前記発泡性ポリプロピレン組成物から成分(C)を除いた組成物のMFR(230℃、荷重2.16kg)が10〜70g/10分である、請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下のホモポリプロピレン(A2)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下の追添エラストマー(A3)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
前記成分(C)として、発泡剤を前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部含む、請求項1〜8のいずれかに記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
前記成分(A1)と(B)、必要に応じて成分(A2)、(A3)、および(A4)を予め溶融混練することなく、前記発泡性ポリプロピレン組成物を調製し、発泡させる工程を備える、請求項10に記載の射出発泡成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0008】
1.発泡性ポリプロピレン組成物
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物(以下単に「本発明の組成物」ともいう)は、5重量%以上のエチレンを含むブロックポリプロピレンを主成分とする耐衝撃性ポリプロピレンポリマー成分(A)と、マスターバッチ組成物である成分(B)と、発泡剤である成分(C)とを必須成分として含む。本発明の組成物はマスターバッチ組成物を用いるため発泡剤を除く他の全成分を予め溶融混練する必要がないので取扱性や成形時の作業性に優れる。本発明の発泡性ポリプロピレン組成物から成分(C)を除いた組成物、すなわち成分(A)と成分(B)からなる組成物のMFRは230℃、2.16kgの荷重で5〜100g/10分であり、好ましくは10〜70g/10分である。成分(C)を含めた場合にはMFR測定途中で発泡し正確に計測することが現実的でないため、組成物のMFRについては発泡剤を除いた組成物で評価されることが一般的である。MFRの値が上限値を超えると発泡成形時に破泡しやすく発泡成形後の成形体で外観不良が発生しやすくなる。またMFRの値が下限値未満であると流動性が低下するので発泡性ポリプロピレン組成物の加工性が低下する。
【0009】
1−1.ブロックポリプロピレン(成分(A1))
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は、成分(A)としてJIS K6921−1で規定される耐衝撃性ポリプロピレンポリマーを含む。ブロックポリプロピレン(成分(A1))は、当該耐衝撃性ポリプロピレンポリマーの一態様であり、成分(A)の必須成分である。ブロックポリプロピレンとしては、プロピレン重合体の存在下、エチレンと1種類以上のC3〜C10−αオレフィンを重合して得た重合混合物(HECOとも呼ばれる)が挙げられる。本発明のブロックポリプロピレンは5重量%以上のエチレン由来単位を含む。5重量%のエチレン由来単位を含むブロックポリプロピレンとは、エチレン由来の単位とプロピレン由来の単位との重量比が5:95である共重合体である。他の共重合体についても同様である。エチレン由来単位の上限は限定されないが、25重量%以下であることが好ましい。後述するマスターバッチ組成物もHECOの一種であり、ポリマー構造の類似性ゆえに当該ブロックポリプロピレンとは均一に混ざりやすい性質をもち、発泡成形時に破泡を生じにくく成形体の外観を良好に保つと考えられるが、当該ブロックポリプロピレンとは組成において異なる。
【0010】
1−2.任意成分
本発明の組成物は、成分(A)の任意成分として、ホモポリプロピレン(成分(A2))、追添エラストマー(成分(A3))、充填材(成分(A4))、あるいはこれらの組合せを含んでもよい。
【0011】
1)ホモポリプロピレン(成分(A2))
本発明の組成物は前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下のホモポリプロピレンを成分(A)の任意成分として含んでいてもよい。ホモポリプロピレンを含む発泡成形体は剛性に優れる。当該ホモポリプロピレンの含有量の上限は40重量部以下が好ましく、下限値は1重量部以上が好ましい。当該ホモポリプロピレンは0〜2重量%のエチレン由来単位を含んでいてもよい。
【0012】
2)追添エラストマー(成分(A3))
本発明の組成物は前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下の追添エラストマーを成分(A)の任意成分として含んでいてもよい。追添エラストマーとは弾性を有するポリマーであり、主に材料の耐衝撃性を向上する目的で添加される。本発明で用いる追添エラストマーとしては、エチレンとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、炭素数3〜12のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。追添エラストマーは、成分(B1)および成分(B2)のポリマーよりも低い密度を有することが好ましい。例えば追添エラストマーの密度は限定されないが0.850〜0.890g/cm
3であることが好ましく、0.860〜0.880g/cm
3であることがより好ましい。このような追添エラストマーは、例えば特開2015−113363号に記載のとおりメタロセンまたはハーフメタロセン等の均一系触媒を用いてモノマーを重合することにより調製できる。追添エラストマーのMFRは、190℃、2.16kgの荷重で0.1〜50g/10分であることが好ましい。当該追添エラストマーの含有量の上限は40重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。下限値は1量部以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、5重量部以上がさらに好ましい。
【0013】
3)充填材(成分(A4))
本発明の組成物は前記成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下の充填材を成分(A)の任意成分として含んでいてもよい。充填材は主に材料の剛性を向上する目的で添加され、例えばタルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイトなどの天然珪酸または珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの酸化物;含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩などの粉末状充填材;マイカなどのフレーク状充填材;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、及びエレスタダイトなどの繊維状充填材;ならびに、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填材;ガラスファイバー等の無機充填材;カーボンファイバー、セルロースファイバー等の有機充填材が挙げられる。これらの充填材の分散性を向上させるために、必要に応じて、充填材の表面処理や、充填材と樹脂との複合化(ポリオレフィン等をキャリアとする充填材マスターバッチの作製)を行ってもよい。この際、当該マスターバッチに含まれるキャリアは後述する他の成分に該当する。充填材の中でも、本発明の組成物中の成分としての分散性が良く、成形体の剛性を向上させやすく、さらには容易入手性の観点から、タルク等の板状充填材が好ましい。板状無機充填材の平均粒子径は1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。平均粒子径はJIS Z8825に従って測定される。充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
1−3.マスターバッチ組成物(成分(B))
マスターバッチ組成物は、以下の成分を含む。
成分(B1):0〜3重量%のエチレンまたは1種類以上のC4〜C10−α−オレフィン由来単位を含むプロピレン(共)重合体、および
成分(B2):25〜35重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン−エチレン共重合体
【0015】
(1)成分(B1):プロピレン(共)重合体
プロピレン(共)重合体とは、プロピレン単独重合体、あるいは0重量%を超え3重量%以下のエチレンまたはC4〜C10−α−オレフィン(以下「コモノマー」ともいう)とプロピレンの共重合体である。最終製品で剛性と耐熱性が要求される場合は、プロピレン単独重合体が好ましい。一方、柔軟性と耐衝撃性が要求される場合は共重合体が好ましい。コモノマー由来単位の含有量の上限値は3重量%以下であるが、2.8重量%以下が好ましく、2.5重量%以下がより好ましい。当該量が上限値を超えると、剛性が低下する。また、当該量が5.0重量%以上であると重合体の製造が困難となる。コモノマー由来単位が存在する場合の下限値は限定されないが、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。コモノマーとしては、入手容易性等からエチレンまたはC4〜C8−α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0016】
(2)成分(B2):プロピレン−エチレン共重合体
本発明で用いるプロピレン−エチレン共重合体はエチレン由来単位を25〜35重量%含む。エチレン由来単位の含有量がこの範囲を超えるとマスターバッチ組成物中での成分(B1)と成分(B2)の親和性が損なわれ発泡成形時に破泡を生じやすくなることから発泡成形後の成形体の外観が低下する。この観点からエチレン由来単位の含有量の上限値は33重量%以下が好ましい。当該含有量の下限値は27重量%以上が好ましい。
【0017】
(3)組成比
成分(B1)と成分(B2)の重量比は65〜85:15〜35である。成分(B2)の量がこの上限を超えると製造が困難となり、下限未満であると発泡成形体としたときの外観の改良効果が低下する。この観点から前記比率は、好ましくは65〜75:25〜35、より好ましくは67〜73:27〜33である。
【0018】
(4)特性
1)MFR
マスターバッチ組成物の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは5〜30g/10分である。MFRがこの範囲にあることで発泡性ポリプロピレン組成物に優れた流動性を付与できる。しかしながらMFRの値が上限値を超えると発泡成形時に破泡しやすく発泡成形後の成形体で外観不良が発生しやすくなる。またMFRの値が下限値未満であると流動性が低下するので発泡性ポリプロピレン組成物の加工性が低下する。また、成分(A1)との分散性が悪く、発泡成形体の外観に悪影響を及ぼす可能性がある。この観点から、MFRは好ましくは5〜15g/10分、さらに好ましくは7〜12g/10分である。
【0019】
2)XIのMwおよびMw/Mn
マスターバッチ組成物のキシレン不溶分(XI)のGPCにより測定したMw/Mnは6〜20である。キシレン不溶分は当該組成物における結晶性成分である。Mwは10×10
4〜30×10
4と比較的低い範囲であることが好ましい。このような低分子量でありかつ分子量分布の指標であるMw/Mnも6〜20と広い範囲にあると、高分子量成分による溶融張力や伸長粘度の向上と低分子量の成分による流動性の向上が達成される。このため発泡成形時に破泡しにくく外観が良好な発泡成形体が得られる。この観点から前記Mwは12×10
4〜28×10
4が好ましい。また前記Mw/Mnは7〜20が好ましく、8〜20がより好ましく、9〜20がさらに好ましい。XIのMwおよびMw/Mnは25℃のキシレンに不溶な成分を得て、当該成分をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて測定することで求められる。
【0020】
3)XSIV
マスターバッチ組成物のキシレン可溶分(XS)の極限粘度(XSIV)は、当該組成物における結晶性を持たない成分の分子量の指標でもある。XSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。本発明においてXSIVは6.0〜9.0dl/gである。XSIVがこの範囲にあることで、溶融張力や伸長粘度が大きくなり、発泡成形体の外観を良好にできる。この観点から、前記極限粘度は好ましくは6.0〜8.0dl/gである。
【0021】
(5)製造方法
マスターバッチ組成物は任意の方法で製造してよいが、成分(B1)の原料モノマーおよび成分(B2)の原料モノマーを、(i)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および内部電子供与体としてスクシネート系化合物を含有する固体触媒、(i i)有機アルミニウム化合物、ならびに(i i i)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて重合する工程を含む方法で得ることが好ましい。
【0022】
1)固体触媒(成分i)
成分(i)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。
【0023】
成分(i)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)
gX
4−gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O
n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(OisoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O
n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O
n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O
n−C
4H
9)
4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、より特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0024】
成分(i)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0025】
成分(i)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。本発明においては、広い分子量分布を与える内部電子供与体を用いることが好ましい。一般に、多段階で重合を行うことにより分子量分布を大きくできることが知られているが、XIの分子量が低い場合は分子量分布を大きくすることが困難である。しかし、特定の内部電子供与体を用いることでXIの分子量が低い場合でも分子量分布を大きくすることが可能となる。当該触媒を用いて重合された組成物は、別な触媒を用いて重合されたポリマーをペレットあるいはパウダーブレンドして得た同じ分子量分布を有する組成物、さらに多段重合して同じ分子量分布を有する組成物に比べて優れた流動性と大きな溶融張力や伸長粘度を示す。これは、当該触媒を用いて製造した組成物は高分子量成分と低分子量成分が分子レベルに近い状態で一体となっているが、後者の樹脂組成物は分子レベルに近い状態では混ざり合ってはおらず見かけ上同一の分子量分布を示しているにすぎないためと考えられる。しかし、このことを請求項において言葉で表現することは現実的ない。以下、好ましい内部電子供与体について説明する。
【0026】
本発明において好ましい内部電子供与体はスクシネート系化合物である。本発明でスクシネート系化合物とはコハク酸のジエステルまたは置換コハク酸のジエステルをいう。以下、スクシネート系化合物について詳しく説明する。本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式(I)で表される。
【0028】
式中、基R
1およびR
2は、互いに同一かまたは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり;基R
3〜R
6は、互いに同一かまたは異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R
3〜R
6は一緒に結合して環を形成してもよい。
【0029】
R
1およびR
2は、好ましくは、C
1〜C
8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基である。R
1およびR
2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR
1およびR
2基の例は、C
1〜C
8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、およびネオペンチルが特に好ましい。
【0030】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R
3〜R
5が水素であり、R
6が、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基であるものである。このような単置換スクシネート化合物の好ましい具体例は、ジエチル−sec−ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジエチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−t−ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1−エトキシカルボジイソブチルフェニルスクシネート、ジイソブチル−sec−ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−t−ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−sec−ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0031】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R
3〜R
6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。具体的には、R
3およびR
4が水素とは異なる基であり、R
5およびR
6が水素原子である化合物である。このような二置換スクシネートの好ましい具体例は、ジエチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジエチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジエチル−2、2−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジイソブチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネートである。
【0032】
さらに、水素とは異なる少なくとも2つの基が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。具体的にはR
3およびR
5が水素と異なる基である化合物である。この場合、R
4およびR
6は水素原子であってもよいし水素とは異なる基であってもよいが、いずれか一方が水素原子であること(三置換スクシネート)が好ましい。このような化合物の好ましい具体例は、ジエチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルジエチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジエチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジイソブチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−3―シクロペンチルスクシネートである。
【0033】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特表2002−542347に挙げられている化合物、例えば、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5一ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2一メチルシクロへキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば国際公開第2009/069483号に開示されているような3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル等の環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。他の環状スクシネート化合物の例としては、国際公開第2009/057747号に開示されている化合物も好ましい。
【0034】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R
3〜R
6が第15族原子を含む化合物としては、特開2005−306910号に開示される化合物が挙げられる。一方、基R
3〜R
6が第16族原子を含む化合物としては、特開2004−131537号に開示される化合物が挙げられる。
【0035】
この他に、スクシネート系化合物と同等の分子量分布を与える内部電子供与体を用いてもよい。そのような内部電子供与体としては、例えば特開2013−28704号公報に記載のジフェニルジカルボン酸エステル、特開2014−201602号公報に記載のシクロヘキセンジカルボン酸エステル、特開2013−28705号公報に記載のジシクロアルキルジカルボン酸エステル、特許第4959920号に記載のジオールジベンゾエート、国際公開第2010/078494号に記載の1,2−フェニレンジベンゾエートが挙げられる。
【0036】
2)有機アルミニウム化合物(成分ii)
成分(ii)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0037】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0038】
3)電子供与体化合物(成分iii)
成分(iii)の電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物としては有機ケイ素化合物が好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として以下が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン。
【0039】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルt−ブトキシジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i−ブチルセク−ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2−イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン−2−イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i−ブチルi−プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt−ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0040】
4)重合
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予重合を行うことが好ましい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。
次いで、予重合した触媒を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。本重合は、成分(B1)の原料モノマーおよび成分(B2)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。重合は、液相中、気相中または液−気相中で実施してよい。重合温度は常温〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは3.3〜6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には0.5〜3.0MPaの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt
2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【0041】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0042】
1−4.発泡剤
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は発泡剤を含む。発泡剤としては分解型発泡剤、溶剤型発泡剤のいずれも使用できる。分解型発泡剤とは射出成形機のシリンダー温度条件下で分解して炭酸ガス、窒素ガス等の気体を発生する化合物である。分解型発泡剤としては、無機系、有機系のいずれも使用できる。さらに気体の発生を促す有機酸等の公知の発泡助剤を併用してもよい。
【0043】
無機系の分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。有機系の分解型発泡剤としては、N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0044】
これらの発泡剤の中でも、環境への影響が少なく、安全で、さらには発泡セルが安定化するという観点から無機系の分解型発泡剤を用いる場合は炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩または炭酸水素塩が好ましく、その際、有機カルボン酸を発泡助剤として併用してもよい。
【0045】
溶剤型発泡剤は、射出成形機のシリンダー部分から発泡剤を含まない組成物に注入して、射出成形金型中で蒸発して発泡剤として機能する物質である。プロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン等の低沸点脂肪族炭化水素や、フロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素等が使用できる。あるいは、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを加圧して超臨界流体の発泡剤として使用することもできる。
【0046】
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物に用いる発泡剤は、ポリオレフィンをキャリアとする発泡剤マスターバッチの態様で添加することができる。当該ポリオレフィンとしてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等が挙げられる。当該マスターバッチに含まれるキャリアは後述する他の成分に該当する。発泡剤マスターバッチ中に含まれる分解型発泡剤または溶剤型発泡剤の含有量は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であり、市販品をそのまま用いることができる。発泡剤の添加量は、前記成分(A1)と(B)の合計量100重量部に対して通常0.1〜5重量部であるが、0.3〜3重量部が好ましく、0.5〜1重量部がさらに好ましい。さらにこの範囲内において発生ガス量および発泡倍率等を考慮して最適量が選択される。発泡倍率は1.4〜3が好ましく、1.5〜2.8がより好ましく、1.5〜2.5がさらに好ましい。この範囲内にある発泡性ポリプロピレン組成物からは、気泡径が揃い、かつ気泡が均一分散した発泡体が得られる。
【0047】
1−5.他の成分
本発明の組成物には、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶造核剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0048】
また、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレンまたは前記追添エラストマー以外にスチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。当該樹脂またはエラストマーは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。
【0049】
1−6.成分(A1)と(B)の組成比
ブロックポリプロピレンとマスターバッチ組成物との重量配合比は、「50〜99」:「50〜1」であるが、好ましくは「70〜98」:「30〜2」、さらに好ましくは「75〜95」:「25〜5」である。
【0050】
2.本発明の組成物の製造方法
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は任意の方法で製造できる。例えば、本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は、成分(A)〜(C)と必要に応じて任意成分をドライブレンドしこれを溶融混練することで製造できるが、成分(A)については予め溶融混練しておくことが好ましい。成分(A)を予め溶融混練する場合は、成分(B)の一部または全部を共に溶融混練してもよい。しかし、成分(B)を(A)との予備混練には加えずに、予備混練した成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とをドライブレンドした状態で射出発泡成形に供すると、より作業効率を高めることができる。
【0051】
分解型発泡剤を用いる場合、本発明の発泡性ポリプロピレン組成物は、成分(A)および成分(B)の一部または全部を溶融混練して得た非発泡性ポリプロピレン組成物を製造し、これと発泡剤をドライブレンドすることにより製造できる。前記ドライブレンドは、発泡成形機付帯の押出機中で、成形前に溶融混練してよい。前述のとおり、発泡剤としてポリオレフィンをキャリアとする発泡剤マスターバッチを用いてもよい。
【0052】
溶剤型発泡剤を用いる場合は、前記非発泡性ポリプロピレン組成物を調製し、前述のとおり射出成形機内で溶剤型発泡剤と混合することで発泡性ポリプロピレン組成物を製造できる。この際、ポリオレフィン等をキャリアとする発泡剤マスターバッチを発泡剤として添加してもよい。
【0053】
溶融混練条件は特に限定されないが、シリンダー温度を180〜250℃とすることが好ましい。このようにして得られた本発明の組成物はペレット状であることが好ましい。あるいは、前記成分のドライブレンドを射出成形機中に計量して溶融混練部(シリンダー)で混練することにより、本発明の組成物を製造できる。マスターバッチ組成物のプロピレン−エチレン共重合体成分はプロピレン(共)重合体を主成分とするマトリックス中に分散して存在し、当該相構造を形成することで本発明の効果が奏される。しかし、マスターバッチ組成物とマトリックスを構成するブロックポリプロピレンはいずれもHECOであるため、相構造を具体的に特定することは困難である。
【0054】
3.射出発泡成形
本発明の発泡性ポリプロピレン組成物を発泡させることで発泡体を製造できる。発泡体は射出工程と発泡工程を併せ持つ射出発泡成形によって製造されることが好ましい。射出発泡成形は、キャビティの容積を変化させない方法と変化させる方法に大別できる。前者は、発泡性ポリプロピレン組成物を金型のキャビティへ充填し、ポリマーの収縮に伴う圧力低下によって成形体内部で発泡剤を気化させて発泡させる方法である。後者は、発泡性ポリプロピレン組成物をキャビティに充填する途中または充填完了後に、金型をコアバックする、あるいは金型内のスライドコア等を移動させてキャビティの容積を拡大することにより発泡させる方法である。後者の場合、発泡性ポリプロピレン組成物の膨張速度よりもキャビティの容積を速く拡大させることが好ましい。射出条件は、シリンダー温度190〜230℃、金型温度20〜50℃、射出速度30〜300mm/秒であることが好ましい。射出発泡成形する際には破泡を防ぐために金型キャビティ内に予めガスを注入しておくカウンタープレッシャー法を用いることが好ましい。ガス注入圧力として好ましくは0.3〜2MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPaである。
【実施例】
【0055】
1.マスターバッチ組成物(成分(B))の製造
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下ようにして固体触媒成分を調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl
4を0℃にて導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl
2・1.8C
2H
5OH、および9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。MgCl
2・1.8C
2H
5OHは、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載の方法にしたがい、ただし回転数を10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した。内容物の温度を100℃に上昇し、120分間保持した。次に撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。続いて以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl
4を加え、混合物を120℃にて60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0056】
上記固体触媒とトリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が18であり、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。
【0057】
得られた予重合物を1段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た。その後、得られた重合体から未反応モノマー類をパージした後、2段目の重合反応器に導入して共重合体(エチレン−プロピレン共重合体)を得た。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調節剤として用いた。重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.83モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、100モルppm、0.24モル比であった。また、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2重量%、中和剤として、淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した後、スクリュー直径50mmの単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC)で、シリンダー温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のマスターバッチ組成物を得た。
【0058】
得られたマスターバッチ組成物(B−1)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは10g/10分、XIのMwは13×10
4、XIのMw/Mnは13、XSIVは7dl/g、成分(B1)と成分(B2)の重量比は70:30、成分(B2)に含まれるエチレン由来単位は30重量%であった。
【0059】
2.発泡性ポリプロピレン組成物の製造
(1)ブロックポリプロピレン(成分(A1))
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でプロピレン−エチレンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調節剤として用いた。
【0060】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、1.73モルppm、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、2.04モル%、0.46モル比であった。また、コポリマー成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたブロックポリプロピレン(A1−1)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは30g/10分、プロピレン単独重合体:プロピレン−エチレン共重合体=74:26(重量比)、プロピレン−エチレン共重合体のエチレン由来単位は47重量%、成分(A1)としての総エチレン由来単位は12.2重量%、XSIVは2.2dL/gであった。
【0061】
(2)ホモポリプロピレン(成分(A2))
230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが1750g/10分、キシレン可溶分が2.3重量%であるプロピレン単独重合体(A2−1)、および230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが70g/10分、キシレン可溶分が1.5重量%であるプロピレン単独重合体(A2−2)を使用した。
【0062】
(3)追添エラストマー(成分(A3))
ダウ・ケミカル社製エンゲージ8100(190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが1g/10分、密度が0.870g/cm
3、A3−1)を使用した。
【0063】
(4)充填材(成分(A4)
ネオライト興産株式会社製UNI05(平均粒径5μmのタルク、A4−1)を使用した。
【0064】
(5)発泡剤(成分(C)
ポリオレフィン成分として低密度ポリエチレンをキャリアとする炭酸水素ナトリウム(炭酸水素ナトリウム含有量=25重量%)の発泡剤マスターバッチ(永和化成工業株式会社製パンスレンH3510、C−1)を使用した。
【0065】
[実施例1〜4]
表1に示す成分(A)の各成分を配合し、その合計100重量部に対し、添加剤として淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量部、BASF社製B225を0.20重量部とを加えた。これらの配合物を2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、型番TEX30α)を用いて、ダイス温度220℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを成分(B)および成分(C)である発泡剤マスターバッチとドライブレンドして発泡性ポリプロピレン組成物を得た。その際に、成分(C)の配合量は、成分(A1)と成分(B)の合計100重量部に対して3重量部となるように調整した。得られた発泡性ポリプロピレン組成物を射出発泡成形機のシリンダーで溶融混練した後、射出発泡成形を行って発泡成形体を製造し、後述する方法で評価した。
【0066】
<成形条件>
成形機:株式会社日本製鋼所製J220EL III
スクリュー径53mm、スクリューストローク210mm、可塑化能力228kg/h
成形温度:200℃
金型温度:40℃
発泡成形体サイズ:(TD)20cm×(MD)40cm
発泡前成形体厚さ:1.5mm
発泡成形体厚さ:2.5mm
発泡倍率:1.67倍
射出速度:80mm/秒
冷却時間:30秒
保圧時間:なし
カウンタープレッシャー ガス(Air)注入圧力:1MPa
カウンタープレッシャー ガス(Air)注入時間:1.3秒
コアバック量(1段目):0.2mm
コアバック速度(1段目):480mm/秒
コアバック量(2段目):1.1mm
コアバック速度(2段目):2.5mm/秒
【0067】
[実施例5]
表1に示す成分(A)および成分(B)を配合し、その合計100重量部に対し、添加剤として淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量部、BASF社製B225を0.20重量部加えた。これらの配合物を、2軸押出機(株式会社JSW製、型番TEX−30α)を用いて、ダイス温度220℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを成分(C)である発泡剤マスターバッチとドライブレンドして発泡性ポリプロピレン組成物を得た。その際に、成分(C)の配合量を、成分(A1)と(B)の合計100重量部に対して3重量部となるように調整した。得られた発泡性ポリプロピレン組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を製造し、後述する方法で評価した。
【0068】
[比較例1]
表1に示す各成分を配合し、実施例1と同様にして比較用の発泡成形体を製造し評価した。
【0069】
[比較例2]
一段目の反応器の水素濃度を0.24モル%、二段目の反応器の水素濃度とC2/(C2+C3)を、それぞれ150モルppm、0.27モル比に変更した以外は、マスターバッチ組成物(B−1)の製造と同様にして比較用マスターバッチ組成物(B−2)を得た。これを用いて表1に示す各成分を配合し、実施例1と同様にして比較用の発泡成形体を製造し評価した。得られたマスターバッチ組成物(B−2)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは1g/10分、XIのMwは35×10
4、XIのMw/Mnは14、XSIVは7、成分(B1)と成分(B2)の重量比は70:30、成分(B2)に含まれるエチレン由来単位は32重量%であった。
【0070】
[比較例3]
一段目の反応器の水素濃度を0.81モル%、二段目の反応器の水素濃度を300モルppmに変更した以外は、マスターバッチ組成物(B−1)の製造と同様にして比較用マスターバッチ組成物(B−3)を得た。これを用いて表1に示す各成分を配合し、実施例1と同様にして比較用の発泡成形体を製造し評価した。得られたマスターバッチ組成物(B−3)の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは10g/10分、XIのMwは13×10
4、XIのMw/Mnは13、XSIVは5、成分(B1)と成分(B2)の重量比は70:30、成分(B2)に含まれるエチレン由来単位は30重量%であった。
【0071】
【表1】
【0072】
3.評価方法
[MFR]
JIS K7210−1に従い、ポリプロピレンに対してはJIS K6921−2に基づき温度230℃および荷重2.16kgの条件下で、ポリエチレンに対してはJIS K6922−2に基づき、温度190℃および荷重2.16kgの条件下で測定した。
[HECO中のエチレン由来単位および共重合体成分の割合]
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCE III HD400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で
13C−NMRのスペクトルを得た。上記で得られたスペクトルを用いて、M. Kakugo, Y. Naito, K. Mizunuma and T. Miytake, Macromolecules, 15, 1150-1152 (1982) の文献に記載された方法により、HECOとしての成分(A1)または成分(B)に含まれる総エチレン由来単位量(重量%)を求めた。
上記で得られた積分強度T
ββの替わりに下記式で求めた積分強度T’
ββを使用した以外は、総エチレン由来単位量と同様の方法で計算を行い、HECOに含まれる共重合体成分のエチレン由来単位量(重量%)を求めた。
T’
ββ=0.98×S
αγ×A/(1−0.98×A)
ここで、A=S
αγ/(S
αγ+S
αδ)
HECOに含まれる共重合体成分の割合(重量%)=総エチレン由来単位量/(共重合体成分のエチレン由来単位量/100)
【0073】
[キシレン可溶分の採取]
ポリマー2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分(XS)を得た。次いで、容器を一定重量が得られるまで、真空下にオーブン中80℃で維持した後、室温でキシレンに溶解するポリマーの重量を求めた。全ポリマーに対するキシレンに溶解するポリマーの重量%を計算し、25℃でのキシレン可溶分の量とした。
[XSIV]
上記のキシレン可溶分を試料とし、毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて135℃のテトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
【0074】
[キシレン不溶分の採取]
上述したようにキシレン可溶分を濾過した際、濾紙上に残った残留物(キシレン不溶成分と溶媒の混合物)にアセトンを加えて濾過した後、濾過されなかった成分を、80℃設定の真空乾燥オーブンにて、蒸発乾固させ、キシレン不溶分(XI)を得た。
[キシレン不溶分のMwおよびMw/Mn]
上記のキシレン不溶分を試料とし、以下のように、重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った。
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工株式会社製UT−G(1本)、UT−807(1本)、UT−806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、キシレン不溶分の試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調製した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580〜745万のポリスチレン標準試料(shodex STANDARD、昭和電工株式会社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark−Houwink−Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10
−4、α=0.707、ポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10
−4、α=0.75を使用した。
【0075】
[セル形態(内部ボイド)]
射出発泡成形体(20cm×40cm)を厚さ方向に10cm長さで切断し、断面を観察した。発泡層中に大きさ1mm以上の内部ボイドの有無について以下の基準で評価した。
a:無
b:一部有
c:複数有
【0076】
[ひけ]
射出発泡成形体(20cm×40cm)の表面凹凸(ひけ)の有無を目視観察した。
a:無
b:一部有
c:複数有
【0077】
本発明の組成物を用いて得た実施例1〜5の射出発泡成形体は、内部ボイドやひけが無く、外観が良好であった。一方、成分(B)を含まない組成物を用いて得た比較例1、MFRが本発明の範囲外である比較用マスターバッチ組成物(B−2)を用いて得た比較例2、XSIVが本発明の範囲外である比較用マスターバッチ組成物(B−3)を用いて得た比較例3の射出発泡成形体は、内部ボイドやひけが見られ、外観が劣っていた。