【解決手段】紙基材に、酸化重合型インキ(A)により形成された第一の印刷層と、沸点範囲270〜350℃の鉱物油を含有するオーバープリントニス(B)により形成された第ニの印刷層(剥離層)と、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性インキ(C)より形成された第三の印刷層(隠蔽層)とをこの順に有する積層体であって、前記鉱物油の添加量が前記オーバープリントニス(B)全量の15〜40質量%である事を特徴とする積層体。
紙基材に、酸化重合型インキ(A)により形成された第一の印刷層と、沸点範囲270〜350℃の鉱物油を含有するオーバープリントニス(B)により形成された第ニの印刷層(剥離層)と、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性インキ(C)より形成された第三の印刷層(隠蔽層)とをこの順に有する積層体であって、前記鉱物油の添加量が前記オーバープリントニス(B)全量の15〜40質量%である事を特徴とする積層体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層体は、紙基材に、酸化重合型インキ(A)により形成された第一の印刷層と、沸点範囲270〜350℃の鉱物油を含有するオーバープリントニス(B)により形成された第ニの印刷層(剥離層)と、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性インキ(C)より形成された第三の印刷層(隠蔽層)とをこの順に有し、前記鉱物油の添加量が前記オーバープリントニス(B)全量の15〜40質量%である事を特徴とする。
前記第三の印刷層(隠蔽層)を紙器パッケージの開口部に設け、第三の印刷層(隠蔽層)上にセロファンテープにて封印した後、パッケージ開封すべくセロファンテープを剥がした際に、セロファンテープと共に前記第一の印刷層と第二の印刷層(剥離層)の臨界部から剥がれ、一旦剥がれた第一の印刷層と第二の印刷層(剥離層)は再接着(再封緘)できない上、第一の印刷層と第三の印刷層(隠蔽層)を同じ色合いのインキを用いた場合、両層の光りの干渉差によるコントラストから、そのデザイン性を保持しつつ既にパケージが開封済みである事を知らせる事が出来るものである(
図1、及び
図2参照)。
【0015】
まず最初に、本発明の積層体で使用する基材としては、とりわけ用紙、カルトンと言った紙基材を対象とする。例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等に対し、効力を発揮できる。
ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材に対し使用しても特に問題はないし、これら樹脂、フィルム類が紙基材表面にラミネートされたものでもよい。
また、金属基材、ガラス基材、フィルム基材、木材基材、繊維質基材等のその他の基材に用いてもよい。
【0016】
紙基材に隣接する第一の印刷層を形成させるに、酸化重合型インキ(A)を用いる事ができる。印刷方式としては、オフセット印刷方式又はレタープレス印刷方式を用いる事ができ、例えばオフセット印刷方式を例に挙げれば、市販の極一般的な酸化重合型オフセットインキを使用する事ができる。またレタープレス印刷方式であっても、同様に公知公用の極一般的な酸化重合型インキを使用する事ができる。
尚、第一の印刷層は、プロセスカラー又は特色の単色刷りでも良いし、プロセスカラー4色の刷重ねでも良いし、特色の刷重ねでもよい。また、各々ベタ刷りでもよいし、平網
や網点等のドット再現の絵柄印刷でもよい。
【0017】
前記の第一の印刷層と隣接する第二の印刷層(剥離層)に使用するオーバープリントニス(B)としては、バインダー、鉱物油、植物油、ドライヤー、及びその他助剤から構成されるものが好ましく、前記鉱物油として沸点範囲270〜350℃の鉱物油を含有する事を必須とする。
前記バインダーとしては、ロジンフェノール樹脂、各種天然樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、中でもロジンフェノール樹脂が好ましい。
前記植物油としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブオイルなどの不乾性油、大豆油、大豆サラダ油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、アマニ油、エノ油、桐油などの乾性油、再生植物油、植物エステル等の植物由来成分などを用いることができる。中では、大豆サラダ油が好ましい。
前記鉱物油はその沸点範囲270〜350℃範囲とする事でセロファンテープの剥離性が良好に保たれる。尚、第二の印刷層(剥離層)を形成させる印刷方式としては、第一の印刷層と同様にオフセット印刷方式又はレタープレス印刷方式を用いる事ができる。
また、必要に応じて乾燥促進させる為のドライヤーや、ワックスを添加してもよい。
前記、ドライヤーとしては、金属ドライヤーをオーバープリントニス全量の0.1〜3.0質量%の範囲で添加してもよい。金属ドライヤーは、汎用のマンガン系ドライヤー、コバルト系ドライヤーがいずれも使用できる。
また、ワックスをオーバープリントニス全量の0.1〜5.0質量%の割合で添加してもよい。前記、ワックスとしては、カルナバワックス、みつろう、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイド、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、中ではポリエチレンワックスが好ましい。
【0018】
前記の沸点範囲270〜350℃の鉱物油の具体的なものとしては、一般的に溶剤成分と呼ばれる軽質の鉱物油が挙げられ、軽質の鉱物油としては、非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、JXTGエネルギー(株)製のAFソルベント5号(沸点範囲275〜306℃)、AFソルベント6号(沸点範囲296〜317℃)、AFソルベント7号(沸点範囲259〜282℃)や、三菱商事ケミカル(株)社製のD−SOL280(沸点範囲282〜312℃)D−SOL300(沸点範囲305〜350℃)が例示される。
これら、沸点範囲270〜350℃の鉱物油は、単独で用いても複数組み合わせて使用してもよい。尚、各々の鉱物油の沸点範囲は、安全データシート(SDS)にて確認する事ができる。
【0019】
前記沸点範囲270〜350℃の鉱物油の添加量としては、前記オーバープリントニス(B)全量の15〜40質量%である事を必須とする。該鉱物油をオーバープリントニス(B)全量の15質量%以上添加する事でセロファンテープ剥離性が良好に保たれる傾向にある。また、該鉱物油をオーバープリントニス(B)全量の40質量%以下とする事でセロファンテープ剥離の経時安定性が保たれる傾向にある。
【0020】
尚、第二の印刷層(剥離層)に使用するオーバープリントニス(B)には必要に応じて、耐摩擦性や耐スクラッチ性を向上させる目的でワックスコンパウンドや、乾燥性促進目的にドライヤー等適宜添加してもよい。
【0021】
前記第二の印刷層(剥離層)と隣接する第三の印刷層(隠蔽層)を形成する為に、第三の印刷層(隠蔽層)中に、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性インキ(C)を使用する事を必須とする。尚、本発明において、「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートの一方または両方をいう。
ウレタン(メタ)アクリレートの主原料はジイソシアネート、ポリオール、ヒドロキシ(メタ)アクリレートの3種類を用いて、適宜その組み合わせを変えて分子設計する事ができる。ウレタン(メタ)アクリレートの特徴の1つとして比較的容易に分子設計する事ができる上、強靭性、適度な硬度、耐薬品性、柔軟性、密着性、耐光性、耐酸素性、低温適性に優れる事から好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量としては、1,000〜15,000の範囲のものが好ましく、中でもポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
前記ポリエーテルは、最初からジイソシアネートと反応させてイソシアネート基を付加した形とし、これに2−ヒドロシキエチルアクリレート(HEA)を反応させてポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレートを作製する事ができる。市販品としては、三菱化学社製マイテックPR−202が挙げられる。 尚、第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる印刷方式としては、第一、第二の印刷層と同様にオフセット印刷方式又はレタープレス印刷方式を用いる事ができる。
【0022】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの添加量が、前記活性エネルギー線硬化性インキ(C)全量の30〜70質量%である事が好ましく、40〜60質量%の範囲であればより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線硬化性インキ(C)全量の30%以上添加する事でセロファンテープ剥離の経時安定性が保たれる傾向にある。また、ウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線硬化性インキ(C)全量の70%以下とする事でミスチングなどの印刷適性が保たれる傾向にある。
【0023】
更に、本発明の積層体で使用する前記活性エネルギー線硬化性インキ(C)には、ワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤を添加する事ができる。
前記パラフィンワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤を添加する事でスクラッチ性が向上する為、パッケージ加工時、物流運搬時、店頭展示の等に発生する擦り傷を抑制する事ができる。
【0024】
前記ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などの炭素原子数8〜18程度の範囲にある脂肪酸等を挙げることができる。
中でもポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスに代表されるパウダータイプ又は粒子タイプのポリオレフィンワックスは良好なインキ流動性と硬化性が得られるため好ましく、さらに前記ポリオレフィンワックスの融点が90〜130℃の範囲にありかつ平均粒子径D50が1〜10マイクロメートルの範囲にあるポリオレフィンワックスであればより好ましい。平均粒子径D50が1マイクロメートル以上である場合は硬化性を向上させることができ、10マイクロメートル以下の場合は印刷機上のインキ転移性が保持されオフセット印刷適性が良好に保たれる傾向となる。また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100質量%に対し、ワックスの総使用量が0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0025】
前記ワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤の添加量の総量は、前記活性エネルギー線硬化性オフセットインキ(C)の2質量%以上、10質量%以下である事が好ましい。ワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤の添加量の総量が2質量%以上であればスクラッチ性が保持される傾向にある。また10質量%以下であればオフセット印刷適性が保持される傾向にある。
【0026】
前記ワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤の添加量の総量は、前記活性エネルギー線硬化性オフセットインキ(C)の2質量%以上、10質量%以下である事が好ましい。ワックス及び/又はシリコーン系界面活性剤の添加量の総量が2質量%以上であればスクラッチ性が保持される傾向にある。また10質量%以下であればオフセット印刷適性が保持される傾向にある。
【0027】
前記シリコーン系界面活性剤としてはポリジメチルシロキサンやシリコーンアクリレートなどの各種変性シロキサン等を挙げることができる。
中でも、シリコーンアクリレートは少量の添加で良好なスクラッチ性が得られるため好ましい。また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100質量%に対し、シリコーン系界面活性剤の総使用量が0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)を形成する為の前記活性エネルギー線硬化性インキ(C)には、前記ウレタン(メタ)アクリレート以外の樹脂として一般的な活性エネルギー線硬化性インキで使用可能は樹脂を使用する事ができる。具体的には、各種(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方または両方をいう。
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等が挙げられる。
また、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、尿素アルデヒド樹脂、ケトンアルデヒド樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられ、必要に応じこれらの樹脂を併用して使用する事ができる。
【0029】
本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0030】
次に、本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)が紫外線硬化型である場合に用いる光重合開始剤は、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ((4−メチルチオ)フェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0031】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、
アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらのなかでも特に硬化性に優れる点からアミノアルキルフェノン系化合物が好ましく、また、特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生するUV−LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、及びアミノベンゾフェノン系化合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0032】
前記光重合開始剤を含有する場合のその添加量は、本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる活性エネルギー線硬化性インキ中に、固形分換算で1〜20質量%の範囲が好ましく、5〜15質量%の範囲がより好ましい。即ち、光重合開始剤の合計使用量が1質量%以上の場合は良好な硬化性を得ることができ、また20質量%以下であれば、未反応の重合開始剤が硬化物中に残存することがなく、硬化不良も抑制できる。ただし活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、原理的にこれら光重合開始剤の使用は必須ではない。
【0033】
また、前記本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる活性エネルギー線硬化性インキは、該組成物の硬化塗膜の硬化性を向上できることから、必要に応じて、さらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。
【0034】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これら光増感剤の使用量は、硬化性向上の効果が良好なものとなる点から本発明の活性エネルギー線硬化性インキ中の不揮発成分100質量%に対し、その合計使用量として1〜20質量%となる範囲であることが好ましい。
【0035】
本発明の積層体の第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる活性エネルギー線硬化性インキは、バインダー、ウレタン(メタ)アクリレート、光重合開始剤以外に、重合禁止剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、着色剤、ワックス、顔料、染料等を含有しても良い。
【0036】
本発明の積層体の第一の印刷層を形成させる酸化重合型インキ(A)、及び前記第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる活性エネルギー線硬化性インキ(C)に、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0037】
本発明の積層体で使用できる前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。
例えば、ラーベン14、ラーベン450、ラーベン860Ultra、ラーベン1035、ラーベン1040、ラーベン1060Ultra、ラーベン1080Ultra、ラーベン1180、ラーベン1255(以上、ビルラ社製)、リーガル400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグルL(以上、キャボット社製)、MA7、MA8、MA11(以上、三菱化学社製)等を挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0039】
イエローインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0040】
また、マゼンタインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、269等、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0041】
また、シアンインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0042】
更に染料としては、例えば、モノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系染料等が挙げられる。これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0043】
本発明の積層体の第一の印刷層を形成させる酸化重合型インキ(A)、第ニの印刷層(剥離層)を形成させるオーバープリントニス(B)、及び第三の印刷層(隠蔽層)を形成させる活性エネルギー線硬化性インキ(C)の製造は、従来の酸化重合型インキ、オーバープリントニス、活性エネルギー線硬化性インキと同様に、必要諸原料を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0045】
尚、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0046】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムH
XL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0047】
(調整例1:第ニの印刷層(剥離層)用オーバープリントニス(OPニス)の調整)
ロジンフェノール樹脂/植物油/鉱物油としてAFソルベント6号(沸点範囲296〜317℃)の混合物(質量比率40:52:8)からなる樹脂ベース12X0970(DICグラフィックス社製)を75質量部、AFソルベント7号(沸点範囲259〜282℃、JXTGエネルギー(株)社製)を13質量部、大豆油として大豆サラダ油10質量部、助剤としてポリエチレンワックスコンパウンドMC−3601D COMPOUND(森村ケミカル社製)1質量部、ドライヤーとしてコバルトドライヤーDICNATE Co10%SB(DIC(株)社製)1質量部の合計100部を加え、ミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌した後、配合物を3本ロールミルで練肉し、OPニス(OP1)を得た。
【0048】
(調整例2〜9:第ニの印刷層(剥離層)用OPニスの調整)
表1、2に記載の配合にて、調整例1の手順にて同様にOPニス(OP2〜9)を作製した。
尚、AFソルベント6号の沸点範囲は296〜317℃、
AFソルベント5号の沸点範囲は275〜306℃、
AFソルベント4号の沸点範囲は240〜265℃(何れもJXTGエネルギー(株)社製)を使用した。
【0049】
第ニの印刷層(剥離層)用OPニスの調整例1〜9(OP1〜9)の配合を表1、2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
(調整例10:第三の印刷層(隠蔽層)用紫外線硬化性オフセット墨インキの調整)
墨顔料Raven1060Ultra(ビルラ社製)を18質量部、樹脂としてジアリルフタレートプレポリマー ダイソーDAP A(大阪ソーダ社製)を14質量部、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート DPHA NS(アルケマ社製)を50質量部、モノマーとしてエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート MIRAMER M−3130(MIWON社製)を10質量部、光重合開始剤としてα−アミノアルキルフェノン系開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IGM社製「Omnirad 907」)を5質量部、増感剤としてジエチルアミノベンゾフェノンEAB−SS(大同化成工業(株)社製)を2質量部、ポリエチレンワックスとしてS−381−N1(SHAMROCK TECHNOLOGIE社製)を1質量部、重合禁止剤N−ストロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩としてQ1301(和光純薬(株)社製)0.1質量部 合計100.1質量部を加え、ミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌した後、配合物を3本ロールミルで練肉し、紫外線硬化性オフセット墨インキ(U1)を得た。
【0053】
(調整例11〜19:第三の印刷層(隠蔽層)用紫外線硬化性オフセット墨インキの調整)
表3に記載の配合にてポリエーテル変性ウレタンアクリレート マイテックPR−202(三菱化学(株)社製)を加え、調整例10の手順にて同様に紫外線硬化性オフセット墨インキ(U2〜9)を作製した。
尚、調整例U6については、助剤としてシリコーンTRGO RAD2700(エボニックジャパン社製)1質量部を追加した。
【0054】
第三の印刷層(隠蔽層)用紫外線硬化性オフセット墨インキの調整例10〜19の配合を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
〔展色物の製造方法〕
第一の印刷層の酸化重合型インキ(A)としてスペースカラー・フュージョンG MK(DICグラフィックス社製)を、第二の印刷層(剥離層)のオーバープリントニス(B)は、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コートボール紙(王子マテリア社製UFコート、米坪350g/m
2)の表面に、200cm
2の面積にわたって均一に塗布されるように展色し、その後24時間自然乾燥させることで展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
さらに第三の印刷層(隠蔽層)の活性エネルギー線硬化性インキは、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.125mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、上記の第二の印刷層の表面に、200cm
2の面積にわたって均一に塗布されるように展色し、その後活性エネルギー線である紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化させた。空冷メタルハライドランプ(出力120W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速40メートルの速度で通過させることにより、インキ皮膜を硬化させた。
【0058】
〔実施例1〕
第二の印刷層(剥離層)としてオーバープリントニス(OP2)を、第三の印刷層(隠蔽層)として紫外線硬化性オフセット墨インキ(U4)を前記展色物の製造方法の手順に従って本発明の積層体を作製した。
【0059】
〔実施例2〜14、比較例1〜5〕
実施例2〜14、比較例1〜5についても、実施例1と同様の手順にて、表5〜7に示す第二の印刷層(剥離層)/第三の印刷層(隠蔽層)の各組み合わせにて積層体を作製した。
【0060】
(評価方法1:デザイン性)
剥離層のOPニス上に上記紫外線硬化性オフセット墨インキを印刷後、該墨インキの転移性を目視にて下記5段階で評価した。
5:墨インキが十分転移する。
4:墨インキが転移する。
3:墨インキが淡く転移する。
2:墨インキが転移しない。
1:墨インキが全く転移しない。
【0061】
(評価方法2:セロファンテープ剥離性)
剥離層のOPニス上に上記紫外線硬化性オフセット墨インキを印刷直後、墨インキ上でセロファンテープ剥離試験を実施し墨インキ層の剥離度合を目視にて下記5段階で評価した。
また、剥離層のOPニス上に上記紫外線硬化性オフセット墨インキを印刷後から25℃温存下で1ケ月経過後に同様の手順にて5段階で評価した。
尚、下記弱剥離とは、ニチバン製セロファンテープを墨インキ塗膜面に貼り指の腹で強く擦りつけ、塗膜とテープの角度を90度に保ちながらテープを1秒/cmの速度でゆっくり剥し評価する。
また、強剥離とは、ニチバン製セロファンテープを墨インキ塗膜面に貼り指の腹で強く擦りつけ、塗膜とテープの角度を90度に保ちながらテープを瞬間的に剥がし評価する。
5:弱剥離において墨インキ層以下をまったく破壊せず容易に剥がれる。
4:弱剥離において墨インキ層以下をほぼ破壊せず容易に剥がれる。
3:弱剥離において墨インキ層以下の一部を剥離して剥がれる。
または隠蔽層の一部が剥がれない。
2:弱剥離において墨インキ層以下がまったく剥がれないが、強剥離において
剥がれる。
1:強剥離において墨インキ層以下を大きく剥離した状態で剥がれる。
または隠蔽層が全く剥がれない。
【0062】
(評価方法3:スクラッチ性)
剥離層のOPニス上に上記紫外線硬化性オフセット墨インキを印刷後、墨インキ層上を爪で削り下地の絵柄が露出するか目視にて下記5段階で評価した。
5:爪で強く擦り隠蔽層に全く傷がつかない。
4:爪で強く擦り隠蔽層に傷がつくが、下地絵柄が露出しない。
3:爪で強く擦り下地絵柄の一部が露出する。
2:爪で強く擦り下地絵柄が明らかに露出する。
1:爪で弱く擦り下地絵柄が明らかに露出する。
【0063】
表5〜7に本発明の積層体の第二の印刷層(剥離層)/第三の印刷層(隠蔽層)の各組み合わせ、及び評価結果を示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
本発明の積層体では、デザイン性、セロファンテープ剥離性、及びスクラッチ性を兼備する結果となった。