【解決手段】ホーンアンテナ1は、ホーン内側面を含むホーン11と、ホーン底部12とを備える。ホーン底部12は、ホーン底面12の中心からずれた位置にて電波を放射する放射部122を含む。好ましくは、ホーン底面12は第1の方向に長く、放射部122の位置は、ホーン底面12の中心から第1の方向にずれている。好ましい例では、放射部122はホーン底面12において開口するスロットであり、スロットへの給電方向はホーン底面12に平行かつ第1の方向に垂直な第2の方向である。
前記ホーン底面に平行かつ前記第1の方向に垂直な第2の方向において、前記放射部と前記ホーン内側面との間に、前記ホーン底面および前記ホーン内側面から突出する段差、をさらに備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のホーンアンテナ。
前記ホーン内側面のうち、前記放射部に最も近い位置から立ち上がる部位が、前記ホーン底面の法線に平行または前記ホーン底面から離れるに従って前記法線から離れる方向に傾斜しており、
前記ホーン内側面のうち、前記放射部から最も離れた位置から立ち上がる部位が、前記放射部に最も近い位置から立ち上がる前記部位よりも、前記ホーン底面から離れるに従って前記ホーン底面の法線から離れる方向に傾斜している、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のホーンアンテナ。
前記ホーン底面に垂直な方向における前記ホーンの高さが、前記放射部から放射される電波の周波数帯域の中心周波数における波長の2倍未満である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のホーンアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係るホーンアンテナ1の平面図である。
図1では、導波管である導波路2も示している。ホーンアンテナ1は、導波路2上に配置される。
図2は、
図1のII−IIの位置でのホーンアンテナ1の縦断面図である。
図1および
図2に示すように、ホーンアンテナ1は、ホーン11と、ホーン底部12と、を含む。ホーン11およびホーン底部12は、1つの金属部材を切削することにより、形成される。ホーン11およびホーン底部12は切削以外の手法により形成されてもよい。ホーン11は、ホーン11の内側面であるホーン内側面111を含む。ホーン底部12は、ホーン底部12の上面であるホーン底面121を含む。ホーン11は、ホーン底部12の外周部から上方に突出する。
【0011】
ホーン底部12は、放射部122をさらに含む。放射部122は、電波を放射する。放射部122は、ホーン底面121の中心からずれた位置に設けられる。したがって、放射部122は、ホーン底面121の中心からずれた位置にて電波を放射する。本実施形態では、放射部122は、ホーン底面121において開口するスロットである。放射部122は、H字状である。H字の形状は、X方向である横方向に延びる部位と、一対の縦方向に延びる部位とを有し、一対の縦方向に延びる部位は、横方向に延びる部位により接続される。放射部122が、ホーン底面121の中心からずれた位置に設けられることは、放射部122の中心の位置がホーン底面121の中心の位置と異なることを意味する。
【0012】
図1中に示すX方向およびY方向は、ホーン底面121に平行である。X方向とY方向とは互いに垂直である。Z方向は、X方向およびY方向に対して垂直である。すなわち、Z方向はホーン底面121に垂直である。
【0013】
ホーンアンテナ1は、段差13をさらに含む。段差13は、
図2に示すように、ホーン底面121およびホーン内側面111から突出する。
図2の例では、段差13は2段になっている。以下の説明では、ホーン内側面111およびホーン底面121の形状は、段差13が存在しないと仮定した場合の形状を指すものとする。したがって、ホーン底面121は、略矩形であり、ホーン内側面111は、ホーン底面121の各辺から(+Z)方向に立ち上がる。
図1では、4つの段差13が、矩形のホーン底面121の四隅に設けられる。(+Y)側の2つの段差13の形状は、細部を除いて同形状である。(−Y)側の2つの段差13の形状は、細部を除いて同形状である。(+Y)側の2つの段差13の形状と(−Y)側の2つの段差13の形状とは、X方向に平行かつホーン底面121に垂直な面であってホーン底面121の中心を通る対称面に関して対称である。
【0014】
本実施形態では、ホーン底部12およびホーン底面121は略矩形である。ホーン底面121は、第1の方向であるX方向に長い。すなわち、矩形の長辺が伸びる方向がX方向である。放射部122の位置は、ホーン底面121の中心から(+X)方向にずれている。(+Y)側の2つの段差13は、(+Y)方向に向かうに従って(+Z)方向に2段階に突出する。(−Y)側の2つの段差13は、(−Y)方向に向かうに従って(+Z)方向に2段階に突出する。(+X)側の2つの段差13は、Y方向において、放射部122とホーン内側面111との間に位置する。
【0015】
導波路2は、金属で形成された管である。導波路2は、第2の方向であるY方向に伸びる。放射部122であるスロットは、導波路2の内側まで開口する。すなわち、放射部122の開口は、導波路2に繋がる。導波路2によるスロットへの給電方向はY方向である。スロットは、Y方向を向くH字状である。すなわち、H字の上下方向がY方向に平行となるように、スロットが設けられる。
【0016】
本実施形態では、放射部122をホーン底面121の中心からずれた位置に設けることにより、簡単な構造で主ローブの方向を正面方向から傾斜させることができる。正面方向は(+Z)方向である。以下の説明における電波の放射方向は、主ローブの方向を指す。
図1の場合、放射部122がホーン底面121の中心から(+X)側にずれた位置に設けられるため、放射される電波の主ローブは、(+Z)方向から(−X)方向に傾斜する。特に、ホーン底面121の長手方向であるX方向に放射部122の位置をずらすことにより、より効果的に電波の放射方向を傾斜させることができる。例えば、電波の放射方向を、ホーン底面121の法線に対して10〜30°傾斜させることができる。
【0017】
電波の放射方向を傾斜させるという観点からは、ホーン11の高さ、すなわち、ホーン内側面111の高さは、低い方が好ましい。好ましくは、ホーン11の高さは、放射部122から放射される電波の周波数帯域の中心周波数における波長の2倍未満である。例えば、中心周波数が76GHzのミリ波の帯域を使用する場合、ホーン11の高さは、8mm未満であることが好ましく、さらに好ましくは、5mm以下である。ホーン11の高さは、3.5mm以上であることが好ましい。ホーン11の高さとは、ホーン底面121に垂直な方向におけるホーン底面121からのホーン11の高さである。また、放射部122の周囲の少なくとも一部にホーン底面121が存在することにより、放射する電波の帯域幅を容易に確保することができる。これにより、多くの情報を送受信することができる。
【0018】
放射部122であるスロットをH字状とすることにより、放射部122を横置きしたI字状の場合(
図3参照)に比べて放射部122のX方向の幅を小さく抑えることができる。その結果、放射部122の中心を(+X)側のホーン内側面111に近づけることができる。設計上、放射部122の位置の選択範囲が広がる。
【0019】
ホーンアンテナ1では、給電方向がY方向であるため、Z方向に給電を行う場合に比べてホーンアンテナ1の設置スペースのZ方向の高さを小さく抑えることができる。ホーンアンテナ1では段差13を設けることにより、給電側と放射側とのインピーダンスを合わせて電波を効率よく放射することができる。
【0020】
図3は、
図1のホーンアンテナ1の変形例を示す平面図である。
図3のホーンアンテナ1は、
図1のホーンアンテナ1の放射部122のスロット形状を横置きのI字状としたものである。すなわち、スロットは、X方向に伸びる直線状である。I字状のスロットは切削加工による形成が容易である。
【0021】
図4は、
図1のホーンアンテナ1のさらに他の好ましい変形例を示す平面図である。
図4のホーンアンテナ1は、
図1のホーンアンテナ1から、放射部122から遠い2つの段差13を省いたホーンアンテナである。すなわち、段差13は、Y方向において、放射部122とホーン内側面111との間にのみ設けられる。電波の放射方向の傾斜や放射効率に対して、放射部122から遠い段差13の寄与の程度は小さいため、放射部122から遠い位置に設けられた(−X)側の段差13は省略可能である。
【0022】
図5は、
図1に示すホーンアンテナ1から全ての段差13を省いた例を示す平面図である。ホーンアンテナ1の大きさ、形状、放射される電波の波長によっては、段差13は、必ずしも設けられる必要はない。すなわち、インピーダンス整合がとれていれば、段差13はなくてもよい。段差13の数が2の場合であっても0の場合であっても、放射部122の形状は、H字状から横置きのI字状に変更可能である。
図6は、段差13の数が0の場合に放射部122の形状が横置きのI字状である例を示す図である。
【0023】
図7は、
図1の場合よりも放射部122をホーン内側面111から(−X)方向に離した例を示す平面図である。すなわち、
図7では、
図1よりも放射部122はホーン底面121の中央に近い。放射部122はホーン底面121において必ずしも最も端に位置する必要はない。例えば、ホーン内側面111の(+X)側の面とホーン内側面111の(−X)側の面との間の距離が9mmで、放射部122のX方向における幅が1.5mmの場合、放射部122の左端を、ホーン底面121の中心から例えば+X方向側に0.1mm〜3mmの範囲、より好ましくは1mm〜2mmの範囲でずらすとよい。もっとも、ホーン底面121の中心からX方向にずらす放射部122の距離は、ホーン11のX方向の幅、放射部122のX方向の幅に応じて適宜変更されてよい。放射される電波の傾斜の程度を調整するために、放射部122の位置はホーン底面121内で適宜決定されてよい。
【0024】
図8ないし
図10は、
図7のホーンアンテナ1において、ホーン底面121における放射部122の位置を変化させた場合の放射特性の変化を示す図である。ホーン底面121のY方向の幅は約5mmであり、放射部122の左端から、ホーン内側面111の(−X)側の面までの距離D1は約5mmである。ホーン内側面111の高さは約4mmである。
【0025】
図8は、放射部122の右端から、ホーン内側面111の(+X)側の面までの距離D2を2.0mmに設定したときの放射特性を示す図である。
図9は、距離D2を1.6mmに設定したときの放射特性を示す図である。
図10は、距離D2を1.0mmに設定したときの放射特性を示す図である。
【0026】
図8ないし
図10に示すように、利得が最大となる角度は、距離D2が変化することにより変化する。
図8では、利得が最大となる角度は0°付近で、
図10では、利得が最大となる角度は−20°付近であるため、D2を1.0mm変化させることにより、放射される電波の傾斜角度が約20°変化することがわかる。このことから、放射される電波の傾斜の程度は、ホーン内側面111のうち放射部122がずれて配置される側の面と、放射部122との間の距離が大きく影響していると考えられる。換言すれば、放射部122がホーン底面121の中心から所定の方向にずれて配置される場合、放射部122の当該所定の方向側における放射部122とホーン内側面111との間の距離の調整が、電波の放射方向を傾斜させる際に重要となる。
【0027】
図11は、他の好ましい形態に係るホーンアンテナ1を示す斜視図である。
図12は、
図11のホーンアンテナ1の平面図である。
図11および
図12のホーンアンテナ1のホーン11の高さは、
図1および
図2のホーンアンテナ1のホーン11よりも高い。ホーン底部12は矩形である。ホーン底部12は、I字を横置きした形状の放射部122を含む。放射部122はスロットである。放射部122の位置は、ホーン底面121の中心から(+X)方向にずれている。
図5のホーンアンテナ1は、
図1の段差13を有しない。
【0028】
図11および
図12では、ホーンアンテナ1のホーン内側面111のうち、ホーン底面121の(+X)側の辺から立ち上がる部位に符号14aを付す。ホーン底面121の(−X)側の辺から立ち上がる部位に符号14bを付す。ホーン底面121の(+Y)側の辺から立ち上がる部位に符号14cを付す。ホーン底面121の(−Y)側の辺から立ち上がる部位に符号14dを付す。部位14a,14b,14c,14dは、それぞれ(+Z)方向に向かって外側に傾斜する。部位14bは最も大きく傾斜する。すなわち、ホーン内側面111のうち、放射部122から最も離れた位置から立ち上がる部位が、他の部位よりも、ホーン底面121から離れるに従ってホーン底面121の法線から離れる方向に傾斜する。
【0029】
図11および
図12のホーンアンテナ1においても、放射部122の位置をホーン底面121の中心からずらすことにより、電波の放射方向を容易に傾斜させることができる。また、ホーン内側面111を上記のように傾斜させることにより、放射部122の位置をホーン底面121の中心からずらすことと相俟って、より効率よく電波の放射方向を傾斜させることができる。放射部122の周囲にホーン底面121が存在することにより、帯域幅を容易に確保することができる。ホーンアンテナ1からの電波の放射方向を簡単な構造で傾斜させるとともに、帯域幅を容易に確保することができる点は、以下の他の実施形態や変形例においても同様である。
【0030】
図示を省略しているが、
図11および
図12のホーンアンテナ1においても、Y方向に伸びる導波路2が放射部122に接続される。給電方向がY方向であるため、Z方向に給電が行われる場合に比べてホーンアンテナ1の設置スペースのZ方向の高さを小さく抑えることができる。
【0031】
図13は、
図11および
図12に示すホーンアンテナ1の好ましい変形例を示す平面図である。
図13のホーンアンテナ1では、ホーン内側面111の部位14a,14c,14dは、Z方向に平行である。すなわち、部位14a,14c,14dは、ホーン底面121の法線に平行である。部位14bのみがホーン底面121の法線に対して外側に傾斜する。このように、部位14a,14c,14dは、必ずしも傾斜する必要はない。
【0032】
図12および
図13に示すホーンアンテナ1において、放射する電波の方向を効果的にX方向に傾斜させるという観点からは、部位14aと部位14bとの傾斜の関係が重要となる。ホーン内側面111のうち、放射部122に最も近い位置から立ち上がる部位14aは、ホーン底面121の法線に平行またはホーン底面121から離れるに従って当該法線から離れる方向に傾斜する。これに対し、好ましくは、ホーン内側面111のうち、放射部122から最も離れた位置から立ち上がる部位14bは、部位14aよりも、ホーン底面121から離れるに従ってホーン底面121の法線から離れる方向に傾斜する。
【0033】
また、ホーン内側面111の一部がホーン底面121の法線に平行であれば、加工によるホーン11の一部の形成が容易となることから、ホーン内側面111のうち、放射部122から最も離れた位置から立ち上がる部位14b以外の少なくとも一部が、当該法線に平行であることが好ましい。
図13に示すように、部位14b以外の全ての部位がホーン底面121の法線に平行であることがより好ましい。
【0034】
なお、上記説明では、ホーン底部12およびホーン底面121が矩形または略矩形であることを前提として説明しているが、ホーン底部12およびホーン底面121は、これらの形状には限定されない。例えば、ホーン底部12およびホーン底面121は、大きなC面取状またはR面取状の隅を有する矩形であってもよい。ホーン底部12およびホーン底面121は楕円形でもよい。さらには、ホーン底部12およびホーン底面121はX方向に長くなくてもよい。例えば、ホーン底部12およびホーン底面121は正方形や円形でもよい。ホーン底部12とホーン底面121とは互いに大きく異なる形状であってもよい。
【0035】
ホーン底部12およびホーン底面121が上記の様々な形状であっても、放射部122の位置をホーン底面121の中心からずらすことにより、電波の放射方向を容易に傾斜させることができる。また、ホーン内側面111のうち放射部122から最も離れた部位を、他の部位よりも大きく外側に傾斜させることにより、電波の放射方向をさらに効率よく傾斜させることができる。
【0036】
ホーン内側面111のうち放射部122から最も離れた部位は、ホーン底面121の法線に対して垂直となるように傾斜してもよい。この場合、ホーン11は、実質的に放射部122から最も離れた部位が削除された形状となる。例えば、
図12や
図13の例では、ホーン内側面111は、部位14bが存在しない形状となる。
【0037】
図14は、
図12に示すホーンアンテナ1の好ましい変形例を示す図である。
図14のホーンアンテナ1では、放射部122の位置は、ホーン底面121の中心から(+X)方向および(−Y)方向にずれる。他の構造は
図12と同様である。このように、放射部122の位置は、必ずしもX方向のみにずれる必要はない。放射する電波が求められる特性を有するのであれば、放射部122の位置は、ホーン底面121上で様々に変更されてよい。
【0038】
図15は、
図14の特徴を他の構造のホーンアンテナ1aに応用した例を示す平面図である。
図15のホーンアンテナ1aは、ホーン底面121を有しない。ホーン11の底部、すなわち、(−Z)側の端部は、全体が開口する。導波管はZ方向に伸びる。ホーン11の底部の開口は、導波管の開口でもある。ホーン11の底部の開口は、ホーン内側面111の(−Z)側の開口である。以下、ホーン内側面111の(−Z)側の開口を「(−Z)側開口」という。ホーン内側面111の(+Z)側の開口を「(+Z)側開口」という。
【0039】
平面視した場合、(−Z)側開口の中心の位置は、(+Z)側開口の中心からずれる。これにより、放射する電波の方向を簡単な構造で傾斜させることができる。(−Z)側開口の中心の位置は、(+Z)側開口の中心から(+X)方向および(−Y)方向にずれる。(−Z)側開口の中心の位置は、(+Z)側開口の中心から(+X)方向のみにずれててもよい。もちろん、平面視における(−Z)側開口の形状および(+Z)側開口の形状は、矩形には限定されず、楕円、円、大きな面取形状を有する矩形、正方形等であってもよい。
【0040】
平面視において(−Z)側開口の中心の位置を、(+Z)側開口の中心から様々な方向にずらすことにより、放射する電波の方向を様々なに変更することができる。特に、(−Z)側開口および(+Z)側開口がX方向に長い場合に、(−Z)側開口の中心の位置を、(+Z)側開口の中心からXおよびY方向にずらすことにより、従来にない放射特性を有する電波を得ることができる。
【0041】
図16は、
図12のホーンアンテナ1の他の変形を示す斜視図である。
図16のホーンアンテナ1では、ホーン内側面111のうち、放射部122から最も離れた位置から立ち上がる部位14bは、凹面である。正確には、部位14bは、ZX面に平行な面による部位14bの断面が凹となる凹面である。これにより、電波の放射方向を傾斜させつつ、電波の放射範囲をX方向に広げることができる。もちろん、ホーン内側面111の他の部位も凹面であってもよいが、少なくとも最も傾斜する部位14bが凹面であることが好ましい。凹面は、複数の平面を組み合わせた凹面であってもよい。
【0042】
図17は、複数のホーンアンテナ1を含むアンテナアレイ10を示す平面図である。各ホーンアンテナ1のホーン内側面111の形状は、
図12のホーンアンテナ1と同様である。各ホーンアンテナ1のホーン内側面111は、厚い板状の導電部材101の一部を切削することにより形成される。もちろん、ホーン内側面111は他の加工方法により形成されてもよい。複数のホーンアンテナ1は、Y方向に配列される。
図1の場合と同様に、導波路2はY方向に伸びる。導波管である導波路2に代えて、他の構造の導波路が採用されてもよい。例えば、他の導電部材に畝状に突出するリッジを設け、リッジを導電部材101の背面に近づけることにより導波路2が構成されてもよい。様々な導波路が採用されてよいことは、他の形態に係るホーンアンテナ1においても同様である。
【0043】
アンテナアレイ10では、導波路2がY方向に伸び、かつ、各ホーンアンテナ1の放射部122が導波路2上に位置する。各ホーン11およびホーン底部12は、X方向に長いことから、複数のホーンアンテナ1をY方向に容易に配列することができる。これにより、高い強度の電波を傾斜させつつ放射することができる。なお、放射される電波の傾斜方向はX方向であるため、電波の傾斜方向を考慮することなくホーンアンテナ1を配列することができる。複数のホーンアンテナ1はY方向に一列に配列されることが好ましい。
【0044】
図18は、導波路2の好ましい他の例を示す斜視図である。
図18の導波路2は、Y方向に伸びる管状の導波管である。導波路2は、(−Z)側の部位、すなわち、ホーンアンテナ1とは反対側の部位に、Y方向に伸びるリッジ21を含む。リッジ21は、導波管の内側に突出する畝状である。
図18ではホーンアンテナ1を1つのみ示しているが、
図17と同様に、複数のホーンアンテナ1がY方向に配列されてよい。
図18のホーンアンテナ1では、ホーン内側面111は全体がホーン底面121の法線に平行である。
【0045】
図19は、導波路2に複数のホーンアンテナ1を配置した他の例を示す斜視図である。ホーンアンテナ1の向きを基準に
図1と同様のXYZ方向を定めた場合、導波路2は、X方向に伸びる。放射部122は、ホーン底面121の中心から(+X)方向にずれる。導波路2の形状は
図18と同様である。
図19では、複数のホーンアンテナ1は、(+Y)方向および(−Y)方向に交互にずれながらX方向に配列される。すなわち、複数のホーンアンテナ1は、千鳥状にX方向に配列される。
【0046】
図19の場合、電界が(+X)方向に移動する際に、スロットである複数の放射部122が導波管内を流れる電流を(+Y)側の位置と(−Y)側の位置とで交互に妨げることにより、各放射部122から電波が放射される。放射部122のX方向の間隔は、電波の放射方向の傾斜に合わせて適宜設定される。
【0047】
図20は、導波路2のさらに他の例をアンテナアレイ10と共に示す斜視図である。アンテナアレイ10の各ホーンアンテナ1は、
図17と同様に、厚い板状の導電部材101の一部をくり抜くようにしてホーン11が形成されたホーンアンテナ1である。ホーンアンテナ1としては既に説明した他のホーンアンテナ1、または、さらに他の形状のホーンアンテナが採用されてもよい。
【0048】
導電部材101の下方、すなわち、(−Z)側には、他の導電部材102が配置される。
図21は、導電部材102の斜視図である。導電部材102は、リッジ31と、複数のロッド32と、を含む。リッジ31は、Y方向に伸びる。リッジ31は、導電部材102の上面から畝状に上方に突出する。
図20に示すように、リッジ31は、複数のホーンアンテナ1の放射部122の真下に位置する。複数のロッド32は、導電部材102の上面から柱状に上方に突出する。リッジ31は複数のロッド32の間に位置する。リッジ31およびロッド32は、導電部材102の一部として設けられる導電性を有する部位である。導電部材101および導電部材102は、板状には限定されない。リッジ31は、ロッド32の高さおよび幅と同一の高さおよび幅を有している。また、リッジ31の高さおよび幅は、ロッド32の高さおよび幅とは異なる値を有していてもよい。
【0049】
リッジ32の両側において、各ロッド32の表面と導電部材101の導電性表面(導電部材102と対向する面)との間の空間は、特定周波数帯域内の周波数を有する電磁波を伝搬させない。そのような周波数帯域は「禁止帯域」と呼ばれる。導波路装置内を伝搬する電磁波の周波数が禁止帯域に含まれるように、ロッド32の高さや大きさ、ロッド32の間隔が設計される。導電部材101の導電性表面とリッジ31の上面との間の空間(ギャップ)が導波路2となる。例えばミリ波帯の電磁波は、この導電性表面とリッジ31の上面との間の空間をリッジ31に沿って伝搬する。図示の例では、ロッド32は、角柱状を有しているが、これに限られず、例えば円筒形状を有してもよい。
【0050】
図22は、ホーンアンテナ1のさらに他の実施形態を例示する斜視図である。
図22のホーンアンテナ1は、放射部122として放射素子であるパッチを有する。放射部122は、導電性の薄板または薄膜である。放射部122は、Y方向に長い矩形である。ホーン11の形状は、
図18と同様である。ホーン11としては、既に説明した様々な形状、または、さらに他の形状が採用されてもよい。
【0051】
ホーン11および放射部122は、基板103上に配置される。基板103の上面および下面にはそれぞれ導電層33,34が設けられる。2つの導電層33,34の間の部位は誘電体である。放射部122の周囲の領域は、導電層33の一部が除去された領域である。換言すれば、導電層33の一部が除去されることにより、放射部122が形成される。放射部122からは給電線331が(−Y)方向に伸びる。給電線331の周囲の領域も導電層33の一部が除去された領域である。給電線331と下面の導電層34との間において、電磁波が放射部122に向かって伝搬する。すなわち、給電線331と導電層34とにより、Y方向に伸びる導波路2が形成される。
【0052】
ホーン底部12は、基板103のうちホーン11の内側の部分である。ホーン底部12はホーン底面121を含む。
図1の場合と同様に、放射部122の位置は、ホーン底面121の中心からずれている。好ましくは、ホーン底面121は、第1の方向であるX方向に長い。放射部122の位置は、ホーン底面121の中心からX方向にずれている。これにより、
図1のホーンアンテナ1の場合と同様に、簡単な構造で電波の放射方向を傾斜させることができる。放射部122とホーン内側面111との間にはホーン底面121の少なくとも一部が存在する。ホーン底面121の存在により、帯域幅を容易に確保することができる。
【0053】
なお、ホーン内側面111の形状は、既に説明したように様々に変更されてよい。すなわち、既に説明した放射部122がスロットであるホーンアンテナ1において、放射部122が導電性のパッチに変更されてよい。
【0054】
既述のように、ホーン底面121の形状は、様々に変更されてよい。ホーン底面121の形状は、左右対称な図形には限定されない。ホーン底面121の中心の位置は、外接円の中心や最小外接矩形の中心として決定されてよい。同様に、スロットまたは導電性パッチである放射部122の形状も様々に変更可能である。放射部122の位置、すなわち、放射部122の中心の位置も、外接円の中心や最小外接矩形の中心として決定されてよい。ホーン底面121が第1の方向である「X方向に長い」とは、様々に定義可能である。典型的には、ホーン底面121の最小外接矩形の長手方向がX方向を向くことであると定義することができる。
【0055】
図23は、上述のホーンアンテナ1またはアンテナアレイ10を含むレーダ4の構成を示す図である。レーダ4は、送信アンテナ41と、受信アンテナ42と、送受信回路43と、検出部44と、を含む。送信アンテナ41は、上述のホーンアンテナ1またはアンテナアレイ10である。送受信回路43は、送信アンテナ41からの電波の放射の制御および受信アンテナ42からの信号の処理を実行する。検出部44は、受信アンテナ42からの信号に基づいて、物体の存在を検出する。
【0056】
受信アンテナ42は、好ましくは、ホーンアンテナである。受信アンテナ42の構造として様々なものが採用可能である。レーダ4には、受信アンテナ42として送信アンテナ41と同様の構造のものが採用されてもよい。送信と受信とを兼用するアンテナが設けられてもよい。送受信回路43は、典型的には、回路基板上に設けられ、送信用の回路と受信用の回路とを含む。検出部44も電気的回路により実現される。
【0057】
図24は、レーダ4を含む車両5を示す図である。車両5は、自動車である。車両5は自動車以外の車両であってもよい。レーダ4は、車両5の後部の左右側面に取り付けられる。上記説明における(+X)方向が、車両の前方向に対応する。レーダ4から放射される電波の方向、すなわち、主ローブの方向は、車両の側方から後方に傾斜した方向である。これにより、簡単な構造で、車両5の斜め後方を監視することが実現される。
【0058】
ホーンアンテナ1またはアンテナアレイ10の取り付け位置は、目的に合わせて様々に変更可能である。例えば、ホーンアンテナ1またはアンテナアレイ10を、車両5を後ろから見た場合の車両の後端の左側に取り付け、上述のX方向が右方向であってもよい。電波は真後ろ方向から左側に傾斜した方向に放射される。車両の後端の右側に取り付ける場合は、左側に取り付ける場合と左右が反転する。これにより、簡単な構造で、車両5の斜め後方を監視することができる。例えば、車両5が走行する車線に隣接する車線を走行する車両を検知することができる。特に、車両5の後方から近づいてくる車両を精度よく検知することができる。
【0059】
図25は、レーダ4の要部の外観の一例を示す斜視図である。
図25では、レーダ4から
図23の送受信回路43を含む回路基板を省いた構造体60を示す。構造体60は、導波路装置である。
図26は、構造体60の正面図であり、
図25の右下側から左上を向いて、すなわち、(−Y)側から(+Y)方向を向いて見た構造体60を示す。構造体60は、第1導電部材61と、第2導電部材62と、第3導電部材63とを含む。第1導電部材61、第2導電部材62および第3導電部材63はプレート状であり、この順で上から重なる。第1導電部材61と第2導電部材62との間には間隙が設けられる。第2導電部材62と第3導電部材63との間にも間隙が設けられる。なお、第1導電部材61、第2導電部材62および第3導電部材63は、部分的に接触してもよい。
【0060】
図27は、第1導電部材61の平面図である。
図28は、第2導電部材62の平面図である。
図29は第3導電部材63の平面図である。
図28では、回路基板に実装される集積回路64と、集積回路64から延びる導波路であるマイクロストリップライン(以下、「MSL」という。)65とを二点鎖線にて示している。MSL65は図示省略の回路基板上に形成される。集積回路64は、信号発生回路と、受信回路とを含む。すなわち、回路基板は、信号発生装置としての機能を含む。信号発生回路および受信回路は、
図23の送受信回路43に対応する。3つのMSL65は、集積回路64から
図28の左方向に延びる。4つのMSL65は、集積回路64から
図28の上方向に延びる。
【0061】
第1導電部材61は、放射層である。第1導電部材61は、
図28に示すように、複数の送信アンテナ611と、複数の受信アンテナ612と、を含む。送信アンテナ611は放射素子である。受信アンテナ612は受信素子である。第1導電部材61の(+Z)側の面613を「放射面」と表現した場合、レーダ4は、送信アンテナ611および受信アンテナ612を放射面613上に有する。放射面613は、導電性の表面である。放射面613上に送信アンテナ611と受信アンテナ612とが並ぶことにより、レーダアンテナとしての機能を十分に発揮することができる。第1導電部材61の放射面613とは反対側の面も導電性の表面であり、第2導電部材62に対向する。
【0062】
送信アンテナ611の形状は、
図3とほぼ同様である。すなわち、スロットである放射部122は、X方向に長いI字状であり、ホーン内側面111(
図1の符号参照)の四隅には段差13が設けられる。
図27の例では、(−X)側の段差13のX方向の幅は、(+X)側の段差13のX方向の幅よりも大きい。送信アンテナ611としては、上述の様々なホーンアンテナが採用可能である。送信アンテナ611は、3列に並ぶ。各列には6個の送信アンテナ611がY方向に並ぶ。送信アンテナ611の列の数および各列に含まれる送信アンテナ611の数は
図27に示す例には限定されない。各送信アンテナ611のホーンは、
図20の場合と同様に、第1導電部材61を削るまたは変形させることにより形成される。
【0063】
図30は、受信アンテナ612を拡大して示す図である。
図30は、
図27の受信アンテナ612のうち、左側の2列の一部である2つの受信アンテナ612を示す。受信アンテナ612は、いわゆる、リッジホーンアンテナである。受信アンテナ612は中央にスロット71を有する。スロット71は、底面70に設けられたH字状の開口である。スロット71の(+X)側および(−X)側には、底面70から(+Z)方向に突出する側壁72が設けられる。側壁72はスロット71の側方のみに設けられる。
【0064】
スロット71の(+Y)側および(−Y)側には、スロット71の中央の上部および下部からY方向に延びるリッジ73が設けられる。リッジ73は底面70から(+Z)方向に突出する。リッジ73は、Y方向に隣接する他のスロット71まで延びる。受信アンテナ612の列の(+X)側および(−X)側には、Y方向に延びる周壁74が設けられる。周壁74は底面70から(+Z)方向に突出する。
図27に示すように、周壁74は、受信アンテナ612の列の周囲を囲む。
【0065】
詳細については説明を省略するが、
図27における右側の2列の受信アンテナ612では、X方向に隣接するスロット71の間に1つの側壁72のみが設けられる。したがって、X方向に並ぶ3つの側壁72の間に2つのスロット71が配置される。受信アンテナ612は4列に配列され、各列は4つの受信アンテナ612を有する。各受信アンテナ612は、スロット71、2つの側壁72、2つのリッジ73および底面70を含む。受信アンテナ612としては、他の様々な形態が採用可能である。
【0066】
図25に示すように、第1導電部材61の送信アンテナ611が設けられる領域の厚さは、受信アンテナ612が設けられる領域の厚さよりも厚い。これにより、送信アンテナ611のホーンの内側面のZ方向の幅を、受信アンテナ612を囲う周壁74のZ方向の幅よりも十分に大きくすることができ、送信アンテナ611の指向性を容易に高めることができる。
【0067】
図28に示す第2導電部材62は、励振層である。第2導電部材62は、MSL65が接続されるリッジ導波路621と、送信側の導波路である3つのワッフルアイアンリッジ導波路(以下、「WRG導波路」という。)622と、受信側の4つのWRG導波路623と、を有する。リッジ導波路621は、第3導電部材63に向かって(−Z)方向に延びる。WRG導波路622,623は、
図21と同様の構造であり、線状のリッジ82と、その周囲に配置された多数の導電性のロッド83と、を有する。リッジ82およびロッド83は、第2導電部材62の第1導電部材61に対向する導電性表面上に設けられる。正確には、第1導電部材61の第2導電部材62に対向する導電性表面とリッジ82およびロッド83とが組み合わされることにより、WRG導波路622,623が構成される。
【0068】
WRG導波路622には、貫通孔81が設けられる。貫通孔81は、H字状である。MSL65から送出される電磁波は、リッジ導波路621および第3導電部材63を経由して、給電ポイントである貫通孔81からWRG導波路622に導かれる。そして、送信アンテナ611のスロットから放射される。一方、受信アンテナ612で受けられた電磁波は、
図30に示すスロット71からWRG導波路623に導かれ、貫通孔81から第3導電部材63およびリッジ導波路621を経由してMSL65に導かれる。
【0069】
図29に示す第3導電部材63は、分配層である。第3導電部材63の第2導電部材62側の導電性表面上には、リッジと多数のロッドが設けられる。これにより、第2導電部材62の第3導電部材63に対向する導電性表面と共に、送信側の3つのWRG導波路631と、受信側の4つのWRG導波路632と、が設けられる。各リッジは1つ以上の屈曲部を有する。送信側のWRG導波路631の各リッジの長さは、異なる。3つのWRG導波路631は、第2導電部材62の3つのリッジ導波路621から第2導電部材62の送信側の貫通孔81まで延びる。上記構成により、位相の異なる電磁波を第2導電部材62の複数の貫通孔81まで供給することができる。
【0070】
第1導電部材61、第2導電部材62および第3導電部材63は、例えば、金属板を加工して成型される。
図25では、3つの導電部材61〜63により導波路装置である構造体60が構成されるが、導波路装置を構成する導電部材の数は3には限定されない。
【0071】
上記実施の形態にて説明した様々なホーンアンテナは、マッシブMIMOと呼ばれる通信技術に利用することも可能である。マッシブMIMOは、100個以上のアンテナ素子を用いることによって指向性の高いアクティブアンテナを実現するMIMO技術である。
【0072】
上記ホーンアンテナ1、アンテナアレイ10およびレーダ4は、様々な変形が可能である。
【0073】
ホーン底面121の形状は、一方向に長い形状には限定されない。例えば、ホーン底面121は正方形でもよい。放射部122の位置は、ホーン底面121の中心からホーン底面121の長手方向以外にずらしてもよい。例えば、
図1や
図12等において、放射部122はホーン底面121の中心からY方向にずれてもよい。
【0074】
ホーン底面121は、放射部122の全周に存在してもよく、放射部122の一方向側のみに存在してもよい。ホーン底面121は、放射部122の周囲のいずれかに存在すればよく、これにより、電波の帯域幅を確保することができる。
【0075】
図1、
図3、
図7等に示す段差13は、1段でもよい。段差13に代えて、傾斜面が設けられてもよい。ホーン内側面111と放射部122との間の傾斜面の法線は、好ましくは、YZ面に平行、かつ、放射部122側に傾斜する。傾斜面は、段数が多数の段差13であると捉えることもできる。
【0076】
放射部122としては、スロットやパッチ以外の構造が採用されてもよい。スロットやパッチの形状は様々に変更されてよい。
【0077】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。