特開2020-32786(P2020-32786A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-32786(P2020-32786A)
(43)【公開日】2020年3月5日
(54)【発明の名称】停車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20200207BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20200207BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20200207BHJP
【FI】
   B60W30/00
   B60W30/08
   B60W40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-159070(P2018-159070)
(22)【出願日】2018年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】菅野 崇
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伏間 丈悟
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241BA31
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB09Z
3D241DD04Z
(57)【要約】
【課題】より運転者の救助に資する停車支援を行うことが可能な停車支援装置を提供する。
【解決手段】停車支援装置1は、運転者の身体の異常を検出する異常検出部51と、停止地点を設定する停止地点設定部67と、停止地点まで走行して停止地点に停止するように車両2を制御する車両制御部68と、を備える。停止地点設定部67は、それぞれの停止地点候補に関して、横加速度の増加に伴い増加する第1指標値と、被追突リスクの増加に伴い増加する第2指標値と、異常検出部が検出した異常に基づいて定められる第3指標値と、第1指標値と、第2指標値と、第3指標値と、を重み付けして総和した総指標値と、を算出し、複数の停止地点候補のうち、総指標値が最も小さい停止地点候補を、停止地点として設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行している車両の停止を支援する停車支援装置であって、
運転者の身体の異常を検出する異常検出部と、
上記車両の進行方向に存在する複数の停止地点候補を検出する候補検出部と、
上記車両がそれぞれの上記停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を推定する加速度推定部と、
それぞれの上記停止地点候補において上記車両が停止している場合に後続車両に追突されるリスクである被追突リスクを推定するリスク推定部と、
停止地点を設定する停止地点設定部と、
上記停止地点まで走行して該停止地点に停止するように上記車両を制御する車両制御部と、を備え、
上記停止地点設定部は、それぞれの上記停止地点候補に関して、
上記横加速度の増加に伴い増加する第1指標値と、
上記被追突リスクの増加に伴い増加する第2指標値と、
上記異常検出部が検出した異常に基づいて定められる第3指標値と、
上記第1指標値と、上記第2指標値と、上記第3指標値と、を重み付けして総和した総指標値と、を算出し、
上記複数の停止地点候補のうち、上記総指標値が最も小さい上記停止地点候補を、上記停止地点として設定することを特徴とする、停車支援装置。
【請求項2】
上記停止地点設定部は、上記車両がそれぞれの上記停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を積分することにより、上記第1指標値を算出する、請求項1に記載の停車支援装置。
【請求項3】
上記異常検出部は、運転者の意識の有無を検出し、
上記停止地点設定部は、運転者の意識が無い場合の上記第1指標値の重み付けを、運転者の意識が有る場合の上記第1指標値の重み付けよりも大きくする、請求項2に記載の停車支援装置。
【請求項4】
上記異常検出部は、運転者の眼の開閉状態を検出し、
上記停止地点設定部は、運転者の眼が閉状態である場合の上記第1指標値の重み付けを、運転者の眼が開状態である場合の上記第1指標値の重み付けよりも大きくする、請求項3に記載の停車支援装置。
【請求項5】
上記異常検出部は、運転者の視線の方向を検出するとともに、運転者の視線の方向が上記車両の進行方向と一致するか否かを判定し、
上記停止地点設定部は、運転者の視線の方向が上記車両の進行方向と一致しない場合の上記第1指標値の重み付けを、運転者の視線の方向が上記車両の進行方向と一致する場合の上記第1指標値の重み付けよりも大きくする、請求項4に記載の停車支援装置。
【請求項6】
上記リスク推定部は、上記複数の停止地点候補における上記後続車両からの見通し距離が小さいほど、大きい上記被追突リスクを推定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の停車支援装置。
【請求項7】
上記停止地点設定部は、上記複数の停止地点候補における上記車両に対する上記後続車両の相対速度が大きいほど、大きい上記第2指標値を算出する、請求項1から6のいずれか一項に記載の停車支援装置。
【請求項8】
上記停止地点設定部は、法令で上記複数の停止地点候補に定められた最高速度に基づいて上記相対速度を推定する、請求項7に記載の停車支援装置。
【請求項9】
身体の複数の異常のそれぞれに対応する値を予め記憶している記憶部を備え、
上記停止地点設定部は、上記異常検出部が検出した異常に対応する値を上記記憶部から読みこみ、該値に、それぞれの上記停止地点候補までの所要時間を乗じることにより上記第3指標値を算出する、請求項1から8のいずれか一項に記載の停車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行している車両の停止を支援する停車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が体調の急変等により安全な運転を継続できなくなった場合に、運転者に代わって車両を停止させる装置が知られている。例えば、特許文献1には、運転者の異常を検出した場合に、車両を退避スペースに停止させる装置が開示されている。さらに、特許文献2には、見通しが良好でない領域への車両の停止が禁止されることが開示されている。これらの停車支援装置によれば、運転者、同乗者、及び他の道路ユーザを、車両の衝突による危険から遠ざけるとともに、車両の停止後に運転者を救助することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−1519号公報
【特許文献2】特開2017−190048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の自動運転技術の開発に伴い、高精度地図や車載カメラ等の機器に関する技術が大きく進歩している。停車支援装置においても、これらの機器から提供される情報を有効に利用し、より運転者の救助に資する停車支援を行うことが待望されている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、より運転者の救助に資する停車支援を行うことが可能な停車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、走行している車両の停止を支援する停車支援装置であって、運転者の身体の異常を検出する異常検出部と、車両の進行方向に存在する複数の停止地点候補を検出する候補検出部と、車両がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を推定する加速度推定部と、それぞれの停止地点候補において車両が停止している場合に後続車両に追突されるリスクである被追突リスクを推定するリスク推定部と、停止地点を設定する停止地点設定部と、停止地点まで走行して停止地点に停止するように車両を制御する車両制御部と、を備え、停止地点設定部は、それぞれの停止地点候補に関して、横加速度の増加に伴い増加する第1指標値と、被追突リスクの増加に伴い増加する第2指標値と、異常検出部が検出した異常に基づいて定められる第3指標値と、第1指標値と、第2指標値と、第3指標値と、を重み付けして総和した総指標値と、を算出し、複数の停止地点候補のうち、総指標値が最も小さい停止地点候補を、停止地点として設定することを特徴とする。
【0007】
救助活動を迅速に開始するためには、車両を可及的速やかに停止地点に停止させる必要がある。運転者の身体の異常が、緊急性が高いものであるほど、車両は早く停止地点に到着することを求められる。
【0008】
しかしながら、車両が停止地点まで走行する間に大きな横加速度(つまり、車両の幅方向における加速度)が発生すると、運転者の姿勢が大きく崩れ、運転者の体調がさらに悪化するおそれがある。また、後続車両に追突されるリスクが大きい地点に車両を停止させた場合にも、救助活動を安全に行うことが困難になり、結果的に、運転者の体調がさらに悪化するおそれがある。より運転者の救助に資する停車支援を行うためには、このような種々の要因を考慮して停止地点を設定することが求められる。
【0009】
これに対し、本発明者らは、鋭意研究の結果、「総指標値」と称する新たな指標値を用いて停止地点候補を評価することにより、適切な停止地点を設定できることを見出した。「総指標値」は、第1指標値と、第2指標値と、第3指標値と、を重み付けして総和することで得られる。「第1指標値」は、横加速度の増加に伴い増加する。「第2指標値」は、被追突リスクの増加に伴い増加する。「第3指標値」は、異常検出部が検出した異常に基づいて定められる。
【0010】
上記構成によれば、複数の停止地点候補のうち、総指標値が最も小さい停止地点候補を、停止地点として設定する。これにより、車両が停止地点まで走行する間の、横加速度が運転者に与える負担と、被追突リスクが運転者に与える負担と、運転者の身体の異常が運転者に与える負担と、を総合的に評価し、各負担のバランスが取れた停止地点を設定することが可能になる。
【0011】
本発明において、好ましくは、停止地点設定部は、車両がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を積分することにより、第1指標値を算出する。
急操舵等により比較的大きな横加速度が突発的に発生すると、運転者に与える負担が増加する。また、横加速度が比較的小さい場合でも、それが継続的に発生すると、運転者の負担は増加する。
この構成によれば、車両がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を積分することにより、継続的に発生する比較的小さい横加速度も、運転者の負担として評価することができる。この結果、より詳細に第1指標値を定め、停止地点を設定することが可能になる。
【0012】
本発明において、好ましくは、異常検出部は、運転者の意識の有無を検出し、停止地点設定部は、運転者の意識が無い場合の第1指標値の重み付けを、運転者の意識が有る場合の第1指標値の重み付けよりも大きくする。
運転者の意識が無い場合は、運転者が横加速度に抗するように身体に力を入れることが困難になる。
この構成によれば、運転者の意識が無い場合の第1指標値の重み付けを、運転者の意識が有る場合の第1指標値の重み付けよりも大きくすることにより、第1指標値が比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の意識が無い場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、異常検出部は、運転者の眼の開閉状態を検出し、停止地点設定部は、運転者の眼が閉状態である場合の第1指標値の重み付けを、運転者の眼が開状態である場合の第1指標値の重み付けよりも大きくする。
運転者の眼が閉状態である場合は、運転者が車両の挙動を予測し、身体に力を入れることが困難になる。
この構成によれば、運転者の眼が閉状態である場合の第1指標値の重み付けを、運転者の眼が開状態である場合の第1指標値の重み付けよりも大きくすることにより、第1指標値が比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の眼が閉状態である場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、異常検出部は、運転者の視線の方向を検出するとともに、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致するか否かを判定し、停止地点設定部は、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致しない場合の第1指標値の重み付けを、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致する場合の第1指標値の重み付けよりも大きくする。
「運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致する」とは、運転者の視線の方向が、車両の進行方向を含む所定の範囲に属していることをいう。つまり、「運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致する」とは、運転者の視線の方向が車両の進行方向と概ね一致していることをいい、両者が完全に一致していることを要しない。
運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致しない場合は、運転者が車両の挙動を予測し、身体に力を入れることが困難になる。
この構成によれば、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致しない場合の第1指標値の重み付けを、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致する場合の第1指標値の重み付けよりも大きくすることにより、第1指標値が比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の視線の方向が車両の進行方向と一致しない場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、リスク推定部は、複数の停止地点候補における後続車両からの見通し距離が小さいほど、大きい被追突リスクを推定する。
「後続車両からの見通し距離」とは、車両を後続車両から視認できる状態における、後続車両から車両までの距離の最大値をいう。例えば、カーブ路や起伏がある道路で車両が停止している場合や、道路周辺に壁や街路樹等の障害物が存在している場合は、当該車両が停止している地点における「後続車両からの見通し距離」は比較的小さい。一方、直線道路や平坦な道路で車両が停止している場合や、道路周辺の障害物が少ない場合は、当該車両が停止している地点における「後続車両からの見通し距離」は比較的大きい。
この構成によれば、後続車両からの見通し距離が小さく、追突回避のための後続車両の制動が困難な停止地点候補ほど、大きい被追突リスクが推定され、大きい第2指標値が算出される。この結果、車両をより安全に停止させることが可能な停止地点を設定できる。
【0016】
本発明において、好ましくは、停止地点設定部は、複数の停止地点候補における車両に対する後続車両の相対速度が大きいほど、大きい第2指標値を算出する。
この構成によれば、車両に対する後続車両の相対速度が大きく、追突回避のための後続車両の制動が困難な停止地点候補ほど、大きい第2指標値が算出される。この結果、車両をより安全に停止させることが可能な停止地点を設定できる。
【0017】
本発明において、好ましくは、停止地点設定部は、法令で複数の停止地点候補に定められた最高速度に基づいて相対速度を推定する。
この構成によれば、車両に対する後続車両の相対速度を容易に推定することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、身体の複数の異常のそれぞれに対応する値を予め記憶している記憶部を備え、停止地点設定部は、異常検出部が検出した異常に対応する値を記憶部から読みこみ、該値に、それぞれの停止地点候補までの所要時間を乗じることにより第3指標値を算出する。
この構成によれば、第3指標値は、異常検出部が検出した運転者の身体の異常と、停止地点候補までの所要時間と、に基づいて算出される。このため、例えば、緊急性が比較的高い異常には比較的大きい値を設定することにより、第3指標値も大きくなる。この結果、運転者の身体の異常が、緊急性が比較的高いものである場合に、車両を迅速に停止させて救助活動を開始することが可能になる。また、緊急性が比較的低い異常には比較的小さい値を設定することにより、より多くの停止地点候補の中から停止地点を設定することが可能になる。
さらに、身体の複数の異常のそれぞれに対応する値は予め記憶部に記憶されているため、外乱等により、身体の複数の異常に対して不適切に小さい又は大きい値に基づいて第3指標値を算出してしまうことを抑制できる。この結果、運転者の身体の異常に基づいて停止地点を設定することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より運転者の救助に資する停車支援を行うことが可能な停車支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る停車支援装置を示すブロック図である。
図2】第1パターンの説明図である。
図3】第2パターンの説明図である。
図4】第3パターンの説明図である。
図5図1のECUが実行する処理を示すフローチャートである。
図6】横加速度の変化を示すグラフである。
図7】被追突リスク係数を説明するグラフである。
図8】見通しリスク係数を説明するグラフである。
図9】疾患と単位時間当たりの身体異常エネルギーとの対応を示す表である。
図10】運転者の身体の状態と重み係数との対応を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
まず、図1を参照しながら、実施形態に係る停車支援装置1(以下「装置1」という。)の構成について説明する。図1は、装置1を示すブロック図である。装置1は、車両に搭載され、緊急措置として、走行している車両の停止を支援する。本明細書では、装置1が搭載される車両を「車両2」という。
【0023】
また、本明細書では、車両2が前進する方向を「前」といい、後退する方向を「後」という。また、車両2が前進する方向を向いた場合の左方向を「左」という。
【0024】
装置1は、車外カメラ31と、車内カメラ32と、ナビゲーション装置33と、アクセルペダルセンサ34と、ブレーキペダルセンサ35と、ステアリングセンサ36と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)5と、を備えている。
【0025】
車外カメラ31は、車両2の外部、特に、車両2の前方を撮影し、画像データを取得する。車外カメラ31は、例えばイメージセンサであり、車両2の不図示のルームミラーに設置されている。車外カメラ31は、取得した画像データに対応する信号をECU5に送信する。
【0026】
車内カメラ32は、車両2の内部を撮影し、画像データを取得する。具体的には、車内カメラ32は、車室内の運転者の上体を含む範囲を撮影する。車内カメラ32は、例えばイメージセンサであり、車両2のインストルメントパネルに設置されている。車内カメラ32は、取得した画像データに対応する信号をECU5に送信する。
【0027】
ナビゲーション装置33は、車両2の乗員に種々の情報を提供する。ナビゲーション装置33は、地図情報を記憶しているか、若しくは、車両2外のサーバと通信を行うことにより地図情報を取得する。当該地図情報には、道路形状、法令で各道路に定められた最高速度、各道路の交通状況が含まれている。また、当該地図情報には、消防署や病院等、救急自動車が配備されている地点に関する情報が含まれている。ナビゲーション装置33は、例えば、GPS(Global Positioning System)や自立航法センサ等、車両2の位置を検出するセンサを有している。ナビゲーション装置33は、地図情報、地図上の車両2の位置、車両2が所定地点に到達するまでに必要となる時間等に関する情報を、音や表示により乗員に提供する。また、ナビゲーション装置33は、ECU5と通信可能であり、ECU5の要求に応じて信号を送信することにより、ECU5に種々の情報を提供する。
【0028】
アクセルペダルセンサ34は、車両2のアクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ34は、検出した踏み込み量に対応する信号をECU5に送信する。
【0029】
ブレーキペダルセンサ35は、車両2のブレーキペダルの踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ35は、検出した踏み込み量に対応する信号をECU5に送信する。
【0030】
ステアリングセンサ36は、車両2のステアリングホイールの操舵方向及び操舵角を検出する。ステアリングセンサ36は、例えば、エンコーダを有しており、ステアリングホイールとともに回転するスリットをカウントする。ステアリングセンサ36は、検出した操舵方向及び操舵角に対応する信号をECU5に送信する。
【0031】
ECU5は、信号を送受信することにより機器を制御する制御装置である。ECU5は、その一部又は全部が、アナログ回路で構成されるか、デジタルプロセッサとして構成される。ECU5は、異常検出部51と、候補検出部55と、所要時間推定部57と、リスク推定部59と、加速度推定部65と、停止地点設定部67と、車両制御部68と、記憶部69と、を有している。
【0032】
尚、図1は、ECU5の各機能をブロックとして示している。しかしながら、ECU5のアナログ回路又はデジタルプロセッサに組み込まれるソフトウェアのモジュールは、必ずしも図1のように分割されている必要はない。つまり、図1に示される各機能ブロックは更に細分化されていてもよいし、複数の機能ブロックの機能を単一の機能ブロックが有するように構成されていてもよい。後述する処理を実行できるように構成されていれば、当業者は、ECU5の内部の構成を適宜変更できる。
【0033】
異常検出部51は、車両2の運転者の身体の異常を検出する。異常検出部51は、ECU5が車内カメラ32、アクセルペダルセンサ34、ブレーキペダルセンサ35及びステアリングセンサ36から受信する信号に基づいて、運転者の身体の異常を検出する。
【0034】
例えば、異常検出部51は、車内カメラ32が取得した画像データに対して所定の処理を施すことにより、運転者の上体、頭部、顔、眼等を特定するとともに、それらに関する情報を取得する。さらに、異常検出部51は、アクセルペダルセンサ34、ブレーキペダルセンサ35及びステアリングセンサ36から受信する信号に基づいて、運転者の運転操作に関する情報を検出する。そして、異常検出部51は、取得したこれらの情報に基づいて所定の演算を行い、運転者の意識の有無、眼の開閉状態、視線の方向、重心位置等を検出する。
【0035】
また、異常検出部51は、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致するか否かを判定する。詳細には、異常検出部51は、運転者の視線の方向が、車両2の進行方向を含む所定の範囲に属しているか否かを判定する。さらに、異常検出部51は、運転者が着座するシートの座面から運転者の重心までの距離に基づいて、運転者の重心の位置が適切であるか否かを判定する。
【0036】
また、異常検出部51は、取得した情報に基づいて所定の演算を行い、運転者の身体に発症している疾患を推定する。当該疾患の例として、脳血管疾患、心疾患、消化器疾患、失神等、運転者自身が突然の発症を予測することが困難なものが挙げられる。
【0037】
候補検出部55は、停止地点候補を検出する。ここで、装置1が車両2を停止させる地点を「停止地点」といい、当該停止地点となり得る地点を「停止地点候補」という。候補検出部55は、ナビゲーション装置33から受信する信号に基づいて地図情報を取得するとともに、当該地図情報において車両2の進行方向に存在し、所定条件を満たす複数の停止地点候補を検出する。
【0038】
所要時間推定部57は、候補検出部55が検出した各停止地点候補までの所要時間を推定する。詳細には、所要時間推定部57は、各停止地点候補までの経路を探索し、各経路を走行する場合の車両2の速度パターンを決定するとともに、当該経路や速度パターンに基づいて、車両2が各停止地点候補に到達するのに要する時間を推定する。
【0039】
リスク推定部59は、候補検出部55が検出した各停止地点候補における被追突リスクを推定する。ここで、「被追突リスク」とは、車両2が後続車両に追突されるリスクに関する指標である。被追突リスクの大きさは、地点により異なる。被追突リスクの推定の詳細については後述する。
【0040】
加速度推定部65は、車両2がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する加速度を推定する。詳細には、加速度推定部65は、各停止地点候補までの経路を探索し、各経路を走行する場合の車両2の速度パターンを決定するとともに、当該経路や速度パターンに基づいて、車両2が各停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度(つまり、車両2の幅方向における加速度)を推定する。
【0041】
停止地点設定部67は、候補検出部55が検出した複数の停止地点候補に対し、所定条件に基づいて絞り込みを行ったり、1つの停止地点候補を停止地点として設定したりする。停止地点の設定の詳細については後述する。
【0042】
車両制御部68は、車両2の挙動を制御する。具体的には、車両制御部68は、車両2のエンジン41及びブレーキ42に制御信号を送信することにより、車両2の速度を制御する。また、車両制御部68は、車外カメラ31が取得した画像データに対して所定の処理を施すことにより、車両2が走行している道路の区画線を検出する。車両制御部68は、当該区画線を基準として生成した制御信号を電動パワーステアリング43に送信することにより、車両2の進行方向を制御する。
【0043】
記憶部69は、例えば不揮発性メモリにより構成されており、種々の情報を記憶する。記憶部69が記憶している情報は、異常検出部51等により読み出され、各種演算に用いられる。
【0044】
次に、図2から図4を参照しながら、装置1による車両2の制御について説明する。図2から図4は、日本の交通事情のように、法令により車両が左側車線を走行することが定められている環境を示している。道路8は、追越車線81及び走行車線82から成る片道二車線の道路である。車両2の走行中に所定条件が成立した場合、装置1は、緊急措置として運転者に代わって当該車両2を制御し、停止地点SPに停止させる。停止地点SPは、以下の3つのパターンのいずれかで設定される。
【0045】
[第1パターン]
図2は、装置1の停止地点設定部67(図1参照)が、道路8内の地点を停止地点SPとして設定する第1パターンを示している。具体的には、図2は、車両2が追越車線81を走行中に所定条件が成立し、車両2の進行方向における追越車線81上の地点が、停止地点SPとして設定された場合を示している。この場合、装置1の車両制御部68(図1参照)は、車両2が追越車線81を維持しながら走行するように、電動パワーステアリング43(図1参照)に制御信号を送信する。
【0046】
[第2パターン]
図3は、装置1の停止地点設定部67が、道路8の路肩83を停止地点SPとして設定する第2パターンを示している。具体的には、図3は、車両2が走行車線82を走行中に所定条件が成立し、車両2の進行方向に存在する路肩83が停止地点SPとして設定された場合を示している。この場合、装置1の車両制御部68は、車両2が走行車線82を維持しながら走行するとともに、停止地点SP近傍において左前方に進行するように、電動パワーステアリング43に制御信号を送信する。
【0047】
[第3パターン]
図4は、装置1の停止地点設定部67が、道路8の側方に設けられた非常駐車帯84を停止地点SPとして設定する第3パターンを示している。具体的には、図4は、車両2が追越車線81を走行中に所定条件が成立し、車両2の進行方向に存在する非常駐車帯84が停止地点SPとして設定された場合を示している。この場合、装置1の車両制御部68は、車両2がまず追越車線81から走行車線82に移動し、走行車線82を維持しながら走行するとともに、停止地点SP近傍で左前方に進行するように、電動パワーステアリング43に制御信号を送信する。
【0048】
第1パターンから第3パターンのいずれにおいても、車両2が停止地点SPの近傍に到達するまで、車両制御部68は、車両2の速度が50km/hよりも低くなるように、エンジン41及びブレーキ42に制御信号をする。車両制御部68は、車両2を停止地点SPに停止させる。車両2の停止後、装置1は不図示のウインカを点滅させたり、警笛を鳴動させたりすることにより、後続車両の追突を防止するとともに、車両2の運転者が救助を要していることを外部に報知する。
【0049】
次に、図5から図10を参照しながら、ECU5(図1参照)が実行する処理について説明する。図5は、ECU5が実行する処理を示すフローチャートである。当該処理は、車両2の走行中に、所定の周期で繰り返し実行される。図6は、横加速度の変化を示すグラフである。図7は、被追突リスク係数αを説明するグラフである。図8は、見通しリスク係数βを説明するグラフである。図9は、疾患と単位時間当たりの身体異常エネルギーとの対応を示す表である。図10は、運転者の身体の状態と重み係数との対応を示す表である。尚、説明の簡便のため、詳細にはECU5の各機能ブロックが実行している処理も、総括してECU5が実行するとして説明する。
【0050】
まず、ECU5は、図5に示されるステップS1で、車両2の運転者の身体の状態を検出する。詳細には、ECU5は、車内カメラ32(図1参照)が取得した画像データに基づいて、運転者の意識の有無、眼の開閉状態、視線の方向、重心位置などを検出する。
【0051】
ステップS2で、ECU5は、運転者の身体に異常があるか否かを判定する。詳細には、ECU5は、ステップS1における検出の結果に基づいて、運転者が車両2を安全に運転できないほど、運転者の身体に異常があるか否かを判定する。例えば、ECU5は、運転者の意識の程度を数値化するとともに、当該数値が所定の閾値を下回った場合に、運転者の身体に異常があると判定してもよい。運転者の身体に異常があると判定しなかった場合(S2:NO)、ECU5は停車支援を行わない。一方、運転者の身体に異常があると判定した場合(S2:YES)、ECU5はステップS3に進む。
【0052】
ステップS3で、ECU5は、運転者の疾患を推定する。詳細には、ECU5は、ステップS1における検出の結果に基づいて、運転者の身体に発症している疾患を推定する。ECU5は、麻痺、てんかん、インフルエンザ、心筋梗塞及びくも膜下出血のいずれかの疾患が発症していることを推定できる。
【0053】
ステップS4で、ECU5は、停止地点候補を検出する。詳細には、ECU5は、ナビゲーション装置33から受信する信号に基づいて地図情報を取得するとともに、車両2の進行方向において車両2から5km以内に存在し、且つ、所定条件を満たす複数の地点を、停止地点候補として検出する。当該所定条件は、車両2の特性や、車両2が走行している道路の特性、ステップS1で検出された運転者の身体の状態等、種々の因子に基づいて設定することができる。
【0054】
ステップS5で、ECU5は、停止地点候補までの所要時間を推定する。詳細には、ECU5は、まず、所定のアルゴリズムに基づいて、ステップS4で検出した各停止地点候補までの経路を探索し、各径路を走行する場合の車両2の速度パターンを決定する。さらに、ECU5は、決定した経路及び速度パターンに基づいて、車両2が各停止地点候補に到達するのに要する時間を推定する。
【0055】
ステップS6で、ECU5は、横加速度を推定する。詳細には、ECU5は、ステップS5で決定した経路及び速度パターンに基づいて、車両2がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を推定する。
【0056】
ステップS7で、ECU5は、横移動エネルギーEyを算出する。横移動エネルギーEyは、本発明に係る第1指標値の一例であり、車両2の横加速度に基づいて定められる。具体的には、横移動エネルギーEyは、次の式f1に基づいて定められる。
【数1】
【0057】
yは、車両2の幅方向における、車両2の位置(座標値)である。Δyは、車両2が停止地点候補まで走行する間の、幅方向における車両2の移動距離である。Gy(y)は、yを変数とする横加速度の関数であり、gは重力加速度である。
【0058】
車両2が停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度Gy(y)は、例えば図6に示されるように変化する。横加速度Gy(y)は、車両2が幅方向への移動を開始することにより増加し、車両2が停止地点候補に停止するために減速することにより減少する。式f1に示されるように、横移動エネルギーEyは、車両2が停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度Gy(y)を積分することにより算出され、図6の斜線部の面積に相当する。
【0059】
また、時間tを変数とする横加速度の関数をGy(t)、停止地点候補までの所要時間をΔtとすると、移動距離Δyは次の式f2のように表される。
【数2】
【0060】
式f2から理解できるように、移動距離Δyが一定である場合、所要時間Δtが大きいほど、横加速度Gy(t)は小さくなる。つまり、車両2が比較的長い時間をかけて停止地点候補まで走行すると、横加速度Gy(t)は小さくなる。この結果、式f1に基づいて定められる横移動エネルギーEyも小さくなる。
【0061】
ステップS8で、ECU5は、停止地点候補における被追突リスクを推定する。詳細には、ECU5は、ステップS4で検出した各停止地点候補に車両2が停止している場合に、当該車両2が後続車両に追突されるリスクを推定する。
【0062】
ここで、被追突リスクの推定について説明する。上述したように、被追突リスクは、車両2が後続車両に追突されるリスクに関する指標である。具体的には、ECU5は、被追突リスクとして「被追突リスク係数α」及び「見通しリスク係数β」を推定する。
【0063】
被追突リスク係数αとは、車両2が停止している位置に応じて変化する係数である。被追突リスク係数αは、例えば図7のグラフのように表現される。
【0064】
図2から図4に示された3つの停止地点SPにおける、車両2が後続車両に追突されるリスクは、互いに大きく異なる。第2パターン(図3参照)のように路肩83に設定された停止地点SPにおいて車両2が後続車両に追突される確率が、第1パターン(図2参照)のように道路8内のみに設定された停止地点SPにおける当該確率よりも小さいことは、経験的に明らかである。また、一般に、追越車線81を走行する車両2の速度は、走行車線82を走行する車両2の速度よりも大きい。したがって、道路8内においても、追越車線81において車両2が後続車両に追突される確率が、走行車線82における当該確率よりも大きくなることも経験的に明らかである。さらに、第3パターン(図4参照)のように非常駐車帯84に設定された停止地点SPにおいて車両2が後続車両に追突される確率が、路肩83における当該確率よりも小さいことも、経験的に明らかである。
【0065】
そこで、追越車線と非常駐車帯との間で、図7のグラフに示されるように変化する被追突リスク係数αの値が、記憶部69(図1参照)に予め記憶されている。ステップS8では、ECU5は、ステップS4で検出した各停止地点候補に対応する被追突リスク係数αの値を、記憶部69から読み込む。
【0066】
見通しリスク係数βとは、車両2が停止している位置に応じて変化する係数である。見通しリスク係数βは、例えば図8のグラフのように表現される。
【0067】
図8に示される「後続車両からの見通し距離」とは、停止している車両2を後続車両から視認できる状態における、後続車両から車両2までの距離の最大値をいう。「後続車両からの見通し距離」は、車両2が停止している地点により異なる。例えば、カーブ路や起伏がある道路で車両2が停止している場合や、道路周辺に壁や街路樹等の障害物が存在している場合は、当該車両2が停止している地点における「後続車両からの見通し距離」は比較的小さい。一方、直線道路や平坦な道路で車両2が停止している場合や、道路周辺の障害物が少ない場合は、当該車両2が停止している地点における「後続車両からの見通し距離」は比較的大きい。
【0068】
「後続車両からの見通し距離」の減少に伴い、追突回避のための後続車両の制動が困難になり、「見通しリスク係数β」は大きくなる。上述したように、ナビゲーション装置33は地図情報を記憶しているが、当該地図情報に含まれている道路の各地点における見通しリスク係数βは、予め見積もられ、記憶部69(図1参照)に記憶されている。ステップS8では、ECU5は、ステップS4で検出した各停止地点候補に対応する見通しリスク係数βの値を、記憶部69から読み込む。
【0069】
ステップS9で、ECU5は、被追突エネルギーEcを算出する。被追突エネルギーEcは、本発明に係る第2指標値の一例であり、被追突リスク(つまり、被追突リスク係数α及び見通しリスク係数β)に基づいて定められる。具体的には、被追突エネルギーEcは、次の式f3に基づいて定められる。ΔVは、停止している車両2に対する後続車両の相対速度である。式f3から理解されるように、ECU5は、相対速度ΔVが大きいほど、大きい被追突エネルギーEcを推定する。
【数3】
【0070】
ECU5は、法令で停止地点候補に定められている最高速度で後続車両が走行していると仮定し、停止している車両2(速度:0km/h)に対する後続車両の相対速度ΔVを算出する。つまり、法令で停止地点候補に定められている最高速度が100km/hである場合、当該相対速度ΔVも100km/hである。
【0071】
ステップS10で、ECU5は、身体異常エネルギーΔEt*Δtを算出する。身体異常エネルギーΔEt*Δtは、本発明に係る第3指標値の一例であり、単位時間当たり身体異常エネルギーΔEt(以下、単に「ΔEt」ともいう。)と、停止地点候補までの所要時間Δtと、の積である。ECU5は、図9に示される表に基づいて、ステップS3で推定した疾患に対応する値を、ΔEtとして設定する。
【0072】
図9に示される表に関するデータは、記憶部69(図1参照)に予め記憶されている。ΔEta(a=1,3,5,8,10)の値は、互いに異なっている。添字aの値が大きいほど、ΔEtaの値も大きい。ΔEtaの値は、疾患の緊急性の程度に対応している。緊急性が比較的高く、可及的速やかな救助が必要とされる疾患に対しては、比較的大きな値が設定されている。一方、緊急性が比較的低い疾患に対しては、比較的小さい値が設定されている。
【0073】
ステップS11で、ECU5は、運転者負担エネルギーEdを算出する。運転者負担エネルギーEdは、本発明に係る総指標値の一例であり、重み付け係数W1,W2,W3を用いて重み付けした、横移動エネルギーEyと、被追突エネルギーEcと、身体異常エネルギーΔEt*Δtとの総和である。具体的には、運転者負担エネルギーEdは、次の式f4に基づいて定められる。
【数4】
【0074】
このうち、重み付け係数W2,W3は、一定値に設定されている。当該一定値は、他のエネルギーとのバランスを考慮して予め設定されている。これに対し、重み付け係数W1は、運転者の身体の状態に基づいて設定される。詳細には、ECU5は、図10に示される表に基づいて、ステップS1で検出した運転者の身体の状態に対応する値を重み付け係数W1として設定し、運転者負担エネルギーEdを算出する。
【0075】
図10に示される表に関するデータは、記憶部69(図1参照)に予め記憶されている。重み付け係数W1の値は、運転者の姿勢の維持しやすさに対応している。例えば、運転者の意識が有り、運転者の眼が開状態であり、運転者の視線が車両2の進行方向と一致しており、運転者の重心位置が適切である場合、運転者の姿勢は維持しやすい状態にあるため、比較的小さい「0.1」が重み付け係数W1として設定される。一方、運転者の意識が無く、運転者の重心位置が適切ではない場合、運転者の姿勢は大きく崩れやすい状態にあるため、比較的大きい「1.0」が重み付け係数W1として設定される。
【0076】
ステップS12で、ECU5は、停止地点を設定する。詳細には、ECU5は、ステップS4で検出した停止地点候補のうち、ステップS11で算出した運転者負担エネルギーEdが最も小さい停止地点候補を、停止地点として設定する。
【0077】
ステップS13で、ECU5は、停止地点までの車両2の走行と停止を制御する。詳細には、ECU5は、車両2のエンジン41、ブレーキ42及び電動パワーステアリング43(図1参照)に制御信号を送信し、停止地点まで車両2を走行させるとともに、停止地点に停止させる。この間、運転者によるアクセルペダルの操作は無効とされる。一方、運転者によるブレーキペダルの操作は有効とされる。これは、意識が朦朧とする中でも、障害物への衝突を回避しようとして、運転者が車両2を停止させようとする可能性があるためである。車両2の走行中、アンチロックブレーキングシステムや横滑り防止システム等、車両2の挙動を安定させるシステムが作動していてもよい。
【0078】
[実施形態が奏する作用効果]
上記実施形態の構成によれば、複数の停止地点候補のうち、総指標値である運転者負担エネルギーEdが最も小さい停止地点候補を、停止地点として設定する。これにより、車両2が停止地点まで走行する間の、横加速度が運転者に与える負担と、被追突リスクが運転者に与える負担と、運転者の身体の異常が運転者に与える負担と、を総合的に評価し、各負担のバランスが取れた停止地点を設定することが可能になる。
【0079】
停止地点設定部67は、車両2がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を積分することにより、横移動エネルギーEy(第1指標値)を算出する。
この構成によれば、車両2がそれぞれの停止地点候補まで走行する間に発生する横加速度を積分することにより、継続的に発生する比較的小さい横加速度も、運転者の負担として評価することができる。この結果、より詳細に横移動エネルギーEyを定め、停止地点を設定することが可能になる。
【0080】
異常検出部51は、運転者の意識の有無を検出する。停止地点設定部67は、運転者の意識が無い場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の意識が有る場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくする。
この構成によれば、運転者の意識が無い場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の意識が有る場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくすることにより、横移動エネルギーEyが比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の意識が無い場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0081】
異常検出部51は、運転者の眼の開閉状態を検出する。停止地点設定部67は、運転者の眼が閉状態である場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の眼が開状態である場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくする。
この構成によれば、運転者の眼が閉状態である場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の眼が開状態である場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくすることにより、横移動エネルギーEyが比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の眼が閉状態である場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0082】
運転者の視線の方向を検出するとともに、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致するか否かを判定し、停止地点設定部67は、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致しない場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致する場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくする。
「運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致する」とは、運転者の視線の方向が、車両2の進行方向を含む所定の範囲に属していることをいう。つまり、「運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致する」とは、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と概ね一致していることをいい、両者が完全に一致していることを要しない。
この構成によれば、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致しない場合の横移動エネルギーEyの重み付けを、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致する場合の横移動エネルギーEyの重み付けよりも大きくすることにより、横移動エネルギーEyが比較的小さい停止地点を設定することができる。この結果、運転者の視線の方向が車両2の進行方向と一致しない場合でも、運転者の姿勢が大きく崩れることを抑制できる。
【0083】
リスク推定部59は、複数の停止地点候補における後続車両からの見通し距離が小さいほど、大きい被追突リスク(見通しリスク係数β)を推定する。
この構成によれば、後続車両からの見通し距離が小さく、追突回避のための後続車両の制動が困難な停止地点候補ほど、大きい被追突リスクが推定され、大きい被追突エネルギーEcが算出される。この結果、車両2をより安全に停止させることが可能な停止地点を設定できる。
【0084】
停止地点設定部67は、複数の停止地点候補における車両2に対する後続車両の相対速度ΔVが大きいほど、大きい被追突エネルギーEc(第2指標値)を算出する。
この構成によれば、車両2に対する後続車両の相対速度ΔVが大きく、追突回避のための後続車両の制動が困難な停止地点候補ほど、大きい被追突エネルギーEcが算出される。この結果、車両2をより安全に停止させることが可能な停止地点を設定できる。
【0085】
リスク推定部59は、法令で複数の停止地点候補に定められた最高速度に基づいて相対速度ΔVを推定する。
この構成によれば、車両2に対する後続車両の相対速度ΔVを容易に推定することができる。
【0086】
装置1は、身体の複数の異常のそれぞれに対応する値を予め記憶している記憶部69を備える。停止地点設定部67は、異常検出部51が検出した異常に対応する値であるΔEtを記憶部69から読みこみ、このΔEtに、それぞれの停止地点候補までの所要時間Δtを乗じることにより身体異常エネルギーΔEt*Δt(第3指標値)を算出する。
この構成によれば、身体異常エネルギーΔEt*Δtは、異常検出部51が検出した運転者の身体の異常と、停止地点候補までの所要時間Δtと、に基づいて算出される。このため、例えば、緊急性が比較的高い異常には比較的大きいΔEtを設定することにより、身体異常エネルギーΔEt*Δtも大きくなる。この結果、運転者の身体の異常が、緊急性が比較的高いものである場合に、車両2を迅速に停止させて救助活動を開始することが可能になる。また、緊急性が比較的低い異常には比較的小さいΔEtを設定することにより、より多くの停止地点候補の中から停止地点を設定することが可能になる。
さらに、身体の複数の異常のそれぞれに対応するΔEtは予め記憶部69に記憶されているため、外乱等により、身体の複数の異常に対して不適切に小さい又は大きいΔEtに基づいて身体異常エネルギーΔEt*Δtを算出してしまうことを抑制できる。この結果、運転者の身体の異常に基づいて停止地点を設定することが可能になる。
【0087】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0088】
上記実施形態では、ECU5の異常検出部51は、車内カメラ32が取得した画像データに基づいて運転者の身体の異常を検出する。しかしながら、本発明はこの形態に限定されない。例えば、運転者の体温や脈波を検出する赤外線センサや、運転者の姿勢に応じた重心位置や脈波を検出するシートセンサ等を備えた車両に本発明に係る停車支援装置が搭載される場合、本発明に係る異常検出部は、各センサの検出情報に基づいて運転者の身体の異常を検出してもよい。
【0089】
上記実施形態では、ECU5の所要時間推定部57が、各停止地点候補までの経路を探索し、各経路を走行する場合の車両2の速度パターンを決定する。しかしながら、本発明はこの形態に限定されない。例えば、本発明に係る所要時間推定部は、当該経路の探索及び当該速度パターンの決定をナビゲーション装置に指示するとともに、ナビゲーション装置から提供される情報に基づいて、所要時間を推定してもよい。
【0090】
上記実施形態では、停止地点候補における後続車両からの見通し距離の減少に伴い、被追突リスクの1つである見通しリスク係数βが連続的に増加する。しかしながら、本発明はこの形態に限定されない。例えば、本発明に係る被追突リスクは、当該見通し距離の減少に伴って段階的に増加するように設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 停車支援装置(装置)
2 車両
51 異常検出部
55 候補検出部
59 リスク推定部
65 加速度推定部
67 停止地点設定部
68 車両制御部
69 記憶部
SP 停止地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10