【課題】フレキシブル型のトップエミッション型の有機ELパネルにおいて、発光面ではない側からの観察においては欠陥の認識を行いにくいことと、剛性を有していないことによるハンドリングの困難さから、欠陥画素に正しくレーザが照射されない危険性がある。
【解決手段】欠陥の確認時とレーザの照射時との間にパネルを搭載する観察台への固着を解除しない、および、画素の発光状態を観察する光学系と、パルスレーザ光を照射する光学系と対向させて配置する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、各画素内に配置されている有機EL材料に電流を供給することにより画素ごとに発光するので、バックライトからの照明光を段階的に遮る方式である液晶ディスプレイに比較して、コントラストが高いという特徴を有することから近年応用範囲が広がっている。従来は
図1に構造を示すように、ガラス基板30と透明フィルム33に挟まれる構成のボトムエミッション型という有機ELパネルの構成が主流であった。(非特許文献1)この構成は、ガラス基板30上に薄膜トランジスタ31が形成され、薄膜トランジスタ31により供給される電流が、図示しない透明電極膜を介して、青色、緑色、赤色のそれぞれの有機EL発光層32b、32g、32rに供給され、それぞれ矢印34b、34g、34rに示すようにガラス基板側に光が出力される構成のものである。
【0003】
ボトムエミッション型に対して、
図2に示すようなトップエミッション型の有機ELパネルが近年多く用いられるようになってきている。このトップエミッション型の有機ELパネルは、ボトムエミッション型に比較して発光効率が高い(非特許文献2)という特性があり、携帯機器に適している。このトップエミッション型の有機ELパネルは、薄膜トランジスタ38の上部に配置した有機EL発光層39b、39g、39rが発光し、薄膜トランジスタが配置されていない透明フィルム36側にそれぞれ矢印34b、34g、34rに示すように光が出力される構成である。有機ELパネルのフレキシブル化と高精細化をもたらした要因に、ポリイミドフィルム上に薄膜トランジスタを構成する構造(非特許文献3)および酸化物半導体材料IGZOによるトランジスタ構造の小型化(非特許文献4)がある。これら技術を用いることによりフレキシブルであり高精細の有機ELパネルは、
図2に示すようにポリイミド層35上に、酸化物半導体IGZOを用いた薄膜トランジスタ38が構成された構造となっている。またポリイミド層35の下側には、ポリイミド層35の保護などを目的として透明フィルム37が形成されている。
【0004】
酸化物半導体材料IGZOを用いた薄膜トランジスタ38の構造を
図3、
図4に示す。酸化物半導体材料IGZO層40は、透明フィルム37、ポリイミド層35上に形成されており、絶縁膜41を介してゲート電極42が形成されている。ゲートの側面にドレインを形成するために酸化物半導体材料IGZO層40上にドレイン電極44およびソースを形成するために酸化物半導体材料IGZO層40上にソース電極43が形成されている。そして、薄膜トランジスタ38をONするためには、ゲート電極42およびソース電極43にトランジスタをONさせる電圧信号が入力された時に、ソース電極43とドレイン電極44との間に電流が流れ、この電流を有機EL発光層に供給することにより該当する素子が発光する。液晶ディスプレイは1画素あたりに1つのトランジスタを配置することによりディスプレイを構成することができたが、有機ELディスプレイは、1画素あたりに必要な電流量が多いため、1画素に2つのトランジスタを必要とする。(非特許文献1)そのため、トランジスタの不調による画像の不具合の発生頻度は、液晶ディスプレイに比較して増加している。
【0005】
トランジスタの不調による画像の不具合の修正方法として、レーザ光を薄膜トランジスタに照射し、トランジスタを破壊あるいはトランジスタの特性を変えることにより修正する方法がある。有機ELパネルの構成が
図1に示すボトムエミッション型である場合には、薄膜トランジスタ31は透明であるガラス基板30側あるいは透明であるフィルム33側からのどちらからでも薄膜トランジスタを遮る構造物がないのでレーザ照射が容易であったが、
図2に示すトップエミッション型の有機ELパネル構造の場合には、透明フィルム36側には各色の有機EL発光層があり、透明フィルム37側には、短波長を透過しないポリイミド層がある。非特許文献5においては、アニール処理がなされた酸化物半導体IGZOの透過波長特性は500nm〜700nmの波長範囲で15%以上の吸収率を有するが、これらの波長の光を透明フィルム36側よりレーザ光を照射すると、有機EL発光層39b、39g、39rにおいて吸収され、薄膜トランジスタ38に到達しない。そこで、これらの波長範囲の光をトランジスタ38に到達させるためには、透明フィルム37側より照射することとなる。
【0006】
ポリイミド層35は青色波長域の光を吸収するため、
図2に示すトップエミッション型の有機ELパネル構造の場合には、青色画素の光は透明フィルム37側にはあまり出射しにくい構成となっているので、透明フィルム37側からは青色の画素の欠陥の認識を行いにくいという欠点がある。携帯電話に用いられる有機ELパネルは、
図2に示すように剛性の高い基板材料を有さない構造となっているので、透明フィルム36側より欠陥の確認を行い、再度パネルをセットして透明フィルム37側からレーザ照射を行うと位置ずれを生じやすく、欠陥画素に正しくレーザが照射されない危険性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ボトムエミッション型の有機ELパネルの発光素子の概略構成図である。
【
図2】トップエミッション型の有機ELパネルの発光素子の概略構成図である。
【
図3】酸化物半導体材料を用いた薄膜トランジスタの概略構成断面図である。
【
図4】酸化物半導体材料を用いた薄膜トランジスタの概略構成図である。
【
図5】本発明のレーザリペア装置の概略構成図である。
【
図6】本発明のレーザリペア装置の最初の工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の有機ELパネル全体の撮影画像を示す図である。
【
図8】本発明の有機ELパネル全体の撮影画像を示す図である。
【
図9】本発明の有機ELパネル全体の撮影画像を示す図である。
【
図10】本発明の有機ELパネル全体の撮影画像を示す図である。
【
図11】本発明の有機ELパネルの観察台への固着工程を示す図である。
【
図12】本発明の有機ELパネルの特性不良を有する画素の特定を行う工程の説明図である。
【
図13】本発明のレーザリペア装置において、レーザ照射位置の微調整を行う工程の説明図である。
【
図14】本発明のレーザリペア装置において、レーザ照射工程の説明図である。
【
図15】本発明のレーザリペア装置において、レーザ照射位置の説明図である。
【
図16】本発明のレーザリペア装置において、レーザ照射による修正工程の確認を行う工程の説明図である。
【
図17】本発明のレーザリペア装置の最終工程を示す説明図である。
【
図18】本発明のパネルの観察台への固着方法の一例を示す図である。
【
図19】本発明のパネルの観察台への固着方法の一例を示す図である。
【
図20】本発明のパネルの観察台への固着方法の一例を示す図である。
【
図21】本発明のパネルの観察台への固着方法の一例を示す図である。
【
図22】本発明のパネル観察台の概略構成図を示す図である。
【
図23】本発明のパネル観察台の構成要素の概略構成図を示す図である。
【
図24】本発明のパネル観察台の構成要素の概略構成図を示す図である。
【
図25】本発明のパネル観察台の構成要素の概略構成図を示す図である。
【
図26】本発明のパネル観察台の構成要素の概略構成図を示す図である。
【
図27】本発明のパネル観察台に接続される真空配管構成の概略を示す図である。
【
図28】本発明の第2の実施の形態によるレーザ照射ユニットの概略構成図である。
【
図29】本発明の第2の実施の形態によるレーザ照射ユニットを用いたレーザ照射位置の説明図である。
【
図30】本発明の第3の実施の形態によるレーザ照射ユニットの概略構成図である。
【
図31】本発明の第3の実施の形態によるレーザ照射ユニットのビーム径調整機構の概略説明図である。
【
図32】本発明の第3の実施の形態によるレーザ照射ユニットを用いたレーザ照射位置の説明図である。
【
図33】本発明の第4の実施の形態によるレーザ照射ユニットの概略構成図である。
【
図34】本発明の第4の実施の形態によるレーザ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施の形態によるレーザリペア装置101の概略構成を
図5に示す。レーザリペア装置101は、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を有する有機ELパネル130のパネル全体の撮影可能な視野を持つ光学系112と、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を画素単位で認識する光学系150と、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥にレーザを照射する光学系160と、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を画素単位で認識する光学系150による観察工程と薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥にレーザを照射する光学系160によるレーザ光を照射する工程とにおいて有機ELパネル130を固定する観察ステージ120と、観察ステージ120を移動する粗動移動機構127および微動移動機構128よりなる。レーザリペア装置101は、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を有する有機ELパネルが納められているトレイ110からロボット111により有機ELパネルが搬入する構成とされており、レーザリペア装置101におけるレーザリペア工程が終了した有機ELパネル130はロボット111によりトレイ110に格納される構成となっている。
【0014】
図6〜
図17を用いて、第1の実施例であるレーザリペア装置101を用いたレーザリペア工程の説明を行う。本発明の実施例においては、有機ELパネル130は、
図2における表示を行う側に配置されている透明フィルム36側の主面が下向きになるような配置である。
図6においては、トレイ110に収められている薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を有する有機ELパネル130をロボット111によりクランプすることによりレーザリペア装置101に搬入する。そして、有機ELパネル130の表示パネル全体の撮影可能な視野を持つ光学系112により全画素の点灯作業と消灯作業を行い欠陥画素の有無と欠陥画素の位置を数ピクセルの精度で取得する工程である。
有機ELパネルのパネル全体の撮影可能な視野を持つ光学系112は、撮像素子12とマクロレンズ13よりなり、およそ1ピクセルの単位で欠陥位置の特定を行うことができる。具体的には、画素数が8メガピクセルの撮像素子12を用い、この解像度を得ることができるマクロレンズ13を用いることとし、有機ELパネル130の画素数が8メガピクセルであれば、ほぼ1画素程度の位置分解能を得ることができる。有機ELパネル130のすべての画素に点灯する信号を与え撮影した画像の例を
図7に示す。この
図7に示した例においては、有機ELパネル130の全部の画素を点灯して明るくなった部分15が、撮像素子12の撮影視野14に収められ撮影されている。
図8は、
図7より有機ELパネルの表示可能範囲16の位置を
図7の輝度の差から求め表示した画像を示す。次に有機ELパネル130のすべての画素に消灯させる信号を与え撮影した画像の例を
図9に示す。この
図9に示した結果において、明るい領域として撮影された部分17が常時点灯欠陥であり、薄膜トランジスタが入力信号によらずON状態となり、有機EL素子に電流を常時流している画素であり、レーザによる薄膜トランジスタのリペア処理が必要な画素である。
図8の結果と合わせた画像例を
図10に示す。この
図10に示した結果から、有機ELパネル130の発光領域16において欠陥17がどこにあるかという情報と、視野14において欠陥17がどこにあるかという情報が得られる。視野14において欠陥17がどこにあるかという情報は、ロボット111のどの位置に欠陥があるのかという情報と等しい。トレイ110からパネル全体の撮影可能な視野を持つ光学系112の撮影領域に有機ELパネル130を移動させる際に、ロボット111のクランプ部と有機ELパネル130との間に滑りが生じても、前述のように有機ELパネル130の発光領域16において欠陥17がどこにあるかという情報が取得されているので、トレイ110に格納される前に画素の欠陥検査工程が行われている場合には、その欠陥検査工程との結果の比較を行うことができる。
【0015】
図11は、粗動移動機構127を駆動することにより、パネル全体の撮影可能な視野を持つ光学系112により有機ELパネル130を撮影した直下の位置に観察ステージ120を移動する。そしてロボット111を垂直に移動させることにより、ロボット111から観察ステージ120への有機ELパネル130の受け渡しを行う。観察ステージ120の構成は具体的構成を後述するが、厚さ0.9ミリメートル程度のガラス部材およびガラス部材を保持する金属製のベース部材により構成されている。
ここで、ロボット111は垂直な動作しかしていないので、ロボット111のクランプ部と有機ELパネル130との間に滑りは生じにくいという対策が施されている。有機ELパネル130における欠陥17の位置は後述する観察ステージ120のレーザ照射可能領域に配置するよう粗動移動機構127を駆動する。
【0016】
次に
図12に示すように、粗動移動機構127を駆動し、薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥を画素単位で認識する光学系150の観察視野内に観察有機ELパネルにおける欠陥17を移動させる。光学系150は、白色LED照明光源などのランプ光源51、ランプ光源からの光を用いて対物レンズ53の視野および後述する対物レンズ63の視野を照明するためのレンズ機構55、ハーフミラー57、対物レンズ53からの画像を観察する結像レンズ59および撮像素子52、さらに後述するパルスレーザ光源61の光を遮蔽する光学フィルター56よりなる。ランプ光源51による照明光の光束を58に示し、対物レンズ53による観察画像の光束を59に示す。光学系150により、有機ELパネル130に全画素が消灯する信号を与え撮影を行い、欠陥画素17の位置の確認を行う。
対物レンズ53の倍率は例えば10倍とし、厚さ0.9ミリメートルの観察ステージ120のガラス部材および有機ELパネル130の透明フィルム36を通しても球面収差によるぼけの影響の少ない倍率とする。ここで、10倍の対物レンズと2メガピクセル程度の撮像素子を用いた場合において、光学系150は、2.3ミリメートル程度の領域を1.2ミクロンメートル程度の分解能で撮影できることとなる。そして、対象とする有機ELパネルを例えば、4インチの大きさで8メカピクセルの仕様と仮定すると、1つの画素の大きさは約25ミクロンメートルとなる。したがって、光学系150の分解能は、1画素の大きさの1/20程度の分解能を有しているので、欠陥が連続した複数の欠陥であるのか、あるいは、単独の独立した欠陥であるのかを十分な精度で把握することができる。さらに、撮影視野として2.3ミリメートルの視野を有しているので、粗動移動機構127の精度が0.5ミリメートル程度という安価な移動機構を用いても光学系150の観察視野の外に欠陥17が位置する危険性はないので、確実に欠陥17の観察を行うことができる。そして、精密移動機構128を用いて、対物レンズ53の観察視野のほぼ中心に欠陥を移動させる。
【0017】
図13を用いて、レーザ照射位置の調整工程について説明する。薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥にレーザを照射する光学系160は、パルスレーザ光源61から出射されるレーザ光をほぼ平行にする光学レンズ65、66と平行光とされたレーザ光を、対物レンズ63に入射するためパルスレーザ光源61から出射するレーザ光を選択的に反射するミラー68を有する。さらに光学系160は、対物レンズ63の観察視野の画像を撮像素子62で観察するための結像レンズ64と、パルスレーザ光源61から出射されるレーザ光が撮像素子62に入射しないようにする光学フィルター67を有する。
薄膜トランジスタの特性不良による画素欠陥にレーザを照射する光学系160においては、有機ELパネル130のポリイミド層35および透明フィルム37がある状態で薄膜トランジスタにレーザ光を照射するので、ポリイミド層35および透明フィルム37の厚さに相当する球面収差が補正された対物レンズ63を用いることが望ましい。対物レンズ63の具体例としては、オリンパス社製のLUCPLFLN 40XPHなどである。このレンズは倍率が40倍であり、0ミリメートルから2.0ミリメートルの厚さのガラスに相当する球面収差を補正することができるので、ポリイミド層35および透明フィルム37を通しても有機ELパネル130に形成されている薄膜トランジスタ38の観察およびレーザ光の照射を球面収差を取り除いた状態として行うことができる。
本実施例においては対物レンズ63と対物レンズ53は有機ELパネル130を挟んで対向する位置に配置されており、対物レンズ63と対物レンズ53の光軸もほぼ一致してある構成となっている。前記
図12に示した工程において、有機ELパネル130の欠陥の画素は、対物レンズ53の視野の中心に移動してあるので、対物レンズ63の視野に位置しているとともに、どの薄膜トランジスタが修正を行うべき薄膜トランジスタであるかが把握できる状態となっている。そして、観察光学系150の照明51を点灯し、撮像素子62により有機ELパネル130の欠陥画素におけるレーザ光の照射を行う部分に、光源61から出射されるレーザ光の集光スポットが位置するように精密移動機構128を用いて有機ELパネル130を移動させる。
図13における例においては、撮像素子62を用いた有機ELパネル130の欠陥の画素の観察時において、観察光学系150の照明51を点灯させる透過照明光学系により構成例としているが、撮像素子62での観察において薄膜トランジスタの位置の確認ができれば照明は透過照明光学系である必要はなく、落射照明光学系でも構わない。
【0018】
図14に、パルスレーザ光源61を発光させ、レーザ光を照射すべき薄膜トランジスタにパルスレーザ光を照射する工程を示す。ここでパルスレーザ光源61には、非特許文献6に示す波長532ナノメートルのパルスレーザを用いる例を示している。532ナノメートルの波長は、ポリイミド層35における吸収も少なく、非特許文献5に示すように酸化物半導体層が吸収を有する波長帯域であるので、このパルスレーザ光の照射により薄膜トランジスタを破壊あるいは薄膜トランジスタの特性を変えることが可能である。パルスレーザ光源61から出射されたレーザ光は、光学フィルター67および光学フィルター56により遮蔽されるので撮像素子52および撮像素子62に損傷を与えることがない。
図15に有機ELパネル130の欠陥画素の薄膜トランジスタ38におけるレーザ照射スポット87を示すが、レーザ照射スポットの形状は、対物レンズ63に入射するレーザ光光束69の径、対物レンズ63の倍率などにより調整することができる。
【0019】
図16にレーザ照射を行った有機ELパネル130の欠陥画素の薄膜トランジスタ38が想定とおりの特性となっているのかの確認を行う工程を示す。本発明の第1の実施例においては、レーザ光の照射を行った有機ELパネル130の欠陥画素は、光学系150の対物レンズ53の視野の中心に位置しているので、粗動移動機構127および精密移動機構128を移動させることなく、有機ELパネル130に有機ELパネル130に目標とする評価を行う信号を与え、光学系150で観察することにより、欠陥画素の薄膜トランジスタ38が想定とおりの特性となっているのかの判定を行うことができる。そして、欠陥画素の薄膜トランジスタ38が想定とおりの特性になっていなければ、粗動移動機構127および精密移動機構128を移動させることなく
図14に示したレーザ光照射工程を再度行うことにより対応を行う。
ここで、光学系150は、画素ごとに独立して評価を行う解像度を有しているので、2つの欠陥が連続して存在している場合などにおいても、レーザ光を照射した薄膜トランジスタ38が想定とおりの特性となっているのかの判定を行うことができる。
【0020】
図17に、欠陥画素の修正を行った有機ELパネル130をトレイ110に格納する工程を示す。粗動移動機構127あるいは粗動移動機構127と精密移動機構128によりロボット111がクランプできる位置に欠陥画素の修正を行った有機ELパネル130を移動させる。そして、ロボット111が欠陥画素の修正を行った有機ELパネル130をクランプし、トレイ110に欠陥画素の修正を行った有機ELパネル130を格納することにより、レーザリペア装置101によるレーザリペア処理が終了する。
【0021】
図18から
図21を用いて、有機ELパネル130を固定する観察ステージ120の機能と、
図11に示したロボット111から観察ステージ120への有機ELパネル130の受け渡し方法についての説明を行う。観察ステージ120は、有機ELパネル130の固定を行うための真空チャック機能を有している。
図18に示すように複数の真空吸引孔21a〜21pが有機ELパネル130と触れる面に形成されている。真空吸引孔の上にレーザ照射を行いたい欠陥画素があると光学系150による画像の観察精度が低下するので、本発明においては光学系150による観察時に精度が低下しない所定の位置19に、光学系112により観察した有機ELパネル130の欠陥位置17が配置するように有機ELパネル130を搭載する。
図18は、欠陥位置17が有機ELパネル130のほぼ中央に位置している例を示す。光学系112により観察したパネル外形16に対応する位置を
図18に示すが、パネル外形16よりも内側にある真空吸引孔は、21f、21g、21j、21kであり、他の真空吸引孔は、パネル外形16よりも外側にある。したがって、この例においては、パネル外形16よりも内側にある真空吸引孔21f、21g、21j、21kより真空吸引することによりパネル130を固定する。
図19から
図21に欠陥17の位置がパネルの中央ではない例をそれぞれ示す。
図19は有機ELパネル130の左右方向の中央部、上下方向の上端付近に欠陥がある例である。この場合においては、光学系112で得たパネル外形位置と欠陥位置より、欠陥位置17を所定の位置19に配置した場合に、真空吸引孔21j、21k、21n、21oがパネル外形16よりも内側にある真空吸引孔として認識することができるので、真空吸引孔21j、21k、21n、21oより真空吸引しパネル130を固定する。
図20は有機ELパネル130の左右方向の右端部、上下方向の中央付近に欠陥がある例であり、
図21は有機ELパネル130の左右方向の左端部、上下方向の上端付近に欠陥がある例である。これらの場合においても、光学系112によりパネル外形16と欠陥位置17を認識しているので、欠陥位置17を所定の位置19に配置した場合にパネル外形16よりも内側にある真空吸引孔が、
図20に示した場合には、21e、21f、21i、21jであり、
図21に示した場合には、21k、21l、21o、21pであることが認識でき、パネル外形16よりも内側の真空吸引孔より真空吸引しパネル130を固定することができる。
このように光学系112により得たパネル外形16の情報と欠陥位置17の情報により、観察ステージ120への有機ELパネル130の搭載位置を調整し、さらに真空吸引を行う真空吸引孔の位置を調整することにより、レーザ照射を行いたい欠陥画素17の位置は、光学系150による観察精度の低下が生じない領域19に搭載できることに加え、有機ELパネル130のパネル面のほぼ全体よりしっかりと真空吸引されることとなるので、観察ステージ120を粗動移動機構127あるいは精密移動機構128による移動を行った際に滑りが生じることを防止できるので、欠陥画素を見失う危険性を減らすことができる。
【0022】
図22に観察ステージ120の具体的構成を示す。観察ステージ120は、例えば3枚の厚さ0.3ミリメートルの透明な平行ガラス板121、122、123と2つの金属よりなる真空チャックベース124より構成されている。
図23〜
図26に平行ガラス板121、122、123と真空チャックベース124の具体的形状を示す。
図23に示すガラス板121においては、真空吸引孔21aから21pとなる貫通孔が21aから21pが形成されている。
図24に示すガラス板122においては、前記真空吸引孔21aから21pを接続するように直線状あるいは屈曲した貫通孔22aから22pが形成されている。
図25に示すガラス板123においては、前記直線状あるいは屈曲した貫通孔22aから22pを接続するように貫通孔23aから23pが形成されている。3枚の平行ガラス板121、122、123は、透明な光学接着剤により接着一体化されており、ガラス板121に形成されている貫通孔21aから21pは、ガラス板123に形成されている貫通孔23aから23pにリークなく接続される構成とされている。観察ステージ120の真空チャックベース124には、ガラス板123と接触する主面126にガラス板123に形成されている前記貫通孔23aから23pに接続される孔24aから24pが形成され、主面126の直交する主面である125には孔24aから24pに接続される孔25aから25pが形成されている。そして、真空チャックベース124とガラス板123とを孔をふさがないように接着固定することにより、ガラス板121に形成されている貫通孔21aから21pは、真空チャックベース124に形成されている孔25aから25pにリークなく接続される真空吸引孔を構成することができる。欠陥が配置される所定の位置19の位置を
図23から
図26に示すが、この領域には、孔が形成されていない場所であり透明な光学接着剤により接着一体化がなされているので、十分な平坦性と透明性が維持されているので、光学系150により観察ステージ120を通した観察を行っても観察精度の低下が生じない。
図27は真空チャックベース124に構成される孔24aから24pに接続され、有機ELパネル130の観察ステージ120への搭載位置に応じた真空吸引の制御を行う真空制御配管の一部の例を示す。この例は真空チャックベース124に構成される孔25e、25a,25f、25b、25c、25g、25d、25hに接続される真空制御配管を示したものである。真空チャックベース124に構成される孔25e、25a,25f、25b、25c、25g、25d、25hに接続される真空配管27e、27a,27f、27b、27c、27g、27d、27hは、それぞれ真空制御バルブ28e、28a,28f、28b、28c、28g、28d、28hを介して真空バッファータンク29に接続される。真空バッファータンク29は、図示しない真空ポンプあるいは真空源に配管26により接続されている。本発明においては、光学系112により得たパネル外形16の情報と欠陥位置の情報により真空バルブの制御を行う。また、真空チャックベース124に構成される孔25i、25m,25j、25n、25o、25k、25p、25lに接続される真空制御配管も
図27に示した真空制御配管と同様の構成を有している。
【0023】
図28に本発明の第2の実施例として、薄膜トランジスタ38の任意の位置にパルスレーザ光を照射することができる光学系161を示す。このレーザを照射する光学系161は、前記の
図5に示した本発明の第1の実施例のレーザリペア装置101のレーザを照射する光学系160と置き換えることができるものであり、
図14および
図15に示したレーザを照射する光学系160を用いたレーザ照射工程以外の工程は前述の第1の実施例に示した工程と同様である。
図28に示した光学系161は、制御信号の入力より反射角度が変化するスキャンミラー74、角度が異なる光束が入射することによりスポット位置が変化するスキャンレンズ73を有している。光源61から出射されるレーザ光をレンズ65、レンズ71、ミラー75によりスキャンレンズ73に適した径の平行光として、スキャンミラー74を介してスキャンレンズ73にレーザ光を入射すると入射角度に応じて集光スポットの位置を変化させることができる。光学系161は、光学系160と撮像素子62により観察光路が同様であり、光学系160と同様の光源61、ミラー68、対物レンズ63を用いている。光学系161において、結像面76と対物レンズ63の観察面とは結像関係にあるので、スキャンミラー74の角度を制御することにより結像面76におけるレーザ光の集光スポットの位置を変化させることは、対物レンズ63の観察面でのレーザ光の集光スポットの位置を変化させることを示している。
図29に光学系161を用いたレーザ光照射の例を示すが、スキャンミラー74の角度を制御することにより、例えばゲート電極42とソース電極43との間の絶縁膜41の部分をレーザ集光スポット88を矢印88aに示すように移動させることなどが可能となる。このようなレーザ集光スポット88の移動によりゲート電極42とソース電極43との間の絶縁膜41の上に付着していた異物を蒸散あるいは絶縁化させ、ゲート電極42とソース電極43との短絡を修正することなどが可能である。
【0024】
図30に本発明の第3の実施例として、薄膜トランジスタ38の任意の形状のパルスレーザ光を照射することができる光学系162を示す。このレーザを照射する光学系162は、前記の
図5に示した本発明の第1の実施例のレーザリペア装置101のレーザを照射する光学系160と置き換えることができるものであり、
図14および
図15に示したレーザを照射する光学系160を用いたレーザ照射工程以外の工程は前述の第1の実施例に示した工程と同様である。
図30に示した光学系162は、
図28に示した対物レンズ63の結像面76にレーザ光束の形状を調整することができるアパーチャー80,81を配置したものであり、光源61から出射されレンズ82、レンズ83、レンズ72により対物レンズ63の観察面に結像するレーザ光束78の形状を、結像面76の位置においてアパーチャー80,81により調整することにより、対物レンズ63の観察面に配置されている薄膜トランジスタ38に照射されるレーザ光の集光スポットの形状を調整できる光学系である。
図31にアパーチャー80,81を用いレーザ光束の形状を変化させる方法を示す。アパーチャー80、81により、光源61から出射されたレーザ光光束78の一部を遮りアパーチャー80、81による開口部84の形状を有するレーザ光光束79が対物レンズ63に入射されると、
図32に示すように開口部84の形状に対応した形状のレーザ集光スポット89が薄膜トランジスタ38に照射される。
図32は、ゲート電極42とソース電極43との間の絶縁膜41の上面にレーザ集光スポット89を照射した例であり、ゲート電極42とソース電極43との間の絶縁膜41の上に付着していた異物を蒸散あるいは絶縁化させ、ゲート電極42とソース電極43との短絡を修正することなどが可能である。なお、
図31においては、左右方向に連動して移動するアパーチャー80と上下方向に連動して移動するアパーチャー81を用いて矩形形状の開口部84を形成する例を示したが、開口部84の形状は矩形形状に限定されない。
【0025】
図33に本発明の第4の実施例として、パルスレーザ光を照射する光学系163を示す。
光学系163は、光源に色素パルスレーザ光源169を採用しており、光源以外は光学系160と同等の構成であり、前記第2あるいは第3の実施例に示した光学系161および光学系162にも光源169は使用可能である。励起レーザ90により発光される励起光を光ファイバー91を介して接続することにより、色素パルスレーザ光源169はレーザ発光する構成を有している。光ファイバー91により励起機構を離して配置することができる構成であるので、光学系163に組み込まれる色素パルスレーザ光源169の部分の小型化が可能であり、光学系163を小型・軽量に構成できることを特徴としている。
【0026】
色素パルスレーザ光源169の構成図を
図34に示す。色素パルスレーザ光源169の構成は、特許文献1に示す実施例と同様に、励起用パルスレーザ光源90のレーザ光を光ファイバー91により導光し色素レーザ光源169内において、コリメートレンズ92、シリンドリカルレンズ93、さらには、励起ウィンドウ97を介して、色素容器94内の色素レーザ媒体98を励起する。色素レーザ媒体98に接するように高反射率を有するリアミラー95と、リアミラー95よりも低い反射率を有するフロントミラー96が配置されており、色素レーザ媒体98は、リアミラー95とフロントミラー96によりレーザ共振器を構成し、フロントミラー96側にレーザ光を出射し、レーザ光光束69を形成する。ここで、励起用パルスレーザ光源90に例えば紫外線の波長帯域である337nmのレーザ光を発光する窒素ガスパルスレーザを用い、色素レーザ媒体98としてクマリン540などを用いると例えば波長539nm付近の緑色パルスレーザ169を構成することができる。また、特許文献1に示す構成と同様に、色素容器94とともに、色素レーザ媒体98を保持する壁面の一部として、励起ウィンドウ97、リアミラー95、フロントミラー96を用いることにより、色素パルスレーザ光源169のさらなる小型化がなされる。