【解決手段】コンバータ10aは、バッテリ20の電圧を昇圧して、インバータ30を介してモータジェネレータ40へ供給するものである。コンバータ10aは、上アーム12と下アーム13とを備えている。上アーム12は、複数の第1上アーム素子12a、12bのみを有し、複数の上アーム素子12a、12bの少なくとも一つがMOSFETである。また、下アーム13は、上アーム素子12a、12bと直接接続された下アーム素子13a、13bがIGBTである。
一方の端子が前記バッテリと接続され、他方の端子が前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との間に導電部材を介して接続され、電気エネルギーを蓄積且つ放出可能なリアクトル(11、11a、11b)を、さらに備え、
前記上アームは、前記上アームスイッチング素子として、前記MOSFETに加えて、前記MOSFETとは異なる他スイッチング素子を有しており、
前記MOSFETは、前記他スイッチング素子よりも、前記リアクトルに近い位置に配置されている請求項1に記載の車両用電力変換装置。
一方の端子が前記バッテリと接続され、他方の端子が前記上アームスイッチング素子と前記下アームスイッチング素子との間に導電部材を介して接続され、電気エネルギーを蓄積且つ放出可能なリアクトル(11、11a、11b)を、さらに備え、
前記上アームは、前記上アームスイッチング素子として、前記MOSFETに加えて、前記MOSFETとは異なる他スイッチング素子を有しており、
前記MOSFETは、前記他スイッチング素子よりも、前記リアクトルから遠い位置に配置されている請求項1に記載の車両用電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態の車両用電力変換装置に関して、
図1、
図2、
図3を参照しつつ説明する。本実施形態では、車両用電力変換装置をコンバータ10aに適用した例を採用する。コンバータ10aは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載可能に構成されている。よって、コンバータ10aは、車載用コンバータ10aや、車載用電力変換装置10aと言い換えることができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態では、一例として、バッテリ20、インバータ30、制御部50と電気的に接続されたコンバータ10aを採用している。詳述すると、コンバータ10aは、入力端子VL1、VL2がバッテリ20と電気的に接続されており、出力端子VH1、VH2がインバータ30と電気的に接続されている。
【0014】
なお、本開示の車両用電力変換装置は、インバータ30を備えていてもよい。つまり、本開示の車両用電力変換装置は、コンバータ10aとインバータ30が一体的に構成されたものであってもよい。一体的に構成されているとは、例えば、コンバータ10aやインバータ30などがケース内に配置された構造体となっていることである。
【0015】
本実施形態では、一例として、昇圧モードに加えて、降圧モード及び非昇圧モードを行うことが可能なコンバータ10aを採用している。コンバータ10aは、昇圧モード時、直流電源であるバッテリ20の電圧を昇圧して、昇圧した電圧をインバータ30に供給する。さらに、後程説明するが、インバータ30は、モータジェネレータ40に電気的に接続されている。このため、コンバータ10aは、バッテリ20の電圧を昇圧して、インバータ30を介してモータジェネレータ40へ供給する。
【0016】
一方、コンバータ10aは、降圧モード時、インバータ30から出力された直流電圧を降圧して、降圧した電圧をバッテリ20に供給する。つまり、モータジェネレータ40の回生によって出力される交流電圧は、インバータ30で直流電圧に変換されてコンバータ10aに供給される。そして、コンバータ10aは、直流電圧で降圧してバッテリ20に供給する。なお、モータジェネレータ40からインバータ30へと出力される交流電圧は、モータジェネレータ40において発電される電圧である。
【0017】
バッテリ20は、モータジェネレータ40のエネルギー貯蔵手段としての2次電池を採用することができる。また、バッテリ20は、例えば、複数の電池セルの直列接続体としての組電池を採用することができる。
【0018】
インバータ30は、モータジェネレータ40に電気的に接続されている。インバータ30は、昇圧後の直流電力を交流電力に変換する。インバータ30は、コンバータ10aで昇圧された直流電圧を交流電圧(三相交流)に変換し、この三相交流でモータジェネレータ40を駆動する。インバータ30は、この交流電圧を用いて、モータジェネレータ40を駆動させ、車両を走行させることができる。
【0019】
モータジェネレータ40は、特許請求の範囲におけるモータに相当する。モータジェネレータ40は、車両の走行時に駆動輪を駆動させる駆動源として用いられるとともに、ブレーキを踏んだりアクセルを緩めたりする減速時に駆動輪の回転力で回転して回生エネルギーを発生させる発電機として用いられる。
【0020】
制御部50は、後程説明する第1上スイッチング部S11、第2上スイッチング部S12、第1下スイッチング部S21、第2下スイッチング部S22のスイッチング動作を制御する。
【0021】
ここで、コンバータ10aの構成及び動作に関して説明する。
図1に示すように、コンバータ10aは、リアクトル11、上アーム12、下アーム13、ノイズ抑制コンデンサ14、平滑コンデンサ15などを備えている。
【0022】
しかしながら、コンバータ10aは、ノイズ抑制コンデンサ14、平滑コンデンサ15を備えていなくてもよい。つまり、本開示の車両用電力変換装置は、ノイズ抑制コンデンサ14、平滑コンデンサ15を備えていなくてもよい。また、本開示の車両用電力変換装置は、リアクトル11、上アーム12、下アーム13、ノイズ抑制コンデンサ14、平滑コンデンサ15、インバータ30が一体的に構成されたものであってもよい。さらに、本開示の車両用電力変換装置は、ノイズ抑制コンデンサ14、平滑コンデンサ15を含まず、リアクトル11、上アーム12、下アーム13、インバータ30が一体的に構成されたものであってもよい。
【0023】
リアクトル11は、一方の端子がバッテリと電気的に接続され、他方の端子が上アーム12のスイッチング部S11、S12と下アーム13のスイッチング部S21、S22との間に電気的に接続されている。リアクトル11は、電気エネルギーを蓄積及び放出可能に構成されている。なお、上アーム12のスイッチング部S11、S12は、後程説明する第1上スイッチング部S11と第2上スイッチング部S12に相当する。下アーム13のスイッチング部S21、S22は、後程説明する第1下スイッチング部S21と第2下スイッチング部S22に相当する。
【0024】
上アーム12は、上アームスイッチング素子に相当する第1上アーム素子12aと、第2上アーム素子12bとを有している。
【0025】
第1上アーム素子12aは、第1上スイッチング部S11と、還流ダイオードとしての第1上ダイオード部D11とを含んでいる。第1上アーム素子12aは、MOSFETを採用する。よって、第1上アーム素子12aは、MOSFETの第1上スイッチング部S11と、寄生ダイオードである第1上ダイオード部D11とを備えているとも言える。このため、第1上アーム素子12aは、第1上スイッチング部S11と別体の還流ダイオードが必要ない。
【0026】
第1上スイッチング部S11は、ドレインが高電位ラインに接続され、ソースが第1下スイッチング部S21のコレクタに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。なお、MOSFETは、Siを主成分として構成されたもの、SiCを主成分として構成されたもの、GaNを主成分として構成されたものなどを採用することができる。
【0027】
第2上アーム素子12bは、第2上スイッチング部S12と、還流ダイオードとしての第2上ダイオード部D12とを含んでいる。第2上アーム素子12bは、IGBTを採用する。第2上スイッチング部S12は、コレクタが高電位ラインに接続され、エミッタが第2下スイッチング部S22のコレクタに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。なお、第2下スイッチング部S22は、Siを主成分として構成されたものを採用することができる。また、第2上アーム素子12bは、MOSFETやRC−IGBTであっても採用することができる。
【0028】
このように、上アーム12は、複数の上アーム素子12a、12bのみを有し、複数の上アーム素子12a、12bの少なくとも一つがMOSFETで構成されている。言い換えると、上アーム12は、複数のスイッチング部と、各スイッチング部に並列に設けられた還流ダイオードのみを有しており、少なくとも一つのスイッチング部がMOSFETのスイッチング部の構成を成している。このため、上アーム12は、第1上スイッチング部S11に対してショットキーバリアダイオードなどの他の素子が並列に接続された構成よりも部品点数を減らすことができる。つまり、MOSFETである第1上アーム素子12aは、別チップのショットキーバリアダイオードが並列に接続されていない。なお、上アーム素子の全てがスイッチング部と還流ダイオードのみを有している構成に限定されるものではなく、一部の上アーム素子は、還流ダイオードを有さないIGBTのみで構成されてもよい。また、上アーム12は、スイッチング部とダイオード部の数が同じか、もしくは、スイッチング部の数よりもダイオード部の数の方が少ないと好ましい。
【0029】
なお、本実施形態では、一例として、二つの上アーム素子12a、12bを備えた例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず、三つ以上の上アーム素子を備えていてもよい。
【0030】
下アーム13は、下アームスイッチング素子に相当する第1下アーム素子13aと、第2下アーム素子13bとを有している。第1下アーム素子13aは、第1下スイッチング部S21と、還流ダイオードとしての第1下ダイオード部D21とを含んでいる。同様に、第2下アーム素子13bは、第2下スイッチング部S22と、還流ダイオードとしての第2下ダイオード部D22とを含んでいる。第1下アーム素子13aと第2下アーム素子13bは、同様の構成を有している。よって、以下においては、両素子13a、13bで区別する必要がない場合、第1下アーム素子13aを用いて説明する。
【0031】
第1下アーム素子13aは、RC−IGBTを採用する。よって、第1下アーム素子13aは、第1下スイッチング部S21と第1下ダイオード部D21とが同一のチップに設けられている。このため、第1下アーム素子13aは、第1下スイッチング部S21と別体の還流ダイオードが必要ない。
【0032】
第1下スイッチング部S21は、コレクタが第1上スイッチング部S11のソースに接続され、エミッタが低電位ラインに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。第2下スイッチング部S22は、コレクタが第2上スイッチング部S12のエミッタに接続され、エミッタが低電位ラインに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。
【0033】
このように、下アーム13は、第1下スイッチング部S21が第1上スイッチング部S11と直列接続されており、第2下スイッチング部S22が第2上スイッチング部S12と直列接続されている。よって、下アーム13は、上アーム素子12a、12bと直接接続された下アーム素子13a、13bがIGBTで構成されていると言える。また、コンバータ10aは、上アーム素子12a、12bと、上アーム素子12a、12bと直列接続された下アーム素子13a、13bとの対を複数有しているとも言える。
【0034】
なお、上アーム素子12a、12bは、高電位側素子と言い換えることができる。これに対して、下アーム素子13a、13bは、低電位側素子と言い換えることができる。
【0035】
ノイズ抑制コンデンサ14は、一方の端子がリアクトル11とバッテリ20との間に電気的に接続され、他方の端子がグランドに電気的に接続されている。ノイズ抑制コンデンサ14は、バッテリ20からの電源ノイズを抑制又は除去する。
【0036】
平滑コンデンサ15は、直列接続されている上アーム12と下アーム13の直列接続体と、並列接続されている。平滑コンデンサ15は、昇圧した電圧を平滑化する。つまり、平滑コンデンサ15は、インバータ30に供給される電圧を平滑化する。
【0037】
ここで、コンバータ10aの昇圧モードと降圧モードと非昇圧モード時の動作に関して、一例を用いて説明する。
【0038】
まず、昇圧モードに関して説明する。制御部50は、上スイッチング部S11、S12をオフにし、下スイッチング部S21、S22をオンする。このようにすると、バッテリ20からリアクトル11に電流が流れ、リアクトル11にエネルギーが蓄えられる。その後、制御部50は、上スイッチング部S11、S12をオンし、下スイッチング部S21、S22をオフする。このようにすると、リアクトル11に蓄えられたエネルギーが開放され、リアクトル11から上スイッチング部S11、S12、上ダイオード部D11、D12を通り端子VH1の方へ電流が流れる。制御部50は、これを繰り返し実行する。
【0039】
ところで、車載用のコンバータ10aは、
図2に示すように、昇圧比50%以上で使用することが多い。そこで、コンバータ10aは、下アーム素子13a、13bとして、例えばIGBTと当該IGBTと逆並列に接続される還流ダイオードを内蔵し大電流域で低損失なRC−IGBT(Reverse Conducting IGBT)を採用している。このため、コンバータ10aは、大電流域で低損失とすることができる。なお、RC−IGBTのかわりに、IGBTを採用しても、同様の効果を得ることができる。
【0040】
次に、降圧モードに関して説明する。制御部50は、下スイッチング部S21、S22をオフにした状態で、上スイッチング部S11、S12をオンする。このようにすると、モータジェネレータ40側からリアクトル11に電流が流れ、リアクトル11にエネルギーが蓄えられる。その後、制御部50は、下スイッチング部S21、S22をオフにしたまま、上スイッチング部S11、S12をオフする。このようにすると、リアクトル11に蓄えられたエネルギーが解放され、リアクトル11からバッテリ20へ電流が流れる。そのため、バッテリ20は、充電される。
【0041】
次に、非昇圧モード(スルーモード)に関して説明する。非昇圧モードは、バッテリ20の直流電圧を昇圧することなく出力するモードである。制御部50は、
図3に示すように、下スイッチング部S21、S22をオフし、上スイッチング部S11、S12をオンし続ける。このようにすると、バッテリ20から電流が、リアクトル11を通り、下スイッチング部S21、S22、及び上ダイオード部D11、D12を流れて出力される。制御部50は、下スイッチング部S21、S22をオフし続けるため昇圧されない。
【0042】
燃費に効く領域では、制御部50は、非昇圧モードで動作させることが多い。コンバータ10aは、第1上アーム素子12aにMOSFETを採用しているため、導通損失を下げることができる。これによって、コンバータ10aは、燃費を向上させることができる。また、コンバータ10aは、通損失を下げることができるため、第1上アーム素子12aにMOSFETを採用していない場合よりも、省電力化できる。なお、燃費に効く領域とは、非昇圧〜低昇圧比の領域である。
【0043】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。以下に、本開示のその他の形態として、第2〜第9実施形態に関して説明する。上記実施形態及び第2〜第9実施形態は、夫々単独で実施することも可能であるが、適宜組み合わせて実施することも可能である。本開示は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【0044】
(第2実施形態)
図4、
図5を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、制御部50の構成、及び上アーム素子12a、12bの駆動方法が第1実施形態と異なる。さらに、本実施形態では、第2上アーム素子12b1として、RC−IGBTを採用している点が第1実施形態と異なる。RC−IGBTである第2上アーム素子12b1は、第2上スイッチング部S121と、還流ダイオードとしての第2上ダイオード部D121とを含んでいる。
【0045】
制御部50は、第1駆動部51と第2駆動部52とを備えている。第1駆動部51は、第1上スイッチング部S11を駆動する。一方、第2駆動部52は、第2上スイッチング部S121を駆動する。つまり、第1駆動部51は、第1上アーム素子12aであるMOSFETを駆動するものである。一方、第2駆動部52は、第1駆動部51とは異なり、第2上アーム素子12b1であるRC−IGBTを駆動するものである。
【0046】
よって、制御部50は、第1上アーム素子12aと第2上アーム素子12b1とを別々に駆動することができる。例えば、制御部50は、第1駆動部51によって第1上アーム素子12aのみを駆動して、第2駆動部52による第2上アーム素子12b1の駆動を停止させる駆動方法や、この逆の駆動方法を行うことができる。
【0047】
図5に示すように、RC−IGBTは、ゲート電圧Vgが掛かるとVg=0と比べてVfが悪化する特性を持つ。そこで、コンバータ10aは、上アーム12に電流を流す際、第1駆動部51にて第1上アーム素子12aへゲート電圧を印加してオンし、第2駆動部52にて第2上アーム素子12b1へゲート電圧を印加せずに、電流を流した方が駆動損失を低減することができる。例えば、制御部50は、非昇圧モード時などに、下スイッチング部S21、S22をオフし、上スイッチング部S11、S121をオンし続ける際に、第1上スイッチング部S11のみをオンし続け、第2上スイッチング部S121をオフする。これによって、本実施形態のコンバータ10aは、上記実施形態よりも駆動損失を低減することができる。当然ながら、本実施形態は、上記実施形態と同様の効果も奏することができる。
【0048】
なお、上アーム12は、第1上アーム素子12aに加えて、MOSFETである上アーム素子を備えていてもよい。この場合、第1駆動部51は、第1上アーム素子12bと、第1上アーム素子12bとは異なるMOSFETである上アーム素子に共通に設けられていてもよい。また、上アーム12は、第2上アーム素子12bに加えて、MOSFETではない上アーム素子を備えていてもよい。この場合、第2駆動部52は、第2上アーム素子12bと、第2上アーム素子12bとは異なるMOSFETではない上アーム素子に共通に設けられていてもよい。
【0049】
(第3実施形態)
図6を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。特に、本実施形態では、車両用電力変換装置におけるパワーモジュール100に関して説明する。本実施形態は、第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aとがパッケージ化されている点が第1実施形態と異なる。
【0050】
第1上アーム素子12aは、MOSFETを採用する。そして、第1上アーム素子12aは、第1上スイッチング部S11と、寄生ダイオードである第1上ダイオード部D11とを備えている。一方、第1下アーム素子13aは、RC−IGBTを採用する。そして、第1下アーム素子13aは、第1下スイッチング部S21と、第1下ダイオード部D21とを備えている。このように、パワーモジュール100は、MOSFETとRC‐IGBTとが一つのパッケージとして構成されていると言える。このため、パワーモジュール100は、第1上スイッチング部S11と別体の上アームのダイオードや、第1下スイッチング部S21と別体のダイオードが必要ない。
【0051】
パワーモジュール100は、第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aに加えて、対を成す導電性部材と、複数の端子と、絶縁部材とを含んでいる。絶縁部材は、絶縁性の樹脂材料であり、第1上アーム素子12aと、第1下アーム素子13aと、各導電性部材の一部と、各端子の一部を一体的に覆っている。絶縁部材は、第1上アーム素子12aや第1下アーム素子13aなど、覆っている部位を保護することができる。
【0052】
各導電性部材は、第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aとを挟み込む位置に配置され、第1上アーム素子12aの電極及び第1下アーム素子13aの電極と電気的に接続されている。各導電性部材は、端子及び放熱部材と機能する。端子は、第1上アーム素子12aの電極、及び第1下アーム素子13aの電極と電気的に接続されており、一部が絶縁部材から露出している。
【0053】
パワーモジュール100は、導電性部材及び端子における絶縁部材から露出した部位が、パワーモジュール100の外部に設けられた装置と電気的に接続可能に構成されている。例えば、パワーモジュール100は、端子における絶縁部材から露出した部位が制御部50と電気的に接続され、導電性部材及び端子における絶縁部材から露出した部位がインバータ30と電気的に接続されている。
【0054】
このようなパワーモジュール100を備えた車両用電力変換装置は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、パワーモジュール100は、MOSFETである第1上アーム素子12aと、RC−IGBTである第1下アーム素子13aの組み合わせでパッケージ化することで、パッケージサイズを小型化することができる。つまり、RC−IGBTは、IGBTとダイオードとが別体となったものよりもサイズが小さい。よって、パワーモジュール100は、上アームのMOSFETとダイオード、及び下アームのIGBTとダイオードをパッケージ化したパワーモジュールよりも小型化することができる。このように、車両用電力変換装置は、パワーモジュール100を小型化することができるため、コストを低減することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2上アーム素子12bと第2下アーム素子13bに関しても、第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aと同様にパッケージ化されていてもよい。また、車両用電力変換装置は、三つ以上の上アーム素子と下アーム素子を備えている場合、各上アーム素子と各下アーム素子が、第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aと同様にパッケージ化されていてもよい。
【0056】
(第4実施形態)
図7を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、上アーム12と下アーム13の構成が第1実施形態と異なる。
【0057】
コンバータ10bは、上アーム素子として、第1上アーム素子12a、第2上アーム素子12bに加えて、上アームスイッチング素子に相当する第3上アーム素子12cを備えている。第3上アーム素子12cは、第2上アーム素子12bと同様の構成を有しており、第3上スイッチング部S13と、還流ダイオードとしての第3上ダイオード部D13とを含んでいる。第3上スイッチング部S13は、ドレインが高電位ラインに接続され、ソースが第3下スイッチング部S23のコレクタに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。第3上アーム素子12cは、第2上アーム素子12bと同様、MOSFETやRC−IGBTであっても採用することができる。
【0058】
また、コンバータ10bは、下アーム素子として、第1下アーム素子13a、第2下アーム素子13bに加えて、下アームスイッチング素子に相当する第3下アーム素子13cを備えている。第3下アーム素子13cは、第2下アーム素子13bと同様の構成を有しており、第3下スイッチング部S23と、還流ダイオードとしての第3下ダイオード部D23とを含んでいる。第3下スイッチング部S23は、コレクタが第3上スイッチング部S13のソースに接続され、エミッタが低電位ラインに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
(第5実施形態)
図8、
図9を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、対をなす上アーム素子12a、12bと下アーム素子13a、13bの相が複数相備えている点が第1実施形態と異なる。また、本実施形態は、各アーム素子12a、12b、13a、13bと、リアクトル11a、11bとの位置関係が第1実施形態と異なる。
【0060】
コンバータ10cは、第1相として、第1リアクトル11aと、上アームスイッチング素子に相当する第1上アーム素子12aと、下アームスイッチング素子に相当する第1下アーム素子13aとを備えている。第1上アーム素子12aと第1下アーム素子13aの構成は、第1実施形態と同様である。第1リアクトル11aは、一方の端子がバッテリと電気的に接続され、他方の端子が第1上アーム素子12aの第1上スイッチング部S11と第1下アーム素子13aの第1下スイッチング部S21との間に電気的に接続されている。詳述すると、第1リアクトル11aは、バスバを介して、第1上アーム素子12a、第1下アーム素子13aと電気的に接続されている。バスバは、特許請求の範囲における導電部材に相当する。
【0061】
また、コンバータ10cは、第2相として、第2リアクトル11bと、上アームスイッチング素子に相当する第2上アーム素子12bと、下アームスイッチング素子に相当する第2下アーム素子13bとを備えている。第2上アーム素子12bと第2下アーム素子13bの構成は、第1実施形態と同様である。第2リアクトル11bは、一方の端子がバッテリと電気的に接続され、他方の端子が第2上アーム素子12bの第2上スイッチング部S12と第2下アーム素子13bの第2下スイッチング部S22との間に電気的に接続されている。詳述すると、第2リアクトル11bは、バスバを介して、第2上アーム素子12b、第2下アーム素子13bと電気的に接続されている。
【0062】
第1リアクトル11aと第2リアクトル11bとは、例えば、同一のケースに一体的に配置されている。
図9では、第1リアクトル11aと第2リアクトル11bとが一体的にケースに配置された簡略図を示している。
【0063】
図9に示すように、コンバータ10cは、各アーム素子12a、12b、13a、13bが、冷却器200に挟み込まれている。各アーム素子12a、12b、13a、13bは、動作することで発熱するが、冷却器200で冷却することができる。なお、冷却器200は、例えば、特開2018−101666号公報に記載されたものなどを採用することができる。
【0064】
さらに、
図9に示すように、コンバータ10cは、MOSFETである第1上アーム素子12aが、他のアーム素子12b、13a、13bよりもリアクトル11a、11bに近い位置に配置されている。このため、コンバータ10cは、第1上アーム素子12aと第1リアクトル11aとを接続しているバスバの長さを短くすることができる。つまり、コンバータ10cは、第1上アーム素子12aが他のアーム素子12b、13a、13bよりもリアクトル11a、11bから遠い位置に配置されている場合よりもバスバの長さを短くすることができる。よって、コンバータ10cは、第1上アーム素子12aが他のアーム素子12b、13a、13bよりもリアクトル11a、11bから遠い位置に配置されている場合よりも損失を低減することができる。つまり、コンバータ10cは、バスバが短くなることで、バスバの電気抵抗が小さくなり、導通損失が低減できる。また、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
なお、各アーム素子12a、12b、13a、13bと、リアクトル11a、11bとの位置関係は、第1〜第4、第7〜第9実施形態であっても適用することができる。
【0066】
(第6実施形態)
図10を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、各アーム素子12a、12b、13a、13bと、リアクトル11a、11bとの位置関係が第5実施形態と異なる。
【0067】
図10に示すように、コンバータ10dは、MOSFETである第1上アーム素子12aが、他のアーム素子12b、13a、13bよりもリアクトル11a、11bから遠い位置に配置されている。このため、コンバータ10dは、第1上アーム素子12aが、リアクトル11a、11bから発せられた熱の影響を受けることを低減することができる。つまり、コンバータ10dは、第1上アーム素子12aが他のアーム素子12b、13a、13bよりもリアクトル11a、11bに近い位置に配置されている場合よりも、熱の影響を低減することができる。このように、コンバータ10dは、第1上アーム素子12aをリアクトル11a、11bから遠ざけることで熱害を抑制することができる。また、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
なお、各アーム素子12a、12b、13a、13bと、リアクトル11a、11bとの位置関係は、第1〜第4、第7〜第9実施形態であっても適用することができる。
【0069】
(第7実施形態)
図11を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、下アーム素子13d、13eの構成が第1実施形態と異なる。
【0070】
コンバータ10eは、下アーム13として、下アームスイッチング素子に相当する第1下アーム素子13dと第2下アーム素子13eとを有している。第1下アーム素子13dは、第1下スイッチング部S24と、還流ダイオードとしての第1下ダイオード部D24とを含んでいる。同様に、第2下アーム素子13eは、第2下スイッチング部S25と、還流ダイオードとしての第2下ダイオード部D25とを含んでいる。第1下アーム素子13dと第2下アーム素子13eは、同様の構成を有している。
【0071】
第1下アーム素子13d及び第2下アーム素子13eは、IGBTを採用する。第1下スイッチング部S24は、コレクタが第1上スイッチング部S11のソースに接続され、エミッタが低電位ラインに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。第2下スイッチング部S25は、コレクタが第2上スイッチング部S12のエミッタに接続され、エミッタが低電位ラインに接続され、ゲートが制御部50に接続されている。
【0072】
このように、本実施形態は、下アーム素子13d、13eとしてRC−IGBTではなくIGBTを採用しても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0073】
(第8実施形態)
図12を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。本実施形態は、上アーム素子12a、12bの個数(素子数)と、下アーム素子13f、13g、13hの個数とを相違させている点が第7実施形態と異なる。また、本実施形態は、上アーム12の構成が第7実施形態と異なる。
【0074】
コンバータ10fは、上アーム12として、第1上アーム素子12aと第2上アーム素子12bとを有している。ここでは、第1上アーム素子12aと第2上アーム素子12bの両方がMOSFETである例を採用する。つまり、上アーム12は、上アームスイッチング素子が全てMOSFETである。
【0075】
上記のように、制御部50は、燃費に効く領域では非昇圧モードで動作させることが多い。この場合、制御部50は、
図3に示すように、下スイッチング部S26、S27、S28をオフし、上スイッチング部S11、S12をオンし続ける。コンバータ10fは、第1上アーム素子12aと第2上アーム素子12bの両方がMOSFETを採用しているため、上アームスイッチング素子としてIGBTを含む場合よりも、導通損失を下げることができる。これによって、コンバータ10fは、上アームスイッチング素子としてIGBTを含む場合よりも、燃費を向上させることができる。また、コンバータ10fは、上アームスイッチング素子としてIGBTを含む場合よりも、省電力化できる。
【0076】
また、コンバータ10fは、下アーム13として、下アームスイッチング素子に相当する第1下アーム素子13fと第2下アーム素子13gと第3下アーム素子13hとを有している。
【0077】
第1下アーム素子13fは、第1下スイッチング部S26と、還流ダイオードとしての第1下ダイオード部D26とを含んでいる。第2下アーム素子13gは、第2下スイッチング部S27と、還流ダイオードとしての第2下ダイオード部D27とを含んでいる。第3下アーム素子13hは、第3下スイッチング部S28と、還流ダイオードとしての第3下ダイオード部D28とを含んでいる。各下アーム素子13f〜13hは、上記実施形態の第1下アーム素子13dと同様の構成である。
【0078】
このように、コンバータ10fは、上アーム素子12a、12bは、下アーム素子13f〜13hよりも素子数が少ない。本実施形態では、一例として、二つの上アーム素子12a、12bと、三つの下アーム素子13f〜13hとを備えたコンバータ10fを採用している。
【0079】
本実施形態は、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、コンバータ10fは、電流負荷の高い下アーム13の下アーム素子のみ素子数を増やすことで、大電流化と低損失化を両立させることができる。また、コンバータ10fは、コスト増加を最小限に抑えつつ、大電流化と低損失化を両立させることができる。
【0080】
なお、コンバータ10fは、下アーム素子13f〜hとしRC−IGBTを採用することもできる。また、コンバータ10fは、上アーム12の素子数が、下アーム13の素子数よりも少なくければよい。よって、コンバータ10fは、上アーム12に三つ以上の上アーム素子を備えていてもよく、下アーム13に四つ以上の下アーム素子を備えていてもよい。
【0081】
(第9実施形態)
図13を用いて、本実施形態の車両用電力変換装置に関して説明する。特に、本実施形態では、車両用電力変換装置におけるパワーモジュール110に関して説明する。パワーモジュール110は、上感温ダイオード16a、下感温ダイオード16bを備えている点がパワーモジュール100と異なる。なお、パワーモジュール110は、下感温ダイオード16bを備えていなくてもよい。
【0082】
例えば、パワーモジュールは、上アームのスイッチング素子(MOSFET)と、上アームのダイオードと、下アームのスイッチング素子と、下アームのダイオードをパッケージ化したものが考えられる(比較例)。このようなパワーモジュールでは、上アームのMOSFET及びダイオードに温度センサ(例えば感温ダイオード)を設けて両素子の温度を測定するか、いずれか一方の温度センサを設けて他方の温度を推測することが考えられる。また、両素子の近傍にサーミスタを設けて、温度を測定することも考えられる。
【0083】
しかしながら、この場合、両素子に温度センサを設けることでコストアップとなったり、推測誤差によって正確に温度を測定することができない可能性がある。測定誤差が生じる場合、パワーモジュールでは、測定誤差を見込んで素子サイズを大型化することが考えられる。この場合、パワーモジュールは、素子サイズを大型化することでコストが増大してしまう。また、パワーモジュールでは、測定誤差を見込んで出力をダウンさせることが考えられる。
【0084】
パワーモジュール110は、パワーモジュール100と同様に、第1上アーム素子12dと第1下アーム素子13iとがパッケージ化されたものである。第1上アーム素子12dは、MOSFETを採用する。そして、第1上アーム素子12dは、第1上スイッチング部と、寄生ダイオードである第1上ダイオード部とを備えている。一方、第1下アーム素子13iは、RC−IGBTを採用する。このように、パワーモジュール110は、比較例と異なり、第1上アーム素子12dと別体の上アームのダイオードや、第1下アーム素子13iと別体のダイオードが必要ない。
【0085】
なお、第2上アーム素子と第2下アーム素子や、その他の上アーム素子と下アーム素子に関しても、第1上アーム素子12dと第1下アーム素子13iと同様の構成を有しており、且つ、同様にパッケージ化されている。よって、以下の説明は、第2上アーム素子と第2下アーム素子や、その他の上アーム素子と下アーム素子にも適用できる。
【0086】
パワーモジュール110は、第1上アーム素子12dが上感温ダイオード16aを有している。上感温ダイオード16aは、第1上アーム素子12dの温度を測定するために設けられている。つまり、上感温ダイオード16aは、第1上アーム素子12dの第1上スイッチング部と第1上ダイオード部の温度を測定するために設けられていると言える。上感温ダイオード16aは、第1上アーム素子12dが動作することによって発熱した場合の第1上アーム素子12dの温度を測定するために設けられているとも言える。
【0087】
また、上感温ダイオード16aは、制御部50に電気的に接続されている。このため、制御部50は、第1上アーム素子12dの温度、すなわち、第1上スイッチング部と第1上ダイオード部を取得することができる。制御部50は、第1上アーム素子12dの温度が所定の閾値温度に達すると、第1上アーム素子12dの駆動を停止する。この閾値温度は、第1上アーム素子12dに異常を生じさせる温度に達する可能性がある温度が設定される。これによって、パワーモジュール110は、熱によって第1上アーム素子12dに異常が生じることを抑制でき、第1上アーム素子12dを保護することができる。
【0088】
さらに、本実施形態では、下感温ダイオード16bを有した第1下アーム素子13iを一例として採用している。下感温ダイオード16bは、第1下アーム素子13iの温度を測定するために設けられている。つまり、下感温ダイオード16bは、第1下アーム素子13iのRC−IGBTの温度を測定するために設けられていると言える。下感温ダイオード16bは、第1下アーム素子13iが動作することによって発熱した場合の第1下アーム素子13iの温度を測定するために設けられているとも言える。
【0089】
また、下感温ダイオード16bは、制御部50に電気的に接続されている。このため、制御部50は、第1下アーム素子13iの温度を取得することができる。制御部50は、第1下アーム素子13iの温度が所定の閾値温度に達すると、第1下アーム素子13iの駆動を停止する。この閾値温度は、第1下アーム素子13iに異常を生じさせる温度に達する可能性がある温度が設定される。これによって、パワーモジュール110は、熱によって第1下アーム素子13iに異常が生じることを抑制でき、第1下アーム素子13iを保護することができる。
【0090】
このようなパワーモジュール110を備えた車両用電力変換装置は、第1実施形態及び第3実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、パワーモジュール110は、比較例よりも感温ダイオードの数を減らすことができ、コストを低減することができる。また、パワーモジュール110は、温度を推測する比較例よりも正確に温度を測定することができる。また、パワーモジュール110は、比較例よりも素子サイズの小型化できるため、コストが増大したり、出力がダウンすることを抑制できる。なお、本実施形態は、他の実施形態にも適用できる。
【0091】
上記のように、上アーム12は、複数の上アームスイッチング素子の少なくとも一つ(例えば第1上アーム素子12aなど)がMOSFETである。このMOSFETは、SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体を主成分として構成されていると好ましい。コンバータは、上アームスイッチング素子のMOSFETとして、ワイドバンドギャップ半導体を主成分として構成されたものを採用することで、MOSFETがSiを主成分として構成されている場合よりも、導通損失を下げることができる。よって、コンバータは、ワイドバンドギャップ半導体を主成分として構成されたMOSFETを採用することで、非昇圧モード時において、Siを主成分として構成されたMOSFETを用いる場合よりも、燃費を向上させることができる。また、このコンバータは、ワイドバンドギャップ半導体を主成分として構成されたMOSFETを採用することで、Siを主成分として構成されたMOSFETを用いる場合よりも省電力化できる。