特開2020-38875(P2020-38875A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-38875(P2020-38875A)
(43)【公開日】2020年3月12日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/10 20060101AFI20200214BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20200214BHJP
   H01G 9/008 20060101ALI20200214BHJP
   H01G 9/06 20060101ALI20200214BHJP
【FI】
   H01G9/10 D
   H01G9/08 F
   H01G9/008 301
   H01G9/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-164574(P2018-164574)
(22)【出願日】2018年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】595122132
【氏名又は名称】サン電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 均
(72)【発明者】
【氏名】清水 一憲
(57)【要約】
【課題】回路基板に対する接続不良を低減して歩留りを向上できる電解コンデンサを提供する。
【解決手段】下端に開口部3aを有する有天筒状のケース3と、ケース3内に収納されたコンデンサ素子4と、開口部3aに挿入される板状の弾性部材から成る封口体10とを備える電解コンデンサ1において、コンデンサ素子4は封口体10を貫通してケース3の外方に延出するリード端子7、8を有し、ケース3は封口体10の周面に対向する領域において内側に突出し、ケース3の上下方向の中心よりも下方に頂点Pを有する突出部3bを備え、突出部3bは封口体10の周面を内側に押圧し、封口体10のコンデンサ素子4側の面を、コンデンサ素子4に向かって凸に湾曲させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に開口部を有する有天筒状のケースと、前記ケース内に収納されたコンデンサ素子と、前記開口部に挿入される板状の弾性部材から成る封口体とを備える電解コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子は前記封口体を貫通して前記ケースの外方に延出するリード端子を有し、
前記ケースは前記封口体の周面に対向する領域において内側に突出し、前記ケースの上下方向の中心よりも下方に頂点を有する突出部を備え、
前記突出部は前記封口体の周面を内側に押圧し、前記封口体の前記コンデンサ素子側の面を、前記コンデンサ素子に向かって凸に湾曲させることを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記頂点は前記ケースの上下方向における前記封口体の中心よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素子の前記封口体とは反対側の面が、前記ケースの天面と当接することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記リード端子は前記ケースの外部で折曲して側方に延びる接続部を有し、
前記接続部は側方に向かうに従って前記ケースから離れる方向に傾斜することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記接続部の前記ケースとは反対側の面に前記接続部の延出方向に延びる溝部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサは特許文献1に開示されている。図8は従来の電解コンデンサ1を示しており、電解コンデンサ1はコンデンサ素子4、ケース3及び封口体10を備えている。コンデンサ素子4は一端面から延出される一対のリード端子7、8を有している。ケース3は下端に開口部3aを有した有天筒状であり、コンデンサ素子4を収納する。封口体10は板状のゴムから成り、開口部3aに挿入される。
【0003】
電解コンデンサ1はケース3にコンデンサ素子4を収納して電解液を充填し、開口部3aに封口体10を挿入してケース3を封口する。この時、リード端子7、8は封口体10に形成された貫通孔17、18を貫通し、ケース3の外部に延出する。また、ケース3は封口体10の周面に対向する領域において内側に絞られて内側に突出する突出部3bが形成される。突出部3bの内面は封口体10の周面に密着してケース3内が気密に形成される。
【0004】
ケース3の外部に引出されたリード端子7、8は折曲されて側方に延びる接続部7a、8aが形成される。接続部7a、8aは半田付けされて回路基板に電気的に接続されて電解コンデンサ1が回路基板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−4914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の電解コンデンサ1において、図9に示すように、リード端子7、8を回路基板に半田付けする際にケース3内の温度及び内圧が上昇して封口体10が外方に凸に変形することがある。この時、接続部7a、8aの外端部が上方に反り上がり、接続部7a、8aと回路基板との接続不良が発生する問題があった。また、電解コンデンサ1と回路基板との接続強度が低下する問題もあった。
【0007】
本発明は、回路基板に対する接続不良を低減できる電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、下端に開口部を有する有天筒状のケースと、前記ケース内に収納されたコンデンサ素子と、前記開口部に挿入される板状の弾性部材から成る封口体とを備える電解コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子は前記封口体を貫通して前記ケースの外方に延出するリード端子を有し、前記ケースは前記封口体の周面に対向する領域において内側に突出し、前記ケースの上下方向の中心よりも下方に頂点を有する突出部を備え、前記突出部は前記封口体の周面を内側に押圧し、前記封口体の前記コンデンサ素子側の面を、前記コンデンサ素子に向かって凸に湾曲させることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記頂点は前記ケースの上下方向における前記封口体の中心よりも下方に位置することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子の前記封口体とは反対側の面が、前記ケースの天面と当接することを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記リード端子は前記ケースの外部で折曲して側方に延びる接続部を有し、前記接続部は側方に向かうに従って前記ケースから離れる方向に傾斜することを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記接続部の前記ケースとは反対側の面に前記接続部の延出方向に延びる溝部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解コンデンサによると、ケースは板状の弾性部材から成る封口体の周面に対向する領域において内側に突出した突出部を有し、突出部はケースの上下方向の中心よりも下方に頂点を有する。また、突出部は封口体の周面を内側に押圧し、封口体のコンデンサ素子側の面を、コンデンサ素子に向かって凸に湾曲させる。これにより、リード端子を回路基板に半田付けする際にケース内の温度及び内圧が上昇した場合でも、封口体がケースの外側に向かって凸に変形し難くなる。その結果として、封口体の変形によるリード端子の変形を低減することができる。これにより、回路基板に対する接続不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の電解コンデンサを上方から見た斜視図
図2】本発明の第1実施形態の電解コンデンサを下方から見た斜視図
図3】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの正面断面図
図4】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの封口体の上面図
図5】本発明の第1実施形態の電解コンデンサの正面断面図
図6】本発明の第2実施形態の電解コンデンサを下方から見た斜視図
図7】本発明の第2実施形態の電解コンデンサを回路基板に実装した状態を示す側面図
図8】従来の電解コンデンサの正面断面図
図9】従来の電解コンデンサの正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1及び図2は第1実施形態の電解コンデンサ1を上方から見た斜視図及び下方から見た斜視図を示している。また、図3は電解コンデンサ1の正面断面図を示している。
【0016】
電解コンデンサ1はコンデンサ本体2と座板6とを備えている。座板6は合成樹脂により形成され、コンデンサ本体2を保持する。座板6には一対の貫通孔6a及び貫通孔6bが設けられる。後述するコンデンサ本体2に設けられたリード端子7、8は貫通孔6a、6bに挿通して折曲され、回路基板20(図7参照)に半田付けされる接続部7a、8aが形成される。
【0017】
コンデンサ本体2はコンデンサ素子4、ケース3及び封口体10を備えている。ケース3はアルミニウム等の金属から成る。また、ケース3は下端(一端側)に開口部3aを開口し、上端(他端側)に天面3dを備えた水平断面円形の有天筒状に形成される。
【0018】
コンデンサ素子4はセパレータを介して対向する帯状の陽極箔及び陰極箔(いずれも不図示)を巻回して円柱状に形成され、ケース3内に収納される。
【0019】
コンデンサ素子4には陽極箔に取り付けられるリード端子7及び陰極箔に取り付けられるリード端子8が延出される。また、ケース3内には電解液(不図示)が充填されている。陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子を配してもよい。
【0020】
図4は封口体10の上面図を示している。封口体10はゴム等の弾性材料の成形品により円板状に形成され、ケース3の開口部3aを封口する。封口体10にはリード端子7、8(図3参照)挿通用の一対の貫通孔17及び貫通孔18が設けられる。貫通孔17及び貫通孔18は封口体10の厚み方向に対向する表面10a及び裏面10b(図3参照)の間を貫通し、厚み方向に直交する方向に所定間隔で配される。
【0021】
電解コンデンサ1は封口工程、組立工程を順に行って形成される。封口工程ではケース3にコンデンサ素子4を収納して電解液を充填し、開口部3aから挿入した封口体10がコンデンサ素子4上に配される。この時、封口体10の表面10aがケース3の内側に向けて配され、貫通孔17、18にそれぞれリード端子7、8が圧入して挿通される。つまり、リード端子7、8は封口体10を貫通してケース3の外方に延出する。
【0022】
封口体10を挿入後、封口体10の周面10cに対向する領域においてケース3を径方向内側に、例えばコマ(絞り治具)を用いて押圧して絞り、径方向内側に突出する突出部3bを形成する。突出部3bはケース3の周方向全周に延びて環状に形成される。
【0023】
また、突出部3bはケース3の上下方向の中心よりも下方に頂点Pを有する。さらに、頂点Pはケース3の上下方向(封口体10の厚み方向)における封口体10の中心よりも下方に位置する。これにより、封口体10は突出部3bにより周面10cが押圧されて弾性変形し、表面10aの中央部がコンデンサ素子4側に凸に湾曲する。
【0024】
また、コンデンサ素子4は中心軸がケース3の中心軸と略一致する位置に配され、封口体10の表面10aがコンデンサ素子4に当接してコンデンサ素子4をケース3の天面3dに当接させる。これにより、コンデンサ素子4がケース3内で揺れることが抑制される。したがって、電解コンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0025】
突出部3bを形成後、開口部3aの周縁を内側に折り返して折返し部3cを形成する。これにより、開口部3aが封口され、コンデンサ本体2が形成される。折返し部3cは封口体10の裏面10bに当接して封口体10が開口部3aから下方に抜けるのを防止する。
【0026】
リード端子7、8は封口体10の貫通孔17、18を貫通するが、リード端子7、8を貫通孔17、18に圧入することでリード端子7、8が貫通孔17、18の内面に密着する。また、突出部3bの内面は封口体10の周面10cに密着する。これにより、ケース3内が気密に形成される。
【0027】
組立工程では座板6の貫通孔6a、6bにそれぞれリード端子7、8が挿通され、座板6の底面6c上でリード端子7、8が互いに離れる方向に折曲される。これにより、コンデンサ本体2が座板6により保持され、接続部7a、8aが形成される。
【0028】
このとき、接続部7a、8aは側方に向かうに従ってケース3から離れる方向に傾斜する。図3に示すように、リード端子7、8をそれぞれ外方に折曲する際に、リード端子7、8の外端側がスプリングバックにより、ケース3から離れる方向にわずかながら戻る状態を利用して形成される。
【0029】
図5は電解コンデンサ1の正面断面図であり、半田付け時にケース3内の温度及び内圧が上昇した状態を示す。半田付け時にケース3内の温度及び内圧が上昇した場合でも、封口体10は表面10aの中央部がコンデンサ素子4側に凸に湾曲しているため、封口体10の裏面10bは外方に凸に湾曲し難い。これに加え、表面10aの中央部はコンデンサ素子4に向かって押圧力が働いており、押圧力によって封口体10に対して外方に働く力が低減される。このため、裏面10bはより外方に凸に湾曲し難い。
【0030】
これにより、接続部7a、8aの外端部が上方に反り上がることが低減される。従って、半田30(図7参照)により接続部7a、8aと回路基板20(図7参照)とをより確実に電気接続することができる。また、電解コンデンサ1と回路基板20との接続強度の低下を低減することができる。従って、回路基板20との接続不良の発生を低減できる。
【0031】
本実施形態によると、突出部3bは封口体10の周面10cを内側に押圧して封口体10がコンデンサ素子4側に凸に湾曲する。これにより、ケース3内の温度及び内圧が上昇した場合においても、封口体10が外方に凸に変形し難い。従って、互いに離れる方向に折曲されたリード端子7、8を回路基板20に半田付けする際に内圧が上昇してもリード端子7、8の外端部が上方に反り上がることが低減される。これにより、リード端子7、8と回路基板20とを確実に電気接続することができる。また、電解コンデンサ1と回路基板20との接続強度の低下を低減することができる。従って、回路基板20との接続不良の発生を低減できる。
【0032】
また、突出部3bはケース3の上下方向の中心よりも下方に頂点Pを有し、頂点Pはケース3の上下方向における封口体10の中心よりも下方に位置する。これにより、封口体10は突出部3bにより周面10cが押圧されて弾性変形し、表面10aの中央部がコンデンサ素子4側に凸に湾曲する。
【0033】
また、封口体10はコンデンサ素子4に当接してコンデンサ素子4を天面3dに押圧する。この時、表面10aの中央部はコンデンサ素子4に向かって押圧力が働いており、封口体10に対して外方に働く力が低減される。このため、裏面10bはより外方に凸に湾曲し難い。また、コンデンサ素子4がケース3の天面3dと封口体10の表面10aとに当接し、その結果として、コンデンサ素子4がケース3内で揺れることが抑制される。したがって、電解コンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6は本実施形態の電解コンデンサ1を下方から見た斜視図であり、図7は電解コンデンサ1を回路基板20に実装した状態を示す側面図である。説明の便宜上、前述の図1〜5に示した第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態では、接続部7a、8aの下面に溝部7b、8bが設けられている点が第1実施形態とは異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0035】
溝部7b、8bは接続部7a、8aの延出方向に延びて接続部7a、8aの外端部に開放端を有する。また、溝部7b、8bは金型プレス加工により予め形成されている。また、座板6の底面6cには貫通孔6a、6bに連続する凹部6d、6eが側方に延びており、接続部7a、8aは凹部6d、6eに嵌められる。
【0036】
回路基板20は所定箇所に予め半田30が印刷され、熱溶融して半田付けをおこなう。熱溶融した半田30は溝部7b、8bに流入し、接続部7a、8aと回路基板20とをより確実に電気接続することができる。また、電解コンデンサ1と回路基板20との接続強度の低下をより低減することができる。従って、回路基板20との接続不良の発生をより低減できる。
【0037】
また、図3に示すように、接続部7a、8aは側方に向かうに従ってケース3から離れる方向に傾斜している。このため、回路基板20と溝部7b、8bとの間に形成される隙間は側方に向かうに従って狭くなる。このため、回路基板20上で熱溶融した半田30のうち、溝部7b、8b内に収納しきれなかった半田30がリード端子7、8の折曲部側へ移動する。これにより、半田30は溝部7b、8bの長手方向に広く流れ込み、その結果として、溶融した半田30の一部が分離し、いわゆる半田ボールの発生を抑制することができる。従って、回路接続の信頼性を高めることができる。
【0038】
また、接続部7a、8aは側方に向かうに従ってケース3から離れる方向に傾斜しているため、接続部7a、8aの外端部が上方に反り上がることを低減することができる。これにより、半田付による温度上昇時でも、接続部7a、8aの外端部が上方に反り上がり、回路基板20に対する接続不良をより低減することができる。
【0039】
なお、溝部7b、8bは封口体10がコンデンサ素子4側に凸に湾曲していない場合においても、回路基板20との接続不良の発生を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、電解コンデンサ及び電解コンデンサを制御回路に実装した自動車、電子機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ本体
3 ケース
3a 開口部
3b 突出部
3c 折返し部
3d 天面
4 コンデンサ素子
6 座板
6a、6b 貫通孔
6c 底面
6d、6e 凹部
7、8 リード端子
7a、8a 接続部
7b、8b 溝部
10 封口体
10a 表面
10b 裏面
10c 周面
17、18 貫通孔
20 回路基板
30 半田
P 頂点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9