【課題】一般的に解像度と靱性にはトレードオフの関係があり、両立することは難しかった。また、電子部品の電気性能向上の観点から優れた誘電特性(例えば、低誘電正接)も求められる。
【解決手段】カルボキシル基を有する繰り返し単位、及びフッ素を含む繰り返し単位を備えるポリイミド樹脂を提供する。カルボキシル基を有する繰り返し単位は、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の40モル%以上65モル%以下である。フッ素を含む繰り返し単位は、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の35モル%以上60モル%以下である。
プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノール、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンおよび乳酸エチルからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を含む、
請求項8から12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
銅、アルミ、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、シリコン、窒化シリコン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリファニレンスルフィド、およびポリ塩化ビニリデンからなる群より選択される1種又は2種以上の材料を含む基板、及び、
前記基板上にパターン形成された請求項16に記載の硬化物、
を備えるプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。ただし、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施形態において、操作及び測定等の条件は、室温かつ相対湿度40%RH以上60%RH以下でよい。室温は、例えば、20〜25℃であってよい。
【0008】
[1]ポリイミド樹脂
本実施形態に係るポリイミド樹脂について説明する。
【0009】
本実施形態において、ポリイミド樹脂は、イミド構造を繰り返し単位に含むポリマーである。繰り返し単位の1つとして、イミド構造及びカルボキシル基を含む繰り返し単位がある。繰り返し単位の1つとして、イミド構造及びフッ素を含む繰り返し単位がある。イミド構造としては、芳香族イミド構造及び脂肪族ポリイミド構造が挙げられる。
【0010】
本実施形態に係るポリイミド樹脂は、下記(i)及び(ii)の繰り返し単位を備える。なお、下記(i)及び(ii)に示される「モル%」は、ポリイミド樹脂の繰り返し単位全体に対する割合である。
(i)40モル%以上65モル%以下のカルボキシル基を有する繰り返し単位
(ii)35モル%以上60モル%以下のフッ素を含む繰り返し単位
【0011】
カルボキシル基を有する繰り返し単位とは、ポリイミド樹脂に含まれる繰り返し単位のうち、−COOHを含むものを言う。−COOHは、ポリマー分子鎖に直接結合してもよい。また−COOHは、所定の置換基、例えば、アルキレン、アリーレン等を介してポリマー分子鎖に間接的に結合してもよい。本実施形態において、カルボキシル基を有する繰り返し単位は、所定の範囲とする。具体的には、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の40モル%以上65モル%以下とする。カルボキシル基を有する繰り返し単位が40モル%未満の場合、ポリイミド樹脂のアルカリ溶液可溶性が低くなる。このため、アルカリ溶液を用いたポリイミド樹脂の現像が困難になることがある。一方、カルボキシル基を有する繰り返し単位が65モル%超の場合、ポリイミド樹脂の誘電損失が大きくなり得る。さらに好ましくは、カルボキシル基を有する繰り返し単位は、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の50モル%以上60モル%以下である。
【0012】
フッ素を含む繰り返し単位とは、ポリイミド樹脂に含まれる繰り返し単位のうち、フッ素を含むものを言う。フッ素を含む繰り返し単位は、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の35モル%以上60モル%以下である。フッ素を含む繰り返し単位が35モル%未満の場合、ポリイミド樹脂の誘電損失が大きくなることがある。一方、フッ素を含む繰り返し単位が60モル%超の場合、カルボキシル基を有する繰り返し単位が相対的に少なくなる。このため、アルカリ溶液を用いたポリイミド樹脂の現像が困難になることがある。さらに好ましくは、フッ素を含む繰り返し単位は、ポリイミド樹脂の全繰り返し単位の40モル%以上50モル%以下である。
【0013】
なお、それぞれの繰り返し単位の含有量は、化学分析により算出できる。例えば、ポリイミド樹脂の組成/構造を、
1H−NMR、IR等で分析してよい。
【0014】
一例として、カルボキシル基を含む繰り返し単位は、下記化学式1で表される構造である。
[化学式1]
【化1】
化学式1において、R
1は、下記(A)または(B)で表される置換基である。
(A)炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基
(B)炭素数1〜20の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基もしくはアリーレン基
なお、(B)の置換基は、エーテル結合もしくはエステル結合を含んでいる。
化学式1において、R
2は、直接結合、又は、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基である。
化学式1において、nは、1から4までの整数である。
【0015】
一例として、フッ素を含む繰り返し単位は、下記化学式2で表される構造である。
[化学式2]
【化2】
化学式2において、R
3は、下記(A)または(B)で表される置換基である。
(A)炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基
(B)炭素数1〜20の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基もしくはアリーレン基
なお、(B)の置換基は、エーテル結合もしくはエステル結合を含んでいる。また化学式1のR
1および化学式2のR
3は、同一または異なってもよい置換基である。
化学式2において、R
4は、直接結合、又は、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキレン基である。R
4で表されるアルキレン基は、一部または全部の水素がフッ素に置換されていてもよい。好ましくは、アルキレン基に含まれる水素の全てがフッ素に置換される。
化学式2において、mは、1から4までの整数である。mが2以上の場合、2以上あるR
4は、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0016】
化学式1及び/又は化学式2におけるアルキレン基の例として、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロへキシレン基、ジメチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、1−エチルシクロペンチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、ビシクロデシレン基、ノルボルニレン基、シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。
【0017】
化学式1及び/又は化学式2におけるアリーレン基の例として、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基、アントラニレン基等が挙げられる。
【0018】
R
1及び/又はR
3が(B)の置換基である場合、アルキレン基またはアリーレン基の例としては、下記式で表される基が挙げられる。下記式中、Ph'はフェニレン基を表す。
−OCH
2CH
2O−
−OCH
2−CH(CH
3)O−
−OCH
2CH
2CH
2O−
−O−Ph'−O−
−CO−O−CH
2CH
2−O−CO−
−CO−O−CH
2−CH(CH
3)−CO−O−
−CO−OCH
2CH
2CH
2O−CO−
−CO−O−Ph'−O−CO−
【0019】
好ましくは、化学式1において、(R
2−COOH)基は、所定の位置に配置される。具体的には、2個のベンゼン環を結合する炭素を中心として、略点対称の位置に配置される。点対称の位置に配置されるとは、偶数個の同一の置換基が対称点から正反対の等しい距離で置換されることを言う。また略点対称に配置されるとは、化合物の物理的な構造において点対称に配置されていること、または、平面表記あるいは立体表記された化学式上点対称であることを意味する。化学式1において、(R
2−COOH)基が配置できる位置は、下記化学式1aにて示される。具体的には、下記化学式1a中の、R
a1、R
b1、R
c1、R
d1、R
a2、R
b2、R
c2及び/又はR
d2である。
[化学式1a]
【化3】
【0020】
化学式1aにおいて、2個のベンゼン環を連結するメチレン基の炭素は、「2個のベンゼン環を結合する炭素」である。化学式1a中のR
a1及びR
a2は、2個のベンゼン環を結合する炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。また、R
b1及びR
b2も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。R
c1及びR
c2も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。R
d1及びR
d2も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。
【0021】
(R
2−COOH)基は、カルボニル基を含む置換基である。カルボニル基は電子吸引性の置換基である。また、電子吸引性基は、負の極性を発生させる。このため、(R
2−COOH)基は、負の極性置換基である。ここで、偶数個の(R
2−COOH)基を2個のベンゼン環を結合する炭素を中心として点対称に配置させる。すると、各(R
2−COOH)基が有する負の極性が打ち消し合う。極性が打ち消し合うことにより、化学式1の繰り返し単位において分子内分極が抑制される。従って、分子内分極の発生によって生じる誘電損失を抑制することができる。
【0022】
好ましくは、化学式2において、(R
4−CF
3)基は、所定の位置に配置される。具体的には、2個のベンゼン環の中間点を中心として、略点対称の位置に配置される。化学式2において、(R
4−CF
3)基が配置できる位置は、下記化学式2aにて示される。具体的には、下記化学式2a中の、R
a3、R
b3、R
c3、R
d3、R
a4、R
b4、R
c4及び/又はR
d4である。
[化学式2a]
【化4】
化学式2aにおいて、2個のベンゼン環を連結する直接結合の中間点は、「2個のベンゼン環の中間点」である。ここで、R
a3及びR
a4は、2個のベンゼン環の中間点から正反対の等しい距離の位置関係にある。また、R
b3及びR
b4も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。R
c3及びR
c4も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。並びにR
d3及びR
d4も、当該炭素から正反対の等しい距離の位置関係にある。
【0023】
(R
4−CF
3)基は、フッ素を含む置換基である。フッ素は、電気陰性度が大きい元素である。このため、(R
4−CF
3)基は、負の極性を発生させる置換基(負の極性置換基)である。ここで、偶数個の(R
4−CF
3)基を2個のベンゼン環を結合する炭素を中心として点対称に配置させる。すると、(R
2−COOH)基と同様に極性の打ち消し合いが起こる。このため、化学式2の繰り返し単位において分子内分極が抑制される。従って、分子内分極の発生によって生じる誘電損失を抑制することができる。
【0024】
また(R
2−COOH)基及び(R
4−CF
3)基をいずれも対称点に対して点対称の位置に置換する。すると、ポリマー分子全体の分極がより抑制されるので、特に好ましい。
【0025】
好ましくは、カルボキシル基を含む繰り返し単位は、下記化学式3に含まれるいずれかの構造から選択される。
[化学式3]
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0026】
化学式3において、R
1は、化学式1のR
1と同じ置換基である。
【0027】
好ましくは、フッ素を含む繰り返し単位は、下記化学式4に含まれるいずれかの構造から選択される。
[化学式4]
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0028】
化学式4において、R
3は、化学式2のR
3と同じ置換基である。
【0029】
ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体であってもよい。ランダム重合体の場合、カルボキシル基を含む繰り返し単位と、フッ素を含む繰り返し単位とがランダムに現れる。またポリイミド樹脂は、ブロック共重合体であってもよい。ブロック共重合体の場合、カルボキシル基を含む繰り返し単位、又はフッ素を含む繰り返し単位が一定量連続する。
【0030】
また、ポリイミド樹脂は、カルボキシル基もフッ素も含まない繰り返し単位を含んでもよい。以下の説明において、カルボキシル基もフッ素も含まない繰り返し単位を他の繰り返し単位と言うことがある。
【0031】
ポリイミド樹脂の重合度は、特に制限されない。
【0032】
ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。例えば、機械的特性確保の観点から、50,000以上であることが好ましい。重量平均分子量は、500,000以上であることがより好ましい。また、ポリイミド樹脂の重量平均分子量の上限は、特に制限されない。例えば、2000,000以下であることが好ましい。
【0033】
ポリイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以上30.0以下である。
【0034】
ポリイミド樹脂の重量平均分子量および分子量分布は、たとえば、モノマーの種類や組成、合成時の条件等を変化させることによって制御できる。なお、重量平均分子量および分子量分布は、ポリスチレン換算値である。ポリスチレン換算値は、ゲル浸透クロマトグラフィー法により得られる。より具体的には、重量平均分子量および分子量分布は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
本実施形態のポリイミド樹脂は、2種類の繰り返し単位を有する。具体的には、40モル%以上65モル%以下のカルボキシル基を有する繰り返し単位を有する。また、35モル%以上60モル%以下のフッ素を含む繰り返し単位も有する。これら2種類の繰り返し単位を有することにより、以下の効果を奏する。本実施形態のポリイミド樹脂はポジ型フォトレジストに含まれる。このポリイミド樹脂を含むポジ型フォトレジストは、パターン現像性に優れ、解像度が高い。またこのフォトレジストは、誘電正接が低い。さらに、このフォトレジストは、解像度、金属密着性及び信頼性も優れている。
【0036】
[2]ポリイミド樹脂の製造方法
ポリイミド樹脂の製造方法は特に制限されない。たとえば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物と、を反応(例えば重縮合)させて得てもよい。ジアミン化合物としては、カルボキシル基を含有するジアミンと、フッ素を含有するジアミンと、がある。
【0037】
なお、ジアミンとして、カルボキシル基もフッ素も含有しないジアミン化合物を用いてもよい。以下、これら化合物をモノマーということがある。テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との反応により、ポリイミド前駆体が得られる。その後、得られたポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂を合成してよい。この方法を方法Aとする。また、テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミン化合物とを、直接反応させて、ポリイミド樹脂を合成してもよい。この方法を方法Bとする。
【0038】
テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式5で表される化合物であってよい。
[化学式5]
【化17】
ここでR
5は、アルキレン基、又は、アリーレン基である。アルキレン基は、フッ素原子、エーテル結合もしくはエステル結合を含んでもよい。アルキレン基は、炭素数1以上10以下であってよい。アルキレン基は、直鎖状、分枝状、もしくは環状であってよい。アリーレン基は、エーテル結合もしくはエステル結合を含んでもよい。アリーレン基は、炭素数6以上20以下であってよい。R
5の例として、化学式1及び化学式2で説明したR
1及びR
3と同様の置換基が挙げられる。
【0039】
また、化学式5の化合物を用いると、ポリイミド樹脂の円偏光二色性スペクトル(CD)、耐久性及び平面配向性が向上するので好ましい。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、たとえば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3'−オキシジフタル酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、5,5'−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)、ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてよい。これに代えて、これらを2種以上混合しても用いることができる。
【0041】
これらテトラカルボン酸二無水物の中でも、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステルが好ましい。
【0042】
カルボキシル基を含有するジアミン化合物は、下記化学式6で表される化合物であってよい。
[化学式6]
【化18】
ここでR
2は、化学式1中のR
2と同じ置換基である。nは、化学式1中のnと同じである。
【0043】
カルボキシル基を含有するジアミン化合物の例としては、たとえば、メチレンビスアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4'−(3,3'−ジカルボキシ)ジアミノビフェニル、3,3'−ジカルボキシ−4,4'−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。これらカルボキシル基を含有するジアミン化合物を、単独で用いてよい。これに代えて、これらを2種以上混合しても用いることができる。
【0044】
これらカルボキシル基を含有するジアミン化合物の中でも、メチレンビスアミノ安息香酸が好ましい。
【0045】
フッ素を含有するジアミン化合物は、下記化学式7で表される化合物であってよい。
[化学式7]
【化19】
ここでR
4は、化学式2のR
4と同じ置換基である。mは、化学式2中のmと同じである。
【0046】
フッ素を含有するジアミン化合物の例としては、たとえば、ビス(パーフルオロアルキル)ベンチジンが挙げられる。これらフッ素を含有するジアミン化合物の中でも、2,2−ビス(パーフルオロアルキル)ベンチジンが好ましく、2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、2,2−ビス(トリフルオロエチル)ベンチジンがより好ましい。これらフッ素を含有するジアミン化合物を、単独で用いてよい。これに代えて、これらを2種以上混合しても用いることができる。
【0047】
ポリイミド樹脂は、他の繰り返し単位を任意で有していてもよい。他の繰り返し単位は、耐熱性及び/又は耐薬品性の向上、及び、現像性能の調節等の目的で含まれる。他の繰り返し単位は、カルボキシル基およびフッ素を含有しない他のジアミン化合物から形成され得る。このような他のジアミン化合物としては、例えば、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2'−ジ(p−アミノフェニル)−6,6'−ビスベンゾオキサゾール、2−(4−アミノフェニル)−6−アミノベンゾオキサゾール、N−(4−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、N,N'−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、2,2'−ジメチルビフェニル−4,4'−ジアミン等が挙げられる。これら他のジアミン化合物は、単独で用いてもよい。これに代えて、これらを2種以上組み合わせてもよい。
【0048】
方法A(ポリイミド前駆体をイミド化する方法)において、ポリイミド前駆体の合成方法は特に制限されない。ポリイミド前駆体の合成方法として、たとえば、以下の方法を採用することができる。
【0049】
まず、カルボキシル基を含有するジアミン化合物、及び、フッ素を含有するジアミン化合物を溶媒に溶かす。必要に応じて、カルボキシル基およびフッ素を含有しない他のジアミン化合物を、更に溶媒に溶かしてよい。次に、この溶液を攪拌する。次に、この溶液に、用いたジアミン化合物と実質的に当量の、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加する。攪拌を継続しながら、反応させることにより、ポリイミド前駆体の溶液を得ることができる。このときのモノマー濃度は特に制限されない。モノマー濃度は、好ましくは5質量%以上50質量%以下である。モノマー濃度は、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
【0050】
ポリイミド前駆体の合成に用いる溶媒は、モノマーおよびポリイミド前駆体を十分溶解するものであればよい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の含硫黄系溶媒;クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール系溶媒;ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライム等のジグライム系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒;イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ピリジン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラメチル尿素等のその他の溶媒;等が挙げられる。しかし、これら溶媒に制限されるものではない。これらの溶媒は単独で用いてよい。これに代えて、これらを2種以上混合しても用いてもよい。
【0051】
反応温度は特に制限されない。例えば、反応温度は、−10℃以上80℃以下である。反応温度は、より好ましくは0℃以上40℃以下である。一例として、反応温度は、室温であってよい。また、反応時間も特に制限されない。例えば、反応時間は、0.5時間以上150時間以下である。反応時間は、より好ましくは3時間以上24時間以下である。
【0052】
得られたポリイミド前駆体の溶液から、ポリイミド前駆体を単離せずに、そのまま、溶液の濃度を調整してよい。その後、当該溶液を、次のイミド化反応に供することができる。また、ポリイミド前駆体の溶液を大量の水やメタノール等の貧溶媒に滴下してよい。これにより、ポリイミド前駆体を析出させることができる。これをろ過、洗浄、乾燥することにより、ポリイミド前駆体を単離することもできる。
【0053】
ポリイミド前駆体をイミド化する方法は特に制限されない。たとえば、公知の化学イミド化法や、熱イミド化法を採用することができる。なかでも、化学イミド化法が好適に用いられる。化学イミド化法は、過度な加熱工程を含まず、ポリイミド樹脂の分子量低下を抑制し得る。
【0054】
化学イミド化法では、まず、ポリイミド前駆体の溶液を攪拌する。次いで、この溶液に有機酸無水物と有機塩基とを滴下する。ポリイミド前駆体の溶液の溶媒としては、ポリイミド前駆体の合成用の溶媒と同様のものが挙げられる。有機酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。中でも、反応後の除去が容易であること、及び、費用の観点から、無水酢酸が好適に用いられる。有機酸無水物の使用量は特に制限されない。例えば、使用量として、ポリイミド前駆体の理論脱水量の1当量以上10当量以下が好ましい。2当量以上5当量以下がより好ましい。
【0055】
有機塩基としては、ピリジン、ピコリン等の複素環式化合物;トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の3級アミン;等が挙げられる。有機塩基の使用量は特に制限されない。例えば、使用量として、有機酸無水物に対して0.1当量以上2当量以下が好ましい。使用量として、0.2当量以上1.5当量以下がより好ましい。
【0056】
化学イミド化法の反応温度は特に制限されない。例えば、反応温度は、0℃以上130℃以下である。より好ましくは、反応温度は、20℃以上110℃以下である。反応時間も特に制限されない。例えば、反応時間は、0.5時間以上48時間以下である。より好ましくは、反応時間は、1時間以上24時間以下である。
【0057】
熱イミド化法においては、たとえば、ポリイミド前駆体の溶液は、脱水閉環反応が起きる温度に加熱される。加熱の方法は、最高温度まで一段階で昇温する方法、又は、多段階で昇温する方法のいずれかが採用される。
【0058】
ポリイミド前駆体の溶液の溶媒としては、ポリイミド前駆体の合成用の溶媒と同様のものを用いてよい。熱イミド化法において、反応温度は特に制限されない。例えば、反応温度は、130℃以上450℃以下である。より好ましくは、反応温度は、300℃以上400℃以下である。反応時間も特に制限されない。例えば、反応時間は、好ましくは0.1時間以上24時間以下である。より好ましくは、反応時間は0.5時間以上5時間以下である。
【0059】
反応は、真空中、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、あるいは、空気中で行うことができる。反応系内には、触媒としてγ−ピコリン等の有機塩基が添加されてよい。反応系内には、副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等が添加されてもよい。
【0060】
また、単離したポリイミド前駆体は、そのまま加熱されて熱イミド化されることもできる。反応温度は特に制限されない。例えば、反応温度は、200℃以上400℃以下である。より好ましくは、反応温度は、250℃以上300℃以下である。反応時間も特に制限されない。例えば、反応時間は、0.5時間以上48時間以下である。より好ましくは、反応時間は1時間以上24時間以下である。
【0061】
反応を、真空中、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、または空気中で行うことができる。着色を防ぐことができることから、反応を、真空中または不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0062】
方法Bによりポリイミドを合成する場合について説明する。方法Bは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから、直接、ポリイミドを合成する方法である。方法Bの反応条件は、例えば、方法Aにおけるポリイミド前駆体の合成方法の反応条件と異なっていてよい。
【0063】
反応に用いる溶媒として、ポリイミド前駆体の合成用の溶媒として示したものと同様のものが挙げられる。なかでも、アミド系溶媒やフェノール系溶媒が好ましい。反応温度は特に制限されない。例えば、反応温度は、130℃以上250℃以下であってよい。より好ましくは、反応温度は140℃以上200℃以下である。反応時間も特に制限されない。例えば、反応時間は、0.5時間以上48時間以下であってよい。より好ましくは、反応時間は、1時間以上24時間以下である。反応系内には、触媒としてγ−ピコリン等の有機塩基が添加されてよい。反応系内には、副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加してもよい。
【0064】
上記の方法A又は方法Bの反応により、ポリイミドを得てよい。得られたポリイミドの溶液を大量の貧溶媒中に滴下してよい。これにより、ポリイミドが析出される。さらに、析出したポリイミドを、ろ取、洗浄、乾燥等してよい。これにより、ポリイミドの粉末を得ることができる。
【0065】
貧溶媒としては、ポリイミドを溶解しない溶媒が用いられる。例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;これらの混合溶媒;等が好適に用いられる。これらの貧溶媒は、反応溶媒や化学イミド化剤との親和性が高い。また、これらの貧溶媒は、乾燥により効率よく除去される。
【0066】
上記製造方法に製造されたポリイミド樹脂は、上記[1]で説明した重合度を有する。また、このポリイミド樹脂は、上記[1]で説明した重量平均分子量(Mw)を有する。さらに、このポリイミド樹脂は、上記[1]で説明した分子量分布(Mw/Mn)を有する。
【0067】
上記製造方法にて製造されたポリイミド樹脂は、上記[1]の実施形態のポリイミド樹脂と同様の作用効果を奏する。
【0068】
[3]感光性樹脂組成物
本実施形態に係る感光性樹脂組成物について説明する。一例として、感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物である。本実施形態において、ポリイミド樹脂、及び、光酸発生剤を含む感光性樹脂組成物が提供される。
【0069】
[3.1]ポリイミド樹脂
ポリイミド樹脂は、上記[1]の実施形態に係るポリイミド樹脂である。
【0070】
[3.2]光酸発生剤
光酸発生剤としては、たとえば、キノンジアジド化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物などが挙げられる。中でも、溶剤溶解性、保存安定性、高感度等の観点から、キノンジアジド化合物が好ましい。光酸発生剤は、1種単独で用いてもよい。また光酸発生剤は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記オニウム塩としては、たとえば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。その中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、およびトリアルキルスルホニウム塩からなる群より選択されるオニウム塩が好ましい。
【0072】
上記ハロゲン含有化合物としては、たとえば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物等が挙げられる。高感度化の観点から、ハロゲン含有化合物として、トリクロロメチルトリアジンを用いることが好ましい。
【0073】
上記キノンジアジド化合物としては、ナフトキノンジアジド化合物(以下、「NQD化合物」とも称する)が好ましい。中でも、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物が好ましい。該1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物は、ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、および該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0074】
NQD化合物は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。合成する場合は、常用される方法に従ってよい。例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物を、クロルスルホン酸または塩化チオニルでスルホニルクロライドとする。得られたナフトキノンジアジドスルホニルクロライドと、ポリヒドロキシ化合物とを縮合反応させてよい。たとえば、ポリヒドロキシ化合物と、所定量の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリドまたは1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリドとを、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等の溶媒中において、トリエチルアミン等の塩基性触媒の存在下で反応させてエステル化を行う。これにより得られた生成物を、水洗、乾燥することによりNQD化合物を得ることができる。
【0075】
i線露光でのコントラスト確保の観点から、好ましい光酸発生剤は、下記化学式5〜11で表される化合物からなる群より選択される化合物である。
[化学式5]
【化20】
[化学式6]
【化21】
[化学式7]
【化22】
[化学式8]
【化23】
[化学式9]
【化24】
[化学式10]
【化25】
[化学式11]
【化26】
化学式5から化学式11において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、下記化学式12で表される基、または下記化学式13で表される基である、
[化学式12]
【化27】
[化学式13]
【化28】
【0076】
感光性樹脂組成物中の光酸発生剤の含有量は、ポリイミド樹脂100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。光酸発生剤の含有量は、2.5質量部以上7.5質量部以下であることがより好ましい。この範囲であれば、現像時のコントラストと良好な機械的特性を両立させることができる。
【0077】
[3.3]架橋剤
感光性樹脂組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。架橋剤は、ポリイミド樹脂を架橋する任意成分である。架橋剤としては、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を有する化合物、及び/又は、アリル化合物等であってよい。例えば、架橋剤として、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を有する芳香族化合物、又は、N位がメチロール基および/またはアルコキシメチル基で置換された化合物が挙げられる。化合物の中でも、N位がメチロール基および/またはアルコキシメチル基で置換された化合物が、架橋剤として好ましく使用できる。これにより、熱硬化後の耐薬品性を向上することができる。
【0078】
N位がメチロール基および/またはアルコキシメチル基で置換された化合物として、より具体的には、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、ヒドロキシエチレン尿素樹脂、尿素樹脂、グリコール尿素樹脂、アルコキシメチル化メラミン樹脂、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン樹脂、アルコキシメチル化グリコールウリル樹脂、アルコキシメチル化尿素樹脂を挙げることができる。
【0079】
アルコキシメチル化メラミン樹脂、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン樹脂、アルコキシメチル化グリコールウリル樹脂、およびアルコキシメチル化尿素樹脂は既知のメチロール化メラミン樹脂、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂、またはメチロール化尿素樹脂のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得ることができる。このアルコキシメチル基の種類については、たとえば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等を挙げることができる。
【0080】
N位がメチロール基および/またはアルコキシメチル基で置換された化合物の市販品の例としては、たとえば、サイメル(登録商標)300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(以上、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)、ニカラック(登録商標)MX−270、−279、−280、−290、ニカラックMS−11、ニカラックMW−30、−100、−300、−390、−750、DM−BIPC−F(株式会社三和ケミカル製)、EX−411、EX314(以上ナガセケムテック株式会社)、NC−3000−L、EOCN−1020(日本化薬株式会社製)、リカレジンHBE−100(新日本理化株式会社製)、EXA−850CRP(DIC株式会社製)、MeDAIC、DA−MGIC、MA−DGIC、CIC酸(以上、四国化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
また、架橋剤としてエポキシ樹脂を用いてよい。このようなエポキシ樹脂として、例えば、セロキサイド2021P(ダイセル製)、PB3600(ダイセル製)、PB4700(ダイセル製)、エピクロンHP−7200(DIC製)、HP−7200L(DIC製)、及び/又は、HP−7200H(DIC製)等を用いてよい。
【0082】
また、架橋剤としてエポキシ樹脂を用いた場合、感光性樹脂組成物は、更に熱酸発生剤または熱塩基発生剤を硬化促進剤として含んでよい。熱酸発生剤として、例えば、WPAG−370(和光純薬製)を用いてよい。また、熱塩基発生剤として、例えば、WPBG−300(和光純薬製)、WPBG−345(和光純薬製)、又は、NISSOCURE TIC−188(日本曹達製)等を用いてよい。このような組み合わせを用いることで、感光性樹脂組成物の特性を更に改善することができる。例えば上記エポキシ樹脂と熱酸発生剤又は熱塩基発生剤との組合せにより、硬化膜の靱性等の機械的特性を大幅改善できる。
【0083】
感光性樹脂組成物の製造時に、架橋剤はポリイミド樹脂を架橋している状態となる。ここで、架橋剤のうち少なくとも一部は、感光性樹脂組成物において未反応で遊離した状態で存在してもよい。感光性樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、ポリイミド樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下が好ましい。架橋剤の含有量は、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0084】
[3.4]界面活性剤
感光性樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含んでよい。これにより、組成物の塗布性や塗布膜の面内均一性、平滑性等を向上することができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
【0085】
例えば、非イオン性界面活性剤として、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。市販品の例としては、フロラード(登録商標)「FC−430」、「FC−431」、「FC−4430」(以上、住友スリーエム株式会社製)、サーフロン(登録商標)「S−141」、「S−145」、「KH−10」、「KH−20」、「KH−30」、「KH−40」(以上、AGCセイミケミカル株式会社製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−4031」、「DS−451」(以上、ダイキン工業株式会社製)、メガファック(登録商標)「F−8151」(以上、DIC株式会社製)、「X−70−092」、「X−70−093」(以上、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0086】
界面活性剤の添加量は、ポリイミド樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。界面活性剤の添加量は、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0087】
[3.5]その他の成分
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、感光特性に影響しない程度に、着色剤、フィラー、光増感剤、アルカリ溶解促進剤、密着助剤、消泡剤、レベリング剤等のその他の添加剤を任意で有してもよい。
【0088】
[4]感光性樹脂組成物の製造方法
感光性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されることなく、様々な方法を採用することができる。例えば、感光性樹脂組成物は、各構成成分を混合することで得ることができる。
【0089】
[4.1]調製方法
一例として、ポリイミド樹脂及び光酸発生剤、更に任意で架橋剤、熱塩基発生剤、界面活性剤、及び、その他添加剤の少なくとも1つを撹拌混合して、感光性樹脂組成物を得てよい(方法Cとする)。混合方法として様々な方法を用いることができる。例えば、紫外光を遮光した部屋で、室温又は一定温度(例えば20℃以上40℃以下)で、成分の混合物が均一になるまで十分に攪拌混合してよい。撹拌混合する際には、有機溶媒を併用してよい。攪拌混合後に、濾過を行ってもよい。なお、方法Cでは、界面活性剤を用いて分散性を向上させておくことが望ましい。
【0090】
方法Cにおいて最終的な混合の際には、種々の有機溶媒を用いてよい。例えば、有機溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート)、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0091】
中でも、溶解性の観点から、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノール、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンおよび乳酸エチルからなる群より選択されるのが好ましい。有機溶媒は、これら群より選択される1種であってもよい。また有機溶媒は、これら群より選択される2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0092】
有機溶媒の添加量は、特に制限されないが、各成分が均一に分散または溶解される量であればよい。また、添加量は、感光性樹脂組成物が各用途に適した液状またはペースト状を呈する量であればよい。通常、感光性樹脂組成物中の固形分(溶媒以外の全成分)の量が10質量%以上90質量%となることが好ましい。
【0093】
[4.2]硬化物の形成
感光性樹脂組成物を用いて、当該組成物の硬化物を製造することができる。例えば、下記(i)〜(ii)の工程により、膜状の硬化物を形成する。
(i)感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥し樹脂膜を形成する工程。
(ii)得られた樹脂膜を加熱処理する工程。
【0094】
一例として、下記の工程を含む方法により硬化膜を形成できる。
(a)感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を基板上に形成する工程、
(b)該感光性樹脂層を露光する工程、
(c)現像液により露光部を除去してパターンを得る工程、および
(d)該パターンを加熱する工程。
【0096】
(a)感光性樹脂層を基板上に形成する工程
この工程では、感光性樹脂組成物を、基板上に塗布する。例えば、スピンコーターを用いた回転塗布を行ってよい。またはダイコーターもしくはロールコーター等のコーターを用いてよい。その後、オーブンやホットプレートを用いて、乾燥して溶媒を除去する。乾燥は、好ましくは50℃以上140℃以下の温度で行う。これにより、感光性樹脂層を形成する。膜厚の均一な塗布膜を得るという観点から、スピンコーターを用いた回転塗布法が好ましい。
【0097】
基板としては、銅、アルミ、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、シリコン、窒化シリコン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリファニレンスルフィド、およびポリ塩化ビニリデンからなる群より選択される1種または2種以上の材料を含む基板が好ましい。基板は、単層構造でも2層以上の複層構造であってもよい。
【0098】
(b)該感光性樹脂層を露光する工程
次に、上記で得られた感光性樹脂層に対し、フォトマスクを介して、露光を行う。露光は、マスクアライナーやステッパーを用いて行ってよい。例えば、紫外線(i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)等)、X線、電子線等の活性エネルギー線を直接照射して露光を行ってよい。上記フォトマスクは、所望のパターンをくり貫いたものであってもよい。
【0099】
露光に用いられる活性エネルギー線の波長は、190nm以上500nm以下であることが好ましい。また、活性エネルギー線の照射量は100mJ/cm
2以上3,000mJ/cm
2以下が好ましい。
【0100】
さらに、露光後に加熱処理(露光後ベーク)を行ってもよい。露光後ベークを行うことにより、光酸発生剤から発生した酸による硬化反応を促進させることができる。露光後ベークの条件は、組成物の組成、各成分の含有量、感光性樹脂層の厚さ等によって異なる。たとえば、70℃以上150℃以下で1分以上60分以下程度加熱することが好ましい。
【0101】
(c)現像液により露光部を除去して、パターンを得る工程
次に、現像を、浸漬法、パドル法、回転スプレー法等の方法から選択して行うことができる。現像により、感光性樹脂層から、未硬化の組成物を溶出除去し、パターンを得ることができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類等の水溶液および必要に応じてメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒または界面活性剤を適当量添加した水溶液を使用することができる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。該テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の濃度は、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。
【0102】
現像後、パターンを純水等で水洗してもよい。
【0103】
(d)加熱する工程
続いて、得られたパターンを加熱することでキュアする。これにより、パターンを有する硬化膜を形成する。加熱することにより、組成物の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去できる。この結果、基板に対する密着力、耐熱性や強度等を向上させることができる。加熱装置としては、オーブン炉、ホットプレート、縦型炉、ベルトコンベアー炉、圧力オーブン等を使用することができる。加熱方法としては、熱風、赤外線、電磁誘導による加熱等を用いてもよい。加熱温度は好ましくは280℃以下である。加熱温度は、より好ましくは120℃以上280℃以下である。加熱温度は、さらに好ましくは160℃以上250℃以下である。加熱時間は好ましくは15分以上8時間以下である。加熱時間は、より好ましくは15分以上4時間以下である。また、加熱処理工程の雰囲気は大気中、または窒素等の不活性雰囲気中のいずれかを選択することができる。
【0104】
このようにして得られる硬化膜は、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物を含む。当該硬化物のガラス転移点は、200℃以上380℃以下であることが好ましい。これにより、ハンダリフロープロセス中の材料の形状安定性を確保し、常温での柔軟性を確保することができる。当該ガラス転移点は、ポリイミド樹脂の組成、感光性樹脂組成物の組成等により制御することができる。また、硬化物のガラス転移点は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0105】
また、硬化物は、膜厚5μm以上30μm以下のパターンが形成されることが好ましい。
【0106】
このようにして、銅、アルミ、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、シリコン、窒化シリコン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリファニレンスルフィド、およびポリ塩化ビニリデンからなる群より選択される1種又は2種以上の材料を含む基板と、当該基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物の硬化物と、を備える、プリント配線板を提供することができる。
【0107】
[5]感光性樹脂組成物の利用方法
感光性樹脂組成物は、様々な電子部品の製造に用いることができる。電子部品は、感光性樹脂組成物により形成されたパターンを利用できるものであればよい。電子部品として、例えば、半導体装置や多層配線基板、各種電子デバイス等が挙げられる。感光性樹脂組成物は、特にプリント配線基板の絶縁層形成用に用いられてよい。感光性樹脂組成物から得られた硬化物は、半導体装置等の電子部品の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等に使用することができる。
【0108】
電子部品は、上記以外にも特に制限されず、様々な構造、用途、及び、構造に用いることができる。例えば、MEMSに含まれるパターンやフレキシブル基板等に用いることもできる。
【0109】
これにより、本実施形態の感光性樹脂組成物によれば、フォトプロセスにおける高解像度を維持することができる。さらに、製品において構成材料間の線膨張係数の違いにより生じる反りに耐えることができる。また、本実施形態の感光性樹脂組成物により得られた硬化物は低誘電正接を有する。これにより、電子部品における層間絶縁材料の伝搬速度向上と伝送ロス低減を可能にし、電子部品の性能向上を図ることができる。
【0110】
[6]実施例
以下、本発明の実施形態を、実施例を用いて説明する。
【0111】
[6.1]ポリイミド樹脂の合成
[6.1.1]実施例1
還流冷却器を連結したコック付き水分定量受器、温度計、攪拌器を備えたセパラブルフラスコに、下記組成1を加えた。
[組成1]
1,3−ジヒドロ‐1、3−ジオキソ‐5‐イソベンゾフランカルボン‐1,4‐フェニレンエステル67.4g(50モル%)、
メチレンビスアミノ安息香酸16.8g(20モル%)、
2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン28.2g(30モル%)、
N−メチルピロリドン540g
【0112】
次に、反応溶液を室温下20時間反応させた。さらに、トルエン200gを反応溶液に加えた。次に、オイルバスを用いて内温が145℃になるまで反応溶液を加熱し、トルエン‐水の共沸脱水反応を5時間行った。このようにして得られたポリイミド反応溶液をメタノール溶剤に再沈殿、ろ過を行った。このようにして得た白色固体を、減圧下、60℃で10時間乾燥させた。これにより、110.5gの高分子化合物1を得た。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光株式会社製、LC−2000Plus)で、カラムは昭和電工社製、KF−603×1本、KF−606×1本で測定したところ、ポリスチレン換算において、重量平均分子量(Mw)675000、数平均分子量(Mn)39000、Mw/Mn=17であった。また、高分子化合物1の
1H−NMRの化学シフトは、1H NMR (300MHz, DMSO−d
6) δ4.30 (b, 0.80H, −CH
2−), 7.33−8.82 (m, 16H, Ph−H),であった。
【0113】
[6.1.2]実施例2
組成1において、メチレンビスアミノ安息香酸を27.3g(32.5モル%)とした。また組成1において、2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを16.5g(17.5モル%)とした。これらを除いては合成例1と同様に操作を行った。これにより、107.4gの高分子化合物2が得られた。分子量はポリスチレン換算において、重量平均分子量(Mw)1356000、数平均分子量(Mn)23000、Mw/Mn=59であった。また、高分子化合物2の
1H−NMRの化学シフトは1H NMR (300MHz, DMSO−d
6) δ4.30 (b, 1.30H, −CH
2−), 7.31−8.83 (m, 16H, Ph−H),であった。
【0114】
[6.1.3]比較例1
組成1において、メチレンビスアミノ安息香酸を14.7g(17.5モル%)とした。また組成1において、2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを30.6g(32.5モル%)とした。これらを除いては合成例1と同様に操作を行った。これにより、110.7gの高分子化合物3が得られた。分子量はポリスチレン換算において、重量平均分子量(Mw)650000、数平均分子量(Mn)39700、Mw/Mn=16であった。また、高分子化合物3の
1H−NMRの化学シフトは、1H NMR (300MHz, DMSO−d
6) δ4.30 (b, 0.70H, −CH
2−), 7.35−8.83 (m, 16H, Ph−H),であった。
【0115】
[6.1.4]比較例2
組成1において、メチレンビスアミノ安息香酸を29.4g(35モル%)とした。また組成1において、2,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを14.1g(15モル%)とした。これらを除いては合成例1と同様に操作を行った。これにより、109.9gの高分子化合物4が得られた。分子量はポリスチレン換算において、重量平均分子量(Mw)1425000、数平均分子量(Mn)22800、Mw/Mn=63であった。また、高分子化合物4の
1H−NMRの化学シフトは1H NMR (300MHz, DMSO−d
6) δ4.30 (b, 1.40H, −CH
2−), 7.30−8.84 (m, 16H, Ph−H),であった。
【0116】
[6.2]組成物の調製
[6.2.1]実施例3から6、比較例3及び4
上記で合成した高分子化合物1から高分子化合物4のいずれかを用いて感光性樹脂組成物を調製した。調製に使用した材料及び使用量を表1及び表2に示す。表1又は表2に記載された成分を、25℃で6時間攪拌混合した後、5μmの細孔径を有するろ過膜でろ過した。これにより、組成物1から6をそれぞれ得た。なお、組成物1から4は、それぞれ実施例3から6に対応する。また組成物5及び組成物6は、それぞれ比較例1、2に対応する。
【0119】
[6.3]画像形成
組成物1から6のいずれかを、基板の上に塗付した。このとき下記(A)又は(B)の基板を使用した。
(A)直径200mmの銅メッキ処理したウエハ(アドバンテック製、Φ200mmCu Blanket wafer)、
(B)ガラス繊維強化エポキシ板(日立化成製、MCL−E−700G)。
【0120】
次に、塗布膜上にポジ型フォトマスクのテストパターン(15μmのスルーホールおよびラインアンドスペースパターン)を置いた。次に、紫外線照射装置(ミカサ製、マスクアライナーM−1S型、超高圧水銀灯250W)を用いて、紫外光を画像が得られる露光量で塗布膜に照射した。各実施例における紫外線照射線量を下記表3及び4に示す。
【0121】
次に、現像液を使用して塗布膜を現像処理した。現像液は2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。また、現像処理は、以下の方法により行った。まず上記水溶液中に、紫外線を照射した後の塗布膜を浸漬した。塗布膜の浸漬時間を下記表3および4に示す。次に、塗布膜を純水で水洗し、ホットプレートで乾燥させた。次に、酸素濃度10ppm以下のイナートオーブンを用いて、200℃で1時間加熱処理を行った。加熱処理後の塗布膜の膜厚は約15μmであった。
【0124】
[6.4]基板密着性評価
上記[6.3]で作製した塗布膜について、基板に対する密着性を評価した。まず上記[6.3]と同様の操作により、1mm角のパターンを有する塗布膜を形成した基板を作製した。次に、この基板を高温高湿条件下で100時間放置した。なお、高温高湿条件下とは85℃85%RHの条件である。次に、SAICAS(ウィンテス製、DN)にて、1mm幅のBN刃を使用した切削剥離試験を実施した。BN刃を用いて塗布膜を基板から切削剥離するときに、BN刃には一定の力が掛かる。このときBN刃に掛かる力は、基板に対する塗布膜の剥離強度に相当する。またこの剥離強度は基板に対する塗布膜の密着力(kgf/cm)に相当する。この切削剥離試験による基板に対する密着性の評価試験の結果を表5および6に示す。
【0125】
[6.5]硬化膜の作製と靱性評価
上記[6.2]で得た組成物をPTFEフィルム上に塗布した。次に、塗布膜を80℃のホットプレート上で30分、130℃の空気環境のオーブンで5分乾燥させた。次に、酸素濃度10ppm以下のイナートオーブンで200℃1時間加熱処理を行って硬化膜を得た。次に、この硬化膜を5mm幅の短冊状に切断した。次に、切断した硬化膜について、引張試験を行った。引張実験は、万能試験機(Stable Micro System製、テクスチャアナライザーTA.TXplus)を用いて行った。また引張試験は、チャック幅20mm、及び速度0.1mm/秒の条件下で行った。また、破断点までの伸び及び応力ひずみ曲線の下部の面積を、硬化膜の靱性と定義した。各組成物から得られた硬化膜について、得られた伸び及び靱性を表5および6に示す。
【0126】
[6.6]誘電正接の測定
上記[6.5]と同様の方法により硬化膜を作製した。次に、得られた硬化膜を、幅5mm、長さ80mmの短冊状に切断した。次に、円筒形空洞共振器(AET社製)を使用して、切断した硬化膜について、JIS2565マイクロ波用フェライト磁心試験方法に準拠して誘電正接の測定を行った。なお測定時の周波数は10GHzとした。測定結果を表5および6に示す。
【0127】
[6.7]硬化膜の線膨張係数測定
上記[6.5]と同様の方法により硬化膜を作製した。次に、得られた硬化膜の線膨張係数の測定を行った。測定の際には、TMA(セイコーインスツル製、EXSTAR6000TMA/SS6100)を使用した。また昇温速度を10℃/分とした。また、常温から200℃2サイクルで2サイクル目の50℃以上100℃以下の領域のTMA曲線から線膨張係数を算出した。各硬化膜の測定から得た線膨張係数を表5および6に示す。
【0128】
[6.8]硬化膜のガラス転移点測定
上記[6.5]と同様の方法により硬化膜を作製した。次に、得られた硬化膜のガラス転移店の測定を行った。測定の際には、DMA(日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR DMA7100)を使用した。また昇温温度を5℃/分とした。また、23℃から400℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E')および損失弾性率(E'')を測定した。ここで、これらの比E''/E'は損失係数であり、tanδとも定義される。また、損失係数がピーク値をとる温度をガラス転移点と定義した。各硬化膜の測定から得たガラス転移点を表5および6に示す。
【0131】
表3及び4より、実施例3から6では、短い時間で現像ができたのに対して、比較例1では、長時間露光したにもかかわらず現像ができなかった。表5より、実施例3から6では、比較例4に対して誘電正接(誘電損失)の大きな改善が見られた。
【0132】
以上より、本実施形態のポリイミド樹脂は、ポジ型フォトレジストの材料として使用することができる。また本実施形態のポリイミド樹脂により、0.01以下という非常に低い誘電正接を実現することができる。また本実施形態のポリイミド樹脂を含むポリマー薄膜は、パターン現像性、金属密着性、及び信頼性に優れている。
【0133】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0134】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。