【解決手段】電極10は、オーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極である。ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されている。
前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記ステンレスアロイ微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Niメタル微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Cuメタル微粉体の重量比が、2〜6%の範囲にある請求項1に記載の電極。
前記ステンレスアロイ微粉体と前記Niメタル微粉体と前記Cuメタル微粉体との粒径が、10μm〜200μmの範囲にある請求項1ないし請求項5いずれかに記載の電極。
前記ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮した前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低い前記Cuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとして前記ステンレスアロイ微粉体と前記Niメタル微粉体とが接合されている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の電極。
前記オーステナイト系ステンレスが、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、前記ステンレスアロイ微粉体が、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである請求項1ないし請求項7いずれかに記載の電極。
前記微粉体重量比決定工程では、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記ステンレスアロイ微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定し、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Niメタル微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定するとともに、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対する前記Cuメタル微粉体の重量比を2〜6%の範囲で決定する請求項9に記載の電極製造方法。
前記アロイ・メタル遷移金属微粉体作成工程が、前記オーステナイト系ステンレスを10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、前記Niを10μm〜200μmの粒径に微粉砕するとともに、前記Cuを10μm〜200μmの粒径に微粉砕する請求項9又は請求項10に記載の電極製造方法。
前記アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程が、前記アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、前記0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成した前記アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作る請求項9ないし請求項11いずれかに記載の電極製造方法。
前記アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程が、最も融点の低い前記Cuメタル微粉体を溶融させる温度でアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとして前記ステンレスアロイ微粉体と前記Niメタル微粉体とを接合する請求項9ないし請求項12いずれかに記載の電極製造方法。
前記オーステナイト系ステンレスが、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、前記ステンレスアロイ微粉体が、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである請求項9ないし請求項13いずれかに記載の電極製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、陽極又は陰極として使用する電極である。
【0007】
前記第1の前提における本発明の電極の特徴は、電極が、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスを微粉砕したステンレスアロイ微粉体とNiを微粉砕したNiメタル微粉体とCuを微粉砕したCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極であり、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極では、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されていることにある。
【0008】
本発明の電極の一例としては、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比が、47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比が、2〜6%の範囲にある。
【0009】
本発明の電極の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の厚み寸法が、0.03mm〜0.3mmの範囲にある。
【0010】
本発明の電極の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の空隙率が、15%〜30%の範囲にある。
【0011】
本発明の電極の他の一例としては、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の密度が、5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある。
【0012】
本発明の電極の他の一例としては、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との粒径が、10μm〜200μmの範囲にある。
【0013】
本発明の電極の他の一例として、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とが接合されている。
【0014】
本発明の電極の他の一例としては、オーステナイト系ステンレスが、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体が、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである。
【0015】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、陽極又は陰極として使用する電極を製造する電極製造方法である。
【0016】
前記第2の前提における本発明の電極製造方法の特徴は、電極製造方法が、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスを微粉砕してステンレスアロイ微粉体を作り、Niを微粉砕してNiメタル微粉体を作るとともに、Cuを微粉砕してCuメタル微粉体を作る金属微粉体作成工程と、金属微粉体作成工程によって作られたステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、ステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程と、微粉体重量比決定工程によって決定した重量比のステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体とを混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を作るアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程と、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定圧力で加圧してアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作るアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程と、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を作るアロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程とを有することにある。
【0017】
本発明の電極製造方法の一例として、微粉体重量比決定工程では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比を2〜6%の範囲で決定する。
【0018】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ・メタル遷移金属微粉体作成工程が、オーステナイト系ステンレスを10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、Niを10μm〜200μmの粒径に微粉砕するとともに、Cuを10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0019】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程が、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作る。
【0020】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程が、最も融点の低いCuメタル微粉体を溶融させる温度でアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とを接合する。
【0021】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、オーステナイト系ステンレスがSUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体がSUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電極によれば、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスから作られたステンレスアロイ微粉体とNi(ニッケル)から作られたNiメタル微粉体とCu(銅)から作られたCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極であり、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されているから、電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。電極は、それがオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、高価な白金族元素が使用されておらず、非白金の電極であり、それを廉価に作ることができる。電極は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0023】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比が47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比が47〜49%の範囲にあり、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比が2〜6%の範囲にある電極は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比やNiメタル微粉体の重量比、Cuメタル微粉体の重量比を前記範囲にすることで、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比やNiメタル微粉体の重量比、Cuメタル微粉体の重量比が前記範囲にある電極は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0024】
ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲にある電極は、電極の厚み寸法を前記範囲にすることで、電極の電気抵抗を小さくすることができ、電極に電流をスムースに流すことができる。電極は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を有するとともに、それに電流がスムースに流れるから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0025】
ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の空隙率が15%〜30%の範囲にある電極は、アロイ・メタル遷移金属薄板電極の空隙率を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、遷移金属薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ・メタル遷移金属薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。
【0026】
ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極の密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲にある電極は、アロイ・メタル遷移金属薄板電極の密度を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、遷移金属薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ・メタル遷移金属薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。
【0027】
ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との粒径が10μm〜200μmの範囲にある電極は、ステンレスアロイ微粉体やNiメタル微粉体、Cuメタル微粉体との粒径を前記範囲にすることで、ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極が多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型され、アロイ・メタル遷移金属薄板電極の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ・メタル遷移金属薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することができる。電極は、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。
【0028】
ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極において、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体が溶融し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とが接合されている電極は、最も融点のCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とを接合することで、多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を作ることができるとともに、電極が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極に衝撃が加えられたときの電極の破損や損壊を防ぐことができる。電極は、その形状を維持することができるから、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。
【0029】
オーステナイト系ステンレスがSUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体がSUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである電極は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたSUS304、SUS316、SUS340のうちの少なくとも1つとNiとCuとを原料とし、SUS304アロイ微粉体、SUS316アロイ微粉体、SUS340アロイ微粉体のうちの少なくとも1つとNiメタル微粉体とCuメタル微粉体とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極であり、SUS304アロイ微粉体、SUS316アロイ微粉体、SUS340アロイ微粉体のうちの少なくとも1つとNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とが決定されているから、電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極又は陰極として好適に使用することができる。
【0030】
本発明に係る電極製造方法によれば、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、オーステナイト系ステンレスを微粉砕してステンレスアロイ微粉体を作り、Niを微粉砕してNiメタル微粉体を作るとともに、Cuを微粉砕してCuメタル微粉体を作る金属微粉体作成工程と、金属微粉体作成工程によって作られたステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、ステンレスアロイ微粉体の重量比とNiメタル微粉体の重量比とCuメタル微粉体の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程と、微粉体重量比決定工程によって決定した重量比のステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体とを混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を作るアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程と、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を所定圧力で加圧してアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作るアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程と、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を所定温度で焼成して多数の微細な流路を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を作るアロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程との各工程によって電極を製造するから、白金族元素を使用しない非白金の電極を廉価に作ることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、それによって作られた電極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、燃料電池において十分な電気を発電することが可能な電極を作ることができ、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な非白金の電極を作ることができる。
【0031】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程において、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するNiメタル微粉体の重量比を47〜49%の範囲で決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するCuメタル微粉体の重量比を2〜6%の範囲で決定する電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物の全重量に対するステンレスアロイ微粉体の重量比やNiメタル微粉体の重量比、Cuメタル微粉体の重量比を前記範囲において決定することで、ステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とCuメタル微粉体との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、それによって作られた電極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、燃料電池において十分な電気を発電することが可能な電極を作ることができ、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な非白金の電極を作ることができる。
【0032】
金属微粉体作成工程がオーステナイト系ステンレスを10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、Niを10μm〜200μmの粒径に微粉砕するとともに、Cuを10μm〜200μmの粒径に微粉砕する電極製造方法は、オーステナイト系ステンレスやNi、Cuを前記範囲の粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路(通路孔)を有する多孔質に成型されて比表面積が大きいポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を作ることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ・遷移金属薄板電極の接触面に広く接触させることが可能となり、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮することが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な非白金の電極を作ることができる。
【0033】
アロイ・遷移金属微粉体圧縮物作成工程がアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を500Mpa〜800Mpaの圧力で加圧し、0.03mm〜0.3mmの厚み寸法を有して多数の微細な流路を形成したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作る電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、厚み寸法が0.03mm〜0.3mmであって多数の微細な流路(通路孔)を有するアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を作ることができ、白金族元素を使用しない非白金のポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を廉価に作ることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。電極製造方法は、電極の厚み寸法が0.03mm〜0.3mmの範囲の電極を作ることができるから、電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。
【0034】
アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程が最も融点の低いCuメタル微粉体を溶融させる温度でアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物を焼成し、溶融したCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とを接合する電極製造方法は、最も融点のCuメタル微粉体をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体とNiメタル微粉体とを接合することで、多数の微細な流路(通路孔)を有するポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な電極を作ることができる。
【0035】
オーステナイト系ステンレスがSUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つであり、ステンレスアロイ微粉体がSUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つである電極製造方法は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたSUS304、SUS316、SUS340のうちの少なくとも1つとNiとCuとを原料とし、ステンレスアロイ微粉体としてSUS304アロイ微粉体、SUS316アロイ微粉体、SUS340アロイ微粉体のうちの少なくとも1つを利用しつつ、金属微粉体作成工程、微粉体重量比決定工程、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程、アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程との各工程によって電極を製造するから、白金族元素を使用しない非白金の電極を廉価に作ることができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極(陽極又は陰極)を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一例として示す電極10の斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電極の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、電極10の一例として示す部分拡大正面図であり、
図3は、電極10の他の一例として示す部分拡大正面図である。
図1では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0038】
電極10は、陽極(アノード燃料極21)又は陰極(カソード空気極22)として使用され、固体高分子形燃料電池18の燃料極19(触媒電極)や空気極20(触媒電極)(
図6参照)、水素ガス発生装置31の陽極32(電極触媒)や陰極33(電極触媒)(
図9参照)として利用される。電極10は、前面11及び後面12を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。電極10は、多数の微細な流路13(通路孔)を有するポーラス構造(多孔質)のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14である。流路13(通路孔)には、気体又は液体が通流する。なお、電極10の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0039】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、所定の金属(遷移金属)の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス42(アロイ遷移金属)とNi43(ニッケル)(メタル遷移金属)とCu44(銅)(メタル遷移金属)とを原料としている。オーステナイト系ステンレス42には、SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つが使用されている。オーステナイト系ステンレス42としては、SUS304を使用することが好ましいが、SUS316、SUS340、SUS304+SUS316、SUS304+SUS340、SUS304+SUS316+SUS340のいずれかを使用することもできる。SUS304の仕事関数は、4.7(eV)、SUS316の仕事関数は、4.85(eV)、SUS340の仕事関数は、4.76(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)であり、Cuの仕事関数は、5.10(eV)である。
【0040】
電極10は、オーステナイト系ステンレス42を微粉砕したステンレスアロイ微粉体45(微粉状のオーステナイト系ステンレス)とNi43を微粉砕したNiメタル微粉体46(微粉状のNi)とCu44を微粉砕したCuメタル微粉体47(微粉状のCu)とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を所定面積の薄板状に圧縮してアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49とし、そのアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を焼成することから作られている(
図10参照)。
【0041】
ステンレスアロイ微粉体45には、SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つが使用されている。ステンレスアロイ微粉体45としては、SUS304を微粉砕したSUS304アロイ微粉体(微粉状のSUS304)を使用することが好ましいが、SUS316を微粉砕したSUS316アロイ微粉体(微粉状のSUS316)、SUS340を微粉砕したSUS340アロイ微粉体(微粉状のSUS340)、SUS304アロイ微粉体+SUS316アロイ微粉体、SUS304アロイ微粉体+SUS340アロイ微粉体、SUS304アロイ微粉体+SUS316アロイ微粉体+SUS340アロイ微粉体のいずれかを使用することもできる。
【0042】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル金属微粉体混合物48の焼成時に最も融点の低いCuメタル微粉体47が溶融し、溶融したCuメタル微粉体47をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とが接合されている。なお、オーステナイト系ステンレス42(SUS304、SUS316、SUS340)の融点は、1400〜1450℃、Ni43の融点は、1455℃であり、Cu44の融点は、1084.5℃である。
【0043】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)では、ステンレスアロイ微粉体45(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)の仕事関数とNiメタル微粉体46の仕事関数とCuメタル微粉体47の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比が決定され、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するNiメタル微粉体46の重量比が決定されているとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するCuメタル微粉体47の重量比が決定されている。
【0044】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比は、47〜49%の範囲、好ましくは、48%である。アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するNiメタル微粉体46の重量比は、47〜49%の範囲、好ましくは、48%である。アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するCuメタル微粉体47の重量比は、2〜6%の範囲、好ましくは、4%である。ステンレスアロイ微粉体45の重量比やNiメタル微粉体46の重量比、Cuメタル微粉体47の重量比が前記範囲外になると、それら微粉体45〜47の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができないとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を圧縮した後に焼成して作られた電極10が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0045】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)には、径が異なる多数の微細な流路13(通路孔)が形成されている。電極10は、多数の微細な流路13(通路孔)が形成されているから、その比表面積が大きい。それら流路13(通路孔)は、前面11に開口する複数の通流口15と後面12に開口する複数の通流口17とを有し、電極10の前面11の通流口15と後面12の通流口17との間において前面11から後面12に向かって電極10を貫通している。
【0046】
それら流路13は、電極10の前面11と後面12との間において電極10の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、電極10の外周縁16から中心に向かって電極10の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路13は、径方向において部分的につながり、一方の流路13と他方の流路13とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路13は、厚み方向において部分的につながり、一方の流路13と他方の流路13とが互いに連通している。
【0047】
それら流路13(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路13は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面11に開口する通流口15と後面12に開口する通流口15とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積がすべて相違している。それら流路13(通路孔)の開口径や前後面11,12の通流口15の開口径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0048】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にある。電極10の厚み寸法L1が0.03mm未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、電極10の電気抵抗が大きくなり、電極10に電流がスムースに流れず、電極10が固体高分子形燃料電池18に使用されたときに燃料電池18において十分な電気を発電することができず、燃料電池18に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができない。また、電極10が水素ガス発生装置31に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができず、水素ガス発生装置31において短時間に多量の水素ガスを発生させることができない。
【0049】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲にあるから、電極10が高い強度を有してその形状を維持することができ、電極10に衝撃が加えられたときの電極10の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、電極10の電気抵抗を小さくすることができ、電極10に電流がスムースに流れ、電極10Aが固体高分子形燃料電池18に使用されたときに燃料電池18において十分な電気を発電することができ、燃料電池18に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。また、電極10が水素ガス発生装置31に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置31において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0050】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その空隙率が15%〜30%の範囲、好ましくは、20%〜25%の範囲にあり、その相対密度が70%〜85%の範囲、好ましくは、75%〜80%の範囲にある。電極10の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、電極10に開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。電極10の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路13(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面11,12の通流口15の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。
【0051】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路13(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。
【0052】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その密度が5.0g/cm
2〜7.0g/cm
2の範囲、好ましくは、5.5g/cm
2〜6.5g/cm
2の範囲にある。電極10の密度が5.0g/cm
2未満では、電極10の強度が低下し、衝撃が加えられたときに電極10が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。電極10の密度が7.0g/cm
2を超過すると、電極10に多数の微細な流路13(通路孔)が形成されず、電極10の比表面積を大きくすることができない。
【0053】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、その密度が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路13(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。
【0054】
ステンレスアロイ微粉体45(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)の粒径やNiメタル微粉体46の粒径、Cuメタル微粉体47の粒径は、10μm〜200μmの範囲にある。ステンレスアロイ微粉体45やNiメタル微粉体46、Cuメタル微粉体47の粒径が10μm未満では、それら微粉体45〜47によって流路13(通路孔)が塞がれ、電極10に開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15を形成することができず、電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)の比表面積を大きくすることができない。ステンレスアロイ微粉体45やNiメタル微粉体46、Cuメタル微粉体47の粒径が200μmを超過すると、流路13(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面11,12の通流口15の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、電極10に開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15を形成することができず、電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)の比表面積を大きくすることができない。
【0055】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、ステンレスアロイ微粉体45やNiメタル微粉体46、Cuメタル微粉体47の粒径が前記範囲にあるから、電極10が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路13(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面11,12の通流口15を有する多孔質に成型され、電極10の比表面積を大きくすることができ、それら流路を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10のそれら流路13における接触面に広く接触させることができる。
【0056】
図4は、電極10を使用したセル17の一例を示す分解斜視図であり、
図5は、電極10を使用したセル17の側面図である。
図6は、電極10を使用した固体高分子形燃料電池18の発電を説明する図であり、
図7は、電極10の起電圧試験の結果を示す図である。
図8は、電極10のI−V特性試験の結果を示す図である。
【0057】
電極10を使用したセル17の一例としては、
図4に示すように、電極10を使用した燃料極19(アノード)と、電極10を使用した空気極20(カソード)と、燃料極19及び空気極20に介在する固体高分子電解質膜21極接合体膜)(フッ素系イオン交換膜)と、燃料極19の厚み方向外側に位置するセパレータ22(バイポーラプレート)と、空気極20の厚み方向外側に位置するセパレータ23(バイポーラプレート)とから形成されている。それらセパレータ22,23には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。
【0058】
セル17では、
図5に示すように、燃料極19や空気極20、固体高分子電解質膜21が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 24(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体24をそれらセパレータ22,23が挟み込んでいる。固体高分子形燃料電池18では、複数のセル17(単セル)が一方向へ重なり合って直列につながれてセルスタック(燃料電池スタック)を形成する。固体高分子電解質膜21は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0059】
燃料極19とセパレータ22との間には、ガス拡散層25が形成され、空気極20とセパレータ23との間には、ガス拡散層26が形成されている。燃料極19とセパレータ22との間であってガス拡散層26の上部及び下部には、ガスシール27が設置されている。空気極20とセパレータ23との間であってガス拡散層26の上部及び下部には、ガスシール28が設置されている。
【0060】
固体高分子形燃料電池18では、
図6に示すように、燃料極19(電極10)に水素(燃料)が供給され、空気極20(電極10)に空気(酸素)が供給される。燃料極19(電極10)では、水素がH
2→2H
++2e
−の反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H
+)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜21内を通って空気極20(電極10)へ移動し、電子が導線29内を通って空気極20へ移動する。固体高分子電解質膜21には、燃料極19で生成されたプロトンが通流する。空気極20では、固体高分子電解質膜21から移動したプロトンと導線29を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H
++O
2+4e→2H
2Oの反応によって水が生成される。
【0061】
燃料極19(電極10)や空気極20(電極10)は、仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス42(アロイ遷移金属)とNi43(メタル遷移金属)とCu44(メタル遷移金属)とを原料とし、ステンレスアロイ微粉体45(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)とNiメタル微粉体46とCuメタル微粉体47との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比とNiメタル微粉体46の重量比とCuメタル微粉体47の重量比とが決定されているから、燃料極19や空気極20が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0062】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極19(電極10)や空気極20(電極10)との間の電圧(V)を測定した。
図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極19(電極10)や空気極20(電極10)との間の電圧(V)を表す。白金を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池では、
図7の起電圧試験の結果を示す図に示すように、電極間の電圧が1.079(V)前後であったのに対し、電極10(非白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池21では、燃料極19(電極10)や空気極20(電極10)との間の電圧(起電力)が1.04(V)〜1.02(V)であった。
【0063】
I−V特性試験では、燃料極19(電極10)や空気極20(電極10)との間に負荷30を接続し、電圧と電流との関係を測定した。
図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。電極10(非白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池21では、
図8のI−V特性試験の結果を示す図に示すように、白金を担持させた電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。
図7の起電圧試験の結果や
図8のI−V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない非白金の電極10が、電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0064】
電極10は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス42(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)(アロイ遷移金属)とNi43(メタル遷移金属)とCu44(メタル遷移金属)とを原料とし、オーステナイト系ステンレス42から作られたステンレスアロイ微粉体45(SUS304アロイ微粉体とSUS316アロイ微粉体とSUS340アロイ微粉体とのうちの少なくとも1つ)とNi43(ニッケル)から作られたNiメタル微粉体46とCu44(銅)から作られたCuメタル微粉体47とを均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路13を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14であり、ステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とCuメタル微粉体47との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比とNiメタル微粉体46の重量比とCuメタル微粉体47の重量比とが決定されているから、電極10が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極や陰極として好適に使用することができる。
【0065】
電極10(ポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14)は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10を固体高分子形燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。電極10は、それがオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、高価な白金族元素が使用されておらず、固体高分子形燃料電池21に使用する非白金の燃料極19(アノード)や空気極20(カソード)を廉価に作ることができる。
【0066】
図9は、電極10を使用した水素ガス発生装置31の電気分解を説明する図である。電極10を使用した水素ガス発生装置31の一例としては、
図9に示すように、電極10を使用した陽極32(アノード)と、電極10を使用した陰極33(カソード)と、陽極32及び陰極33の間に介在する固体高分子電解質膜34(電極接合体膜)(フッ素系イオン交換膜)と、陽極給電部材35及び陰極給電部材36と、陽極用貯水槽37及び陰極用貯水槽38と、陽極主電極39及び陰極主電極40とから形成されている。
【0067】
水素ガス発生装置31では、陽極32や陰極33、固体高分子電解質膜34が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体41 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体41を陽極給電部材35と陰極給電部材36とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜34は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。陽極給電部材35は、陽極32の外側に位置して陽極32に密着し、陽極32に+の電流を給電する。陽極用貯水槽37は、陽極給電部材35の外側に位置して陽極給電部材35に密着している。陽極主電極39は、陽極用貯水槽37の外側に位置して陽極給電部材35に+の電流を給電する。陰極給電部材36は、陰極33の外側に位置して陰極33に密着し、陰極33に−の電流を給電する。陰極用貯水槽38は、陰極給電部材36の外側に位置して陰極給電部材36に密着している。陰極主電極40は、陰極用貯水槽38の外側に位置して陰極給電部材36に−の電流を給電する。
【0068】
水素ガス発生装置31では、
図9に矢印で示すように、陽極用貯水槽37及び陰極用貯水槽38に水(H
2O)が給水され、陽極主電極39に電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極40に電源から−の電流が給電される。陽極主電極39に給電された+の電流が陽極給電部材35から陽極32(アノード)に給電され、陰極主電極40に給電された−の電流が陰極給電部材36から陰極33(カソード)に給電される。
【0069】
陽極32(電極10)では、2H
2O→4H
++4e
−+O
2の陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極33(電極10)では、4H
++4e
−→2H
2の陰極反応(触媒作用)によって酸素が生成される。プロトン(水素イオン:H
+)は、固体高分子電解質膜34内を通って陰極33(電極10)へ移動する。固体高分子電解質膜34には、陽極32で生成されたプロトンが通流する。
【0070】
電極10は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス42とNi43とCu44とを原料とし、オーステナイト系ステンレス42から作られたステンレスアロイ微粉体45とNi43(ニッケル)から作られたNiメタル微粉体46とCu44(銅)から作られたCuメタル微粉体47とを均一に混合・分散したアロイ・遷移金属微粉体混合物48を所定面積の薄板状に圧縮した後に焼成して多数の微細な流路13を形成したポーラス構造のアロイ・遷移金属薄板電極14であり、ステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とCuメタル微粉体47との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比とNiメタル微粉体46の重量比とCuメタル微粉体47の重量比とが決定されているから、電極10が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、その触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する非白金の陽極32や陰極33として好適に使用することができる。
【0071】
電極10(ポーラス構造のアロイ・遷移金属薄板電極14)は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10を水素ガス発生装置31に使用することで、水素ガス発生装置31において電気分解を効率よく行うことができ、短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。電極10は、それがオーステナイト系ステンレスとNiとCuとを原料とし、高価な白金族元素が使用されておらず、水素ガス発生装置31に使用する非白金の陽極32や陰極33を廉価に作ることができる。
【0072】
図10は、電極10の製造方法を説明する図である。電極10は、
図10に示すように、金属微粉体作成工程S1、微粉体重量比決定工程S2、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4、アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程S5を有する電極製造方法によって製造される。電極製造方法は、所定の金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように選択されたオーステナイト系ステンレス42(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)(アロイ遷移金属)とNi43(メタル遷移金属)とCu44(メタル遷移金属)とを原料として電極10を製造する。
【0073】
金属微粉体作成工程S1では、オーステナイト系ステンレス42を微粉砕してステンレスアロイ微粉体45(SUS304アロイ微粉体(微粉状のSUS304)とSUS316アロイ微粉体(微粉状のSUS316)とSUS340アロイ微粉体(微粉状のSUS340)とのうちの少なくとも1つ)を作り、Ni43を微粉砕してNiメタル微粉体46(微粉状のNi)を作るとともに、Cu44を微粉砕してCuメタル微粉体47(微粉状のCu)を作る。金属微粉体作成工程S1では、微粉砕機によってオーステナイト系ステンレス42(SUS304とSUS316とSUS340とのうちの少なくとも1つ)を10μm〜200μmの粒径に微粉砕し、微粉砕機によってNi43を10μm〜200μmの粒径に微粉砕するとともに、微粉砕機によってCu44を10μm〜200μmの粒径に微粉砕する。
【0074】
電極製造方法は、オーステナイト系ステンレス42やNi43、Cu44を10μm〜200μmの粒径に微粉砕することで、多数の微細な流路13(通路孔)を有する多孔質に成型されて比表面積が大きいポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14を作ることができ、それら流路13を気体や液体が通流しつつ気体や液体を電極10(アロイ・遷移金属薄板電極14)のそれら流路13における接触面に広く接触させることが可能な電極10を作ることができる。
【0075】
微粉体重量比決定工程S2では、金属微粉体作成工程によって作られたオーステナイトアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とCuメタル微粉体47との仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するオーステナイトアロイ微粉体45の重量比を決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するNiメタル微粉体46の重量比を決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するCuメタル微粉体47の重量比を決定する。
【0076】
微粉体重量比決定工程では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比を47〜49%の範囲(好ましくは48%)で決定し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するNiメタル微粉体46の重量比を47〜49%の範囲(好ましくは48%)で決定するとともに、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量(100%)に対するCuメタル微粉体47の重量比を2〜6%の範囲(好ましくは2%)で決定する。
【0077】
電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48の全重量に対するステンレスアロイ微粉体45の重量比やNiメタル微粉体46の重量比、Cuメタル微粉体47の重量比を前記範囲において決定することで、ステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とCuメタル微粉体47との仕事関数の合成仕事関数を白金族元素の仕事関数に近似させることができ、白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極10(陽極又は陰極)を作ることができる。
【0078】
アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3では、微粉体重量比決定工程によって決定した重量比のステンレスアロイ微粉体45と微粉体重量比決定工程によって決定した重量比のNiメタル微粉体46と微粉体重量比決定工程によって決定した重量比のCuメタル微粉体47とを混合機に投入し、混合機によってステンレスアロイ微粉体45、Niメタル微粉体46、Cuメタル微粉体47を攪拌・混合し、ステンレスアロイ微粉体45、Niメタル微粉体46、Cuメタル微粉体47が均一に混合・分散したアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を作る。
【0079】
アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を所定圧力で加圧し、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を作る。アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4では、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によってアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を作る。
【0080】
プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa〜800Mpaの範囲にある。プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)に形成される流路13(通路孔)の開口面積(開口径)が大きくなり、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)をアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)に形成することができない。
【0081】
プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)に形成される流路13(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に小さくなり、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)をアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)に形成することができない。
【0082】
電極製造方法は、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物48を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)の厚み寸法L1を0.03mm〜0.3mm(好ましくは、0.05mm〜0.1mm)にしつつ開口径が1μm〜100μmの範囲の多数の微細な流路13(通路孔)を形成したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49(アロイ・メタル遷移金属薄板電極14)を形成することができる。電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲)の電極10を作ることができるから、電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な電極10(陽極又は陰極)を作ることができる。
【0083】
アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程S5では、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程によって作られたアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を炉(電気炉)に投入し、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を炉において所定温度で焼成(焼結)して多数の微細な流路13(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14(電極10)を作る。
【0084】
アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程S5では、最も融点の低いCuメタル微粉体47を溶融させる温度でアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間〜6時間である。アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程S5では、所定面積の薄板状に圧縮したアロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物49の焼成時において、最も融点の低いCuメタル微粉体47が溶融し、溶融したCuメタル微粉体47をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体46とを接合(固着)する。
【0085】
電極製造方法は、金属微粉体作成工程S1や微粉体重量比決定工程S2、アロイ・メタル遷移金属微粉体混合物作成工程S3、アロイ・メタル遷移金属微粉体圧縮物作成工程S4、アロイ・メタル遷移金属薄板電極作成工程S5の各工程によって厚み寸法L1が0.03mm〜0.3mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜0.1mmの範囲)であって多数の微細な流路13(通路孔)を形成した電極10を製造することができ、白金族元素を使用しない非白金の電極10(陽極又は陰極)を廉価に作ることができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な電極10(陽極又は陰極)を作ることができる。
【0086】
電極製造方法は、それによって作られた電極10が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、固体高分子形燃料電池18において十分な電気を発電することが可能であって固体高分子形燃料電池18に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することが可能な非白金の電極10を作ることができ、水素ガス発生装置31において電気分解を効率よく行うことが可能であって短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な非白金の電極10を作ることができる。
【0087】
電極製造方法は、最も融点のCuメタル微粉体47をバインダーとしてステンレスアロイ微粉体45とNiメタル微粉体45とを接合することで、多数の微細な流路13(通路孔)を有するポーラス構造のアロイ・メタル遷移金属薄板電極14(電極10)を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な非白金の電極10を作ることができる。