【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、請求項1又は請求項12に記載の方法、そして請求項13に記載のシステムと請求項15に記載の車両により達成される。本発明の改良及び有利な変形が従属請求項の対象である。
【0013】
本発明の第1態様によると、自車両の動的視野(FoV)に基づいて視認距離を決定する方法は以下のステップを備える。
a)動的FoVを自車両の少なくとも1つのセンサのセンサデータに基づいて初期化するステップ。
b)自車両周辺のマップにおける道路のエッジをそれぞれが決定する、マップポリゴンを作成するステップ。
c)マップポリゴンを動的FoVと交差させることによりマップにおける視認領域を決定するステップ。
d)視認領域に基づいて道路についての視認距離を決定するステップ。
【0014】
本発明の第2態様によると、自車両の動的視野(FoV)に基づいて視認距離を決定するように構成されるシステムは、少なくとも1つのセンサを備える。センサは、車両周辺のオブジェクトを検出するように構成される。システムは、コントローラをさらに備える。コントローラは、a)動的FoVを自車両の少なくとも1つのセンサのセンサデータに基づいて初期化するように構成される。コントローラは、b)自車両周辺のマップにおける道路のエッジをそれぞれが決定する、マップポリゴンを作成するようにさらに構成される。コントローラは、c)マップポリゴンを動的FoVと交差させることによりマップにおける視認領域を決定するようにさらに構成される。コントローラは、d)視認領域に基づいて道路についての視認距離を決定するようにさらに構成される。
【0015】
本発明の第3態様によると、上記第2態様によるシステムを備える車両、特に自動運転車両が提供される。
【0016】
自車両は自動運転車両であってよい。自車両は、自車両周辺をできるだけ大きく包含するように構成される少なくとも1つのセンサを備えるセンサ構成を有してよい。
【0017】
周辺は少なくとも1つのセンサにより動的に測定される。少なくとも1つのセンサは、自車両周辺のオブジェクトを検出するように構成される。少なくとも1つのセンサは、レーダセンサ、光検出と測距(LiDAR)センサ、超音波センサなどであってよい。
【0018】
少なくとも1つのセンサは、自車両の周りのオブジェクトを検出し、オブジェクトの現在位置を含む、検出オブジェクトに関する情報を有するセンサデータを生成する。センサデータは、検出された静的及び動的オブジェクトのセット又はリストを含んでよい。センサデータは、長さ、幅、高さ及び/又は速度などの各オブジェクトに関するさらなる情報も含んでよい。
【0019】
自車両は1より大きい数のセンサを有してよく、各センサは、異なる技術を用いてよく、かつ/あるいは、異なる検出範囲及び/又は異なる検出精度及び/又は自車両に関して異なる方向を有してよい。自車両が1より大きい数のセンサを有する場合、センサの検出領域は、有利には、互いに重複する。
【0020】
センサは、形状、検出範囲、方向及び検出精度に関して異なる検出領域を有してよい。少なくとも1つのセンサにより生成されるセンサデータに基づいて、動的FoVは初期化される。動的FoVは、オクルージョンに起因する死角を含まない、現時点における少なくとも1つのセンサの現在の実際のFoVを表す。
【0021】
動的FoVは、自車両のいくつかのセンサの検出領域(理想FoV)の組み合わせであってよい。動的FoVを初期化する間、部分的に互いに重複する場合がある検出領域が組み合わされて、動的FoVを形成する。また、オクルージョンに起因する非視認領域は、動的FoVが初期化されてセンサが包含する実際の視認領域を示すように、検出領域から減算される。
【0022】
オクルージョンは、自車両周辺の、他の車両、歩行者、交通標識又は交通信号などの静的及び動的オブジェクト、そして勾配、道路の曲率などの道路の幾何学的構成に基づく。自車両周辺のマップは、外部もしくは内部インスタンス、又はモジュールを構成して提供されてよい。
【0023】
マップに含まれるかマップが提供する情報に基づいて、自車両が走行している道路は、マップにおける道路の境界を定義するマップポリゴンを作成することにより、マップにおいて画定される。少なくとも1つのセンサにより観測可能な(又は、言い換えると「見ることができる」又は「センシング可能な」)、マップにおける視認領域は、動的FoV情報をマップポリゴンの形状の道路情報と組み合わせることにより決定される。
【0024】
また、マップにおいて道路を画定するマップポリゴンは、少なくとも1つのセンサにより現時点において実際に観測可能な領域を示す動的FoVと交差される。これにより、道路のどの領域又は部分が少なくとも1つのセンサにより観測可能かという現時点の情報を含む投影FoVが、マップにおける視認領域の形状で生成される。この視認領域に基づいて、道路についての視認距離が決定される。視認領域はそれぞれ評価又は測定され、マップにおける道路についての視認距離が得られる。
【0025】
また、それぞれの方向の視認領域の長さを示す視認性を決定できる。各方向について、最小及び/又は最大視認性を決定できる。視認距離は、道路の中点から道路方向の一直線前方に投影される。道路の中点は、常に道路の中央に位置する。最初の中点は、自車両の始点かつ道路の中央に位置する。次の中点は、視認距離の終点に位置する。そこで、それぞれの視認性に基づく次の視認距離が得られる。この手順の繰り返しを道路の一定の長さにわたって継続できる。また、視認範囲、又は最小及び最大視認性もしくは視認距離に基づく平均視認範囲が決定されてよい。「現時点」の用語は、特に、瞬間又は短い期間、例えば1ms(ミリ秒)以内又は5s(秒)以内も表す。ステップa)及びb)は逆の順序又は並行して実施されてもよい。
【0026】
視認距離に基づいて、例えば、ある操作が安全に実施可能かどうか決定する、意思決定プロセスは、決定の基準を改善するために、追加のデータを含んでよい。これにより、意思決定プロセスの安全性が向上し、劣悪な決定の確率が低下し、したがってアクシデントの確率も低下する。特に、自動運転車両の追い越し操作の安全性を、視認距離に基づいて向上させることができる。
【0027】
本発明の有利な実施形態によると、動的FoVを初期化することに関するステップa)は以下のステップを備える。
a1)自車両のセンサのそれぞれについて、理想FoVを初期化するステップと、
a2)センサのそれぞれについて、各センサのセンサデータに基づいてオクルージョンを決定し、オクルージョンに基づいて非視認ポリゴンを作成するステップと、
a3)センサのそれぞれについて、各理想FoVから各非視認ポリゴンを減算するステップであって、改変FoVを形成するステップと、
a4)改変FoVを統合する(又は組み合わせる)ステップであって、動的FoV形成するステップ。
【0028】
フュージョンアルゴリズムは自車両のあらゆるセンサから情報を収集し、車両周辺に存在する静的及び動的オブジェクトのセット/リストを含むセンサデータを出力する。理想FoVのそれぞれについて、各理想FoVを形成する点のポリゴンが形成されてよい。
【0029】
理想FoV又は、言い換えると、(例えばポリゴン表示における)センサのそれぞれの理論上の検出領域から、非視認ポリゴンとして表示されるオクルージョンにより生成される非視認領域が減算され、改変FoVを生成する。非視認領域/ポリゴンは、マップの水平方向の検出オブジェクトのエッジを、センサポジションそれぞれから投影することにより作成される。改変FoVは、各センサにより観測可能な実際の検出領域を表す。センサのそれぞれの改変FoVは組み合わされるか(例えば簡単なポリゴン統合により)まとめられることで、車両周辺全体の動的FoVを生成する。ステップa1)及びa2)は逆の順序又は並行して実施されてもよい。
【0030】
特に、1より大きい数のセンサを用いることで、オブジェクトの真陽性検出の精確性/確率を向上させることができ、それにより、追い越し操作などの操作の意思決定プロセスを、より確実で安全に実施できる。
【0031】
本発明の有利な実施形態によると、ステップd)において、視認距離は、道路の中点が起点となる。中点は、道路の中央、かつ自車両の長さ方向に対して垂直に延在する長さ方向座標0線上に位置する。
【0032】
長さ方向座標0線は、自車両のセンサ位置とは異なる、自車両の点を通ってよい。長さ方向座標0線上の中点を用いることで、視認距離は共通の基準線から測定される。これにより、異なる視認距離の比較可能性が向上する。
【0033】
本発明の有利な実施形態によると、中点は、周辺のマップからの情報に基づいて決定される。
【0034】
マップポリゴンを有する周辺のマップは、道路又は車線の中央を決定するのに用いられる、道路又は道路の車線の幅に関する情報を提供する。
【0035】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップa2)において、オクルージョンは、各センサのセンサデータに基づいて識別される静的もしくは動的オブジェクト又は道路の幾何学的構成に基づいて決定される。
【0036】
センサの実際の検出領域(改変FoV)は、静的オブジェクトに起因するオクルージョンのための自車両の移動とともにのみ変化する。自車両に対して一定速度で移動する動的オブジェクトは、その相対速度に基づいてセンサの実際の検出領域(改変FoV)を変化させる。
【0037】
静的及び/又は動的オブジェクトを考慮することにより、視認距離に基づく意思決定プロセスの精確性及び安全性を向上できる。
【0038】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップa4)において、改変FoVは、所定の高さについて、又は所定の高さにおいて、統合される。
【0039】
所定の高さは、自車両が位置する地上に対する高さである。所定の高さは、10cm(センチメートル)より高くてよく、好ましくは50cmより高くてよい。
【0040】
所定の高さにおけるセンサデータのみを考慮し、動的FoV形状を生成して、この所定の高さにおける改変FoVは、関連するオブジェクトのみが視認距離を決定するために検出されて考慮されることを確実にする。
【0041】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップb)において、マップポリゴンは道路の車線のエッジを決定する。また、ステップd)において、道路の車線のそれぞれについて、各視認距離が決定される。
【0042】
マップポリゴンは、道路のそれぞれの車線に基づいてマップから受ける道路のトポロジーを画定する。それぞれの車線を画定するマップポリゴンは、自車両の車線と隣接車線の投影FoV(車線の領域又は部分が各センサにより観測可能)を決定するために用いられる。これにより、道路のそれぞれの車線すべて、つまり自車両が移動する車線及び隣接車線についての視認距離が決定される。
【0043】
複数の車線を有する道路においては、あらゆる車線についての視認距離を決定して、追い越し操作などの操作の意思決定をさらに安全でいっそう確実に実施することは有利である。
【0044】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップd)において、道路の車線のそれぞれ及び道路について、各視認距離が決定される。
【0045】
道路のあらゆる車線についての視認距離に加えて、道路全体の組み合わされた視認距離も生成されてよい。道路についての視認距離は、車線についての視認距離の最短視認距離であってよい。あらゆる車線についての視認距離は各車線の中点を起点としてよい。中点は、各車線の中央、かつ自車両の長さ方向に対して垂直に延在する長さ方向座標0線上に位置する。車線のそれぞれの中点は、周辺のマップからの情報に基づいて決定されてよい。
【0046】
ある操作を開始するかどうかに関する意思決定プロセスは、1つの認識距離のみに基づいてよく、利用可能なあらゆる視認距離に基づかなくてよいことから、意思決定にかかる負担が低減される。
【0047】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップb)において、マップポリゴンは、マップデータ、特に自車両のナビゲーションシステムからのマップデータと、位置決定データ、特に自車両のGPSシステムからの位置決定データに基づいて作成される。
【0048】
パーティクルフィルタなどの高精度位置決定方法、又はナビゲーションシステムからの高精細マップと組み合わされた、高精度GPSセンサなどの高精度位置決定センサにより、道路上の自車両の位置又は場所を高精度で識別することが可能になる。この場合の高精度とは、センチメートルの範囲で場所/位置の識別をすることを意味する。
【0049】
自車両の精確な位置決定は、道路及び/又は車線の幾何学的構成に関連するものである視認距離の精度を向上させる。したがって、視認距離に基づく意思決定プロセスの安全性及び確実性を向上させることができる。
【0050】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップd)において、1つ又は複数の認識距離は、自車両の前方及び/又は後方の道路又は道路の車線について決定される。
【0051】
本発明のある有利な実施形態によると、ステップa)において、動的FoVの初期化は、自車両周辺のマップから得られる道路の道路幾何学的構成に関する情報にもまた基づく。
【0052】
オブジェクトによるオクルージョンとともに、勾配などの、道路の幾何学的構成による影響が考慮される。例えば、道路の勾配は、(高精細)マップ及び/又はセンサデータから得ることができ、視認性がそれによる影響を受けるかどうか決定する。
【0053】
これにより、決定された視認距離の正確性が向上し、したがって、視認距離に基づく操作についての意思決定プロセスの確実性及び安全性が向上する。
【0054】
本発明のさらなる態様によると、自車両の走行車線を自動変更する方法は以下の連続するステップを備える。
e)上記方法により道路又は道路の車線について決定される1つ又は複数の視認距離、自車両のダイナミクス及び自車両周辺のオブジェクトに基づいて衝突することなく走行車線を変更することが可能かどうか意思決定するステップ。
f)意思決定が肯定的な場合に走行車線を変更するために、自車両の自動運転コントローラに影響を及ぼすステップ。
【0055】
意思決定が否定的な場合、自車両中の人が走行車線を変更するために手動制御の実施を試みると、警告が発せられてよい。
【0056】
本方法及び上述のその改良により決定される1つ又は複数の視認距離から、少なくとも1つのセンサが観測又は「見る」ことができる、道路又は車線の各領域がわかる。速度、加速度及び/又はヨーレートなどの自車両のダイナミクス、そして自車両周辺の検出オブジェクトに関する、特に隣接車線を走行中の他の車両に関する、センサデータから得られる情報とともに、車両が現在移動中の車線から別の車線へと走行車線を変更するのが望ましいかどうか意思決定がなされる。この意思決定に基づいて、自動運転コントローラは、肯定的な決定の場合、走行車線の変更を実施するように影響を及ぼされる。
【0057】
少なくとも1つのセンサが観測又は「見る」ことができる、道路又は車線の領域に関する情報を含む1つ又は複数の視認距離の情報に基づいて、走行車線を変更するかどうか、確実で情報に基づく意思決定がなされる。このようにして、走行車線を自動変更する確実な方法が提供される。
【0058】
以下、本発明を図面に示される例示的な実施形態によりさらに詳細に説明する。例示的な実施形態は、単に本発明のより良い理解に資するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。