特開2020-29066(P2020-29066A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 榎本工業株式会社の特許一覧

特開2020-290663次元プリンタによる成形品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-29066(P2020-29066A)
(43)【公開日】2020年2月27日
(54)【発明の名称】3次元プリンタによる成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/194 20170101AFI20200131BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20200131BHJP
   B29C 64/30 20170101ALI20200131BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200131BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20200131BHJP
【FI】
   B29C64/194
   B29C64/106
   B29C64/30
   B33Y10/00
   B29C64/336
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-157329(P2018-157329)
(22)【出願日】2018年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】392032605
【氏名又は名称】榎本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】榎本 晴康
(72)【発明者】
【氏名】川村 健広
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL15
4F213WL24
4F213WL29
4F213WL53
4F213WL55
(57)【要約】
【課題】積層物を成す材料とは異なる材料の異種材料部材がインサートされた成形品を得ることができる3次元プリンタによる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】吐出手段から吐出した材料を受け部材上で積層させて積層物を得る第1積層工程S1と、第1積層工程S1で得られた積層物に対し、切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程S2と、切削加工工程S2で形成された凹部に対し、吐出手段で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材を嵌入させる異種材料部材嵌入工程S3と、異種材料嵌入工程S3で異種材料部材が嵌入された積層物を加熱手段によって加熱する加熱工程S4と、加熱工程S4で加熱された積層物上に吐出手段から吐出した材料を積層させて異種材料部材がインサートされた成形品を得る第2積層工程S5とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の材料を吐出させ得る吐出手段と、
該吐出手段から吐出した材料を受け得る受け部材が取り付けられるとともに、当該受け部材の載置面上に材料を積層させ得るテーブルと、
前記吐出手段及びテーブルを互いに直交する方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対して相対的に移動可能な移動手段と、
前記移動手段を作動させることにより、前記吐出手段から吐出した材料を積層して前記受け部材上に所望形状の積層物を成形し得る制御手段と、
前記受け部材上の積層物を切削加工可能な刃具を具備し、前記受け部材上の積層物の任意部位を当該刃具にて切削加工可能な切削加工手段と、
前記受け部材上の積層物を加熱し、冷却固化した積層物に対し前記吐出手段からの所定の材料を更に積層可能とする加熱手段と、
を具備した3次元プリンタによる成形品の製造方法において、
前記吐出手段から吐出した材料を前記受け部材上で積層させて積層物を得る第1積層工程と、
前記第1積層工程で得られた積層物に対し、前記切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程と、
前記切削加工工程で形成された凹部に対し、前記吐出手段で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材を嵌入させる異種材料部材嵌入工程と、
前記異種材料嵌入工程で前記異種材料部材が嵌入された積層物を前記加熱手段によって加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された積層物上に前記吐出手段から吐出した材料を積層させて前記異種材料部材がインサートされた成形品を得る第2積層工程と、
を有することを特徴とする3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第1積層工程及び第2積層工程で積層させる材料は、所定の樹脂材料から成るとともに、前記異種材料部材は、所定の金属材料から成ることを特徴とする請求項1記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1積層工程又は第2積層工程で得られる積層物は、前記異種材料部材がインサートされた部位以外に所定形状の空間が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【請求項4】
前記切削加工工程において、前記凹部とは異なる位置に凹形状を形成するとともに、前記第2積層工程において、前記吐出手段から吐出した材料を前記凹形状内に充填させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【請求項5】
前記凹形状は、前記所定の材料の積層方向に対して傾斜した方向に延びる穴形状であることを特徴とする請求項4記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【請求項6】
前記第1積層工程で積層させる材料と第2積層工程で積層させる材料とが異なる材料であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の材料を積層して所望形状の積層物を成形し得る3次元プリンタによる成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元プリンタは、通常、溶融樹脂を吐出させ得るノズルと、ノズルから吐出した溶融樹脂を順次受けて上方に積層させ得るテーブルとを有し、ノズル及びテーブルを互いに直交する方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対して相対的に移動させることにより、テーブル上に所望形状の積層物を成形し得るよう構成されていた。さらに、テーブルをB軸回りに(テーブルの載置面に対して略平行な軸を中心として)揺動させてテーブル上の積層物を任意角度に傾斜させ、且つ、テーブルを回転させてテーブル上の積層物をC軸回りに(テーブルの載置面に対して略直交する軸を中心として)回転させてテーブル上の積層物を回転させてノズルから溶融樹脂を吐出させることにより、アンダーカット部を有する積層物を精度よく成形し得るものが提案されている。
【0003】
しかるに、本出願人は、ノズルから溶融樹脂材料を吐出して積層物を成形する過程で、当該成形を一旦中断し、再びノズルから溶融樹脂材料を吐出して続きの積層を行う際、中断によって冷却固化した積層部を加熱して溶融させ、更なる積層を可能とする加熱手段を具備した3次元プリンタを提案している(例えば特許文献1参照)。かかる従来の3次元プリンタは、成形を中断して積層物が冷却固化した後、ノズルから再び溶融樹脂材料を吐出して積層を再開させる際、更に積層させるべき部位を加熱して溶融させ得るよう構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−69590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の3次元プリンタによれば、従来の樹脂成形装置では成形するのが困難な形状(例えば、内部にハニカム形状等の複雑な空間が形成されたもの等)を得ることができるものの、近時においては、3次元プリンタを用いるが故に得られる更なる新しい成形品のニーズが高まりつつある。こうしたニーズが高まっていることを考慮し、本出願人は、3次元プリンタを用いて従来の加工装置では得ることが難しい成形品の製造を種々検討するに至った。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、積層物を成す材料とは異なる材料の異種材料部材がインサートされた成形品を得ることができる3次元プリンタによる成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、所定の材料を吐出させ得る吐出手段と、該吐出手段から吐出した材料を受け得る受け部材が取り付けられるとともに、当該受け部材の載置面上に材料を積層させ得るテーブルと、前記吐出手段及びテーブルを互いに直交する方向であるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対して相対的に移動可能な移動手段と、前記移動手段を作動させることにより、前記吐出手段から吐出した材料を積層して前記受け部材上に所望形状の積層物を成形し得る制御手段と、前記受け部材上の積層物を切削加工可能な刃具を具備し、前記受け部材上の積層物の任意部位を当該刃具にて切削加工可能な切削加工手段と、前記受け部材上の積層物を加熱し、冷却固化した積層物に対し前記吐出手段からの所定の材料を更に積層可能とする加熱手段とを具備した3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記吐出手段から吐出した材料を前記受け部材上で積層させて積層物を得る第1積層工程と、前記第1積層工程で得られた積層物に対し、前記切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程と、前記切削加工工程で形成された凹部に対し、前記吐出手段で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材を嵌入させる異種材料部材嵌入工程と、前記異種材料嵌入工程で前記異種材料部材が嵌入された積層物を前記加熱手段によって加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された積層物上に前記吐出手段から吐出した材料を積層させて前記異種材料部材がインサートされた成形品を得る第2積層工程とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記第1積層工程及び第2積層工程で積層させる材料は、所定の樹脂材料から成るとともに、前記異種材料部材は、所定の金属材料から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記第1積層工程又は第2積層工程で得られる積層物は、前記異種材料部材がインサートされた部位以外に所定形状の空間が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記切削加工工程において、前記凹部とは異なる位置に凹形状を形成するとともに、前記第2積層工程において、前記吐出手段から吐出した材料を前記凹形状内に充填させることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記凹形状は、前記所定の材料の積層方向に対して傾斜した方向に延びる穴形状であることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の3次元プリンタによる成形品の製造方法において、前記第1積層工程で積層させる材料と第2積層工程で積層させる材料とが異なる材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1積層工程、切削加工工程、異種材料部材嵌入工程、加熱工程及び第2積層工程を経ることにより、積層物を成す材料とは異なる材料の異種材料部材がインサートされた成形品を得ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、第1積層工程及び第2積層工程で積層させる材料は、所定の樹脂材料から成るとともに、異種材料部材は、所定の金属材料から成るので、金属製の異種材料部材がインサートされた樹脂成形品を容易且つ円滑に得ることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、第1積層工程又は第2積層工程で得られる積層物は、異種材料部材がインサートされた部位以外に所定形状の空間が形成されたので、所定形状の空間によって軽量化を図ることができるとともに、空間をハニカム形状等の複雑な形状とすることにより強度の低下を抑制することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、切削加工工程において、凹部とは異なる位置に凹形状を形成するとともに、第2積層工程において、吐出手段から吐出した材料を凹形状内に充填させるので、第1積層工程で得られた積層物と第2積層工程で得られた積層物とを強固に接合して一体化させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、凹形状は、所定の材料の積層方向に対して傾斜した方向に延びる穴形状であるので、当該穴形状に充填された材料によって第1積層工程で得られた積層物と第2積層工程で得られた積層物との間の抜け止めを図ることができ、これら第1積層工程で得られた積層物と第2積層工程で得られた積層物との接合をより強固にすることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第1積層工程で積層させる材料と第2積層工程で積層させる材料とが異なる材料であるので、第1積層工程で積層させる積層物と、第2積層工程で積層させる積層物と、異種材料部材とを互いに異なる材料とすることができ、互いに異なる3つの材料から成るインサート成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法を示すフローチャート
図2】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図3】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図4】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図5】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図6】本発明の第2の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図7】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図8】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図9】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図10】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図11】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図12】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図13】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図14】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図15】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図16】本発明の第3の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図17】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図18】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図19】本発明の第4の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図20】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図21】同3次元プリンタによる成形品の製造方法を説明するための模式図
図22】本発明の実施形態に適用される3次元プリンタの内部構成を示す正面図
図23】同3次元プリンタの内部構成を示す上面図
図24】同3次元プリンタの内部構成を示す側面図
図25】同3次元プリンタの内部構成を示す斜視図
図26】同3次元プリンタにおける吐出手段及び刃具を示す正面図及び側面図
図27】同3次元プリンタにおける吐出手段及び刃具を示す斜視図
図28】同3次元プリンタにおけるテーブル及びその保持手段を示す平面図及び側面図
図29】同3次元プリンタにおけるテーブル及びその保持手段を示す平面図及び側面図であて、テーブルに受け部材を取り付けた状態を示す図
図30】同3次元プリンタにおけるテーブル及びその保持手段の内部構成を示す正面図
図31】同3次元プリンタにおけるテーブルに取り付けられるサブテーブルの構成を示す模式図
図32】同3次元プリンタにおける加熱手段(収容手段の移動前及びテーブルの揺動前)を示す側面図
図33】同3次元プリンタにおける加熱手段を示す正面図
図34】同3次元プリンタにおける加熱手段を示す斜視図
図35】同3次元プリンタにおける加熱手段(収容手段の移動前及びテーブルの揺動後)を示す側面図
図36】同3次元プリンタにおける加熱手段(収容手段の移動後及びテーブルの揺動後)を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に適用される3次元プリンタは、所定の樹脂材料を積層して所望形状の積層物(ワーク)を成形し得るもので、図22〜25に示すように、吐出手段2と、テーブル3と、移動手段としてのX軸用移動手段4、Y軸用移動手段5及びZ軸用移動手段6と、B軸揺動手段7と、C軸回転手段8と、制御手段9と、加熱手段10と、刃具11及び主軸Sを有した切削加工手段とを主に有して構成されている。
【0021】
本実施形態に係る3次元プリンタ1は、その内部に収容可能な空間が形成される筐体Kを有しており、当該筐体Kの収容空間に上記の構成要素が収容される(図22〜25参照)とともに、正面側には閉塞又は開放可能な開閉扉が形成されており、当該開閉扉を開放させることによって、内部の構成要素の設定や得られた積層物(ワーク)の取り出し等を行わせ得るようになっている。
【0022】
吐出手段2は、筐体K内の収容空間における上部に取り付けられたもので、溶融した所定の樹脂材料をテーブル3の載置面3aに向かって吐出させ得るよう構成されている。具体的には、吐出手段2は、図26、27に示すように、溶融材料を吐出させるノズル部2aと、線状(紐状)に成形された固形の樹脂材料を溶融するための溶融部2bと、線状に成形された固形の樹脂材料をノズル部2a及び溶融部2bに向かって順次送り込む圧送部2cとを有している。
【0023】
すなわち、線状に成形された固形の樹脂材料は、圧送部2cにて順次溶融部2bに圧送されて溶融状態とされ、ノズル部2aによってテーブル3の載置面3aに向かって吐出されるのである。本実施形態に係る吐出手段2は、線状に成形された固形の樹脂材料が巻かれた追従リールEを有しており、吐出手段2の移動に伴って追従リールEを追従させるとともに、当該追従リールEに巻かれた固形の樹脂材料が必要量だけノズル部2aに供給されるよう構成されている。なお、本実施形態においては、追従リールRに加え、線状に成形された他の径の固形の樹脂材料を巻くための複数のリールRが筐体Kの上部に配設されている。
【0024】
テーブル3は、図28〜30に示すように、吐出手段2のノズル部2aから吐出した材料を受け得る受け部材14が取り付けられるとともに、当該受け部材14の載置面14a上に材料を積層させ得るよう構成されている。また、テーブル3は、保持手段12にて保持されるとともに、当該保持手段12には、B軸αを中心としてテーブル3を揺動可能とするB軸揺動手段7と、C軸βを中心としてテーブル3を回転可能とするC軸回転手段8とが配設されている。
【0025】
すなわち、図30に示すように、モータM2及び減速機G2にてB軸揺動手段7が構成されており、モータM2を駆動させることにより、B軸αを中心としてテーブル3が保持手段12に対して揺動するとともに、モータM1及び減速機G1にてC軸回転手段8が構成されており、モータM1を駆動させることにより、C軸βを中心としてテーブル3が保持手段12に対して回転するよう構成されている。
【0026】
ここで、B軸αとは、図32で示す状態(受け部材14の載置面14aが上方を向いた状態である通常の加工状態)において、載置面14aに対して略平行な方向(Y軸方向)であるとともに、C軸βとは、載置面14aに対して略直交する方向(Z軸方向)である。B軸αをY軸方向に代えてX軸方向としてもよい。なお、3次元プリンタ1が設置された空間において、互いに直交する方向をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と称するものとする。
【0027】
一方、保持手段12は、図28、29に示すように、左右一対の突出部12a、12bを有しており、それら突出部12a、12bの間にテーブル3が回転自在に取り付けられている。すなわち、テーブル3は、保持手段12に対して突出部12a、12bにて両持ちで支持されているのである。また、保持手段12は、図22〜24に示すように、Z軸用移動手段6に対して片持ちで支持されており、受け部材14上の積層物の重量で保持手段12が撓む方向(図28中矢印γで示す方向)とB軸揺動手段7でテーブル3を揺動させる方向(B軸αを中心とした揺動方向)とが合致するようになっている。
【0028】
受け部材14は、図31に示すように、テーブル3に対してボルト等の締結手段によって固定され、吐出手段2(ノズル部2a)から吐出した材料を載置面14aにて受けて積層させ得るもので、B軸揺動手段7によってテーブル3と共に揺動し、C軸回転手段8によってテーブル3と共に回転し得るよう構成されている。また、受け部材14には、ヒータhが取り付けられており、載置面14a上に予め取り付けられた固着材料(吐出手段2から吐出される樹脂材料と同一種類の樹脂材料から成る固形材料)をヒータhからの熱で溶融し得るようになっている。しかして、吐出手段2から吐出された材料は、固着材料上で積層されて任意形状の積層物が形成されるようになっている。
【0029】
移動手段は、吐出手段2及びテーブル3をX軸方向に対して相対的に移動可能なもので、本実施形態においては、X軸用移動手段4、Y軸用移動手段5及びZ軸用移動手段6とで構成されている。このうち、X軸用移動手段4及びY軸用移動手段5は、筐体Kの上部に位置するフレームF2に取り付けられており、吐出手段2及び後述する刃具11をX方向及びY方向に移動可能とするとともに、Z軸用移動手段6は、筐体Kの側部に位置するフレームF1に取り付けられており、保持手段12をZ方向に移動可能とするものである。
【0030】
具体的には、X軸用移動手段4は、図22、24に示すように、モータm1等のアクチュエータの駆動で回転するボールネジN1と、ボールネジN1の回転によってレールL1に沿って摺動するスライド部材T1とを有して構成されている。また、Y軸用移動手段5は、同図に示すように、モータm2等のアクチュエータの駆動で回転するボールネジN2と、ボールネジN2の回転によってレールL2に沿って摺動するスライド部材T2とを有して構成されている。
【0031】
レールL1は、筐体KのフレームF2においてX軸方向に延設されており、ボールネジN1の回転によってスライド部材T1をレールL1に沿ってX軸方向に移動可能とされるとともに、レールL2は、スライド部材T1においてY軸方向に延設されており、ボールネジN2の回転によってスライド部材T2をレールL2に沿ってY軸方向に移動可能とされている。また、スライド部材T2には、吐出手段2及び刃具11が取り付けられた取付部材B1が固定されており、ボールネジN1を回転駆動させることにより、吐出手段2及び刃具11をX軸方向に移動させるとともに、ボールネジN2を回転駆動させることにより、吐出手段2及び刃具11をY軸方向に移動させ得るようになっている。
【0032】
さらに、Z軸用移動手段6は、図22、23に示すように、モータm3等のアクチュエータの駆動で回転するボールネジN3によって取付部材B2を上下に移動させ得るよう構成されており、当該取付部材B2に保持手段12が固定されている。これにより、モータm3を駆動させることにより、保持手段12がテーブル3及び受け部材14と共に上下方向(Z方向)に移動し得るよう構成されている。
【0033】
制御手段9は、筐体Kの隣接位置に設置された制御盤収容部U内における例えば所定のプログラムを内蔵したマイコン等から成るもので、移動手段(X軸用移動手段4、Y軸用移動手段5及びZ軸用移動手段6)、B軸揺動手段7及びC軸回転手段8を任意選択的に作動させることにより、吐出手段2のノズル部2aから吐出した樹脂材料を受け部材14上に積層して所望形状の積層物を成形し得るものである。すなわち、制御手段9による指示によって、移動手段(X軸用移動手段4、Y軸用移動手段5及びZ軸用移動手段6)、B軸揺動手段7及びC軸回転手段8を任意選択的に作動させ、吐出手段2及びテーブル3を相対的に移動させることにより、受け部材14上に所望形状の積層物を成形させることができるのである。
【0034】
特に、B軸揺動手段7及びC軸回転手段8を任意選択的に作動させることにより、積層物を所定角度だけ傾斜させて回転させつつ樹脂材料を積層させることができるので、上方に向かって幅広となる部位(アンダーカット部)を有する積層物を成形する場合であっても、当該アンダーカット部の成形時、溶融樹脂が重力にて下方に垂れ下がってしまうのを防止でき、製品として不要なサポート構造(支持構造)の成形を不要とすることができる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る取付部材B1には、図26、27に示すように、吐出手段2と共に切削加工手段を構成する主軸(スピンドル)Sが取り付けられている。かかる主軸Sには、受け部材14上の積層物を切削可能な刃具(バイト)11が取り付け可能とされており、当該主軸Sを駆動させることにより刃具11が回転して所定の切削加工が行われるようになっている。
【0036】
また、筐体K内には、図22、23、25等に示すように、オートツールチェンジャ(ATC)のマガジン15が配設されている。かかるマガジン15には、主軸Sに取り付け可能な複数種類の刃具11が収容されており、積層物を切削加工する際は、移動手段を任意選択的に作動させて、取付部材B1の主軸Sをマガジン15の位置まで移動させ、自動的に当該主軸Sに所望の刃具11を取り付けることが可能とされている。
【0037】
加熱手段10は、吐出手段2のノズル部2aから溶融樹脂材料を吐出して積層物を成形する過程で、例えば刃具11による切削加工のために当該成形を一旦中断し、再びノズルから溶融樹脂材料を吐出して続きの積層を行う際、中断によって冷却固化した積層物を加熱して溶融させ、更なる積層を可能とするものである。ここで、本実施形態に係る加熱手段10は、図32〜36に示すように、受け部材14上の積層物を収容可能な箱形の収容手段10aと、当該収容手段10aに収容された積層物を加熱可能なヒータ10bとを有して構成されている。
【0038】
具体的には、収容手段10aは、開口Aにて内部の収容空間を側方に臨ませた箱形の部材から成り、開口Aから積層物を挿通させて内部の収容空間に収容可能とされるとともに、通電によって発熱することにより内部の収容空間を加熱するためのヒータ10bが取り付けられている。これにより、収容手段10aの内部に受け部材14上の積層物を収容するとともに、その収容された積層物をヒータ10bによる発熱で加熱することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る加熱手段10は、図32〜36に示すように、駆動機構Pによって移動可能とされている。かかる駆動機構Pは、シリンダS1等のアクチュエータにて移動可能なピニオンP1と、収容手段10aと連結された移動部材H1に取り付けられてピニオンP1の上部で噛み合ったラックP2と、固定部材H2に取り付けられてピニオンP1の下部にて噛み合ったラックP3とを有して構成されている。そして、シリンダSを駆動させてピニオンP1が回転しつつ移動することにより、収容手段10aが待機位置(図32、35参照)から収容位置(図36参照)まで移動し得るようになっている。
【0040】
さらに、本実施形態に係る加熱手段10は、図25、32、35、36等に示すように、筐体Kに設置(本実施形態においてはマガジン15と隣接した位置に設置)されたカバー部材13内に配設されており、駆動機構Pを駆動させることにより、カバー部材13の所定位置に形成された開口部13aを介して、収容手段10aがカバー部材13の内部の待機位置とカバー部材13の外部の収容位置との間を移動し得るようになっている。
【0041】
しかるに、本実施形態においては、図32に示すように、加熱手段10の収容手段10aが開口する方向にテーブル3(及び受け部材14)が配設されるとともに、図35に示すように、B軸揺動手段7でテーブル3を略90度だけ揺動させて受け部材14上の積層物を収容手段10の開口Aと対峙させた状態とし、駆動機構Pを駆動させることにより収容手段10aを待機位置から収容位置まで移動することで、図36に示すように、積層物を収容手段10aの開口Aから挿入させて収容可能とされている。
【0042】
このように、収容手段10a内に積層物を収容させた状態において、C軸回転手段8でテーブル3を回転させることにより、受け部材14上の積層物を回転しつつヒータ10bにて加熱可能とされている。特に、本実施形態においては、収容手段10aの開口Aをテーブル3(受け部材14でもよい)で覆うことにより当該収容手段10a内を略密閉状態としつつヒータ10bにて積層物を加熱可能とされている。なお、厳密には、テーブル3と収容手段10aの開口Aの周縁との間に僅かなクリアランスが形成されているが、収容手段10aを略密閉状態とすることができれば足りる。
【0043】
またさらに、本実施形態に係る加熱手段10は、収容手段10a内に外気を導入してヒータ10bで加熱された空気を当該収容手段10a内で流通させ得るファン10cを具備している。かかるファン10cは、ヒータ10bが取り付けられた収容手段10aの壁部に取り付けられており、通電によって作動して外気を収容手段10a内に導入することで、ヒータ10bで加熱された収容手段10a内の空気を積層物の周囲で循環させ得るようになっている。
【0044】
しかして、加熱手段10による加熱が終了すると、駆動機構Pを駆動させて収容手段10aを加熱位置(図36参照)から待機位置(図35参照)に移動させた後、B軸揺動手段7を作動させてテーブル3を元の通常状態まで揺動し(図32参照)、加熱された積層物上に更に吐出手段2から吐出した溶融樹脂を積層させる。なお、カバー部材13には、開口部13aを塞ぐシャッター13b(図25参照)が取り付けられており、積層物の加熱時以外はシャッター13が閉じた状態とされている。これにより、切削加工時に生じた切り屑等が収容手段10aの開口Aから内部に入り込まないようになっている。
【0045】
本実施形態によれば、加熱手段10は、受け部材14上の積層物を収容可能な箱形の収容手段10aと、当該収容手段10aで収容された積層物を加熱可能なヒータ10bとを有するので、例えば刃具11による切削加工によって所定の材料の吐出及び積層を中断させた後において、積層物を十分且つ均等に加熱して、更なる積層を精度よく行わせることができる。
【0046】
ここで、上記のような3次元プリンタを使用して成形品を製造する方法について、以下に説明する。
第1の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法は、図1に示すように、第1積層工程S1と、切削加工工程S2と、異種材料部材嵌入工程S3と、加熱工程S4と、第2積層工程S5とを有している。
【0047】
第1積層工程S1は、吐出手段2から吐出した材料を受け部材14上で積層させて積層物を得る工程であり、例えば図2に示すように、吐出手段2から所定の樹脂材料を吐出して、その樹脂材料が積層して成る積層物W1を得ることができる。この積層物W1を受け部材14上に載置した状態で冷却固化した後、次工程である切削加工工程S2が行われることとなる。
【0048】
切削加工工程S2は、第1積層工程S1で得られた積層物W1に対し、切削加工手段の刃具11により切削加工して当該積層物W1の所定位置に凹部を形成する工程であり、例えば図3に示すように、冷却固化した積層物W1の所望位置に凹部W1aを形成することができる。かかる凹部W1は、成形品にインサートする異種材料部材A1に倣った形状とされている。
【0049】
異種材料部材嵌入工程S3は、切削加工工程S2で形成された凹部W1aに対し、吐出手段2で吐出する材料とは異なる材料(本実施形態においては所定の金属材料)から成る異種材料部材を嵌入させる工程であり、例えば図4に示すように、凹部W1aに異種材料部材A1を嵌め込むことにより、積層物W1の表面に異種材料部材A1を固定させることができる。
【0050】
加熱工程S4は、異種材料嵌入工程S3で異種材料部材A1が嵌入された積層物W1を加熱手段10によって加熱する工程であり、かかる加熱工程S4を経ることにより、冷却固化状態の積層物W1が加熱されて軟化し、更なる積層を可能とすることができる。また、本実施形態に係る加熱工程S4によれば、積層物W1を受け部材14に載置した状態で、収容手段10a内に収容されてヒータ10bにて加熱されることとなる。そして、加熱工程S4が終了すると、受け部材14が収容手段10aの外部に移動して、吐出手段2の吐出による積層が可能とされる。
【0051】
第2積層工程S5は、加熱工程S4で加熱された積層物W1上に吐出手段2から吐出した材料を積層させて異種材料部材A1がインサートされた成形品を得る工程であり、例えば図5に示すように、吐出手段2から所定の樹脂材料(第1積層工程S1にて吐出された材料と同一)を吐出して、その樹脂材料が積層して成る積層物W2を得ることができる。このように、積層物W1、W2の間に異種材料部材A1を埋め込んだ状態とすることにより、樹脂材料内に所望形状の金属材料(異種材料部材A1)がインサートされた樹脂成形品を得ることができる。
【0052】
次に、第2の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法は、第1の実施形態と同様、図1に示すように、吐出手段2から吐出した材料を受け部材14上で積層させて積層物を得る第1積層工程S1と、第1積層工程S1で得られた積層物に対し、切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程S2と、切削加工工程S2で形成された凹部に対し、吐出手段2で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材A2を嵌入させる異種材料部材嵌入工程S3と、異種材料嵌入工程S3で異種材料部材A2が嵌入された積層物を加熱手段10によって加熱する加熱工程S4と、加熱工程S4で加熱された積層物上に吐出手段2から吐出した材料を積層させて異種材料部材A2がインサートされた成形品を得る第2積層工程S5とを有している。なお、第1の実施形態と同様の内容については、詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態においては、第1積層工程S1にて、図6、7に示すように、矩形状の空間Q1と、格子状の空間Q2とを有した所定の樹脂材料から成る積層物W1を得る。そして、積層物W1を冷却固化させた後、切削加工工程S2にて、図8、9に示すように、凹部W1bを切削加工する。かかる凹部W1bは、図10、11に示すような異種材料部材A2の形状に倣ったものとされており、図12、13に示すように、異種材料部材嵌入工程S3にて当該異種材料部材A2を凹部W1bに嵌入させる。本実施形態においては、異種材料部材A2が所定の金属材料とされている。
【0054】
その後、加熱工程S4において、加熱手段10によって異種材料部材A2が嵌入された積層物W1を加熱して軟化させ、図14、15に示すように、第2積層工程S5において、積層物W1上に吐出手段2から所定の樹脂材料(第1積層工程S1にて吐出された材料と同一)を吐出して、その樹脂材料が積層して成る積層物W2を得る。しかして、第1積層工程S1で得られる積層物W1は、異種材料部材A2がインサートされた部位以外に所定形状の空間(Q1、Q2)が形成されている。なお、所定形状の空間(Q1、Q2)の何れか一方、又は他の形状の空間を有するものであってもよい。
【0055】
このように、積層物W1、W2の間に異種材料部材A2を埋め込んだ状態とすることにより、樹脂材料内に所望形状の金属材料(異種材料部材A2)がインサートされ、且つ、所定形状の空間(Q1、Q2)を有する樹脂成形品を得ることができる。なお、本実施形態においては、第1積層工程S1で得られる積層物W1に所定形状の空間(Q1、Q2)が形成されているが、それに加え或いは代えて、第2積層工程S5で得られる積層物W1に所定形状の空間(Q1、Q2)が形成されるものとしてもよい。
【0056】
本実施形態によれば、異種材料部材A2がインサートされた部位以外に所定形状の空間(Q1、Q2)が形成されたので、所定形状の空間(Q1、Q2)によって軽量化を図ることができるとともに、空間をハニカム形状等の複雑な形状とすることにより強度の低下を抑制することができる。なお、所定形状の空間の形成数若しくは形成位置は、他の形態としてもよい。
【0057】
次に、第3の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法は、第1の実施形態と同様、図1に示すように、吐出手段2から吐出した材料を受け部材14上で積層させて積層物を得る第1積層工程S1と、第1積層工程S1で得られた積層物に対し、切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程S2と、切削加工工程S2で形成された凹部に対し、吐出手段2で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材A3を嵌入させる異種材料部材嵌入工程S3と、異種材料嵌入工程S3で異種材料部材A3が嵌入された積層物を加熱手段10によって加熱する加熱工程S4と、加熱工程S4で加熱された積層物上に吐出手段2から吐出した材料を積層させて異種材料部材A2がインサートされた成形品を得る第2積層工程S5とを有している。なお、第1の実施形態と同様の内容については、詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態においては、切削加工工程S2にて、図16に示すように、異種材料部材A3を嵌入させるための凹部W1cとは異なる位置に凹形状J1を形成し、図17に示すように、異種材料部材嵌入工程S3にて凹部W1cに異種材料部材A3を嵌入させる。なお、本実施形態においては、積層物W1、W2が所定の樹脂材料から成るものとされ、異種材料部材A2が所定の金属材料から成るものとされている。
【0059】
そして、加熱工程S4を経た後、第2積層工程S5において、図18に示すように、吐出手段2から吐出した材料を凹形状J1内に充填させつつ積層物W2を得るようになっている。このように、積層物W1、W2の間に異種材料部材A3を埋め込んだ状態とすることにより、樹脂材料内に所望形状の金属材料(異種材料部材A3)がインサートされ、且つ、凹形状J1に樹脂が充填されて積層物W1と積層物W2とが一体化された樹脂成形品を得ることができる。
【0060】
本実施形態によれば、切削加工工程S2において、凹部W1cとは異なる位置に凹形状J1を形成するとともに、第2積層工程S5において、吐出手段2から吐出した材料を凹形状J1内に充填させるので、第1積層工程S1で得られた積層物W1と第2積層工程S5で得られた積層物W2とを強固に接合して一体化させることができる。なお、凹形状J1の形成数及び形成位置は、他の形態としてもよい。
【0061】
次に、第4の実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法について説明する。
本実施形態に係る3次元プリンタによる成形品の製造方法は、第1の実施形態と同様、図1に示すように、吐出手段2から吐出した材料を受け部材14上で積層させて積層物を得る第1積層工程S1と、第1積層工程S1で得られた積層物に対し、切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程S2と、切削加工工程S2で形成された凹部に対し、吐出手段2で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材A4を嵌入させる異種材料部材嵌入工程S3と、異種材料嵌入工程S3で異種材料部材A4が嵌入された積層物を加熱手段10によって加熱する加熱工程S4と、加熱工程S4で加熱された積層物上に吐出手段2から吐出した材料を積層させて異種材料部材A2がインサートされた成形品を得る第2積層工程S5とを有している。なお、第1の実施形態と同様の内容については、詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態においては、切削加工工程S2にて、図19に示すように、異種材料部材A3を嵌入させるための凹部W1cとは異なる位置に凹形状J2を形成し、図20に示すように、異種材料部材嵌入工程S3にて凹部W1cに異種材料部材A3を嵌入させる。本実施形態に係る凹形状J2は、所定の材料の積層方向aに対して傾斜した方向に延びる穴形状とされており、アンダーカットした部位を有している。なお、本実施形態においては、積層物W1、W2が所定の樹脂材料から成るものとされ、異種材料部材A2が所定の金属材料から成るものとされている。
【0063】
そして、加熱工程S4を経た後、第2積層工程S5において、図21に示すように、吐出手段2から吐出した材料を凹形状J2内に充填させつつ積層物W2を得るようになっている。このように、積層物W1、W2の間に異種材料部材A4を埋め込んだ状態とすることにより、樹脂材料内に所望形状の金属材料(異種材料部材A4)がインサートされ、且つ、凹形状J2に樹脂が充填されて積層物W1と積層物W2とが一体化された樹脂成形品を得ることができる。
【0064】
本実施形態によれば、切削加工工程S2において、凹部W1dとは異なる位置に凹形状J2を形成するとともに、第2積層工程S5において、吐出手段2から吐出した材料を凹形状J2内に充填させるので、第3の実施形態と同様、第1積層工程S1で得られた積層物W1と第2積層工程S5で得られた積層物W2とを強固に接合して一体化させることができる。特に、本実施形態によれば、凹形状J2は、所定の材料の積層方向aに対して傾斜した方向に延びる穴形状であるので、当該穴形状に充填された材料によって第1積層工程S1で得られた積層物W1と第2積層工程S5で得られた積層物W2との間の抜け止めを図ることができ、これら第1積層工程S1で得られた積層物W1と第2積層工程S5で得られた積層物W2との接合をより強固にすることができる。なお、凹形状J2の形成数及び形成位置は、他の形態としてもよい。
【0065】
上記第1〜4実施形態によれば、第1積層工程S1、切削加工工程S2、異種材料部材嵌入工程S3、加熱工程S4及び第2積層工程S5を経ることにより、積層物(W1、W2)を成す材料とは異なる材料の異種材料部材(A1〜A4)がインサートされた成形品を得ることができる。また、第1積層工程S1及び第2積層工程S5で積層させる材料は、所定の樹脂材料から成るとともに、異種材料部材(A1〜A4)は、所定の金属材料から成るので、金属製の異種材料部材(A1〜A4)がインサートされた樹脂成形品を容易且つ円滑に得ることができる。
【0066】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば第1積層工程S1で積層させる材料と第2積層工程S5で積層させる材料とが異なる材料であってもよく、その場合、第1積層工程S1で積層させる積層物W1と、第2積層工程S5で積層させる積層物W2と、異種材料部材(A1〜A4)とを互いに異なる材料とすることができ、互いに異なる3つの材料から成るインサート成形品を得ることができる。なお、積層物(W1、W2)及び異種材料部材(A1〜A4)を上記実施形態とは異なる材料(例えば積層物(W1、W2)を金属材料にて形成するもの、異種材料部材(A1〜A4)を樹脂材料にて形成するもの等)としてもよい。
【0067】
また、適用される3次元プリンタは、上記実施形態のものに限らず、第1積層工程S1、切削加工工程S2、異種材料部材嵌入工程S3、加熱工程S4及び第2積層工程S5を行わせることができる3次元プリンタであれば足りる。なお、本実施形態においては、B軸揺動手段7によりテーブル3を90度揺動させて積層物を横向きとした状態で収容手段10a内に収容させているが、テーブル3を通常状態(載置面14aが略水平状態)とし、上方から収容手段10aを移動させて内部に収容させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
吐出手段から吐出した材料を受け部材上で積層させて積層物を得る第1積層工程と、第1積層工程で得られた積層物に対し、切削加工手段により切削加工して当該積層物の所定位置に凹部を形成する切削加工工程と、切削加工工程で形成された凹部に対し、吐出手段で吐出する材料とは異なる材料から成る異種材料部材を嵌入させる異種材料部材嵌入工程と、異種材料嵌入工程で異種材料部材が嵌入された積層物を加熱手段によって加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱された積層物上に吐出手段から吐出した材料を積層させて異種材料部材がインサートされた成形品を得る第2積層工程とを有する3次元プリンタによる成形品の製造方法であれば、他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 3次元プリンタ
2 吐出手段
2a ノズル部
3 テーブル
4 X軸用移動手段
5 Y軸用移動手段
6 Z軸用移動手段
7 B軸揺動手段
8 C軸回転手段
9 制御手段
10 加熱手段
10a 収容手段
10b ヒータ
10c ファン
11 刃具
12 保持手段
13 カバー部材
13a 開口部
13b シャッター
14 受け部材
14a 載置面
15 マガジン
α B軸
β C軸
γ 撓み方向
K 筐体
T 開閉扉
U 制御盤収容部
S 主軸(スピンドル)
F1、F2 フレーム
P 駆動機構
R リール
E 追従リール
A 開口
B1 取付部材
B2 取付部材
h ヒータ
A1〜A4 異種材料部材
W1a〜W1d 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36