(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-3908(P2020-3908A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】人事管理支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20191206BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20191206BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
G06Q10/06 332
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-120658(P2018-120658)
(22)【出願日】2018年6月26日
(11)【特許番号】特許第6418671号(P6418671)
(45)【特許公報発行日】2018年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】514036678
【氏名又は名称】志村 哲祥
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】志村哲祥
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】個人の離職・休職、生産性低下リスクを確率として算定し、その結果を組織の人事や新規採用に有効に活用する人事管理支援システムを提供する。
【解決手段】管理サーバ1は、組織に所属する者又は新規採用予定者による問診回答結果と各問診項目に付される回帰係数に基づき、離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクを数値として算定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に所属する者及び/又は新規採用予定者の離職・休職確率、或いは前記組織に所属する者の生産性低下リスクの少なくともいずれか一つを算出することにより、当該組織の人事管理を円滑に支援するための人事管理支援システムであって、
前記組織が使用する組織端末と、
処理プログラムが記録され、かつ複数のデータベースが構築された管理サーバーと、を備え、
前記組織端末はオンラインで前記管理サーバーと接続され、
前記データベースには、予め定めた複数の問診項目と当該問診項目に対応する原回帰係数が記録されており、
前記組織端末から前記管理サーバーにサクセスすることにより、前記組織端末によって前記データベースに記録されている複数の前記問診項目の全てを選択するか、又は全ての前記問診項目の中から適宜の前記問診項目を選択するとともに、離職・休職確率、生産性低下リスクのいずれを算出するかを決定し、
前記処理プログラムは、選択された前記問診項目が全ての前記問診項目でない場合、当該選択された前記問診項目に基づいて新たに回帰分析を行い、選択された前記問診項目に対する新回帰係数を算出し、選択された前記問診項目と算出された前記新回帰係数を前記データベースに記録し、
前記処理プログラムは、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者による回答結果及び前記原回帰係数又は前記新回帰係数に基づいて、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者の離職・休職確率、及び/又は前記組織に所属する者の生産性低下リスクを数値として算定し、当該算定結果を前記データベースに記録するとともに、前記組織端末に電子データとして送信する、及び/又は紙媒体で出力する、
ことを特徴とする人事管理支援システム。
【請求項2】
前記人事管理支援システムは、更に前記組織に所属する者及び/又は前記新規採用予定者が使用するユーザー端末を含み、前記ユーザー端末が前記サーバーに接続されると、前記処理プログラムによって前記データベースに記録されている前記問診票が前記ユーザー端末上に表示され、前記組織に所属する者及び/又は前記新規採用予定者は前記ユーザー端末上で回答を入力し、当該回答結果はオンラインで前記サーバーに送信され、前記算定結果は前記サーバーから前記ユーザー端末に送信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の人事管理支援システム。
【請求項3】
前記原回帰係数は、統計学的に有意な数の事前調査の結果に基づいて、離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクを目的変数とし、前記問診項目を説明変数として行った回帰分析によって決定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の人事管理支援システム。
【請求項4】
前記原回帰係数及び前記新回帰係数は、離職・休職確率又は生産性低下リスクのいずれを求めるかによって相違する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項5】
前記算定結果は、前記数値に基づいて確率数値又は段階的な定性評価として表示される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項6】
予め定めた複数の前記問診項目は、年齢、性別、家族構成、居住状況、家計の状況、家族や友人との交流、家族や友人からの実質的サポート、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通勤経路、通常の運動量、過去の離職経験、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯の中間時刻、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、休日の睡眠時間帯の中間時刻、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、ピッツバーグ睡眠問診項目から構成される、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項7】
予め定めた複数の前記問診項目は、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通常の運動量、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、を含み、前記問診項目に対する回答内容に応じて、前記処理プログラムは予め記録されている離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクを低下させるためのメッセージを抽出し、前記組織端末及び/又は前記ユーザー端末に前記メッセージを送信する、ことを特徴とする請求項2に記載の人事管理支援システム。
【請求項8】
予め定めた複数の前記問診項目のうち、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通常の運動量、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、は除外することができない必須問診項目である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の人事管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業等の組織において、従業員の離職・休職リスク、又は生産性低下リスク、或いは新規採用予定者の離職・休職リスクを確率計算によって算定し、組織の円滑な人事管理を支援するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業等において、人事及び採用における重大なリスクの一つに、多大なるコストを投じて雇用した人材が、突然、離職あるいは休職してしまう問題がある。また、雇用した人材が何らかの心身の不調によって生産性が低下してしまうこと(プレゼンティズム)も、組織としては大きな問題である。
【0003】
こうした離職や離職を防止するため、スキルミスマッチなどを防ぐ適性検査の実施や、綿密な採用面接の実施とともに、メンタルヘルス対策などが行われている。
【0004】
現在提案されている人事管理支援システムは、社員の性格や相性等に応じて、最適なグルーピングを図るものや(特許文献1参照)、メンタルヘルスに係る不調の実態を把握して、ヘルスケアが必要な社員を特定し、効率的な支援を行うもの(特許文献2参照)に限られている。
【0005】
一方、社員の離職・休職や生産性の低下は、社員個人の生活習慣や睡眠の問題がその大きな要因となっていることが、発明者らによる最新の研究で明らかになっている。例えば、スキルマッチ、報酬、職務環境などが同等であったとしても、社員の生活習慣や睡眠の問題によって、離職・休職確率、生産性の低下は有意に異なる。
【0006】
例えば、ある者は毎日規則正しく生活し、朝は快適に起床し、帰宅後は栄養に富んだ食生活を送り、適度な運動をし、夜は早めに就寝し、充分な睡眠時間を確保して翌日の勤務に臨む一方、別のある者は毎日極めて不規則な生活を送り、出勤の間際まで寝ており、帰宅後はファーストフードやスナック菓子を大量に食べ、夜中まで大量の飲酒を飲みながらゲームに没頭し、極めて短い睡眠時間で翌日をまた迎える場合、両者の離職・休職する確率や、生産性低下をきたすリスクは、明らかに相違し、後者の方が圧倒的に離職・休職する確率が高くなり、また生産性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−271601号公報
【特許文献2】特開2016−151979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、従来の人事管理支援システムは、社員の性格や相性等に応じて最適なグルーピングや、メンタル面での不調の実態を把握しているだけであり、個人の生活習慣や睡眠の状況に基づいたものではないため、結果として離職・休職リスクや生産性低下リスクを事前に十分予防しきれていなかった。
【0009】
本発明は、発明者らによる最新の研究で明らかになった生活習慣や睡眠の状況によって個人の離職・休職、生産性低下リスクが異なることに着目し、統計学的に優位な数の実証結果(アンケート結果)に基づき、これを回帰分析することによって各問診項目の回帰係数を求め、個人の離職・休職、生産性低下リスクを確率として算定し、その結果を組織の人事や新規採用に有効に活用するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記目的を達成するため、組織に所属する者及び/又は新規採用予定者の離職・休職確率、或いは前記組織に所属する者の生産性低下リスクの少なくともいずれか一つを算出することにより、当該組織の人事管理を円滑に支援するための人事管理支援システムであって、
前記組織が使用する組織端末と、処理プログラムが記録され、かつ複数のデータベースが構築された管理サーバーと、を備え、
前記組織端末はオンラインで前記管理サーバーと接続され、
前記データベースには、予め定めた複数の問診項目と当該問診項目に対応する原回帰係数が記録されており、
前記組織端末から前記管理サーバーにサクセスすることにより、前記組織端末によって前記データベースに記録されている複数の前記問診項目の全てを選択するか、又は全ての前記問診項目の中から適宜の前記問診項目を選択するとともに、離職・休職確率、生産性低下リスクのいずれを算出するかを決定し、
前記処理プログラムは、選択された前記問診項目が全ての前記問診項目でない場合、当該選択された前記問診項目に基づいて新たに回帰分析を行い、選択された前記問診項目に対する新回帰係数を算出し、選択された前記問診項目と算出された前記新回帰係数を前記データベースに記録し、
前記処理プログラムは、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者による回答結果及び前記原回帰係数又は前記新回帰係数に基づいて、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者の離職・休職確率、及び/又は前記組織に所属する者の生産性低下リスクを数値として算定し、当該算定結果を前記データベースに記録するとともに、前記組織端末に電子データとして送信する、及び/又は紙媒体で出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本願発明によれば、回帰分析によって個人の離職・休職、生産性低下リスクを確率として算定し、その結果を回答者個人や組織に提示し、改善を行うべき生活習慣項目を明らかにすることにより、新規採用や人事配置、またその後の適切な生活指導、保健指導の材料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】既存の回答データと離職・休職状況、生産性低下状況が蓄積されたデータベースの説明図。
【
図3】各問診項目に対する回帰係数を格納するデータベースD2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明の実施形態について、各図面を参照しながら説明する。
なお、本願発明で言う「離職・休職確率」とは、人間の行動である離職、又は休職する可能性の程度を予測して数値化することを意味するものであり、純粋に数学的な確率を意味するものではない。
図1は、本願発明に係るシステム構成の全体図であり、管理サーバー1、当該管理サーバー1とオンライン接続されている組織端末2及びユーザー端末3から構成される。当該ユーザー端末3は、組織に所属する社員又は新規採用予定者が所有するPC、タブレット端末、スマートフォン等の情報端末であり、また、本実施形態では問診票5を紙媒体として出力するためのプリンター4も接続されている。
【0014】
管理サーバー1内には、処理開始時点までに蓄積された統計学的に有意な解析ができる充分な数の事前調査の結果(以下説明する全ての問診項目、回答結果データ、社員個人の離職・休職状況、社員個人の生産性状況、全ての問診項目に対応する回帰係数(原回帰係数))が蓄積されたデータベースD1と、本システムを利用する会社(組織)が全問診項目の中から適宜に選択した問診項目と、当該選択された問診項目に付与される回帰係数(新回帰係数)を格納するデータベースD2と、問診票5を作成する問診票作成プログラムP1と、回帰分析を行う回帰プログラムP2と、問診に対する回答結果に応じて、離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクについて確率計算する算出プログラムP3と、問診回答の結果を表示する結果表示プログラムP4と、問診票5及びその結果を紙媒体で出力するための紙面作成プログラムP5と、組織端末2とのデータ通信を行う管理コンソールI1と、ユーザー端末に問診票5を送信し、かつ回答を受信する問診票送信・回答プログラムI2とが構築されている。
【0015】
データベースD1には、
図2に示すとおり、発明者らが東京都内のサービス業に勤務する約3000名に対して実施した調査項目(問診項目)である、1)年齢、2)性別、3)家族構成、4)居住状況、5)家計の状況、6)家族や友人との交流、7)家族や友人からの実質的サポート、8)読書習慣、9)趣味の有無、10)食事時間の規則性、11)各食事の摂取有無、12)野菜・海藻・きのこ類の摂取量、13)肉・大豆・卵製品の摂取量、14)魚介類の摂取量、15)鉄分の摂取量、16)その他のミネラルの摂取状況、17)外食頻度、18)飲酒頻度、19)飲酒量、20)夜間のカフェインの摂取頻度、21)夜間のカフェインの摂取量、22)寝酒の頻度、23)通勤経路、24)通常の運動量、25)過去の離職経験、26)夜間の電子デバイスの使用状況、27)成長期終了後からの体重変化、28)日の出から起床時までの照度、29)日中の照度、30)日没後の照度、31)平日の睡眠時間、32)平日の睡眠時間帯の中間時刻、33)平日の睡眠時間帯、34)休日の睡眠時間、35)休日の睡眠時間帯の中間時刻、36)平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差(Social Jet Lag)の絶対値、37)眠くもないのに寝床に入るか否か、38)既存の医学的問診票であるピッツバーグ睡眠問診項目(PSQI)に対するそれぞれの回答結果と、実際の離職・休職の状況、実際の生産性の状況、回答結果を回帰分析することにより求められた各問診項目に対応する回帰係数(原回帰係数)が、蓄積されている。
【0016】
上記ピッツバーグ睡眠問診票(PSQI)とは、世界的に公知な既存の医学的問診票であり、睡眠の質を評価するための18の質問から構成される自記式質問票である。睡眠の質、睡眠時間、睡眠潜時、睡眠効率、睡眠困難、睡眠薬の使用、日中の眠気などによる日常生活への支障の7項目から構成され、回答は、それぞれ0〜3点でスコア化し、合計スコア(0〜21点)を算出して評価する問診票である。得点が高いほど睡眠が障害されていると判断するものであるが、本発明では、PSQIで定めるスコア計算は用いずに問診項目のみを利用する。なお、当該PSQIは、通常、睡眠障害等の症状を把握するための手段であって、本システムのように離職・休職や生産性低下を予測するものではない。本システムは、PSQIで用いられる各問診項目に対し、独自の回帰係数を付与して、確率計算に用いている。
【0017】
上記発明者らが行った実際の調査結果を回帰分析したところ、上記各問診項目への回答結果が、離職・休職、又は生産性の低下に有意に影響することが判明し、離職・休職及び生産性低下を目的変数とし、年齢・性別や睡眠と生活習慣を多角的に把握する各種の問診項目を説明変数として、確度の高い確率を計算可能であることが明らかとなった。離職・休職確率、生産性低下リスクについて回帰モデルを利用すると、その確率は、以下の式で示すことができる(ただし、p=離職・休職確率又は生産性低下リスク、bn=各生活習慣・睡眠項目における各種回帰係数、Xn=各生活習慣・睡眠項目の回答結果とする)。
1.線形回帰モデルを使用した場合(式1)
p=定数項+b1X1+b2X2+b3X3+b4X4…bnXn
2.ロジットモデルを使用した場合(式2)
logit値=定数項+b1X1+b2X2+b3X3+b4X4…bnXnとすると、p = e
logit / 1+e
logit = 1/1+e−
logit
【0018】
図3は、選択した問診項目と、各問診項目に対応する回帰係数を算定し、データベースD2に保存する仕組みを示している。
図3に示す例は、上記した38の問診項目全てを問診項目とする場合の現時点におけるデータセットであり、データベースD1に現時点での標準仕様として格納されている。ある会社が、この標準仕様を利用する場合、組織端末2を使って、1)〜38)の全ての問診項目を選択し、問診票5を作成し、回答結果は、上記回帰係数(原回帰係数)に基づいて確率計算される。
【0019】
上記の例は、離職・休職確率を求める際の回帰係数(原回帰係数)であるが、生産性低下リスクを算定する場合には、生産性低下リスクを求める別の回帰係数(生産性低下リスクを求めるための原回帰係数)を利用する。
【0020】
上記の各問診項目は、本システムを利用する組織(会社等)の要求に応じて、適宜に取捨選択することができる。例えば、ある組織が上記38個の問診項目の中から一部の問診項目を除外する場合、データベースD1に蓄積されたデータから選択した問診項目のみを抽出し、多重ロジスティクス回帰分析、或いは多変量の重回帰分析を行うことで、削除した問診項目を含まない場合の新たな回帰係数(新回帰係数)を求める(問診項目の一部を削除し、残った問診項目を説明変数とし、離職・休職確率、生産性低下リスクを目的変数とした回帰分析を自動的に行う)。これらのデータは、データベースD2に格納される。
【0021】
なお、問診項目中、8)読書習慣、9)趣味の有無、10)食事時間の規則性、11)各食事の摂取有無、12)野菜・海藻・きのこ類の摂取量、13)肉・大豆・卵製品の摂取量、14)魚介類の摂取量、15)鉄分の摂取量、16)その他のミネラルの摂取状況、17)外食頻度、18)飲酒頻度、19)飲酒量、20)夜間のカフェインの摂取頻度、21)夜間のカフェインの摂取量、22)寝酒の頻度、24)通常の運動量、26)夜間の電子デバイスの使用状況、27)成長期終了後からの体重変化、28)日の出から起床時までの照度、29)日中の照度、30)日没後の照度、31)平日の睡眠時間、33)平日の睡眠時間帯のばらつき、34)休日の睡眠時間、36)平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差(Social Jet Lag)の絶対値、37)眠くもないのに寝床に入るか否か、の26項目は、離職・休職確率、又は生産性低下リスクに大きく影響する項目であるため、回帰係数は他の問診項目より大きい数値となっている。また当該26項目は、特に離職・休職確率と生産性低下リスクとの関連性が高い上に、回答者本人の努力により改善可能な項目であるため、場合によっては組織側で削除できない必須問診項目としても良い。
【0022】
さらに、組織ごと、業種ごと、職種ごとにおける離職・休職確率、生産性低下リスクを特異的に同定し、問診項目に用いることも可能である。この場合、組織ごと、業種ごと、職種ごとに十分なデータを予め取得して回帰分析しておけば精度の高い確率計算が可能となる。また、数千人、数万人規模の従業員を有する会社では、当該企業に限定したデータで解析することで、当該企業における個別の離職・休職確率、生産性低下リスクをより精密に算定することができる。その場合、データベースD1には、当該会社で独自調査した結果が蓄積される。
【0023】
なお、38個の問診項目の中から任意の一部を除外した組合せからなる多数の問診票5を予め用意し、その回帰係数を全て計算しておくことは現実的でない。また、データの蓄積によりさらに正確な計算式が構築可能となるほか、経年的な社会構造やライフスタイルの変化で各種係数は徐々に変化しうる。このため、ある会社が本システムを採用する場合、全ての問診項目をデータベースに格納した上で、組織側端末から全部又は特定の問診項目のみを選択して、再計算するようにしている。
【0024】
また、全38の問診項目からなる問診票5だけではなく、特定の一部項目を除外した標準Aタイプ、標準Bタイプ、標準Cタイプ等として、事前に用意しておいてもよい。例えば、会社規模、業種・業態別などに応じた問診票である。
【0025】
図4は、組織端末2から所望の問診票5を作成し、回帰係数を算定する仕組みを示す図である。上記のとおり、ある会社が38個全ての問診項目を選択した場合には、38個の項目からなる問診票5を作成し、回答結果に基づく離職・休職確率又は生産性低下リスクは、データベースD1に予め記録されている回帰係数(原回帰係数)を用いて計算される。なお、組織管理者は、前述のとおり、当該問診票5を用いて、離職・休職確率を求めるのか、或いは生産性低下リスクを求めるのかを決定し、その情報は組織端末2から管理サーバー1に送信され、算出プログラムP3は、離職・休職確率又は生産性低下リスクのいずれか、或いは両方を計算する。
【0026】
一方、組織管理者が、全38個の問診項目から自社で必要とする項目のみを選択・選定した場合、問診票作成プログラムP1は、データベースD1から選択・選定された問診項目のみを抽出して問診票5を作成すると同時に、回帰プログラムP2によって当該問診項目に対する回帰分析を行い、各問診項目の回帰係数(新回帰係数)を算定し、データベースD2に格納しておく。
【0027】
上記のとおり組織端末2の入力操作によって作成した問診票5は、問診票作成プログラムP1によって作成され、問診票送信・回答プログラムI2からユーザー端末1に送信され、社員又は新規採用予定者はユーザー端末3上から各問診項目に回答し、入力した回答内容は、ユーザー端末3から管理サーバー1に送信される。なお、問診を紙媒体で行う場合には、紙面作成プログラムP5によってプリンター4から問診票5が出力され、社員又は新規採用者が紙媒体で回答した結果を回収し、OCR等によって読み込み、管理サーバー1に送信される。或いは、回答結果を手作業でデータ入力しても良い。
【0028】
図5に示すとおり、社員又は新規採用予定者による回答結果は、上記式1又は式2に基づき、算出プログラムP3によって計算される。計算結果、即ち、離職・休職確率、又は生産性低下リスクは、結果表示プログラムP4によって数値として組織端末2に表示する。この結果は、組織端末2だけでなく、回答した本人であるユーザー端末3にも送信してもよい。また、数値としてではなく、段階的な表示(例えば、A、B、Cの表示や、危険性なし、やや危険性あり、危険度大などの表示)であってもよい。
【0029】
上記結果を受取った会社は、離職・休職の確率が高い社員であるか否か、又は生産性低下リスクが高まっている社員であるか否かを数値として把握することができ、適切な人事配置や勤務体制の変更を行うための指標とすることができる。
【0030】
また、新規採用予定者の場合、採用後の離職・休職の確率が高いことを把握できるため、新規採用の基準としても有効に利用することができる。
【0031】
なお、各問診項目において、対応する回帰係数が大きいほど離職・休職確率、生産性低下リスクに与える影響が大きい項目であるため、回答者が組織に属する社員であって、当該項目が陽性回答された場合には、その大きさに準じて、当該項目を改善(生活習慣を改善)させるよう促す具体的なメッセージ(文面)を、組織端末2及び/又はユーザー端末2に送信してもよい。その場合、あらかじめ用意した各種のメッセージを格納したマスタを管理サーバー1内に構築し、回答内容に応じて該当するメッセージを抽出して、組織端末2及び/又はユーザー端末3に送信する。
【0032】
上記メッセージを受け取った会社(組織端末2)は、産業医や保健師等の衛生担当者を介して、問題があると判断された社員に対し、離職・休職しないよう、又は生産性が低下しないような具体的生活習慣指導を、ピンポイントで効率的に行うことができる。
【0033】
上記した、予め用意するメッセージの対象となる問診項目としては、前述した8)読書習慣、9)趣味の有無、10)食事時間の規則性、11)各食事の摂取有無、12)野菜・海藻・きのこ類の摂取量、13)肉・大豆・卵製品の摂取量、14)魚介類の摂取量、15)鉄分の摂取量、16)その他のミネラルの摂取状況、17)外食頻度、18)飲酒頻度、19)飲酒量、20)夜間のカフェインの摂取頻度、21)夜間のカフェインの摂取量、22)寝酒の頻度、24)通常の運動量、26)夜間の電子デバイスの使用状況、27)成長期終了後からの体重変化、28)日の出から起床時までの照度、29)日中の照度、30)日没後の照度、31)平日の睡眠時間、33)平日の睡眠時間帯のばらつき、34)休日の睡眠時間、36)平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差(Social Jet Lag)の絶対値、37)眠くもないのに寝床に入るか否か、の各問診項目とすることが望ましいが、他の項目であっても良い。
【0034】
上記26個の問診項目は、前述のとおり特に離職・休職、又は生産性低下リスクに大きく影響するものである一方、本人の自助努力によって改善可能な内容であることから、これを積極的に改善することによって、離職・休職確率、又は生産性低下リスクを低減することが可能であり、例えば、睡眠時間帯については、本人の望ましい睡眠時間帯における起床時刻より前に起床したり、あるいは望ましい就寝時刻より後に就寝する習慣があると、離職・休職確率、生産性低下リスクが上昇するため、上記メッセージの内容としては、「朝型の勤務が望ましい」、「夜型の勤務が望ましい」、「X時以降の始業時刻の勤務であることが望ましい」と言ったメッセージを伝えるようにすれば、会社は人事による配置転換やフレックス制への適用を図ることができる
【0035】
問診票5に回答して得られたデータは、データベースD1に逐次格納する。そして、回答した者がその後いつかの時点での離職・休職していないか、或いは生産性が低下していないかどうかのデータを追加し、一定期間経過後に、データベースD1に保存されている過去のデータと統合させることで、回帰係数は精度が高いものとすることができ、更に確度の高い確率計算を行うことができる。また、組織ごと、業種ごと、職種ごとにデータを蓄積することで、個別信頼性の高い、統計学的に有意な問診票を作成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 管理サーバー
2 組織端末
3 ユーザー端末
4 プリンター
5 問診票
D1 全ての問診項目回答内容、休職・離職状況、生産性状況、全ての問診項目に対応する回帰係数(原回帰係数))が蓄積されたデータベース
D2 本システムを利用する会社(組織)で選定された問診項目と、当該選定された問診項目に付与される回帰係数(新回帰係数)を格納するデータベース
P1 問診票5を作成する問診票作成プログラム
P2 回帰分析を行う回帰プログラム
P3 問診回答に応じて確率を計算する算出プログラム
P4 問診回答の結果を表示する結果表示プログラム
P5 問診票及び結果を紙媒体で出力するための紙面作成プログラム
I1 組織端末とのデータ通信を行う管理コンソール
I2 ユーザー端末に問診票を送信し、かつ回答を受信する問診票送信・回答プログラム
【手続補正書】
【提出日】2018年9月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に所属する者及び/又は新規採用予定者の離職・休職確率、或いは前記組織に所属する者の生産性低下リスクの少なくともいずれか一つを算出することにより、当該組織の人事管理を円滑に支援するための人事管理支援システムであって、
前記組織が使用する組織端末と、
処理プログラムが記録され、かつ複数のデータベースが構築された管理サーバーと、を備え、
前記組織端末はオンラインで前記管理サーバーと接続され、
前記データベースには、予め定めた複数の問診項目と当該問診項目に対応する原回帰係数が記録されており、
前記組織端末から前記管理サーバーにアクセスすることにより、前記組織端末によって前記データベースに記録されている複数の前記問診項目の全てを選択するか、又は全ての前記問診項目の中から適宜の前記問診項目を選択するとともに、離職・休職確率、生産性低下リスクのいずれを算出するかを決定し、
前記処理プログラムは、選択された前記問診項目が全ての前記問診項目でない場合、当該選択された前記問診項目に基づいて新たに回帰分析を行い、選択された前記問診項目に対する新回帰係数を算出し、選択された前記問診項目と算出された前記新回帰係数を前記データベースに記録し、
前記処理プログラムは、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者による回答結果及び前記原回帰係数又は前記新回帰係数に基づいて、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者の離職・休職確率、及び/又は前記組織に所属する者の生産性低下リスクを数値として算定し、当該算定結果を前記データベースに記録するとともに、前記組織端末に電子データとして送信する、及び/又は紙媒体で出力する、
ことを特徴とする人事管理支援システム。
【請求項2】
前記人事管理支援システムは、更に前記組織に所属する者及び/又は前記新規採用予定者が使用するユーザー端末を含み、前記ユーザー端末が前記管理サーバーに接続されると、前記処理プログラムによって前記データベースに記録されている問診票が前記ユーザー端末上に表示され、前記組織に所属する者及び/又は前記新規採用予定者は前記ユーザー端末上で回答を入力し、当該回答結果はオンラインで前記管理サーバーに送信され、前記算定結果は前記管理サーバーから前記ユーザー端末に送信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の人事管理支援システム。
【請求項3】
前記原回帰係数は、統計学的に有意な数の事前調査の結果に基づいて、離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクを目的変数とし、前記問診項目を説明変数として行った回帰分析によって決定される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の人事管理支援システム。
【請求項4】
前記原回帰係数及び前記新回帰係数は、離職・休職確率又は生産性低下リスクのいずれを求めるかによって相違する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項5】
前記算定結果は、前記数値に基づいて確率数値又は段階的な定性評価として表示される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項6】
予め定めた複数の前記問診項目は、年齢、性別、家族構成、居住状況、家計の状況、家族や友人との交流、家族や友人からの実質的サポート、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通勤経路、通常の運動量、過去の離職経験、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯の中間時刻、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、休日の睡眠時間帯の中間時刻、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、ピッツバーグ睡眠問診項目から構成される、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の人事管理支援システム。
【請求項7】
予め定めた複数の前記問診項目は、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通常の運動量、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、を含み、前記問診項目に対する回答内容に応じて、前記処理プログラムは予め記録されている離職・休職確率及び/又は生産性低下リスクを低下させるためのメッセージを抽出し、前記組織端末及び/又は前記ユーザー端末に前記メッセージを送信する、ことを特徴とする請求項2に記載の人事管理支援システム。
【請求項8】
予め定めた複数の前記問診項目のうち、読書習慣、趣味の有無、食事時間の規則性、各食事の摂取有無、野菜・海藻・きのこ類の摂取量、肉・大豆・卵製品の摂取量、魚介類の摂取量、鉄分の摂取量、その他のミネラルの摂取状況、外食頻度、飲酒頻度、飲酒量、夜間のカフェインの摂取頻度、夜間のカフェインの摂取量、寝酒の頻度、通常の運動量、夜間の電子デバイスの使用状況、成長期終了後からの体重変化、日の出から起床時までの照度、日中の照度、日没後の照度、平日の睡眠時間、平日の睡眠時間帯のばらつき、休日の睡眠時間、平日と休日の睡眠時間帯の中間時刻の差の絶対値、眠くもないのに寝床に入るか否か、は除外することができない必須問診項目である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の人事管理支援システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本願発明は、上記目的を達成するため、組織に所属する者及び/又は新規採用予定者の離職・休職確率、或いは前記組織に所属する者の生産性低下リスクの少なくともいずれか一つを算出することにより、当該組織の人事管理を円滑に支援するための人事管理支援システムであって、
前記組織が使用する組織端末と、処理プログラムが記録され、かつ複数のデータベースが構築された管理サーバーと、を備え、
前記組織端末はオンラインで前記管理サーバーと接続され、
前記データベースには、予め定めた複数の問診項目と当該問診項目に対応する原回帰係数が記録されており、
前記組織端末から前記管理サーバーに
アクセスすることにより、前記組織端末によって前記データベースに記録されている複数の前記問診項目の全てを選択するか、又は全ての前記問診項目の中から適宜の前記問診項目を選択するとともに、離職・休職確率、生産性低下リスクのいずれを算出するかを決定し、
前記処理プログラムは、選択された前記問診項目が全ての前記問診項目でない場合、当該選択された前記問診項目に基づいて新たに回帰分析を行い、選択された前記問診項目に対する新回帰係数を算出し、選択された前記問診項目と算出された前記新回帰係数を前記データベースに記録し、
前記処理プログラムは、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者による回答結果及び前記原回帰係数又は前記新回帰係数に基づいて、前記組織に所属する者又は前記新規採用予定者の離職・休職確率、及び/又は前記組織に所属する者の生産性低下リスクを数値として算定し、当該算定結果を前記データベースに記録するとともに、前記組織端末に電子データとして送信する、及び/又は紙媒体で出力する、ことを特徴とする。