特開2020-29429(P2020-29429A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-29429(P2020-29429A)
(43)【公開日】2020年2月27日
(54)【発明の名称】新規抗腫瘍剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 291/10 20060101AFI20200131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200131BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20200131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200131BHJP
   A61K 35/655 20150101ALN20200131BHJP
【FI】
   C07C291/10CSP
   A61P35/00
   A61K31/277
   A61P43/00 105
   A61K35/655
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-156728(P2018-156728)
(22)【出願日】2018年8月23日
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】000237112
【氏名又は名称】富士シリシア化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518302405
【氏名又は名称】犬塚 俊康
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】上村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 優子
(72)【発明者】
【氏名】河田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 俊康
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 稔
(72)【発明者】
【氏名】丸 範人
【テーマコード(参考)】
4C087
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB02
4C087CA06
4C087CA41
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206HA11
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB21
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AB28
(57)【要約】
【課題】細胞毒性等の生理活性を示す新規化合物を提供すること。
【解決手段】高知県宿毛湾にて採取されたカイメンから単離した次の化学式(I)で表される新規化合物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学式(I)で表される化合物。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の化学式(I)で表される化合物を有効成分として含有する医薬。
【請求項3】
抗腫瘍剤である、請求項2に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
新規生物活性物質の発見は、生命科学や医学の分野におけるブレークスルーにつながることがある。例えば、腔腸動物イワスナギンチャク毒パリトキシンはナトリウムポンプに作用し、クロイソカイメンなど由来のオカダ酸はタンパク質脱リン酸化酵素に作用することから、生理機能解明のツールとして利用されている。クロイソカイメン由来の抗癌活性を示すハリコンドリンBの発見は、抗癌剤エリブリンの創製へとつながった。
このように、生物活性物質の探索研究は基礎生命科学研究のみならず、臨床応用へも発展する可能性がある。中でも、海洋生物は、酸素濃度や塩濃度、温度や圧力、日照などの生息条件が陸上と全く異なることから、陸上生物には見られない特異な構造や機能を持つ二次代謝産物を生産しており、有用生物活性物質の探索源として今なお注目されている。本発明者らも、近年、渦鞭毛藻Amphidinium sp.由来のカルシウムイオンチャネル阻害活性物質Amdigenol類(非特許文献1,2)やシアノバクテリアLeptolyngbya sp.由来の脂肪細胞分化阻害活性物質Yoshinone A(非特許文献3)などの新規生物活性物質の単離・構造解析・生物活性評価について報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Inuzuka,T.,Yamamoto,Y.,Yamada,K.,Uemura, D. Tetrahedron Letters 2012,53,239−242
【非特許文献2】Inuzuka,T.,Yamada,K.,Uemura,D. Tetrahedron Letters 2014,55,6319−6323
【非特許文献3】Inuzuka,T.,Yamamoto,K.,Iwasaki,A.,Ohno, O.,Suenaga,K.,Kawazoe,Y.,Uemura,D. Tetrahedron Letters 2014,55,6711−6714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生理活性を示し、医薬としての利用が期待される新規化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高知県宿毛湾で採集したカイメンから分離した下記化学式(I)で表される化合物が、B16メラノーマ細胞に対する増殖阻害作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記化学式(I)
【化1】
で表される化合物又はその塩に関するものである。
【0007】
本発明は、前記化学式(I)で表される化合物を有効成分として含有する医薬、特に抗腫瘍剤に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、B16メラノーマ細胞に対する増殖阻害作用を示す化学式(I)で表される化合物又はその塩を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る化学式(I)で表される化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
図2】本発明に係る化学式(I)で表される化合物のHMQCスペクトルを示す図である。
図3】本発明に係る化学式(I)で表される化合物のHMBCスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
本発明に係る化学式(I)で表される化合物は、カイメンから抽出し、精製することにより得ることができる。より詳細には、本発明に係る化学式(I)で表される化合物は高知県宿毛湾にて採取したカイメンから抽出し、精製することにより得た。
【0011】
本発明で使用するカイメンとしては、高知県宿毛湾に生息するカイメンを用いるのが好ましい。本発明に係る化学式(I)で表される化合物を含有するカイメンまたはその部位としては、それ自身を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、それら自身を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出画分など、すべてを利用することができる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上混合してもよい。
【0012】
例えば、採取後に冷凍保存したカイメンを、含水メタノール中にて粉砕・抽出し、濃縮して粗抽出物を得、粗抽出物を酢酸エチル層と水層とに分配し、さらに、有機層としての酢酸エチル層を分取薄層クロマトグラフィーやODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより画分することができる。
【0013】
本発明に係る化学式(I)で表される化合物は新規な化合物であり、本発明者によりB16メラノーマ細胞に対する増殖阻害作用を示すことを見出されたものである。
【0014】
本発明に係る化学式(I)で表される化合物はB16メラノーマ細胞に対する増殖阻害作用を示すことから、医薬、特に抗腫瘍剤として使用が期待されるものである。
【0015】
本発明の化合物は治療のために経口的あるいは非経口的に投与することができる。経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などの固形製剤あるいはシロップ剤、エリキシル剤などの液状製剤とすることができる。また、非経口投与剤として注射剤、直腸投与剤、皮膚外用剤、吸入剤とすることができる。これらの製剤は有効成分に薬学的に認容である製造助剤を加えることにより常法に従って製造される。更に公知の技術により持続性製剤とすることも可能である。
【0016】
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤例えば乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳糖カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸などとを混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するにはこれらの散剤及び顆粒剤をそのままあるいはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチルコポリマーなどの腸溶性基剤で被覆して腸溶性製剤、あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆し軟カプセル剤とすることができる。
【0017】
経口投与用の液状製剤を製造するには、有効成分と白糖、ソルビトール、グリセリンなどの甘味剤とを水に溶解して透明なシロップ剤、更に精油、エタノールなどを加えてエリキシル剤とするか、アラビアゴム、トラガント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを加えて乳剤又は懸濁剤としてもよい。これらの液状製剤には所望により矯味剤、着色剤、保存剤などを加えてもよい。
【0018】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じ塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤とともに注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空下凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレシチン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射用乳剤とすることもできる。
【0019】
直腸投与剤を製造するには、有効成分及びカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの坐剤用基剤とを加湿して溶融し型に流しこんで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆すればよい。
【0020】
皮膚外用剤を製造するには、有効成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合したのちポリエチレンなどの不織布に展延してテープ剤とする。吸入剤を製造するには、有効成分をフロンガスなどの噴射剤に溶解又は分散して耐圧容器に充填しエアゾール剤とする。
【0021】
上記構成を有する本発明の薬剤は、公知の製造法、例えば日本薬局方第10版製剤総則記載の方法ないし適当な改良を加えた方法によって製造することができる。
【0022】
本発明の有効成分の投与量は患者の年齢、体重及び病態によって異なるが、通常1日約1mg〜1000mgであり、1乃至数回に分けて投与することが望ましい。
【0023】
以下、実施例を挙げて、本発明の具体的態様を示すものであるが、本発明の技術的範囲は実施例の記載により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
本発明に係る化学式(I)で表される化合物の単離・精製・構造決定
高知県宿毛湾で採取した未同定カイメン34.2g(湿重量、冷凍保存)を解凍し、小石を取り除いてから含水メタノール中にてブレンダーで粉砕した。抽出液を吸引濾過し、エバポレーターを用いて濾液を濃縮した。粗抽出物を酢酸エチル(200ml×2)と水(200ml)とで分配した。得られた酢酸エチル層の一部を減圧濃縮し、濃縮物(37.6mg)を分取薄層クロマトグラフィー(Silica gel 60 F254(0.5×200×200mm)、メタノール/酢酸エチル(1:3))により7画分(Fr.4−1〜7)に分画した。第3画分(Fr.4−3)をメタノール/酢酸エチル(1:1)で溶出・濃縮し、濃縮物22.7mgを得た。これを分取薄層クロマト蔵フィー(Silica gel 60 F254(0.5×200×200mm)、酢酸エチル/ヘキサン(1:2))により6画分(Fr.4−8〜13)に分画した。第1画分(Fr.4−8)をメタノール/酢酸エチル(1:1)で溶出・濃縮し、濃縮物2.8mgを得た。
上記Fr.4−8を高速液体クロマトグラフィー[Chromatorex(登録商標)C18 SPS100−5THE(φ10×250mm)、アセトニトリル/水=80/20(グラジェント30分)→100/0、検出215nm]により4画分に分離した。その内の一つの画分(Fr.4−21、0.5mg)を高速液体クロマトグラフィー[Chromatorex(登録商標)C18 SPS100−5THE(φ10×250mm)、アセトニトリル/水=80/20(グラジェント5分)→93/17(グラジェント25分)→100/0、検出215nm、流速4.0mL/min.]により3画分に分離した。
上記の内158分から174分に溶出した画分(Fr.4−24、0.2mg)を高速液体クロマトグラフィー[Chromatorex(登録商標)C18 SPS100−5HE(φ10×250mm)、メタノール/水=90/10(グラジェント5分)→90/10(グラジェント15分)→100/0(グラジェント15分)→100/0、検出205nm、流速3.4mL/min.]により10画分に分離した。23.8分から25.5分に溶出した画分(Fr.4−24−8)を減圧濃縮・乾固して式(I)で表される化合物(0.1mg)を無色不定形固体として得た。
【0025】
上記操作により得られた本発明の式(I)で表される化合物について、高分解能ESI−MSにより分子イオンピーク(m/z:299.26130(100%)、300.26465(22.7%)、301.26801(2.5%)が観測され、分子式がC2133Nであることが判明した。
【0026】
H−NMR、HMQC及びHMBCを測定し、得られたスペクトルを解析することにより、無色不定形固体であって、C2133Nの分子式を有する化合物の平面構造を決定した。
【0027】
上記操作により得られた無色不定形固体である本発明の化学式(I)
【化2】
で表される化合物についてのH−NMR及び13C−NMRのスペクトルデータを以下に示す。上記構造式中、数字は炭素番号を表す。
【0028】
本発明の化学式(I)で表される化合物のH−NMR(600MHz、CDOD)のスペクトルデータは以下のとおりである。
【表1】
【0029】
表1中、sは一重線、dは二重線、mは多重線、brsは幅広い一重線、brdは幅広い二重線を表す。
【0030】
本発明の化学式(I)で表される化合物の13C−NMRのスペクトルデータは以下のとおりである。
【表2】
【0031】
試験例(化学式(I)で表される化合物のB16メラノーマ細胞に対する増殖阻害活性試験)
マウス黒色腫由来細胞株(B16メラノーマ)は、10%ウシ胎児血清含有のDMEM培地にて炭酸ガス培養器(5%CO、37℃)で培養した。B16メラノーマ細胞を96穴プレートに播種し(1×10cells/well)、DMSOに溶解した本発明に係る化学式(I)で表される化合物を所定の濃度(0、0.01、0.1、1、5μg/mL)になるように細胞に添加し、さらに120時間培養を続けた。細胞数の測定にはMTTを用い、常法に従って行った。その結果、IC50=0.37μg/mLの濃度で癌細胞の増殖を阻害した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の化学式(1)で示される化合物は、B16メラノーマ細胞に対する増殖阻害作用を示すことから、医薬、特に抗腫瘍剤として有用である。
図1
図2
図3