【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構による先端的低炭素化技術開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 本発明の電極は、少なくとも、複数のグラフェンと導電性ポリマーからなるシートとの複合体を含有し、複数のグラフェンの少なくとも一部は、その少なくとも一部のグラフェンの平面方向がシートの平面方向と異なる方向となるように、シートを介して位置し、複数のグラフェンに対するシートの質量比は、0より大きく1以下である。
前記導電性ポリマーは、ポリ(4−スチレンスルホン酸)またはトシラートをドープしたポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSSまたはPEDOT:Tos)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニリン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリアントラセン、ポリナフタリン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、有機ホウ素ポリマー、ポリトリアゾール、ペリレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラチアフルバレン、これらの誘導体、および、これらの共重合体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の電極。
前記複合体中の前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、前記少なくとも一部のグラフェンの平面方向が前記シートの平面方向に対して30°以上90°以下の仰角を有する方向に向くように、前記シートを介して位置する、請求項1〜5のいずれかに記載の電極。
前記複合体中の前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、前記少なくとも一部のグラフェンの平面方向が前記シートの平面方向に対して45°以上90°以下の仰角を有する方向に向くように、前記シートを介して位置する、請求項6に記載の電極。
複数のグラフェンと導電性ポリマーとを、アルコールと水とを含有する分散媒に分散させるステップであって、前記複数のグラフェンに対する前記導電性ポリマーの質量比は、0より大きく1以下である、ステップと、
前記分散媒に磁場を印加し、加熱するステップと
を包含する、請求項1〜13のいずれかに記載の電極の製造方法。
前記アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、および、2−メチル−2−プロパノールからなる群から選択される、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上から、本発明の課題は、高速充電および大容量を実現する蓄電デバイスのためのグラフェンを用いた電極、その製造方法およびそれを用いた蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電極は、少なくとも、複数のグラフェンと導電性ポリマーからなるシートとの複合体を含有し、前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、前記少なくとも一部のグラフェンの平面方向が前記シートの平面方向と異なる方向となるように、前記シートを介して位置し、前記複数のグラフェンに対する前記シートの質量比は、0より大きく1以下であり、これにより上記課題を解決する。
前記複数のグラフェンに対する前記シートの質量比は、0.05以上0.5以下であってもよい。
前記複数のグラフェンに対する前記シートの質量比は、0.05以上0.25以下であってもよい。
前記導電性ポリマーは、ポリ(4−スチレンスルホン酸)またはトシラートをドープしたポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSSまたはPEDOT:Tos)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニリン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリアントラセン、ポリナフタリン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、有機ホウ素ポリマー、ポリトリアゾール、ペリレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラチアフルバレン、これらの誘導体、および、これらの共重合体からなる群から選択されてもよい。
前記複合体の2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性を測定した際に、式(A)および(B)から求められる配向パラメータSは、0.25<S<0.50を満たしてもよい。
【数1】
ここで、Iは前記2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピーク強度であり、Aは前記2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のベースライン強度であり、Bは線形振幅パラメータであり、Cは前記2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピークの分布幅を規定するパラメータであり、Dは前記2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性の最大強度を有するピークの方位角であり、ψは方位角であり、Sは配向パラメータであり、P
2は配向秩序パラメータであり、xはcosψである。
前記複合体中の前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、前記少なくとも一部のグラフェンの平面方向が前記シートの平面方向に対して30°以上90°以下の仰角を有する方向に向くように、前記シートを介して位置してもよい。
前記複合体中の前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、前記少なくとも一部のグラフェンの平面方向が前記シートの平面方向に対して45°以上90°以下の仰角を有する方向に向くように、前記シートを介して位置してもよい。
前記複数のグラフェンのそれぞれの長手方向の大きさは、10nm以上10μm以下の範囲であってもよい。
前記複数のグラフェンのそれぞれの厚さは、0.3nm以上100nm以下の範囲であってもよい。
前記複数のグラフェンの少なくとも一部は、貫通する孔を有してもよい。
前記複数のグラフェンのそれぞれは、互いに1nm以上1μm以下の間隔で位置してもよい。
さらに繊維状物質を含有してもよい。 前記繊維状物質は、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバおよび金属ナノワイヤからなる群から選択されてもよい。
本発明による電極を製造する方法は、複数のグラフェンと導電性ポリマーとを、アルコールと水とを含有する分散媒に分散させるステップであって、前記複数のグラフェンに対する前記導電性ポリマーの質量比は、0より大きく1以下である、ステップと、前記分散媒に磁場を印加し、加熱するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記磁場を印加し、加熱するステップは、2テスラ(T)以上50テスラ(T)以下の範囲の磁場を印加してもよい。
前記磁場を印加し、加熱するステップは、6テスラ(T)以上16テスラ(T)以下の範囲の磁場を印加してもよい。
前記磁場を印加し、加熱するステップは、50℃以上100℃以下の範囲の温度に加熱してもよい。
前記アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、および、2−メチル−2−プロパノールからなる群から選択されてもよい。
本発明による電極と電解質とを備えた蓄電デバイスは、前記電極が上述の電極からなり、これにより上記課題を解決する。
前記蓄電デバイスは、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池またはリチウムイオンキャパシタであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電極は、少なくとも、複数のグラフェンと導電性ポリマーからなるシートとの複合体を含有するので、電極の導電性を向上し得る。さらに、複数のグラフェンの少なくとも一部は、その少なくとも一部のグラフェンの平面方向がシートの平面方向と異なる方向となるように、シートを介して位置するので、電解液はグラフェンに容易にアクセスできる。加えて、シートは複数のグラフェンの位置を固定させるとともに、導電性を向上させるので、集電体とグラフェンとの間の電子輸送特性を向上させることができる。特に、複数のグラフェンに対するシートの質量比は、0より大きく1以下とすることにより、このような電極を電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタといった蓄電デバイスに用いれば、高速充電を可能にし、大容量かつ保持特性に優れる。また、シートが導電性ポリマーからなるため、本発明の電極はフレキシビリティに優れる。
【0013】
本発明の上記電極は、複数のグラフェンと導電性ポリマーと(グラフェンに対する導電性ポリマーの質量比は0より大きく1以下である)を、アルコールと水とを含有する分散媒に分散させるステップと、分散媒に磁場を印加し、加熱するステップとを包含する。本発明によれば、磁場を印加することによって、複数のグラフェンの少なくとも一部を磁場の方向に配向させることができる。同時に加熱を行うことにより、分散媒を蒸発させ、導電性ポリマーからなるシートによって配向したグラフェンを固定できる。このようにして上述の電極を容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0016】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の電極およびその製造方法について説明する。
図1は、本発明の電極を模式的に示す図である。
【0017】
本発明の電極100は、少なくとも、複数のグラフェン110と導電性ポリマーからなるシート120との複合体を含有する。以降では、簡単のため、導電性ポリマーからなるシートを単にシートと称する。複合体にシート120が含有されることにより、導電性ポリマーに基づき電極100全体の導電性を向上させることができる。なお、本願明細書では、特に注釈のない限り、複数のグラフェンを簡便のため単にグラフェンと称する。
【0018】
本発明の電極100では、グラフェン110の少なくとも一部は、その少なくとも一部のグラフェン110の平面方向(
図1では紙面の上下方向)が、シート120の平面方向(
図1では紙面の水平方向)と異なるように、シート120を介して位置する。すなわち、
図1では、グラフェン110の全部が、シート120の平面方向に対して垂直となるように、シート120を介して位置する様子を示すが、これに限らない。これにより、本発明の電極を蓄電デバイスの電極に用いた際に、電解液イオンはグラフェン、さらに集電体に容易にアクセスできるので、電子輸送特性が向上し得る。
図1では、本発明の電極100が集電体130上に位置している様子が示される。本願明細書において、「シートを介してグラフェンが位置する」とは、グラフェンが、シートによって保持されている状態を意図しており、グラフェンがシートと接触し、または、グラフェンの一部がシート内に埋没していることを指す。
【0019】
本発明の電極100では、グラフェン110に対するシート120の質量比は、0より大きく1以下となるよう調整されている。すなわち、シート120の質量は、グラフェン110のそれと同じか、または、小さくなるようにすることで、クラックのない良好な膜状の電極100が得られる。また、電極100全体の高い導電性を維持し、蓄電デバイスに適用した際に、大容量かつ高い保持特性を可能にする。
【0020】
グラフェン110に対するシート120の質量比は、好ましくは、0.05以上0.5以下となるよう調整されている。これにより、電極100全体のさらに高い導電性を維持し、蓄電デバイスに適用した際に、大容量かつ高い保持特性を可能にする。
【0021】
グラフェン110に対するシート120の質量比は、より好ましくは、0.05以上0.25以下となるよう調整されている。これにより、電極100全体のさらい高い導電性を維持し、蓄電デバイスに適用した際に、高速充電、大容量かつ高い保持特性を可能にする。
【0022】
複合体中のグラフェン110の少なくとも一部は、好ましくは、グラフェン110の平面方向がシート120の平面方向に対して30°以上90°以下の仰角(
図1におけるαを指す)を有する方向に向くように、シート120を介して位置する。この範囲であれば、電解液イオンのグラフェン110へのアクセスを容易にする。複合体中のグラフェン110の少なくとも一部は、より好ましくは、グラフェン110の平面方向がシート120の平面方向に対して45°以上90°以下の仰角を有する方向に向くように、シート120を介して位置する。この範囲であれば、電解液イオンのグラフェン110へのアクセスを容易にし、蓄電デバイスに適用した際に、大容量かつ高い保持特性を可能にする。なお、グラフェン110の向き(すなわち、シート120の平面方向に対する仰角)は、例えば、走査型電子顕微鏡等の画像診断において、300個のグラフェンについて、シートの平面方向に対する仰角(簡便には電極の平面方向に対する仰角でもよい)を測定し、平均すればよい。
【0023】
複合体を2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性を測定した際に、好ましくは、式(A)および(B)から求められる配向パラメータSは、0.25<S<0.50を満たす。これにより、電解液イオンのグラフェン110へのアクセスを容易にし、蓄電デバイスに適用した際に、大容量かつ高い保持特性を可能にする。
【0025】
(ここで、Iは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピーク強度であり、Aは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のベースライン強度であり、Bは線形振幅パラメータであり、Cは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピークの分布幅を規定するパラメータであり、Dは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性の最大強度を有するピークの方位角であり、ψは方位角であり、Sは配向パラメータであり、P
2は配向秩序パラメータであり、xはcosψである。)
【0026】
グラフェン110は、sp
2結合炭素原子のシート状物質であり、改良Hummers法などによって製造される周知の物質である。グラフェン110の長手方向の大きさは、好ましくは、10nm以上10μm以下の範囲である。この範囲であれば、後述する製造方法によって本発明の電極100が得られる。グラフェン110の長手方向の大きさは、より好ましくは、0.5μm以上5μm以下の範囲である。この範囲であれば、グラフェン110の平面方向が、シート120の平面方向と異なるように、グラフェン110の配向を制御しやすい。
【0027】
グラフェン110の厚さは、好ましくは、0.3nm以上100nm以下の範囲である。この範囲であれば、後述する製造方法によって本発明の電極100が得られる。より好ましくは、グラフェン110の厚さは、0.5nm以上10nm以下の範囲である。この範囲であれば、製造効率がよい。
【0028】
グラフェン110の少なくとも一部は、表面に貫通する孔(図示せず)を有していてもよい。これにより、電解液イオンの侵入および移動が促進されるので、エネルギー密度およびパワー密度の向上につながる。なお、孔径は、電解液イオンの通過の観点から、0.4nm以上10nm以下の範囲、より好ましくは、1nm以上5nm以下の範囲である。このような孔を有するグラフェンは、例えば、国際公開第2014/065241号によって製造される。
【0029】
グラフェン110は、カルボキシ基、水酸基、カルボニル基等の官能基(図示せず)を有してもよい。このような官能基は、製造時にグラフェン110の表面に残留するものであるが、これら官能基を有していても、電解液イオンの侵入や移動、導電性に遜色はない。
【0030】
シートを構成する導電性ポリマーは、導電性を有するものであれば特に制限はないが、例示的には、ポリ(4−スチレンスルホン酸)またはトシラートをドープしたポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSSまたはPEDOT:Tos)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニリン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリペリナフタレン、ポリアントラセン、ポリナフタリン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、有機ホウ素ポリマー、ポリトリアゾール、ペリレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラチアフルバレン、これらの誘導体、および、これらの共重合体からなる群から選択される。この中でも、PEDOT:PSSまたはPEDOT:Tosは、本発明の電極100の製造に有利である。
【0031】
複合体において、好ましくは、グラフェン110は互いに1nm以上1μm以下の間隔で位置する。これにより、電解液イオンのグラフェン110へのアクセスを容易にする。グラフェン110は、より好ましくは、互いに1nm以上100nm以下、さらに好ましくは、1nm以上20nm以下の間隔で位置する。
【0032】
複合体は、さらに、繊維状物質(図示せず)を含有してもよい。繊維状物質は、グラフェン110間に位置し、スペーサとして機能するため、電解液イオンのグラフェン110へのアクセスを促進する。このような観点から、繊維状物質の外径の平均値を0.4nm以上5.0nm以下の範囲内とすることが好ましく、また、1.0nm以上3.0nm以下の範囲内とすることがより好ましい。
【0033】
繊維状物質に対するグラフェンの質量比(グラフェン/繊維状物質)は、好ましくは、1以上50以下、さらに好ましくは、5以上15以下を満たす。これにより、スペーサとしての機能を発揮する。
【0034】
このような繊維状物質は、スペーサの機能に加えて、導電性または半導電性を有することが好ましい。これにより、電極全体の導電性を高めることができる。このような繊維状物質、例示的には、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバ、金属ナノワイヤ等である。中でもカーボンナノチューブは、グラフェン110と整合性に優れる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)または多層カーボンナノチューブ(MWNT)であるが、好ましくは、単層カーボンナノチューブである。単層カーボンナノチューブは、10
4S/cm以上の高い導電率を有しており、電極の導電性が向上するので、キャパシタ性能が向上し得る。
【0035】
次に、本発明の電極100の製造方法について説明する。
図2は、本発明の電極の製造工程を示すフローチャートである。
図3は、本発明の電極の製造工程を示すプロシージャである。
【0036】
ステップS210:複数のグラフェン110と導電性ポリマー310とを、アルコールと水とを含有する分散媒320に分散させる。ここで、グラフェンに対する導電性ポリマーの質量比は、0より大きく1以下となるよう調整される。分散媒320にアルコールと水とを用いることにより、グラフェン110を良好に分散させることができる。ここで、グラフェン110および導電性ポリマー310は、
図1を参照して説明したとおりであるため、省略する。
【0037】
アルコールは、特に制限はないが、例示的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、および、2−メチル−2−プロパノールからなる群から選択される。これらのアルコールは、グラフェン110および導電性ポリマー310を良好に分散させる。
【0038】
アルコールと水との割合は、好ましくは、20〜80:80〜20(体積比)である。これにより、グラフェン110および導電性ポリマー310を良好に分散させる。アルコールと水との割合は、好ましくは、40〜60:60〜40(体積比)である。この範囲であれば分散性に優れる。
【0039】
ステップS210において、さらに上述の繊維状物質を添加してもよい。この場合、繊維状物質に対するグラフェンの質量比(グラフェン/繊維状物質)が1以上50以下、好ましくは、5以上15以下となるように添加され得る。
【0040】
ステップS220:分散媒320に磁場を印加し、加熱する。これにより、導電性ポリマー310は軟化・融解し、
図1の導電性ポリマーからなるシート120となり、容器底部に位置する。磁場を印加することによって、グラフェン110は、グラフェン110の平面方向が磁場の方向と同じとなるように配向する。
図3では、点線の矢印で示すように、紙面に対して上下方向に磁場を印加し、それと同じとなるようにグラフェン110が配向している様子を示す。導電性ポリマー310が軟化し、容器底部にてシート120となることから、鉛直方向に磁場を印加することが好ましい。加熱をさらに続けることにより、分散媒320が蒸発し、配向したグラフェン110はシート120に固定され、本発明の電極100が製造される。
【0041】
好ましくは、磁場は、2テスラ(T)以上50テスラ(T)以下の範囲で印加される。この範囲であれば、グラフェン110を配向させることができる。より好ましくは、磁場は、6T以上16T以下の範囲で印加される。この範囲であれば、グラフェン110を効率的に配向させることができる。さらに好ましくは、磁場は、10T以上14T以下の範囲で印加される。
【0042】
好ましくは、加熱は、50℃以上100℃以下の範囲の温度で行われる。この範囲であれば、導電性ポリマー310が軟化・融解するとともに、分散媒320を蒸発させることができる。より好ましくは、55℃以上70℃以下の範囲の温度で行われる。この範囲であれば、導電性ポリマー310が軟化・融解するとともに、グラフェン110の配向を維持しながら、分散媒320を蒸発させることができる。
【0043】
ステップS220において、加熱および磁場の印加時間は、加熱温度や磁場の大きさによって異なるが、例示的には、30分以上48時間以下の範囲である。30分より短いとグラフェン110が十分に配向しない虞がある。48時間を超えても、反応に変化はなく非効率である。好ましくは、5時間以上12時間以下の範囲である。この範囲であれば、グラフェン110が良好に配向し、シート120によって固定された電極100が得られる。
【0044】
図2のステップS210では、グラフェンを用いたが、グラフェンに代えて酸化グラフェンを用いてもよい。酸化グラフェンを用いた場合、ステップS220に続いて、還元処理を行えばよい。還元処理は、例示的には、ヒドラジン等の還元剤を用いた化学的還元、あるいは、加熱による熱還元であり、当業者であれば適宜採用する。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の電極を用いた電気二重層キャパシタについて説明する。
図4は、本発明の電気二重層キャパシタを模式的に示す図である。
図5は、本発明の電極における様子を模式的に示す図である。
【0046】
本発明の電気二重層キャパシタ400は、少なくとも、電極および電解液を備える。
図3の電気二重層キャパシタ400は、電極として正極電極410および負極電極420が電解液430に浸漬している。これら正極電極410および負極電極420は、実施の形態1で説明した本発明の電極100からなる。
【0047】
電解液430は、電気二重層キャパシタに使用できるものであれば特に制限はないが、例示的には、硫酸水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、塩化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、あるいは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)、ホウフッ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI−BF
4)および1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(MPPp−TFSI)のイオン液体である。
【0048】
電気二重層キャパシタ400は、さらに、正極電極410と負極電極420との間にセパレータ440を有し、これら正極電極410および負極電極420を隔離している。
【0049】
セパレータ440の材料は、例えば、フッ素系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン系高分子およびこれらの誘導体、セルロース、紙、および、不織布から選ばれる材料である。
【0050】
電気二重層キャパシタ400では、上述の正極電極410、負極電極420、電解質430およびセパレータ440がセル450に収容されている。また、正極電極410および負極電極420は、それぞれ、既存の集電体を有する。
【0051】
このような電気二重層キャパシタ400は、チップ型、コイン型、モールド型、パウチ型、ラミネート型、円筒型、角型等のキャパシタであってもよく、さらに、これらを複数接続したモジュールで使用されてもよい。
【0052】
次に、
図4の電気二重層キャパシタ400の動作を説明する。
【0053】
電気二重層キャパシタ400に電圧を印加すると、正極電極410には、電解液430の電解液イオン(アニオン)が、負極電極420には、電解液430の電解液イオン(カチオン)が、それぞれ、吸着する。その結果、正極電極410および負極電極420のそれぞれに電気二重層が形成され、充電される。ここで、正極電極410および負極電極420は、実施の形態1で説明した電極100から形成されるので、
図5に示すように、電解液イオンのグラフェン110、さらには集電体130へのアクセスが容易となり、電気二重層が形成される。その結果、グラフェン110と電解液イオンとの電子のやりとりが増大し、大容量および高い保持特性を達成できる。
【0054】
充電した電気二重層キャパシタ400を抵抗等の回路に接続すると、正極電極410および負極電極420にそれぞれ吸着していたアニオンおよびカチオンが脱着し、放電する。ここでもやはり、正極電極410および負極電極420は、実施の形態1で説明した電極100から形成されるので、電解液イオンの脱着・拡散が容易となり、高いレート特性および大容量を達成できる。また、導電性に優れるので、脱着・拡散の容易性に伴い、パワー密度も向上し得る。
【0055】
このように本発明の電気二重層キャパシタ400は、素早い充電を可能にし、大容量、高い保持特性を達成できる。また、充放電には電気二重層の形成を利用しているので、繰り返し使用に優れている。本発明の電気二重層キャパシタ400は、風力発電、電気自動車等に利用され得る。
【0056】
なお、ここでは電気二重層キャパシタに限定して説明したが、本発明の電極を電気二重層キャパシタ以外にも、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ(LIC)などの蓄電デバイスにも適用できることは言うまでもない。例えば、リチウムイオン電池に適用する場合、
図4の電気二重層キャパシタ400と同様に、少なくとも電極および電解液とを備えるが、正極電極410が少なくともリチウムイオンを吸脱着可能な活物質を備える点が異なる。リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタとリチウムイオン電池とのハイブリッドとして知られ、例えば、本発明の電極とともに、リチウム塩を含有する電解液(LiBF
4、LiPF
6等)が採用される。
【0057】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0058】
[例1〜例18]
例1〜例18では、グラフェンおよび導電性ポリマーとしてPEDOT:PSSを、表1に示す種々の質量比で混合し、表1の条件にて磁場および加熱し、電極を製造した。
【0059】
グラフェンは、以下のようにして調製した。Hummers法によりグラファイトから酸化グラフェン(GO)を合成した。GOを0.1mol/Lの塩酸水溶液で希釈し、5回、遠心分離を行った後、脱イオン水で希釈し、上澄み液のpHが7に達するまで高速遠心分離(35,000rpm)を行った。得られたGO分散液を、ヒドラジンを用いて還元し、エタノールで洗浄した後、真空凍結乾燥器(Eyla、FDU−1200)で乾燥させた。このようにして、還元された酸化グラフェン(rGO、すなわちグラフェン)を得た。
【0060】
得られたrGOについて、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR、株式会社島津製作所製、IRTracer−100)、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、JEM−2100)によって評価したところ、厚さ1nm以上100nm以下、長手方向の大きさ1μm以上5μm以下を有し、ごく微量のカルボニル基を有するグラフェンであることを確認した。このrGOをエタノールに分散させた(0.1mg/mL)。
【0061】
13mg/mLのPEDOT:PSS水溶液(PEDOT:PSS(PH1000、Clevios)はH.C.Starck Companyより購入)を、表1に示す質量比を満たすように、rGOエタノール分散液と混合し、超音波処理し、rGOとPEDOT:PSSとを含有する混合液を得た(
図2のステップS210)。ここで、アルコールと水との割合は、50:50(体積比)であった。この混合液を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の取り外し可能なフィルム底を備えた円筒状の蒸発皿に移した。
【0062】
この蒸発皿を磁場発生装置に配置し、垂直方向に12テスラ(T)の磁場を印加するとともに、内部を60℃に加熱し、8時間保持した(
図2のステップS220)。なお、例11〜例18では、磁場を印加しない以外は、例1〜例10と同様の条件で加熱した。
【0063】
【表1】
【0064】
その後、蒸発皿を取り出し、分散媒が蒸発していることを確認した。この様子を
図6に示し、後述する。
【0065】
次に、蒸発皿のフィルム底を除去し、得られた生成物を試料とした。各試料について、デスクトップX線回折装置(株式会社リガク製、MiniFlex600)を用いて、X線回折を測定した。各試料について、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製、JSM−6500F/JSM−7001F)を用いて観察した。これらの結果を
図7〜
図9に示す。2次元小角X線散乱装置(2D−SAXS、Bruker製、Nanostar)を用いて試料内のグラフェンの配向を調べた。結果を
図10に示す。各試料のシート抵抗を四端子法によって測定した。結果を表2に示す。
【0066】
次に、各試料を電極として電気二重層キャパシタ(コインセル)を製造し、その電気的特性を評価した。詳細には、生成物を15mmφにカットし、カーボンコートされたアルミニウム箔集電体上に配置し、正極電極および負極電極とし、これらの間に電解液として1MのNa
2SO
4水溶液を入れ、セパレータとしてグラスファイバ製の不織布で正極電極と負極電極との間を仕切り、ステンレス製のコインセルで封止した。
【0067】
コインセルの電気化学特性を、電気化学ワークステーション(BioLogic製、VSP−300)を用いて測定した。サイクリックボルタンメトリを200mV/s〜4V/sの範囲の種々の電圧速度で測定した。充放電サイクル特性を0.5A/g〜50A/gの範囲の種々の電流密度で測定した。充放電サイクル特性の結果に基づいて、コインセルの比容量、パワー密度およびエネルギー密度を次式から算出した。
【0068】
C=4JΔt/ΔU
P=2JΔU
E=JΔtΔU/1.8
ここで、Cは比容量であり、Pはパワー密度であり、Eはエネルギー密度であり、Jは電流密度であり、Δtは放電時間であり、ΔUは電圧変化である。
【0069】
また、電位モード電気化学的インピーダンス分光法(PEIS)測定を行った。これらの結果を
図11〜
図17に示す。
【0070】
結果をまとめて説明する。
図6は、例6および例9の試料の様子を示す図である。
【0071】
図6によれば、例6の試料は、クラックもなく均一な膜が得られた。図示しないが、例2〜例5の試料も同様の様態であった。一方、例9の試料は、全体にクラックがあり、膜質は悪かった。このことから、良好な膜を得るためには、グラフェンに対する導電性ポリマーからなるシートの質量比は、0より大きく1以下を満たすことが示された。
【0072】
図7は、例1、例3、例4、例6〜例8および例10の試料のXRDパターンを示す図である。
【0073】
図7によれば、いずれの試料も、23.7°付近に明瞭なピークを示した。このピークは、グラフェンの(002)回折ピークに相当する。グラフェンの(002)回折ピークに着目すると、PEDOT:PSSの含有量が増大するにつれて、グラフェンの(002)回折ピークは、PEDOT:PSSの特徴的なピーク(25.88°)側にシフトすることが分かった。このことから、表1の設計組成にしたがい、グラフェンとPEDOT:PSSとの比率の異なる試料が得られたことが示された。
【0074】
【表2】
【0075】
表2によれば、PEDOT:PSSの含有量が増大するにつれて、シート抵抗が低減することが分かった。このことからも、表1の設計組成にしたがい、グラフェンとPEDOT:PSSとの比率の異なる試料が得られたことが示された。
【0076】
図8は、例2の試料のSEM像を示す図である。
図9は、例12の試料のSEM像を示す図である。
【0077】
図8(a)および(b)は、例2の試料の断面のSEM像であり、
図8(c)〜(f)は例2の試料の表面のSEM像である。
図9(A)は、例12の試料の表面のSEM像であり、
図9(B)は、例12の試料の断面のSEM像である。
【0078】
磁場を印加した例2の試料では、断面中のグラフェンが紙面に対して上下方向に立ち上がっており(
図8(a)、(b))、その表面もグラフェンが毛羽だっていることが分かった。図示しないが、例3〜例8の試料も同様の様態を示した。特に、
図8(b)から、グラフェン300個について調べたところ、グラフェンの平面方向がシートの平面方向に対して45°以上90°以下の仰角を有する方向に向くようにグラフェンが位置することが分かった。
【0079】
一方、磁場を印加しない例12の試料では、その表面にはグラフェンの毛羽立ちはなく、平滑であり(
図9(A))、断面中のグラフェンも紙面に対して水平方向に積層していることが分かった(
図9(B))。図示しないが、例1、例11、例13〜例17も同様の様態を示した。例1の試料は、磁場を印加したが、PEDOT:PSSがないため、磁場方向に配列したグラフェンを固定できなかったものと考える。
【0080】
これらから、
図2および
図3に示す方法を実施することにより、少なくとも、複数のグラフェンと導電性ポリマーからなるシートとの複合体であって、グラフェンの少なくとも一部は、その一部のグラフェンの平面方向がシートの平面方向と異なる方向となるように、シートを介して位置した複合体が得られることが示された。
【0081】
図10は、例2および例12の試料の2D−SAXS方位角依存性を示す図である。
【0082】
例12の試料の2D−SAXSパターンによれば、90°と270°とに明瞭なピークを示した。これは、例12の試料において、グラフェンの平面方向がシートの平面方向(電極の平面方向に同じ)と同じとなるように積層していることを示す。一方、例2の試料の2D−SAXSパターンによれば、例2の試料の90°と270°とのピークの強度は、例12の試料のそれに比べると、顕著に低減した。このことは、例2の試料において、少なくとも一部のグラフェンの平面方向がシートの平面方向と異なるように位置することを示唆し、
図8の結果に良好に一致する。
【0083】
さらに、例2および例12の試料について、上述した式(A)および(B)から求められる配向パラメータSを算出した。表3に示すように、例2の試料のS値は0.47であり、例12の試料のS値は0.50であった。なお、S値の算出において、例2の試料については、Iは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピーク強度であり、Aは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のベースライン強度(25.424)であり、Bは線形振幅パラメータ(0.087)であり、Cは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性のピークの分布幅を規定するパラメータ(3.276)であり、Dは2次元小角X線散乱パターンの方位角依存性の最大強度を有するピークの方位角(4.573)であり、ψは方位角(0°〜360°)であり、P
2は配向秩序パラメータ(0.47)であった。例12の試料については、Iは相対値であり、Aは49.6であり、Bは0.171であり、Cは3.470であり、Dは4.782であり、ψは0°〜360°であり、P
2は0.50であった。例3〜例6の試料のS値は、いずれも、0.25<S<0.50を満たした。
【0084】
【表3】
【0085】
図11は、例2および例12の試料を用いたコインセルの電気化学特性を示す図である。
図12は、例4および例13の試料を用いたコインセルの電気化学特性を示す図である。
図13は、例6および例15の試料を用いたコインセルの電気化学特性を示す図である。
図14は、例8および例17の試料を用いたコインセルの電気化学特性を示す図である。
図15は、例2、例4、例6、例8、例10〜例13、例15、例17および例18の試料を用いたコインセルの比容量の電流密度依存性(a)および比容量の保持特性(b)を示す図である。
【0086】
図11〜
図14のサイクリックボルタンメトリプロット(a)および(b)に着目すると、磁場を印加した試料を用いたコインセルは、掃引速度を増大しても、矩形の形状を維持した。特に、PEDOT:PSSの含有量が50%以下、好ましくは、30%以下、さらに好ましくは10%前後においてこの傾向が顕著であった。このことから、本発明の複合体を電極に用いた蓄電デバイスは、レート特性に優れることが示された。
【0087】
図11〜
図14のガルバノスタット充放電プロット(c)および(d)に着目すると、電流密度が小さい場合には、磁場を印加した試料も磁場を印加しない試料も同様な挙動であり、大きな変化を示さなかったが、電流密度が大きい場合には、磁場を印加した試料は、磁場を印加しない試料に比べて、より長い放電時間を示した。このことから本発明の複合体を電極に用いた蓄電デバイスは、高速充電可能であることが示唆される。これらの充放電プロットから得られた比容量を表4にまとめて示す。
【0088】
図11〜
図14の比容量の電流密度依存性(e)および比容量の保持特性(f)、ならびに、
図15の比容量の電流密度依存性(a)および比容量の保持特性(b)に着目すると、磁場を印加した試料を用いたコインセルは、高い比容量および高い保持特性を有する傾向を示し、とりわけ、PEDOT:PSSの含有量が50%以下、好ましくは、30%以下、さらに好ましくは10%前後において、この傾向が顕著であった。以上の結果を表4にまとめて示す。
【0089】
【表4】
【0090】
図16は、例2および例12の試料を用いたコインセルのナイキストプロットとRagoneプロットとを示す図である。
図17は、例6、例8、例15および例17の試料を用いたコインセルのナイキストプロットを示す図である。
【0091】
図16のナイキストプロット(a)によれば、例2の試料および例12の試料をそれぞれ用いたコインセルの電荷移動抵抗は、0.66Ωおよび1.04Ωであった。磁場を印加した試料を用いたコインセルの電荷移動抵抗は、磁場を印加しない試料を用いたそれよりも、小さかった。また、例2の試料を用いた場合の45°の直線部(0.64Ωに相当)は、例12の試料を用いた場合のそれ(2.49Ωに相当)よりも短く、イオンの拡散抵抗が小さいことが分かった。
【0092】
図17(a)によれば、
図16(a)と同様の傾向を示したが、
図17(b)によれば、電荷移動抵抗およびイオン拡散抵抗に大きな違いが得られなかった。
【0093】
図16のRagoneプロット(b)によれば、例2の試料を用いたコインセルは、例12の試料を用いたそれよりも、高いパワー密度を取り出しつつ、一定のエネルギー密度を維持できることが分かった。
【0094】
これらから、磁場を印加した試料を電極に用いたコインセルは、高いパワー密度および小さな拡散抵抗を有する傾向を示し、とりわけ、PEDOT:PSSの含有量が50%以下、好ましくは、30%以下、さらに好ましくは10%前後において、この傾向が顕著であった。