特開2020-31426(P2020-31426A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-31426(P2020-31426A)
(43)【公開日】2020年2月27日
(54)【発明の名称】アンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20200131BHJP
   H01P 1/211 20060101ALI20200131BHJP
   H01P 5/103 20060101ALI20200131BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20200131BHJP
【FI】
   H01Q13/02
   H01P1/211
   H01P5/103 G
   H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-149307(P2019-149307)
(22)【出願日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2018-153879(P2018-153879)
(32)【優先日】2018年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】315008773
【氏名又は名称】株式会社WGR
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】桐野 秀樹
【テーマコード(参考)】
5J006
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J006JB06
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB07
5J021CA02
5J021GA05
5J045AA26
5J045AB05
5J045CA01
5J045DA01
5J045EA02
5J045FA02
5J045HA06
5J045LA01
5J045MA04
(57)【要約】
【課題】複数のホーンアンテナ素子を近接して配置することを可能にする。
【解決手段】アンテナアレイは、第1導電部材と、第2導電部材と、複数の導波壁と、複数の導電性ロッドとを備える。複数の導波壁および複数の導電性ロッドは、前記第1導電部材と前記第2導電部材との間に配置される。前記第1導電部材は、各々がアンテナ素子として機能する複数のホーンをそれぞれ規定する複数の空洞を有する。各空洞は、前記第1導電性表面および前記第2導電性表面に開口する。前記第2導電部材は、複数の貫通孔を有する。前記複数の貫通孔は、前記複数の空洞にそれぞれ重なる位置に配置される。各貫通孔の内表面には、同軸ケーブルの芯線、または前記芯線に接続される他の導電体が接続される。各導波壁は、前記複数の空洞の1つと前記複数の貫通孔の1つとの間の空間の少なくとも一部を囲む。前記複数の導電性ロッドは、前記複数の導波壁の周囲に位置する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面側の第1導電性表面、背面側の第2導電性表面、および各々がアンテナ素子として機能する複数のホーンをそれぞれ規定する複数の空洞を有する第1導電部材であって、前記複数の空洞の各々は、前記第1導電性表面および前記第2導電性表面に開口し、前記複数のホーンは、互いに交差する第1の方向および第2の方向に並ぶ3つ以上のホーンを含む、第1導電部材と、
前記第2導電性表面に対向する第3導電性表面、および複数の貫通孔を有する第2導電部材であって、前記複数の貫通孔は、前記第1の方向および前記第2の方向の両方に直交する第3の方向から見通した場合に、前記複数の空洞にそれぞれ重なり、前記複数の貫通孔の各々の内表面は、同軸ケーブルの芯線、または前記芯線に接続される他の導電体が接続される接続部を有する、第2導電部材と、
前記第2導電性表面と前記第3導電性表面との間に位置する複数の導波壁であって、各々が、前記複数の空洞の1つと前記複数の貫通孔の1つとの間の空間の少なくとも一部を囲む、複数の導波壁と、
各々が、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の一方に接続された基部と、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の他方に対向する先端部とを有する複数の導電性ロッドであって、前記複数の導波壁の周囲に位置する複数の導電性ロッドと、
を備える、
アンテナアレイ。
【請求項2】
前記複数の導電性ロッドは、前記第3の方向から見通した場合に、前記複数の貫通孔の1つの中心部から前記第1の方向に直交する方向に離れた位置に配置された導電性ロッドを含む、請求項1に記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
前記複数の導電性ロッドは、前記第3の方向から見通した場合に、前記複数の貫通孔のうちの前記第2の方向において隣り合う2つの貫通孔の間に位置する導電性ロッドを含む、請求項1または2に記載のアンテナアレイ。
【請求項4】
前記第2の方向は、前記第1の方向に直交する、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項5】
前記複数の空洞の各々の内表面は、前記同軸ケーブルから生じた電磁波を外部空間に案内する少なくとも1つのリッジを有し、
前記少なくとも1つのリッジは、前記内周面から前記第1の方向と交差する方向に突出する、
請求項1から4のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリッジは、互いに対向する頂面を有する一対のリッジであり、
前記一対のリッジの間隔は、前記背面側から前記正面側に向かうにつれて拡大する、
請求項5に記載のアンテナアレイ。
【請求項7】
前記複数の貫通孔の各々の内表面は突出部を有し、
前記接続部は、前記突出部にあり、
前記芯線または前記他の導電体は、前記突出部に接触する、
請求項1から6のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項8】
前記複数の貫通孔の各々の内表面は突出部を有し、
前記接続部は、前記突出部にあり、
前記芯線または前記他の導電体は、前記突出部に接触し、
前記突出部の前記第1導電部材側の端面は、前記少なくとも一つのリッジの何れかの、前記第2導電部材側の端面に対向する、
請求項5または6に記載のアンテナアレイ。
【請求項9】
前記複数の導波壁は、前記第2導電性表面に接続され、
前記複数の導電性ロッドは、前記第3導電性表面に接続されている、
請求項1から8のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項10】
前記複数の導波壁の少なくとも1つは、前記第2の方向において隣接する他の導波壁に面する外周面に凹部を有し、
前記複数の導電性ロッドの1つは、前記凹部に隣接する、
請求項1から9のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項11】
前記複数の導波壁のうち、前記第1の方向において隣接する2つの導波壁の間に、前記第1の方向に直交する方向に沿って延びる溝が存在する、請求項1から10のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項12】
前記複数の貫通孔の前記背面側にそれぞれ取り付けられた複数のコネクタをさらに備え、
前記複数のコネクタの各々は、
プラグまたはジャックの形状を有する内部導体と、
前記内部導体の外側の誘電体と、
前記誘電体の外側の外部導体と、
を含み、
前記内部導体は、前記接続部に接続されている、
請求項1から11のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項13】
前記複数の貫通孔の前記内表面にそれぞれ接続された複数の同軸ケーブルをさらに備える請求項1から12のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項14】
前記複数の貫通孔の前記内表面にそれぞれ接続された複数のコネクタと、
前記複数のコネクタにそれぞれ接続された複数の同軸ケーブルと、
をさらに備える請求項1から12のいずれかに記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
請求項13または14に記載のアンテナアレイと、
前記複数の同軸ケーブルに接続された通信装置と、
を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のホーンを備えるアンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアンテナ素子の各々に独立の信号を入出力可能なアンテナアレイは、レーダなどのセンシングおよび無線通信等の広い分野において有用である。中でも、複数のホーンをアンテナ素子として備えるアンテナアレイは、周波数帯域が広く損失も小さいため、特に有用である。そのようなホーンアンテナアレイの例が、例えば特許文献1から3に開示されている。
【0003】
ホーンアンテナアレイにおける各ホーンには、導波管または同軸ケーブルによって給電することが可能である。しかし、導波管で給電するためには、複雑な導波管ネットワークが必要である。また、同軸ケーブルで給電するためには、各ホーンに同軸導波管変換器が必要になり、やはり構造が複雑になる。いずれの構成を選択したとしても、アレイを構成する複数のホーンを近接して配置することは難しいため、アンテナアレイを小型化することは難しい。複数のアンテナ素子を用いてフェーズドアレイを構成する場合、アンテナ素子の間隔が使用される電磁波の波長の半分よりも大きいと、アンテナの可視領域内にグレーティングローブが現れる。グレーティングローブの発生は、レーダの誤検知または通信アンテナの効率の低下を招く。複数のホーンアンテナ素子を用いてフェーズドアレイを構成した場合、グレーティングローブの影響を受けずにビームスキャンできる角度範囲を大きくすることができなかった。
【0004】
一方、特許文献4から6は、導波路として機能する貫通孔を有する複数の導電部材の間で、信号波を伝送させる構造の例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4115782号
【特許文献2】米国特許第6271799号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0253770号
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0301817号
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0113187号
【特許文献6】米国特許出願公開第2019/0123411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、複数のホーンアンテナ素子を近接して配置することが可能なアンテナアレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態によるアンテナアレイは、第1の導電部材と、第2の導電部材と、複数の導波壁と、複数の導電性ロッドとを備える。前記第1の導電部材は、正面側の第1導電性表面、背面側の第2導電性表面、および各々がアンテナ素子として機能する複数のホーンをそれぞれ規定する複数の空洞を有する。前記複数の空洞の各々は、前記第1導電性表面および前記第2導電性表面に開口する。前記複数のホーンは、互いに交差する第1の方向および第2の方向に並ぶ3つ以上のホーンを含む。前記第2導電部材は、前記第2導電性表面に対向する第3導電性表面、および複数の貫通孔を有する。前記複数の貫通孔は、前記第1の方向および前記第2の方向の両方に直交する第3の方向から見通した場合に、前記複数の空洞にそれぞれ重なる。前記複数の貫通孔の各々の内表面は、同軸ケーブルの芯線、または前記芯線に接続される他の導電体が接続される接続部を有する。前記複数の導波壁は、前記第2導電性表面と前記第3導電性表面との間に位置する。各導波壁は、前記複数の空洞の1つと前記複数の貫通孔の1つとの間の空間の少なくとも一部を囲む。各導電性ロッドは、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の一方に接続された基部と、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の他方に対向する先端部とを有する。前記複数の導電性ロッドは、前記複数の導波壁の周囲に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施形態によれば、複数のホーンアンテナ素子を近接して配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本開示の例示的な第1の実施形態におけるアンテナアレイを示す斜視図である。
図1B図1Bは、アンテナアレイを別の角度から見た斜視図である。
図2A図2Aは、第1導電部材を示す斜視図である。
図2B図2Bは、第1導電部材を示す正面図である。
図2C図2Cは、1つのホーンを拡大して示す斜視図である。
図2D図2Dは、各ホーンの貫通孔の開口形状を示す図である。
図3A図3Aは、アンテナアレイから第1導電部材を取り除いた構造を示す図である。
図3B図3Bは、図3Aに示す構造から同軸ケーブルを取り除いた構造を示す図である。
図3C図3Cは、第2導電部材における貫通孔を拡大して示す図である。
図3D図3Dは、第2導電部材における貫通孔の開口形状を示す図である。
図4図4は、第1導電部材の背面側の構造を示す斜視図である。
図5図5は、アンテナアレイの側面図である。
図6図6は、図5におけるA−A´線に沿ったアンテナアレイの断面図である。
図7図7は、図6におけるB−B´線に沿ったアンテナアレイの断面図である。
図8A図8Aは、第1の実施形態の変形例におけるアンテナアレイの断面図である。
図8B図8Bは、他の変形例におけるアンテナアレイの断面図である。
図8C図8Cは、さらに他の変形例におけるアンテナアレイの断面図である。
図9図9は、図8Cの変形例における第2導電部材320を背面側から見た模式図である。
図10図10は、アンテナアレイと、通信装置とを備える通信システムの構成例を模式的に示す図である。
図11A図11Aは、図6に示す断面構造の変形例を示す図である。
図11B図11Bは、図6に示す断面構造の他の変形例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。
図13A図13Aは、第2の実施形態におけるホーンアレイを示す斜視図である。
図13B図13Bは、第2の実施形態におけるホーンアレイを示す平面図である。
図14A図14Aは、第2の実施形態の変形例におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。
図14B図14Bは、第2の実施形態の他の変形例におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。
図15図15は、第3の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。
図16図16は、第4の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。
図17A図17Aは、第4の実施形態におけるホーンアレイを示す斜視図である。
図17B図17Bは、第4の実施形態におけるホーンアレイを示す正面図である。
図18図18は、貫通孔の例を説明するための図である。
図19A図19Aは、ワッフルアイアン構造における各部材の寸法の範囲の例を示す図である。
図19B図19Bは、導電性ロッドの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の例示的な実施形態によるアンテナアレイは、第1の導電部材と、第2の導電部材と、複数の導波壁と、複数の導電性ロッドとを備える。前記第1の導電部材は、正面側の第1導電性表面、背面側の第2導電性表面、および各々がアンテナ素子として機能する複数のホーンをそれぞれ規定する複数の空洞を有する。前記複数の空洞の各々は、前記第1導電性表面および前記第2導電性表面に開口する。前記複数のホーンは、互いに交差する第1の方向および第2の方向に並ぶ3つ以上のホーンを含む。前記第2導電部材は、前記第2導電性表面に対向する第3導電性表面、および複数の貫通孔を有する。前記複数の貫通孔は、前記第1の方向および前記第2の方向の両方に直交する第3の方向から見通した場合に、前記複数の空洞にそれぞれ重なる。前記複数の貫通孔の各々の内表面は、同軸ケーブルの芯線、または前記芯線に接続される他の導電体が接続される接続部を有する。前記複数の導波壁は、前記第2導電性表面と前記第3導電性表面との間に位置する。各導波壁は、前記複数の空洞の1つと前記複数の貫通孔の1つとの間の空間の少なくとも一部を囲む。各導電性ロッドは、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の一方に接続された基部と、前記第2導電性表面および前記第3導電性表面の他方に対向する先端部とを有する。前記複数の導電性ロッドは、前記複数の導波壁の周囲に位置する。
【0011】
上記構成によれば、複数のホーンが近接して配置されたアンテナアレイを構成することができる。
【0012】
前記複数の導電性ロッドは、前記第3の方向から見通した場合に、前記複数の貫通孔の1つの中心部から前記第1の方向に直交する方向に離れた位置に配置された導電性ロッドを含んでいてもよい。
【0013】
上記構成によれば、電界が最も強い貫通孔の中心部に隣接してロッドが配置されるため、第1導電部材と第2導電部材の合わせ目からの電磁波の漏洩を効果的に抑制できる。
【0014】
前記複数の導電性ロッドは、前記第3の方向から見通した場合に、前記複数の貫通孔のうちの前記第2の方向において隣り合う2つの貫通孔の間に位置する導電性ロッドを含んでいてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第2の方向において隣り合う2つの貫通孔の間の信号波のアイソレーションを改善することができる。
【0016】
前記第2の方向は、前記第1の方向に直交していてもよいし、直交していなくてもよい。
【0017】
前記複数の空洞の各々の内表面は、前記同軸ケーブルから生じた電磁波を外部空間に案内する少なくとも1つのリッジを有していてもよい。前記少なくとも1つのリッジは、前記内周面から前記第1の方向と交差する方向に突出する。ある実施形態において、この交差する方向は、第1の方向に直交する。
【0018】
前記少なくとも1つのリッジは、互いに対向する頂面を有する一対のリッジであってもよい。すなわち、前記複数の空洞の各々の内表面は、前記同軸ケーブルから生じた電磁波を外部空間に案内する一対のリッジを有していてもよい。前記一対のリッジの間隔は、前記背面側から前記正面側に向かうにつれて拡大するように構成され得る。
【0019】
少なくとも1つのリッジを設けることにより、電磁波をより効率的に放射することができる。
【0020】
前記複数の貫通孔の各々の内表面は突出部を有していてもよい。前記接続部は、前記突出部にあってもよい。前記芯線または前記他の導電体は、前記突出部に接触していてもよい。
【0021】
上記構成によれば、同軸ケーブルと各貫通孔との接続を容易にすることができる。
【0022】
前記突出部の前記第1導電部材側の端面は、前記少なくとも一つのリッジの何れかの、前記第2導電部材側の端面に対向していてもよい。
【0023】
上記構成によれば、突出部とリッジとの間で高い効率で電磁波を伝送することができる。
【0024】
前記複数の導波壁は、前記第2導電性表面に接続されていてもよい。前記複数の導電性ロッドは、前記第3導電性表面に接続されていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、信号波の漏洩を効果的に抑制することができる。
【0026】
前記複数の導波壁の少なくとも1つは、前記第2の方向において隣接する他の導波壁に面する外周面に凹部を有していてもよい。前記複数の導電性ロッドの1つは、前記凹部に隣接していてもよい。
【0027】
上記構成によれば、第2の方向において隣接する2つのホーンの間の距離を短縮することができる。
【0028】
前記複数の導波壁のうち、前記第1の方向において隣接する2つの導波壁の間に、前記第1の方向に直交する方向に沿って延びる溝が存在していてもよい。
【0029】
上記構成によれば、第1の方向において隣接する2つのホーンの間の信号波のアイソレーションを改善することができる。
【0030】
アンテナアレイは、前記複数の貫通孔の前記背面側にそれぞれ取り付けられた複数のコネクタをさらに備えていてもよい。前記複数のコネクタの各々は、プラグまたはジャックの形状を有する内部導体と、前記内部導体の外側の誘電体と、前記誘電体の外側の外部導体と、を含み得る。前記内部導体は、前記接続部に接続され得る。
【0031】
上記構成によれば、同軸ケーブルとアンテナアレイとの接続および取り外しが容易になる。
【0032】
前記アンテナアレイは、前記複数の貫通孔の前記内表面にそれぞれ接続された複数の同軸ケーブルをさらに備えていてもよい。
【0033】
前記アンテナアレイは、前記複数の貫通孔の前記内表面にそれぞれ接続された複数のコネクタと、前記複数のコネクタにそれぞれ接続された複数の同軸ケーブルと、をさらに備えていてもよい。
【0034】
本開示の実施形態による通信システムは、上記のいずれかのアンテナアレイと、前記複数の同軸ケーブルに接続された通信装置とを備える。
【0035】
以下、本開示の実施形態の具体的な構成例を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明においては、同一または類似する構成要素には、同一の参照符号を付している。
【0036】
<第1の実施形態>
図1Aは、本開示の例示的な第1の実施形態におけるアンテナアレイ300を示す斜視図である。図1Bは、アンテナアレイ300を別の角度から見た斜視図である。図1Aおよび図1Bには、互いに直交するX、Y、Z方向を示すXYZ座標が示されている。以下、この座標系を用いてアンテナアレイ300の構成を説明する。+Z方向側を「正面側」と称し、−Z方向側を「背面側」と称する。「正面側」は、電磁波が放射される側、または電磁波が到来する側を指し、「背面側」は、正面側の反対側である。なお、本願の図面に示される構造物の向きは、説明のわかりやすさを考慮して設定されており、本開示の実施形態が現実に実施されるときの向きをなんら制限するものではない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するものではない。
【0037】
アンテナアレイ300は、第1導電部材310と、第2導電部材320とを備える。第1導電部材310は、各々がアンテナ素子として機能する複数のホーン313のアレイを備える。第2導電部材320は、複数のホーン313にそれぞれ対応して配置された複数の同軸導波管変換器(waveguide to coaxial adaptor)のアレイを備える。複数のホーン313および複数の同軸導波管変換器は、第1の方向(この例ではX方向)および第2の方向(この例ではY方向)に沿って2次元的に配列されている。本実施形態では、第2の方向は第1の方向に直交する。第2の方向は、90度とは異なる角度で第1の方向と交差していてもよい。図1Aには、第2導電部材320における複数の変換器にそれぞれ取り付けられた複数の同軸ケーブル340も示されている。
【0038】
本実施形態におけるアンテナアレイ300は、3行3列に配列された9個のホーン313をアンテナ素子として備える。ホーン313の個数は9個とは異なっていてもよい。例えば、16行16列に配列された256個のホーン313によってアンテナアレイ300を構成してもよい。複数のホーン313の個数および配列は、用途および目的に応じて決定される。複数のホーン313の配列は、単純な行列状の配列でなくてもよい。
【0039】
本実施形態における第1導電部材310は、比較的薄い導電プレート311と、導電プレート311の正面側に配置されたホーンアレイ部312とを含む。ホーンアレイ部312は、導電プレート311よりも厚い外周壁を有し、その内部に、複数のホーン313をそれぞれ規定する複数の空洞が設けられている。ホーン313を規定する各空洞は、背面側から正面側に向かうにつれて内部空間が拡大する構造を有する。各ホーン313は、その内表面に、互いに対向する一対のリッジ314を備える。一対のリッジ314は、内周面から、第1の方向(この例ではX方向)と交差する方向(この例ではY方向)に突出し、Y方向およびZ方向に平行な平面に沿って延びる。一対のリッジ314の間の間隙は、背面側から正面側に向かうにつれて単調に増加する。一対のリッジ314は階段状の構造を有し、それらの間隔は、正面側に向かうにつれて拡大する。各リッジ314は、階段状の構造に限らず、滑らかにリッジ間隔が拡がる構造を有していてもよい。各ホーン313の内部の空洞は、導波管として機能する。送信時において、一対のリッジ314は、同軸ケーブル340の芯線342から生じた高周波の電磁波を案内し、外部空間に放射する。
【0040】
図1Bに示すように、第1導電部材310は、正面側の第1導電性表面310aと、背面側の第2導電性表面310bとを有する。第2導電部材320は、正面側に第3導電性表面320aを有する。第3導電性表面320aは、第2導電性表面310bに対向する。ホーン313を規定する複数の空洞の各々は、第1導電部材310を貫通し、第1導電性表面310aおよび第2導電性表面310bに開口する。第2導電性表面310bと第3導電性表面320aとの間に複数の導電性ロッド334および複数の導波壁335が配置されている。各導電性ロッド334は、第3導電性表面320aに接続された基部と、第2導電性表面310bに対向する先端部とを有する。これらの導電性ロッド334は、同軸ケーブル340からホーン313に伝送される電磁波が外部に漏洩することを抑制する。各導電性ロッド334は、第2導電性表面310bの側に設けられていてもよい。複数の導波壁335は、第2導電性表面310bに接続されている。導波壁335の詳細については後述する。
【0041】
第1導電部材310、第2導電部材320、複数の導電性ロッド334、および複数の導波壁335の各々は、例えば金属板を加工して成型され得る。ダイキャスト法等の鋳造によって各部材を成形してもよい。あるいは、各部材は、樹脂などの絶縁材料の表面にメッキ層を形成することによって作製されてもよい。導電部材310、320、ロッド334、導波壁335の各々を構成する導電性材料として、例えばマグネシウムなどの金属を用いることができる。メッキ層に代えて、蒸着等により導電体の層が形成されていてもよい。本実施形態において、第1導電部材310および複数の導波壁335の各々は、単一構造体の一部であり、第2導電部材320および複数のロッド334の各々は、他の単一構造体の一部である。これらの単一構造体の各々は、一体的に製造されてもよい。
【0042】
図2Aは、第1導電部材310を示す斜視図である。図2Bは、第1導電部材310を示す正面図である。第1導電部材310は、複数の貫通孔315を有する。各貫通孔315は、ホーン313を規定する空洞の基部に開口する。各貫通孔315は、ホーン313の正面側の開口に繋がる。各貫通孔315のXY面に平行な断面の形状(以下、「開口形状」と称する。)は、アルファベットの「H」に近い。このような形状を、本明細書において「H形状」と称する。
【0043】
図2Cは、1つのホーン313を拡大して示す斜視図である。この例における各ホーン313の一対のリッジ314は、3段の階段構造を有する。一対のリッジ314は、互いに対向する頂面を有し、それらの頂面の間に、主にY方向に振動する電界が形成される。送信時において、電磁波は、リッジ314に沿って背面側から正面側に伝搬し、外部空間に放射される。
【0044】
図2Dは、各ホーン313の貫通孔315の開口形状を示す図である。この例における貫通孔315は、X方向に延びる横部分315aと、横部分315aの両端に接続され、Y方向に延びる一対の縦部315bとを含む。貫通孔315の形状は、他の形状であってもよい。いずれの形状においても、各貫通孔315は、少なくとも中央部がX方向に延びる開口形状を有する。同軸ケーブル340の芯線342から生じた電磁波は、貫通孔315の横部分315aの中央部を通ってリッジ314に伝送される。
【0045】
図3Aは、アンテナアレイ300から第1導電部材310を取り除いた構造を示す図である。図3Bは、図3Aに示す構造から同軸ケーブル340を取り除いた構造を示す図である。第2導電部材320は、複数の貫通孔325を有する板形状の部材である。複数の貫通孔325は、第1および第2の方向に垂直な第3の方向(本実施形態ではZ方向)から見通した場合に、第1導電部材310における複数の空洞にそれぞれ重なる位置に配置される。各貫通孔325の内表面は、同軸ケーブルの芯線342が接続される接続部を有する。各貫通孔325は、同軸ケーブルの芯線342から生じた電磁波をホーン313内の導波管に伝達する同軸導波管変換器として機能する。
【0046】
第2導電部材320は、第1導電部材310に面する側に平坦な導電性表面320aを有する。複数の導電性ロッド334は、導電性表面320aから突出する。複数の導電性ロッド334は、貫通孔325の周囲に配置されている。この例において、各貫通孔325の開口の周囲は平坦な面であるが、当該開口を囲む導電性の壁が配置されていてもよい。
【0047】
複数のロッド334には、Z方向から見通した場合に、複数の貫通孔325の1つの中心部からY方向に離れて位置するロッド334が含まれる。それらのロッド334の一部は、Y方向において隣り合う2つの貫通孔325の間に位置している。複数の貫通孔325の間のロッド334は、八角柱状の形状を有する。他方、複数の貫通孔325の周囲のロッド334は、四角柱状の形状を有する。各ロッド324は、他の形状、例えば円柱形状を有していてもよい。また、複数の貫通孔325の周囲にロッド334が設けられていなくてもよい。
【0048】
導電性表面320a上に配列された複数のロッド334によってワッフルアイアン(Waffle Iron)構造が構成される。ワッフルアイアン構造は、後に詳しく説明するように、電磁波の漏洩を抑制する。適切な形状および寸法を有する導電性ロッド334を貫通孔325の周囲に適切な間隔で配置することにより、各同軸導波管変換器からの電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0049】
図3Cは、貫通孔325を拡大して示す図である。本実施形態における各貫通孔325の内表面は、突出部326を有する。突出部326の第1導電部材310側の端面326aは、一対のリッジ314の一方の、第2導電部材320側の端面(図4に示す端面314a)に対向する。この突出部326に、同軸ケーブル340の芯線342が接続される。同軸ケーブル340の芯線342は、突出部326に接触する。芯線342は、例えばはんだ付けなどの方法で突出部326に取り付けられる。
【0050】
図3Dは、貫通孔325の開口形状を示す図である。この例における貫通孔325は、X方向に延びる横部分325aと、横部分325aの両端に接続され、Y方向に延びる一対の縦部分325bとを含む。突出部326は、横部分325aの中央に位置している。突出部326の上面は、芯線342の形状に整合するように湾曲している。このような構造により、芯線342を突出部326に容易に取り付けることができる。
【0051】
本実施形態では、各貫通孔325の内表面にある突出部326が同軸ケーブル340との接続部として機能する。このような構造に限定されず、同軸ケーブル340との接続の態様は任意である。例えば、各貫通孔325の内表面と同軸ケーブル340の芯線342との接続が、コネクタなどの他の部品の内部導体(例えばピン)を介して実現されてもよい。このように、各貫通孔325の内表面は、同軸ケーブル340の芯線、または芯線に接続される他の導電体が接続される接続部を有する。
【0052】
図4は、第1導電部材310の背面側の構造を示す斜視図である。第1導電部材310は、背面側に複数の導波壁335を備える。複数の導波壁335は、複数の貫通孔315をそれぞれ囲む。各導波壁335の内表面は、貫通孔315の断面と同様、H型の構造を有する。各導波壁335の内表面は、一対のリッジ314を規定する形状を有する。各導波壁335の頂面は、第2導電部材320の導電性表面320aに対向する。各導波壁335の頂面は、一対のリッジ314の第2導電部材320側の端面314aを含む。一対のリッジ314の一方の端面314aは、図3Cに示す貫通孔325の突出部326の端面326aに対向する。各導波壁335は、Y方向において隣接する他の導波壁335に面する外周面に凹部336を有する。Y方向において隣接する2つの導波壁335が有する外周面の凹部336は、互いに対向しており、それらの導波壁335の間に間隙拡大部337が形成されている。また、X方向において隣接する2つの導波壁335の間に、Y方向に沿って延びる溝339Aが存在する。同様に、X方向において隣接する2つの導波壁335の間に、X方向に沿って延びる溝339Bが存在する。これらの溝339A、339Bが交わる領域にも間隙拡大部337Bが存在する。これらの間隙拡大部337A、337Bに、第2導電部材320上の導電性ロッド334が配置される。本実施形態では、各導波壁335の外周面の凹部336に隣接する位置に導電性ロッド334が配置される。このような配置により、Y方向に隣接する複数のホーン313の間の高周波信号のアイソレーションが向上するため、ホーン313間の距離を短縮することができる。
【0053】
図5は、アンテナアレイ300の側面図である。第2導電部材320上の複数の導電性ロッド334は、第1導電部材310上の複数の導波壁335の間および周囲に位置する。このような構造により、同軸ケーブル340とホーン313との間を伝搬する電磁波の漏洩が効果的に抑制される。
【0054】
図6は、図5におけるA−A´線に沿ったアンテナアレイ300の断面図である。図6には、導波壁335の断面と導電性ロッド334の断面の両方が示されている。図示されるように、導波壁335の間に位置する導電性ロッド334は、導波壁335間の間隙の拡大部に収容される。
【0055】
図7は、図6におけるB−B´線に沿ったアンテナアレイ300の断面図である。図7には、ホーン313の内壁面の断面と、導波壁335の断面と、導電性ロッド334および同軸ケーブル340の軸方向を含む断面とが示されている。同軸ケーブル340の芯線342の端部は、第2導電部材320の導電性表面320aの近傍に達しており、そこで貫通孔325の内表面に接続されている。このような構造により、同軸導波管変換器アレイとして機能する第2導電部材320を製造した後、芯線342と導電部材320との間の接続が確実になされているかを個々に確認する事が容易になる。
【0056】
本実施形態では、導波壁335と第2導電部材320の導電性表面320aとの間には僅かに間隙がある。導波壁335と導電性表面320aとの間の間隙d1は、導電性ロッド334の先端部と第1導電部材310の背面側の導電性表面310bとの間の間隙d2よりも小さい。各導波壁335の内部に、第2導電部材320の貫通孔325から第1導電部材310のホーン313に連続する貫通孔315が形成されている。d1はゼロであってもよい。すなわち導波壁335と第2導電部材320の導電性表面320aとが接触していてもよい。
【0057】
本実施形態によれば、第1導電部材310の背面側に、複数の貫通孔315をそれぞれ囲む複数の導波壁335が設けられている。また、第2導電部材320の正面側に、複数の導波壁335を囲む複数の導電性ロッド334が設けられている。このような構造により、隣接する複数の同軸−導波管変換器の間での信号の分離度が向上し、複数の同軸−導波管変換器、および複数のホーンを近接して配置することが可能になる。
【0058】
本実施形態におけるアンテナアレイ300は、ホーンアンテナ素子の2次元アレイを構成する第1導電部材310(「ホーンアレイ」とも称する。)と、同軸導波管変換器の2次元アレイを構成する第2導電部材320(「変換器アレイ」とも称する。)とを備える。変換器アレイとホーンアレイとは、例えばネジなどの部品を用いて互いに固定され得る。このような構造により、製造し易く、かつメンテナンス性に優れたアンテナアレイを実現できる。例えば、アンテナアレイの使用開始後、不具合が生じたときに、変換器アレイとホーンアレイとを分離し、同軸ケーブル340の芯線342と変換器アレイの貫通孔325との接続状態を容易に確認することができる。また、変換器アレイとホーンアレイとがワッフルアイアン構造を介して接続されるため、両者の間を伝搬する電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0059】
近年、マッシブMIMOと呼ばれる通信技術が知られている。マッシブMIMOは、場合によっては100個以上のアンテナ素子を用いることによって通信容量の飛躍的な拡大を実現する技術である。マッシブMIMOによれば、同一の周波数帯を用いて多数のユーザーの同時接続が可能になる。マッシブMIMOは、20GHz帯などの、比較的高い周波数を利用する際に有用であり、第5世代移動通信システム(5G)などの通信に利用され得る。本開示の実施形態によるアンテナアレイは、このようなマッシブMIMOを用いる通信システムにおいて利用され得る。このアンテナアレイは、通信システムに限らず、レーダシステムにも利用され得る。
【0060】
<第1の実施形態の変形例>
本実施形態の構成は一例に過ぎず、様々な変形が可能である。以下、本実施形態のいくつかの変形例を説明する。
【0061】
図8Aは、本実施形態の変形例におけるアンテナアレイ300の軸方向断面図である。この例では、複数の導波壁335が第1導電部材310ではなく第2導電部材320に接続されている。すなわち、複数の導電性ロッド334、複数の導波壁335、および第2導電部材320の各々は、単一構造体の一部分である。それ以外の点は図7に示す構造と同じである。このように、複数の導波壁335が第2導電部材320に設けられた構成でも、本実施形態の効果を得ることができる。
【0062】
図8Bは、他の変形例におけるアンテナアレイ300の軸方向断面図である。この例では、導波壁335が第2導電部材320に接続されている一方で、導電性ロッド334は第1導電部材310に接続されている。すなわち、第1導電部材310および複数の導電性ロッド334の各々は単一構造体の一部分であり、第2導電部材320および複数の導波壁335の各々は他の単一構造体の一部分である。図8Bの構成においても、図7の構成と同様に、導波壁335と第1導電部材310との間の間隙d1は、導電性ロッド334の先端と第2導電部材320との間の間隙d2よりも小さい。このような構成でも、本実施形態の効果を得ることができる。
【0063】
図8Cは、さらに他の変形例におけるアンテナアレイ300の軸方向断面図である。この例におけるアンテナアレイ300は、複数のコネクタ350をさらに備える。これらのコネクタ350は、第2導電部材320の複数の貫通孔325の背面側にそれぞれ取り付けられる。各コネクタ350は、内部導体351と、内部導体351の外側の誘電体352と、誘電体352の外側の外部導体353とを含む。内部導体351の一端はジャック形状を有し、他端は折れ曲がっており、貫通孔325の内表面の接続部に接続されている。この例では、図8Bの例と同様、各導波壁335は第2導電部材320に接続され、各導電性ロッド334は、第1導電部材310に接続されている。図8Bの構造に代えて、図7または図8Aと同様の構造を採用してもよい。本変形例における貫通孔325の内表面には溝があり、その溝の中に内部導体351の他端が収容されている。なお、内部導体351の一端は、ジャック形状に代えて、プラグ形状を有していてもよい。
【0064】
図7から8Cにそれぞれ示す構造は、以下の各実施形態および各変形例においても同様に適用され得る。
【0065】
図9は、図8Cの変形例における第2導電部材320を背面側から見た模式図である。第2導電部材320の背面側には、複数のコネクタ350が並ぶ。これらのコネクタ350の配置間隔は、ホーンアンテナ素子の配置間隔と等しい。各コネクタ350には、同軸ケーブル340が接続される。
【0066】
図10は、アンテナアレイ300と、通信装置400とを備える通信システムの構成例を模式的に示す図である。このシステムは、例えばマッシブMIMOシステムであり得る。通信装置400は、複数のコネクタ360を備える。アンテナアレイ300と通信装置400は、複数の同軸ケーブル340を介して接続される。通信装置400は、内部に複数の送信器を収容し、各同軸ケーブル340に独立の位相の信号を送信できる。同軸ケーブル340の本数は、アンテナアレイ300におけるホーンアンテナ素子の数に等しい。アンテナアレイ300におけるコネクタ350の間隔は、通信装置400におけるコネクタ360の間隔よりも小さい。
【0067】
図11Aは、図6に示す断面構造の変形例を示す図である。この例では、複数の導波壁335のうち、X方向において隣接する2つの導波壁335の間にも導電性ロッド334が配置されている。各導波壁335の外周面は、X方向において他の導波壁335に対向する部位に凹部を有する。X方向において隣接する2つの導波壁335の凹部の間の間隙拡大部に導電性ロッド334が配置される。このような構造によれば、X方向において隣接する2つのホーン313の間での信号の分離度が改善する。
【0068】
図11Bは、図6に示す断面構造の他の変形例を示す図である。この例では、複数の導波壁335、および複数のホーン313が六方格子状に配列されている。このような構成によれば、Y方向において隣接するホーン313間の信号の分離度が改善することが期待される。
【0069】
<第2の実施形態>
図12は、第2の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。図示される断面は、図5におけるA−A´断面に相当する。本実施形態では、第1導電部材310の貫通孔315および第2導電部材320の貫通孔325は、X方向に延びた開口形状を有する。このような形状を、本明細書では「I形状」と称する。貫通孔315を囲む導波壁335の断面も単純な方形を有する。貫通孔315の短辺方向において隣り合う2つの導波壁335の間には、複数の導電性ロッド334が配置されている。この例において、貫通孔315の配置間隔は、貫通孔315の短辺方向(Y方向)及び長辺方向(X方向)のいずれにおいても(3/4)λである。なお、λは、このアンテナアレイにおいて送受信される電磁波の自由空間波長を示す。
【0070】
図13Aは、第2の実施形態におけるホーンアレイを示す斜視図である。図13Bは、第2の実施形態におけるホーンアレイを示す平面図である。これらの図において、ハッチングが付された部位は、ホーン313の内表面を示している。本実施形態における各ホーン313の内表面は、背面側から正面側に向かうにつれて徐々に拡がる滑らかな斜面を有する。第1の実施形態とは異なり、各ホーン313の内表面にはリッジ314が設けられていない。
【0071】
図14Aは、第2の実施形態の変形例におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。図14Aの例においては、各導波壁335の長辺の中央付近が薄く、短辺方向において隣接する他の導波壁335との間に、間隙の拡大部が形成される。この間隙の拡大部には、2本の導電性ロッド334が収容される。このような構成によれば、短辺方向において隣接する2つの貫通孔315を伝搬する信号波の分離度がより高まる。
【0072】
図14Bは、第2の実施形態の他の変形例におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。この例では、各導波壁335が、連続した1つの壁ではなく、分断された複数の部分から構成されている。導波壁335の各部分は、導電性ロッド334と同一または類似のロッド形状を有する。各導波壁335は複数の部分に分断されているが、各貫通孔315の中央部に隣接する部位には、導波壁335の部分が配置されている。このため、信号波の漏洩を抑制することができる。
【0073】
<第3の実施形態>
図15は、第3の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。本実施形態では、短辺方向(Y方向)における貫通孔315の配置間隔はλ/2であり、長辺方向(X方向)における貫通孔315の配置間隔は(3/4)λである。導波壁335は、貫通孔315の中央部に隣接する部位において薄くなっている。貫通孔315はI形状を有するが、両端においてY方向の幅が広くなっている。このような形状を貫通孔315に採用することにより、電磁波の整合度の調節が容易になる。
【0074】
<第4の実施形態>
図16は、第4の実施形態におけるアンテナアレイのXY面に平行な断面の構造を示す図である。本実施形態では、貫通孔315の配置間隔はX方向およびY方向のいずれにおいてもλ/2である。この配置間隔を実現するために、U形状を有する貫通孔315が採用されている。U形状の貫通孔315のX方向に延びる横部分において、導波壁335の外周面は凹部を有する。これにより、Y方向に隣接する2つの導波壁335の間に間隙拡大部が形成される。間隙拡大部に隣接して導電性ロッド334が配置される。
【0075】
図17Aは、第4の実施形態におけるホーンアレイを示す斜視図である。図17Bは、第4の実施形態におけるホーンアレイを示す正面図である。これらの図において、ハッチングが付された部位は、ホーンの内表面を示している。
【0076】
本実施形態において、ホーンアレイを構成する個々のホーン313は、1つのリッジ314を内表面に有するリッジホーンである。リッジ314は、内周面から第1の方向と交差する方向に突出し、同軸ケーブルから生じた電磁波を外部空間に案内する。リッジ314の幅は、ホーンの正面側の開口に近づくにつれて狭まる。このような構造に限らず、リッジ314の幅は一定であってもよい。この例において、リッジ314はホーン313の正面側の開口に達していないが、リッジ314の終端をホーン313の正面側の開口と一致させてもよい。
【0077】
<貫通孔の変形例>
貫通孔315、325の形状はこれまでに説明した形状に限定されない。電磁波の放射または受信が可能である限り、貫通孔315、325の形状は任意に設計してよい。以下、図18を参照しながら、貫通孔315、325の形状のいくつかの例と、寸法の条件を説明する。なお、図18には貫通孔315が例示されているが、貫通孔325の形状についても以下の説明は同様に適用される。
【0078】
図18(a)は、楕円形状の貫通孔315の例を示している。図中において矢印で示す貫通孔315の長半径Laは、高次の共振が起こらず、かつ、インピーダンスが小さくなり過ぎないように設定される。より具体的には、Laは、動作周波数帯域の中心周波数に対応する自由空間中での波長をλoとして、λo/4<La<λo/2に設定され得る。
【0079】
図18(b)は、一対の縦部分315bおよび一対の縦部分315bを繋ぐ横部分315aを有するH形状を有する貫通孔315の例を示している。横部分315aは、一対の縦部分315bにほぼ垂直であり、一対の縦部分315bのほぼ中央部同士を繋いでいる。このようなH字形状の貫通孔315でも、高次の共振が起こらず、かつ、インピーダンスが小さくなり過ぎないように、その形状およびサイズが決定される。横部分315aの中心線g2と横部分315aに垂直なH字形状全体の中心線h2との交点と、中心線g2と縦部分315bの中心線k2との交点との間の距離をLbとする。中心線g2と中心線k2との交点と、縦部分315bの端部との距離をWbとする。LbとWbとの和は、λo/4<Lb+Wb<λo/2を満たすように設定される。距離Wbを相対的に長くすることにより、距離Lbを相対的に短くすることができる。これによりH字形状のX方向の幅を例えばλo/2未満にでき、横部分315aの長さ方向の間隔を短縮することができる。
【0080】
図18(c)は、横部分315aおよび横部分315aの両端から延びる一対の縦部分315bを有する貫通孔315の例を示している。一対の縦部分315bの横部分315aから延びる方向は横部分315aにほぼ垂直であり、互いに逆である。横部分315aの中心線g3と横部分315aに垂直な全体形状の中心線h3との交点と、中心線g3と縦部分315bの中心線k3との交点との間の距離をLcとする。中心線g3と中心線k3との交点と、縦部分315bの端部との距離をWcとする。LcとWcとの和は、λo/4<Lc+Wc<λo/2を満たすように設定される。距離Wcを相対的に長くすることにより、距離Lcを相対的に短くすることができる。これにより、図18(c)の全体形状のX方向の幅を、例えばλo/2未満にでき、横部分315aの長さ方向の間隔を短縮することができる。
【0081】
図18(d)は、横部分315aおよび横部分315aの両端から横部分315aに垂直な同じ方向に延びる一対の縦部分315bを有する貫通孔315の例を示している。このような形状を、本明細書では「U字形状」と称することがある。なお、図18(d)に示す形状は、H字形状の上半分の形状と考えることもできる。横部分315aの中心線g4と横部分315aに垂直なU字形状全体の中心線h4との交点と、中心線g4と縦部分315bの中心線k4との交点との間の距離をLdとする。中心線g4と中心線k4との交点と、縦部分315bの端部との距離をWdとする。LdとWdとの和は、λo/4<Ld+Wd<λo/2を満たすように設定される。距離Wdを相対的に長くすることにより、距離Ldを相対的に短くすることができる。これにより、U形状のX方向の幅を、例えばλo/2未満にでき、横部分315aの長さ方向の間隔を短縮することができる。
【0082】
図18の(b)から(d)に示されている各貫通孔315の縦部分315bが延びる方向は、横部分315aが延びる方向に垂直な方向に限定されない。縦部分315bが延びる方向は、横部分315aが延びる方向に90度とは異なる角度で交差する方向であってもよい。
【0083】
<ワッフルアイアン構造の詳細>
次に、前述の各実施形態におけるアンテナアレイが有するワッフルアイアン構造をより詳細に説明する。
【0084】
図19Aは、ワッフルアイアン構造における各部材の寸法の範囲の例を示す図である。ここでは図19Aに示す構造を例に、寸法等の条件を説明する。以下の説明は、本開示の実施形態のいずれの箇所のワッフルアイアン構造においても同様に適用される。
【0085】
図19Aは、互いに対向する導電部材110、120と、導電部材120に接続された複数の導電性ロッド124を備える装置の構成の一部を示している。導電部材110は、前述の各実施形態における第1導電部材310および第2導電部材320の一方に対応する。導電部材120は、前述の各実施形態における第1導電部材310および第2導電部材320の他方に対応する。導電性ロッド124は、前述の各実施形態における導電性ロッド334に対応する。
【0086】
図19Aの例において、導電部材110の導電性表面110bは、導電性ロッド124の軸方向(Z方向)に直交する平面(XY面に平行な平面)に沿って二次元的に拡がっている。この例における導電性表面110bは平滑な平面であるが、導電性表面110bは必ずしも平滑な平面である必要はない。
【0087】
導電部材120上に配列された複数の導電性ロッド124は、それぞれ、導電性表面110bに対向する先端部124aを有する。図示されている例において、複数の導電性ロッド124の先端部124aは同一平面上にある。この平面は人工磁気導体の表面124cを形成する。各導電性ロッド124は、その全体が導電性を有している必要はなく、ロッド状構造物の少なくとも上面および側面に沿って拡がる導電層があればよい。この導電層はロッド状構造物の表層に位置してもよいが、表層が絶縁塗装または樹脂層からなり、ロッド状構造物の表面には導電層が存在していなくてもよい。また、導電部材120は、複数の導電性ロッド124を支持して人工磁気導体を実現できれば、その全体が導電性を有している必要はない。導電部材120の表面のうち、複数の導電性ロッド124が配列されている側の面120aが導電性を有し、隣接する複数の導電性ロッド124の表面が導電体によって電気的に接続されていればよい。導電部材120の導電性を有する層は、絶縁塗装または樹脂層で覆われていてもよい。言い換えると、導電部材120および複数の導電性ロッド124の組み合わせの全体は、導電部材110の導電性表面110bに対向する凹凸状の導電層を有していればよい。
【0088】
各人工磁気導体の表面124cと導電部材110の導電性表面110bとの間の空間は、特定周波数帯域内の周波数を有する電磁波を伝搬させない。そのような周波数帯域は「禁止帯域」と呼ばれる。導波路内を伝搬する電磁波の周波数(以下、「動作周波数」と称することがある。)が禁止帯域に含まれるように人工磁気導体は設計される。禁止帯域は、導電性ロッド124の高さ、すなわち、隣接する複数の導電性ロッド124の間に形成される溝の深さ、導電性ロッド124の幅、配置間隔、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間隙の大きさによって調整され得る。
【0089】
アンテナアレイは、所定の帯域(「動作周波数帯域」と称する。)の電磁波の送信および受信の少なくとも一方に用いられる。アンテナアレイの動作周波数帯域における中心周波数の電磁波の自由空間波長をλo、最高周波数の電磁波の自由空間波長をλmとする。各導電性ロッド124のうち、導電部材120に接している方の端の部分を「基部」と称する。各導電性ロッド124は、先端部124aと基部124bとを有する。各部材の寸法、形状、配置等の例は、以下のとおりである。
【0090】
(1)導電性ロッドの幅
導電性ロッド124の幅(X方向およびY方向のサイズ)は、λm/2未満に設定され得る。この範囲内であれば、X方向およびY方向における最低次の共振の発生を防ぐことができる。なお、XおよびY方向だけでなくXY断面の対角方向でも共振が起こる可能性がある。このため、導電性ロッド124のXY断面の対角線の長さもλm/2未満であることが好ましい。ロッドの幅および対角線の長さの下限値は、工法的に作製できる最小の長さであり、特に限定されない。
【0091】
(2)導電性ロッドの基部から導電部材110の導電性表面までの距離
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110bまでの距離は、導電性ロッド124の高さよりも長く、かつλm/2未満に設定され得る。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の基部124bと導電性表面110bとの間において共振が生じ、信号波の閉じ込め効果が失われる。
【0092】
導電性ロッド124の基部124bから導電部材110の導電性表面110bまでの距離は、導電部材110と導電部材120との間隔に相当する。例えば伝送線路をミリ波帯である76.5±0.5GHzの信号波が伝搬する場合、信号波の波長は、3.8923mmから3.9435mmの範囲内である。したがって、この場合、λmは3.8923mmとなるので、導電部材110と導電部材120との間隔は、3.8923mmの半分よりも小さく設計される。導電部材110と導電部材120とが、このような狭い間隔を実現するように対向して配置されていれば、導電部材110と導電部材120とが厳密に平行である必要はない。また、導電部材110と導電部材120との間隔がλm/2未満であれば、導電部材110および/または導電部材120の全体または一部が曲面形状を有していてもよい。他方、導電部材110、120の平面形状(XY面に垂直に投影した領域の形状)および平面サイズ(XY面に垂直に投影した領域のサイズ)は、用途に応じて任意に設計され得る。
【0093】
図19Aに示される例において、導電性表面120aは平面的であるが、本開示の実施形態はこれに限られない。例えば、図19Bに示すように、導電性表面120aはXZ面に平行な断面がU字またはV字に近い形状である面の底部であってもよい。導電性ロッド124が、先端部124aから基部124bに向かって幅が拡大する形状をもつ場合に、導電性表面120aはこのような構造になる。このような構造であっても、導電性表面110bと導電性表面120aとの間の距離が波長λmの半分よりも短ければ、図示される装置は、本開示の実施形態におけるアンテナアレイとして機能し得る。
【0094】
(3)導電性ロッドの先端部から導電部材110の導電性表面までの距離L
導電性ロッド124の先端部124aから導電性表面110bまでの距離Lは、λm/2未満に設定される。当該距離がλm/2以上の場合、導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間を電磁波が往復する伝搬モードが生じ、電磁波を閉じ込められなくなるからである。なお、複数の導電性ロッド124は、先端が導電性表面110bとは電気的には接触していない状態にある。ここで、導電性ロッドの先端が導電性表面に電気的に接触していない状態とは、先端と導電性表面との間に空隙がある状態、あるいは、導電性ロッドの先端と導電性表面とのいずれかに絶縁層が存在し、導電性ロッドの先端と導電性表面が絶縁層を間に介して接触している状態、のいずれかを指す。製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、距離Lは、例えばλm/16以上に設定され得る。
【0095】
導電性表面110bと導電性ロッド124の先端部124aとの距離Lの下限は、機械工作の精度と、上下の2つの導電部材110、120を一定の距離に保つように組み立てる際の精度とに依存する。プレス工法またはインジェクション工法を用いた場合、上記距離の現実的な下限は50マイクロメートル(μm)程度である。MEMS(Micro−Electro−Mechanical System)技術を用いて例えばテラヘルツ領域の製品を作る場合には、上記距離の下限は、2〜3μm程度である。
【0096】
(4)導電性ロッドの配列および形状
複数の導電性ロッド124のうちの隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間は、例えばλm/2未満の幅を有する。隣接する2つの導電性ロッド124の間の隙間の幅は、当該2つの導電性ロッド124の一方の表面(側面)から他方の表面(側面)までの最短距離によって定義される。このロッド間の隙間の幅は、ロッド間の領域で最低次の共振が起こらないように決定される。共振が生じる条件は、導電性ロッド124の高さ、隣接する2つの導電性ロッド間の距離、および導電性ロッド124の先端部124aと導電性表面110bとの間の空隙の容量の組み合わせによって決まる。よって、ロッド間の隙間の幅は、他の設計パラメータに依存して適宜決定される。ロッド間の隙間の幅には明確な下限はないが、製造の容易さを確保するために、ミリ波帯の電磁波を伝搬させる場合には、例えばλm/16以上であり得る。なお、隙間の幅は一定である必要はない。λm/2未満であれば、導電性ロッド124の間の隙間は様々な幅を有していてもよい。
【0097】
複数の導電性ロッド124の配列は、人工磁気導体としての機能を発揮する限り、図示されている例に限定されない。複数の導電性ロッド124は、直交する行および列状に並んでいる必要は無く、行および列は90度以外の角度で交差していてもよい。複数の導電性ロッド124は、行または列に沿って直線上に配列されている必要は無く、単純な規則性を示さずに分散して配置されていてもよい。各導電性ロッド124の形状およびサイズも、導電部材120上の位置に応じて変化していてよい。
【0098】
複数の導電性ロッド124の先端部124aが形成する人工磁気導体の表面124cは、厳密に平面である必要は無く、微細な凹凸を有する平面または曲面であってもよい。すなわち、各導電性ロッド124の高さが一様である必要はなく、導電性ロッド124の配列が人工磁気導体として機能し得る範囲内で個々の導電性ロッド124は多様性を持ち得る。
【0099】
各導電性ロッド124は、図示されている角柱形状に限らず、例えば円筒状の形状を有していてもよい。さらに、各導電性ロッド124は、単純な柱状の形状を有している必要はない。人工磁気導体は、導電性ロッド124の配列以外の構造によっても実現することができ、多様な人工磁気導体を本開示のアンテナアレイに利用することができる。なお、導電性ロッド124の先端部124aの形状が角柱形状である場合は、その対角線の長さはλm/2未満であることが好ましい。楕円形状であるときは、長軸の長さがλm/2未満であることが好ましい。先端部124aがさらに他の形状をとる場合でも、その差し渡し寸法は一番長い部分でもλm/2未満であることが好ましい。
【0100】
導電性ロッド124の高さ、すなわち、基部124bから先端部124aまでの長さは、導電性表面110bと導電性表面120aとの間の距離(λm/2未満)よりも短い値、例えば、λo/4に設定され得る。
【0101】
本開示の実施形態におけるアンテナアレイは、例えば無線通信システムに利用できる。そのような無線通信システムは、上述したいずれかの実施形態におけるアンテナアレイと、通信装置(送信回路または受信回路)とを備える。送信回路は、例えば、送信すべき信号を表す信号波をアレイアンテナ内の導波路に供給するように構成され得る。受信回路は、アレイアンテナを介して受信された信号波を復調してアナログまたはデジタルの信号として出力するように構成され得る。
【0102】
本開示の実施形態におけるアンテナアレイあるいはアンテナ装置は、例えば車両、船舶、航空機、ロボット等の移動体に搭載されるレーダ装置またはレーダシステムにも用いられ得る。レーダ装置は、上述したいずれかの実施形態におけるアンテナアレイと、当該アンテナアレイに接続されたMMICなどのマイクロ波集積回路とを備える。レーダシステムは、当該レーダ装置と、当該レーダ装置のマイクロ波集積回路に接続された信号処理回路とを備える。
【0103】
信号処理回路は、例えば、マイクロ波集積回路によって受信された信号に基づき、到来波の方位を推定する処理等を行う。信号処理回路は、例えば、MUSIC法、ESPRIT法、およびSAGE法などのアルゴリズムを実行して、到来波の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成され得る。信号処理回路は、さらに、公知のアルゴリズムにより、到来波の波源である物標までの距離、物標の相対速度、物標の方位を推定し、推定結果を示す信号を出力するように構成されていてもよい。
【0104】
本開示における「信号処理回路」の用語は、単一の回路に限られず、複数の回路の組み合わせを概念的に1つの機能部品として捉えた態様も含む。信号処理回路は、1個または複数のシステムオンチップ(SoC)によって実現されてもよい。例えば、信号処理回路の一部または全部がプログラマブルロジックデバイス(PLD)であるFPGA(Field−Programmable Gate Array)であってもよい。その場合、信号処理回路は、複数の演算素子(例えば汎用ロジックおよびマルチプライヤ)および複数のメモリ素子(例えばルックアップテーブルまたはメモリブロック)を含む。または、信号処理回路は、汎用プロセッサおよびメインメモリ装置の集合であってもよい。信号処理回路は、プロセッサコアとメモリとを含む回路であってもよい。これらは信号処理回路として機能し得る。
【0105】
本開示の実施形態におけるアンテナアレイは、さらに、屋内測位システム(IPS:Indoor Positioning System)におけるアンテナとしても利用することができる。屋内測位システムでは、建物内にいる人、または無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)などの移動体の位置を特定することができる。アンテナアレイはまた、店舗または施設に来場した人が有する情報端末(スマートフォン等)に情報を提供するシステムにおいて用いられる電波発信機(ビーコン)に用いることもできる。そのようなシステムでは、ビーコンは、例えば数秒に1回、IDなどの情報を重畳した電磁波を発する。その電磁波を情報端末が受信すると、情報端末は、通信回線を介して遠隔地のサーバコンピュータに、受け取った情報を送信する。サーバコンピュータは、情報端末から得た情報から、その情報端末の位置を特定し、その位置に応じた情報(例えば、商品案内またはクーポン)を、当該情報端末に提供する。
【0106】
ワッフルアイアン構造を有するアンテナアレイを備えたレーダシステム、通信システム、および各種監視システムの応用例が、例えば米国特許第9786995号明細書および米国特許第10027032号に開示されている。これらの文献の開示内容の全体を本願明細書に援用する。本開示のアンテナアレイは、これらの文献に開示された各応用例に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示のアンテナアレイは、電磁波を利用するあらゆる技術分野において利用可能である。例えばギガヘルツ帯域またはテラヘルツ帯域の電磁波の送受信を行う各種の用途に利用され得る。アンテナアレイは、例えば、マッシブMIMOシステムなどの無線通信システムに用いられ得る。アンテナアレイは、車載レーダシステム、各種の監視システム、および屋内測位システムにも用いられ得る。
【符号の説明】
【0108】
300 アンテナアレイ
310 第1導電部材
310a 第1導電性表面
310b 第2導電性表面
311 導電プレート
312 ホーンアレイ部
313 ホーン
314 ホーンのリッジ
315 貫通孔
320 第2導電部材
325 貫通孔
326 突出部
334 導電性ロッド
335 導波壁
336 凹部
337A、337B 間隙拡大部
339A、339B 溝
340 同軸ケーブル
342 同軸ケーブルの芯線
350、360 コネクタ
351 内部導体
352 誘電体
353 外部導体
400 通信装置

図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B