【解決手段】電気分解装置10を形成する陽極11は、オーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスを微粉砕したステンレスアロイ微粉体とNiを微粉砕したNiメタル微粉体とCuを微粉砕したCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極である。
前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記ステンレスアロイ微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Niメタル微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Cuメタル微粉体の重量比が、2〜6%の範囲にある請求項1に記載の電気分解装置。
前記ステンレスアロイ微粉体と前記Niメタル微粉体と前記Cuメタル微粉体との粒径が、10μm〜200μmの範囲にある請求項1ないし請求項5いずれかに記載の電気分解装置。
前記陽極及び前記陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記アロイ・メタル金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低い前記Cuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとして前記ステンレスアロイ微粉体と前記Niメタル微粉体とが接合されている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の電気分解装置。
前記オーステナイト系ステンレスが、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、前記ステンレスアロイ微粉体が、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである請求項1ないし請求項7いずれかに記載の電気分解装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の水素発生装置の触媒体は、金属の成形体の表面を陽極酸化して金属の酸化物を含む金属酸化物膜を形成する工程と、金属酸化物膜に脱水素触媒を担持させる工程とから作られる。金属酸化物膜に脱水素触媒を担持させる工程では、 ヘキサクロロ白金(IV)酸イオンを含む酸性の塩化白金水溶液を金属酸化物膜と接触させることによって金属酸化物膜にヘキサクロロ白金(IV)酸イオンを付着させるとともに、ヘキサクロロ白金(IV)酸イオンが付着している金属酸化物膜を焼成して金属酸化物膜に脱水素触媒として白金を担持させる。
【0005】
電気分解装置の電極として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の電気分解装置の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく触媒活性(触媒作用)を有する陽極及び陰極を備え、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる電気分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の電気分解装置の特徴は、陽極及び陰極と、陽極と陰極との間に位置してそれら極を接合する電極接合体膜とを備え、陽極及び陰極が、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスを微粉砕したステンレスアロイ微粉体とNiを微粉砕したNiメタル微粉体とCuを微粉砕したCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極であり、陽極及び陰極では、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定され、ポーラス構造の遷移金属薄板電極である陽極及び陰極に電気を通電し、陽極で酸化反応を起こすとともに陰極で還元反応を起こすことで所定の水溶液を化学分解することにある。
【0008】
本発明の電気分解装置の一例としては、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比が、2〜6%の範囲にある。
【0009】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にある。
【0010】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0011】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の密度が、5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある。
【0012】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との粒径が、10μm〜200μmの範囲にある。
【0013】
本発明の電気分解装置の他の一例として、陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とが接合されている。
【0014】
本発明の電気分解装置の他の一例としては、オーステナイト系ステンレスが、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体が、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電気分解装置によれば、それに使用される陽極及び陰極が所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、陽極及び陰極がオーステナイト系ステンレスから作られたステンレスアロイ微粉体とNiから作られたNiメタル微粉体とCuから作られたCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極であり、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されているから、陽極や陰極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、陽極や陰極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、陽極や陰極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。電気分解装置は、陽極及び陰極がオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、高価な白金族元素が使用されておらず、陽極及び陰極が非白金の電極であるから、電気分解装置を廉価に作ることができる。
【0016】
遷移金属微粉体混合物の全重量に対するSUS304アロイ微粉体の重量比が47〜49%の範囲にあり、遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比が47〜49%の範囲にあり、遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比が2〜6%の範囲にある電気分解装置は、遷移金属微粉体混合物の全重量に対するSUS304アロイ微粉体の重量比やNiメタル微粉体の重量比、Cuメタル微粉体の重量比を前記範囲にすることで、SUS304アロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、陽極及び陰極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、陽極や陰極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、陽極や陰極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0017】
陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にある電気分解装置は、陽極及び陰極の厚み寸法を前記範囲にすることで、陽極及び陰極の電気抵抗を小さくすることができ、陽極や陰極に電流をスムースに流すことができる。電気分解装置は、陽極及び陰極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を有するとともに、陽極及び陰極に電流がスムースに流れるから、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0018】
陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の空隙率が15%〜30%の範囲にある電気分解装置は、遷移金属薄板電極の空隙率を前記範囲にすることで、陽極及び陰極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、陽極及び陰極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を液体が通流しつつ液体を陽極や陰極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、陽極や陰極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0019】
陽極及び陰極であるポーラス構造の遷移金属薄板電極の密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある電気分解装置は、遷移金属薄板電極の密度を前記範囲にすることで、陽極及び陰極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、陽極及び陰極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を液体が通流しつつ液体を陽極や陰極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、陽極や陰極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0020】
ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との粒径が10μm〜200μmの範囲にある電気分解装置は、ステンレスアロイ微粉体やNiメタル微粉体、Cuメタル微粉体との粒径を前記範囲にすることで、陽極及び陰極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、陽極及び陰極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を液体が通流しつつ液体を陽極や陰極のそれら流路における接触面に広く接触させることが可能となり、陽極や陰極が白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、非白金の陽極及び陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0021】
所定面積の薄板状に圧縮した金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とが接合されている電気分解装置は、最も融点のCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とを接合することで、多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造であるにもかかわらず、陽極や陰極が高い強度を有してその形状を維持することができるから、陽極や陰極の触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極や陰極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0022】
オーステナイト系ステンレスがSUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体がSUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである電気分解装置は、それに使用される陽極及び陰極が所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたSUS304、SUS316、SUS340のうちの少なくとも1つとNiとCuとを原料とし、陽極及び陰極がSUS304アロイ微粉体、SUS316アロイ微粉体、SUS340アロイ微粉体のうちの少なくとも1つとNiメタル微粉体とCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極であり、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されているから、陽極や陰極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、陽極や陰極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、陽極や陰極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、非白金の燃料極及び空気極を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一例として示す電気分解装置10の側面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電気分解装置及び電気分解装置に使用する陽極及び陰極の製造方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、一例として示す陽極11及び陰極12の斜視図であり、
図3は、陽極11及び陰極12の一例として示す部分拡大正面図である。
図4は、陽極11及び陰極12の他の一例として示す部分拡大正面図である。
図2では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0025】
電気分解装置10(水素ガス発生装置)は、陽極11(アノード)と、陰極12(カソード)と、陽極11及び陰極12の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜13(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材14及び陰極給電部材15と、陽極用貯水槽16及び陰極用貯水槽17と、陽極主電極18及び陰極主電極19とから形成されている。
【0026】
電気分解装置10は、陽極11及び陰極12に電気を通電し、陽極11で酸化反応を起こすとともに陰極12で還元反応を起こすことで所定の水溶液を化学分解する。電気分解装置10では、陽極11及び陰極12、固体高分子電解質膜13が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体20 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体20を陽極給電部材14と陰極給電部材15とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜13は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0027】
陽極給電部材14は、陽極11の外側に位置して陽極11に密着し、陽極11に+の電流を給電する。陽極用貯水槽16は、陽極給電部材14の外側に位置して陽極給電部材14に密着している。陽極主電極18は、陽極用貯水槽16の外側に位置して陽極給電部材14に+の電流を給電する。陰極給電部材15は、陰極12の外側に位置して陰極12に密着し、陰極12に−の電流を給電する。陰極用貯水槽17は、陰極給電部材15の外側に位置して陰極給電部材15に密着している。陰極主電極19は、陰極用貯水槽17の外側に位置して陰極給電部材15に−の電流を給電する。
【0028】
電気分解装置10(水素ガス発生装置)に使用する陽極11及び陰極12は、前面21及び後面22を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。陽極11及び陰極12は、多数の微細な流路23(通路孔)を有するポーラス構造の遷移金属薄板電極24である。流路23(通路孔)には、水溶液(液体)が通流する。なお、陽極11や陰極12の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0029】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)は、所定の金属(遷移金属)の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス49(アロイ遷移金属)とNi50(ニッケル)(メタル遷移金属)とCu51(銅)(メタル遷移金属)とを原料としている。
【0030】
オーステナイト系ステンレス49には、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つが使用されている。オーステナイト系ステンレス49としては、SUS304を使用することが好ましいが、SUS316、SUS340、SUS304+SUS316、SUS304+SUS340、SUS304+SUS316+SUS340のいずれかを使用することもできる。SUS304の仕事関数は、4.7(eV)、SUS316の仕事関数は、4.85(eV)、SUS340の仕事関数は、4.76(eV)、Ni32の仕事関数は、5.22(eV)であり、Cu33の仕事関数は、5.10(eV)である。
【0031】
陽極11及び陰極12は、オーステナイト系ステンレス49を微粉砕したステンレスアロイ微粉体52(微粉状のオーステナイト系ステンレス)とNi50を微粉砕したNiメタル微粉体53(微粉状のNi)とCu51を微粉砕したCuメタル微粉体54(微粉状のCu)とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を所定面積の薄板状に圧縮してアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56とし、そのアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を焼成することから作られている(
図10参照)。
【0032】
ステンレスアロイ微粉体52には、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つが使用されている。ステンレスアロイ微粉体52としては、SUS304を微粉砕したSUS304アロイ微粉体(微粉状のSUS304)を使用することが好ましいが、SUS316を微粉砕したSUS316アロイ微粉体(微粉状のSUS316)、SUS340を微粉砕したSUS340アロイ微粉体(微粉状のSUS340)、SUS304アロイ微粉体+SUS316アロイ微粉体、SUS304アロイ微粉体+SUS340アロイ微粉体、SUS304アロイ微粉体+SUS316アロイ微粉体+SUS340アロイ微粉体のいずれかを使用することもできる。
【0033】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル金属微粉体混合物55の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体54が溶融し、溶融したCuメタル微粉体54をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とが接合されている。なお、オーステナイト系ステンレス49(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)の融点は、1400〜1450℃、Ni50の融点は、1455℃であり、Cu51の融点は、1084.5℃である。
【0034】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)では、ステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)の仕事関数とNiメタル微粉体53の仕事関数とCuメタル微粉体54の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比が決定され、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するNiメタル微粉体53の重量比が決定されているとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するCuメタル微粉体54の重量比が決定されている。
【0035】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比は、47〜49%の範囲、好ましくは、48%である。アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するNiメタル微粉体53の重量比は、47〜49%の範囲、好ましくは、48%である。アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するCuメタル微粉体54の重量比は、2〜6%の範囲、好ましくは、4%である。
【0036】
ステンレスアロイ微粉体52の重量比やNiメタル微粉体53の重量比、Cuメタル微粉体54の重量比が前記範囲外になると、それら微粉体52〜54の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を圧縮した後に焼成して作られた陽極11及び陰極12が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0037】
電気分解装置10は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比やNiメタル微粉体53の重量比、Cuメタル微粉体54の重量比を前記範囲にすることで、ステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とCuメタル微粉体54との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、陽極11及び陰極12が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、陽極11や陰極12が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、非白金の陽極11や陰極12を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0038】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)には、径が異なる多数の微細な流路23(通路孔)が形成されている。陽極11及び陰極12は、多数の微細な流路23(通路孔)が形成されているから、それらの比表面積が大きい。それら流路23(通路孔)は、前面21に開口する複数の通流口25と後面22に開口する複数の通流口25とを有し、陽極11や陰極12の前面21の通流口25と後面22の通流口25との間において前面21から後面22に向かって陽極11や陰極12を貫通している。
【0039】
それら流路23は、陽極11や陰極12の前面21と後面22との間において陽極11や陰極12の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、陽極11や陰極12の外周縁26から中心に向かって陽極11や陰極12の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路23は、径方向において部分的につながり、一方の流路23と他方の流路23とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路23は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路23と他方の流路23とが互いに連通している。
【0040】
それら流路23(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路23は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面21に開口する通流口25と後面22に開口する通流口25とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積がすべて相違している。それら流路23(通路孔)の開口径や前後面21,22に開口する通流口25の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0041】
電気分解装置10は、それに使用する陽極11及び陰極12に厚み方向や径方向へ不規則に曲折しながら延びる複数の流路23(通路孔)が形成されているから、陽極11や陰極12の比表面積が大きく、それら流路23(通路孔)を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11及び陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることができ、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0042】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)は、それらの厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。陽極11及び陰極12の厚み寸法L1が0.03mm未満では、それらの強度が低下し、衝撃が加えられたときに陽極11や陰極12が容易に破損又は損壊し、それらの形状を維持することができない場合がある。陽極11及び陰極12の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、陽極11や陰極12の電気抵抗が大きくなり、陽極11や陰極12に電流がスムースに流れず、電気分解装置10において効率よく電気分解を行うことができず、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができない。
【0043】
電気分解装置10は、陽極11及び陰極12の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にあるから、陽極11や陰極12が高い強度を有してその形状を維持することができ、陽極11や陰極12に衝撃が加えられたときの陽極11や陰極12の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、厚み寸法L1を前記範囲にすることで、陽極11及び陰極12の電気抵抗を小さくすることができ、陽極11や陰極12を電流がスムースに流れ、電気分解装置10において効率よく電気分解を行うことができ、電気分解装置10において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0044】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。陽極11及び陰極12の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、陽極11や陰極12に開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25が形成されず、陽極11及び陰極12の比表面積を大きくすることができず、陽極11及び陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路23(通路孔)や通流口25の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、陽極11及び陰極12の強度が低下し、衝撃が加えられたときに陽極11や陰極12が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。
【0045】
電気分解装置10は、それに使用する陽極11及び陰極12の空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、陽極11や陰極12が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成形され、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができ、それら流路23(通路孔)を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11及び陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることができるとともに、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0046】
電気分解装置10は、陽極11(遷移金属薄板電極24)及び陰極12(遷移金属薄板電極24)の空隙率や相対密度を前記範囲にすることで、陽極11及び陰極12が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成型され、陽極11及び陰極12の比表面積を大きくすることができ、それら流路23を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11や陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることが可能となり、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、非白金の陽極11や陰極12を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0047】
陽極11及び陰極12(ポーラス構造の遷移金属薄板電極24)は、その密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲、好ましくは、5.5g/cm
2〜6.5g/cm
2の範囲にある。陽極11及び陰極12の密度が5.0g/cm
2未満では、陽極11や陰極12の強度が低下し、衝撃が加えられたときに陽極11や陰極12が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合がある。陽極11及び陰極12の密度が7.0g/cm
2を超過すると、陽極11や陰極12に多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25が形成されず、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができず、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0048】
電気分解装置10は、陽極11(遷移金属薄板電極24)及び陰極12(遷移金属薄板電極24)の密度が前記範囲にあるから、陽極11や陰極12が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成形され、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができ、それら流路23(通路孔)を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11及び陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることができ、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0049】
電気分解装置10は、陽極11(遷移金属薄板電極24)及び陰極12(遷移金属薄板電極24)の密度を前記範囲にすることで、陽極11及び陰極12が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成型され、陽極11及び陰極12の比表面積を大きくすることができ、それら流路23を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11や陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることが可能となり、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、非白金の陽極11や陰極12を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0050】
ステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)の粒径やNiメタル微粉体53の粒径、Cuメタル微粉体54の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。ステンレスアロイ微粉体52やNiメタル微粉体53、Cuメタル微粉体54の粒径が10μm未満では、それら微粉体52〜53によって流路23(通路孔)や通流口25が塞がれ、陽極11や陰極12に多数の微細な流路23や多数の微細な通流口25を形成することができず、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができず、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0051】
ステンレスアロイ微粉体52やNiメタル微粉体53、Cuメタル微粉体54の粒径が200μmを超過すると、流路23(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面21,22の通流口25の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、陽極11及び陰極12に多数の微細な流路23や多数の微細な通流口25を形成することができず、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができず、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0052】
電気分解装置10は、陽極11及び陰極12を形成するステンレスアロイ微粉体52やNiメタル微粉体53、Cuメタル微粉体54の粒径が前記範囲にあるから、陽極11や陰極12が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成型され、陽極11や陰極12の比表面積を大きくすることができ、それら流路23を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11や陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることができるとともに、陽極11や陰極12の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0053】
図5は、電気分解装置10を使用した電気分解の一例を説明する図であり、
図6は、電気分解装置10を利用した水素ガス生成システム27の一例を示す図である。
図5に示す電気分解では、水(水溶液)を電気分解し、水素と酸素とを発生させているが、水(H
2O)の他に、電気分解装置10を使用してNaOH水溶液、H
2SO
4水溶液、NaCl水溶液、AgNO
3水溶液、CuSO
4水溶液の電気分解が行われる。
【0054】
電気分解装置10における水の電気分解では、
図5に矢印で示すように、陽極用貯水槽16及び陰極用貯水槽17に水(H
2O)が給水され、陽極主電極18に電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極19に電源から−の電流が給電される。陽極主電極18に給電された+の電流が陽極給電部材14から陽極11(アノード)に給電され、陰極主電極19に給電された−の電流が陰極給電部材15から陰極12(カソード)に給電される。
【0055】
陽極11(電極)では、2H
2O→4H
++4e
−+O
2の陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極12(電極)では、4H
++4e
−→2H
2の陰極反応(触媒作用)によって水素が生成される。プロトン(水素イオン:H
+)は、固体高分子電解質膜13内を通って陽極11から陰極12(電極)へ移動する。固体高分子電解質膜12には、陽極11で生成されたプロトンが通流する。
【0056】
電気分解装置10は、陽極11(電極)や陰極12(電極)の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス49(アロイ遷移金属)とNi50(メタル遷移金属)とCu51(メタル遷移金属)とを原料として陽極11及び陰極12が作られ、ステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)とNiメタル微粉体53とCuメタル微粉体54との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比とNiメタル微粉体53の重量比とCuメタル微粉体54の重量比とが決定されているから、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0057】
なお、NaOH水溶液の電気分解では、陽極11において4OH
−→2H
2O+O
2+4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12において2H
2O+2e
−→2OH
−+H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。H
2SO
4水溶液の電気分解では、陽極11において2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12において2H
++2e
−→H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。
【0058】
NaCl水溶液の電気分解では、陽極11において2Cl
−→Cl
2+2e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12において2H
2O+2e
−→2OH
−+H
2の陰極反応(触媒作用)が起こる。AgNO
3水溶液の電気分解では、陽極11において2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12においてAg
++e
−→Agの陰極反応(触媒作用)が起こる。CuSO
4水溶液の電気分解では、陽極11において2H
2O→O
2+4H
++4e
−の陽極反応(触媒作用)が起こり、陰極12においてCu
2++2e
−→Cuの陰極反応(触媒作用)が起こる。
【0059】
水素ガス生成システム27は、電気分解装置10と、電気分解装置10の陽極と陰極とに電気を給電する直流電源28と、水(純水)を貯水する貯水タンク29と、水(純水)を給水する給水ポンプ30と、酸素気液分離器31と、水(純水)を給水する2台の循環ポンプ32,33と、水素気液分離器34と、水素を貯めるボンベ35(水素タンク)とから形成されている。
【0060】
水素ガス生成システム27は、貯水タンク29に貯水された水(純水)が給水ポンプ30によって酸素気液分離器31に給水され、酸素気液分離器31から流出した水が電気分解装置10に給水される。直流電源28から電気分解装置10に電気が給電され、電気分解装置10において電気分解が行われることで水が水素と酸素とに分解される。酸素は、酸素気液分離器31に流入し、気液分離された後、大気に放出される。酸素気液分離器31において気液分離された水は循環ポンプ32によって再び電気分解装置10に給水される。水素は、水素気液分離器34に流入し、気液分離された後、ボンベ35(水素タンク)に流入する。水素気液分離器354おいて気液分離された水は循環ポンプ33によって再び電気分解装置10に給水される。
【0061】
電気分解装置10(水素ガス生成システム27)は、それに使用される陽極11及び陰極12が所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス49(SUS304、SUS316、SUS340のうちの少なくとも1つ)とNi50とCu51とを原料とし、陽極11及び陰極12がオーステナイト系ステンレス49から作られたステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)とNi50から作られたNiメタル微粉体53とCu51から作られたCuメタル微粉体54とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極24であり、ステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とCuメタル微粉体54との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比とNiメタル微粉体53の重量比とCuメタル微粉体54の重量比とが決定されているから、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、陽極11や陰極12が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、陽極11や陰極12が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、非白金の陽極11及び陰極12を使用して電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0062】
電気分解装置10は、陽極11及び陰極12の厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にあるから、陽極11及び陰極12の電気抵抗を小さくすることができ、陽極11や陰極12に電流をスムースに流すことができ、陽極11や陰極12を利用して電気分解を確実に行うことができる。
【0063】
電気分解装置10は、陽極11及び陰極12がオーステナイト系ステンレス49(SUS304、SUS316、SUS340のうちの少なくとも1つ)とNi50とCu51とを原料とし、陽極11及び陰極12がオーステナイト系ステンレス49から作られたステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)とNi50から作られたNiメタル微粉体53とCu51から作られたCuメタル微粉体54とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して作られているから、高価な白金族元素が使用されておらず、陽極11及び陰極12が非白金の電極であり、陽極11及び陰極12を使用した電気分解装置10を廉価に作ることができる。
【0064】
図7は、空気極38(陽極11)及び燃料極37(陰極12)を使用した固体高分子形燃料電池36の側面図であり、
図8は、陽極11(空気極38)及び陰極12(燃料極37)の起電圧試験の結果を示す図である。
図9は、陽極11(空気極38)及び陰極12(燃料極37)のI−V特性試験の結果を示す図である。
図7では、負荷48が接続された状態を示しているが、起電圧試験では、負荷48が存在せず、無負荷である。起電圧試験及びI−V特性試験では、
図7に示す固体高分子形燃料電池36に電気分解装置10において使用した陽極11(空気極38)及び陰極12(燃料極37)を使用し、無負荷においてその起電圧を測定し、固体高分子形燃料電池36に負荷48を接続し、そのI−V特性を測定した。
【0065】
固体高分子形燃料電池36は、
図7に示すように、燃料極37(陰極12)及び空気極38(陽極11)と、燃料極37及び空気極38の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜39(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、燃料極37の厚み方向外側に位置するセパレータ40(バイポーラプレート)と、空気極38の厚み方向外側に位置するセパレータ41(バイポーラプレート)とから形成されている。
【0066】
それらセパレータ40,41には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。燃料極37や空気極38、固体高分子電解質膜39が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体42(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体42をそれらセパレータ40,41が挟み込んでいる。固体高分子電解質膜39は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0067】
燃料極37とセパレータ40との間には、ガス拡散層43が形成され、空気極38とセパレータ41との間には、ガス拡散層44が形成されている。燃料極37とセパレータ40との間であってガス拡散層43の上部及び下部には、ガスシール45が設置されている。空気極38とセパレータ41との間であってガス拡散層44の上部及び下部には、ガスシール46が設置されている。
【0068】
固体高分子形燃料電池36では、燃料極37(陰極12)に水素(燃料)が供給され、空気極38(陽極11)に空気(酸素)が供給される。燃料極37では、水素がH
2→2H
++2e
−の反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H
+)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜39内を通って燃料極37から空気極38へ移動し、電子が導線47内を通って空気極38へ移動する。固体高分子電解質膜39には、燃料極37で生成されたプロトンが通流する。空気極38では、固体高分子電解質膜39から移動したプロトンと導線47を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H
++O
2+4e→2H
2Oの反応によって水が生成される。
【0069】
固体高分子形燃料電池36は、燃料極37(陰極12)や空気極38(陽極12)の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス31(アロイ遷移金属)とNi32(メタル遷移金属)とCu33(メタル遷移金属)とを原料として燃料極37(陰極12)及び空気極38(陽極12)が作られ、ステンレスアロイ微粉体34とNiメタル微粉体35とCuメタル微粉体36との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物37の全重量に対するステンレスアロイ微粉体34の重量比とNiメタル微粉体35の重量比とCuメタル微粉体36の重量比とが決定されているから、燃料極37(陰極12)や空気極38(陽極12)が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0070】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、電極(燃料極37や空気極38)と電極(燃料極37や空気極38)との間(電極間)の電圧(V)を測定した。
図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に電極(燃料極37や空気極38)と電極(燃料極37や空気極38)との間(電極間)の電圧(V)を表す。白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池では、
図7の起電圧試験の結果を示す図から分かるように、電極間の電圧が1.079(V)前後であった。それに対し、非白金の電極(燃料極37や空気極38)を使用した固体高分子形燃料電池36では、電極(燃料極37や空気極38)と電極(燃料極37や空気極38)との間(電極間)の電圧(起電力)が1.04(V)〜1.02(V)であった。
【0071】
I−V特性試験では、電極(燃料極37や空気極38)と電極(燃料極37や空気極38)との間(電極間)に負荷48を接続し、電圧と電流との関係を測定した。
図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。燃料極37(非白金電極)及び空気極38(非白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池36では、
図8のI−V特性試験の結果を示す図から分かるように、白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。
図7の起電圧試験の結果や
図8のI−V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない非白金の燃料極37(陰極12)及び空気極38(陽極11)が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0072】
図10は、電気分解装置10に使用する陽極11及び陰極12の製造方法を説明する図である。陽極11(電極)及び陰極12(電極)は、
図10に示すように、金属微粉体作成工程S1、微粉体重量比決定工程S2、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4、遷移金属薄板電極作成工程S5を有する電極製造方法によって製造される。電極製造方法は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス49(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)(アロイ遷移金属)とNi50(メタル遷移金属)とCu51(メタル遷移金属)とを原料として陽極11(電極)及び陰極12(電極)を製造する。
【0073】
金属微粉体作成工程S1では、オーステナイト系ステンレス49を微粉砕してステンレスアロイ微粉体52(SUS304アロイ微粉体(微粉状のSUS304)とSUS316アロイ微粉体(微粉状のSUS316)とSUS340アロイ微粉体(微粉状のSUS340)とのうちの少なくとも1つ)を作り、Ni50を微粉砕してNiメタル微粉体53(微粉状のNi)を作るとともに、Cu51を微粉砕してCuメタル微粉体54(微粉状のCu)を作る。
【0074】
金属微粉体作成工程S1では、微粉砕機によってオーステナイト系ステンレス49(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、微粉砕機によってNi50を10μm〜200μmの粒径に微粉砕するとともに、微粉砕機によってCu51を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0075】
電極製造方法は、オーステナイト系ステンレス49やNi50、Cu51を10μm〜200μmの粒径に微粉砕することで、開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路23(通路孔)及び開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面21,22の通流口25を有する多孔質に成型されて比表面積が大きいポーラス構造の遷移金属薄板電極24を作ることができ、それら流路23を水溶液(液体)が通流しつつ水溶液(液体)を陽極11及び陰極12のそれら流路23における接触面に広く接触させることが可能な非白金の陽極11及び陰極12を作ることができる。
【0076】
微粉体重量比決定工程S2では、金属微粉体作成工程S1によって作られたオーステナイトアロイ微粉体53とNiメタル微粉体53とCuメタル微粉体54との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、後記するアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するオーステナイトアロイ微粉体52の重量比を決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するNiメタル微粉体53の重量比を決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するCuメタル微粉体54の重量比を決定する。
【0077】
微粉体重量比決定工程S2では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比を47〜49%の範囲(好ましくは48%)で決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するNiメタル微粉体53の重量比を47〜49%の範囲(好ましくは48%)で決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量(100%)に対するCuメタル微粉体54の重量比を2〜6%の範囲(好ましくは2%)で決定する。
【0078】
電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55の全重量に対するステンレスアロイ微粉体52の重量比やNiメタル微粉体53の重量比、Cuメタル微粉体54の重量比を前記範囲において決定することで、ステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とCuメタル微粉体54との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、陽極11(電極)及び陰極12(電極)が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電気分解装置10の非白金の陽極11及び陰極12を作ることができる。
【0079】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3では、微粉体重量比決定工程S2によって決定した重量比のステンレスアロイ微粉体52と微粉体重量比決定工程S2によって決定した重量比のNiメタル微粉体53と微粉体重量比決定工程S2によって決定した重量比のCuメタル微粉体54とを混合機に投入し、混合機によってステンレスアロイ微粉体52、Niメタル微粉体53、Cuメタル微粉体54を攪拌・混合し、ステンレスアロイ微粉体52、Niメタル微粉体53、Cuメタル微粉体54が均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を作る。
【0080】
アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を所定圧力で加圧し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を作る。アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によってアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を作る。
【0081】
プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物55(遷移金属薄板電極24)に形成される流路23(通路孔)や通流口25の開口面積(開口径)が大きくなり、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56(遷移金属薄板電極24)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25をアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56(遷移金属薄板電極24)に形成することができない。
【0082】
プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物55(遷移金属薄板電極24)に形成される流路23(通路孔)や通流口25の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56(遷移金属薄板電極24)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25をアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56(遷移金属薄板電極24)に形成することができない。
【0083】
電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物55を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物55(遷移金属薄板電極24)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25を形成したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56(遷移金属薄板電極24)を形成することができる。電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲)の陽極11(電極)及び陰極12(電極)を作ることができるから、電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な固体高分子形燃料電池10の非白金の陽極11及び陰極12を作ることができる。
【0084】
遷移金属薄板電極作成工程S5では、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を炉(電気炉)に投入し、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25を形成したポーラス構造の遷移金属薄板電極24(陽極11及び陰極12)を作る。
【0085】
遷移金属薄板電極作成工程S5では、最も融点の低いCuメタル微粉体54を溶融させる温度でアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。遷移金属薄板電極作成工程S5では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物56の焼成時において、最も融点の低いCuメタル微粉体54が溶融し、溶融したCuメタル微粉体54をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とを接合(固着)する。
【0086】
電極製造方法は、金属微粉体作成工程S1や微粉体重量比決定工程S2、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4、遷移金属薄板電極作成工程S5の各工程によって厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲)であって多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25を形成した陽極11(電極)及び陰極12(電極)を製造することができ、白金族元素を使用しない非白金の陽極11及び陰極12を廉価に作ることができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な陽極11及び陰極12を作ることができる。
【0087】
電極製造方法は、それによって作られた陽極11(電極)及び陰極12(電極)が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電気分解装置10において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な非白金の陽極11及び陰極12を作ることができる。電極製造方法は、最も融点のCuメタル微粉体54をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体52とNiメタル微粉体53とを接合することで、多数の微細な流路23(通路孔)や多数の微細な通流口25を有するポーラス構造の遷移金属薄板電極24(陽極11及び陰極12)を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な非白金の陽極11及び陰極12を作ることができる。