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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-3485(P2020-3485A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】ゼロリセット機構付きトゥールビヨン
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/28 20060101AFI20191206BHJP
【FI】
   G04B17/28
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-113423(P2019-113423)
(22)【出願日】2019年6月19日
(31)【優先権主張番号】18180966.6
(32)【優先日】2018年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501475413
【氏名又は名称】グラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ブラウン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最小限の機械的エネルギーしか消費しないように構成されたトゥールビヨンユニットのゼロリセット機能を提供する。
【解決手段】トゥールビヨン台7.1と、トゥールビヨンユニット1と、ゼロリセット機構3と、を備えたムーブメントに関するものである。トゥールビヨンユニット1は、キャリッジ1.5と、テン輪と、ガンギ車と、を含み、テン輪およびガンギ車は、キャリッジ1.5上に回転配置されており、キャリッジ1.5は、トゥールビヨン台7.1に回転支持されている。ゼロリセット機構3は、ガンギ車に係合している第1の歯車3.1を有する。ムーブメントは、駆動モードとリセットモードとの間で切り替え可能であり、駆動モードにあるときには、ゼロリセット機構3は、トゥールビヨン台7.1に対して回転ロックされており、リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構3は、トゥールビヨン台7.1に対して回転可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーブメントであって、トゥールビヨン台(7.1)と、トゥールビヨンユニット(1)と、ゼロリセット機構(3)と、を備え、前記トゥールビヨンユニット(1)は、キャリッジ(1.5)と、テン輪(1.1)と、ガンギ車(1.3)と、を含み、前記テン輪(1.1)および前記ガンギ車(1.3)は、前記キャリッジ(1.5)上に回転配置されており、前記キャリッジ(1.5)は、前記トゥールビヨン台(7.1)に回転支持されており、前記ゼロリセット機構(3)は、前記ガンギ車(1.3)に係合している第1の歯車(3.1)を有し、前記ムーブメントは、駆動モード(D)とリセットモード(R)との間で切り替え可能であり、前記駆動モード(D)にあるときには、前記ゼロリセット機構(3)は、前記トゥールビヨン台(7.1)に対して回転ロックされており、前記リセットモード(R)にあるときには、前記ゼロリセット機構(3)は、前記トゥールビヨン台(7.1)に対して自由に回転可能である。ムーブメント。
【請求項2】
前記キャリッジ(1.5)上に配置された制動要素(1.2)をさらに備え、前記制動要素は、解除位置または解除状態から制動位置または制動状態へと、軸方向に変位可能および軸方向に変形可能のどちらか一方であり、前記制動状態にあるときには、前記制動要素(1.2)は、前記テン輪(1.1)の外周リムに軸方向に係合する、請求項1に記載のムーブメント。
【請求項3】
前記ゼロリセット機構(3)は、前記第1の歯車(3.1)と同軸の第2の歯車(3.2)を有し、前記第2の歯車は、前記第1の歯車(3.1)に回転ロックされており、回動式ロッキングレバー(5)に係合可能である、請求項1または2に記載のムーブメント。
【請求項4】
前記キャリッジ(1.5)は、回動式ストップレバー(4)に係合するように構成されたストッパ(1.5.a)を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項5】
前記リセットモード(R)にあるときには、前記ゼロリセット機構(3)または前記第1の歯車(3.1)および第2の歯車(3.2)の少なくとも一方は、前記キャリッジ(1.5)に対して回転ロックされる、請求項1〜4のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項6】
機械的エネルギー蓄積器に永久係合した秒真(7.2)は、前記キャリッジ(1.5)に対して回転ロックされている、請求項1〜5のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項7】
回動式ロッキングレバー(5)が解除位置にあるとき、かつ前記回動式ストップレバー(4)が停止位置にあるときに、前記ゼロリセット機構(3)および前記キャリッジ(1.5)は合同して、前記トゥールビヨン台(7.1)に対して、前記ストッパ(1.5.a)が前記ストップレバー(4)に係合するまで、回転が可能である、請求項4〜6のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項8】
回動式ロッキングレバー(5)が解除位置にあるとき、かつ回動式ストップレバー(4)が停止位置にあるときに、前記ゼロリセット機構(3)は、前記トゥールビヨン台(7.1)に対して自由に回転可能である、請求項1〜7のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項9】
前記ゼロリセット機構(3)は、前記第1の歯車(3.1)と同軸の調整リング(3.3)を有し、前記調整リングは、リセット位置と、少なくとも1つのリセットバネ(3.6)の作用に抗して解除位置と、の間で、前記第2の歯車(3.2)に対して回転可能である、請求項3〜8のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項10】
前記少なくとも1つのリセットバネ(3.6)は、前記ゼロリセット機構(3)に枢設された少なくとも1つのストップラッチ(3.5)に係合しており、前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)は、前記ゼロリセット機構(3)の回転軸に平行に延びる枢軸に関して回動可能である、請求項9に記載のムーブメント。
【請求項11】
前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)は、制動リング(2.2)の対応する形状のベベル部(2.2.a)に係合するように構成されたベベル部(3.5.a)を有し、前記制動リングは、前記ゼロリセット機構(3)に対して軸方向に変位可能であるとともに、前記制動要素(1.2)に作動的に係合している、請求項2および10のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項12】
前記調整リング(3.3)は、ベベル側面部(3.3.c)を有する少なくとも1つの軸方向に延出するカム(3.3.a)を含み、前記ベベル側面部は、前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)に径方向当接または接線当接しているとともに、前記第2の歯車(3.2)に対して前記調整リング(3.3)が回転を受けるときに、前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)の回動を誘起するように構成されている、請求項9〜11のいずれかに記載のムーブメント。
【請求項13】
前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)は、前記カム(3.3.a)の前記ベベル側面部に当接する回転車(3.7)を有する、請求項12に記載のムーブメント。
【請求項14】
前記カム(3.3.a)は、前記第2の歯車(3.2)の貫通開口(3.2.a)に貫通して軸方向に突出しており、前記少なくとも1つのストップラッチ(3.5)は、前記調整リング(3.3)とは反対に向いた前記第2の歯車(3.2)の側に配置されている、請求項12または13に記載のムーブメント。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のムーブメントを備えた、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明および開示は、トゥールビヨンユニットを備えたムーブメントに関する。特に、トゥールビヨンユニットを備えるとともに、さらにゼロリセット機構を備えた、例えば腕時計である時計のムーブメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トゥールビヨンを備えたムーブメントは、例えば特許文献1に記載されている。トゥールビヨンは、回転取り付けされた回転キャリッジと、回転キャリッジに搭載されたテンプと、回転キャリッジに搭載されるとともにレバーを介してテンプに作動連結されたガンギ車と、を含む。さらに、回転キャリッジ上に配置された制動要素が開示されており、これは、軸方向の動きによってテンプに係合させることが可能である。このような制動要素は、特に、フライングトゥールビヨンとして構成されたトゥールビヨンに適用することができる。
【0003】
トゥールビヨンユニットを備えた他のムーブメントは、特許文献2で知られている。ただし、リセットモードでは、2つのアームをストッパリングに押し当てることで、テン輪を停止させ、そして回転を開始させる。この接触力によって、機械式時計に利用できない大きな動力損失が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2793087号明細書
【特許文献2】スイス国特許出願公開第711476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明および開示の特別な目的は、トゥールビヨンユニットを備えたムーブメントを提供することであり、そのトゥールビヨンユニットは、機械的エネルギー蓄積器から作動的に分離することが可能であり、そのトゥールビヨンユニットは、回転キャリッジを例えばゼロリセット構成である予め規定された回転状態に戻すために、少なくともその回転キャリッジをムーブメントの基板に対して自由に回転させることが可能である。さらなる目的は、トゥールビヨンユニットと、最小限の機械的エネルギーしか消費しないように構成されたトゥールビヨンユニットのゼロリセット機能を提供するゼロリセット機構と、を備えたムーブメントを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、トゥールビヨン台と、トゥールビヨンユニットと、ゼロリセット機構と、を備えたムーブメントを提供する。トゥールビヨンユニットは、キャリッジと、テン輪と、ガンギ車と、を含む。テン輪およびガンギ車は、キャリッジ上に回転配置されている。キャリッジは、さらに、トゥールビヨン台に回転支持されている。典型的には、トゥールビヨン台は、ムーブメントの基板上に取り付けられる。トゥールビヨン台は、基板に対して不動である。それは、基板に固定されたまま維持される。ゼロリセット機構は、ガンギ車に係合している第1の歯車を有する。ムーブメントが駆動モードにあるときに、テン輪は、典型的には揺動回転運動を受け、ガンギ車は、典型的には段階的連続回転を受ける。典型的には、駆動モードでは、ゼロリセット機構の第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して、そしてムーブメントの基板に対して、固定されている。ガンギ車の歯は、第1の歯車の対応する歯と噛合しているので、ガンギ車の軸は、第1の歯車の周りを移動し、これにより、キャリッジ全体およびトゥールビヨンユニットの回転動を引き起こす。
【0007】
ムーブメントは、駆動モードとリセットモードとの間で切り替え可能である。駆動モードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転ロックされている。リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して自由に回転可能である。リセットモードでは、少なくとも第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して、ひいてはムーブメントの基板に対して、回転可能である。リセットモードにある間、ガンギ車は、ゼロリセット機構の第1の歯車に係合したまま維持される。リセットモードに切り替えられると、ゼロリセット機構全体がトゥールビヨン台に対して回転可能となり得る。
【0008】
典型的には、リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構全体は、トゥールビヨン台またはムーブメントの径方向内向きに延出する案内構造への機械的接触がない。具体的には、ゼロリセット機構の例えば径方向外側に位置する部分またはセクションである外周は、ムーブメントまたはトゥールビヨン台のいずれの任意の構成要素にも機械的に接触していない。このように、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの少なくとも一方が回転するための機械的摩擦および動摩擦を最小限に抑えることができ、これにより、ムーブメントの動力蓄積を増加させることが可能となる。
【0009】
代替的に、ゼロリセット機構の少なくとも第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して回転可能であり、一方、ゼロリセット機構の他の構成要素は、トゥールビヨン台に対して固定されて不動に維持される。
【0010】
ゼロリセット機構は、一度にトゥールビヨンユニットとトゥールビヨン台のうちの一方のみに選択的に回転係合することが可能である。駆動モードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転ロックされる一方、トゥールビヨンユニットは、ゼロリセット機構に対して回転可能である。リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転可能となる一方、トゥールビヨンユニットに対して回転ロックされる。このように、トゥールビヨンユニット全体が、ゼロリセット機構と一緒に回転可能となる。
【0011】
リセットモードにおいてゼロリセット機構を選択的に回転解放することにより、ムーブメントの高精度な同期を行うことができる。リセットモードにあるときには、トゥールビヨンユニットならびにゼロリセット機構は、外部からの機械的影響をまったく受けなくてよい。トゥールビヨンユニットを予め規定されたリセット位置に回転させるための摩擦損失を最小限に抑えることができる。これにより、トゥールビヨンユニットを予め規定されたリセット位置またはリセット方位方向に回転させるための機械的エネルギー散逸を低減することができる。
【0012】
さらなる例によれば、ムーブメントは、キャリッジ上に配置された制動要素を備え、この制動要素は、解除位置または解除状態から制動位置または制動状態へと、軸方向に変位可能および軸方向に変形可能のどちらか一方である。制動状態にあるときには、制動要素は、テン輪に軸方向に係合する。具体的には、制動要素は、テン輪の外周リムに軸方向に係合し得る。制動要素とテン輪との係合は、制動要素自体を軸方向に変位させることによるか、または制動要素が軸方向の変形を受けるように制動要素の一部分に軸方向の力を付与することによるか、いずれかによって、テン輪に対して制動要素の一部分を軸方向に当接もしくは軸方向に係合させることにより、得られる。
【0013】
制動要素とテン輪の外周リムとの相互の当接または軸方向係合によって、テン輪の正確かつ高信頼性の制動または停止が得られる。例えば、制動要素は、テン輪の外周リムに対して軸方向の摩擦力を付与するように構成されてよい。制動要素が外周リムに対して軸方向に係合することは、テン輪の径方向中央部に対して軸方向に係合する場合と比較して、結果としてテン輪に作用する制動トルクがテン輪の中心からの径方向距離に応じて増加するので、効果的であり得る。テン輪の径方向中央に第1の大きさの第1の制動力を付与すると、第1の制動トルクが生じる。テン輪の外周リムに対して、すなわちテン輪の中央部からの径方向距離を増加させて、同じ力を付与すると、その結果、第1の制動トルクよりも大きい第2の制動トルクが生じる。
【0014】
実際には、かなり抑えたまたは比較的小さい軸方向の制動力をテン輪の外周リムに付与するだけで、テン輪を停止させるのに、ひいてはムーブメントの駆動動作を停止させるのに、十分であり得る。
【0015】
他の例によれば、ゼロリセット機構は、第1の歯車と同軸の第2の歯車を有する。第2の歯車は、第1の歯車に回転ロックされており、回動式ロッキングレバーに係合可能である。回動式ロッキングレバーは、基板またはトゥールビヨン台に枢設されてよい。回動式ロッキングレバーは、トゥールビヨン台に対する第2の歯車および第1の歯車の回転を選択的にロックするように機能する。ロッキングレバーが第2の歯車に係合しているときに、少なくとも第2の歯車および第1の歯車の回転が阻止される。ロッキングレバーを解除構成に回動させることで、第2の歯車を解放して、トゥールビヨン台に対して、またはムーブメントの基板に対して、第2の歯車が回転することを可能とする。
【0016】
典型的には、回動式ロッキングレバーは、第2の歯車の周囲の歯に係合するように構成された少なくとも1つまたは複数の歯を有する。このようにして、第2の歯車ひいてはゼロリセット機構全体のための、かなり正確かつ高信頼性の回転インタロックを提供することができる。
【0017】
他の例によれば、キャリッジは、回動式ストップレバーに係合するように構成されたストッパを有する。回動式ストップレバーは、停止位置と解除位置との間で回動可能である。ストップレバーは、典型的には、例えば回動式ストップレバーの自由端に、カウンタストッパを有する。カウンタストッパは、キャリッジのストッパに選択的に係合するように、径方向に変位可能である。典型的には、キャリッジのストッパは、キャリッジから径方向外向きに突出している。ストップレバーは、特にそのカウンタストッパが、停止位置または停止構成にあるときには、解除位置または解除構成と比較して、径方向内向きに回動されている。
【0018】
このとき、ストップレバーのカウンタストッパとキャリッジのストッパとは、径方向および軸方向にオーバラップして、これにより、ストップレバーが停止位置または停止構成にあるときに、キャリッジのストッパが回動式ストップレバーのカウンタストッパに係合すると、キャリッジの回転は停止される。解除位置または解除構成にあるときには、ストップレバーのカウンタストッパは、径方向外向きに変位している。このとき、キャリッジのストッパは、ストップレバーのカウンタストッパのそばを通り過ぎることができ、キャリッジおよびトゥールビヨンユニットの制限されない回転動をサポートする。
【0019】
さらなる例によれば、リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構の第1の歯車および第2の歯車の少なくとも一方は、キャリッジに対して回転ロックされる。この回転インタロックは、軸方向に変位した制動要素によってテン輪を固定することにより得ることができる。さらに、制動要素の作動、すなわち制動要素を制動位置または制動状態に変位させることは、特に第1の歯車および第2の歯車の少なくとも一方であるゼロリセット機構と、トゥールビヨンユニットのキャリッジとの、機械的トルク伝達係合を伴い得る。このようにして、制動要素が作動しているときには、トゥールビヨンユニットがゼロリセット機構に対して回転ロックされることが保証される。このように、制動要素を作動させた後、かつテン輪を停止させた後に、回動式ロッキングレバーが第2の歯車に係合したままである限り、トゥールビヨンユニットは依然として回転を阻止されたままである。
【0020】
第2の歯車に係合した回動式ロッキングレバーが解除構成に回動されることで、トゥールビヨン台またはムーブメントの基板に対して第2の歯車の回転が可能となると、トゥールビヨンユニットのキャリッジに対して回転ロックされたゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの、回転ならびにゼロリセット動作が起こる。このようにして、無制御な機械的エネルギー散逸を防ぐことができる。
【0021】
他の例によれば、機械的エネルギー蓄積器に永久係合した秒真は、キャリッジに対して回転ロックされている。秒真によって、機械的エネルギーを機械的エネルギー蓄積器からトゥールビヨンユニットに伝達することができる。ムーブメントがリセットモードにあるときに、かつロッキングレバーが解除状態にあると、キャリッジ、ひいてはキャリッジに対して回転ロックされたゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニット全体は、キャリッジのストッパがストップレバーに係合するまで、機械的エネルギー蓄積器によって回転可能である。
【0022】
他の例によれば、ストップレバーとロッキングレバーは機械的に結合されている。回動式ロッキングレバーと回動式ストップレバーとの間を機械的に結合することによって、回動式ストップレバーが停止位置または停止構成にあるときにのみ、ロッキングレバーの係止位置から解除位置への回動を提供し、それを可能とする。さらに、ロッキングレバーの解除位置から係止位置への回動動作は、ストップレバーが停止位置にあるときにのみ提供される。すなわち、ストップレバーが作動しているとき、従ってストップレバーがキャリッジの予め規定された位置または回転状態を越えた回転をロックまたは阻止するように機能する停止位置または停止構成にストップレバーがあるときにのみ、ロッキングレバーの解除位置と係止位置との間の回動動作は可能であり許可される。
【0023】
さらなる例によれば、回動式ロッキングレバーが解除位置にあり、かつ回動式ストップレバーが停止位置にあるときに、ゼロリセット機構およびキャリッジは合同して、トゥールビヨン台および/またはムーブメントの基板に対して、ストッパがストップレバーに係合するまで、具体的にはキャリッジの径方向外向きに突出するストッパがストップレバーの径方向内向きに延出するカウンタストッパに接線当接するまで、回転が可能である。この特定の停止構成では、キャリッジひいてはキャリッジに固定された秒針は、例えば文字盤のゼロ位置である文字盤の予め規定されたセクションを指している。
【0024】
典型的には、ゼロリセット機構とキャリッジまたはトゥールビヨンユニットの合同的または共同的な回転動は、キャリッジに回転ロックされた秒真を介して、機械的エネルギー蓄積器によって誘起される。このように、ゼロリセット機構の回転動が解放されると、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットは、機械的エネルギー蓄積器の影響を受けて、予め規定された回転状態に自動的に回転する。ロッキングレバーが解除構成にあるときに、トゥールビヨンユニットおよびゼロリセット機構は、他のいずれかの摩擦誘導部品に機械的に係合することは実質的にない。実際に、トゥールビヨンユニットとゼロリセット機構の共同的な回転動の機械的摩擦は比較的低い。それに応じて、キャリッジ、トゥールビヨンユニット、およびゼロリセット機構を予め規定されたリセット位置に回転させるための機械的エネルギーの量は最小限に抑えられ、従って、ムーブメントの動力蓄積のために効果的である。
【0025】
他の例によれば、回動式ロッキングレバーが解除位置にあるとき、かつ回動式ストップレバーが停止位置にあるときに、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して自由に回転可能である。ゼロリセット機構の回転、およびトゥールビヨンユニットまたはそのキャリッジの合同的な回転は、かなりスムーズであり、かなり低度の摩擦しか伴わない。
【0026】
さらなる例によれば、ゼロリセット機構は、第1の歯車と同軸の調整リングを有し、調整リングは、リセット位置と、少なくとも1つのリセットバネの作用に抗して解除位置と、の間で、第2の歯車に対して回転可能である。第2の歯車に対する調整リングの回転は、ムーブメントを駆動モードとリセットモードとの間で切り替えるように機能する。典型的には、少なくとも1つのリセットバネの作用に抗して調整リングを回転させることで、ムーブメントは、リセットモードから駆動モードに変わる。従って、リセットモードを作動させるためには、弛緩するリセットバネの作用による調整リングの回転を解放するだけでよい。
【0027】
第1の歯車、第2の歯車、および調整リングのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのリセットバネが配置されている場合、すなわち、ゼロリセット機構上またはゼロリセット機構内に少なくとも1つのリセットバネが位置して配置されている場合には、ゼロリセット機構は、もともと、ムーブメントの他のいずれかの構成要素との機械的干渉がないときには、リセットモードに切り替わるように付勢されている。これによって、特に、ムーブメントがリセットモードにあるときに、ロッキングレバーが解除位置に回動されることにより第2の歯車の回転が解放されると、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの自由な回転が可能となる。
【0028】
さらなる例では、少なくとも1つのリセットバネは、少なくとも1つのストップラッチに係合している。少なくとも1つのストップラッチは、ゼロリセット機構に枢設されている。少なくとも1つのストップラッチは、ゼロリセット機構の回転軸に平行に延びる枢軸に関して回動可能である。ストップラッチは、典型的には、第1の歯車、第2の歯車、および調整リングのうちの少なくとも1つに対して、停止位置と解除位置との間で回動可能である。
【0029】
典型的な例または実施形態では、少なくとも1つのストップラッチは、第2の歯車の側に配置される。それは、第2の歯車の回転軸または中心軸に関して径方向内向きに、停止位置に向かって回動可能である。それは、径方向外向きに、解除位置に向かって回動可能である。典型的には、少なくとも1つのリセットバネは、ストップラッチを径方向内向きに位置する停止位置に付勢するように、少なくとも1つのストップラッチに直接係合している。このようにして、ムーブメントの駆動モードからリセットモードへの、かなり自動化されたバネ仕掛けの切り替えを提供することができる。
【0030】
さらなる例によれば、少なくとも1つのストップラッチは、制動リングの対応する形状のベベル部に係合するように構成されたベベル部を有する。制動リングは、ゼロリセット機構に対して軸方向に変位可能であるとともに、制動要素に作動的に係合している。ゼロリセット機構に対する制動リングの軸方向の変位を誘起することにより、制動要素は、制動位置に達するように、または制動状態を満たすように、軸方向に変位するか、または軸方向に変形するか、いずれかである。少なくとも1つのストップラッチの回動動作によって、少なくとも1つのストップラッチのベベル部は、制動リングのベベル部に対して径方向に変位可能である。この径方向の変位および相互に対応するベベル部の勾配または傾斜によって、制動リングは軸方向に変位し、これにより、制動要素の制動効果を誘起する。
【0031】
さらなる例では、調整リングは、ベベル側面部を有する少なくとも1つの軸方向に延出するカムを含む。ベベル側面部は、少なくとも1つのストップラッチに径方向当接または接線当接している。カムのベベル側面部は、さらに、第2の歯車に対して調整リングが回転を受けるときに、少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するように構成されている。典型的には、少なくとも1つのストップラッチは、第2の歯車に配置されている。調整リングが、第2の歯車と同軸の調整リングの回転を受けると、調整リングのカムは、第2の歯車に対して、ひいてはストップラッチに対して、接線方向または周方向の変位を受ける。
【0032】
このとき、実際に、軸方向に延出するカムのベベル側面部は、少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するように機能する。典型的には、カムのベベル側面部が少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するような方向に、調整リングが第2の歯車に対して回転すると、この回転は、少なくとも1つのストップラッチに係合している少なくとも1つのリセットバネの付勢力に抗して作用する。典型的には、少なくとも1つのリセットバネは、少なくとも1つのストップラッチを停止位置に回動させるように構成されており、その停止位置では、制動リングは、制動要素がテン輪に対して軸方向に係合する制動位置にある。
【0033】
少なくとも1つのストップラッチのこのリセットバネ仕掛けの回動によって、カムのベベル側面部を介して、調整リングは第2の歯車に対して相応の回転をする。このように、ムーブメントをリセットモードから駆動モードに切り替えるために、調整リングは、第2の歯車に対して第1の方向に沿って回転可能である。第1の方向に沿った回転は、リセットバネの復元力に抗して作用する。さらに、調整リングは、リセットバネの作用を受けて、第1の方向とは反対の第2の方向に回転可能である。このように、ムーブメントを駆動モードからリセットモードに切り替えるために、リセットバネは、調整リングの第2の方向の回転を誘起するように機能する。
【0034】
さらなる例では、調整リングの第2の方向に沿った回転は、トゥールビヨン台またはムーブメントの基板に枢設された少なくとも1つの切り替えラッチによってロック可能であり得る。調整リングの外周は、切り替えラッチの対向する歯部に係合する歯部を有し得る。ムーブメントが駆動モードにある限り、調整リングは、駆動位置にロックされる。切り替えラッチが作動して、調整リングの第2の方向に沿った回転が解放されると、調整リングは、駆動位置からリセット位置に自由に回転する。従って、切り替えラッチが、調整リングの回転動を解除および解放するとすぐに、少なくとも1つのリセットバネは、調整リングの第2の回転方向に沿った相応の回転を誘起するように機能する。
【0035】
さらなる例によれば、切り替えラッチは、さらに、第2の歯車に対して調整リングの第1の回転方向に沿った回転を誘起するために、すなわち、少なくとも1つのリセットバネが付与するバネ力に抗して調整リングをリセット位置から駆動位置に戻すために、調整リングの外周の歯部に係合するように構成されてよい。
【0036】
他の例によれば、少なくとも1つのストップラッチは、カムのベベル側面部に当接する回転車を有する。回転車は、ストップラッチの自由端に設けてよい。回転車は、ベベル部を備えた少なくとも1つのストップラッチの他端とは反対側に位置する少なくとも1つのストップラッチの一端に設けてよい。回転車によって、調整リングのカムのベベル側面部と少なくとも1つのストップラッチとの間の機械的摩擦を低減することができ、これにより、調整リングが第2の歯車に対して回転するときの少なくとも1つのストップラッチのスムーズな回動を提供する。
【0037】
さらなる例では、カムは、第2の歯車の貫通開口に貫通して軸方向に突出している。少なくとも1つのストップラッチは、調整リングとは反対に向いた第2の歯車の側に配置されている。典型的には、少なくとも1つのストップラッチは、例えばその回転車が、少なくとも部分的に第2の歯車の貫通開口にわたって延出しているか、または側方に第2の歯車の貫通開口内へと及んでいる。このようにして、第2の歯車の貫通開口に貫通して突出しているカムのベベル側面部を、少なくとも1つのストップラッチの回転車に機械的に係合または当接させる。
【0038】
典型的には、第2の歯車の貫通開口は、調整リングのカムのためのスロット状リンクまたはスロット状ガイドを含み得る。このようにして、調整リングが第2の歯車に対して回転するときに、調整リングのカムは、周方向または接線方向に案内され得る。
【0039】
さらなる態様により、上記のようなムーブメントを備えた時計を提供する。時計は、フライングトゥールビヨンを備え得る。時計は、腕時計として実装され得る。
【0040】
以下では、ムーブメントの一例について、図面を参照することにより、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、トゥールビヨンユニットおよびゼロリセット機構(3)の各種構成要素の分解図を示している。
図2図2は、図1の構成の断面である。
図3図3は、調整リングのカムとストップラッチとの機械的相互作用を示している。
図4図4は、ゼロリセット機構の拡大分解図である。
図5図5は、ゼロリセット機構の断面である。
図6図6は、ムーブメントが駆動モードにあるときの、切り替えラッチと調整リングとの係合を示している。
図7図7は、解除状態にあるときの制動要素を示している。
図8図8は、ムーブメントがリセットモードに切り替えられたときの、切り替えラッチに係合している調整リングを示している。
図9図9は、制動状態にある制動要素を示している。
図10図10は、ストップレバーが停止位置にあるときの、キャリッジのストッパと回動式ストップレバーとの相互の係合を示している。
図11図11は、第2の歯車に係合しているロッキングレバーの相互の係合を示している。
図12図12は、ロッキングレバーが解除位置にあるときの、図11の構成を示している。
図13図13は、調整リングの解放を示している。
図14図14は、キャリッジのストッパがストップレバーのカウンタストッパに係合する直前の、図10の構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1および2に、ムーブメント10を示している。ムーブメント10は、トゥールビヨン台7.1と、トゥールビヨンユニット1と、ゼロリセット機構3と、を備える。トゥールビヨンユニット1は、キャリッジ1.5に回転取り付けされたテン輪1.1を含む。テン輪1.1は、ガンギ車1.3に係合している。ガンギ車1.3は、さらに、ゼロリセット機構3の第1の歯車3.1に係合している。キャリッジ1.5には、さらに、図10および14に示すような文字盤11上で秒を示すように構成された秒針1.4が設けられている。キャリッジ1.5には、さらに、径方向外向きに突出しているストッパ1.5.aが設けられている。このストッパは、回動式ストップレバー4の対応した形状のカウンタストッパ4.1.aとの接線当接または周方向当接を提供する。
【0043】
フランジ2.1を有するクラッチ2がさらに設けられている。フランジ2.1は、秒真7.2に固定されている。フランジ2.1は、キャリッジ1.5に回転結合または回転固定されている。フランジ2.1と同軸に、制動リング2.2が設けられている。制動リング2.2は、皿バネ2.4の作用に抗して軸方向に変位可能である。皿バネ2.4は、軸方向にフランジ2.1と制動リング2.2との間に配置されている。皿バネ2.4は、制動リング2.2をフランジ2.1から離間するように軸方向に変位させるように構成されている。伝達要素2.3がさらに設けられている。伝達要素2.3は、フランジ2.1において、またはフランジ2.1によって、軸方向に案内される。伝達要素2.3は、制動リング2.2によって、フランジ2.1に対して軸方向に変位可能である。伝達要素2.3は、制動リング2.2に軸方向に当接している。
【0044】
制動リング2.2がフランジ2.1に向かって軸方向に変位すると、制動リング2.2の相応の動きが伝達要素2.3に伝達される。従って、制動リング2.2とは反対に向いた伝達要素2.3の端部は、制動リング2.2の表面から軸方向に突出するように構成されている。このように、伝達要素2.3は、制動要素1.2に対して付勢するように構成されており、これにより、図7と9を比較すると明らかなように、制動要素1.2を軸方向に変位または軸方向に変形させる。このように、キャリッジ1.5に配置されている制動要素1.2は、図7に示すような解除位置もしくは解除状態から、制動要素1.2がテン輪1.1の外周リムに軸方向に係合する、図9に示すような制動位置もしくは制動状態に、軸方向に変位可能または変形可能である。このように、制動要素1.2は、テン輪1.1に制動トルクを付与して、テン輪1.1の回転または揺動を停止または阻止するように構成されている。
【0045】
軸方向の変位を誘起するために、制動リング2.2は、外周に沿って、ゼロリセット機構3の第2の歯車3.2に面したベベル部2.2.aを有する。ゼロリセット機構3は、外周歯部3.1.aを有する第1の歯車3.1を含む。外周歯部3.1.aは、ガンギ車1.3に係合している。第2の歯車3.2の側に、第2の歯車3.2上で回動変位可能な複数のストップラッチ3.5が設けられている。図示の例では、等距離に配置された3つのストップラッチ3.5が設けられており、これらはそれぞれ、ゼロリセット機構3の中心軸に、ひいては第1の歯車3.1および/または第2の歯車の3.2の中心軸もしくは回転軸に対して平行に延びる回転軸に関して、回動可能である。
【0046】
ストップラッチ3.5の各々は、第1端と、第1端の反対に位置する第2端と、を有する。ストップラッチ3.5は、第1端と第2端との間にある位置で、第2の歯車3.2上に枢設されている。第1端には、ベベル部3.5.aが設けられている。第2端には、車3.7が設けられている。従って、第1端の径方向内向きの回動動作は、第2端の径方向外向きの回動動作を伴い、またその逆も同様である。
【0047】
ベベル部3.5.aは、制動リング2.2のベベル部2.2.aに係合するように構成されている。従って、ベベル部3.5.aは、協調的または同時的な径方向内向きの動きによって、制動リング2.2のベベル部2.2.aに相応に係合する。その結果、ストップラッチ3.5は、制動リング2.2の下面の下に滑り込み、これにより、制動リング2.2を第2の歯車3.2から離間するように軸方向に変位させる。このようにして、伝達要素2.3を軸方向に変位させることで、上述のようにテン輪1.1に対して制動効果を付与する。
【0048】
ストップラッチ3.5の各々は、ストップバネ3.6によって付勢されている。図3および4に示すように、ストップバネ3.6は、ストップラッチ3.5の第1端を径方向内向きに回動させるように構成されている。このようにして、ある種の自己駆動式または自動式の制動効果を実現する。ストップバネ3.6の作用を受けて、ストップラッチ3.5のベベル部3.5.aは、径方向内向きに変位することで、制動リング2.2をリフトさせる。
【0049】
ゼロリセット機構3は、さらに、第2の歯車3.2と同軸の調整リング3.3を有し、これは、第1の歯車3.1とは反対の第2の歯車3.2の側に配置されている。調整リング3.3は、その中心軸に関して、第2の歯車3.2に対して回転可能または回動可能である。調整リング3.3は、第2の歯車3.2と受けリング3.4との間に挟持されている。受けリング3.4と第2の歯車3.2は、互いに固定されている。調整リング3.3は、第2の歯車3.2と受けリング3.4の両方に対して回転可能または回動可能である。
【0050】
第2の歯車3.2に面した調整リング3.3の側に、軸方向に延出する複数のカム3.3.aが設けられている。これらのカム3.3.aの各々は、ベベル側面部3.3.cを有する。ベベル側面部3.3.cは、ストップラッチ3.5の第2端3.5.bに当接している。具体的には、ベベル側面部3.3.cは、ストップラッチの第2端3.5.bに回転取り付けされた車3.7に径方向当接または接線当接している。
【0051】
図3および4にさらに示すように、カム3.3.aは、第2の歯車の貫通開口3.2.aを貫通して延出している。カム3.3.aの軸方向の延出は、第2の歯車3.2の厚さよりも大きい。このように、カム3.3.aの少なくとも一部は、調整リング3.3とは反対に向いた第2の歯車3.2の側から突出している。このようにして、カム3.3.aのベベル側面部3.3.cは、ストップラッチ3.5の車3.7に当接している。
【0052】
調整リング3.3は、その外周に係止歯3.3.bを備える。これらの係止歯3.3.bによって、第2の歯車3.2に対する調整リング3.3の回転を阻止することができる、または、第2の歯車3.2に対する調整リング3.3の回転動を解放し可能とするために、回転を開始させることができる。
【0053】
図4にさらに示すように、調整リング3.3の外周リムの内側部分に、複数の車3.8が設けられている。このようにして、第2の歯車3.2に対する調整リング3.3の明確に規定された回転動がサポートされる。
【0054】
図2にさらに示すように、トゥールビヨン台7.1とゼロリセット機構3との間にボールベアリング3.9が設けられている。具体的には、トゥールビヨン台7.1の外側で周方向に延びる溝とゼロリセット機構3の内側との間に、1つまたは複数のボールベアリング3.9が配置されている。ボールベアリング3.9を受けるように構成された、ゼロリセット機構3の内向きの溝は、第1の歯車3.1と第2の歯車3.2の配置によって形成される。
【0055】
このようにして、ゼロリセット機構3全体が、トゥールビヨン台7.1に対して、またはムーブメント10の基板(図示せず)に対して、自由に回転する。
【0056】
ムーブメント10は、さらに、バネ5.1を備えたロッキングレバー5を含む。ロッキングレバー5は、第2の歯車3.2の外周歯部3.2.bに係合するように構成された歯部5.2.aを備えた自由端5.2を有する。歯部5.2.aが歯部3.2.bに係合している場合には、第2の歯車3.2の回転ひいてはゼロリセット機構3全体の回転が抑止および阻止される。
【0057】
バネ5.1の作用に抗してロッキングレバー5が回動すると、図12に示すように、ゼロリセット機構3が解放され、ゼロリセット機構3全体が、トゥールビヨン台7.1および/またはムーブメント10の基板に対して回転することが可能となる。
【0058】
ムーブメント10は、さらに、図10および14に示すように、カウンタストッパ4.1.aを自由端に有するストップレバー4を含む。カウンタストッパ4.1.aは、キャリッジ1.5のストッパ1.5.aに当接および係合するように構成されている。このようにして、トゥールビヨン台7.1に対して予め規定された回転位置、例えばゼロ秒位置に、秒針1.4が達したら、ゼロリセット動作時のキャリッジ1.5の回転を阻止および阻害することができる。
【0059】
ムーブメント10は、さらに、図1、6、8、および13に示すように、2つの切り替えラッチ6を含む。これらの切り替えラッチ6は、それぞれバネ6.3を備える。切り替えラッチ6は、軸6.4に枢着されている。これらの切り替えラッチ6の各々は第1端を有し、この第1端によって2つの切り替えラッチ6は互いに係合している。従って、受け部6.6に力を付与することにより誘起され得る切り替えラッチ6のうちの一方の回動動作は、第1端6.5を介して他方の切り替えラッチ6に伝達することができる。受け部6.6に力が付与されると、対応した切り替えラッチ6は時計回り方向に回動する。他方の切り替えラッチ6に機械的に結合していることによって、他方の切り替えラッチ6は、図8に示すように、反時計回りに回動する。
【0060】
切り替えラッチ6は、それぞれ、さらなるバネ要素6.2.aを備えたレバー6.7を有する。レバー6.7の端部に、調整リング3.3の係止歯3.3.bに係合している尖端6.1.aを有する回動要素が設けられている。図6に示すように、回動要素6.1は、係止歯3.3.bに係合していることで、第2の歯車3.2に対する調整リング3.3の回転を抑止している。受け部6.6に力が付与されると、2つの切り替えラッチ6が回動し、レバー部6.7は、図8に示すように、係止歯3.3.bから離間するように動かされる。その結果、回動要素は係止歯3.3.bを解放し、調整リング3.3は、解放されることで、ストップバネ3.6の作用を受けて、第2の歯車3.2に対して移動または回転する。
【0061】
回動要素6.1は、バネ要素6.2.aに係合している。受け部6.6に付与された力が取り除かれると、バネ6.3はレバー部6.7を径方向内向きに変位させる傾向があり、これにより、回動要素6.1を係止歯3.3.bに係合させることで、回動要素6.1を介して調整リング3.3に対するトルクを誘起し、これによってバネ要素3.6の作用に抗して調整リング3.3を回転させる。
【0062】
ゼロリセット機能を実行するためのムーブメント10の動作は以下の通りである。駆動モードDとも呼ばれる初期状態では、図11に示すように、ゼロリセット機構3は、ロッキングレバー5を介してトゥールビヨン台7.1に回転ロックされている。秒真7.2は、機械的エネルギー源(図示せず)に連結されており、揺動するテン輪1.1に機械的エネルギーを供給する。ゼロリセット機構3の第1の歯車3.1の外周歯部3.1.aに、ガンギ車1.3が係合している。ガンギ車1.3は、キャリッジ1.5に回転取り付けされているので、回転固定された第1の歯車3.1の周りを、キャリッジ全体が回転する。
【0063】
駆動モードDでは、ストップレバー4は解除位置にある。カウンタストッパ4.1.aは、キャリッジ1.5のストッパ1.5.aの径方向外側に位置している。従って、キャリッジ1.5が回転を受けるときに、ストッパ1.5.aは、カウンタストッパ4.1.aのそばを通り過ぎるように構成されている。
【0064】
さらに、2つの切り替えラッチ6およびそれらの回動要素6.1は、調整リング3.3に係合している。このようにして、駆動モードDにある間は、調整リング3.3は第2の歯車3.2に対して回転固定されている。使用者が、切り替えラッチ6の受け部6.6に力を付与すると、切り替えラッチ、特にその回動要素6.1が径方向外向きに回動し、これにより調整リング3.3を解放する。従って、調整リング3.3は、ストップバネ3.6の作用を受けて、第2の歯車3.2に対して回転する。上述のように、第2の歯車3.2に対して調整リング3.3が回転することによって、貫通開口3.2.a内で周方向に動かされるカム3.3.aにより各ストップラッチ3.5の回動が実現するため、ストップラッチ3.5のバネ仕掛けの回動が可能となる。
【0065】
ストップラッチ3.5の各々は、そのベベル部3.5.aが、リセットバネ3.6の作用によって、径方向内向きの回動動作を受ける。これにより、制動リング2.2を軸方向にリフトまたは変位させて、図9に示すように、制動要素1.2をテン輪1.1の外周リムに摩擦係合させる。ムーブメントすなわちテン輪1.1の揺動動作は、停止させられる。このとき、ムーブメントはリセットモードRにある。
【0066】
秒針1.4は、ムーブメント10の文字盤に対して任意の位置で静止する。このとき、テン輪1.1は停止しているので、使用者は、図10に示すように、ストップレバー4とロッキングレバー5の新たな順次的または共同的な動作を誘起させてよい。ストップレバー4を、図10に示すように停止構成に回動させることで、カウンタストッパ4.1.aとストッパ1.5.aは径方向にオーバラップする。その後、図12に示すように、ロッキングレバー5を、バネ5.1の作用に抗して解除構成に回動させる。このようにして、歯部5.2.aと歯部3.2.bの係合を解除および排除する。ゼロリセット機構3全体が、解放されて、トゥールビヨン台7.1に対して自由に回転する。
【0067】
制動リング2.2を軸方向に変位させることで、テン輪1.1の制動を作動させると、ゼロリセット機構3は、トゥールビヨンユニット1ひいてはキャリッジ1.5に対して回転係合または回転ロックされるようになる。具体的には、制動リング2.2がストップラッチ3.5に係合している限り、クラッチ2は、ゼロリセット機構3とトゥールビヨンユニット1との間の耐トルク係合を提供する。このリセットモードRでは、依然として秒真7.2に係合したままであるトゥールビヨンユニット1は、特にそのキャリッジ1.5が、機械的エネルギー源の作用を受けて回転する。キャリッジ1.5とゼロリセット機構3との間の回転結合によって、図14に示すように、ストッパ1.5.aがカウンタストッパ4.1.aに係合するまで、ゼロリセット機構3全体およびキャリッジ1.5は回転を受ける。このとき、秒針1.4はゼロ設定に達する。
【0068】
トゥールビヨンユニット1とゼロリセット機構のこの共同的回転の際に、ムーブメントを基準と完全に同期させることができる。ムーブメント10が上記のリセットモードにある間は、トゥールビヨンユニット1ならびにゼロリセット機構3は、ムーブメント10のいずれかのラッチまたは他の機械部品と係合することはいずれもない。従って、トゥールビヨンユニット1とゼロリセット機構3の共同的回転を誘起するのに必要な全エネルギーを最小限に抑えることができる。これにより、動力蓄積が増加するとともに、ムーブメント10の長期的安定性および精度がさらに向上することがある。
【0069】
リセットモードRから駆動モードDに戻すためには、上記で説明したステップを逆の順序で実行する。すなわち、ロッキングレバー5の自由端5.2を第2の歯車3.2に係合させることで、トゥールビヨン台7.1に対する第2の歯車3.2のさらなる回転動を阻止する。その後、ストップレバー4を解除構成に回動させて、これによりキャリッジ1.5のストッパ1.5.aのために道をあける。その後、切り替えラッチ6を、バネ要素6.3の作用で回動させることで、回動要素6.1によって、リセットバネ3.6の作用に抗して調整リング3.3に対して回転を誘起する。
【0070】
第2の歯車3.2に対して調整リング3.3が回転することで、カム3.3.aのベベル側面部3.3.cによって、各ストップラッチ3.5に対して回動動作が誘起されるので、ストップラッチ3.5は回動する。これにより、ベベル部3.5.aが径方向外向きに回動することで、皿バネ2.4の作用によって、制動リング2.2は、軸方向の変位が可能となり、解除される。従って、制動リング2.2は、図7に示すように、その解除位置に戻り、テン輪1.1を解放する。このとき、ムーブメントは再び揺動を開始する。
【符号の説明】
【0071】
1 トゥールビヨンユニット
1.1 テン輪
1.2 制動要素
1.3 ガンギ車
1.4 秒針
1.5 キャリッジ
1.5.a ストッパ
2 クラッチ
2.1 フランジ
2.2 制動リング
2.2.a ベベル部
2.3 伝達要素
2.4 皿バネ
3 ゼロリセット機構
3.1 第1の歯車
3.1.a 外周歯部
3.2 第2の歯車
3.2.a 貫通開口
3.2.b 歯部
3.3 調整リング
3.3.a カム
3.3.b 係止歯
3.3.c ベベル側面部
3.4 受けリング
3.5 ストップラッチ
3.5.a ベベル部
3.5.b 第2端
3.6 ストップバネ
3.7 車
3.8 車
3.9 ボールベアリング
4 ストップレバー
4.1.a カウンタストッパ
5 ロッキングレバー
5.1 バネ
5.2 自由端
5.2.a 歯部
6 切り替えラッチ
6.1 回動要素
6.1.a 尖端
6.2.a バネ要素
6.3 バネ
6.4 軸
6.5 第1端
6.6 受け部
6.7 レバー部
7.1 トゥールビヨン台
7.2 秒真
10 ムーブメント
11 文字盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】
2020003485000001.pdf