【課題】逆浸透膜を大きく劣化させることなく逆浸透膜のファウリングを抑制して、TDSが高い被処理水を安定的に逆浸透処理することができる逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法を提供する。
【解決手段】逆浸透処理装置1は、被処理水を一次処理して第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1逆浸透膜モジュールバンク10と、第1透過水を二次処理して第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2逆浸透膜モジュールバンク20と、第2濃縮水を第1逆浸透膜モジュールバンク10の一次側に返送する返送管240とを備え、返送管240は、配管内に薬剤を注入するための1以上の薬注部(I,II)を有する。または、第2透過水を逆浸透膜モジュールバンクに返送する返送管に薬注部を設ける。逆浸透処理方法は、逆浸透膜モジュールバンクに返送される水に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法について説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る逆浸透処理装置の構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る逆浸透処理装置1は、第1逆浸透膜モジュールバンク10と、第2逆浸透膜モジュールバンク20と、原水配管110と、第1透過水配管120と、第1濃縮水配管130と、第2透過水配管220と、第2濃縮水返送管240と、排水管280と、供給ポンプP1と、高圧ポンプP2と、を備えている。
【0022】
逆浸透処理装置1は、原水を一次処理する第1パスと、第1パスで分離された透過水を二次処理する第2パスと、を備える2パス型の逆浸透処理装置である。逆浸透処理装置1において、逆浸透膜モジュールで構成された第1パスで原水が逆浸透処理されると、イオン類が低減された透過水が分離される。透過水は、逆浸透膜モジュールで構成された第2パスで更に逆浸透処理されて、イオン類が更に低減される。
【0023】
原水としては、例えば、海水、汽水(河川水、湖沼水、地下水等)、化石水、油田から採集される随伴水、下水、雨水、生活廃水、工業廃水等を逆浸透処理に供することができる。これらの原水は、必要に応じて、濾過処理、凝集処理、殺菌処理、生物学的処理等の前処理を施されてから、逆浸透処理装置1に導入される。
【0024】
第1逆浸透膜モジュールバンク10、及び、第2逆浸透膜モジュールバンク20は、それぞれ、一個又は複数個の逆浸透膜モジュールを備える。逆浸透膜モジュールバンクを構成する複数個の逆浸透膜モジュールは、互いに並列の関係となるように配管を介して接続される。並列に接続された複数個の逆浸透膜モジュールは、互いに同等の運転条件で逆浸透処理を行う。逆浸透膜モジュールバンクを処理単位として備えると、逆浸透膜モジュールの許容圧力の範囲内で、造水量を拡張することができる。
【0025】
また、第1逆浸透膜モジュールバンク10、及び、第2逆浸透膜モジュールバンク20は、複数個の逆浸透膜モジュールバンクの組み合わせで、逆浸透膜ユニットを構成することもできる。複数個の逆浸透膜ユニットは、任意の逆浸透膜モジュールバンクの透過水の排水側又は濃縮水の排水側で、互いに直列の関係となるように配管を介して接続することができる。逆浸透膜ユニットを処理単位として備えると、逆浸透膜モジュールの許容圧力の範囲内で、より高い回収率で脱塩水を造水することができる。
【0026】
ここで、逆浸透膜モジュールバンク10,20を構成する逆浸透膜モジュールの構造について説明する。
【0027】
図2は、逆浸透膜モジュールの構造の一例を示す断面図である。
図2に示すように、逆浸透膜モジュールMは、圧力容器5と、逆浸透膜エレメント6と、を備えている。圧力容器5は、略円筒形状を呈する容器であり、一方の端部に導入ポート5a、他方の端部に導出ポート5bを有している。圧力容器5の内部には、逆浸透膜エレメント6が収容されている。逆浸透膜エレメント6は、逆浸透膜7を備えており、圧力容器5の内部に直列状に配置されている。
【0028】
なお、
図2においては、計5個の逆浸透膜エレメント6が配置されているが、逆浸透膜エレメント6の個数は、逆浸透膜モジュールの仕様、逆浸透処理の条件等に応じて適宜の個数とすることができる。
【0029】
図3は、逆浸透膜エレメントの構造の一例を示す斜視図である。
図3に示すように、逆浸透膜エレメント6は、逆浸透膜7が重ねられた膜積層体6aが集水配管8の周囲に配置された構造を有している。膜積層体6aは、袋体状の複数の逆浸透膜7と、メッシュ状のスペーサ9とが、集水配管8の周面に放射状に接合され、集水配管8の周囲にスパイラル状に巻回されて形成される。逆浸透膜7は、袋体の内部が集水配管8の透孔8aに連通する位置に接合される。逆浸透膜7は、袋体の内側と膜同士の間とにスペーサ9が介装されて外形が保たれる。
【0030】
図2に示すように、逆浸透膜エレメント6は、集水配管8が圧力容器5の長手方向に沿う向きとなるように圧力容器5に収容される。各逆浸透膜エレメント6の集水配管8は、互いに直列に連結されて、末端が開いた一つの管路を形成する。集水配管8の末端は、導出ポート5bが設けられた圧力容器5の端部から外側に引き出され、透過水を回収するための配管に接続される。
【0031】
逆浸透膜モジュールMには、浸透圧を超える圧力に加圧された被処理水が、導入ポート5aを通じて導入される。そして、被処理水は、圧力容器5の長手方向に沿って流れる間に、逆浸透膜7によりクロスフロー濾過方式で逆浸透処理される。逆浸透が進むと、逆浸透膜7の二次側にイオン類が除去された水が移動し、逆浸透膜7の一次側にイオン類が残る。イオン類が濃縮された一次側の濃縮水は、導出ポート5bを通じて圧力容器5から排出される。一方、イオン類が除去された二次側の透過水は、集水配管8の内部に集水されて末端から排出される。
【0032】
図1に示す2パス型の逆浸透処理装置1では、第1逆浸透膜モジュールバンク10、及び、第2逆浸透膜モジュールバンク20が、それぞれ、透過水の回収率が段階的に高くなるような運転条件の下で被処理水を逆浸透処理する。第1逆浸透膜モジュールバンク10では、原水が、第1透過水と第1濃縮水とに分離される。また、第2逆浸透膜モジュールバンク20では、第1逆浸透膜モジュールバンク10で分離された第1透過水が、第2透過水と第2濃縮水とに分離される。
【0033】
なお、第1逆浸透膜モジュールバンク10、及び、第2逆浸透膜モジュールバンク20のそれぞれは、互いに同じ個数の逆浸透膜モジュールで構成されてもよいし、互いに異なる個数の逆浸透膜モジュールで構成されてもよい。各逆浸透膜モジュールに内蔵される逆浸透膜7は、逆浸透(Reverse Osmosis:RO)膜、ナノろ過(Nanofiltration:NF)膜のいずれであってもよい。
【0034】
図1に示すように、第1逆浸透膜モジュールバンク10には、原水配管110と、第1透過水配管120と、第1濃縮水配管130と、が接続されている。第1透過水配管120の他端は、第2逆浸透膜モジュールバンク20に接続されている。
【0035】
原水配管110は、原水槽等の原水の供給元から第1逆浸透膜モジュールバンク10まで、原水を流す配管である。第1透過水配管120は、第1逆浸透膜モジュールバンク10から第2逆浸透膜モジュールバンク20まで、第1透過水を流す配管である。第1濃縮水配管130は、第1逆浸透膜モジュールバンク10から系外に向けて、第1濃縮水を流す配管である。
【0036】
原水配管110には、原水の供給元から第1逆浸透膜モジュールバンク10に向けて原水を移送する供給ポンプP1と、第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜の浸透圧を超える圧力まで原水を昇圧する高圧ポンプP2と、が設置されている。
【0037】
第2逆浸透膜モジュールバンク20には、第1透過水配管120と、第2透過水配管220と、第2濃縮水返送管240と、が接続されている。第2濃縮水返送管240の他端は、原水配管110の供給ポンプP1よりも下流、且つ、高圧ポンプP2よりも上流に接続されている。
【0038】
第2透過水配管220は、第2逆浸透膜モジュールバンク20から系外に向けて、第2透過水を流す配管である。第2濃縮水返送管240は、第2逆浸透膜モジュールバンク20から原水配管110まで、第2濃縮水を流す配管である。第2濃縮水返送管240は、第2濃縮水を第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜の一次側に返送し、原水を希釈して、第1逆浸透膜モジュールバンク10で必要な逆浸透圧を低下させる。
【0039】
図1に示すように、逆浸透処理装置1においては、第2濃縮水返送管240に、配管内に薬剤を注入するための1以上の薬注部(I,II)が設けられる。第2濃縮水返送管240の薬注部(I,II)は、原水配管110や第1逆浸透膜モジュールバンク10の殺菌・洗浄に用いられる。薬剤としては、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が薬注される。
【0040】
各薬注部は、装置と一体化した管に薬剤を注入可能な管一体型の薬注装置を、配管同士の間に連結して設けてもよいし、配管内に薬剤を注入可能な配管注入型の薬注装置を、分岐させた配管や注入口を有する配管に接続して設けてもよい。
【0041】
配管に薬注する塩素系殺菌剤としては、例えば、クロラミン等の結合塩素系薬剤が挙げられる。クロラミンは、結合塩素を有する比較的安定な塩素化合物であり、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO
−)等の遊離塩素を水中で緩慢に生成する性質がある。クロラミン等の結合塩素系薬剤は、次亜塩素酸ナトリウム等の遊離塩素系薬剤と比較すると、殺菌力が弱いものの、逆浸透膜の材料として一般的なポリアミド、酢酸セルロース等を分解する作用が弱い薬剤である。そのため、クロラミン等の結合塩素系薬剤によると、遊離塩素系薬剤とは異なり、逆浸透膜を大きく劣化させることなく、逆浸透膜モジュールや配管を殺菌・洗浄することができる。
【0042】
配管に薬注する塩素系殺菌剤の前駆物質としては、配管内で反応して塩素系薬剤を生成する物質であって、例えば、クロラミン等の結合塩素系薬剤の前駆物質が挙げられる。前駆物質としては、例えば、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸類を用いることができる。また、次亜塩素酸類と共に、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アンモニア水等を用いることもできる。
【0043】
次亜塩素酸類は、アルカリ性の条件下、アンモニウムイオンとの反応によって、クロラミンを生成する。そのため、アンモニア濃度が高い水に次亜塩素酸類のみを薬注する方法や、次亜塩素酸類とアンモニウム塩、アンモニア水等との両方を薬注する方法によって、クロラミン自体を薬注する場合と同様に、逆浸透膜モジュールや配管を殺菌・洗浄することができる。
【0044】
例えば、第1濃縮水返送管240の薬注部Iには、アンモニウム塩、アンモニア水等のような塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注するために、薬注装置(11,12)を設置することができる。また、第1濃縮水返送管240の別の薬注部IIには、次亜塩素酸類等のような塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注するために、別の薬注装置(21,22)を設置することができる。これらの薬剤は、薬剤槽11,21にそれぞれ用意され、逆浸透処理の間に、薬注ポンプ12,22によって連続的又は間欠的に注入される。
【0045】
なお、
図1においては、第2濃縮水返送管240に、二つの薬注部(I,II)を設けており、塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注して、配管内で塩素系殺菌剤を生成させるものとしているが、塩素系殺菌剤自体を薬注する場合や、アンモニア濃度が高い水に次亜塩素酸類のみを薬注する場合には、第2濃縮水返送管240に、一つの薬注部を設けてもよい。或いは、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の使用する数に応じて、三つ以上の薬注部を設けてもよい。
【0046】
図1に示すように、第2濃縮水返送管240には、薬注部(I,II)の下流に、薬注された水を攪拌するためのラインミキサ50を設置することができる。また、ラインミキサ50の下流に、遊離塩素を検出するための水質センサ60を設置することができる。
【0047】
ラインミキサ50としては、例えば、スタティックミキサ、ターボミキサ等を用いることができる。ラインミキサ50によると、配管内で塩素系殺菌剤を生成させる場合に、塩素系殺菌剤の前駆物質の反応を促進させることができる。そのため、未反応の次亜塩素酸類(遊離塩素)が第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入して逆浸透膜を劣化させるのを防ぐことができる。
【0048】
水質センサ60としては、例えば、遊離塩素濃度を測定可能な残留塩素センサ、酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential:ORP)センサ、ジエチルパラフェニレンジアミン(DPD)法を利用する比色式センサ等を用いることができる。水質センサ60によると、塩素系殺菌剤の前駆物質である次亜塩素酸類を薬注した場合に、配管内に残存している未反応の次亜塩素酸類(遊離塩素)の残存量を測定することができる。また、配管内の塩素系殺菌剤が安定で遊離塩素を生じていないか確認することができる。
【0049】
また、第2濃縮水返送管240には、水質センサ60の下流に、排水管280を接続することができる。排水管280は、遊離塩素が残留している返送水を系外に排水するために用いられる。第2濃縮水返送管240と排水管280との分岐点には、第2濃縮水返送管240の側に、開閉自在な止水弁V1を設けることができる。また、排水管280の側に、開閉自在な配水弁V2を設けることができる。
【0050】
次に、逆浸透処理装置1を用いた造水方法(逆浸透処理方法)について説明する。
【0051】
逆浸透処理装置1を用いた造水方法は、第1逆浸透膜モジュールバンク10で、被処理水を逆浸透により一次処理して第1透過水と第1濃縮水とに分離し、第2逆浸透膜モジュールバンク20で、第1透過水を逆浸透により二次処理して第2透過水と第2濃縮水とに分離し、第2濃縮水を被処理水に返送しながら被処理水を逆浸透処理して、第2透過水を脱塩水として造水するものである。
【0052】
第1逆浸透膜モジュールバンク10や第2逆浸透膜モジュールバンク20の運転条件、透過水の回収率等は、原水の水質、逆浸透膜モジュールの仕様等に応じて適宜の条件とされる。逆浸透膜モジュールの運転条件、透過水の回収率等は、透過水や濃縮水の流量を不図示の流量調整弁等で調節することによって調整することができる。
【0053】
逆浸透処理装置1においては、第1逆浸透膜モジュールバンク10及び第2逆浸透膜モジュールバンク20による逆浸透処理の間に、第2濃縮水返送管240の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が注入される。第1逆浸透膜モジュールバンク10に返送される第2濃縮水に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入し、塩素系殺菌剤を溶存した水を通水させることにより、第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜モジュールや原水配管110の殺菌・洗浄が行われる。
【0054】
従来、一般的な2パス型の逆浸透処理装置では、第1パスの逆浸透膜モジュールの殺菌・洗浄を行うとき、クロラミン等の塩素系殺菌剤や、クロラミン等の塩素系殺菌剤の前駆物質が、第1パスに供給される被処理水(原水)に薬注されている。
【0055】
しかしながら、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質を注入する水に、高濃度の臭化物イオンやヨウ化物イオンが含まれていると、これらのイオンと塩素系殺菌剤との共存下、大量の強酸化剤が生成する虞がある。例えば、クロラミンは、臭化物イオンの存在下、pHに依存してブロモアミンを生成する。ブロモアミンは、強い酸化力を示し、殺菌力を有するが、逆浸透膜の材料として一般的なポリアミド、酢酸セルロース等を分解する作用も強く、一般に使用されている逆浸透膜を劣化させる。
【0056】
特に、原水が海水等の高TDS水である場合、高濃度の臭化物イオンやヨウ化物イオンが含まれていることが多い。ブロモアミン等の生成量(生成反応の反応速度)は、反応物(クロラミン、臭化物イオン等)の濃度に依存するため、第1パスに供給される原水は、ブロモアミン等を生成し易い状態にある。TDSが高い原水に高濃度の塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質を注入すると、第1パスにおいてブロモアミン等の強酸化剤が高濃度になり、逆浸透膜の劣化が進行してしまう。
【0057】
これに対し、逆浸透処理装置1のように、第2濃縮水返送管240の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入すると、第2濃縮水の臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が、第1逆浸透膜モジュールバンク10に供給される被処理水(原水)よりも低いため、逆浸透膜を劣化させるブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜を大きく劣化させることなく、逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を行うことができる。
【0058】
塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、造水中に連続的に行ってもよいし、造水中に間欠的に行ってもよい。また、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の注入量は、所定時間あたり一定量を注入する定量注入に制御してもよいし、任意の測定位置における塩素系殺菌剤の濃度に応じて可変的に制御してもよい。測定位置としては、例えば、第1逆浸透膜モジュールバンク10の被処理水入口や、第1逆浸透膜モジュールバンク10の濃縮水出口等が挙げられる。
【0059】
塩素系殺菌剤の濃度は、例えば、遊離塩素濃度と全塩素濃度を測定して結合塩素濃度を求める残留塩素センサ、酸化還元電位(ORP)センサ、ジエチルパラフェニレンジアミン(DPD)法を利用する比色式センサ等によって測定することができる。これらのセンサは、例えば、第1逆浸透膜モジュールバンク10の被処理水入口や、第1逆浸透膜モジュールバンク10の濃縮水出口等に設置することができる。
【0060】
塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の注入量は、第1逆浸透膜モジュールバンク10の被処理水入口における塩素系殺菌剤の濃度、又は、第1逆浸透膜モジュールバンク10の濃縮水出口における塩素系殺菌剤の濃度が、所定範囲に維持されるように制御することが好ましい。例えば、塩素系殺菌剤としてクロラミンを用いる場合、これらの各位置において、クロラミンの濃度が1〜3ppm程度に維持される注入量とすることができる。
【0061】
第1逆浸透膜モジュールバンク10の被処理水入口における濃度を維持すると、殺菌・洗浄に必要な有効濃度の塩素系殺菌剤を確保しつつ、過剰な塩素系殺菌剤が第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入するのを防ぐことができる。第1逆浸透膜モジュールバンク10に到達する塩素系殺菌剤の濃度を適切に制御することができるため、塩素系殺菌剤による逆浸透膜の劣化を最小限に抑制することができる。
【0062】
一方、第1逆浸透膜モジュールバンク10の濃縮水出口における濃度を維持すると、殺菌・洗浄に必要な有効濃度の塩素系殺菌剤を第1逆浸透膜モジュールバンク10の全体で確保することができる。第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入した塩素系殺菌剤が、第1逆浸透膜モジュールバンク10の途中で殺菌力を喪失するのを防ぐことができるため、第1逆浸透膜モジュールバンク10における下流側も十分に殺菌・洗浄することができる。
【0063】
塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、第2濃縮水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、中止することができる。濃度上限値は、例えば、逆浸透膜に対する遊離塩素の許容濃度の範囲、薬注後に返送される水と原水(被処理水)との混合比、薬注後に逆浸透膜に到達する遊離塩素の残存率等に応じて、微小値を予め設定することができる。返送水への薬注を中止すると、返送水中において、未反応の次亜塩素酸類(遊離塩素)や、不安定な塩素系殺菌剤から解離した遊離塩素が減少するため、遊離塩素が第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入するのを抑制することができる。
【0064】
薬注装置(21,22)は、薬注ポンプ12,22の作動・停止や出力が、水質センサ60による計測に基づいて制御されてもよい。例えば、水質センサ60から伝送される遊離塩素の濃度の計測結果が許容可能な濃度上限値を超えたとき、薬注ポンプ12,22を停止することができる。濃度上限値は、薬注装置(21,22)の制御部等に、微小値を予め設定することができる。このような制御によると、未反応の次亜塩素酸類(遊離塩素)や、不安定な塩素系殺菌剤から解離した遊離塩素がより生じ難くなる。逆浸透膜を劣化させる作用が弱い結合塩素を有する塩素系殺菌剤を、薬注部(I,II)の近傍に、殺菌・洗浄に適した濃度で用意することができる。
【0065】
薬注された第2濃縮水は、第2濃縮水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、排水管280を通じて系外に排水することができる。返送水を系外に排水すると、未反応の次亜塩素酸類(遊離塩素)や、不安定な塩素系殺菌剤から解離した遊離塩素が、原水配管110に返送されなくなるため、遊離塩素が第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入するのを抑制することができる。
【0066】
止水弁V1及び配水弁V2は、開閉動作が、水質センサ60による計測に基づいて制御されてもよい。例えば、水質センサ60から伝送される遊離塩素の濃度の計測結果が許容可能な濃度上限値を超えたとき、平常時に開かれている止水弁V1を閉じ、平常時に閉じられている配水弁V2を開くことができる。濃度上限値は、止水弁V1及び配水弁V2の制御部等に、微小値を予め設定することができる。このような制御によると、遊離塩素が第1逆浸透膜モジュールバンク10に流入するのを、より確実に抑制することができる。
【0067】
以上の第1実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、第2濃縮水返送管240が薬注部(I,II)を有するため、第1パスに返送される第2濃縮水に、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注することができる。第2濃縮水は、原水よりも臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低いため、原水のTDSが高い場合であっても、薬注時に、ブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、ブロモアミン等の強酸化剤による逆浸透膜の劣化を避けつつ、第1パスの逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を継続することができる。塩素系殺菌剤を含む被処理水の通水によって、配管や圧力容器内にバイオフィルムが形成され難くなるため、逆浸透膜のファウリングが発生し難くなり、安定した運転圧力や回収率で長期間にわたって逆浸透処理を続けることが可能になる。よって、逆浸透膜を大きく劣化させることなく逆浸透膜のファウリングを抑制して、TDSが高い被処理水を安定的に逆浸透処理することができる2パス型の逆浸透処理を提供することができる。
【0068】
また、以上の第1実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、第2濃縮水返送管240が薬注部(I,II)を有するため、臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低い配管内で、塩素系殺菌剤を生成させることができる。一般に、クロラミン等の塩素系殺菌剤は、高濃度で保管すると、遊離塩素を解離し、遊離塩素は分解されて殺菌力を失うため、薬注時まで、低い濃度で保管する必要がある。しかし、臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低い配管内で塩素系殺菌剤を生成させると、ブロモアミン等の強酸化剤の生成を抑制しつつ、第1パスの殺菌・洗浄を行うことが可能であり、しかも、低濃度の薬剤を用意するために大型の保管用設備を設けたり、低濃度の薬剤で長い薬洗時間をかけたりする必要をなくすることができる。
【0069】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る逆浸透処理装置の構成を示す図である。
図4に示すように、第2実施形態に係る逆浸透処理装置2は、前記の逆浸透処理装置1と同様に、第1逆浸透膜モジュールバンク10と、第2逆浸透膜モジュールバンク20と、原水配管110と、第1透過水配管120と、第1濃縮水配管130と、第2透過水配管220と、排水管280と、供給ポンプP1と、高圧ポンプP2と、を備えている。
【0070】
第2実施形態に係る逆浸透処理装置2が、前記の逆浸透処理装置1と異なる点は、第2濃縮水返送管240に代えて、第2濃縮水配管230と、第2透過水返送管260と、を備え、第2透過水返送管260に薬注部(I,II)が設けられている点である。
【0071】
図4に示すように、第2逆浸透膜モジュールバンク20には、第1透過水配管120と、第2透過水配管220と、第2濃縮水配管230と、が接続されている。第2透過水配管220からは、第2透過水返送管260が分岐している。第2透過水返送管260の他端は、原水配管110の供給ポンプP1よりも下流、且つ、高圧ポンプP2よりも上流に接続されている。
【0072】
第2濃縮水配管230は、第2逆浸透膜モジュールバンク20から系外に向けて、第2濃縮水を流す配管である。第2透過水返送管260は、第2透過水配管220から原水配管110まで、第2透過水を流す配管である。第2透過水返送管260は、第2透過水の少なくとも一部を第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜の一次側に返送し、原水を希釈して、第1逆浸透膜モジュールバンク10で必要な逆浸透圧を低下させる。
【0073】
図4に示すように、逆浸透処理装置2においては、第2透過水返送管260に、配管内に薬剤を注入するための1以上の薬注部(I,II)が設けられる。第2透過水返送管260の薬注部(I,II)は、原水配管110や第1逆浸透膜モジュールバンク10の殺菌・洗浄に用いられる。薬剤としては、前記の逆浸透処理装置1と同様に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が薬注される。
【0074】
第2透過水返送管260には、前記の逆浸透処理装置1と同様に、薬注装置(11,12)、別の薬注装置(21,22)、ラインミキサ50、水質センサ60、排水管280、止水弁V1、配水弁V2を設置することができる。
【0075】
なお、
図4においては、第2透過水返送管260に、二つの薬注部(I,II)を設けており、塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注して、配管内で塩素系殺菌剤を生成させるものとしているが、塩素系殺菌剤自体を薬注する場合や、アンモニア濃度が高い水に次亜塩素酸類のみを薬注する場合には、第2透過水返送管260に、一つの薬注部を設けてもよい。或いは、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の使用する数に応じて、三つ以上の薬注部を設けてもよい。
【0076】
次に、逆浸透処理装置2を用いた造水方法(逆浸透処理方法)について説明する。
【0077】
逆浸透処理装置2を用いた造水方法は、第1逆浸透膜モジュールバンク10で、被処理水を逆浸透により一次処理して第1透過水と第1濃縮水とに分離し、第2逆浸透膜モジュールバンク20で、第1透過水を逆浸透により二次処理して第2透過水と第2濃縮水とに分離し、第2透過水の少なくとも一部を被処理水に返送しながら被処理水を逆浸透処理して、第2透過水を脱塩水として造水するものである。
【0078】
逆浸透処理装置2においては、第1逆浸透膜モジュールバンク10及び第2逆浸透膜モジュールバンク20による逆浸透処理の間に、第2透過水返送管260の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が注入される。第1逆浸透膜モジュールバンク10に返送される第2透過水に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入し、塩素系殺菌剤を溶存した水を通水させることにより、第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜モジュールや原水配管110の殺菌・洗浄が行われる。
【0079】
逆浸透処理装置2のように、第2透過水返送管260の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入すると、第2透過水の臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が、第1逆浸透膜モジュールバンク10に供給される被処理水(原水)よりも低いため、逆浸透膜を劣化させるブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、第1逆浸透膜モジュールバンク10の逆浸透膜を大きく劣化させることなく、逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を行うことができる。
【0080】
第2透過水の第2透過水返送管260への分配比は、用意した塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の濃度、原水の水質、逆浸透膜モジュールの仕様、透過水の回収率、透過水の水質(残留塩素量)等に応じて適宜の条件とすることができる。第2透過水返送管260への分配比は、例えば、第2透過水配管220や第2透過水返送管260における流量を不図示の流量調整弁等で調節することによって調整することができる。
【0081】
塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、前記の逆浸透処理装置1と同様の条件で行うことができる。塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、第2透過水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、中止することができる。また、薬注された第2透過水は、第2透過水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、排水管280を通じて系外に排水することができる。
【0082】
以上の第2実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、第2透過水返送管260が薬注部(I,II)を有するため、第1パスに返送される第2透過水に、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注することができる。第2透過水は、原水や第2濃縮水よりも臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低いため、原水や第2濃縮水のTDSが高い場合であっても、薬注時にブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、ブロモアミン等の強酸化剤による逆浸透膜の劣化を避けつつ、第1パスの逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を継続することができる。よって、逆浸透膜を大きく劣化させることなく逆浸透膜のファウリングを抑制して、TDSが高い被処理水を安定的に逆浸透処理することができる2パス型の逆浸透処理を提供することができる。
【0083】
また、以上の第2実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低い配管内で、塩素系殺菌剤を生成させることができるため、低濃度の薬剤を用意するために大型の保管用設備を設けたり、低濃度の薬剤で長い薬洗時間をかけたりする必要をなくすることができる。
【0084】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る逆浸透処理装置の構成を示す図である。
図5に示すように、第3実施形態に係る逆浸透処理装置3は、逆浸透膜モジュールバンク30と、原水配管310と、透過水配管320と、濃縮水配管330と、透過水返送管360と、排水管380と、供給ポンプP3と、高圧ポンプP4と、を備えている。
【0085】
第3実施形態に係る逆浸透処理装置3は、前記の逆浸透処理装置1,2とは異なり、被処理水を一段のパスで逆浸透処理する1パス型の逆浸透処理装置とされている。逆浸透処理装置3の逆浸透膜モジュールバンク30では、原水(被処理水)が逆浸透処理により透過水と濃縮水とに分離される。
【0086】
逆浸透膜モジュールバンク30は、一個又は複数個の逆浸透膜モジュールを備える。逆浸透膜モジュールバンクを構成する複数個の逆浸透膜モジュールは、互いに並列の関係となるように配管を介して接続される。また、逆浸透膜モジュールバンク30は、複数個の逆浸透膜モジュールバンクの組み合わせで、逆浸透膜ユニットを構成することもできる。複数個の逆浸透膜ユニットは、任意の逆浸透膜モジュールバンクの透過水の排水側又は濃縮水の排水側で、互いに直列の関係となるように配管を介して接続することができる。逆浸透膜モジュールバンク30を構成する逆浸透膜モジュールは、例えば、
図2及び
図3に示す形態とすることができる。
【0087】
図5に示すように、逆浸透膜モジュールバンク30には、原水配管310と、透過水配管320と、濃縮水配管330と、が接続されている。透過水配管320からは、透過水返送管360が分岐している。透過水返送管360の他端は、原水配管310の供給ポンプP1よりも下流、且つ、高圧ポンプP2よりも上流に接続されている。
【0088】
原水配管310は、原水槽等の原水の供給元から逆浸透膜モジュールバンク30まで、原水を流す配管である。透過水配管320は、逆浸透膜モジュールバンク30から系外に向けて、透過水を流す配管である。濃縮水配管330は、逆浸透膜モジュールバンク30から系外に向けて、濃縮水を流す配管である。
【0089】
原水配管310には、原水の供給元から逆浸透膜モジュールバンク30に向けて原水を移送する供給ポンプP3と、逆浸透膜モジュールバンク30の逆浸透膜の浸透圧を超える圧力まで原水を昇圧する高圧ポンプP4と、が設置されている。
【0090】
透過水返送管360は、透過水配管320から原水配管310まで、透過水を流す配管である。透過水返送管360は、透過水の少なくとも一部を逆浸透膜モジュールバンク30の逆浸透膜の一次側に返送し、原水を希釈して、逆浸透膜モジュールバンク30で必要な逆浸透圧を低下させる。
【0091】
図5に示すように、逆浸透処理装置3においては、透過水返送管360に、配管内に薬剤を注入するための1以上の薬注部(I,II)が設けられる。透過水返送管360の薬注部(I,II)は、原水配管310や逆浸透膜モジュールバンク30の殺菌・洗浄に用いられる。薬剤としては、前記の逆浸透処理装置1と同様に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が薬注される。
【0092】
透過水返送管360には、前記の逆浸透処理装置1と同様に、薬注装置(11,12)、別の薬注装置(21,22)、ラインミキサ50、水質センサ60、止水弁V1、配水弁V2を設置することができる。また、透過水返送管360には、薬注部(I,II)の下流に、遊離塩素が残留している返送水を系外に排水するための排水管380を接続することができる。
【0093】
なお、
図5においては、透過水返送管360に、二つの薬注部(I,II)を設けており、塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注して、配管内で塩素系殺菌剤を生成させるものとしているが、塩素系殺菌剤自体を薬注する場合や、アンモニア濃度が高い水に次亜塩素酸類のみを薬注する場合には、透過水返送管360に、一つの薬注部を設けてもよい。或いは、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の使用する数に応じて、三つ以上の薬注部を設けてもよい。
【0094】
次に、逆浸透処理装置3を用いた造水方法(逆浸透処理方法)について説明する。
【0095】
逆浸透処理装置3を用いた造水方法は、逆浸透膜モジュールバンク30で、被処理水を逆浸透処理して透過水と濃縮水とに分離し、透過水の少なくとも一部を被処理水に返送しながら被処理水を逆浸透処理して、透過水を脱塩水として造水するものである。
【0096】
逆浸透処理装置3においては、逆浸透膜モジュールバンク30による逆浸透処理の間に、透過水返送管360の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質が注入される。逆浸透膜モジュールバンク30に返送される透過水に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入し、塩素系殺菌剤を溶存した水を通水させることにより、逆浸透膜モジュールバンク30の逆浸透膜モジュールや原水配管310が殺菌・洗浄される。
【0097】
逆浸透処理装置3のように、透過水返送管360の薬注部(I,II)に、塩素系殺菌剤又は塩素系殺菌剤の前駆物質を注入すると、透過水の臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が、逆浸透膜モジュールバンク30に供給される被処理水(原水)よりも低いため、逆浸透膜を劣化させるブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、逆浸透膜モジュールバンク30の逆浸透膜を大きく劣化させることなく、逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を行うことができる。
【0098】
透過水の透過水返送管360への分配比は、用意した塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の濃度、原水の水質、逆浸透膜モジュールの仕様、透過水の回収率、透過水の水質(残留塩素量)等に応じて適宜の条件とすることができる。透過水返送管360への分配比は、例えば、透過水配管320や透過水返送管360における流量を不図示の流量調整弁等で調節することによって調整することができる。
【0099】
塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、前記の逆浸透処理装置1と同様の条件で行うことができる。塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質の薬注は、透過水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、中止することができる。また、薬注された透過水は、透過水に含まれる遊離塩素の濃度が許容可能な濃度上限値を超えたとき、排水管380を通じて系外に排水することができる。
【0100】
以上の第3実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、透過水返送管360が薬注部(I,II)を有するため、逆浸透膜モジュールバンクに返送される透過水に、塩素系殺菌剤や塩素系殺菌剤の前駆物質を薬注することができる。透過水は、原水や濃縮水よりも臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低いため、原水のTDSが高い場合であっても、薬注時にブロモアミン等の強酸化剤が生成し難くなる。そのため、ブロモアミン等の強酸化剤による逆浸透膜の劣化を避けつつ、逆浸透膜モジュールや配管の殺菌・洗浄を継続することができる。よって、逆浸透膜を大きく劣化させることなく逆浸透膜のファウリングを抑制して、TDSが高い被処理水を安定的に逆浸透処理することができる逆浸透処理を提供することができる。
【0101】
また、以上の第3実施形態に係る逆浸透処理装置及び逆浸透処理方法によると、臭化物イオン濃度やヨウ化物イオン濃度が低い配管内で、塩素系殺菌剤を生成させることができるため、低濃度の薬剤を用意するために大型の保管用設備を設けたり、低濃度の薬剤で長い薬洗時間をかけたりする必要をなくすることができる。透過水返送管360を設けると、処理時間あたりの造水量は低下するものの、逆浸透膜の劣化を抑制して、適切な運転圧力や膜性能を維持することができるため、稼働効率の向上によって総造水量を増やすことができる。
【0102】
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
【0103】
例えば、前記の逆浸透処理装置1,2,3において、逆浸透膜モジュールの具体例として、
図2及び
図3に示す形態が挙げられているが、逆浸透処理装置が備える逆浸透膜は、例えば、スパイラル型、チューブラ型、中空糸型等の適宜のモジュールとして備えることができる。薬注装置としては、薬注槽、薬注ポンプ等に加え、pH調整機構、pHセンサ等の機器を備える適宜の装置を用いることができる。
【0104】
また、前記の逆浸透処理装置1,2,3において、第2濃縮水返送管240、第2透過水返送管260、透過水返送管360は、供給ポンプ(P1,P3)と高圧ポンプ(P2,P4)との間の区間に接続されているが、供給ポンプ(P1,P3)よりも上流に接続してもよい。或いは、供給ポンプ(P1,P3)よりも上流で分岐して下流で再び合流する迂回路、例えば、エネルギ回収装置が設置される迂回配管等に接続してもよい。エネルギ回収装置としては、濃縮水の圧力・流速をエネルギとして回収して、エネルギ交換により被処理水を加圧する装置等が設置されることがある。
【0105】
また、前記の逆浸透処理装置1において、第2濃縮水返送管240は、第2逆浸透膜モジュールバンク20で分離された第2濃縮水の全部を原水配管110に返送しているが、第2濃縮水返送管240は、第2濃縮水の少なくとも一部を返送するように、濃縮水配管に接続されてもよい。また、前記の逆浸透処理装置1,2において、第1透過水配管120には、第1パスの供給側と同様に、供給ポンプ、高圧ポンプ、中間槽等が設置されてもよい。
【0106】
また、
図1、
図4及び
図5において、薬注部(I,II)、止水弁V1、配水弁V2は、配管上の所定位置に設けられているが、これらは、配管上の任意の位置に設けることができる。ラインミキサ50、水質センサ60、排水管280,380、止水弁V1、配水弁V2は、それぞれ、設置を省略してもよい。ラインミキサ50に代えて、乱流を生じる阻流板等を適宜設けた配管や、混合・反応のための水槽を設置してもよい。