【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、上述した本発明の実施形態同様、本発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0045】
3.金属材料の準備及び評価方法
金属材料として、チタンの試験片を準備した。当該試験片に対し、脱脂などの適当な前処理を施した。その後、化学研磨処理を施した。
【0046】
試験片の評価は、各実施例につき3例実施した。評価内容としては、目視による外観の確認と、光沢度計(日本電色工業株式会社製 PG−IIM)による光沢度の測定と、表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製 SJ−400)による表面粗さRaの測定とを行なった。
【0047】
(1)目視による光沢の評価
目視により、光沢のある場合は「光沢」、光沢がなく、梨地状の粗面外観は「粗面」、光沢外観でも粗面外観でもない場合は「半光沢」とする。
【0048】
(2)目視による均一性の評価
目視により、観察した。「均一な表面状態の場合は○」、「表面が不均一な場合は×」とする。より具体的には、キーエンス製マイクロスコープVHX−5000を使用して、材料の表面を撮影した。当該機器が有する変換機能を用いて、撮影した画像を3D画像に変換した(
図1参照)。
【0049】
(3)光沢度の評価
一般的に用いられる光沢度計の60°における数字が大きければ素材に光沢があることを示し、光沢度計の示す数字が小さければ素材に光沢が無いことを示す。
【0050】
(4)表面粗さの評価
表面粗さの評価は算術平均粗さRaの値でRaの値が小さければ光沢状態を示し、Raの値が大きければ粗面状態を示す。
【0051】
上記の評価を元に後述の実施例における化学研磨後の表面状態を定義する。
(i)光沢
目視およびマイクロスコープによる外観が均一な表面状態であること、
光沢度が80以上であること
表面粗さRaを当該試験片上で5点測定し、その平均値が0.45以下であること
表面粗さRaを当該試験片上で5点測定し、その標準偏差が0.05以下であること
これら全てを満たすもの、均一が高く且つ光沢な状態として判定した。
【0052】
(ii)粗面
目視およびマイクロスコープによる外観が均一な表面状態であること
光沢度が20以下であること
表面粗さRaが1.5以上であること
表面粗さRaを当該試験片上で5点測定し、その標準偏差を算出する。その標準偏差を表面粗さRaの平均値で割り、パーセンテージで算出した値が15未満であること
これら全てを満たすものを、均一が高くかつ粗面状態として判定した。
【0053】
(iii)半光沢
目視およびマイクロスコープによる外観が不均一またはシミやムラが存在すること
光沢度が21〜79であること
表面粗さRaが0.45超且つ1.5未満であること
表面粗さRaを当該試験片上で5点測定し、その標準偏差を算出する。その標準偏差を表面粗さRaの平均値で割り、パーセンテージで算出した値が15以上であること
これらのいずれかに該当するものを定義する。
【0054】
(実施例1)
適当な前処理を施した市販の純チタン板(表面積1dm
2)を、水酸化ナトリウムを100g/L、35%過酸化水素水を200g/L、硫酸イオンが50g/Lになるように硫酸ナトリウムを添加、有機酸塩としてシュウ酸ナトリウムを50g/L、ノニルフェノールエトキシレート含有非イオン系界面活性剤を0.2g/L添加し、温度30℃に調整した処理液に20分間浸漬し、外観を評価した。
【0055】
(実施例2)
実施例1の水酸化ナトリウムの替わりに水酸化カリウムを使用して実施例1と同条件で試験を行なった。
【0056】
(実施例3〜10)
実施例1の硫酸ナトリウムの替わりに表1に示す化合物を使用して実施例1と同条件で試験を行なった。
【表1】
【0057】
(実施例11〜19)
実施例1のシュウ酸ナトリウムの替わりに表2に示す有機酸塩を使用して実施例1と同条件で試験を行なった。
【表2】
【0058】
(実施例20〜24)
実施例1のシュウ酸ナトリウムの替わりに表3に示す有機酸化合物を使用して5g/Lを添加し、実施例1と同条件で試験を行なった。
【表3】
【0059】
(実施例25〜27)
実施例1の非イオン系界面活性剤の替わりに表4に示す非イオン系界面活性剤を使用して5g/Lを添加し、実施例1と同条件で試験を行なった。
【表4】
【0060】
(実施例28〜39)
実施例28〜39については実施例1の化学研磨液中の各濃度条件を表5に示すように変化させて試験を行った。
【表5】
【0061】
(実施例40〜43)
実施例40〜43については、実施例1において、処理温度20℃(実施例40)、40℃(実施例41)、50℃(実施例42)、60℃(実施例43)で実施した。
【0062】
(実施例44〜48)
実施例44〜48については、実施例1において、処理時間10分(実施例44)、30分(実施例45)、40分(実施例46)、50分(実施例47)、60分(実施例48)で実施した。
【0063】
(実施例49〜60)
実施例49〜60においては実施例1の化学研磨液中の各濃度条件を表5(実施例28〜39)に示すように変化させ、さらに処理温度50℃にて試験を行なった。
【0064】
(実施例61〜72)
実施例61〜72においては実施例1の化学研磨液中の各濃度条件を表5(実施例28〜39)に示すように変化させ、さらに処理時間60分にて試験を行なった。
【0065】
(比較例1)
適当な前処理を施した市販の純チタン板(表面積1dm
2)を市販のチタンおよびチタン合金向け研磨剤(チタニック99:製品名、日本表面化学株式会社製、フッ素化合物含有(フッ素化合物として約20g/L)、チタニック99A:650mL/L チタニック99B:350mL/L)を温度70℃に調整した処理液に10分浸漬し、チタン表面を研磨し、その外観を評価した。
【0066】
(比較例2)
適当な前処理を施した市販の純チタン板(表面積1dm
2)を55%フッ化水素酸50(mL/L)と67.5%硝酸150(mL/L)からなる温度70℃に調整した研磨処理液に10分浸漬し、チタン表面を研磨し、その外観を評価した。
【0067】
(比較例3〜5)
比較例3〜5は適当な前処理を施した市販の純チタン板(表面積1dm
2)を表6に示す酸300mL/Lからなる温度70℃に調整した研磨処理液に30分間浸漬し、チタン表面を研磨し、その外観を評価した。
【表6】
【0068】
(比較例6)
比較例6として、実施例1の処理液から水酸化ナトリウムを抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行なった。
【0069】
(比較例7)
比較例7として、実施例1の処理液から過酸化水素水を抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行なった。
【0070】
(比較例8)
比較例8として、実施例1の処理液から硫酸ナトリウムを抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行なった。
【0071】
(比較例9)
比較例9として、実施例1の処理液からシュウ酸ナトリウムを抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行なった。
【0072】
(比較例10)
比較例10として、実施例1の処理液から非イオン系界面活性剤を抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行なった。
【0073】
(比較例11〜12)
比較例11〜12 については、実施例1において、温度10℃(比較例11)、80℃(比較例12)で実施した。
【0074】
(比較例13〜14)
比較例13〜14については、実施例1において、処理時間5分(比較例13)、80分(比較例14)で実施した。
【0075】
実施例1〜72、比較例1〜14について、外観及び均一性、光沢度、Raを評価した。評価結果を表7に示す。
【0076】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【0077】
いずれの実施例(光沢仕上がり)においても、Raの標準偏差が十分に低いものとなっていた。また、いずれの実施例(粗面仕上がり)においても、Raの標準偏差と平均値のパーセンテージが十分に低いものとなっていた。従って、全ての実施例において所望の均一性を実現することができた。
【0078】
一方で、比較例1〜2では、所望の均一性は実現できているものの、処理液においてフッ素化合物が含まれていた。
【0079】
比較例3〜11及び13では、半光沢状態であり、Raの標準偏差が大きかった。また、Raの標準偏差と平均値のパーセンテージが大きくなっていた。
【0080】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に提供することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。