【背景技術】
【0002】
筋トレーニング等により機械的な負荷をかけることで筋肉量は増加するが(筋肥大)、逆に寝たきり若しくはギブス固定等による筋肉の不動化、又は宇宙空間等の無重力環境下で機械的な負荷の減少が続くと筋肉量が低下する(筋萎縮)。筋萎縮が進行すると、歩行等の運動機能が低下するロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)を引き起こし、「要介護」になるリスクが高まる。超高齢化社会を迎えた日本において、40歳以上を対象とした調査によると、ロコモは予備群を含め約4,700万人と推計されている。また平成25年厚生労働省国民生活基礎調査では、要介護・要支援になった原因の1位は運動器の障害、すなわちロコモである。したがって、加齢又は寝たきりによる筋萎縮を抑制することは、ロコモの予防、及びクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に繋がると考えらえる。
【0003】
廃用性筋萎縮の抑制剤として、例えば、特許文献1には、飲食品に配合して廃用性筋萎縮抑制用飲食品組成物を得るために用いられる廃用性筋萎縮抑制用剤であって、オオバギ抽出物及び8−プレニルナリンゲニンの少なくとも一方を有効成分として含有し、前記オオバギ抽出物は、ニムフェオール−A、ニムフェオール−B、イソニムフェオール−B、ニムフェオール−C、及び3’−ゲラニルナリンゲニンを含有することを特徴とする廃用性筋萎縮抑制用剤が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な廃用性筋萎縮抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ビールの苦味成分であるイソα酸が廃用性筋萎縮を抑制する作用を有することを新たに見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、廃用性筋萎縮抑制剤を提供する。
【化1】
[一般式(1)中、R
1はC
1−6アルキル基を示し、R
2はC
1−6アルキル基又はC
2−6アルケニル基を示し、R
3はC
1−6アルキル基又はC
2−6アルケニル基を示し、R
4はカルボニル基又は水酸基を示す。]
【0008】
本発明に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するため、廃用性筋萎縮を抑制することができる。
【0009】
本発明はまた、一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、廃用性筋萎縮抑制用食品組成物を提供する。
【0010】
本発明に係る廃用性筋萎縮抑制用食品組成物は、一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するため、廃用性筋萎縮を抑制することができる。
【0011】
上記廃用性筋萎縮抑制剤又は廃用性筋萎縮抑制用食品組成物において、上記化合物はイソα酸であってよい。これにより、廃用性筋萎縮をより一層顕著に抑制することができる。また、イソα酸は、ビールに含まれる成分であるため、食経験が極めて豊富である。したがって、本発明に係る廃用性筋萎縮抑制剤又は廃用性筋萎縮抑制用食品組成物は、生体への安全性が高く、長期間継続的に摂取可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規な廃用性筋萎縮抑制剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本明細書における「廃用性筋萎縮」とは、廃用(例えば、筋肉の不動化)による筋萎縮、及び無重力環境下等での機械的な負荷の減少による筋萎縮を含む概念である。本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、廃用性筋萎縮を抑制することができる。
【0016】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【化2】
[一般式(1)中、R
1はC
1−6アルキル基を示し、R
2はC
1−6アルキル基又はC
2−6アルケニル基を示し、R
3はC
1−6アルキル基又はC
2−6アルケニル基を示し、R
4はカルボニル基又は水酸基を示す。]
【0017】
本明細書において「C
1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。C
1−6アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0018】
本明細書において「C
2−6アルケニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖のアルケニル基を意味する。C
2−6アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペン−1−イル基、プロペン−2−イル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ペンテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、4−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、4−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、4−メチル−3−ブテニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)において、R
1は、好ましくはC
2−5アルキル基であり、より好ましくはエチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、又はイソペンチル基であり、更に好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、又はsec−ブチル基であり、特に好ましくはイソブチル基、又はsec−ブチル基である。
【0020】
一般式(1)において、R
2は、好ましくはC
2−6アルケニル基であり、より好ましくは3−メチル−2−ブテニル基である。
【0021】
一般式(1)において、R
3は、好ましくはC
2−6アルケニル基であり、より好ましくは3−メチル−2−ブテニル基である。
【0022】
一般式(1)において、R
4は、好ましくはカルボニル基である。
【0023】
化合物(1)には立体異性体、互変異性体等の異性体が存在しうる。それらの異性体も本発明の範囲に包含されるが、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【化3】
[一般式(2)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、上記式(1)におけるR
1、R
2、R
3及びR
4と同義である。]
【0024】
化合物(1)としては、イソα酸が好ましい。本明細書における「イソα酸」は、イソポストフムロン、イソコフムロン、イソフムロン、イソアドフムロン、イソプレフムロン、テトラヒドロイソポストフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソアドフムロン、テトラヒドロイソプレフムロン、ヘキサヒドロイソポストフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソアドフムロン、ヘキサヒドロイソプレフムロン等を含む意味で用いられる。なお、イソα酸にはシス体及びトランス体の立体異性体が存在するが、特に断りのない限り両者を含む意味で用いられる。
【0025】
化合物(1)の塩は食品、医薬部外品又は医薬品に許容される塩であることが好ましい。食品、医薬部外品又は医薬品に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、並びにマグネシウム塩及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0026】
化合物(1)又はその塩は、市販品であってもよく、公知の方法(例えば、特開2010−18631号公報に記載の方法)で合成したものであってもよい。また、化合物(1)又はその塩として、ホップエキス、ホップペレット等のホップ加工物を加熱等の異性化処理することで得られたもの(以下、「イソα酸含有ホップ加工物」ともいう)を用いてもよく、イソα酸含有ホップ加工物を、文献(J.Agric.FoodChem.,61(12),pp.3121−3130(2013年))に記載の方法で更に精製したものを用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤における化合物(1)又はその塩の含有量は、廃用性筋萎縮抑制剤全量を基準として、化合物(1)及びその塩の総量で、0.1w/w%以上であってよく、0.2w/w%以上であってよく、0.3w/w%以上であってよく、0.5w/w%以上であってよく、10w/w%以上であってよく、20w/w%以上であってよく、30w/w%以上であってよく、50w/w%以上であってよく、70w/w%以上であってよい。化合物(1)又はその塩の含有量が上記範囲にあることにより、廃用性筋萎縮抑制作用がより一層顕著に奏される。また、本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤における化合物(1)又はその塩の含有量は、廃用性筋萎縮抑制剤全量を基準として、化合物(1)及びその塩の総量で、100w/w%以下であってよく、95w/w%以下であってもよい。
【0028】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、上述の有効成分のみからなるものであってもよく、また上記有効成分の他、食品、医薬部外品又は医薬品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。その他成分として、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0029】
賦形剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、例えば、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、例えば、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。
【0031】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物及び飼料組成物等の製品として、又はこれら製品の成分として使用することができる。当該食品組成物は、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品であってもよい。食品組成物の具体例としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類、飲料等が挙げられる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。上記製品は、廃用性筋萎縮抑制用であってよい。
【0032】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制用製品(特に、廃用性筋萎縮抑制用食品組成物)における化合物(1)又はその塩の含有量は、廃用性筋萎縮抑制用製品全量を基準として、化合物(1)及びその塩の総量で、0.1w/w%以上であってよく、0.2w/w%以上であってよく、0.3w/w%以上であってよく、0.5w/w%以上であってよい。化合物(1)又はその塩の含有量が上記範囲にあることにより、廃用性筋萎縮抑制作用がより一層顕著に奏される。また、本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制用製品(特に、廃用性筋萎縮抑制用食品組成物)における化合物(1)又はその塩の含有量は、廃用性筋萎縮抑制用製品全量を基準として、化合物(1)及びその塩の総量で、100w/w%以下であってよく、95w/w%以下であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品は、廃用性筋萎縮の抑制を介してロコモティブシンドローム(運動器症候群)を予防又は治療できるため、ロコモティブシンドローム予防剤若しくは治療剤、又はロコモティブシンドローム予防用製品若しくは治療用製品と捉えることもできる。
【0034】
上記製品には、例えば、ロコモティブシンドロームを防ぐ旨、加齢によって衰える筋肉の維持に役立つ筋肉をつくる力をサポートする機能と歩行能力の改善に役立つ機能がある旨、自立した日常生活を送る上で必要な身体を支える力の維持に役立つ筋肉量や筋力の維持をサポートする機能がある旨、足の筋肉機能(立つ・歩くなどの動作に必要な筋力)の維持に役立つ旨等の表示が付されていてもよい。
【0035】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品の投与量(摂取量)は、化合物(1)及びその塩の総量に換算して、成人1日あたり、体重60kgあたり、例えば、1mg〜1gであってよく、1mg〜500mgであってよく、10mg〜100mgであってもよい。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0036】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品は、1日あたりの化合物(1)及びその塩の総量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0037】
本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制剤、又は廃用性筋萎縮抑制用製品は、継続的に摂取されることにより、廃用性筋萎縮抑制がより一層優れたものとなる。本実施形態に係る廃用性筋萎縮抑制は、4週間以上継続して摂取されてもよく、8週間以上継続して摂取されてもよく、12週間以上継続して摂取されてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。動物実験は、サッポロホールディングス株式会社価値創造フロンティア研究所動物実験規定に基づいて実施した(承認番号:2018−005)。
【0039】
〔実施例1:イソα酸の廃用性筋萎縮抑制試験〕
(イソα酸含有ホップエキスの調製)
ホップエキス(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に1N塩酸を加えて懸濁させた後、ヘキサンを添加して水層と有機層に分配した。有機層をエバポレーターで留去することで、イソα酸の濃度が70w/w%のイソα酸含有ホップエキスを得た。イソα酸の組成は、イソコフムロン25.7w/w%%、イソフムロン34.7w/w%%、イソアドフムロン9.6w/w%%であった。
【0040】
(実験動物及び飼育条件)
日本エスエルシー社より購入した雄性C57BL/6NCrSlcマウスを試験に供した。マウスは、温度24±1℃、湿度48±4%、12時間の明暗サイクル(明期8:00−20:00)の環境下で飼育した。
【0041】
(イソα酸の廃用性筋萎縮抑制作用の評価)
坐骨神経を切除することで、不動化による筋萎縮(廃用性筋萎縮)を誘導させたマウスを用いて、イソα酸の廃用性筋萎縮抑制作用を評価した。
【0042】
6週齢の雄性C57BL/6NCrSlcマウスを、粉末飼料(AIN−93M)を給餌して1週間予備飼育した。予備飼育後のマウスを体重を基に群分けした(試験食群及び対照群)。試験食群のマウスは、試験食としてAIN−93Mの0.5w/w%をイソα酸で置換した粉末飼料を給餌して、14日間飼育した。対照群のマウスは、対照食としてAIN−93Mの0.5w/w%をデキストリン(商品名:NSD300,サンエイ糖化製)で置換した粉末飼料を給餌して、14日間飼育した。
【0043】
試験食群及び対照群のマウスの右後肢の坐骨神経を麻酔下で切除し、筋萎縮を誘導した(除神経処理)。試験食群及び対照群のマウスの左後肢には、座骨神経の切除を行わなかったこと以外は、右後肢と同様の処理を施した(偽手術)。除神経処理及び偽手術の後、上記と同様にそれぞれ試験食及び対照食を給餌して、7日間飼育した。その後、両群のマウスを解剖して、左右後肢の腓腹筋を摘出した。摘出した腓腹筋の重量を測定し、測定結果から、腓腹筋量(体重当たりの腓腹筋量(mg/g体重))、及び腓腹筋維持率(偽手術した左後肢腓腹筋量に対する除神経処理した右後肢腓腹筋量の割合(%))を算出した。
【0044】
なお、両群間での総摂餌量の差を無くすため、ペアフィーディングにより給餌量を調節した。
【0045】
(結果)
腓腹筋量及び腓腹筋維持率の評価結果を表1及び
図1に示す。表1及び
図1に示す腓腹筋量及び腓腹筋維持率の値は、平均値±標準誤差(n=7〜8)である。統計解析はJMP 13(SAS)ソフトを用いた。腓腹筋量はTukeyの検定で多重比較を行い、また腓腹筋維持率はStudentのt検定で2群比較を行い、危険率5%未満を有意とした。
【表1】
【0046】
表1及び
図1に示すとおり、イソα酸を摂取することで、除神経処理による筋重量(腓腹筋量)の低下が抑制されることが確認された。また、試験食群では、対照群と比較して、腓腹維持率は有意に高値を示した(p<0.001)。この結果から、イソα酸に廃用性筋萎縮の抑制作用が認められた。