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特開2020-33650ニッケル超微粒子の製造方法及び製造装置ならびに微粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-33650(P2020-33650A)
(43)【公開日】2020年3月5日
(54)【発明の名称】ニッケル超微粒子の製造方法及び製造装置ならびに微粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20200207BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20200207BHJP
【FI】
   B22F9/24 Z
   B82Y40/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-210328(P2019-210328)
(22)【出願日】2019年11月21日
(62)【分割の表示】特願2016-250768(P2016-250768)の分割
【原出願日】2016年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】591020423
【氏名又は名称】株式会社新光化学工業所
(72)【発明者】
【氏名】甲田秀和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺健一
(72)【発明者】
【氏名】山下史郎
(72)【発明者】
【氏名】国上 溥
(72)【発明者】
【氏名】国上秀樹
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017CA07
4K017CA08
4K017EF10
4K017EJ01
4K017EJ02
4K017FB07
(57)【要約】
【課題】ニッケルナノ粒子の合成において、高濃度化、反応管内壁への付着、酸化ニッケルや水酸化ニッケルの副生、粗大粒子の生成が問題となっており、産業上多様な利用法があるニッケルナノ粒子の量産化へ向けた課題となっていた。
【解決手段】反応性の高いニッケル前駆体と還元剤を事前に乾燥粉にして、反応溶媒においてそれらを分散させて反応液とし、マイクロ波により均一かつ急速に加熱することで効率よく高濃度のニッケルナノ粒子を合成する方法を発見することができた。原料を均一な溶液ではなくコロイド状態で供給することで反応管内壁への反応産物の付着の抑制、および副生物である酸化ニッケルと水酸化ニッケルの生成の抑制が可能となった。ニッケル粒子の粒子径についても添加する塩基や原料コロイドの粒子径、反応温度の調整により制御できることが明らかとなった。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子液相合成に用いる反応原料液に、還元剤の重合物および/又は架橋物が分散状態で還元剤微粒子として含まれることを特徴とするナノ粒子製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ粒子製造方法において、還元剤の重合物および/又は架橋物がヒドラジン類および/又はアルデヒド類を前駆体として合成されるものであることを特徴とするナノ粒子製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のナノ粒子製造方法において、上記還元剤微粒子が反応原料液中において、動的光散乱による粒子径分布の個数分布のピークが50から200nmの範囲にあることを特徴とするナノ粒子製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノ粒子製造方法において、加熱方法がマイクロ波加熱であることを特徴とするナノ粒子製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のナノ粒子製造方法において、微粒子化させたニッケル含有原料微粒子分散液が反応原料の成分の一つとして含有されており、上記ニッケル含有原料微粒子の、反応原料液中における動的光散乱による粒子径分布の個数分布のピークが50から200nmの範囲にあることを特徴とするナノ粒子製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ粒子製造方法において、還元剤微粒子がヒドラジン類とアルデヒド類および/又はケトン類の脱水縮合物を含有することを特徴とするニッケルのナノ粒子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル超微粒子の製造方法及び製造装置ならびにそれによって製造したニッケル超微粒子に関する。さらに具体的には、ニッケル超微粒子を主とする超微粒子の成分を含む原料液を、その還元剤を含む液と共に混合して反応液として反応管中を流通させ、前記反応管の少なくとも一部にマイクロ波を照射し、反応液の温度を設定温度に短時間で導き、前記原料ニッケル化合物の還元反応を進行させて超微粒子を製造する製造方法及び製造装置ならびにそれによって製造したニッケル超微粒子に関する。前記超微粒子には、30nmの場合を主たる狙いとするが、平均粒子径が200nm以下の場合、100nm以下の場合、30nmの場合,10nm以下の場合がある。また、超微粒子を含有するコロイドやペーストの形態の場合もある。
【背景技術】
【0002】
近年、粒径が200nm(ナノメートル)以下のナノ粒子の研究・開発が盛んに行われ、多くの提案がなされている。例えば、金属ナノ粒子の原材料としての金属塩を溶解した溶液と前記金属塩の還元剤を含む溶液とを混合させた反応液を反応管の中に流通させ、その反応管の少なくとも一部にマイクロ波を照射して、反応管の中の反応液を還元反応に適した所定の温度まで加熱し、もって、金属塩を還元し、金属ナノ粒子を連続的に製造しようとする試みがその一例である。
【0003】
例えば、金属塩としての硝酸銀とその還元剤を含む反応液をガラスや樹脂製の反応管の中に流通させ、反応液にマイクロ波を照射して加熱し、反応液の温度を還元反応に適した温度まで上昇させて、もって、硝酸銀の還元反応を行わせ、銀ナノ粒子を得ることが提案されている。しかし、前記硝酸銀の還元を続けようとすると、比較的短時間で反応管の内壁に銀が析出して付着してしまう。内壁に付着した銀はマイクロ波を反射するので、反応液にマイクロ波が吸収されず、反応液の温度が急激に低下してしまう。その結果、生成物の中に還元未反応の硝酸銀が多く混入してしまい、銀ナノ粒子の収率が低くなるという問題があった。そのほか、良質の銀ナノ粒子を製造することができなくなるなどの重大な問題があった。ところが、反応管へのマイクロ波照射を利用して金属ナノ粒子の量産を試みる例がまだ多くないためか、前記の問題を論じた特許文献は見当たらない。
【0004】
金属塩の還元反応は、多くの場合、常温ではなく、その金属塩と還元剤の還元適性温度に加熱して超微粒子を合成する。そして、加熱手段としては、マイクロ波照射が均一で素早い加熱手段として用いられている。
【0005】
多くの特許文献には、反応液にマイクロ波を照射することにより、反応液の均一で立ち上がりの速い温度上昇をもたらす効果が期待され、還元反応を効果的に進めることができると記載されている。そして、製造されるナノ粒子の粒径のバラツキが少なくなること、反応時間が短くなること、製造コストを低減できることなどが期待できると記載されている。
【0006】
発明者らの実験では、金属塩と還元剤と分散剤を含む反応液を反応管に流し、マイクロ波照射による加熱の下で還元反応を促進させ、金属ナノ粒子を製造するときに、金属層が反応管の内壁に付着することが確認されている。特に、銀ナノ粒子の場合、そのレベルは深刻である。金属ナノ粒子の析出が反応管の壁面に生じると、反応管の壁面に生じた析出層がマイクロ波を反射する。その結果、発振器に損傷が生じたり、反応液の均一性の高い加熱ができなくなったり、加熱の効果が全く生じなくなるなどの問題を生じることが確認されている。
【0007】
また、本発明者らの実験では、反応管に反応液を流しながら金属ナノ粒子を連続的に製造する場合に、前記のマイクロ波による加熱効果に問題が生じることが確認されている。そのほかに、反応管が目詰まりを起こし、反応液が流れなくなり、これにより、爆発を生じる危険性があったり、金属ナノ粒子の製造品質の著しい悪化を招いたり、反応管を取り替えなければならなくなったり、製造コストの上昇を招いたりするなど、大きな問題が生じることが確認されている。また、マイクロ波照射の利点が大きく損なわれてしまうという問題を生じることが確認されている。
【0008】
しかし、マイクロ波を照射しながらナノ粒子を製造する場合に発生する前記問題の解決を図ろうとする提案されているが十分に有効ではない。バッチ処理で反応液にマイクロ波を照射して反応液中の金属塩の還元反応を行わせるときに、容器の内壁に金属析出物が付着し、容器を破損させてしまうなどの問題が生じること、及びそれを解決する方法が特許文献1に記載されている。
【0009】
特許文献1には、金属酸化物や金属水酸化物を有機溶媒で溶解した反応液をガラス容器内で還元し、金属ナノ粒子を生成することが開示されている。また、マイクロ波を用いて反応液の温度を高め、一定時間還元反応を続けると、金属微粒子が容器の内壁面に付着することが開示されている。また、その付着物がマイクロ波を吸収して加熱され、容器が局部的に高温になり、ガラスが破損する危険性が指摘されている。
【0010】
これを解決するため、特許文献1では、1L(1リットル)のセパラブル容器に、マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒を入れ、この混合溶媒に金属酸化物または金属水酸化物と金属元素に対して等モル量以下の有機修飾剤を添加し、得られた溶液に還元剤を加え、得られた反応液をマイクロ波で加熱して金属ナノ粒子を製造することが記載されている。マイクロ波を吸収し易い有機溶媒とマイクロ波を吸収し難い有機溶媒の混合溶媒を用いることの理由の一つとして、マイクロ波を容器の外側から反応液に照射したときに、容器の壁面に近いところでマイクロ波が吸収されてしまうことに対する緩和策をあげている。金属塩の種類、マイクロ波を吸収しやすい溶媒、マイクロ波を吸収しにくい溶媒、有機修飾剤などには、多くの種類が提案されている。
【0011】
特許文献1では、さらに、反応容器の金属微粒子が析出して付着しない部分にはマイクロ波透過材料を用い、反応容器の金属微粒子が析出して付着する部分にはマイクロ波遮蔽部材を配置することが記載されている。
【0012】
本発明者らの実験によれば、一部がマイクロ波照射場を通るフッ素樹脂製の管状反応管に反応液を流通させ、反応液にマイクロ波を照射し、金属原料を還元し、もって、金属ナノ粒子を製造しようとする場合、特許文献1も含めた従来の方法では、反応管の内壁に析出物が付着することは避けられないことが判明した。また、極めて深刻な問題があることも判明した。
【0013】
例えば、内径が2mmであり、外径が3mmであり、円筒型のマイクロ波キャビティーに入れる部分の長さが100mmであるフッ素樹脂製反応管に反応液を流通させる。また、この反応管に周波数2.4〜2.5GHzのTM010モードのマイクロ波を照射し、銅ナノ粒子や銀ナノ粒子などを生成する。このような場合に、特許文献1に開示されている方法を用いることができないことは自明である。
【0014】
マイクロ波キャビティー中を通っている反応管の中に、金属塩と還元剤と合成される金属ナノ粒子の分散剤を含む反応液を流し、マイクロ波を照射して反応液を加熱しながら金属ナノ粒子を連続製造する場合、たとえば金属塩を銀塩にした場合、反応管内壁への銀析出物が生じる。また、それによるマイクロ波の反射が起こる。その結果、マイクロ波が反応液に到達せず、還元の適温になっていた反応液の温度を還元に不適切な温度に低下させてしまい、生成物の中に還元未反応の金属塩が混入してしまい、ナノ粒子の収率が低くなる。
【0015】
前記のように、反応管に、銀塩を溶解させた溶液と銀ナノ粒子の分散剤と前記銀塩の還元剤を含む反応液を流通させ、反応液にマイクロ波を照射して反応液の温度を還元適性温度まで高めて、還元反応を行わせると、銀析出物が反応管内壁に付着しはじめ、種々の問題が発生する。
【0016】
すなわち、反応管内壁に付着した銀析出物により、反応管の外部から反応管に照射しているマイクロ波が反射され、還元の適温になっていた反応液の温度を還元に不適切な温度に低下させてしまう。また、未反応の溶液が所定量以上に混入し、製造予定の銀ナノ粒子の品質を低下させてしまう。金属ナノ粒子の製造に大きな障害が生じる。
【0017】
また、銀析出物の付着で反応管が目詰まりを起こし、反応液の流通が止まってしまう問題が生じる。また、反応管の温度分布が大きく変わったりするなどの問題が生じる。
【0018】
このような現象は製造しようとする金属の種類によってもかなり異なるが、銀以外の金属でも注意を要する、解決すべき課題である。例えば、銅やニッケルでも上記現象が起こることが確認されている。
【0019】
種々の金属ナノ粒子の連続的な合成が公開特許によって提案され始めており、その合成・精製方法については、生産性、簡便さ、低コスト、スケールアップなどの可能性が開示されている。しかし、実際に前記の問題を解決しようとする提案がなされていない。
【0020】
ナノ粒子の合成が提唱されて以来かなり長い年月がたっているが、不明なこと、製品化のために解決しなければならないことはまだ多く残されている。ナノ粒子の粒径と物性の関係がその一例と言える。
【0021】
ニッケルナノ粒子は積層コンデンサの内部電極、接合材、電磁波遮蔽材料などの様々な用途が期待されているものの、粒子径が300nm以下のニッケル超微粒子の合成に関しては未だに確立した合成法がないのが現状である。これは、ニッケルナノ粒子の合成反応の難しさに起因するものである。
【0022】
ニッケル粒子を還元するための還元剤としてヒドラジン類を用いたり、原料のニッケル塩をヒドラジン錯体にして合成する方法は特許文献2をはじめとして広く知られている。また、均一な反応場の制御を行うために連続法でニッケル粒子の合成を行う特許文献3などの方法も知られている。しかし、ヒドラジンが強い還元力を発揮するアルカリ条件下で高濃度のニッケルナノ粒子を合成しようとするとヒドラジンとニッケル原料塩が混合された瞬間に反応が始まってしまい粒子径のばらつきが大きくなってしまう。また、溶媒として水を使用しているので水酸化ニッケルや酸化ニッケルの副生を抑制することが難しく、表面が水酸化物または酸化物である質の悪いニッケル粒子が生成してしまう。質の高いニッケルナノ粒子の合成のためには水の存在が極力少ない反応場において原料と還元剤が均一に混合している状態でなるべく急速に反応を進めなければならない。
【0023】
特許文献4では還元剤微粒子をフィラーとして酸化抑制のために使用する例が、特許文献5では還元剤を乾燥粉として乾式合成する例が紹介されているが、本発明のように液相合成に原料乾燥粉をコロイド化して使用する例は知られていない。
【0024】
水の存在量を少なくするには、原料を乾燥させて有機溶媒に溶解させることが考えられる、しかし、有機溶媒にニッケルを溶かすための配位子、および有機溶媒に均一に溶解する還元剤は精製時に除去しづらく、高価なものが多いため工業生産においては使いづらいというのが現状である。また、前述の反応容器内壁への析出は有機溶媒の使用時により顕著になる傾向がある。これらの困難を克服するために、ニッケル原料塩またはニッケル原料錯体と還元剤を乾燥粉にして有機溶媒に分散させてコロイド状態の反応液とする方法はほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2011−012290号公報
【特許文献2】特開2015−59270号公報
【特許文献3】特開2013―108121号公報
【特許文献4】特開2013−79429号公報
【特許文献5】特開2012−36489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ニッケルナノ粒子の効率的な工業生産における課題は、貴金属ナノ粒子より酸化されやすく還元しづらい点、水酸化物イオンや水の共存により安定な水酸化物が副生しやすい点である。高価な反応前駆体やホウ素系、リン系の強力な還元剤を使用すれば高品質なニッケルナノ粒子が合成可能ではあるがコスト面や不純物元素の含有等の観点から実用的でない場合が多い。ニッケルナノ粒子の用途に応じて粒子径を制御できることも重要である。
【0027】
本発明の解決すべき課題の一つは、高品質で安価なニッケル超微粒子を工業生産レベルで提供することにある。本発明の解決すべき課題の一つは、粒径分布の優れたニッケル超微粒子を工業レベルで提供することにある。本発明の解決すべき課題の一つは、用途に合わせた粒径分布のニッケル超微粒子を工業レベルで提供することにある。粒径分布が、例えば、10nm以下のもの、30nm以下のもの、50nm以下のもの、100nm以下のもの、200nm以下のもの、300nm以下のもの、これらの適切な割合で混在するものなどが用途に合わせた粒径分布のニッケル超微粒子の例である。
【0028】
本発明の解決すべき課題の一つは、塗布膜の電気抵抗が所定の値の範囲内であるニッケル超微粒子の工業レベルでの提供にある。
【0029】
本発明の解決すべき課題の一つは、塗布膜の色むらが所定の範囲内であるニッケル超微粒子の工業レベルでの提供にある。
【0030】
前記解決すべき課題の内、少なくとも一つが解決されることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記の課題を解決するために、反応性の高いニッケル前駆体と還元剤を事前に乾燥粉にして、反応溶媒においてそれらを分散させてコロイド原料液とし、マイクロ波により均一かつ急速に加熱することで効率よくニッケルナノ粒子を合成する方法が有効であることを見いだした。ニッケル原料塩と還元剤をコロイド化した後に乾燥粉とすることで、高濃度において均一に混合することが可能になり、反応管内壁への反応産物の付着も抑制できた。また、水分の持込みを極力低減でき安定な副生物である酸化ニッケル、水酸化ニッケルの生成を抑制できるようになった。ニッケル粒子の粒子径についても添加する塩基や原料コロイドの粒子径、反応温度の調整により制御できることが明らかとなった。なお、ここでいう乾燥粉とは、通常の粉体の意味の微粒子固相を指すのに加え、ニッケル粒子合成に影響を与える水分をなるべく除去した、微粒子固相と少量の有機溶媒の混合物も指すことにする。
【0032】
本発明は粒子径の制御されたニッケルナノ粒子を安価な原料塩から合成する方法である。本方法は、安価なニッケル原料を配位子により処理することで活性化およびコロイド化された複合体を形成させる第一段階と、ニッケル前駆体を還元するための還元剤をコロイド化させる第二段階と、第一段階および第二段階で作製されたコロイドを混合したコロイド分散液をマイクロ波加熱処理する第三段階からなることを特徴とする。
【0033】
以下、具体的に本発明に例を説明する。
【0034】
課題を解決するためになされた本発明の第1の発明(以下、発明1という)は、反応管に、少なくとも金属ナノ粒子の原料塩を含む第1の液と、前記原料塩の還元剤を含む第2の液とを混合させた反応液を流通させて、金属ナノ粒子を合成する工程を有する金属ナノ粒子の製造方法において、前記製造方法は、金属ナノ粒子の合成工程の一部に反応状況判断手段と分級手段の少なくとも一方を用意する工程を有しており、少なくとも1つの還元工程において、前記反応液に気体と液体の混相流を用いる金属ナノ粒子の製造方法である。
【0035】
課題を解決するためになされた本発明の第2の発明(以下、発明2という)は、少なくとも一部がマイクロ波照射場に配置された反応管に、少なくとも金属微粒子の原料塩を含む第1の液と少なくとも前記原料塩の還元剤を含む第2の液と気体とを混合させた混相流としての反応液を流通させる工程と、
前記反応液にマイクロ波を照射して、前記反応液を加熱する工程と、
前記反応管の少なくとも一部に、第1の液、第2の液および前記反応液の少なくとも1つを流通させて、金属微粒子の還元作用を制御し、金属微粒子を合成する工程と、
必要箇所に、微粒子の反応状況判断手段、粒径観測手段、粒径分布観測手段、成分観測手段、限外ろ過などの粒径選択や分別手段、分級手段、分流手段、加温や冷却等を含む温度調節手段などの少なくとも1つを設ける工程を有する金属微粒子の製造方法である。
【0036】
発明1,2を展開してなされた本発明の第3の発明(以下、発明3という)は、発明1または2に記載の金属微粒子の製造方法において、気体が不活性ガスである金属微粒子の製造方法である。
【0037】
発明1,2を展開してなされた本発明の第4の発明(以下、発明4という)は、発明1または2に記載の金属微粒子の製造方法において、気体が水素ガスと反応性ガスのうちの少なくとも一方である金属微粒子の製造方法である。
【0038】
発明2〜4を展開してなされた本発明の第5の発明(以下、発明5という)は、発明2〜4のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波照射場が1箇所以上である金属微粒子の製造方法である。
【0039】
発明2〜5を展開してなされた本発明の第6の発明(以下、発明6という)は、発明2〜5のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射が2回以上である金属微粒子の製造方法である。
【0040】
発明2〜6を展開してなされた本発明の第7の発明(以下、発明7という)は、発明2〜6のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射のマイクロ波周波数が2種類以上である金属微粒子の製造方法である。
【0041】
発明2〜7を展開してなされた本発明の第8の発明(以下、発明8という)は、発明2〜7のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射の時間が2種類以上である金属微粒子の製造方法である。
【0042】
発明2〜8を展開してなされた本発明の第9の発明(以下、発明9という)は、発明2〜8のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射場における反応液の送液速度が2通り以上である金属微粒子の製造方法である。
【0043】
発明2〜9を展開してなされた本発明の第10の発明(以下、発明10という)は、発明2〜9のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射場における反応管の内径が2通り以上である金属微粒子の製造方法である。
【0044】
発明2〜10を展開してなされた本発明の第11の発明(以下、発明11という)は、発明2〜10のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液が受けるマイクロ波照射場における少なくとも1つの反応管の流路が2通り以上である金属微粒子の製造方法である。
【0045】
発明2〜11を展開してなされた本発明の第12の発明(以下、発明12という)は、発明2〜11のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波照射場内の温度の低下幅は15°C以下である金属微粒子の製造方法である。
【0046】
発明12を展開してなされた本発明の第13の発明(以下、発明13という)は、発明12に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波照射場内の前記温度の低下幅は10°C以下である金属微粒子の製造方法である。
【0047】
発明2〜13を展開してなされた本発明の第14の発明(以下、発明14という)は、発明2〜13のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、気体の反応液への挿入量が、マイクロ波照射場における反応管の平均内径を2r(mm)とした場合、0.4×r(リットル)/分以上3×r(リットル)/分以下である金属微粒子の製造方法である。
【0048】
発明2〜14を展開してなされた本発明の第15の発明(以下、発明15という)は、発明2〜14のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液に挿入した気体の反応管内における線速度が2m/秒以上である金属微粒子の製造方法である。
【0049】
発明15を展開してなされた本発明の第16の発明(以下、発明16という)は、発明15に記載の金属微粒子の製造方法において、反応液に挿入した不活性ガスの反応管内における線速度が5m/秒以上である金属微粒子の製造方法である。
【0050】
発明2〜16を展開してなされた本発明の第17の発明(以下、発明17という)は、発明1〜16のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法であって、製造装置内の、第1の液、第2の液、気体、及び反応液の各流路又はその近傍の必要箇所の少なくとも一部に配置され、温度、流量、液に関する反応進行情報、及び粒径に関する情報の少なくとも1つを検出するセンサーからの出力を所定の制御系にフィードバックする工程と、センサーからの情報を利用して制御を行う工程を有する金属微粒子の製造方法である。
【0051】
発明2〜17を展開してなされた本発明の第18の発明(以下、発明18という)は、発明1〜17のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法であって、
製造装置内の反応液の流路もしくは分路における金属微粒子の粒径を測定する工程をさらに有する金属微粒子の製造方法である。
【0052】
発明2〜18を展開してなされた本発明の第19の発明(以下、発明19という)は、発明2〜18のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波のシングルモードを用いる金属微粒子の製造方法である。
【0053】
発明2〜18を展開してなされた本発明の第20の発明(以下、発明20という)は、発明2〜18のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波のマルチモードを用いる金属微粒子の製造方法である。
【0054】
発明2〜20を展開してなされた本発明の第21の発明(以下、発明21という)は、発明2〜20のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波照射場に設置した2本以上の反応管に、気体と液体の混相流を連続的に流通させて、金属ナノ粒子を合成する工程を有する金属微粒子の製造方法である。
【0055】
発明2〜21を展開してなされた本発明の第22の発明(以下、発明22という)は、発明2〜21のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、第一工程である金属塩の形成及び/又は脱水の工程から、金属塩の還元反応の第二工程を連続的に行う金属微粒子の製造方法である。
【0056】
発明2〜22を展開してなされた本発明の第23の発明(以下、発明23という)は、
発明2〜22のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法において、マイクロ波照射場に設置した複数の反応管の間に保温槽を設けて、金属塩の形成及び/又は脱水を進行させる金属微粒子の製造方法である。
【0057】
発明2〜23を展開してなされた本発明の第24の発明(以下、発明24という)は、発明1〜23のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法を用いて金属微粒子を製造する金属微粒子の製造装置である。
【0058】
発明2〜23を展開してなされた本発明の第25の発明(以下、発明25という)は、発明1〜23のいずれか1項に記載の金属微粒子の製造方法を用いて製造された金属微粒子である。
【0059】
課題を解決するためになされた本発明の第26の発明(以下、発明26という)は、ニッケル原料に配位子を添加して形成させたニッケル錯体の乾燥粉の分散液を反応液とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0060】
課題を解決するためになされた本発明の第27の発明(以下、発明27という)は、ナノ粒子合成に用いる還元剤の乾燥粉の分散液を反応液とするナノ粒子合成方法である。
【0061】
発明26,27を展開してなされた本発明の第28の発明(以下、発明28という)は、発明26,27に記載のニッケルナノ粒子合成法において、ニッケル錯体の乾燥粉の分散液と、還元剤の乾燥粉の分散液を混合して反応液とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0062】
発明28を展開してなされた本発明の第29の発明(以下、発明29という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成法において、ニッケル錯体を形成する配位子がヒドラジンであることを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0063】
発明28を展開してなされた本発明の第30の発明(以下、発明30という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成法において、還元剤の乾燥粉にヒドラジン類とアルデヒド類の脱水縮合物を含有することを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0064】
発明28を展開してなされた本発明の第31の発明(以下、発明31という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成法において、還元剤の乾燥粉にヒドラジド類とアルデヒド類の脱水縮合物を含有することを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0065】
発明28を展開してなされた本発明の第32の発明(以下、発明32という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成方法において、塩基性物質を添加することにより生成するニッケルナノ粒子の粒子径を制御することを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0066】
発明28を展開してなされた本発明の第33の発明(以下、発明33という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成方法において、反応液中に分散する微粒子化されたニッケル錯体および還元剤の粒子径分布を調整することにより反応性を調整し、生成するニッケルナノ粒子の粒子径を制御することを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【0067】
発明28を展開してなされた本発明の第34の発明(以下、発明34という)は、発明28におけるニッケルナノ粒子合成方法において、原料金属塩と還元剤を微粒子コロイドの形で反応場に供給することにより反応容器内面および反応管内面への付着を抑制することができる金属ナノ粒子の合成方法である。
【0068】
発明28〜34を展開してなされた本発明の第35の発明(発明35という)は、発明28〜34におけるニッケルナノ粒子合成方法において、加熱手段が発明2〜25のいずれか1項に記載のマイクロ波連続法であることを特徴とするニッケルナノ粒子合成方法である。
【発明の効果】
【0069】
本発明により粒子径が制御でき、粒子表面における酸化物や水酸化物の少ないニッケルナノ粒子が高濃度で合成できるようになった。また、原料塩の対イオンは乾燥粉にする際に除去されているので精製における煩雑さを減らし、大気中の酸素や水分と接触する時間を少なくすることができる。還元剤の反応産物は気体となるか分解温度の低い低分子化合物となるので少量の混入があったとしても焼成の際に問題なく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】実施例1、2におけるニッケルヒドラジン錯体コロイド乾燥粉と還元剤コロイド乾燥粉をエチレングリコール溶媒中で微粒子化させた状態を示したものである。
図2】実施例2における原料の調製法、その後に続く加熱によるニッケルナノ粒子合成法の様式を模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0071】
1:溶媒として使用するエチレングリコール。
2:ニッケルヒドラジン錯体コロイドを凍結乾燥させて調製した乾燥粉をエチレングリコール溶媒に分散させて微粒子化したもの。
3:還元剤の脱水縮合産物コロイドを凍結乾燥させて調製した乾燥粉をエチレングリコール溶媒に分散させて微粒子化したもの。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の実施の形態例を説明する。なお、説明の重複を避けるため、ナノ粒子の製造装置の説明で製造方法の説明やナノ粒子の説明を兼ねることもあり、その逆の場合もある。また、本発明の実施の形態の説明に用いる各図は、本発明の例の説明の都合上、特に断らずに部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、必ずしも実施例などの実物や記述と相似形でない場合もある。また、各図において、同様な構成成分については同一の符号を付けて示し、説明の重複を避けることもある。
【0073】
まず、ニッケルは金や銀などの貴金属より酸化されやく、したがって強力な還元剤を用いて高温で処理しなければ効率良くニッケル原料を還元することができない。次に、ニッケルは酸素や水の存在下で安定な酸化物や水酸化物を形成する傾向が強く、これらの安定副産物が生成すると目的の金属ニッケル粒子の核形成や成長が阻害される。最後に、不純物の制限であり、用途によってはアルカリ金属イオン、ホウ素、リン、塩素等の混入が認められない場合があり、効果的な還元剤や配位子、分散剤の使用が制限されてしまう。
【0074】
ニッケル原料の還元しづらさを高温、高圧の条件で処理することにより解決しようとする考え方もあるが、大量生産を想定すると大掛かりな設備になってしまう。また、そのような激しい条件で粒子径を制御するのは難しくなり、使用できる分散剤も限られたものになってしまう。
【0075】
加えて、既存の方法の大部分は一段階の反応処理でニッケル原料からニッケルナノ粒子への変換と粒子径制御を行おうとしているが、前述の困難とも関連して一段階で反応性と粒子径の2つの性質を最適化するのは難しいことがわかっている。実験室スケールの低濃度で少量のニッケルナノ粒子を合成する場合は達成できている報告もあるが、実用的な生産性においてそれらの方法が適用できるかは疑わしい。
【0076】
生産性を向上させるため、高濃度で短時間にニッケルナノ粒子を液相法で生成させようとすると、高濃度の原料塩と高濃度の還元剤が接触、混合されることになり反応の進行に不均一が生じる。とりわけ、粒子径のそろったナノ粒子を合成する場合、核形成と粒子成長が均一である必要があり、混合の不均一と反応進行の不均一が問題となってくる。さらに加熱を通して反応を進行させる場合、加熱の不均一も影響してくる場合が多く、これらの要因が実験室レベルでの品質と工業生産レベルでの品質の解離の主な原因となっている。
【0077】
反応性の低い原料塩や還元剤を用いたり、混合時に冷却する等の工夫も考えられるが、それらの場合には反応の進行により多くのエネルギーや長時間の加熱が必要になる場合が多く、結局生産性は低下してしまう場合が多い。
【0078】
加えて、原料塩や還元剤には水分が含まれる場合が多く、反応中も還元反応により水が生成する。低濃度における合成では問題にならなかった水の生成も高濃度においてはある程度の量が生じることになり、ニッケルナノ粒子の品質に影響を与えることになる。
【0079】
そこで、本発明者らは合成の段階を3つに分け、反応性が高いニッケル前駆体コロイド乾燥粉を形成する第一段階、還元剤コロイド乾燥粉を形成する第二段階、第一段階と第二段階の乾燥粉を混合して分散させたコロイド原料液をマイクロ波により均一かつ急速に加熱してニッケルナノ粒子を生成させる第三段階を順に適用することで効率よくニッケルナノ粒子製品を合成する方法を発明するに至った。ニッケル原料塩と還元剤をコロイド化した後に乾燥粉とすることで、高濃度において均一に混合することが可能になり、また、水分の持込みを極力低減でき安定な副生物である酸化ニッケル、水酸化ニッケルの生成を抑制できるようになった。粒子径についても添加する塩基や反応温度の調整により制御できることが明らかとなった。
【0080】
本発明の第一段階は安価なニッケル原料塩水溶液を分散剤の存在下で配位子と混合することによりニッケル錯体微粒子乾燥粉を形成することを特徴とする。
【0081】
安価なニッケル原料として酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルなどがあり、水に溶け易いことがのぞましい。
【0082】
配位子はニッケルイオンの還元を阻害する水酸化ニッケルの形成を妨げることができる一方で、還元反応が起こる際には迅速に外れることのできる程度の適度な結合力をもつものがのぞましい。また、ニッケル原料のニッケルと対になる陰イオンは最終製品においては不要である場合が多いので、この段階で水洗により除去できるのが望ましい。そのためには二価のニッケルイオンの電荷を中和できる陰イオンが配位子の官能基にあることが望ましい。さらには、その錯体の水に対する溶解度が低く、分散剤の存在下で微粒子化しやすいことが望ましい。
【0083】
配位子として具体的には、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グリオキシル酸等の有機酸、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、ヒドラジン、カルボヒドラジド等のヒドラジン類、イミダゾール、ヒダントイン等の複素環化合物、アセチルアセトン等のジケトン、ジメチルグリオキシム等のオキシム類などがあり、これらを混合して使用することもできる。また、第三段階での還元反応のため、加熱することで還元力を発揮する配位子がのぞましい。
【0084】
配位子と複合体を形成したニッケル錯体は、ろ過や遠心分離等で水洗することで不要な塩類を洗い流すことができ、乾燥させることで余分な水分を除去できる。第三段階での分散性を高めるために凍結乾燥等を用いて多孔質の乾燥粉を形成させてもよい。
【0085】
本発明の第二段階は還元剤をコロイド化させ乾燥粉にする工程である。このコロイドは反応開始までは微粒子として存在するが反応後は気体または容易に除去できる低分子成分になることがのぞましい。このような還元剤として、ヒドラジン、またはヒドラジン誘導体とアルデヒド、ケトン等のカルボニル化合物を脱水縮合させて形成されるヒドラゾン官能基を有する複合体が望ましい。とりわけ、ヒドラジン、カルボヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グリオキサール、グルタルアルデヒド等は反応性官能基を複数持つため、重合または架橋により水に不溶性のヒドラゾン化合物を形成することができる。脱水縮合の進行を制御するため、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グリコールアルデヒド、グリオキシル酸等のモノアルデヒドを加えることもできる。
【0086】
還元剤のコロイド化においても第一段階と同じく分散剤の存在下で微粒子化しやすいことがのぞましく、凍結乾燥等の乾燥を用いることで余分な水分を除去することができる。
【0087】
分散剤としては上記のニッケル錯体コロイド、還元剤コロイドの両方に親和性の官能基をもつものが望ましく、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ポリエチレンオキシド基、メチルエステル基、ブチル基等を有する高分子が望ましい。これらの分散剤を必要に応じて単独または混合して使用することもできる。
【0088】
第三段階では第一段階におけるニッケル錯体コロイド乾燥粉と第二段階における還元剤コロイド乾燥粉を混合し、加熱することで還元反応を進行させ、ニッケルナノ粒子を合成する。加熱は急速に均一に行うことが望ましく、具体的にはマイクロ波を用いた連続法が望ましい。また、溶媒の常圧における沸点以上に加熱することが望ましい場合は加圧することでより高温での反応を行うことで反応の進行を促進してもよい。
【0089】
溶媒としては上記配位子のニッケル錯体の溶解度が十分低いものであればよく、高温で反応を行うため沸点が高いほうが望ましい。具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコールエーテル類、γブチルラクトンなどのラクトン類、N-メチルピロリドンなどのラクタム類、ホルムアミド等のアミド類、エチレンカーボネート、プロピオンカーボネート、炭酸ジエチル、二炭酸ジメチル等の炭酸エステル類などを使用することができる。これらの溶媒を必要に応じて単独または混合して使用することもできる。
【0090】
また、溶媒は使用する分散剤と親和性があり、反応により生成する配位子などを溶解させる力のあるものがのぞましい。また、マイクロ波による加熱を行う場合にはマイクロ波の吸収効率が高いものが良い。さらには、ニッケル粒子生成反応により生じる水分を吸収または溶媒との反応により封じ込め、ニッケルの水酸化物や酸化物の生成を抑制する効果のあるものがのぞましい。
【0091】
第三段階の均一な反応のためには、ニッケル錯体コロイド乾燥粉と還元剤コロイド乾燥粉を溶媒に再分散させる際に粗大粒子を生じさせないことが望ましい。溶媒と乾燥粉の両方に親和性のある分散剤を使用する、超音波を照射する等の手段を用いることができる。より望ましくは、動的光散乱による粒子径解析により個数分布のピークが50から200nmの範囲にあることが望ましい。
【0092】
これらの再分散されて微粒子化された状態で供給される反応原料については、粒子径分布およびそれらの熱による溶解性、反応性を適宜調整することで、合成される金属ナノ粒子の核形成および成長速度を調整することができ、高い原料濃度の条件下においても品質の高い金属ナノ粒子を合成することができる。
【0093】
金属ナノ粒子を液相法で合成する場合、容器内面への付着が品質上の問題となることがあり、とりわけ、マイクロ波加熱を行う場合は容器内面に付着した金属粒子層が反射板やアンテナのはたらきをしてしまい加熱の不均一、異常加熱、スパークの発生、不要輻射等の深刻な問題を引き起こす。これらの現象は容器内面への不均一核生成が主な原因である。核生成は結晶成長において必ず通過しなければならない過程であり、ナノ粒子の製造においてこれを回避するのは難しい。しかし、金属原料および還元剤が微粒子化されて供給された場合、不均一核形成はそれらの総表面積の広さから微粒子近傍で起こりやすくなり、相対的に容器内面における付着は減少する。金属原料および還元剤が微粒子の形で反応場に供給されることはこのような観点からもメリットがある。
【0094】
還元反応により生じる水素イオンを受け取る塩基が共存すると還元反応速度は大きくなるので、第三段階において、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、グアニジン、テトラメチルグアニジン等の塩基を添加してもよい。
【0095】
(実施例1)
酢酸ニッケル四水和物を2%のDisperbyk190水溶液に1Mになるように溶解させ、モル数でニッケルとヒドラジンの比率が1:6になるようにヒドラジン一水和物を加え、50℃に加熱してニッケル―ヒドラジン錯体を形成させる。生じたコロイド分散液を遠心分離して上清を捨て、イオン交換水で一度懸濁して洗浄し、再度遠心分離してニッケル原料コロイド沈でんを得る。これを凍結乾燥させ水分を除去する。
【0096】
ヒドラジン、グリオキサール、アセトアルデヒドを2%のDisperbyk190水溶液にモル比が10:9:2になるように混合し、脱水縮合産物のコロイド分散液を得る。これを遠心分離して上清を捨て、イオン交換水で一度懸濁して洗浄し、再度遠心分離して還元剤コロイド沈でんを得る。これを凍結乾燥させ水分を除去する。
【0097】
上記のように形成したニッケル原料コロイド乾燥粉と還元剤コロイド乾燥粉を重量が1:1になるようにエチレングリコールに添加して混合し、超音波をかけて分散させる。この分散液の模式図を図1に示す。この分散液をモーノポンプまたはダイアフラムポンプ等スラリーを高圧で定量送液できるポンプにセットし、PFAチューブでできた反応管へ送液する。反応管は出口側から0.3MPaの圧力で加圧された状態を保つようにする。PFAチューブ反応管に2.45GHzの周波数のマイクロ波を照射し、分散液の温度を220℃に加熱する。マイクロ波が照射される領域の滞留時間が5秒になるように流速を調製すると、黒色のニッケルナノ粒子分散液が合成される。
【0098】
(実施例2)
実施例1のうち、マイクロ波加熱反応直前にT字ミキサーを用いてエチレングリコール/テトラメチルグアニジン混合溶液(体積で1:1)を原料液に対し20%の割合で混合する以外は実施例1と同様に反応を行い、黒色のニッケルナノ粒子分散液を合成した。また、実施例2の概要を図2に示す。
【0099】
(比較例1)
実施例1と酢酸ニッケル、ヒドラジン、Disperbyk190の物質量が等しくなるように原料をエチレングリコールを溶媒として混合し、実施例1と同様の条件で加熱してニッケル粒子を合成した。
【0100】
実施例1および実施例2で得られたニッケルナノ粒子を透過電子顕微鏡で分析した結果、実施例1では平均粒子径92nmの粒子が、実施例2では平均粒子径57nmの粒子が得られた。また、比較例ではニッケル粒子は生成しているものの粒子径数ミクロンの粗大粒子が生じ、水酸化ニッケルが副生していた。比較例においてはゲル状の水酸化ニッケルおよび生成したニッケル粒子が反応管内壁に付着しやすいことも観察された。
【0101】
実施例1と実施例2の結果より、高濃度のニッケルナノ粒子が迅速に合成できること、また、添加する塩基の量により粒子径の制御も可能なことも明らかとなった。以上の結果より、本発明の有用性が示された。
【0102】
本発明の実施例を説明したが、本発明は多くのバリエーションを可能とするものであり、種々の変更、改良を加えた様式で実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の金属ナノ粒子の連続的な製造方法、製造装置、ニッケル、銅、銀等に代表される金属ナノ粒子は、製造コストが安く、製品を製造したときの品質のバラツキが小さいことやナノ粒子の特性などの利点を有するので、触媒業界、電子基板の配線、電子部品の接合など電子・電機業界、自動車業界等における広い産業分野において大きな効果を発揮する。
【0104】
コンデンサの内部電極、電波吸収体、接合材、傾斜機能材料等においてニッケルナノ粒子に要求される特性は高度なものになってきており、塗膜にした際の均一性や焼成温度の低下、焼成後の材料組織の結晶粒界の制御しやすさ等が求められている。粒子の特性として具体的には、粒子径が数10〜100nmであることや、原料の時点で不純物元素を使用していないこと、酸化皮膜相が少ないことなどがニッケル粒子の特性として必要になってくる。本発明によりこれらの特性を満たすニッケルナノ粒子が高い生産性で合成できるようになったことは産業上非常に有用である。
図1
図2