【解決手段】該方法は、蓄積状態から空乏状態までゲート電極−基板間の電圧をスイープしている間にゲート電極−基板間に形成されるキャパシタの容量値を計測し、その後、空乏状態から蓄積状態までゲート電極−基板間の電圧をスイープしている間にゲート電極−基板間に形成されるキャパシタの容量値を計測し、更に、蓄積状態から空乏状態までゲート電極−基板間の電圧を再度スイープしている間にゲート電極−基板間に形成されるキャパシタの容量値を計測し、その後、半導体層と絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行ってから、空乏状態から蓄積状態までゲート電極−基板間の電圧を再度スイープしている間にゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測し、計測されたキャパシタの容量値より界面特性を推定する。
基板と、前記基板に設けられた半導体層と、ゲート電極と、前記半導体層と前記ゲート電極との間に設けられた絶縁体層とを備える半導体装置における、前記半導体層と前記絶縁体層との界面特性を測定するための方法であって、
(a)前記絶縁体層と隣接する前記半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、前記ゲート電極と前記基板との間に電圧を印加するステップと、
(b)前記蓄積状態から、前記絶縁体層と隣接する前記半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、前記ゲート電極と前記基板との間の電圧をスイープし、前記空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップと、
(c)前記ステップ(b)の間に、前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップと、
(d)前記ステップ(b)の後、前記空乏状態から前記蓄積状態が形成されるようになるまで、前記ゲート電極と前記基板との間の電圧をスイープし、前記蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップと、
(e)前記ステップ(d)の間に、前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップと、
(f)前記ステップ(d)の後、前記蓄積状態から前記空乏状態が形成されるようになるまで、前記ゲート電極と前記基板との間の電圧を再度スイープし、前記空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップと、
(g)前記ステップ(f)の間に、前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップと、
(h)前記ステップ(f)の後、前記半導体層と前記絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行うステップと、
(i)前記ステップ(h)の後、前記空乏状態から前記蓄積状態が形成されるようになるまで、前記ゲート電極と前記基板との間の電圧を再度スイープし、前記蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップと、
(j)前記ステップ(i)の間に、前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップと、
(k)前記ステップ(c)、(e)、(g)、(j)において計測されたキャパシタの容量値より、前記界面特性を推定するステップと
を含む方法。
前記ステップ(b)において、前記蓄積状態の電圧から前記空乏状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第1のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、前記ステップ(d)において、前記空乏状態の電圧から前記蓄積状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第2のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、前記ステップ(f)において、前記蓄積状態の電圧から前記空乏状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第3のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、前記ステップ(i)において、前記空乏状態の電圧から前記蓄積状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第4のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープする、請求項1に記載の方法。
前記ステップ(k)において、前記比較した結果を使用して、前記半導体層のバンドギャップの範囲における深い界面準位にトラップされた電荷の密度を推定する、請求項3に記載の方法。
前記ステップ(h)において、小さいエネルギーを有する光子による光照射から大きいエネルギーを有する光子による光照射に向かってスイープさせるように光照射を行う、請求項5に記載の方法。
前記絶縁体層は、Al、Si、Hf、Zr、Ta、Ti、Ga、Y、Sc、希土類元素からなる元素の群から選択された少なくとも1つの元素の酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
前記ゲート電極は、Al、Ti、W、Pt、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Ni、Sn、Zn、poly−Siからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
スイープ電源と、容量測定器と、制御装置と、光源とを備える装置において、基板と、前記基板に設けられた半導体層と、ゲート電極と、前記半導体層と前記ゲート電極との間に設けられた絶縁体層とを備える半導体装置における、前記半導体層と前記絶縁体層との界面特性の測定を実行させるためのプログラムであって、
(a)前記絶縁体層と隣接する前記半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、前記スイープ電源によって前記ゲート電極と前記基板との間に電圧を印加させるステップと、
(b)前記蓄積状態から、前記絶縁体層と隣接する前記半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、前記スイープ電源によって前記ゲート電極と前記基板との間の電圧をスイープさせ、前記空乏状態が形成された後、前記スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップと、
(c)前記ステップ(b)の間に、前記容量測定器によって前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップと、
(d)前記ステップ(b)の後、前記空乏状態から前記蓄積状態が形成されるようになるまで、前記スイープ電源によって前記ゲート電極と前記基板との間の電圧をスイープさせ、前記蓄積状態が形成された後、前記スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップと、
(e)前記ステップ(d)の間に、前記容量測定器によって前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップと、
(f)前記ステップ(d)の後、前記蓄積状態から前記空乏状態が形成されるようになるまで、前記スイープ電源によって前記ゲート電極と前記基板との間の電圧を再度スイープさせ、前記空乏状態が形成された後、前記スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップと、
(g)前記ステップ(f)の間に、前記容量測定器によって前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップと、
(h)前記ステップ(f)の後、前記光源によって前記半導体層と前記絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行わせるステップと、
(i)前記ステップ(h)の後、前記空乏状態から前記蓄積状態が形成されるようになるまで、前記スイープ電源によって前記ゲート電極と前記基板との間の電圧を再度スイープさせ、前記蓄積状態が形成された後、前記スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップと、
(j)前記ステップ(i)の間に、前記容量測定器によって前記ゲート電極と前記基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップと、
(k)前記ステップ(c)、(e)、(g)、(j)において計測されたキャパシタの容量値より、前記制御装置によって前記界面特性を推定させるステップと
を含むプログラム。
前記スイープ電源によって、前記ステップ(b)において、前記蓄積状態の電圧から前記空乏状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第1のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、前記ステップ(d)において、前記空乏状態の電圧から前記蓄積状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第2のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、前記ステップ(f)において、前記蓄積状態の電圧から前記空乏状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第3のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、前記ステップ(i)において、前記空乏状態の電圧から前記蓄積状態の電圧まで前記半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第4のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせる、請求項11に記載のプログラム。
前記ステップ(k)において、前記制御装置によって前記比較した結果を使用して前記半導体層のバンドギャップの範囲における深い界面準位にトラップされた電荷の密度を推定させる、請求項13に記載のプログラム。
前記ステップ(h)において、前記光源によって前記半導体層のバンドギャップエネルギーまでのエネルギーを有する光子による光照射を行わせる、請求項11〜14の何れか一項に記載のプログラム。
前記ステップ(h)において、前記光源によって小さいエネルギーを有する光子による光照射から大きいエネルギーを有する光子による光照射に向かってスイープさせるように光照射を行わせる、請求項15に記載のプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、半導体試料に常に光照射を行いながらC−V特性を測定すると、空乏状態で、光照射によって生成した電荷が容量として観測され、C−V曲線から正確なフラットバンド電圧を求めることが難しいという問題点がある。
【0009】
また非特許文献1においては、窒化アルミニウムガリウムのバンドギャップエネルギーの大きさの半分までのエネルギーを有する光子によって光照射を行っているために、バンドギャップの深いエネルギー準位にトラップされた電荷の有無を判断することができないという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決して、半導体層と絶縁体層との間の界面準位において、バンドギャップの浅いエネルギー準位から深いエネルギー準位までにトラップされた電荷の有無を判断することができる測定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの観点によれば、基板と、基板に設けられた半導体層と、ゲート電極と、半導体層とゲート電極との間に設けられた絶縁体層とを備える半導体装置における、半導体層と絶縁体層との界面特性を測定するための方法が、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、ゲート電極と基板との間に電圧を印加するステップ(a)と、蓄積状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、ゲート電極と基板との間の電圧をスイープし、空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップ(b)と、ステップ(b)の間に、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップ(c)と、ステップ(b)の後、空乏状態から蓄積状態が形成されるようになるまで、ゲート電極と基板との間の電圧をスイープし、蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップ(d)と、ステップ(d)の間に、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップ(e)と、ステップ(d)の後、蓄積状態から空乏状態が形成されるようになるまで、ゲート電極と基板との間の電圧を再度スイープし、空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップ(f)と、ステップ(f)の間に、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップ(g)と、ステップ(f)の後、半導体層と絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行うステップ(h)と、ステップ(h)の後、空乏状態から蓄積状態が形成されるようになるまで、ゲート電極と基板との間の電圧を再度スイープし、蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止するステップ(i)と、ステップ(i)の間に、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測するステップ(j)と、ステップ(c)、(e)、(g)、(j)において計測されたキャパシタの容量値より界面特性を推定するステップ(k)とを含む。
【0012】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(b)において、蓄積状態の電圧から空乏状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第1のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、上記方法のステップ(d)において、空乏状態の電圧から蓄積状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第2のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、上記方法のステップ(f)において、蓄積状態の電圧から空乏状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第3のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープし、上記方法のステップ(i)において、空乏状態の電圧から蓄積状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第4のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープする。
【0013】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(k)において、第2のフラットバンド電圧と第4のフラットバンド電圧とを比較する。
【0014】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(k)において、上記比較した結果を使用して、半導体層のバンドギャップの範囲における深い界面準位にトラップされた電荷の密度を推定する。
【0015】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(h)において、半導体層のバンドギャップエネルギーまでのエネルギーを有する光子による光照射を行う。
【0016】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(h)において、小さいエネルギーを有する光子による光照射から大きいエネルギーを有する光子による光照射に向かってスイープさせるように光照射を行う。
【0017】
本発明の一具体例によれば、上記方法のステップ(a)〜(g)、(i)〜(k)においては光照射を行わない。
【0018】
本発明の一具体例によれば、上記方法において、半導体層は、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択された1つを含む。
【0019】
本発明の一具体例によれば、上記方法において、絶縁体層は、Al、Si、Hf、Zr、Ta、Ti、Ga、Y、Sc、希土類元素からなる元素の群から選択された少なくとも1つの元素の酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む。
【0020】
本発明の一具体例によれば、上記方法において、ゲート電極は、Al、Ti、W、Pt、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Ni、Sn、Zn、poly−Siからなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明の1つの観点によれば、スイープ電源と、容量測定器と、制御装置と、光源とを備える装置において、基板と、基板に設けられた半導体層と、ゲート電極と、半導体層とゲート電極との間に設けられた絶縁体層とを備える半導体装置における、半導体層と絶縁体層との界面特性の測定を実行させるためのプログラムが、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、スイープ電源によってゲート電極と基板との間に電圧を印加させるステップ(a)と、蓄積状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、スイープ電源によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープさせ、空乏状態が形成された後、スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップ(b)と、ステップ(b)の間に、容量測定器によってゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップ(c)と、ステップ(b)の後、空乏状態から蓄積状態が形成されるようになるまで、スイープ電源によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープさせ、蓄積状態が形成された後、スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップ(d)と、ステップ(d)の間に、容量測定器によってゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップ(e)と、ステップ(d)の後、蓄積状態から空乏状態が形成されるようになるまで、スイープ電源によってゲート電極と基板との間の電圧を再度スイープさせ、空乏状態が形成された後、スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップ(f)と、ステップ(f)の間に、容量測定器によってゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップ(g)と、ステップ(f)の後、光源によって半導体層と絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行わせるステップ(h)と、ステップ(h)の後、空乏状態から蓄積状態が形成されるようになるまで、スイープ電源によってゲート電極と基板との間の電圧を再度スイープさせ、蓄積状態が形成された後、スイープ電源の電圧のスイープを停止させるステップ(i)と、ステップ(i)の間に、容量測定器によってゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測させるステップ(j)と、ステップ(c)、(e)、(g)、(j)において計測されたキャパシタの容量値より、制御装置によって界面特性を推定させるステップ(k)とを含む。
【0022】
本発明の一具体例によれば、スイープ電源によって、上記プログラムのステップ(b)において、蓄積状態の電圧から空乏状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第1のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、上記プログラムのステップ(d)において、空乏状態の電圧から蓄積状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第2のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、上記プログラムのステップ(f)において、蓄積状態の電圧から空乏状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第3のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせ、上記プログラムのステップ(i)において、空乏状態の電圧から蓄積状態の電圧まで半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第4のフラットバンド電圧を通るように電圧をスイープさせる。
【0023】
本発明の一具体例によれば、上記プログラムのステップ(k)において、制御装置によって第2のフラットバンド電圧と第4のフラットバンド電圧とを比較させる。
【0024】
本発明の一具体例によれば、上記プログラムのステップ(k)において、制御装置によって上記比較した結果を使用して半導体層のバンドギャップの範囲における深い界面準位にトラップされた電荷の密度を推定させる。
【0025】
本発明の一具体例によれば、上記プログラムのステップ(h)において、光源によって半導体層のバンドギャップエネルギーまでのエネルギーを有する光子による光照射を行わせる。
【0026】
本発明の一具体例によれば、上記プログラムのステップ(h)において、光源によって小さいエネルギーを有する光子による光照射から大きいエネルギーを有する光子による光照射に向かってスイープさせるように光照射を行わせる。
【0027】
本発明の一具体例によれば、上記プログラムのステップ(a)〜(g)、(i)〜(k)においては、光源によって光照射を行わせない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、半導体層と絶縁体層との間の界面準位において、バンドギャップの深いエネルギー準位にトラップされた電荷の有無を判断することができる。
【0029】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
図1に、半導体層と絶縁体層との界面特性を測定するための測定装置101を示す。測定装置101は、制御装置102と、記憶装置103と、スイープ電源104と、交流電源105と、光源106と、容量測定器107とを備える。測定装置101によって測定される半導体装置109は、基板と、基板に設けられた半導体層と、ゲート電極と、半導体層とゲート電極との間に設けられた絶縁体層とを備える。半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧が印加されることができるように、ゲート電極と基板との間にスイープ電源104及び交流電源105が接続される。スイープ電源104は、制御装置102によって制御されて、正電圧から負電圧に又は負電圧から正電圧にスイープ(掃引)しながらゲート電極と基板との間に電圧を印加することができる。交流電源105は、制御装置102によって制御されて、ゲート電極と基板との間に微小振幅の交流電圧を印加することができる。光源106は、制御装置102によって制御されて、半導体装置109の半導体層と絶縁体層との間の界面に対して光照射108を行うことができる。容量測定器107は、交流電源105からの交流電圧を使用して、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間に印加されている電圧における、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を計測することができる。制御装置102は、記憶装置103に接続されていてもよく、計測されたキャパシタの容量値は、記憶装置103に記憶されてもよい。また、制御装置102はCPU等の処理装置を備えていてもよく、記憶装置103に記憶されたプログラムを読み出して、プログラムによって、下記に説明される半導体層と絶縁体層との界面特性を測定するための方法が実行されるようにしてもよい。
【0033】
図2aに、測定装置101によって測定される半導体装置109の実施形態である横型MISFET201aを示す。横型MISFET201aは、高周波デバイスとして使用されることができ、基板202上に設けられた半導体層(チャネル層)203と、ゲート電極205と、半導体層203とゲート電極205との間に設けられた絶縁体層(ゲート絶縁膜)204とを備える。また、横型MISFET201aは、MISFETを構成するために、半導体層203に不純物を注入することによって、ソース領域208及びドレイン領域209を備える。例えば、半導体層203がn型の半導体である場合には、半導体層203にp型の不純物を注入することによって、ソース領域208及びドレイン領域209を形成する。横型MISFET201aは、ソース領域208上及びドレイン領域209上に、それぞれソース電極206及びドレイン電極207を備える。測定装置101を使用して、横型MISFET201aの半導体層203と絶縁体層204との界面特性を測定することができる。
【0034】
図2bに、測定装置101によって測定される半導体装置109の実施形態である縦型MISFET201bを示す。縦型MISFET201bは、パワーデバイスとして使用されることができ、ドリフト層210と、ドリフト層210上に設けられた半導体層(チャネル層)203と、ドリフト層210及び半導体層203に設けられたトレンチに埋め込まれたゲート電極205と、ドリフト層210及び半導体層203とゲート電極205との間に埋め込まれた絶縁体層(ゲート絶縁膜)204とを備える。また、縦型MISFET201bは、MISFETを構成するために、半導体層203に不純物を含むソース領域208を備え、ドリフト層210下に不純物を含むドレイン領域209を備える。例えば、半導体層203をp型の半導体とする場合には、ドリフト層210上にMg
+イオン等のp型の不純物をドープしてエピタキシャル成長することによって、又はp型の不純物を注入することによって、半導体層203を形成し、半導体層203にn型の不純物を注入することによって、ソース領域208を形成する。また、n型の不純物をドープした自立基板としてのドレイン領域209上に低濃度のn型の不純物をドープしてエピタキシャル成長することによって、ドリフト層210を形成する。縦型MISFET201bは、ソース領域208上にソース電極206を備え、ドレイン領域209下にドレイン電極207を備える。測定装置101を使用して、縦型MISFET201bの半導体層203と絶縁体層204との界面特性を測定することができる。なお、縦型MISFET201bにおいては、下記に説明される方法でいうところの基板として半導体層203の一部を使用する。
【0035】
半導体層203は、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、ダイヤモンド(C)、及び窒化アルミニウム(AlN)からなる群から選択された1つから形成される。窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムのバンドギャップエネルギーは、それぞれ3.4eV、4.9eV、5.47eV、6.2eVである。このようなバンドギャップエネルギーが3eVより大きいワイドギャップ半導体を半導体層として使用する場合に、本発明の半導体層と絶縁体層との界面特性を測定するための方法は特に有効である。
【0036】
絶縁体層204は、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、希土類元素からなる元素の群から選択された少なくとも1つの元素の酸化物、窒化物、又は酸窒化物から形成される。絶縁体層204の具体的な材料としては、Al
2O
3、SiO
2、HfO
2、ZrO
3、Ta
2O
3、TiO
2、Ga
2O
3、YO
3、Sc
2O
3、Si
3N
4、SiON、等を挙げることができる。絶縁体層204は、3nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下が更に好ましい。3nm以下の場合、トンネル電流が発生しやすくなったり、ゲート耐圧不良が発生しやすくなったりする。100nm以上では電流駆動能力(Gm)等のFETの特性が不十分になりやすい。
【0037】
ゲート電極205は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、poly−Si(ポリシリコン)からなる群から選択された少なくとも1つから形成される。これらの金属のほか、これらの群から選択された少なくとも1つを含む合金、これらの群から選択された少なくとも1つを含む窒化物、炭化物、炭化窒化物、等の化合物でもよい。そして、MISFETのゲート電極としての仕事関数、抵抗率、製造プロセス工程での耐熱性、汚染及び加工性を鑑みてこれらの中から最適な材料が選択される。
【0038】
次に、測定装置101によって、半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面特性を測定するための方法を説明する。
図3に、その方法を実行するための一連のフローチャートを示す。
図1に示すように、測定される半導体装置109のゲート電極と基板との間にスイープ電源104及び交流電源105を接続することによって測定を開始し、まず、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、ゲート電極と基板との間に電圧を印加する(STEP101)。そして、蓄積状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープし(初期スイープ)、空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止する(STEP102)。ここで、半導体層の部分において蓄積状態が形成される電圧から半導体層の部分において空乏状態が形成される電圧まで、半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第1のフラットバンド電圧を通って、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープする。STEP102の間に、交流電源105によってゲート電極と基板との間に微小振幅の交流電圧を印加して、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を容量計測器107によって計測する(STEP103)。交流電圧の周波数は、0.1MHz以上、好ましくは1MHz以上の高周波である。
【0039】
STEP102において電圧のスイープを停止した後、1回目の初期スイープか否かを判断する(STEP104)。1回目の初期スイープである場合には、STEP102においてスイープを停止した電圧をゲート電極と基板との間に印加した状態で光照射を行うことなく一定時間待機する(STEP105)。待機時間としては、例えば60秒であり、それ以上であってもよいし、それ以下であってもよい。そして、空乏状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるようになるまで、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープし(光照射なしスイープ)、蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止する(STEP107)。ここで、半導体層の部分において空乏状態が形成される電圧から半導体層の部分において蓄積状態が形成される電圧まで、半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第2のフラットバンド電圧を通って、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープする。STEP107の間に、交流電源105によってゲート電極と基板との間に微小振幅の交流電圧を印加して、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を容量計測器107によって計測する(STEP103)。
【0040】
図4aに、STEP101、STEP102、STEP104、STEP105、STEP107の順に移行した場合における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図を示す。特に、
図4aの左側がSTEP101(蓄積状態)における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図であって、
図4aの右側がSTEP105(空乏状態)における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図である。
図4aにおいては、半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb+3V)を印加して半導体層の部分に蓄積状態を形成し、電圧をスイープして半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb−3V)を印加して半導体層の部分に空乏状態を形成し、光源106によって半導体層と絶縁体層との界面に対して光照射を行うことなく一定時間待機した後、電圧をスイープして半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb+3V)を印加して半導体層の部分に蓄積状態を形成することによって測定された半導体装置109のC−V(容量−電圧)特性から、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位においてトラップされた電荷のみが励起され、価電子帯の頂上のエネルギー(E
v)付近の深いエネルギー準位においてトラップされた電荷は励起されずその準位に固定された状態であって、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位におけるトラップを調査することができる。ここで、V
fbはフラットバンド電圧である。なお、半導体層の部分に蓄積状態を形成するためにフラットバンド電圧より3V大きい電圧をゲート電極と基板との間に印加し、半導体層の部分に空乏状態を形成するためにフラットバンド電圧より3V小さい電圧をゲート電極と基板との間に印加しているが、絶縁体層が破壊しないような電圧を印加すればよい。また、
図4aにおいては、半導体層としてn型窒化ガリウム(GaN)、絶縁体層として酸化アルミニウム(Al
2O
3)が示されているが、上記に示されるような他の材料から形成される場合も同様であって、選択される材料に応じて印加される電圧は変更されてもよい。
【0041】
STEP105のように光照射を行わない場合にはSTEP101に戻って(STEP108)、再度、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるように、ゲート電極と基板との間に電圧を印加し(STEP101)、蓄積状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において空乏状態が形成されるようになるまで、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープし(初期スイープ)、空乏状態が形成された後、電圧のスイープを停止する(STEP102)。ここで、半導体層の部分において蓄積状態が形成される電圧から半導体層の部分において空乏状態が形成される電圧まで、半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第3のフラットバンド電圧を通って、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープする。STEP102の間に、交流電源105によってゲート電極と基板との間に微小振幅の交流電圧を印加して、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を容量計測器107によって計測する(STEP103)。なお、第1のフラットバンド電圧と第3のフラットバンド電圧とはほぼ同じ電圧である。
【0042】
STEP102において電圧のスイープを停止した後、1回目の初期スイープか否かを判断する(STEP104)。2回目の初期スイープである場合には、STEP102においてスイープを停止した電圧をゲート電極と基板との間に印加した状態で半導体装置109の半導体層と絶縁体層との間の界面に対して一定時間光照射を行う(STEP106)。光源106をオンにして、光源106から半導体層と絶縁体層との間の界面に対して光子を一定時間放出した後、光源106をオフにする。光照射を行う時間は、光照射を行う電力によって変更されてもよい。例えば、60秒程度の時間で光照射を行う場合には、光照射を行う電力は0.5mWから40mWであればよい。半導体層のバンドギャップエネルギーまでの、すなわち、半導体層のバンドギャップエネルギーより小さいエネルギーを有する光子によって光照射を行う。例えば、半導体層が窒化ガリウムであれば、窒化ガリウムのバンドギャップエネルギー3.4eVまでのエネルギーを有する光子によって光照射を行う。この場合、バンドギャップエネルギー3.4eVより0.1eV小さい(すなわち3.3eV)、更には0.01eV小さい(3.39eV)エネルギーまでのエネルギーを有する光子によって光照射を行うことが好ましい。なお、半導体層のバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光子によって光照射を行うことは好ましくない。半導体層のバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光子によって光照射を行う場合には、価電子帯にある電荷も励起されるために、半導体層のバンドギャップの範囲における界面準位にトラップされた電荷の密度を推定することができない。また、光照射は、小さいエネルギーを有する光子による光照射から開始して、半導体層のバンドギャップエネルギーまでの大きいエネルギーを有する光子による光照射に向かって、照射される光子のエネルギーが徐々に大きくなるようにスイープして行う。これは、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位にトラップされた電荷を光電離によって励起することから開始して、徐々に深いエネルギー準位にトラップされた電荷を光電離によって励起して、価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近の深いエネルギー準位までにトラップされた電荷を光電離によって励起するためである。なお、STEP106を除くSTEP101〜STEP108においては、半導体層と絶縁体層との間の界面に対して光源107による光照射を行うべきではなく、STEP106を除くSTEP101〜STEP108は、暗室で行われることが好ましい。
【0043】
そして、再び、空乏状態から、絶縁体層と隣接する半導体層の部分において蓄積状態が形成されるようになるまで、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープし(光照射ありスイープ)、蓄積状態が形成された後、電圧のスイープを停止する(STEP107)。ここで、半導体層の部分において空乏状態が形成される電圧から半導体層の部分において蓄積状態が形成される電圧まで、半導体層のバンドがフラットバンド状態になる第4のフラットバンド電圧を通って、スイープ電源104によってゲート電極と基板との間の電圧をスイープする。STEP107の間に、交流電源105によってゲート電極と基板との間に微小振幅の交流電圧を印加して、ゲート電極と基板との間に形成されるキャパシタの容量値を容量計測器107によって計測する(STEP103)。
【0044】
図4bに、STEP101、STEP102、STEP104、STEP106、STEP107の順に移行した場合における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図を示す。特に、
図4bの左側がSTEP101(蓄積状態)における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図であって、
図4bの右側が、光照射を行っている場合のSTEP106(空乏状態)における半導体装置109の半導体層と絶縁体層との界面におけるバンド図である。
図4bにおいては、半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb+3V)を印加して半導体層の部分に蓄積状態を形成し、電圧をスイープして半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb−3V)を印加して半導体層の部分に空乏状態を形成し、光源106によって半導体層と絶縁体層との界面に対して半導体層のバンドギャップエネルギーまでのエネルギーを有する光子(例えば、半導体層が窒化ガリウムであれば、窒化ガリウムのバンドギャップエネルギー3.4eVまでのエネルギーを有する光子)によって一定時間光照射を行った後、電圧をスイープして半導体装置109のゲート電極と基板との間に電圧(V
fb+3V)を印加して半導体層の部分に蓄積状態を形成することによって測定された半導体装置109のC−V(容量−電圧)特性から、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位から価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近の深いエネルギー準位までのより広いエネルギー準位(例えば、半導体層が窒化ガリウムであれば、窒化ガリウムのバンドギャップエネルギー3.4eVに相当)においてトラップされた電荷が光照射で光電離よって励起され、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位から価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近の深いエネルギー準位までにおけるトラップを調査することができる。ここで、V
fbはフラットバンド電圧である。なお、半導体層の部分に蓄積状態を形成するためにフラットバンド電圧より3V大きい電圧をゲート電極と基板との間に印加し、半導体層の部分に空乏状態を形成するためにフラットバンド電圧より3V小さい電圧をゲート電極と基板との間に印加しているが、絶縁体層が破壊しないような電圧を印加すればよい。また、
図4bにおいては、半導体層としてn型窒化ガリウム(GaN)、絶縁体層として酸化アルミニウム(Al
2O
3)が示されているが、上記に示されるような他の材料から形成される場合も同様であって、選択される材料に応じて印加される電圧は変更されてもよい。
【0045】
STEP106のように光照射を行った場合(STEP108)には、STEP103において計測されたキャパシタの容量値より界面特性を推定する(STEP109)。STEP103においては、2回の初期スイープ、光照射なしスイープ、及び光照射ありスイープによって4つのC−V特性を計測したが、制御装置102によって、1回目の初期スイープによるC−V曲線と、光照射なしスイープによるC−V曲線とを比較することによって、浅いエネルギー準位におけるトラップに推定することができる。また、制御装置102によって、2回目の初期スイープによるC−V曲線と、光照射ありスイープによるC−V曲線とを比較することによって、浅いエネルギー準位から深いエネルギー準位までにおけるトラップを推定することができる。更に、制御装置102によって、光照射なしスイープによるC−V曲線と、光照射ありスイープによるC−V曲線とを比較することによって、深いエネルギー準位おけるトラップを推定することができ、光照射なしスイープによるC−V曲線によって得られた第2のフラットバンド電圧と、光照射ありスイープによるC−V曲線によって得られた第4のフラットバンド電圧とを比較して、半導体層のバンドギャップの範囲における深い界面準位にトラップされた電荷の密度を推定することができる。このように界面特性を推定して測定は終了する。なお、フラットバンド電圧は、キャパシタで電荷がない理想的な構造を想定したシミュレーションを用いて計算される。
【0046】
次に、半導体装置109の実施例であるMISキャパシタ(MOSキャパシタ)301を作製し、そのC−V特性を測定した。
【0047】
まず、
図5に示す、白金(Pt)/酸化アルミニウム(Al
2O
3)/n型窒化ガリウム(n−GaN)から構成されたMOSキャパシタ301を以下のように作製した。基板302として密度1.3×10
18cm
−3のn
+−GaN自立基板を準備し、n
+−GaN自立基板のミラー指数[0001]面上に、膜厚5μmの密度2×10
16cm
−3のSiドープGaNエピタキシャル層を堆積し、硫酸過酸化水素混合物(H
2O
2:H
2SO
4=1:1)の水溶液において、SiドープGaNエピタキシャル層の表面を5分間洗浄した。そして、半導体層303としてのその洗浄されたSiドープGaNエピタキシャル層の表面上に、前駆体としてのトリメチルアルミニウム(TMA)及び酸化ガスとして水蒸気を使用した原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法によって、成長温度300℃で、絶縁体層304として膜厚25nmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)を堆積した。そして、堆積後アニール(Post−Deposition Annealing:PDA)によって、窒素(N
2)雰囲気中において600〜900℃で熱処理した。最後に、ゲート電極305として膜厚100nmの白金(Pt)を、シャドーマスクを介して絶縁体層304上に堆積し、白金(Pt)(100nm)/チタン(Ti)(20nm)のオーミックコンタクト306を基板302の裏面(SiドープGaNエピタキシャル層に対向する側)上に堆積した。
【0048】
図4aのように、ゲート電極305−オーミックコンタクト306間のゲートバイアス電圧を蓄積状態(V
fb+3V)からフラットバンド状態を通って空乏状態(V
fb−3V)までスイープした(初期スイープ)後、(光照射せず)60秒間待機し、そして、ゲートバイアス電圧を空乏状態(V
fb−3V)からフラットバンド状態を通って蓄積状態(V
fb+3V)までスイープする(光照射なしスイープ)ことによって、MOSキャパシタ301のC−V特性を測定して、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位におけるトラップを調査した。続いて、
図4bのように、ゲートバイアス電圧を蓄積状態(V
fb+3V)からフラットバンド状態を通って空乏状態(V
fb−3V)までスイープした(初期スイープ)後、光源をオンにしてエネルギーhνが窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップエネルギーより小さい3.3eV以下である光子によって60秒間光照射を行った後、光源をオフにし、そして、ゲートバイアス電圧を空乏状態(V
fb−3V)からフラットバンド状態を通って蓄積状態(V
fb+3V)までスイープする(光照射ありスイープ)ことによって、MOSキャパシタ301のC−V特性を測定して、伝導帯の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位から価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近の深いエネルギー準位までのより広いエネルギー準位(窒化ガリウムのバンドギャップエネルギー3.4eVに相当)におけるトラップを、光照射でトラップされた電荷を光電離によって励起させることによって調査した。MOSキャパシタ301のC−V特性の測定に際しては、ゲート電極305−オーミックコンタクト306間に、正の方向から負の方向に及び負の方向から正の方向にスイープ電圧を印加し、更に1MHzの周波数を有する微小振幅の交流電圧を印加した。なお、窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップエネルギーである3.4eVまでのエネルギーを有する光子によって光照射を行う必要があるので、光照射を行うための光源として、3.4eVより僅かに小さい3.3eVまでのエネルギーを有する光子によって光照射を行うことができる半導体レーザを使用した。
【0049】
図6に、光照射しない場合のMOSキャパシタ301のC−V特性の測定結果を示す。熱処理をしないMOSキャパシタ301及び600℃で熱処理されたMOSキャパシタ301のC−V曲線は近似しており、熱処理温度を600℃から900℃に上昇させるにつれて、C−V曲線は正の方向にシフトした。
図7aに、700℃で熱処理したMOSキャパシタ301を光照射を行わない場合のC−V特性を示す。ゲートバイアス電圧を蓄積状態(V
fb+3V)から空乏状態(V
fb−3V)までスイープした場合(初期スイープ)のC−V曲線に対して、光照射を行わず、ゲートバイアス電圧を空乏状態(V
fb−3V)から蓄積状態(V
fb+3V)までスイープした場合(光照射なしスイープ)のC−V曲線は、負の方向に向かってわずかにシフトした(−90mV)。このC−V曲線のシフトは、伝導体の底のエネルギー(E
C)付近の小さい時定数の浅いエネルギー準位におけるトラップから励起されたことに起因する。続いて、
図7bに、700℃で熱処理したMOSキャパシタ301を光照射した場合のC−V特性を示す。ゲートバイアス電圧を蓄積状態(V
fb+3V)から空乏状態(V
fb−3V)までスイープした場合(初期スイープ)のC−V曲線に対して、光照射を行った後、ゲートバイアス電圧を空乏状態(V
fb−3V)から蓄積状態(V
fb+3V)までスイープした場合(光照射ありスイープ)のC−V曲線は、負の方向に向かって大きくシフトした(−640mV)。このC−V曲線のシフトは、
図4bのバンド図のようなバンドギャップエネルギーまでの高いエネルギー有する光子による光照射によって、大きい時定数の深いエネルギー準位におけるトラップからも励起されて、より広いエネルギー準位の範囲にある界面準位から光電離によって励起されることに起因する。
【0050】
図8は、熱処理温度の関数としての初期スイープ、光照射なしスイープ、及び光照射ありスイープによるそれぞれのフラットバンド電圧V
fbの変化を示す。熱処理温度を上昇させるにつれて、初期スイープによるフラットバンド電圧V
fb(initial)が理想フラットバンド電圧V
fb(ideal)側にシフトし、半導体層303と絶縁体層304との間の界面307における特性が著しく改善されて、熱処理温度がMOSキャパシタ301の電気的特性に影響を及ぼす。熱処理温度を600℃から700℃以上に上昇させるにつれて、光照射なしスイープによるフラットバンド電圧V
fb(darkness)と初期スイープによるフラットバンド電圧V
fb(initial)との差が0.1Vから0.01Vに減少した。これは、界面307における特性の改善により、伝導体の底のエネルギー(E
C)付近の浅いエネルギー準位におけるトラップの数が少なくなることを示唆する。また、光照射ありスイープによるフラットバンド電圧V
fb(hν)は、熱処理された全てのMOSキャパシタ301において、光照射なしスイープによるフラットバンド電圧V
fb(darkness)に比較して、負の方向に向かって大きくシフトした。
【0051】
図9aは、熱処理温度の関数としての光照射ありスイープによるフラットバンド電圧V
fb(hν)と光照射なしスイープによるフラットバンド電圧V
fb(darkness)との間の差を示す。熱処理しないMOSキャパシタ301では、−1.7eVという絶対値的に大きい負のV
fbシフトを示す。負のV
fbシフトは、熱処理温度の上昇とともに徐々に絶対値的に減少し、900℃で熱処理したMOSキャパシタ301では、−0.32eVにまで負のV
fbシフトを絶対値的に小さくすることができる。負のV
fbシフトは、価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近に幾つかの界面準位が存在するので、価電子帯の頂上のエネルギー(E
V)付近の深いエネルギー準位におけるトラップに起因する。次の数式のように、深いエネルギー準位におけるトラップの密度を推定した。
【数1】
ここで、D
dtはディープトラップ密度、C
OXは酸化物容量、qは電荷素量である。
図9bに示すように、熱処理しないMOSキャパシタ301は、3.1×10
12cm
−2という大きなディープトラップ密度(D
dt)を示し、これは、半導体層303上における絶縁体層304である酸化アルミニウム(Al
2O
3)の初期の成長が半導体層303との界面307に電気的欠陥を形成していることを示唆する。600℃で熱処理すると、ディープトラップ密度(D
dt)は1.5×10
12cm
−2に減少し、熱処理温度を上昇させるにつれて、ディープトラップ密度(D
dt)は減少する。しかし、900℃で熱処理した後であっても、0.67×10
12cm
−2という大きなディープトラップ密度(D
dt)が残る。
【0052】
上記のように作製されたMOSキャパシタ301のC−V特性を測定した結果、光照射を行わない場合のC−V特性と比較して、光照射を行った場合のC−V特性においては、熱処理された全てのMOSキャパシタにおいて負のV
fbシフトが観察され、これは、半導体層303と絶縁体層304との間の界面307での深いエネルギー準位におけるトラップに起因する。また、このような深いエネルギー準位におけるトラップが、移動度、閾値電圧、等のデバイス特性に影響を与える。
【0053】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。