(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-40177(P2020-40177A)
(43)【公開日】2020年3月19日
(54)【発明の名称】自動送出ブラシ
(51)【国際特許分類】
B24D 13/14 20060101AFI20200225BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20200225BHJP
【FI】
B24D13/14 A
B24B29/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-170118(P2018-170118)
(22)【出願日】2018年9月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000249621
【氏名又は名称】日本ユニット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】新崎 優仁人
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
【Fターム(参考)】
3C063AA07
3C063AB05
3C063BG10
3C063BH11
3C063EE29
3C158AA06
3C158AA12
3C158AA18
3C158CB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブラシが摩耗しても交換、調整する必要がなく、作業効率が格段に良くなるブラシを提供する。
【解決手段】回転軸4をブラシ研磨用の回転機械のスピンドルに取り付け、自動制御によりワークWに対してブラシ2の先端を接触させ、更にその位置から所定量だけ下方に移動させ、ブラシ2をワークWに一定の力で押し付け、ワークWをブラシ2により研磨又は研削する。研磨又は研削が進んでブラシ2が摩耗すると、コイルバネ10の力によりベースプレート3と共にブラシ2が本体金具1内から押し出される。ベースプレート3は、ガイド機構によりガイドされつつ本体金具1に対して軸方向に移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのバリを研削又は研磨して除去するためのブラシであって、
多数のブラシ毛を植設したベースプレートと、
当該ベースプレートを内部に配置するカップ状又は筒状をした有底の本体金具と、
前記ベースプレートを前記本体金具の内部でブラシ毛の摩耗方向の移動をガイドするガイド機構と、
前記本体金具の内部において前記ベースプレートを前記ブラシ毛の摩耗方向に付勢する付勢手段と、
を備えたことを特徴とする自動送出ブラシ。
【請求項2】
前記付勢手段は、軸方向が前記摩耗方向になるように配置したコイルバネであることを特徴とする請求項1に記載の自動送出ブラシ。
【請求項3】
前記付勢手段は、軸方向が前記摩耗方向になるように配置した複数のコイルバネの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の自動送出ブラシ。
【請求項4】
前記ガイド機構は、
前記ベースプレートに螺合するボルトと、
前記本体金具に設けられ且つ前記ボルトを外側から貫通させる長穴と、
からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動送出ブラシ。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動送出ブラシをセグメントブラシとして構成し、このセグメントブラシをベース円板に対して複数取り付けたことを特徴とする自動送出ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空、船舶、車両、一般家庭用品に係る被加工品のバリ取り等の加工作業を行うための、加工機械に取り付ける自動送出ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に記載されているようなブラシが知られている。このブラシは、円筒形状の基部と、この基部の一方の底面から基部の軸心の方向に沿って延在する線状のブラシとを含み、ブラシの先端がワークの表面に接触しつつブラシとワークとが相対移動することによりワークの表面に存在するバリを除去して研磨を行うブラシ本体と、を備えた構成である。また、軸心と同軸で且つブラシの先端が端部から突出するようにブラシ本体を内部空間に収容する第1収容部分と、端部の外周側に周方向に沿って等間隔に配置された複数の切刃とを有する切削加工部と、端部からのブラシの突出長さを変化させる変位機構とを備えている。
【0003】
前記変位機構は、ネジ軸や変位ナット等から構成される。このブラシでは、当該変位ナットを回転させることにより摩耗したブラシを突出させて初期長さに戻し、研磨工程を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−120210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のブラシでは、変位機構によりブラシを突出させるため、ブラシが摩耗するたびに調整が必要となる。このため、ブラシによる加工に手間がかかるという問題点があった。本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動送出ブラシは、ワークのバリを研削又は研磨して除去するためのブラシであって、多数のブラシ毛を植設したベースプレートと、当該ベースプレートを内部に配置するカップ状又は筒状をした有底の本体金具と、前記ベースプレートを前記本体金具の内部でブラシ毛の摩耗方向の移動をガイドするガイド機構と、前記本体金具の内部において前記ベースプレートを前記ブラシ毛の摩耗方向に付勢する付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記発明において、前記付勢手段は、軸方向が前記摩耗方向になるように配置したコイルバネであることが好ましい。また、前記付勢手段は、軸方向が前記摩耗方向になるように配置した複数のコイルバネの組み合わせとしても良い。
【0008】
更に、上記発明において、前記ガイド機構は、前記ベースプレートに螺合するボルトと、前記本体金具に設けられ且つ前記ボルトを外側から貫通させる長穴とから構成しても良い。
【0009】
また、本発明に係る自動送出ブラシは、上記自動送出ブラシをセグメントブラシとして構成し、このセグメントブラシをベース円板に対して複数取り付けた構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる自動送出ブラシを示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る自動送出ブラシの変形例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る自動送出ブラシの変形例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る自動送出ブラシの変形例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る自動送出ブラシを示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態3に係る自動送出ブラシを示す説明図である。
【
図9】
図8に示した自動送出ブラシの平面図である。
【
図10】上記実施の形態に示した自動送出ブラシのブラシ形状の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動送出ブラシを示す説明図である。
図2は、
図1のA−A断面図、
図3は、
図1のB−B断面図である。この自動送出ブラシ100は、カップ形状の本体金具1にブラシ2を多数設けた構造のカップブラシである。本体金具1の内部には、ベースプレート3が配置される。このベースプレート3には、多数のブラシ毛2aが植設されてなるブラシ2が設けられている。ブラシ2の先端近傍から一定範囲でマスキング又は熱圧縮チューブ5により当該ブラシ毛2aが束ねられている。マスキング又は熱圧縮チューブ5は、遠心力によりブラシ毛2aが広がるのを防止する。また、ブラシ2は、
図2に示すように、例えば平面視で円環形状であるがこれに限定されない。本体金具1の底部の中央には、回転軸4が設けられる。
【0012】
ベースプレート3は一定の厚みを有する円板形状である。その直径は、前記本体金具1の内径より僅かに小さい。このため、ベースプレート3と本体金具1との間には、隙間6が形成される。この隙間6は、後述するベースプレート3が本体金具1の内部を移動する場合に、引っ掛かりが生じないように設定する。
【0013】
前記本体金具1の側面には、軸方向に長穴7が周方向均等に4か所設けられている。この長穴7に対応するように、前記ベースプレート3の側面には、ボルト穴が設けられる。ベースプレート3の長穴7には、所定サイズのボルト8が外側から貫通されてベースプレート3のボルト穴に螺合する。この状態でボルト8の軸と長穴7とによりガイド機構が形成される。
【0014】
なお、ボルト8が緩まないようにシール等により回り止めを行うのが好ましい(図示省略)。ボルト8の直径と長穴7の幅とは、両者に所定の隙間が形成されるように寸法を設定するものとする。また、本体金具1とボルト8の頭との間にも所定の隙間を設けるものとする。
【0015】
ベースプレート3と本体金具1との間の空間には、ブラシ2の摩耗方向が軸方向になるようにコイルバネ10が配置されている。このコイルバネ10の直径L1は、
図3に示すように、ベースプレート3の直径L2の1/3以上とする。これは、ベースプレート3を押し出す力(コイルバネ10の弾性力)が当該ベースプレート3に均等にかかるようにするためである。好ましくは、コイルバネ10は、直径L1がベースプレート3の直径L2の1/2以上とすれば、より安定する。
【0016】
コイルバネ10の長さは、長穴7の最下端にボルト8が位置する状態でベースプレート3に弾性力を付勢できる長さとする。弾性力は、加工時にブラシ2をワークに押し付ける押圧力となるため、ワークにより適切なコイルバネ10に交換する。この自動送出ブラシ100は、ボルト8を取り外すことで内部のコイルバネ10を簡単に現場で適切なものに交換できる。また、コイルバネ10は一般的なものを使用できるので、ワークに応じたカスタマイズを簡単にできる。
【0017】
図1を用いて、この自動送出ブラシ100の動作を説明する。回転軸4をブラシ研磨用の回転機械のスピンドルに取り付け、自動制御によりワークWに対してブラシ2の先端を接触させ、更にその位置から所定量だけ下方に移動させ、ブラシ2をワークWに一定の力で押し付ける。ワークWに対する押付力は、コイルバネ10のバネ定数に基づくものとなる。また、コイルバネ10は、直径L1がベースプレート3の直径L2の1/2以上に設定されているため、ベースプレート3が均等に押し下げられ、本体金具1内での挙動が安定する。
【0018】
この状態でワークWを研磨又は研削する。加工プログラム上、ワークWの表面と本体金具1の下端の位置は一定距離が保持される。研磨又は研削が進んでブラシ2が摩耗すると、コイルバネ10の力によりベースプレート3と共にブラシ2が本体金具1内から押し出される。ベースプレート3は、ガイド機構によりガイドされつつ本体金具1に対して軸方向(摩耗方向)に移動する。また、ガイド機構の長穴7は、本体金具1内に入った金属粉を外部に放出する。
【0019】
この自動送出ブラシ100では、ブラシ2が摩耗してもブラシ2が自動的に本体金具1内から送出されるため、ブラシ交換の手間が省ける。また、ブラシ2のワークWに対する押圧力は、前記コイルバネ10のバネ定数により設定されているため、従来のようにブラシが摩耗する度に調整する必要がなく、作業効率が格段に良くなる。更に、構造がシンプルなため、機械的な故障の可能性が低い。また、複雑なプログラムが不要であるため、誰でも容易に扱える。
【0020】
また、
図4及び
図5に示す自動送出ブラシ150のように、コイルバネ20は、一定の半径L3の円上に4個配置しても良い。各コイルバネ20のバネ定数の合計が自動送出ブラシ150の押圧力となる。この場合、前記配置半径L3は、ベースプレート3の直径L2の1/3以上とする。これは、ベースプレート3を押し出す力が当該ベースプレート3に均等にかかるようにするためである。好ましくは、コイルバネ20の配置半径L3がベースプレート3の直径の1/2以上とすれば、より安定する。
【0021】
また、
図6に示す自動送出ブラシ160のように、コイルバネ20の個数を増やすことで、ブラシの押圧力を高く設定できる。例えば、同図に示すように、コイルバネ20の数を8個にすることで、
図4及び
図5の構成に比べて押圧力を2倍にできる。また、この自動送出ブラシ160は、前記コイルバネ20のうちベースプレート3の4個を外側円上、4個をベースプレート3の内側円上に配置することで、ブラシ2のワークに対する押圧バランスが良くなる。なお、コイルバネ20の個数は、所望の押圧力により決定し、例えば3個にしても良いし、12個にしても良い。この場合も、コイルバネ20はベースプレート3に対して均等に配置するものとする。
【0022】
この自動送出ブラシ150,160では、コイルバネ20の個数により現場で簡単に押圧力を設定できる。好ましくは、ベースプレート3の上面にコイルバネ20をはめ込む凸部又は凹部からなる設置部を多数形成しておく。作業者は、コイルバネ20を所望の設置部にはめ込み、本体金具1内にブラシ2をセットする。
【0023】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る自動送出ブラシを示す説明図である。この自動送出ブラシ200は、本体金具1の内部とベースプレート3との間にエア袋201を配置した構成である。このエア袋201には、図示しないエア導入口が設けられる。エアは所定の圧力で内部に封入される。この内部の圧力がブラシ2のワークに対する押圧力となる。また、エアの代わりにオイルを入れても良い。
【0024】
係る構成によれば、上記同様、ブラシ2が摩耗してもブラシ2が自動的に本体金具1内から送出されるため、ブラシ交換の手間が省ける。また、ブラシ2のワークWに対する押圧力は、前記エア袋201の内圧により設定されているため、従来のようにブラシが摩耗する度に調整する必要がなく、作業効率が格段に良くなる。更に、構造がシンプルなため、機械的な故障の可能性が低い。また、複雑なプログラムが不要であるため、誰でも容易に扱える。
【0025】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係る自動送出ブラシを示す説明図である。
図9は、
図8に示した自動送出ブラシの平面図である。この自動送出ブラシ300は、セグメントブラシ350をベース円板351に周方向に均等な角度(90度毎)で4個取り付けた構造である。セグメントブラシ350は、本体金具1が有底の筒状になるが、全体構成は実施の形態1の構成と同じである。
【0026】
この自動送出ブラシ300では、ベース円板351の中心に設けた回転軸352を回転機械のスピンドルに取り付け、自動制御によりワークWに対してブラシ2の先端を接触させ、続いてその位置から所定量だけ下方に移動させ、ブラシ2をワークWに一定の力で押し付ける。ワークに対する押付力は、各コイルバネ10のバネ定数に基づくものとなる。
【0027】
この状態でワークWを研磨又は研削する。加工プログラム上、ワークWの表面と本体金具1の下端の位置は一定距離が保持される。研磨又は研削が進んでブラシ2が摩耗すると、コイルバネ10の力によりベースプレート3と共にブラシ2が本体金具1内から押し出される。ベースプレート3は、ガイド機構により本体金具1に対して軸方向にガイドされた状態で移動する。ガイド機構の長穴7は、本体金具1内に入った金属粉を外部に放出する。
【0028】
この自動送出ブラシ300では、ブラシ2が摩耗してもブラシ2が自動的に本体金具1内から送出されるため、ブラシ交換の手間が省ける。また、ブラシ2のワークWに対する押圧力は、前記コイルバネ10のバネ定数により設定されているため、従来のようにブラシが摩耗する度に調整する必要がなく、作業効率が格段に良くなる。更に、構造がシンプルなため、機械的な故障の可能性が低い。また、複雑なプログラムが不要であるため、誰でも容易に扱える。
【0029】
また、各セグメントブラシ350のコイルバネ10のバネ定数を変更することで、各セグメントブラシ350の押圧力を調整できる。また、セグメントブラシ350毎に異なるバネ定数を有するコイルバネ10を用いても良い。
【0030】
また、
図10に示すように、上記実施の形態に示した自動送出ブラシのブラシ形状を平面視で、四角形状にしても良い(同図(a)参照)。また、三角形状(同図(b)参照)、十字形状(同図(c)参照)としても良い。同図(a)及び(b)の構成において、ブラシ形状を回転方向である周方向において角部30を形成することで加工機械のスピンドルに取り付けてワークを加工する際、角部30においてブラシがワークに良く当たることになる。このため、研削・研磨能力が飛躍的に高まるものとなる。
【符号の説明】
【0031】
100 自動送出ブラシ
1 本体金具
2 ブラシ毛
3 ベースプレート
4 回転軸
5 マスキング又は熱圧縮チューブ
6 隙間
7 長穴
8 ボルト
10 コイルバネ