処理は、データ通信機12と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置判定周期で実施される。位置判定周期は、例えば200ミリ秒である。もちろん、位置判定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。
【0134】
まずステップS301では認証処理部F3が、データ通信機12と協働して、携帯端末2を認証する処理を実行してステップS302に移る。なお、ステップS301は省略可能である。また、携帯端末2の認証を実施するタイミングで適宜変更可能である。
【0135】
ステップS302では位置判定部F6が、RAM112に保存されている強度観測機毎の受信強度に基づいて、各強度観測機についての個別強度代表値を算出する。1つの強度観測機についての個別強度代表値とは、当該強度観測機での直近所定時間以内における受信強度を代表的に示す値である。ここでは一例として、個別強度代表値は、直近N個分の受信強度の平均値とする。このような個別強度代表値は、受信強度の移動平均値に相当する。
【0136】
本実施形態ではNは2以上の自然数であればよく、本実施形態では5とする。この場合、位置判定部F6は直近5つの時点で取得(換言すればサンプリング)された携帯端末2の受信強度を用いて移動平均値を算出することとなる。もちろん、Nは10や20などであってもよい。なお、他の態様としてNは1であってもよい。N=1とする構成は、最新の受信強度をそのまま個別強度代表値として採用する構成に相当する。
【0137】
具体的には、ステップS302において位置判定部F6は、フロント通信機13Aでの個別強度代表値として、フロント通信機13Aから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。トランク通信機13B、リア第1通信機13C、及びリア第2通信機13Dなど、他の車室内通信機13についても同様に、各車室内通信機13から提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均をそれぞれ算出する。
【0138】
また、位置判定部F6は、右側面第1通信機14Aでの個別強度代表値として、右側面第1通信機14Aから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。右側面第2通信機14B、左側面第1通信機14C、左側面第2通信機14D、背面第1通信機14E、及び背面第2通信機14Fなど、他の車室外通信機14についても同様に、各車室外通信機14から提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均を算出する。
【0139】
なお、RAM112に保存されている受信強度の数がN個未満である強度観測機の個別強度代表値については、データ欠落分の受信強度として、車載通信機3が検出可能な受信強度の下限値に相当する値を代用して算出されれば良い。車載通信機3が検出可能な受信強度の下限値は、車載通信機3の構成によって決定されればよく、例えば−60dBmなどである。
【0140】
このような態様によれば、例えば、携帯端末2に位置に起因して車載システム1が備える複数の強度観測機の一部しか携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、後続する処理を実施することができる。例えば、携帯端末2が車両Hvの右側方に存在することによって、左側面第1通信機14Cや左側面第2通信機14Dが携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、それぞれの強度観測機についての個別強度代表値を算出することができる。
【0141】
なお、本実施形態では直近N個の受信強度の平均値を個別強度代表値として用いるが、これに限らない。個別強度代表値は、直近N個の受信強度の中央値や最大値であってもよい。また、個別強度代表値は、直近N個の受信強度から、最大値と最小値を除去した受信強度の平均値であってもよい。個別強度代表値は、瞬間的な受信強度の変動成分が除去された値であることが好ましい。ステップS302での処理が完了するとステップS303に移る。
【0142】
ステップS303では位置判定部F6が、各車室内通信機13についての個別強度代表値に基づいて、室内機強度代表値Paを決定する。ここでは一例として室内機強度代表値Paは、各車室内通信機13についての個別強度代表値の最大値とする。例えば
図12に示すように種々の車室内通信機13の個別強度代表値として−31dBm、−37dBm、−38dBm、−40dBmという結果が得られている場合には、室内機強度代表値Paは−31dBmに決定する。ステップS303での処理が完了するとステップS304に移る。なお、他の態様として室内機強度代表値Paは、各車室内通信機13についての個別強度代表値の平均値や中央値であってもよい。
【0143】
ステップS304では位置判定部F6が、各車室外通信機14についての個別強度代表値に基づいて、室外機強度代表値Pbを決定する。例えば
図12に示すように種々の車室外通信機14の個別強度代表値として−45dBm、−50dBm、−47dBm、−52dBm、−55dBm、−60dBmという結果が得られている場合には、室外機強度代表値Pbは−45dBmに決定する。室外機強度代表値Pbは、室内機強度代表値と同様の規則で決定されればよい。つまり、本実施形態の位置判定部F6は、各車室外通信機14についての個別強度代表値の最大値を室外機強度代表値Pbとして採用する。ステップS304での処理が完了するとステップS305に移る。
【0144】
ステップS305では位置判定部F6が、室内機強度代表値Paが、閾値調整部F5によって設定されている車室内相当値Pin以上であるか否かを判定する。車室内相当値Pinは、前述の通り、携帯端末2が車室内に存在すると判定するための閾値であって、閾値調整部F5によって逐次調整される。室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満であるということは、携帯端末2が車室外に存在することを意味する。なお、各車室内通信機13は、車室内全域が強電界エリアとなるように配置されているため、車室外の一部にも室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上となる領域が形成されうる。つまり、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上となるケースには、携帯端末2が車室外の漏れ領域に存在するケースも含まれる。
【0145】
ステップS305の判定処理において、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上である場合にはステップS305を肯定判定してステップS306に移る。一方、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満である場合にはステップS305を否定判定してステップS308を実行する。
【0146】
ステップS306では位置判定部F6が、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上であるか否かを判定する。車室外相当値Poutは、前述の通り、携帯端末2が車室外に存在すると判定するための閾値である。車室外相当値Poutは、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値を基準として設計されればよい。車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値は、車室内の各地点に携帯端末2を配置したときの室外機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。
【0147】
仮に、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最大値が−40dBmであるという試験結果が得られている場合、車室外相当値Poutは最大値‐40dBmに所定の裕度(3dBm)を与えた−37dBmなどに設定されれば良い。車室外相当値Poutは車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値以上に設定されているため、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上であるということは、携帯端末2が車室外に存在することを意味する。
【0148】
また、各車室外通信機14は、主として車室外領域が強電界エリアとなるように配置されているとともに、車室内通信機13の漏れ領域は、車室外通信機14にとっての強電界エリアに含まれる。携帯端末2が車室外通信機14の強電界エリア内に存在する場合には、室外機強度代表値Pbは十分に高い値(具体的には車室外相当値Pout以上)となる。故に、携帯端末2が漏れ領域に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上となることが期待できる。以降では、車室外において室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上となる領域のことを室外機優勢領域と称する。
【0149】
種々の車室外通信機14は、室外機優勢領域が漏れ領域をカバーするように設けられている。故に、携帯端末2が漏れ領域に存在することに起因して室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上となる場合であっても、室外機強度代表値Pbは車室外相当値Pout以上となる。つまり、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上となる場合に、携帯端末2が車室内に存在するのか、車室外の漏れ領域に存在するのかは、室外機強度代表値Pbと車室外相当値Poutとの大小比較によって切り分けることができる。
【0150】
ステップS306の判定処理において、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上である場合にはステップS306を肯定判定してステップS308に移る。一方、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout未満である場合にはステップS306を否定判定してステップS307を実行する。
【0151】
ステップS307では位置判定部F6が、携帯端末2は車室内に存在すると判定して本フローを終了する。ステップS308では位置判定部F6が、携帯端末2は車室外に存在すると判定して本フローを終了する。ステップS307及びステップS308での判定結果は、携帯端末2の位置情報としてRAM112に保存され、車両制御部F7などによって参照される。
【0152】
<実施形態の作動及び効果>
上述した実施形態では、車室内の全域が強電界エリアとなるように、換言すれば近距離通信の電波で車室内が充填されるように、車室内通信機13が配置されている。このような車室内通信機13の配置態様によれば、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室内機強度代表値Paは十分に高い値となる。また、種々の車室外通信機14は、車室外通信機14の強電界エリアが車室内通信機13の漏れ領域を内包するように(換言すればカバーするように)車両Hvの外面部に配置されている。
【0153】
なお、車室外通信機14が車室内通信機13の漏れ領域をカバーする設置態様とは、携帯端末2が漏れ領域に存在している場合の室外機強度代表値Pbが、携帯端末2が車室内に存在している場合に観測されうる室外機強度代表値Pbよりも十分に高くなるように設置されている態様を指す。すなわち、車室外通信機14は、携帯端末2が漏れ領域に存在している場合における車室外通信機14での受信強度が、携帯端末2が車室内に存在している場合の車室外通信機14での受信強度よりも優勢となるように設置されている。
【0154】
種々の強度観測機が上述した態様で配置された構成によれば、携帯端末2が車室内に存在する場合には、複数の車室内通信機13の少なくとも何れか1つの個別強度代表値は車室内相当値Pin以上となる。故に、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室内機強度代表値Paもまた車室内相当値Pin以上となる。一方、車室外相当値Poutは十分に高い値に設定されているため、携帯端末2が車室内に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout未満となる。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であり、且つ、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout未満であることに基づいて、携帯端末2は車室内に存在すると判定できる。
【0155】
また、携帯端末2が車室外の漏れ領域に存在する場合には、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上となる。車室外通信機14は車室内通信機13の漏れ領域を強電界エリアでカバーするように配置されているためである。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であり、且つ、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上であることに基づいて、携帯端末2は車室外(具体的には漏れ領域)に存在すると判定できる。
【0156】
加えて、携帯端末2が漏れ領域の外側に相当する車室外に存在する場合には、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満となる。故に、認証ECU11は、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満であることに基づいて、携帯端末2は車室外(具体的には漏れ領域の外側)に存在すると判定できる。
【0157】
つまり、上記の構成では、車室内全域が強電界エリアとなるように構成されているため、携帯端末2が車室内の隅部に存在する場合であっても、携帯端末2は車室内に存在すると判定できる。加えて、以上の構成によれば、車室内通信機13の漏れ領域を、車室外通信機14での受信強度を用いて、車室内判定エリアから除外する。車室内判定エリアとは、車室内通信機13での受信強度に基づいて携帯端末2は車室内に存在すると認証ECU11が判定するエリアのことである。
【0158】
また、上記の構成は、車室内通信機13の信号が車室外に漏れないように車室内通信機13を配置するといった従来の設計思想とは異なるものである。上記の構成は、車室内通信機13の信号が車室外に漏れることを前提として、漏れ領域での誤判定の恐れを車室外通信機14での受信強度を用いて補正するといった技術的思想に基づくものである。このような技術的思想に基づけば、車室内通信機13の強電界エリアを大きめに設定することができる。その結果、車室内に配置する車室内通信機13の数を抑制できる。
【0159】
さらに、上述した実施形態では、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアといった、電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、車室内通信機13が配置されている。このような設置態様によれば、車室内全域が強電界エリアとなるため、携帯端末2の載置場所に起因して携帯端末2は車室外に存在すると誤判定する恐れを低減することができる。
【0160】
<減衰量Sに応じて車室内相当値Pinを調整することの効果>
加えて、本実施形態の認証ECU11は、吸収体量推定部F4によって特定された減衰量Sに応じて、車室内相当値Pinを調整する。ここでは減衰量Sに応じて車室内相当値Pinを調整することの効果について、第1の比較構成及び第2の比較構成を導入して説明する。
【0161】
第1、第2の比較構成はいずれも、乗車人数に依らずに一定の車室内相当値Pinを用いて携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定する構成である。第1の比較構成は、定員が5人の車両Hvに大人が5人乗車している状態(つまり満員状態)において観測された受信強度を元に決定した車室内相当値Pinを用いて、携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定する構成である。第2の比較構成は、空車状態において観測された受信強度を元に決定した車室内相当値Pinを用いて携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定する構成である。
【0162】
図13及び
図14に示すように、乗車人数が多い場合(例えば大人5人が乗車している場合)には、当該乗員の体によって携帯端末2が発する信号が吸収されるため、乗車人数が0人の場合に比べて、室内機強度代表値Paは相対的に低いレベルとなる。そのため、第1の比較構成で使用される車室内相当値Pinは、相対的に低い値となる。また、第2の比較構成で使用される車室内相当値Pinは相対的に高い値となる。
【0163】
なお、
図13及び
図14は、車室内及び車室外右側領域における室内機強度代表値Paと携帯端末2の位置との関係を試験した結果を表した図である。
図13に示す試験結果は、車両Hvの全ドアを閉じ且つ空車状態に設定した状態において、携帯端末2を車両Hvの窓部と同じ程度の高さ、具体的には路面からの高さが1.1mとなる位置に配置した時の室内機強度代表値を表している。また、
図14に示す試験結果は、車両Hvの全ドアを閉じ且つ満員状態に設定した状態において、携帯端末2を車両Hvの窓部と同じ程度の高さ、具体的には路面からの高さが1.1mとなる位置に配置した時の室内機強度代表値を表している。
図14における破線で示す楕円で囲む領域は、人体が存在する領域を示している。
【0164】
故に、第1の比較構成では、車室外に存在する携帯機が発した信号の受信強度が上記の車室内相当値Pinを超過しやすい。満員状態において観測された受信強度をもとに決定された車室内相当値Pinは相対的に低い値となるためである。その結果、
図15に示すように携帯端末2が車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在すると誤判定することがある。
図15は車両Hvのドアを閉めた状態において、携帯端末2を車両Hvの窓部と同じ程度の高さ、具体的には路面からの高さが1.1mとなる位置に配置した時の第1比較構成での携帯端末2の位置の判定結果を試験した結果を示す図である。
図15に示すように第1比較構成では、窓部から30cm(=0.3m)離れたところでも、携帯端末2が車室内に存在すると誤判定しうる。
【0165】
一方、第2の比較構成では、車室内に複数の乗員が存在する場合、車室内に持ち込まれている携帯機が発する信号の受信強度が上記の車室内相当値Pinを上回りにくい。空車状態において観測された受信強度をもとに決定された車室内相当値Pinは相対的に高い値となるとともに、携帯端末2が発する信号が人体で吸収されるためである。その結果、
図16に示すように携帯端末2が車室内に存在するにも関わらず、車室外に存在すると誤判定することがある。
図16は、車両Hvのドアが閉じており、且つ、平均的な体格を有する大人が5人乗車している状態における、第2比較構成での携帯端末2の位置の判定結果を試験した結果を示す図である。
図16は、携帯端末2を路面からの高さが1.1mとなる平面に配置した場合の試験結果を示している。
図16に示すように第2比較構成では、車室内の所々にて、携帯端末2が車室外に存在すると誤判定しうる。なお、図中の破線楕円で囲む領域は、人体が存在する領域を示している。また、
図16に示す例では、車室内の2%相当の領域で携帯端末2の位置を誤判定している。
【0166】
これら第1、第2の比較構成に対して、本実施形態の構成では、減衰量Sが大きいほど車室内相当値Pinとしては小さい値を適用する。例えば、誰も乗車していない状態(つまり空車状態)においては、相対的に小さい減衰量Sが算出されることが期待できるため、車室内相当値Pinとしてもデフォルト閾値P0に近い値が適用される。つまり、空車状態においては車室内相当値Pinとして相対的に高い値が設定されるため、携帯端末2が車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在すると誤判定する恐れを低減できる。
【0167】
図17は、空車状態における本実施形態の作動を試験した結果(換言すれば携帯端末2の位置の判定結果)を示す図である。
図17と
図15とを比較すれば明らかなように、本実施形態の構成によれば、携帯端末2が車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在すると誤判定する恐れを第1比較構成よりも低減できる。具体的には、車室外において車室内と誤判定する領域を窓部から10cm(=0.1m)以内まで減縮できている。これは、LF帯の電波を用いて車両用携帯機の位置を判定する車両用電子キーシステムと同等以上の判定精度である。つまり、本実施形態の構成によれば、車両用電子キーシステムの技術分野において一般的に要求される判定精度を十分に達成できている。
【0168】
また、満員状態においては相対的に大きい減衰量Sが算出されることが期待できるため、車室内相当値Pinとしても満員想定値に近い値が適用される。つまり、満員状態においては車室内相当値Pinとして相対的に低いが設定されるため、携帯端末2が車室内に存在するにも関わらず、車室外に存在すると誤判定する恐れを低減できる。
【0169】
図18は、満員状態における本実施形態の作動を試験した結果(換言すれば携帯端末2の位置の判定結果)を示す図である。
図18と
図16とを比較すれば明らかなように、本実施形態の構成によれば、携帯端末2が車室内に存在するにも関わらず、車室外に存在すると誤判定する恐れを第1比較構成よりも低減できる。具体的には、車室内において車室外と誤判定する領域を0%まで減縮できている。なお、
図16及び
図18において破線の楕円で囲む領域は、人体が存在する領域を示している。
【0170】
加えて、以上では乗員の多寡に応じて車室内相当値Pinが変更される態様を説明したが、上述の通り減衰量Sには、車室内に持ち込まれている荷物の量等も反映される。減衰量Sには、乗車人数だけでなく、荷物の量なども総合的に含めた、車室内に存在する電波吸収体の影響度合いが反映されるため、車室内相当値Pinとしてより適正な値が設定される。このような構成によれば、乗車人数や車室内に持ち込まれている荷物の量等に由来して、携帯端末2が車室内に存在するにも関わらず、携帯端末2は車室内に存在すると誤判定する恐れを低減することができる。
【0171】
なお、電波吸収体の量を推定することは、携帯端末2からの電波(無線信号)が車室内に存在する物体で吸収される量を推定することに相当する。吸収体量推定部F4は、別の観点によれば、携帯端末2からの電波(無線信号)が車室内に存在する物体で吸収される量を推定する構成である。電波吸収体の量を推定するという表現には、車室内に存在する物体によって携帯端末2からの電波が吸収される量を推定する態様も含まれる。また、電波吸収体の量を推定するという表現には、具体的には、減衰量Sを算出する態様の他、別途後述するように、乗車人数を特定することや、乗員の総重量や体積(体格)の総和を求める態様も含まれる。
【0172】
また、減衰量Sが大きくなる場合とは、各受信担当機での送信担当機からの信号(つまり室内機送信信号)の受信強度が小さい場合である。減衰量Sが車室内に存在する電波吸収体の量の指標として機能するように、各受信担当機での送信担当機からの信号の受信強度その自体も、車室内に存在する電波吸収体の量の指標として機能する。また、送信担当機からの信号に対する受信担当機での受信強度が小さいほど、減衰量Sは大きくなり、その結果として車室内相当値Pinは小さい値に設定される。つまり、上記の構成は、吸収体量推定部F4が車室内に存在する電波吸収体の量の指標として各受信担当機での室内機送信信号の受信強度を取得するとともに、当該受信強度が小さいほど閾値調整部F5が車室内相当値を小さい値に設定する構成の一例に相当する。
【0173】
また、減衰量Sが大きくなる場合とは、各受信担当機での送信担当機からの信号(つまり室内機送信信号)の受信強度が小さく、その結果として、モデル差分値ΔPが大きい場合である。減衰量Sが車室内に存在する電波吸収体の量の指標として機能するように、各受信担当機についてのモデル差分値ΔPも、車室内に存在する電波吸収体の量の指標として機能する。また、各受信担当機についてのモデル差分値ΔPが大きいほど、減衰量Sは大きくなり、その結果として車室内相当値Pinは小さい値に設定される。つまり、上記の構成は吸収体量推定部F4が車室内に存在する電波吸収体の量の指標として各受信担当機についてのモデル差分値ΔPを算出するとともに、当該モデル差分値ΔPが大きいほど閾値調整部F5が車室内相当値を小さい値に設定する構成の一例に相当する。
【0174】
なお、上述した実施形態では複数の車室内通信機13を受信担当機として動作させる態様を開示したが、受信担当機は1つでもよい。その場合には、当該受信担当機での観測値Poから定まるモデル差分値ΔPがそのまま減衰量Sとして採用される。つまり、受信担当機が1つである場合、モデル差分値ΔPが減衰量Sに相当するため、当該モデル差分値ΔPが大きいほど閾値調整部F5が車室内相当値を小さい値に設定することとなる。
【0175】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
【0176】
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
【0177】
[変形例1]
認証ECU11は、送信担当機とする車室内通信機13を動的に変更するように構成されていてもよい。例えば吸収体量推定部F4は、フロント通信機13A、トランク通信機13B、リア第1通信機13C、リア第2通信機13Dの順に送信担当機とする車載通信機3を変更する(換言すれば入れ替える)ように構成されていても良い。当該構成は、送信担当機を交代制にする構成に相当する。
【0178】
本実施形態の通信機間強度モデルデータは、例えば
図19に示すように、複数の車室内通信機13のいずれか1つを送信担当機とし、他の車室内通信機13を受信担当機とした時の、各受信担当機での受信強度の想定値を示すデータとすればよい。すなわち、本変形例の通信機関強度モデルデータは、フロント通信機13Aを送信担当機とした場合の他の車室内通信機13での受信強度の想定値だけでなく、トランク通信機13Bを送信担当機とした場合や、リア第1通信機13Cを送信担当機とした場合などにおける他の車室な通信機13での受信強度の想定値を含む。車室内通信機13の組み合わせ毎の受信強度の想定値は試験等によって決定されれば良い。
【0179】
本実施形態の吸収体量推定部F4は、ステップS204の処理として、全ての組み合わせにおけるモデル差分値ΔPを算出し、それらの平均を減衰量Sとして採用すれば良い。このような構成は、電波吸収体の影響度合いをより多様な方向から評価することに相当する。そのため、車室内に存在する電波吸収体の量をより一層精度良く評価することができる。その結果、車室内相当値Pinの値をより適正に設定でき、携帯端末2の位置の判定精度が高まることが期待できる。
【0180】
なお、各車室内通信機13は互いに見通し外となる位置に設けられていることが好ましい。これは次の理由による。仮に受信担当機が送信担当機の見通し内に配置されている場合、送信担当機から受信担当機までの直接波の伝搬経路上に人体や荷物などといった電波吸収体が存在するか否かによって受信担当機での受信強度が大きく変動する。つまり電波吸収体の車室内位置が減衰量Sに与える影響が大きくなってしまう。一方、減衰量Sは、車室内に存在する電波吸収体の量そのものを示すデータとして用いるため、車室内における電波吸収体の位置が減衰量Sに与える影響は抑制したい。仮に、受信担当機が送信担当機の見通し外に配置されている場合には、受信担当機が受信する信号は反射波(換言すればマルチパス波)となるため、車室内における電波吸収体の位置の影響を低減できる。つまり、複数の車室内通信機13を互いに見通し外となる位置に設けた構成によれば、車室内における電波吸収体の位置によって減衰量がばらつく恐れを低減する事ができる。換言すれば、減衰量Sに対して電波吸収体の位置が与える影響を低減でき、車室内における電波吸収体の量そのものを示す指標としての精度を高めることができる。
【0181】
[変形例2]
以上では、車室内環境を空車状態に設定した場合の受信強度を基準としてモデル差分値ΔPを算出する態様を開示したが、これに限らない。通信機間強度モデルデータは、車室内が満員状態である場合の受信強度の想定値を示すデータとしてもよい。減衰量Sを算出するために使用する通信機間強度モデルデータは、任意の車室内環境において観測された受信強度をもとに生成されれば良い。
【0182】
[変形例3]
以上では、車室内通信機13だけを用いて減衰量Sを算出する態様を開示したが、これに限らない。データ通信機12が車室内に配置されている場合には、種々の車室内通信機13に加えてデータ通信機12も併用して減衰量Sを算出するように構成されていてもよい。
【0183】
[変形例4]
以上では減衰量Sから直接的に車室内相当値Pinを決定する構成を開示したがこれに限らない。吸収体量推定部F4は、減衰量Sに基づいて乗車人数を推定するように構成されていてもよい。その場合、閾値調整部F5は、吸収体量推定部F4が推定した乗車人数に応じた値に車室内相当値Pinを設定するものとする。減衰量Sと乗車人数との対応関係や、乗車人数に応じた車室内相当値Pinは予めマップ等によって定義されていれば良い。車室内相当値Pinは乗車人数が多いほど小さい値が適用されるように構成されていればよい。
【0184】
[変形例5]
吸収体量推定部F4は、ボディECU18から運転席や助手席のシート位置を示すデータを取得し、各シートの位置に応じて、減衰量Sの算出に使用する通信機間強度モデルデータを使い分けるように構成されていても良い。なお、前提としてフラッシュメモリ113には、各シートの設定位置の組み合わせ(換言すればパターン)毎の通信機間強度モデルデータが登録されているものとする。
【0185】
[変形例6]
上述した実施形態ではデータ通信機12、車室内通信機13、及び車室外通信機14はそれぞれ、同一の構成を有する車載通信機3を用いて実現されているものとしたが、これに限らない。車室内通信機13及び車室外通信機14は送信機能を備えない(換言すれば受信のみを行う)構成となっていても良い。その場合には、吸収体量推定処理においてデータ通信機12が送信担当機として動作するとともに、車室内通信機13は受信担当機としてのみ作動する。
【0186】
[変形例7]
以上の構成では、フロントエリアや、リアエリア、トランクエリアといった、電波の伝搬を阻害しうる車室内構造物で区切られてなるエリア毎に、車室内通信機13が配置されている。車室内には、車載通信機3が2以上存在していれば良い。他の実施の形態としては、車室内に、データ通信機12としての車載通信機3と、フロント通信機13Aのみを設けた構成も採用可能である。もちろん、車室内に、データ通信機12としての車載通信機3と、トランク通信機13Bのみを設けた構成も採用可能である。さらには、車室内に、データ通信機12としての車載通信機3と、フロント通信機13Aと、トランク通信機13Bのみを設けた構成も採用可能である。フロント通信機13Aをデータ通信機12として動作させる場合には、車室内にはフロント通信機13Aの他に、トランク通信機13B、リア第1通信機13C、及びリア第2通信機13Dの少なくとも1つが設けられていれば良い。
【0187】
[変形例8]
上述した実施形態では送信担当機から送信された信号の各受信担当機での受信強度に基づいて車室内に存在する電波吸収体の量を推定する態様を開示したが、車室内相当値Pinを動的に変更するための実施態様はこれに限らない。例えば車載システム1が
図20に示すように座席毎の着座センサ51を備える場合、吸収体量推定部F4は、当該着座センサ51の検出結果を用いて乗車人数を検出するように構成されていても良い。
【0188】
着座センサ51は、車両Hvの座席にユーザが着座しているか否か(つまり着座状態)を検出するセンサであって、例えば車両Hvの各座席に配置されている。着座センサは、感圧素子などを用いて実現されている。便宜上、吸収体量推定部F4のうち、乗員の人数を推定する機能のことを乗車人数特定部F41と称する。なお、乗車人数特定部F41は吸収体量推定部F4のサブ機能として設けられていても良いし、吸収体量推定部F4そのものとして認証ECU11に備えられていてもよい。
【0189】
乗車人数が多いほど車室内に電波吸収体が多いことを意味する。故に、本変形例の閾値調整部F5は、乗車人数が多いほど、車室内相当値Pinとして採用する値を小さい値に設定する。なお、本変形例ではフラッシュメモリ113に乗車人数毎の車室内相当値Pinを予め登録しておき、実際の乗車人数に応じてこれらを使い分けるように構成されていても良い。
【0190】
なお、着座センサ51が例えば感圧フィルムセンサなどを用いて座席に加わる荷重の分布を検出可能に構成されている場合、吸収体量推定部F4は各着座センサ51が出力する荷重分布データから着座者の体重/体格/体積を推定するように構成されていても良い。その場合には、乗員毎の体格から、乗員が大人であるか子供であるかなどを判別可能となり、電波吸収体の量をより精度良く評価可能となる。例えば吸収体量推定部F4は、子供は大人0.7人に相当するものとして、乗員人数を計算してもよい。その他、吸収体量推定部F4は、座席毎の乗員の体重の合計値に基づいて電波吸収体の総量を算出してもよい。その場合には体重の総和が大きいほど、電波吸収体は多いとみなせばよい。
【0191】
なお、以上では乗車人数特定部F41が着座センサ51の検出結果に基づいて乗員人数を推定する態様を開示したがこれに限らない。乗車人数を示すデータを出力するセンサとしては、着座センサ51の代わりに、シートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサを採用できる。つまり、乗車人数特定部F41は、シートベルトセンサの検出結果に基づいて、乗車人数を特定するように構成されていてもよい。その他、乗車人数特定部F41は車室内を検知範囲とする赤外線センサを用いて乗車人数を判定してもよい。便宜上、乗員の人数を含む、乗員構成を示すデータを出力するデバイスのことを乗員情報出力装置と称する。前述の着座センサ51やシートベルトセンサ、赤外線センサなどが乗員情報出力装置に該当する。
【0192】
また、車載システム1が乗員情報出力装置として
図21に示すように車室内全域を撮影するように設置された車室内カメラ52を備える場合、乗車人数特定部F41は、車室内カメラ52の撮像画像を解析することによって乗車人数を判定すればよい。加えて、吸収体量推定部F4は乗員情報出力装置として車室内カメラ52を利用可能に構成されている場合、各乗員についての画像を個別に解析することにより、各乗員が大人か子供かを識別したり、各乗員の体格の大きさを推定したりすることにより、より適正に電波吸収体の量を算出するように構成されていることが好ましい。吸収体量推定部F4は、以上で述べた種々の乗員情報出力装置の出力データを相補的に組み合わせて使用するように構成されていても良い。例えば吸収体量推定部F4は、着座センサ51と車室内カメラ52とを併用して、乗車人数等を特定するように構成されていてもよい。
【0193】
また、吸収体量推定部F4は、第1実施形態に記載の減衰量Sと、各種乗員情報出力装置の出力データとを組み合わせて吸収体量を推定するように構成されていても良い。例えば、乗員人数特定部F541が乗員情報出力装置の出力データによって乗員人数を特定し、閾値決定部F5が当該乗員人数に応じた室内相当値Pinを仮閾値としてフラッシュメモリ113から読み出す。乗員人数毎の室内相当値Pinを示すデータ(以降、乗車人数−閾値データ)は予め試験等によって設計されて、フラッシュメモリ113に保存されていれば良い。
【0194】
そして、閾値調整部F5は、乗車人数に応じた仮閾値を、減衰量Sに応じて調整した値を最終的な室内相当値Pinとして採用する。例えば閾値調整部F5は、減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データから特定された乗車人数よりも多い場合には、乗車人数に応じた仮閾値を所定量小さい値に設定する。フラッシュメモリ113は、減衰量Sから想定される乗車人数を示すデータが、減衰量−乗車人数データとして登録されていればよい。減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数よりも多い場合とは、乗員の中に体格が大きい人が混在している場合や、着座センサ等の乗員情報出力装置が乗員人数を誤検出している場合である。また、閾値調整部F5は、減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数よりも少ない場合には、乗車人数に応じた仮閾値を所定量大きい値に設定する。減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数よりも少ない場合とは、例えば乗員に占める子供の割合が多い場合や、着座センサ等の乗員情報出力装置が乗員人数を誤検出している場合である。このような構成によれば、室内相当値Pinを乗員構成に応じたより適正な値に設定することができる。減衰量Sに応じた仮閾値の調整量は1〜3dB程度に設定されれば良い。また、減衰量Sに応じた閾値の調整量は、減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数の乖離度合いに応じた値に設定されてもよい。例えば減衰量Sから推定される乗車人数が、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数の差が1人である場合には調整量は1dBとし、両者の差が2人である場合には2dBとすればよい。なお、上記の構成は、別の観点によれば、乗員情報出力装置の出力データに基づいて定まる乗車人数から想定される減衰量Sに対して実際に観測された減衰量Sが大きいほど、室内相当値Pinを小さい値に設定する構成に僧都する。
【0195】
[変形例9]
吸収体量推定部F4は、着座センサ51等の乗員情報出力装置の出力データ(例えば検出結果)に基づいて、車室内における乗員の着座位置を推定するように構成されていても良い。吸収体量推定部F4が着座位置を推定可能に構成されている場合、位置判定部F6は各車室内通信機13での個別強度代表値に対して、車室内通信機13の設置位置と吸収体量推定部F4によって特定されている着座位置に応じた補正量を付与した上で、室内機強度代表値Paを決定するように構成されていても良い。
【0196】
例えば、右側後部座席に人が座っている場合には、当該人物によって携帯端末2からの信号が吸収されるため、リア第1通信機13Cでの受信強度が低減されうる。故に、右側後部座席に人が座っている場合には、リア第1通信機13Cでの実際の受信強度から算出される個別強度代表値から数dBmほど(例えば2dBm)加算した値を、室内機強度代表値を決定するための個別強度代表値として使用する。車室内通信機13毎の個別強度代表値としては、実際の受信強度から算出される個別強度代表値に対して、着座位置に応じた補正を施した値を用いて、室内機強度代表値Paが決定されるように構成されていても良い。
【0197】
或る車室内通信機13についての個別強度代表値に対して補正を施すか否かは当該車室内通信機13の近くの席に乗員が着座しているか否かによって判断されれば良い。換言すれば各車室内通信機13の個別強度代表値に対する補正量は、当該車室内通信機13と対応付けられている席に乗員が着座しているかによって決定されればよい。個別強度代表値に対する補正量は予めフラッシュメモリ113に登録されていれば良い。なお、補正量は乗員の体格に応じて変更されても良い。着座している乗員の体格が大きいほど補正量は大きい値に設定されれば良い。
【0198】
[変形例10]
上述した実施形態では、車両Hvの右側面部及び左側面部に2つずつの車室外通信機14が配置されている構成を開示したがこれに限らない。車両Hvの右側面部及び左側面部には車室外通信機14が1つずつ配置されていてもよい。
【0199】
また、車室外通信機14は
図22に示すように、車両HvのBピラー45Bに配置されていても良い。もちろん、Aピラー45Aや、Cピラー45Cに配置されていても良い。さらに、車室外通信機14は、車両Hvの側面部と屋根部との境界付近(以降、側面上端部)46に配置されていても良い。このような構成は、車室外通信機14を窓部の上側に位置する部分に設けた構成に相当する。側面上端部46は、車両Hvの屋根部において車両Hvのドアの上端部が接する部分に相当する。
【0200】
なお、種々のピラーや、側面上端部46が、車両Hvの外面部における窓部近傍領域に相当する。また、窓部の下端部から1波長以内となる部分も、窓部近傍領域に含めることができる。つまり、ここでの窓部近傍領域とは、窓枠部分から1波長以内となる外面部を指す。種々の車室外通信機14は、窓の外側部分を強電界エリアとする設置態様で配置されていることが好ましい。車室外通信機14の設置態様を構成するパラメータとしては、搭載位置や、搭載姿勢(換言すれば指向性)などを採用することができる。
【0201】
[変形例11]
上述した実施形態では、金属製のボディを備える車両Hvに本開示に係る位置判定システムを適用した態様を開示したが、位置判定システムの適用先として好適な車両は、金属製のボディを備える車両に限らない。
【0202】
例えば車両Hvのボディを構成する種々のボディパネルは、電波の伝搬を5dB以上減衰させるほど十分な量のカーボンが充填されているカーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。このようなボディを備える車両もまた、位置判定システムの適用対象として好適である。
【0203】
また、車両Hvのボディパネルは、車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されていてもよい。車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されている場合には、ボディパネルの表面に電波の伝搬を遮断する機能を奏する特定の金属パターンが設けられることが好ましい。電波の伝搬を遮断する機能を奏する金属パターン(以降、シールドパターン)とは、例えば銀ナノワイヤなどの細線導体を電波の12波長以下の間隔で格子状に配置したパターンなどである。ここでの細線とは、線幅が50μm以下のものを指すこととする。
【0204】
なお、上記のシールドパターンは、メタ・サーフェス構造を援用して実現することができる。メタ・サーフェス構造は、ユニットセル(Unit Cell)と呼ばれる人工構造を繰り返し配列した構造である。メタ・サーフェス構造によれば特定の周波数帯の電波(ここでは電波)のみを選択的に反射したり減衰させたり(すなわち遮断)することができる。また、車両Hvのボディは、汎用樹脂製のボディの上に、金属粉やカーボン粉末を含む塗料が塗られることによって電波の伝搬を遮断するように構成されていてもよい。さらに、電波の伝搬を遮断するフィルム(以降、シールドフィルム)がボディに貼り付けられていてもよい。このようなボディを備える車両もまた、位置判定システムの適用対象として好適である。車両Hvのボディの一部又は全部は、汎用樹脂を用いて形成されていてもよい。
【0205】
<付言>
認証ECU11が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、認証ECU11がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。また、認証ECU11は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置を介してリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。