(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-43846(P2020-43846A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】酸味つゆ及び液体調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20200303BHJP
【FI】
A23L27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-191282(P2018-191282)
(22)【出願日】2018年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】518357586
【氏名又は名称】森本 純司
(72)【発明者】
【氏名】森本 純司
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF02
4B047LG03
4B047LG21
4B047LG24
4B047LG42
4B047LG47
4B047LG55
4B047LG60
4B047LG62
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】 醤油の代わりに酢をベースにすることで減塩した酸味つゆを提供する。
【解決手段】 100gあたり、だし汁が79g〜87g、酢が10g〜14g、水あめが2g〜4g、食塩が1g〜2g、醤油が1g以下の比率で含有させることで、酸味つゆを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鰹節や昆布からとっただし汁に酢と塩を加え砂糖で味を調えた、麺類のつけ汁等に使用する酸味つゆにおいて、100gあたり醸造酢を10g〜14g、食塩を1g〜2g含有することを特徴とする酸味つゆ。
【請求項2】
醤油を100gあたり0g〜1g配合したことを特徴とする請求項1記載の酸味つゆ。
【請求項3】
砂糖を100gあたり2g〜4g配合したことを特徴とする請求項1または2記載の酸味つゆ。
【請求項4】
香辛料を配合したことを特徴とする請求項1、2または3記載の酸味つゆ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の酸味つゆを濃縮したことを特徴とする液体調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、醤油に代わり酢を主成分とすることで減塩し、麺類のつけ汁等のつゆとして用いる酸味つゆ及び液体調味料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なめんつゆは、醤油に鰹節や昆布などからとっただし汁を加えて味醂や調味料で味を調えた画一的な醤油味つゆが用いられている。また、予め作成して濃縮した状態の家庭用・業務用つゆとしても醤油味つゆが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−191907
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本食品標準成分表2015年版(七訂) 食品番号: 17029 食品群名/食品名: 調味料及び香辛料類/(だし類)/めんつゆ/ストレート 食品番号: 17030 食品群名/食品名: 調味料及び香辛料類/(だし類)/めんつゆ/三倍濃厚
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1にあるように、醤油をベースにして作られるめんつゆは重量比の塩分濃度で3.3%程度である。また特許文献1の塩味つゆでも塩分は重量比で2%弱の濃度であり、市場から求められている減塩の面で課題がある。
【0006】
また、醤油をベースにして作られるめんつゆは、重量比の糖類濃度が8.7%程度あり、カロリー減を求める市場に答えるものとなっていない。
【0007】
さらに、めんつゆは多くの醤油を使用していて画一的な醤油味となっており、汁の味に特徴や変化を持たせることができなかった。また、醤油の持つ基本味が塩味であり、塩味つゆでは醤油味つゆとの差別化という面で差が乏しかった。
この発明は、こうした課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
現状を鑑み検討を重ねた結果、鰹や昆布からとっただし汁に10%〜14%の醸造酢と1%〜2%の塩を加え、砂糖で調味することで課題が解決できることを見いだして本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸味つゆの味の特徴が従来のめんつゆと比べて極めてさっぱりした点にあるため、麺そのものの風味を損なうことがなく、うどん・そば本来の香りを楽しむことができ、全く新たなメニューの提供が可能となり、うどん店・そば店において既存の客層に加えて、新たな層の集客に貢献する。
【0010】
また、酸味つゆは従来のめんつゆと同じ使い方ができ、設備の更新が必要ないため、うどん・そば店において低コストでの導入ができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酸味つゆは麺類の味つけ液として麺につけ、又は麺にかけて食される味つけ液であって、麺と合わせて食した時の食味の良さが必須である。そこで、醤油に代わって塩分を含まない醸造酢を食味の軸に選び、麺に合うように試作を重ねた。
【0012】
以下に実施例、参考例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0013】
使用する材料は以下の通りである。
・醸造酢
株式会社Mizkan「醸造酢」
・かつおだし
理研ビタミン株式会社「素材力 かつおだし」4gを98℃500mlの湯に溶いて冷ましたもの
・こんぶだし
理研ビタミン株式会社「素材力 こんぶだし」4gを98℃500mlの湯に溶いて冷ましたもの
・水あめ
ソントン株式会社「麦芽糖みずあめ」
・食塩
伯方塩業株式会社「伯方の塩 焼塩」
・唐辛子
エスビー食品株式会社「S&B 一味唐辛子」
【実施例1】
【0014】
かつおだし50g、こんぶだし50g、水あめ2g、食塩2gの割合で作っただし汁と酢を使い、酢の割合を変えながら試作したところ、酢が10%、11%では酸味は感じるがコクに欠けており、12%では酸味が強くコクに欠けて、9%では酸味も薄くコク味もなかった。
【実施例2】
【0015】
コクに欠けていて、かつおの香りも足りていなかったため、かつおだし55g、こんぶだし45g、酢10g、食塩2gの割合で作っただし汁と水あめを使い、水あめの割合を変えながら試作したところ、水あめが3%では酸味は物足りないがコクを感じ、4%では酸味が弱いがコクがあり、5%では甘味が強かった。
【実施例3】
【0016】
コクが出たが酸味が弱いため、かつおだし55g、こんぶだし45g、水あめ4g、食塩2gの割合で作っただし汁と酢を使って、酢の割合を変えながら試作したところ、酢10%ではコクはあるが酸味が足りておらず、11%ではコクはあるが物足りなさがあり、12%では酸味が強く、13%では酸味が強すぎた。
【実施例4】
【0017】
味をはっきりさせようとすると酸味が強くなりすぎるか、食塩の追加が必要になるため、かつおだし55g、こんぶだし45g、酢11g、水あめ4g、食塩2gの割合で作っただし汁に唐辛子を加えて試作したところ、唐辛子0.1gで味にしまりが出て、0.2gで酸味がはっきりしてコクもあり、味に満足感があった。また、0.3gでは辛みが強すぎた。
【0018】
これら試作を重ねた結果、大まかな配合割合が決定したので、このめんつゆを客観的に評価するための官能評価を行った。
【0019】
被験者には変更する調味料の配合割合を伏せた上での試食を実施し、
美味しい ◎
食べられる ○
おいしくない △
食べられない ×
の4段階で食味の評価をしてもらった。
【0020】
かつおだし55g、こんぶだし45g、水あめ4g、食塩2g、唐辛子0.2gの割合で作っただし汁と酢を使用して作成した試料を使い、酢の濃度別官能評価をしたところ、酢14%〜10%の時に◎が現れた。
【0021】
かつおだし55g、こんぶだし45g、酢12g、食塩2g、唐辛子0.2gの割合で作っただし汁と水あめを使用して作成した試料で水あめの濃度別官能評価をしたところ、4%〜3.5%の時に◎が現れ、3%の時に○が現れた。
【0022】
かつおだし55g、こんぶだし45g、酢12g、水あめ4g、一味唐辛子0.2gの割合で作っただし汁と食塩を使用して作成した試料で食塩の濃度別官能評価をしたところ、1.5%の時に◎が現れ、2%〜1%の時に○が現れた。
【0023】
この官能評価の結果は[表1]の通りである。
【0025】
官能評価の結果、酢の濃度が10%〜14%のとき、めんつゆとしての食味が良くなることが分かった。また、水あめの濃度が3%〜4%、塩の濃度が1%〜2%を外れると食味が悪くなることも示された。
【0026】
使用した水あめは、100gあたり85gの糖を含有するため、糖の適量は2%〜4%の砂糖含有に相当する。
【0027】
この酸味つゆに醤油を加えたところ、100gあたり、醤油1g以上加えると食味が大きく損なわれた。また、1g以下の比率でも醤油の風味が強く、つゆの味が変わってしまうため、できれば醤油を加えないことが望ましい。
【0028】
この他、わさびや柚子皮を一味唐辛子の代わりに用いることもできた。
【0029】
わさびでは、かつおだし55g、こんぶだし45g、酢12g、水あめ4g、食塩2g、わさび0.3gの割合で配合したときに食味が良くなり、柚子では、かつおだし55g、こんぶだし45g、酢12g、水あめ4g、食塩2g、柚子皮0.5gの割合で配合した時に食味が良かった。
【0030】
使用したわさび、柚子の材料は以下の通りである。
・山葵
エスビー食品株式会社「S&B 名匠にっぽんの本わさび」
・ゆず
エスビー食品株式会社「S&B 香りの逸品ゆず」
【0031】
こうして作成された酸味つゆは、塩分濃度が重量比で1.65%、糖類濃度が重量比で3.22%となり、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」記載の「めんつゆ/ストレート」や使用方法通りに希釈した「めんつゆ/三倍濃縮」と比較して重量比での塩分、糖類濃度がほぼ半分となり、従来の醤油味つゆと比べ大幅な減塩、カロリー減を達成している。
【0032】
また、酸味つゆは塩味つゆと比較しても1割以上の塩分削減を達成している。
【0033】
酸味つゆは醤油に代えて酢を用いるため、加える香味の邪魔をすることなく、柑橘類や節、調味料や香辛料等の地域特産物を活かしたメニューの作成を可能にする。
【0034】
更に、現在の減塩志向や健康志向に合致しており、酸味による食欲増進効果もあり、幅広い客層の新規獲得を期待することができる。
【0035】
酸味つゆの味の特徴が従来のめんつゆと比べて極めてさっぱりした点にあるため、麺そのものの風味を損なうことがなく、うどん・そば本来の香りを楽しむことができ、全く新たなメニューが提供可能となり、うどん店・そば店において既存の客層に加えて、新たな層の集客に貢献する。
【0036】
酸味つゆは従来のめんつゆと同じ使い方ができ、設備の更新が必要ないため、うどん・そば店において低コストでの導入ができる。