特開2020-33623(P2020-33623A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-33623(P2020-33623A)
(43)【公開日】2020年3月5日
(54)【発明の名称】板状ワーク挟持部材
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20200207BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20200207BHJP
【FI】
   C25D17/08 S
   C25D17/08 G
   C23C18/31 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-163099(P2018-163099)
(22)【出願日】2018年8月31日
(11)【特許番号】特許第6620198号(P6620198)
(45)【特許公報発行日】2019年12月11日
(71)【出願人】
【識別番号】511224852
【氏名又は名称】株式会社ファシリティ
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】岸 一之
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀雄
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA42
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】板状ワークを確実に吊下保持することができるとともに、当該板状ワークを処理液から引き上げた際に、当該処理液が板状ワークに垂れ染みが形成される不都合を効果的に抑制することができる板状ワーク挟持部材を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持する板状ワークであって、当該板状ワークを挟持する一対の挟持片と、当該各挟持片の当該板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、当該液だれ誘導爪は、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなる構成を採用する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持する板状ワーク挟持部材であって、
当該板状ワークを挟持する一対の挟持片と、
当該各挟持片の当該板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、
当該液だれ誘導爪は、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなることを特徴とする板状ワーク挟持部材。
【請求項2】
前記液だれ誘導爪は、前記挟持片から垂下した軸部と、当該軸部の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部と、当該U字部の先端から連続して立設したワーク当接部とを備えた請求項1に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項3】
前記線条部材の断面の直径が1mm以上2mm以下である請求項1又は請求項2に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項4】
前記U字部の直径が、6mm以上8mm以下である請求項2又は請求項3に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項5】
前記ワーク当接部の軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下である請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項6】
前記処理液が化学薬品処理液である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の板状ワーク挟持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、板状ワークを処理液に浸漬して当該板状ワークの被処理面の処理を行うために、当該板状ワークを吊下保持する板状ワーク挟持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、板状ワークを処理液に浸漬して当該板状ワークの被処理面を処理する際、治具に取り付けた挟持部材により、板状ワークの端部を挟み、治具ごと処理液に板状ワークを浸漬していた。
【0003】
例えば、特許文献1では、ワークを処理液中に搬送するための案内レールが備える搬送治具は、複数のチャック部材を有し、これらチャック部材により、矩形ワークの対向二辺をそれぞれ把持する。これらチャック部材は、ワークの第1面に接触する固定部材と、当該固定部材と対向する位置にてワークの第2面に接離可能に配置され、当該第2面に押圧接触される可動部材とを含み、当該可動部材は、押圧解除時に駆動される被駆動片と、被駆動片の非駆動時に常時固定部材側に押圧される押圧駆動片と、押圧駆動片の自由端部に形成された薄板状の押圧片とを含む。当該構成により、固定部材と可動部材とが、薄板状ワークの端部を把持する。
【0004】
また、従来では、図6に示すような板状ワークの挟持部材が用いられていた。図6に示す板状ワーク挟持部材100は、第1挟持片101と第2挟持片102とからなる。第1挟持片101と第2挟持片102のそれぞれには、板状ワークWを挟持する爪103、104が設けられていた。この爪103、104は、例えば、円柱形状や角柱形状を呈していた。そして、第1挟持片101と第2挟持片102とを離間させた状態で、爪103と104との間に板状ワークWを挟み込み、第1挟持片101及び第2挟持片102の付勢力によって板状ワークWを吊下保持していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−11009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたチャック部材は、板状ワークを処理液から引き上げた際に、チャック部材に付着していた処理液が自重によって板状ワークに伝って流れる。チャック部材から板状ワークに流れ落ちた処理液は、板状ワークの処理面に付着して垂れ染みとなり、外観不良を招く。特に、板状ワークを処理液から引き上げて、次工程に搬送すると、垂れ染みが板状ワークの処理面に大きく広がる問題があった。
【0007】
また、図6に示した従来の板状ワーク挟持部材100では、円柱形状や角柱形状の爪103、104の間に板状ワークWを挟持していたため、板状ワークWを処理液中から引き上げた際に、当該円柱形状や角柱形状の爪と挟持片が形成する空間に処理液が溜まりやすい。当該空間に溜まった処理液は、板状ワークWを処理液中から引き上げている過程や、次工程への搬送中に流れ落ち、爪103、104を伝って板状ワークWの処理面WSに垂れる。当該処理面WSに垂れた処理液は、垂れ染みとなり外観不良を招く。特に、処理液として塗装液を用いた場合、垂れ染みは、処理面WSに部分的な凸部を形成し、商品価値の低下を招く。
【0008】
上述した問題の影響を軽減すべく、板状ワーク挟持部材の使用数の低減や、板状ワークWの端部のみを保持することが考えられる。しかし、使用する板状ワーク挟持部材の数が少ないと、安定した板状ワークWの吊下保持が困難となる問題があった。
【0009】
よって、本件発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、板状ワークを確実に吊下保持することができるとともに、当該板状ワークを処理液から引き上げた際に、当該処理液が板状ワークに垂れ染みが形成される不都合を効果的に抑制することができる板状ワーク挟持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本件発明者等は鋭意研究の結果、以下に述べる板状ワーク挟持部材を提供することで、上述した課題を達成できることに想到した。
【0011】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持するものであって、当該板状ワークを挟持する一対の挟持片と、当該各挟持片の当該板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、当該液だれ誘導爪は、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなることを特徴とする。
【0012】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記液だれ誘導爪が、前記挟持片から垂下した軸部と、当該軸部の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部と、当該U字部の先端から連続して立設したワーク当接部とを備えたものであることが好ましい。
【0013】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記線条部材の断面の直径が1mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0014】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記U字部の直径が、6mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0015】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記ワーク当接部の軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0016】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記処理液が化学薬品処理液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材によれば、挟持した板状ワークを処理液中から引き上げた際に、液だれ誘導爪に付着した処理液は、当該線条部材のU字形状に沿って流下する。これにより、当該液だれ誘導爪に付着した処理液は、板状ワークから離間する方向に導かれ、板状ワークに流れ落ちることを効果的に防止することができる。特に、本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、2つ以上の線条部材により液だれ誘導爪を構成するため、把持力を確保しつつ、各線条部材の太さを最小限とすることができ、板状ワークに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくできる。従って、本件出願に係る板状ワーク挟持部材によれば、板状ワークの処理面に垂れ染みや、液だれ誘導爪の痕等の外観不良を生じ難くなり、高い品質の板状ワークの処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】保持する板状ワークの処理面を正面としたときの本実施の形態としてのワーク吊下治具の正面図である。
図2図1のワーク吊下治具の側面図である。
図3図2においてXで示す液だれ誘導爪の部分拡大図である。
図4図3の液だれ誘導爪の構成説明図である。
図5】液だれ誘導爪をワーク側からみた概略構成図である。
図6】従来の板状ワーク挟持部材により板状ワークを保持した状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本件出願に係る板状ワーク挟持部材について説明する。本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持するものであって、板状ワークを挟持する一対の挟持片と、各挟持片の板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、液だれ誘導爪が、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなることを特徴とする。本件出願によれば、板状ワークを直接、保持する液だれ誘導爪が、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなるため、板状ワークを処理液中から引き上げた際に、液だれ誘導爪に付着した処理液は、U字形状に沿って流下し、板状ワークの処理面に流れ落ちることを効果的に防止することができる。特に、液だれ誘導爪は、2つ以上の線条部材により構成することで、把持力を確保しつつ、各線状部材の太さを最小限とすることができる。これにより、板状ワークに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくすることができる。よって、本件出願に係る板状ワーク挟持部材を用いて板状ワークを吊下保持することで、板状ワークの処理面の外観不良が生じ難くなり、高い品質の板状ワークの処理が可能となる。ここでは、本件出願に係る板状ワーク挟持部材の好適な実施形態として、この板状ワーク挟持部材を備えたワーク吊下治具1を例に挙げて説明する。
【0020】
本実施の形態に係る板状ワーク吊下治具1は、板状ワークWを吊り下げた状態で、当該板状ワークWを図示しない処理液槽内に貯留した処理液中に浸漬して、当該処理液により板状ワークWの処理面の処理を行うために用いる。板状ワーク吊下治具1は、支持枠体2と、板状ワーク挟持部材10、20とを備えている。
【0021】
本件出願において、板状ワークWは、特に限定されるものではないが、例えば、矩形状のプリント基板を採用することができる。また、本件出願において用いる処理液は、特に限定されるものではないが、化学薬品処理液や、洗浄溶液等を採用することが好ましい。化学薬品処理液としては、例えば、プリント基板を板状ワークWとして採用する場合、脱脂液やエッチング液、めっき液などのめっき処理に用いる種々の処理液を用いることができる。
【0022】
支持枠体2は、板状ワークWの外形に沿って構成した枠体である。本実施の形態において、板状ワークWは矩形薄板状のプリント基板からなる。よって、支持枠体2は、当該矩形状のプリント基板の外形に沿って矩形状に構成した枠体である。具体的に、支持枠体2は、板状ワークWの上下辺に沿って配置した一対の支持バー3、4と、板状ワークWの左右側辺に沿って配置した一対のサイドバー5、6を備える。各サイドバー5、6は、各支持バー3、4に対して垂直に設けられ、当該支持バー3、4の端部間をそれぞれ連結し、矩形状の支持枠体2を構成する。
【0023】
板状ワーク挟持部材10、20は、本件出願に係るものであり、支持枠体2の各支持バー3、4に装着されて、板状ワークWの上縁部及び/又は下縁部を着脱自在に保持する。ここでは、板状ワーク挟持部材10が、板状ワークWの上縁部を吊下保持する板状ワーク挟持部材であり、板状ワーク挟持部材20が、板状ワークWの下縁部を保持する板状ワーク挟持部材である。本実施の形態のように、板状ワークWの上縁部及び下縁部を各板状ワーク挟持部材10及び20により保持した場合、板状ワークWは、所定の張力を付与して保持することができる。なお、図2では、板状ワークWの下端部を保持する板状ワーク挟持部材20が開放した状態を示しているが、当該板状ワーク挟持部材20を閉じることにより、板状ワークWを把持した状態で保持できる。
【0024】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材10及び20は、板状ワークWを挟持する一対の挟持片11、12と、各挟持片11、12の板状ワークW側に配設した液だれ誘導爪15、16とを備えている。
【0025】
挟持片11、12は、板状ワークWの一面側と他面側にそれぞれ位置し、対向して設けられる。挟持片11、12は、板状ワークWを挟持する方向、すなわち、互いに近接する方向に付勢又は可動する押圧部を備える。
【0026】
本実施の形態では、板状ワーク挟持部材10の押圧部13が、互いに近接する方向に付勢されたばねにより構成されている。当該ばねの弾性力により挟持片11、12が板状ワークWの上端部を挟持する。ここでは、板状ワーク挟持部材10の一方の挟持片11が支持枠体2に固定されており、他方の挟持片12は押圧部13を介してこれら挟持片11及び12が近接する方向、すなわち、閉じる方向に常時付勢されている。
【0027】
また、板状ワーク挟持部材20の押圧部14は、互いに近接する方向に可動する締付部材により構成されている。当該締付部材の締付力により挟持片11、12が板状ワークWの下端部を挟持する。ここでは、板状ワーク挟持部材20の一方の挟持片11が支持枠体2に固定されており、他方の挟持片12が押圧部14によって締付方向に可動自在に設けられている。これら押圧部13又は14を備えることにより、各板状ワーク挟持部材10又は20は、板状ワークWを挟持して吊下保持することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、板状ワーク挟持部材を構成する押圧部13、14として、上部の板状ワーク挟持部材10は、ばねにより構成し、下部の板状ワーク挟持部材20は、締付部材により構成しているが、本件発明において押圧部は、挟持片11、12を互いに近接する方向に付勢又は可動して締付可能とするものであれば、特に限定はない。
【0029】
また、当該挟持片11、12の材質や、大きさは特に限定されるものではなく、挟持する板状ワーク10の材質や大きさ、使用設備等に応じて適宜選択することができる。
【0030】
次に、各挟持片11、12が備える液だれ誘導爪15、16について説明する。液だれ誘導爪15、16は、板状ワーク挟持部材10、20を構成する一対の挟持片11、12の相互に近接する側に配設されて、挟持する板状ワークWの処理面WSに接触して押圧保持する部材である。これら液だれ誘導爪15、16は、板状ワークWに接触する液だれ誘導爪15、16自体に付着した処理液を板状ワークWから離間する方向に導く。
【0031】
以下に、液だれ誘導爪15、16の具体的な形状について、図3図5を参照して説明する。図3図2のXで示す箇所の部分拡大図、図4は液だれ誘導爪15又は16の構成説明図、図5は液だれ誘導爪15又は16をワークW側からみた概略構成図である。
【0032】
図5に示すように、本実施の形態に係る液だれ誘導爪15、16は、U字形状に折曲した3つの線条部材17・・を備える。具体的に、本実施の形態に係る液だれ誘導爪15、16は、各線条部材17・・を一体に固定する取付部(取付板)18を備えており、当該取付部18の下端部に各線状部材17・・・がそれぞれ離間して取り付けられる。
【0033】
U字形状に折曲した線条部材17は、挟持片11、12に固定する取付部18の下端から垂下した軸部21と、この軸部21の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部22と、このU字部22の先端から連続して立設したワーク当接部23とを備え、これら軸部21と、U字部22と、ワーク当接部23とが一体に構成されていることが好ましい。図4では、軸部21、U字部22、ワーク当接部23のそれぞれの範囲を21A、22A、23Aとして示す。
【0034】
本実施の形態において、液だれ誘導爪15、16は、各線条部材17の断面の直径が、1mm以上2mm以下であることが好ましく、1mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。耐薬品性を考慮して線条部材17を例えばステンレスやチタンなどにより構成した場合、その断面の直径が1mmであれば、所定の強度を確保することができる。また、液だれ誘導爪15、16がこの線条部材17を複数、備えることで、板状ワークWの把持力を確保することができる。一方で、線条部材17の断面の直径は小さければ小さいほど、板状ワークWの処理面WSに残る痕を小さくすることができるため、2mm以下、が好ましく、1.5mmであることがより好ましい。
【0035】
また、半円状のU字部22は、その直径が、6mm以上8mm以下であることが好ましい。液だれ誘導爪15、16に付着した処理液は、最終的にU字部22のU字形状に沿って流下するため、挟持する板状ワークWの処理面WSと、液だれ誘導爪15、16から滴下する最下部との距離は、U字部22の直径に依存する。この点から、半円状のU字部22の直径が6mm以上であれば、U字部22の最下部と挟持する板状ワークWの処理面WSとの距離を確保でき、U字部22から滴下する処理液を確実に板状ワークWの処理面WSから離間させることが可能となる。U字部22から滴下する処理液を板状ワークWの処理面WSから離間させる点において、U字部22の直径は大きいほど望ましいが、液だれ誘導爪15、16の表面積を考慮すると、付着する処理液の量が多くなる。そのため、U字部22の直径は8mm以下であることが好ましい。
【0036】
ワーク当接部23は、その軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。ワーク当接部23は、液だれ誘導爪15又は16と、板状ワークWの処理面WSとが当接するものである。本件出願に係る液だれ誘導爪15、16は、線条部材17を2つ以上備えているため、ワーク当接部23の軸方向の長さが0.5mmであっても、確実に板状ワークWを把持することが可能となる。また、ワーク当接部23の軸方向の長さを2mm以下とすることで、板状ワークWの処理面WSに残る液だれ誘導爪15、16の痕を最小限とすることができる。これにより、従来に比べて、板状ワークWの把持に必要な領域を狭めることができ、板状ワークWの端部を液だれ誘導爪15、16によって把持することが可能となる。
【0037】
本実施の形態では、液だれ誘導爪15又は16に3つの線条部材17を備えた場合を例に挙げて説明しているが、本件出願は、これに限定されるものではなく、2つ以上の線条部材17を備えたものであればよい。
【0038】
上述した複数の線条部材17を設ける取付部18は、板状であることが好ましく、ねじなどにより、確実に挟持片11、12に固定することが好ましい。なお、図5において示す19は、ねじ固定用の孔である。取付部18への線条部材17の取り付けは、何れの方法を採用することも可能であるが、溶接や、接着などにより固定することが好ましい。
【0039】
また、当該取付部18の上面に処理液が溜まることを抑制するため、当該取付部18の上部18Aは、図5に示すように先細り形状であることが好ましい。
【0040】
上述の構成により、図3に示すように、ワークWを液だれ誘導爪15、16を備えた挟持片11、12により吊下保持することにより、板状ワークWは、液だれ誘導爪15、16の各線条部材17のワーク当接部23、23に当接した状態で、把持される。本件出願によれば、上述したように、各液だれ誘導爪15、16は、複数の線条部材17を備えているため、最小限の太さの線条部材により液だれ誘導爪15、16を構成でき、板状ワークWの処理面WSに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくすることができる。また、ワーク当接部23は、軸方向の長さを2mm以下とすることにより、板状ワークWの端部ぎりぎり、例えば、板状ワークWの端面から7mm以内の範囲を確実に把持することができ、液だれ誘導爪15、16の痕によるワークWの処理面WSの影響を最小限とすることができる。
【0041】
また、処理液から板状ワークWを引き上げたときに、液だれ誘導爪15、16に付着した処理液は、軸部21やワーク当接部23を伝ってU字部22に到達し、当該U字部22のU字形状により、板状ワークWから離間する方向に導かれ、板状ワークWに流れ落ちることを効果的に防止することができる。
【0042】
従って、本件出願に係る板状ワーク挟持部材10によれば、板状ワークWの処理面WSに垂れ染みや、液だれ誘導爪15、16の痕等の外観不良を生じ難くなり、高い品質の板状ワークWの処理を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本件出願に係る板状ワークの挟持部材は、簡易な構成によって挟持した板状ワークを処理液中から引き上げた際に生じるワークの処理面に処理液が流下する不都合を防止できる。よって、本件出願はプリント基板を吊下した状態で処理液中を移動させてめっき処理を行う場合において特に有用である。
【符号の説明】
【0044】
W 板状ワーク(プリント基板)
WS 処理面
1 ワーク吊下治具
2 支持枠体
3、4 支持バー
5、6 サイドバー
10、20 板状ワーク挟持部材
11、12 挟持片
13 押圧部(ばね)
14 押圧部(締付部)
15、16 液だれ誘導爪
17 線条部材
18 取付部(取付板)
21 軸部
22 U字部
23 ワーク当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2019年9月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持する板状ワーク挟持部材であって、
当該板状ワークを挟持する一対の挟持片と、
当該各挟持片の当該板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、
当該液だれ誘導爪は、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなり、
当該線条部材の断面の直径が1mm以上1.5mm以下であることを特徴とする板状ワーク挟持部材。
【請求項2】
前記液だれ誘導爪は、前記挟持片から垂下した軸部と、当該軸部の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部と、当該U字部の先端から連続して立設したワーク当接部とを備えた請求項1に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項3】
前記U字部の直径が、6mm以上8mm以下である請求項2に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項4】
前記ワーク当接部の軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下である請求項2又は請求項3に記載の板状ワーク挟持部材。
【請求項5】
前記処理液が化学薬品処理液である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の板状ワーク挟持部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、板状ワークを処理液に浸漬して当該板状ワークの被処理面の処理を行うために、当該板状ワークを吊下保持する板状ワーク挟持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、板状ワークを処理液に浸漬して当該板状ワークの被処理面を処理する際、治具に取り付けた挟持部材により、板状ワークの端部を挟み、治具ごと処理液に板状ワークを浸漬していた。
【0003】
例えば、特許文献1では、ワークを処理液中に搬送するための案内レールが備える搬送治具は、複数のチャック部材を有し、これらチャック部材により、矩形ワークの対向二辺をそれぞれ把持する。これらチャック部材は、ワークの第1面に接触する固定部材と、当該固定部材と対向する位置にてワークの第2面に接離可能に配置され、当該第2面に押圧接触される可動部材とを含み、当該可動部材は、押圧解除時に駆動される被駆動片と、被駆動片の非駆動時に常時固定部材側に押圧される押圧駆動片と、押圧駆動片の自由端部に形成された薄板状の押圧片とを含む。当該構成により、固定部材と可動部材とが、薄板状ワークの端部を把持する。
【0004】
また、従来では、図6に示すような板状ワークの挟持部材が用いられていた。図6に示す板状ワーク挟持部材100は、第1挟持片101と第2挟持片102とからなる。第1挟持片101と第2挟持片102のそれぞれには、板状ワークWを挟持する爪103、104が設けられていた。この爪103、104は、例えば、円柱形状や角柱形状を呈していた。そして、第1挟持片101と第2挟持片102とを離間させた状態で、爪103と104との間に板状ワークWを挟み込み、第1挟持片101及び第2挟持片102の付勢力によって板状ワークWを吊下保持していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−11009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたチャック部材は、板状ワークを処理液から引き上げた際に、チャック部材に付着していた処理液が自重によって板状ワークに伝って流れる。チャック部材から板状ワークに流れ落ちた処理液は、板状ワークの処理面に付着して垂れ染みとなり、外観不良を招く。特に、板状ワークを処理液から引き上げて、次工程に搬送すると、垂れ染みが板状ワークの処理面に大きく広がる問題があった。
【0007】
また、図6に示した従来の板状ワーク挟持部材100では、円柱形状や角柱形状の爪103、104の間に板状ワークWを挟持していたため、板状ワークWを処理液中から引き上げた際に、当該円柱形状や角柱形状の爪と挟持片が形成する空間に処理液が溜まりやすい。当該空間に溜まった処理液は、板状ワークWを処理液中から引き上げている過程や、次工程への搬送中に流れ落ち、爪103、104を伝って板状ワークWの処理面WSに垂れる。当該処理面WSに垂れた処理液は、垂れ染みとなり外観不良を招く。特に、処理液として塗装液を用いた場合、垂れ染みは、処理面WSに部分的な凸部を形成し、商品価値の低下を招く。
【0008】
上述した問題の影響を軽減すべく、板状ワーク挟持部材の使用数の低減や、板状ワークWの端部のみを保持することが考えられる。しかし、使用する板状ワーク挟持部材の数が少ないと、安定した板状ワークWの吊下保持が困難となる問題があった。
【0009】
よって、本件発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、板状ワークを確実に吊下保持することができるとともに、当該板状ワークを処理液から引き上げた際に、当該処理液が板状ワークに垂れ染みが形成される不都合を効果的に抑制することができる板状ワーク挟持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本件発明者等は鋭意研究の結果、以下に述べる板状ワーク挟持部材を提供することで、上述した課題を達成できることに想到した。
【0011】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持するものであって、当該板状ワークを挟持する一対の挟持片と、当該各挟持片の当該板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、当該液だれ誘導爪は、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなり、当該線条部材の断面の直径が1mm以上1.5mm以下であることを特徴とする。
【0012】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記液だれ誘導爪は、前記挟持片から垂下した軸部と、当該軸部の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部と、当該U字部の先端から連続して立設したワーク当接部とを備えたものであることが好ましい。
【0013】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記U字部の直径が、6mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0014】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記ワーク当接部の軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0015】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、前記処理液が化学薬品処理液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材によれば、挟持した板状ワークを処理液中から引き上げた際に、液だれ誘導爪に付着した処理液は、当該線条部材のU字形状に沿って流下する。これにより、当該液だれ誘導爪に付着した処理液は、板状ワークから離間する方向に導かれ、板状ワークに流れ落ちることを効果的に防止することができる。特に、本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、2つ以上の線条部材により液だれ誘導爪を構成するため、把持力を確保しつつ、各線条部材の太さを最小限とすることができ、板状ワークに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくできる。従って、本件出願に係る板状ワーク挟持部材によれば、板状ワークの処理面に垂れ染みや、液だれ誘導爪の痕等の外観不良を生じ難くなり、高い品質の板状ワークの処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】保持する板状ワークの処理面を正面としたときの本実施の形態としてのワーク吊下治具の正面図である。
図2図1のワーク吊下治具の側面図である。
図3図2においてXで示す液だれ誘導爪の部分拡大図である。
図4図3の液だれ誘導爪の構成説明図である。
図5】液だれ誘導爪をワーク側からみた概略構成図である。
図6】従来の板状ワーク挟持部材により板状ワークを保持した状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本件出願に係る板状ワーク挟持部材について説明する。本件出願に係る板状ワーク挟持部材は、処理液に浸漬する板状ワークを吊下保持するものであって、板状ワークを挟持する一対の挟持片と、各挟持片の板状ワーク側に配設した液だれ誘導爪とを備え、液だれ誘導爪が、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなることを特徴とする。本件出願によれば、板状ワークを直接、保持する液だれ誘導爪が、U字形状に折曲した2つ以上の線条部材を備えてなるため、板状ワークを処理液中から引き上げた際に、液だれ誘導爪に付着した処理液は、U字形状に沿って流下し、板状ワークの処理面に流れ落ちることを効果的に防止することができる。特に、液だれ誘導爪は、2つ以上の線条部材により構成することで、把持力を確保しつつ、各線状部材の太さを最小限とすることができる。これにより、板状ワークに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくすることができる。よって、本件出願に係る板状ワーク挟持部材を用いて板状ワークを吊下保持することで、板状ワークの処理面の外観不良が生じ難くなり、高い品質の板状ワークの処理が可能となる。ここでは、本件出願に係る板状ワーク挟持部材の好適な実施形態として、この板状ワーク挟持部材を備えたワーク吊下治具1を例に挙げて説明する。
【0019】
本実施の形態に係る板状ワーク吊下治具1は、板状ワークWを吊り下げた状態で、当該板状ワークWを図示しない処理液槽内に貯留した処理液中に浸漬して、当該処理液により板状ワークWの処理面の処理を行うために用いる。板状ワーク吊下治具1は、支持枠体2と、板状ワーク挟持部材10、20とを備えている。
【0020】
本件出願において、板状ワークWは、特に限定されるものではないが、例えば、矩形状のプリント基板を採用することができる。また、本件出願において用いる処理液は、特に限定されるものではないが、化学薬品処理液や、洗浄溶液等を採用することが好ましい。化学薬品処理液としては、例えば、プリント基板を板状ワークWとして採用する場合、脱脂液やエッチング液、めっき液などのめっき処理に用いる種々の処理液を用いることができる。
【0021】
支持枠体2は、板状ワークWの外形に沿って構成した枠体である。本実施の形態において、板状ワークWは矩形薄板状のプリント基板からなる。よって、支持枠体2は、当該矩形状のプリント基板の外形に沿って矩形状に構成した枠体である。具体的に、支持枠体2は、板状ワークWの上下辺に沿って配置した一対の支持バー3、4と、板状ワークWの左右側辺に沿って配置した一対のサイドバー5、6を備える。各サイドバー5、6は、各支持バー3、4に対して垂直に設けられ、当該支持バー3、4の端部間をそれぞれ連結し、矩形状の支持枠体2を構成する。
【0022】
板状ワーク挟持部材10、20は、本件出願に係るものであり、支持枠体2の各支持バー3、4に装着されて、板状ワークWの上縁部及び/又は下縁部を着脱自在に保持する。ここでは、板状ワーク挟持部材10が、板状ワークWの上縁部を吊下保持する板状ワーク挟持部材であり、板状ワーク挟持部材20が、板状ワークWの下縁部を保持する板状ワーク挟持部材である。本実施の形態のように、板状ワークWの上縁部及び下縁部を各板状ワーク挟持部材10及び20により保持した場合、板状ワークWは、所定の張力を付与して保持することができる。なお、図2では、板状ワークWの下端部を保持する板状ワーク挟持部材20が開放した状態を示しているが、当該板状ワーク挟持部材20を閉じることにより、板状ワークWを把持した状態で保持できる。
【0023】
本件出願に係る板状ワーク挟持部材10及び20は、板状ワークWを挟持する一対の挟持片11、12と、各挟持片11、12の板状ワークW側に配設した液だれ誘導爪15、16とを備えている。
【0024】
挟持片11、12は、板状ワークWの一面側と他面側にそれぞれ位置し、対向して設けられる。挟持片11、12は、板状ワークWを挟持する方向、すなわち、互いに近接する方向に付勢又は可動する押圧部を備える。
【0025】
本実施の形態では、板状ワーク挟持部材10の押圧部13が、互いに近接する方向に付勢されたばねにより構成されている。当該ばねの弾性力により挟持片11、12が板状ワークWの上端部を挟持する。ここでは、板状ワーク挟持部材10の一方の挟持片11が支持枠体2に固定されており、他方の挟持片12は押圧部13を介してこれら挟持片11及び12が近接する方向、すなわち、閉じる方向に常時付勢されている。
【0026】
また、板状ワーク挟持部材20の押圧部14は、互いに近接する方向に可動する締付部材により構成されている。当該締付部材の締付力により挟持片11、12が板状ワークWの下端部を挟持する。ここでは、板状ワーク挟持部材20の一方の挟持片11が支持枠体2に固定されており、他方の挟持片12が押圧部14によって締付方向に可動自在に設けられている。これら押圧部13又は14を備えることにより、各板状ワーク挟持部材10又は20は、板状ワークWを挟持して吊下保持することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、板状ワーク挟持部材を構成する押圧部13、14として、上部の板状ワーク挟持部材10は、ばねにより構成し、下部の板状ワーク挟持部材20は、締付部材により構成しているが、本件発明において押圧部は、挟持片11、12を互いに近接する方向に付勢又は可動して締付可能とするものであれば、特に限定はない。
【0028】
また、当該挟持片11、12の材質や、大きさは特に限定されるものではなく、挟持する板状ワーク10の材質や大きさ、使用設備等に応じて適宜選択することができる。
【0029】
次に、各挟持片11、12が備える液だれ誘導爪15、16について説明する。液だれ誘導爪15、16は、板状ワーク挟持部材10、20を構成する一対の挟持片11、12の相互に近接する側に配設されて、挟持する板状ワークWの処理面WSに接触して押圧保持する部材である。これら液だれ誘導爪15、16は、板状ワークWに接触する液だれ誘導爪15、16自体に付着した処理液を板状ワークWから離間する方向に導く。
【0030】
以下に、液だれ誘導爪15、16の具体的な形状について、図3図5を参照して説明する。図3図2のXで示す箇所の部分拡大図、図4は液だれ誘導爪15又は16の構成説明図、図5は液だれ誘導爪15又は16をワークW側からみた概略構成図である。
【0031】
図5に示すように、本実施の形態に係る液だれ誘導爪15、16は、U字形状に折曲した3つの線条部材17・・を備える。具体的に、本実施の形態に係る液だれ誘導爪15、16は、各線条部材17・・を一体に固定する取付部(取付板)18を備えており、当該取付部18の下端部に各線状部材17・・・がそれぞれ離間して取り付けられる。
【0032】
U字形状に折曲した線条部材17は、挟持片11、12に固定する取付部18の下端から垂下した軸部21と、この軸部21の下端から連続して形成され、半円状に折曲したU字部22と、このU字部22の先端から連続して立設したワーク当接部23とを備え、これら軸部21と、U字部22と、ワーク当接部23とが一体に構成されていることが好ましい。図4では、軸部21、U字部22、ワーク当接部23のそれぞれの範囲を21A、22A、23Aとして示す。
【0033】
本実施の形態において、液だれ誘導爪15、16は、各線条部材17の断面の直径が、1mm以上2mm以下であることが好ましく、1mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。耐薬品性を考慮して線条部材17を例えばステンレスやチタンなどにより構成した場合、その断面の直径が1mmであれば、所定の強度を確保することができる。また、液だれ誘導爪15、16がこの線条部材17を複数、備えることで、板状ワークWの把持力を確保することができる。一方で、線条部材17の断面の直径は小さければ小さいほど、板状ワークWの処理面WSに残る痕を小さくすることができるため、2mm以下、が好ましく、1.5mmであることがより好ましい。
【0034】
また、半円状のU字部22は、その直径が、6mm以上8mm以下であることが好ましい。液だれ誘導爪15、16に付着した処理液は、最終的にU字部22のU字形状に沿って流下するため、挟持する板状ワークWの処理面WSと、液だれ誘導爪15、16から滴下する最下部との距離は、U字部22の直径に依存する。この点から、半円状のU字部22の直径が6mm以上であれば、U字部22の最下部と挟持する板状ワークWの処理面WSとの距離を確保でき、U字部22から滴下する処理液を確実に板状ワークWの処理面WSから離間させることが可能となる。U字部22から滴下する処理液を板状ワークWの処理面WSから離間させる点において、U字部22の直径は大きいほど望ましいが、液だれ誘導爪15、16の表面積を考慮すると、付着する処理液の量が多くなる。そのため、U字部22の直径は8mm以下であることが好ましい。
【0035】
ワーク当接部23は、その軸方向の長さが、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。ワーク当接部23は、液だれ誘導爪15又は16と、板状ワークWの処理面WSとが当接するものである。本件出願に係る液だれ誘導爪15、16は、線条部材17を2つ以上備えているため、ワーク当接部23の軸方向の長さが0.5mmであっても、確実に板状ワークWを把持することが可能となる。また、ワーク当接部23の軸方向の長さを2mm以下とすることで、板状ワークWの処理面WSに残る液だれ誘導爪15、16の痕を最小限とすることができる。これにより、従来に比べて、板状ワークWの把持に必要な領域を狭めることができ、板状ワークWの端部を液だれ誘導爪15、16によって把持することが可能となる。
【0036】
本実施の形態では、液だれ誘導爪15又は16に3つの線条部材17を備えた場合を例に挙げて説明しているが、本件出願は、これに限定されるものではなく、2つ以上の線条部材17を備えたものであればよい。
【0037】
上述した複数の線条部材17を設ける取付部18は、板状であることが好ましく、ねじなどにより、確実に挟持片11、12に固定することが好ましい。なお、図5において示す19は、ねじ固定用の孔である。取付部18への線条部材17の取り付けは、何れの方法を採用することも可能であるが、溶接や、接着などにより固定することが好ましい。
【0038】
また、当該取付部18の上面に処理液が溜まることを抑制するため、当該取付部18の上部18Aは、図5に示すように先細り形状であることが好ましい。
【0039】
上述の構成により、図3に示すように、ワークWを液だれ誘導爪15、16を備えた挟持片11、12により吊下保持することにより、板状ワークWは、液だれ誘導爪15、16の各線条部材17のワーク当接部23、23に当接した状態で、把持される。本件出願によれば、上述したように、各液だれ誘導爪15、16は、複数の線条部材17を備えているため、最小限の太さの線条部材により液だれ誘導爪15、16を構成でき、板状ワークWの処理面WSに残る液だれ誘導爪の痕を極力小さくすることができる。また、ワーク当接部23は、軸方向の長さを2mm以下とすることにより、板状ワークWの端部ぎりぎり、例えば、板状ワークWの端面から7mm以内の範囲を確実に把持することができ、液だれ誘導爪15、16の痕によるワークWの処理面WSの影響を最小限とすることができる。
【0040】
また、処理液から板状ワークWを引き上げたときに、液だれ誘導爪15、16に付着した処理液は、軸部21やワーク当接部23を伝ってU字部22に到達し、当該U字部22のU字形状により、板状ワークWから離間する方向に導かれ、板状ワークWに流れ落ちることを効果的に防止することができる。
【0041】
従って、本件出願に係る板状ワーク挟持部材10によれば、板状ワークWの処理面WSに垂れ染みや、液だれ誘導爪15、16の痕等の外観不良を生じ難くなり、高い品質の板状ワークWの処理を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本件出願に係る板状ワークの挟持部材は、簡易な構成によって挟持した板状ワークを処理液中から引き上げた際に生じるワークの処理面に処理液が流下する不都合を防止できる。よって、本件出願はプリント基板を吊下した状態で処理液中を移動させてめっき処理を行う場合において特に有用である。
【符号の説明】
【0043】
W 板状ワーク(プリント基板)
WS 処理面
1 ワーク吊下治具
2 支持枠体
3、4 支持バー
5、6 サイドバー
10、20 板状ワーク挟持部材
11、12 挟持片
13 押圧部(ばね)
14 押圧部(締付部)
15、16 液だれ誘導爪
17 線条部材
18 取付部(取付板)
21 軸部
22 U字部
23 ワーク当接部