【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、トゥールビヨン台と、トゥールビヨンユニットと、ゼロリセット機構と、を備えたムーブメントを提供する。トゥールビヨンユニットは、キャリッジと、テン輪と、ガンギ車と、を含む。テン輪およびガンギ車は、キャリッジ上に回転配置されている。キャリッジは、さらに、トゥールビヨン台に回転支持されている。典型的には、トゥールビヨン台は、ムーブメントの基板上に取り付けられる。トゥールビヨン台は、基板に対して不動である。それは、基板に固定されたまま維持される。ゼロリセット機構は、ガンギ車に係合している第1の歯車を有する。ムーブメントが駆動モードにあるときに、テン輪は、典型的には揺動回転運動を受け、ガンギ車は、典型的には段階的連続回転を受ける。典型的には、駆動モードでは、ゼロリセット機構の第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して、そしてムーブメントの基板に対して、固定されている。ガンギ車の歯は、第1の歯車の対応する歯と噛合しているので、ガンギ車の軸は、第1の歯車の周りを移動し、これにより、キャリッジ全体およびトゥールビヨンユニットの回転動を引き起こす。
【0007】
ムーブメントは、駆動モードとリセットモードとの間で切り替え可能である。駆動モードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転ロックされている。リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して自由に回転可能である。リセットモードでは、少なくとも第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して、ひいてはムーブメントの基板に対して、回転可能である。リセットモードにある間、ガンギ車は、ゼロリセット機構の第1の歯車に係合したまま維持される。リセットモードに切り替えられると、ゼロリセット機構全体がトゥールビヨン台に対して回転可能となり得る。
【0008】
典型的には、リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構全体は、トゥールビヨン台またはムーブメントの径方向内向きに延出する案内構造への機械的接触がない。具体的には、ゼロリセット機構の例えば径方向外側に位置する部分またはセクションである外周は、ムーブメントまたはトゥールビヨン台のいずれの任意の構成要素にも機械的に接触していない。このように、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの少なくとも一方が回転するための機械的摩擦および動摩擦を最小限に抑えることができ、これにより、ムーブメントの動力蓄積を増加させることが可能となる。
【0009】
代替的に、ゼロリセット機構の少なくとも第1の歯車は、トゥールビヨン台に対して回転可能であり、一方、ゼロリセット機構の他の構成要素は、トゥールビヨン台に対して固定されて不動に維持される。
【0010】
ゼロリセット機構は、一度にトゥールビヨンユニットとトゥールビヨン台のうちの一方のみに選択的に回転係合することが可能である。駆動モードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転ロックされる一方、トゥールビヨンユニットは、ゼロリセット機構に対して回転可能である。リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して回転可能となる一方、トゥールビヨンユニットに対して回転ロックされる。このように、トゥールビヨンユニット全体が、ゼロリセット機構と一緒に回転可能となる。
【0011】
リセットモードにおいてゼロリセット機構を選択的に回転解放することにより、ムーブメントの高精度な同期を行うことができる。リセットモードにあるときには、トゥールビヨンユニットならびにゼロリセット機構は、外部からの機械的影響をまったく受けなくてよい。トゥールビヨンユニットを予め規定されたリセット位置に回転させるための摩擦損失を最小限に抑えることができる。これにより、トゥールビヨンユニットを予め規定されたリセット位置またはリセット方位方向に回転させるための機械的エネルギー散逸を低減することができる。
【0012】
さらなる例によれば、ムーブメントは、キャリッジ上に配置された制動要素を備え、この制動要素は、解除位置または解除状態から制動位置または制動状態へと、軸方向に変位可能および軸方向に変形可能のどちらか一方である。制動状態にあるときには、制動要素は、テン輪に軸方向に係合する。具体的には、制動要素は、テン輪の外周リムに軸方向に係合し得る。制動要素とテン輪との係合は、制動要素自体を軸方向に変位させることによるか、または制動要素が軸方向の変形を受けるように制動要素の一部分に軸方向の力を付与することによるか、いずれかによって、テン輪に対して制動要素の一部分を軸方向に当接もしくは軸方向に係合させることにより、得られる。
【0013】
制動要素とテン輪の外周リムとの相互の当接または軸方向係合によって、テン輪の正確かつ高信頼性の制動または停止が得られる。例えば、制動要素は、テン輪の外周リムに対して軸方向の摩擦力を付与するように構成されてよい。制動要素が外周リムに対して軸方向に係合することは、テン輪の径方向中央部に対して軸方向に係合する場合と比較して、結果としてテン輪に作用する制動トルクがテン輪の中心からの径方向距離に応じて増加するので、効果的であり得る。テン輪の径方向中央に第1の大きさの第1の制動力を付与すると、第1の制動トルクが生じる。テン輪の外周リムに対して、すなわちテン輪の中央部からの径方向距離を増加させて、同じ力を付与すると、その結果、第1の制動トルクよりも大きい第2の制動トルクが生じる。
【0014】
実際には、かなり抑えたまたは比較的小さい軸方向の制動力をテン輪の外周リムに付与するだけで、テン輪を停止させるのに、ひいてはムーブメントの駆動動作を停止させるのに、十分であり得る。
【0015】
他の例によれば、ゼロリセット機構は、第1の歯車と同軸の第2の歯車を有する。第2の歯車は、第1の歯車に回転ロックされており、回動式ロッキングレバーに係合可能である。回動式ロッキングレバーは、基板またはトゥールビヨン台に枢設されてよい。回動式ロッキングレバーは、トゥールビヨン台に対する第2の歯車および第1の歯車の回転を選択的にロックするように機能する。ロッキングレバーが第2の歯車に係合しているときに、少なくとも第2の歯車および第1の歯車の回転が阻止される。ロッキングレバーを解除構成に回動させることで、第2の歯車を解放して、トゥールビヨン台に対して、またはムーブメントの基板に対して、第2の歯車が回転することを可能とする。
【0016】
典型的には、回動式ロッキングレバーは、第2の歯車の周囲の歯に係合するように構成された少なくとも1つまたは複数の歯を有する。このようにして、第2の歯車ひいてはゼロリセット機構全体のための、かなり正確かつ高信頼性の回転インタロックを提供することができる。
【0017】
他の例によれば、キャリッジは、回動式ストップレバーに係合するように構成されたストッパを有する。回動式ストップレバーは、停止位置と解除位置との間で回動可能である。ストップレバーは、典型的には、例えば回動式ストップレバーの自由端に、カウンタストッパを有する。カウンタストッパは、キャリッジのストッパに選択的に係合するように、径方向に変位可能である。典型的には、キャリッジのストッパは、キャリッジから径方向外向きに突出している。ストップレバーは、特にそのカウンタストッパが、停止位置または停止構成にあるときには、解除位置または解除構成と比較して、径方向内向きに回動されている。
【0018】
このとき、ストップレバーのカウンタストッパとキャリッジのストッパとは、径方向および軸方向にオーバラップして、これにより、ストップレバーが停止位置または停止構成にあるときに、キャリッジのストッパが回動式ストップレバーのカウンタストッパに係合すると、キャリッジの回転は停止される。解除位置または解除構成にあるときには、ストップレバーのカウンタストッパは、径方向外向きに変位している。このとき、キャリッジのストッパは、ストップレバーのカウンタストッパのそばを通り過ぎることができ、キャリッジおよびトゥールビヨンユニットの制限されない回転動をサポートする。
【0019】
さらなる例によれば、リセットモードにあるときには、ゼロリセット機構の第1の歯車および第2の歯車の少なくとも一方は、キャリッジに対して回転ロックされる。この回転インタロックは、軸方向に変位した制動要素によってテン輪を固定することにより得ることができる。さらに、制動要素の作動、すなわち制動要素を制動位置または制動状態に変位させることは、特に第1の歯車および第2の歯車の少なくとも一方であるゼロリセット機構と、トゥールビヨンユニットのキャリッジとの、機械的トルク伝達係合を伴い得る。このようにして、制動要素が作動しているときには、トゥールビヨンユニットがゼロリセット機構に対して回転ロックされることが保証される。このように、制動要素を作動させた後、かつテン輪を停止させた後に、回動式ロッキングレバーが第2の歯車に係合したままである限り、トゥールビヨンユニットは依然として回転を阻止されたままである。
【0020】
第2の歯車に係合した回動式ロッキングレバーが解除構成に回動されることで、トゥールビヨン台またはムーブメントの基板に対して第2の歯車の回転が可能となると、トゥールビヨンユニットのキャリッジに対して回転ロックされたゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの、回転ならびにゼロリセット動作が起こる。このようにして、無制御な機械的エネルギー散逸を防ぐことができる。
【0021】
他の例によれば、機械的エネルギー蓄積器に永久係合した秒真は、キャリッジに対して回転ロックされている。秒真によって、機械的エネルギーを機械的エネルギー蓄積器からトゥールビヨンユニットに伝達することができる。ムーブメントがリセットモードにあるときに、かつロッキングレバーが解除状態にあると、キャリッジ、ひいてはキャリッジに対して回転ロックされたゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニット全体は、キャリッジのストッパがストップレバーに係合するまで、機械的エネルギー蓄積器によって回転可能である。
【0022】
他の例によれば、ストップレバーとロッキングレバーは機械的に結合されている。回動式ロッキングレバーと回動式ストップレバーとの間を機械的に結合することによって、回動式ストップレバーが停止位置または停止構成にあるときにのみ、ロッキングレバーの係止位置から解除位置への回動を提供し、それを可能とする。さらに、ロッキングレバーの解除位置から係止位置への回動動作は、ストップレバーが停止位置にあるときにのみ提供される。すなわち、ストップレバーが作動しているとき、従ってストップレバーがキャリッジの予め規定された位置または回転状態を越えた回転をロックまたは阻止するように機能する停止位置または停止構成にストップレバーがあるときにのみ、ロッキングレバーの解除位置と係止位置との間の回動動作は可能であり許可される。
【0023】
さらなる例によれば、回動式ロッキングレバーが解除位置にあり、かつ回動式ストップレバーが停止位置にあるときに、ゼロリセット機構およびキャリッジは合同して、トゥールビヨン台および/またはムーブメントの基板に対して、ストッパがストップレバーに係合するまで、具体的にはキャリッジの径方向外向きに突出するストッパがストップレバーの径方向内向きに延出するカウンタストッパに接線当接するまで、回転が可能である。この特定の停止構成では、キャリッジひいてはキャリッジに固定された秒針は、例えば文字盤のゼロ位置である文字盤の予め規定されたセクションを指している。
【0024】
典型的には、ゼロリセット機構とキャリッジまたはトゥールビヨンユニットの合同的または共同的な回転動は、キャリッジに回転ロックされた秒真を介して、機械的エネルギー蓄積器によって誘起される。このように、ゼロリセット機構の回転動が解放されると、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットは、機械的エネルギー蓄積器の影響を受けて、予め規定された回転状態に自動的に回転する。ロッキングレバーが解除構成にあるときに、トゥールビヨンユニットおよびゼロリセット機構は、他のいずれかの摩擦誘導部品に機械的に係合することは実質的にない。実際に、トゥールビヨンユニットとゼロリセット機構の共同的な回転動の機械的摩擦は比較的低い。それに応じて、キャリッジ、トゥールビヨンユニット、およびゼロリセット機構を予め規定されたリセット位置に回転させるための機械的エネルギーの量は最小限に抑えられ、従って、ムーブメントの動力蓄積のために効果的である。
【0025】
他の例によれば、回動式ロッキングレバーが解除位置にあるとき、かつ回動式ストップレバーが停止位置にあるときに、ゼロリセット機構は、トゥールビヨン台に対して自由に回転可能である。ゼロリセット機構の回転、およびトゥールビヨンユニットまたはそのキャリッジの合同的な回転は、かなりスムーズであり、かなり低度の摩擦しか伴わない。
【0026】
さらなる例によれば、ゼロリセット機構は、第1の歯車と同軸の調整リングを有し、調整リングは、リセット位置と、少なくとも1つのリセットバネの作用に抗して解除位置と、の間で、第2の歯車に対して回転可能である。第2の歯車に対する調整リングの回転は、ムーブメントを駆動モードとリセットモードとの間で切り替えるように機能する。典型的には、少なくとも1つのリセットバネの作用に抗して調整リングを回転させることで、ムーブメントは、リセットモードから駆動モードに変わる。従って、リセットモードを作動させるためには、弛緩するリセットバネの作用による調整リングの回転を解放するだけでよい。
【0027】
第1の歯車、第2の歯車、および調整リングのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのリセットバネが配置されている場合、すなわち、ゼロリセット機構上またはゼロリセット機構内に少なくとも1つのリセットバネが位置して配置されている場合には、ゼロリセット機構は、もともと、ムーブメントの他のいずれかの構成要素との機械的干渉がないときには、リセットモードに切り替わるように付勢されている。これによって、特に、ムーブメントがリセットモードにあるときに、ロッキングレバーが解除位置に回動されることにより第2の歯車の回転が解放されると、ゼロリセット機構およびトゥールビヨンユニットの自由な回転が可能となる。
【0028】
さらなる例では、少なくとも1つのリセットバネは、少なくとも1つのストップラッチに係合している。少なくとも1つのストップラッチは、ゼロリセット機構に枢設されている。少なくとも1つのストップラッチは、ゼロリセット機構の回転軸に平行に延びる枢軸に関して回動可能である。ストップラッチは、典型的には、第1の歯車、第2の歯車、および調整リングのうちの少なくとも1つに対して、停止位置と解除位置との間で回動可能である。
【0029】
典型的な例または実施形態では、少なくとも1つのストップラッチは、第2の歯車の側に配置される。それは、第2の歯車の回転軸または中心軸に関して径方向内向きに、停止位置に向かって回動可能である。それは、径方向外向きに、解除位置に向かって回動可能である。典型的には、少なくとも1つのリセットバネは、ストップラッチを径方向内向きに位置する停止位置に付勢するように、少なくとも1つのストップラッチに直接係合している。このようにして、ムーブメントの駆動モードからリセットモードへの、かなり自動化されたバネ仕掛けの切り替えを提供することができる。
【0030】
さらなる例によれば、少なくとも1つのストップラッチは、制動リングの対応する形状のベベル部に係合するように構成されたベベル部を有する。制動リングは、ゼロリセット機構に対して軸方向に変位可能であるとともに、制動要素に作動的に係合している。ゼロリセット機構に対する制動リングの軸方向の変位を誘起することにより、制動要素は、制動位置に達するように、または制動状態を満たすように、軸方向に変位するか、または軸方向に変形するか、いずれかである。少なくとも1つのストップラッチの回動動作によって、少なくとも1つのストップラッチのベベル部は、制動リングのベベル部に対して径方向に変位可能である。この径方向の変位および相互に対応するベベル部の勾配または傾斜によって、制動リングは軸方向に変位し、これにより、制動要素の制動効果を誘起する。
【0031】
さらなる例では、調整リングは、ベベル側面部を有する少なくとも1つの軸方向に延出するカムを含む。ベベル側面部は、少なくとも1つのストップラッチに径方向当接または接線当接している。カムのベベル側面部は、さらに、第2の歯車に対して調整リングが回転を受けるときに、少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するように構成されている。典型的には、少なくとも1つのストップラッチは、第2の歯車に配置されている。調整リングが、第2の歯車と同軸の調整リングの回転を受けると、調整リングのカムは、第2の歯車に対して、ひいてはストップラッチに対して、接線方向または周方向の変位を受ける。
【0032】
このとき、実際に、軸方向に延出するカムのベベル側面部は、少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するように機能する。典型的には、カムのベベル側面部が少なくとも1つのストップラッチの回動を誘起するような方向に、調整リングが第2の歯車に対して回転すると、この回転は、少なくとも1つのストップラッチに係合している少なくとも1つのリセットバネの付勢力に抗して作用する。典型的には、少なくとも1つのリセットバネは、少なくとも1つのストップラッチを停止位置に回動させるように構成されており、その停止位置では、制動リングは、制動要素がテン輪に対して軸方向に係合する制動位置にある。
【0033】
少なくとも1つのストップラッチのこのリセットバネ仕掛けの回動によって、カムのベベル側面部を介して、調整リングは第2の歯車に対して相応の回転をする。このように、ムーブメントをリセットモードから駆動モードに切り替えるために、調整リングは、第2の歯車に対して第1の方向に沿って回転可能である。第1の方向に沿った回転は、リセットバネの復元力に抗して作用する。さらに、調整リングは、リセットバネの作用を受けて、第1の方向とは反対の第2の方向に回転可能である。このように、ムーブメントを駆動モードからリセットモードに切り替えるために、リセットバネは、調整リングの第2の方向の回転を誘起するように機能する。
【0034】
さらなる例では、調整リングの第2の方向に沿った回転は、トゥールビヨン台またはムーブメントの基板に枢設された少なくとも1つの切り替えラッチによってロック可能であり得る。調整リングの外周は、切り替えラッチの対向する歯部に係合する歯部を有し得る。ムーブメントが駆動モードにある限り、調整リングは、駆動位置にロックされる。切り替えラッチが作動して、調整リングの第2の方向に沿った回転が解放されると、調整リングは、駆動位置からリセット位置に自由に回転する。従って、切り替えラッチが、調整リングの回転動を解除および解放するとすぐに、少なくとも1つのリセットバネは、調整リングの第2の回転方向に沿った相応の回転を誘起するように機能する。
【0035】
さらなる例によれば、切り替えラッチは、さらに、第2の歯車に対して調整リングの第1の回転方向に沿った回転を誘起するために、すなわち、少なくとも1つのリセットバネが付与するバネ力に抗して調整リングをリセット位置から駆動位置に戻すために、調整リングの外周の歯部に係合するように構成されてよい。
【0036】
他の例によれば、少なくとも1つのストップラッチは、カムのベベル側面部に当接する回転車を有する。回転車は、ストップラッチの自由端に設けてよい。回転車は、ベベル部を備えた少なくとも1つのストップラッチの他端とは反対側に位置する少なくとも1つのストップラッチの一端に設けてよい。回転車によって、調整リングのカムのベベル側面部と少なくとも1つのストップラッチとの間の機械的摩擦を低減することができ、これにより、調整リングが第2の歯車に対して回転するときの少なくとも1つのストップラッチのスムーズな回動を提供する。
【0037】
さらなる例では、カムは、第2の歯車の貫通開口に貫通して軸方向に突出している。少なくとも1つのストップラッチは、調整リングとは反対に向いた第2の歯車の側に配置されている。典型的には、少なくとも1つのストップラッチは、例えばその回転車が、少なくとも部分的に第2の歯車の貫通開口にわたって延出しているか、または側方に第2の歯車の貫通開口内へと及んでいる。このようにして、第2の歯車の貫通開口に貫通して突出しているカムのベベル側面部を、少なくとも1つのストップラッチの回転車に機械的に係合または当接させる。
【0038】
典型的には、第2の歯車の貫通開口は、調整リングのカムのためのスロット状リンクまたはスロット状ガイドを含み得る。このようにして、調整リングが第2の歯車に対して回転するときに、調整リングのカムは、周方向または接線方向に案内され得る。
【0039】
さらなる態様により、上記のようなムーブメントを備えた時計を提供する。時計は、フライングトゥールビヨンを備え得る。時計は、腕時計として実装され得る。
【0040】
以下では、ムーブメントの一例について、図面を参照することにより、さらに詳細に説明する。