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特開2020-44768液体吐出ヘッドユニットおよび液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-44768(P2020-44768A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20200303BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20200303BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20200303BHJP
【FI】
   B41J2/01 307
   B41J2/14 305
   B01D53/26 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-176195(P2018-176195)
(22)【出願日】2018年9月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100194102
【弁理士】
【氏名又は名称】磯部 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 吉紀
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4D052
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB02
2C056FB03
2C056HA06
2C056HA07
2C057AF65
2C057AG44
2C057AK07
2C057AN01
2C057AN05
4D052AA09
4D052CA03
4D052FA08
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB01
4D052GB03
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA05
4D052HA12
4D052HA21
4D052HB05
(57)【要約】
【課題】駆動素子を収容する空間の圧力変動を抑制しつつ、駆動素子を湿気から保護する。
【解決手段】液体が充填される圧力室の圧力を変動させてノズルから液体を吐出させる駆動素子を備える液体吐出ヘッドと、複数の前記液体吐出ヘッドを固定する固定プレートと、前記固定プレートに固定され、複数の前記液体吐出ヘッドを囲むユニット空間を形成するユニットカバー部材と、前記ユニット空間内に配置される第1吸湿剤と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される圧力室の圧力を変動させてノズルから液体を吐出させる駆動素子を備える液体吐出ヘッドと、
複数の前記液体吐出ヘッドを固定する固定プレートと、
前記固定プレートに固定され、複数の前記液体吐出ヘッドを囲むユニット空間を形成するユニットカバー部材と、
前記ユニット空間内に配置される第1吸湿剤と、を備える液体吐出ヘッドユニット。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドが、
前記駆動素子と、
前記駆動素子を収容する封止空間を封止する封止体と、
前記封止体を囲む収容空間を形成するケース部材と、
前記ケース部材に形成され、前記収容空間を前記ユニット空間に連通する第1連通孔と、
前記封止体に形成され、前記封止空間を前記収容空間に連通する第2連通孔と、を備え、
前記収容空間に第2吸湿剤が配置される請求項1記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項3】
前記第2吸湿剤が、物理吸着型の吸着剤である請求項2記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項4】
前記第2吸湿剤が、表面が耐水性を有する固形物である請求項2又は3記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項5】
前記第1吸湿剤が、化学反応型の吸着剤である請求項1〜4の何れか一項記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項6】
前記第1吸湿剤が、前記ユニットカバー部材の内部の前記液体吐出ヘッドより上方に配置されている請求項1〜5の何れか一項記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項7】
前記ユニットカバー部材は、空気が通過する多数の通過口を有する仕切壁で仕切られた吸湿剤収容部を備え、前記第1吸湿剤が、前記吸湿剤収容部に収容されている請求項1〜6の何れか一項記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項8】
前記ユニットカバー部材には、その内部の前記ユニット空間に乾燥気体開口が供給可能な気体供給用開口が設けられている請求項1〜7の何れか一項記載の液体吐出ヘッドユニット。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項記載の液体吐出ヘッドユニットを備えた液体吐出装置。
【請求項10】
請求項8記載の液体吐出ヘッドユニットと、前記気体供給用開口から前記ユニット空間に乾燥気体を供給する供給機構とを備えた液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体が充填される圧力室の圧力を、圧電素子などの駆動素子で変動することによって液体を吐出する複数の液体吐出部を備える液体吐出ヘッドでは、駆動素子を湿気から保護するため、駆動素子が収容される空間は封止される。
【0003】
例えば特許文献1では、駆動素子の収容空間を形成する基板に、接着剤などで封止板を接合して駆動素子の収容空間を封止する。このような接合の際にはみ出した接着剤は、接着剤逃げ空部に収容される。ところが、接着剤逃げ空部は大気に連通するので、接着剤逃げ空部から駆動素子の収容空間に湿気が入り込む虞がある。そこで、特許文献1では、接着剤逃げ空部から駆動素子の収容空間に湿気が入り込まないように、接着剤逃げ空部の大気連通路を塞ぐことによって湿気を遮断する。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように駆動素子の収容空間に連通する大気連通路を塞いでしまうと、駆動素子の収容空間は密閉空間となるから、駆動素子の駆動による圧力室の振動が駆動素子の収容空間に伝播して、駆動素子の収容空間にも圧力変動が生じてしまう。各圧力室も駆動素子の収容空間の圧力変動の影響を受けるので、駆動素子の収容空間の圧力変動によって吐出特性が変わってしまう虞がある。また駆動させる駆動素子の数によって駆動素子の収容空間の圧力変動も変わり圧力変動差に差異が生じてしまうので、駆動させる駆動素子の数によって吐出特性が変わってしまう虞もある。
【0005】
一方、例えば、特許文献2に記載の液体吐出装置が有する液体吐出ヘッドでは、圧電素子が、リザーバ形成基板によって運動が阻害されない程度の空間の中に封止され、外気と遮断されている。さらに、リザーバ形成基板には、吸湿材が配置された封止部材が取り外し可能に固定され、吸湿材によって、圧電素子が収容される空間の湿度の上昇が防止されている。
【0006】
しかしながら、高温多湿の環境下で使用する場合、また、製品輸送中に高湿度環境におかれた場合においても、ヘッド内乾燥剤の寿命が低下したり、ヘッド内乾燥剤性能が低下したりして、問題が発生することがあった。
【0007】
また、実際の駆動環境が高湿度であっても安定的に駆動を行うことを可能にするものとして、圧電体薄膜素子を収容するケースに乾燥空気を取り込む技術や、圧電体薄膜素子を密閉するキャップ部材を設けて内部の密閉空間に乾燥剤を封入する技術が開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献3の技術では、乾燥気体を用いる技術では乾燥気体生成装置を設備して乾燥気体を流し続けなければならないという問題があり、また、圧電体薄膜素子を密閉するキャップ部材を設ける場合には、特許文献1と同様に密閉空間に起因する不具合が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−000500公報
【特許文献2】特開2004−009550号公報
【特許文献3】特開2008−210924公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように、ヘッド内部の駆動素子、駆動用電極は湿度により劣化する虞があるが、上述したとおり、大気と連通された状態であることが望ましい反面、長期にわたる装置停止時、及び装置の輸送時に内部の湿度が上昇してしまう課題があった。加えて、ヘッド内部の湿度を下げる目的で内部に乾燥剤を導入したインクジェットヘッドでは、長期保管および装置停止時に、乾燥剤の吸湿性が飽和してしまい、装置稼働時に充分な効果を維持できないことが課題であった。また、乾燥気体を導入する装置などの設置も極力避けたいという要望もある。
【0011】
以上の事情を考慮して、本発明は、駆動素子を収容する空間の圧力変動を抑制しつつ、駆動素子を湿気から保護する液体吐出ヘッドユニットおよび液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、液体が充填される圧力室の圧力を変動させてノズルから液体を吐出させる駆動素子を備える液体吐出ヘッドと、複数の前記液体吐出ヘッドを固定する固定プレートと、前記固定プレートに固定され、複数の前記液体吐出ヘッドを囲むユニット空間を形成するユニットカバー部材と、前記ユニット空間内に配置される第1吸湿剤と、を備える液体吐出ヘッドユニットにある。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記液体吐出ヘッドが、前記駆動素子と、前記駆動素子を収容する封止空間を封止する封止体と、前記封止体を囲む収容空間を形成するケース部材と、前記ケース部材に形成され、前記収容空間を前記ユニット空間に連通する第1連通孔と、前記封止体に形成され、前記封止空間を前記収容空間に連通する第2連通孔と、を備え、前記収容空間に第2吸湿剤が配置される第1の態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記第2吸湿剤が、物理吸着型の吸着剤である第2の態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第2吸湿剤が、表面が耐水性を有する固形物である第2又は第3の態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記第1吸湿剤が、化学反応型の吸着剤である第1〜4の何れか一つの態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0017】
本発明の第6の態様は、前記第1吸湿剤が、前記ユニットカバー部材の内部の前記液体吐出ヘッドより上方に配置されている第1〜5の何れか一つの態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0018】
本発明の第7の態様は、前記ユニットカバー部材は、空気が通過する多数の通過口を有する仕切壁で仕切られた吸湿剤収容部を備え、前記第1吸湿剤が、前記吸湿剤収容部に収容されている第1〜6の何れか一つの態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0019】
本発明の第8の態様は、前記ユニットカバー部材には、その内部の前記ユニット空間に乾燥気体開口が供給可能な気体供給用開口が設けられている第1〜7の何れか一つの態様に記載の液体吐出ヘッドユニットにある。
【0020】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れか一つの態様に記載の液体吐出ヘッドユニットを備えた液体吐出装置にある。
【0021】
本発明の第10の態様は、第8の態様に記載の液体吐出ヘッドユニットと、前記気体供給用開口から前記ユニット空間に乾燥気体を供給する供給機構とを備えた液体吐出装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置の構成図である。
図2図1に示す液体吐出部のII−II線断面図である。
図3図1に示す液体吐出部のIII−III線断面図である。
図4図3に示す液体吐出部のIV−IV線断面図である。
図5】第2実施形態に係る液体吐出部の断面図である。
図6】第3実施形態に係る液体吐出部の断面図である。
図7】第3実施形態の液体吐出部の断面図である。
図8】第3実施形態の吸湿剤の斜視図である。
図9】第3実施形態の吸湿剤の部分断面図である。
図10】第3実施形態の吸湿剤のコート層を設ける前の部分断面図である。
図11】吸湿剤の吸湿・乾燥試験の結果を示すグラフである。
図12】第4実施形態に係る液体吐出装置の構成図である。
図13】第4実施形態に係る液体吐出部の断面図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る液体吐出装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置100を例示する構成図である。第1実施形態の液体吐出装置100は、液体の例示であるインクを媒体12に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象が媒体12として利用される。図1に例示される通り、液体吐出装置100には、インクを貯留する液体容器14が設置される。例えば液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンクが液体容器14として利用される。色彩が相違する複数種のインクが液体容器14には貯留される。
【0024】
図1に例示される通り、液体吐出装置100は、制御ユニット20と搬送機構21と移動機構24と液体吐出ヘッド26を複数備える液体吐出ヘッドユニット27とを具備する。制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素を統括的に制御する。具体的には、制御ユニット20は、例えば搬送機構21と移動機構24とを制御する。
【0025】
搬送機構21は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。液体吐出装置100が具備する液体吐出ヘッド26の個数は任意である。図1では、液体吐出装置100が2個の液体吐出ヘッド26を有する液体吐出ヘッドユニット27を具備する構成を例示する。
【0026】
移動機構24は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出ヘッドユニット27をX方向に往復させる。X方向は、媒体12が搬送されるY方向に交差(典型的には直交)する方向である。第1実施形態の移動機構24は、液体吐出ヘッドユニット27を設置するキャリッジ242と、キャリッジ242が固定された搬送ベルト244とを具備する。
【0027】
図2は、図1の本実施形態の液体吐出ヘッドユニット27のII−II線断面図であり、図3は、図1に示す液体吐出ヘッド26のIII−III線断面図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図である。これらの図面に示すように、液体吐出ヘッドユニット27は、複数の液体吐出ヘッド26を固定する底面部を形成する固定板28と、固定板28に設けられ、複数の液体吐出ヘッド26の周囲の空間であるユニット空間を囲むユニットカバー29とを具備し、ユニットカバー29は、固定板28に対向する上面部291と、固定板28および上面部291を連結する側面部292とを含む中空の構造体である。固定板28は、液体吐出ヘッドユニット27のうち媒体12に対向する部分である。液体吐出ヘッドユニット27の内部には、固定板28とユニットカバー29とで囲まれた空間であるユニット空間S1が形成される。液体吐出ヘッドユニット27のユニット空間S1に液体吐出ヘッド26が収容されている。
【0028】
ユニットカバー29の上面部291には、貫通孔293が形成される。ユニットカバー29の内部のユニット空間S1とユニットカバー29の外部である、例えば大気とは、貫通孔293を介して連通する。貫通孔293は、ユニットカバー29の外部からユニット空間S1に外気を流入させるとともに、ユニットカバー29の外部にユニット空間S1の空気を排出する。なお、貫通孔293は、必ずしも設ける必要はなく、後述するように、ユニット空間S1は他の箇所を介して外部と連通してもよい。
【0029】
また、第1実施形態では、液体吐出ヘッドユニット27の固定板28とユニットカバー29とで囲まれた空間をユニット空間S1として例示するが、液体吐出ヘッドユニット27の内部に形成される空間であればユニット空間S1の具体的な態様は任意である。液体容器14を液体吐出ヘッド26とともに液体吐出ヘッドユニット27に搭載した構成も採用され得る。また、複数の部材を接着、溶着、または、ネジ等の締結具により固定することでユニットカバー29を形成する構成も採用され得る。
【0030】
液体吐出ヘッド26は、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで複数のノズル(噴射孔)から媒体12に噴射する。各液体吐出ヘッド26においては、Y方向に複数のノズルが配列する。搬送機構21による媒体12の搬送とキャリッジ242および液体吐出ヘッドユニット27の反復的な往復とに並行して液体吐出ヘッド26が媒体12にインクを噴射することで、媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、X−Y平面(例えば媒体12の表面に平行な平面)に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。液体吐出ヘッド26によるインクの噴射方向がZ方向に相当する。インクの噴射方向は、鉛直方向または鉛直方向に交差する方向である。
【0031】
第1実施形態の液体吐出ヘッド26は、ノズルNからインクを吐出する液体吐出部70と、液体吐出部70を駆動する駆動回路80と、液体吐出部70および駆動回路80を収容するケース部材30とを含む。具体的には、ケース部材30のZ方向の正側(図3の下方)に開口部31が形成され、開口部31から吐出面22が露出するように液体吐出部70がケース部材30に固定される。液体吐出部70は、各ノズルNに対応する吐出部702を備える。
【0032】
液体吐出部70は、流路基板71の一方側に圧力室基板72と振動板73と圧電素子74と支持体75とが配置されるとともに他方側にノズル板76が配置された構造体である。流路基板71と圧力室基板72とノズル板76とは例えばシリコンの平板材で形成され、支持体75は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。圧力室基板72を構成する部材の一部を薄くして振動板73として機能させる場合のように、圧力室基板72と振動板73とが一体的に設けられてもよい。複数のノズルNはノズル板76に形成される。図3の構成では、ノズル板76のうち媒体12に対向する面が、液体吐出ヘッド26の吐出面22を構成する。
【0033】
流路基板71には、開口部712と分岐流路714と連通流路716とが形成される。分岐流路714および連通流路716はノズルNごとに形成された貫通孔であり、開口部712は複数のノズルNにわたり連続する開口である。支持体75に形成された収容部752(凹部)と流路基板71の開口部712とを相互に連通させた空間は、支持体75の導入流路754を介して液体容器14から供給されるインクを貯留する共通液室SR(リザーバー)として機能する。
【0034】
圧力室基板72には開口部722がノズルNごとに形成される。振動板73は、圧力室基板72のうち流路基板71とは反対側の表面に設置された弾性変形可能な平板材である。圧力室基板72の各開口部722の内側で振動板73と流路基板71とに挟まれた空間は、共通液室SRから分岐流路714を介して供給されるインクが充填される圧力室SC(キャビティ)として機能する。各圧力室SCは、流路基板71の連通流路716を介してノズルNに連通する。
【0035】
振動板73のうち圧力室基板72とは反対側の表面にはノズルNごとに圧電素子74が形成される。各圧電素子74は、第1電極742と第2電極746との間に圧電体744を介在させた駆動素子である。第1電極742および第2電極746の一方に駆動信号が供給され、所定の基準電位が他方に供給される。駆動信号の供給により圧電素子74が変形することで振動板73が振動すると、圧力室SC内の圧力が変動して圧力室SC内のインクがノズルNから吐出される。具体的には、駆動信号の振幅に応じた吐出量のインクがノズルNから吐出される。図4に例示した1個の吐出部702は、圧電素子74と振動板73と圧力室SCとノズルNとを包含する部分である。なお、圧電素子74の構成は、上述したものに限られない。
【0036】
図3および図4に示すように、圧電素子74および振動板73を湿気から保護するため、各圧電素子74および振動板73は封止空間S3に封止され、封止空間S3は封止体78で封止される。本実施形態の封止体78は、Z方向の正側の面に凹部782が形成された板状部材であり、振動板73に接着剤などで接合される。封止空間S3は、封止体78の凹部782と振動板73とで囲まれる空間である。ケース部材30の内部空間は、封止体78を囲む収容空間S2として機能する。
【0037】
ケース部材30は、相互に対向する底面部301および上面部303と、底面部301および上面部303を連結する側面部305とを含む中空の構造体である。底面部301は、ケース部材30のうち媒体12に対向する部分である。ケース部材30の内部には、底面部301と上面部303と側面部305とで囲まれた空間である収容空間S2が形成される。なお、第1実施形態では、ケース部材30の底面部301と上面部303と側面部305とで囲まれた空間を収容空間S2として例示するが、ケース部材30の内部に形成される空間であれば収容空間S2の具体的な態様は任意である。
【0038】
ところで、もし圧電素子74および振動板73を収容する封止空間S3が大気に連通していると、封止空間S3内に湿気が入り込み易くなってしまう。封止空間S3に湿気が入り込み、圧電素子74が多湿環境に長期間曝されると、圧電素子74の第1電極742や第2電極746が腐食したり、加水分解により強度が低下し、ひび割れが生じたりする虞もある。さらに、振動板73においても、多湿環境に長期間曝されると加水分解により強度が低下して、ひび割れが生じたりする虞がある。ところが、封止空間S3に湿気が入り込まないように、封止空間S3を大気に連通しない密閉空間にしてしまうと、圧電素子74の駆動による圧力室SCの振動が封止空間S3に伝播して、封止空間S3にも圧力変動が生じてしまう。各圧力室SCも封止空間S3の圧力変動の影響を受けるので、そのような構造的なクロストークにより封止空間S3の圧力変動によって吐出特性が変わってしまう虞がある。また駆動させる圧電素子74の数によって封止空間S3の圧力変動も変わるから、圧力変動差に大きな差異が生じてしまうので、駆動させる圧電素子74の数によって吐出特性が変わってしまう虞もある。
【0039】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、封止体78には封止空間S3を収容空間S2に連通する第2連通孔784を形成すると共に、ケース部材30に収容空間S2をユニット空間S1に連通する第1連通孔32を形成する構成とした。
【0040】
また、ケース部材30の底面部301には開口O2が形成される。ケース部材30の開口O2内にノズル板76が露出するように液体吐出部70がケース部材30に設置される。一方で、ケース部材30の上面部303には第1連通孔32が形成される。第1連通孔32は、ユニット空間S1において形成され、収容空間S2とユニットカバー29内のユニット空間S1とを連通させる。以上の通り、収容空間S2は密閉されないから、圧電素子74の変形による収容空間S2内の圧力の変動を低減できる。したがって、収容空間S2内の圧力変動に起因してノズルNの吐出特性に発生する誤差を低減することができる。特に近年の印刷装置の高スループット化への要求に応えるため、ノズルは高密度化・多数化するとともに、搭載する液体吐出ヘッド26の個数も増加する傾向にある。ノズルの高密度化・多数化により、複数のノズルのうちインクを噴射するノズルの総数に応じた収容空間S2内の圧力変動が大きくなり、高精度で安定した噴射を妨げる一因となる。また、搭載する液体吐出ヘッド26の個数が増加することは、液体吐出ヘッド26の交換作業が煩雑化する要因となるため、交換作業の容易化が更に求められている。
【0041】
固定板28には、開口O1が形成される。図2に例示される通り、液体吐出ヘッド26は、ノズルNが固定板28の開口O1から露出するように固定板28に支持される。具体的には、ケース部材30の底面部301が固定板28の外部に位置するように液体吐出ヘッド26が固定板28に固定される。開口O1の内周面との間に隙間Aをあけて当該固定板28に液体吐出ヘッド26が支持される。隙間Aは、開口O1の内周面とケース部材30の側面部305との間の空間である。固定板28における開口O1の内周面と液体吐出ヘッド26との間に隙間Aが形成されることにより、液体吐出ヘッド26が隙間なく開口O1に挿入される構成(以下「対比例」という)と比較して、液体吐出ヘッド26を容易に交換することができる。また、隙間Aが形成されることにより、対比例と比較して、固定板28に対して液体吐出ヘッド26の位置(特にX方向およびY方向における位置)を容易に調整することができる。固定板28とユニットカバー29とのユニット空間S1と外部とは当該隙間Aを介して連通するから、ユニットカバー29のユニット空間S1に外気が流入する。上述した通り、収容空間S2が第1連通孔32を介してユニット空間S1に連通するから、収容空間S2に収容された液体吐出部70および駆動回路80がユニット空間S1に流入した外気の影響を受けるという問題がある。具体的には、ユニット空間S1に流入した外気により固定板28およびユニットカバー29のユニット空間S1が高湿になることで、高湿に起因して液体吐出ヘッド26(液体吐出部70および駆動回路80)に不具合が発生する。
【0042】
そこで、第1実施形態では、ユニット空間S1の湿度を低減するために、ユニットカバー29内に第1吸湿剤50を設けている。本実施形態では、第1吸湿剤50は、粒状の乾燥剤を袋体に封入したものであり、ユニットカバー29内の上面部291の内側に固着している。
【0043】
この第1吸湿剤50により、ユニット空間S1は、低乾燥状態が維持されるようになる。また、上述したように、ユニット空間S1には、第1連通孔32を介して収容空間S2に連通し、収容空間S2は、第2連通孔784を介して封止空間S3に連通しているので、低湿度が維持されるユニット空間S1と同様に、収容空間S2も低湿度に維持され、収容空間S2に連通する封止空間S3も低湿度に維持される。
【0044】
これにより、装置が、特に長期間に亘って停止する場合においても、圧電体素子等を低湿度に保つことができる。また、液体吐出ヘッドユニットを輸送する場合においても、圧電体素子を確実に低湿度に保つことができ、圧電体素子の低湿度化に効果を発揮する。なお、ヘッドユニット輸送後においても、湿度低下を待つことなく、直ぐに使用できるという利点もある。
【0045】
ここで、液体吐出ヘッドユニット27や液体吐出装置100を輸送する場合、梱包内に乾燥剤を封入することが考えられるが、その場合においても、液体吐出ヘッド26を囲むユニット空間S1を確実に低湿度に保つことができるという効果を奏する。
【0046】
また、ユニットカバー29内に第1吸湿剤50を配置したので、交換容易であり、また、必要な量の乾燥剤を配置できるため、長期に亘って低湿度状態を維持することができる。第1吸湿剤50や液体吐出ヘッド26の交換を容易にし、低湿度状態を維持しやすくするためには、ユニットカバー29は開閉可能であることが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態では、固定板28の外部に位置するように液体吐出ヘッド26を固定する際に、開口O1の内周面との間に隙間Aをあけて当該固定板28に液体吐出ヘッド26が支持される構成としたが、上述したような液体吐出ヘッド26が隙間なく開口O1に挿入される構成の場合においても、第1吸湿剤50をユニットカバー29の内部に配置する構成とすることは極めて有効である。
【0048】
また、第1吸湿剤50の配置場所は特に限定されないが、液体吐出ヘッド26に接触しない箇所に設けるのが好ましく、液体吐出ヘッド26の側方の周囲や上方の何れでもよいが、上方に設けるのが特に好ましい。接触しない個所に設けるのは第1吸湿剤50が吸湿した水分が液体吐出ヘッド26に移動したり、液体吐出ヘッド26の部材と化学反応が起きるのを避ける為である。湿気は空気より比重が軽く、また、液体吐出ヘッド26の第1連通孔32は小さいため、ユニット空間S1に湿気が侵入してきたとしても、湿気のほとんどが第1吸湿剤50により吸湿され、液体吐出ヘッド26の内部まで到達することがない。
【0049】
また、第1吸湿剤50は液体吐出ヘッド26と離して設置しているため、第1吸湿剤50から万一腐食性ガス等が発生したとしても、液体吐出ヘッド26の内部まで到達しにくく、液体吐出ヘッドユニット27の信頼性を高めることができる。
【0050】
ここで、第1吸湿剤50は、吸湿性能を有するものであれば、特に限定されず、化学反応型でも物理吸着型でもよいが、化学反応型の吸湿剤を用いるのが好ましい。化学反応型の方が単位重量当たりの吸湿量が高く、低湿度下での吸湿性能が高く、低湿度になっても吸湿した水分を放出することがないという利点がある。
【0051】
化学反応型の吸湿剤としては、塩化カルシウム又は酸化カルシウムを主原料としているものを挙げることができ、市販品としては、三菱ガス化学製のRP剤、三和株式会社製のEX−DRYなどを挙げることができる。
【0052】
物理吸着型の吸湿剤としては、シリカゲル、又はアロフェンを主原料にした吸湿剤を挙げることができる。
【0053】
<第2実施形態>
図5には、第2実施形態に係る液体吐出ユニットの断面図を示す。本実施形態の液体吐出ユニットは、ユニットカバー29の上部に第1吸湿剤50を収容するためのメッシュ状の仕切部材295を設けた以外は、第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0054】
本実施形態によれば、第1吸湿剤50を固着することなく、ユニットカバー29の上面部291と仕切部材295との間に収容配置できるので、第1吸湿剤50の設置および交換作業が極めて簡便となるという効果を奏する。
【0055】
また、第1吸湿剤50が液体吐出ヘッド26に接触することを確実に避けることができ、空気より比重が軽い湿気を確実に吸湿できるという効果を奏する。
【0056】
<第3実施形態>
図6および図7には、第3実施形態に係る液体吐出ユニットの断面図を示す。本実施形態は、ユニットカバー29内のユニット空間S1に設けた第1吸湿剤50に加え、ケース部材30内部の収容空間S2に第2吸湿剤40を配置した以外は、上述した実施形態1又は2と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態によれば、第1吸湿剤50に加え、収容空間S2内に第2吸湿剤40を配置することにより、封止空間S3の周囲の収容空間S2をより確実に低湿度に維持することができるので、ユニット空間S1に湿気が侵入してきた場合、湿気のほとんどが第1吸湿剤50により吸湿されるが、仮に収容空間S2まで侵入してきても、第2吸湿剤40により確実に吸湿できるので、液体吐出ヘッド26の内部まで到達することがないという効果を奏する。
【0058】
本実施形態の構成では、ケース部材30の内周面F(図6の鉛直方向に沿う内壁面)のうちX方向正側の面に、2つの第2吸湿剤40をY方向に離間して配置する場合を例示する。ただし、第2吸湿剤40の数は、1つでもよく、また3つ以上でもよい。また、図6の構成では、ケース部材30の内周面FのうちX方向正側の面に圧電素子74を駆動する駆動回路80を配置するので、その駆動回路80を挟んでY方向の両側に1つずつ第2吸湿剤40を配置する。このような構成によれば、圧電素子74を収容する封止空間S3の圧力変動を抑制しつつ、圧電素子74および振動板73を湿気から保護できる。
【0059】
以下、このような本実施形態の作用効果について具体的に説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッド26によれば、圧電素子74を収容する封止空間S3は、ケース部材30内の収容空間S2に第2連通孔784で連通するから、封止空間S3が密閉空間にならないようにすることができる。したがって、圧力室SCの振動によって圧電素子74を収容する封止空間S3の圧力が変動することを抑制できるので、構造的なクロストークによる吐出不良を抑制できる。さらに、収容空間S2に第2吸湿剤40が配置されるから、第1連通孔32から収容空間S2に湿気が入り込んだとしても、収容空間S2において第2吸湿剤40で吸湿される。したがって、第2連通孔784を介して封止空間S3に入り込む湿気を低減できるので、圧電素子74および振動板73を湿気から保護できる。このように本実施形態によれば、圧電素子74を収容する封止空間S3の圧力変動を抑制しつつ、圧電素子74および振動板73を湿気から保護できる。
【0060】
また、図7に示すように本実施形態の第2連通孔784の開口面積(Z方向に直交する断面の面積)は、第1連通孔32の開口面積(Z方向に直交する断面の面積)よりも小さいので、第1連通孔32から収容空間S2に入り込んだ湿気が、第2連通孔784から封止空間S3に入り込み難い。第2連通孔784の開口面積は、少なくとも上述したクロストークの影響を受けない程度に封止空間S3の圧力振動を抑えることができる大きさであればよい。なお、本実施形態の第2連通孔784と第1連通孔32とは、ストレート状の開口で構成した場合を例示したが、これに限られず、第2連通孔784と第1連通孔32は、テーパー形状のように拡径部や縮径部を含む開口であってもよい。その場合は、第2連通孔784の最小開口面積を、第1連通孔32の最小開口面積よりも小さくすることで、第1連通孔32から収容空間S2に入り込んだ湿気が、第2連通孔784から封止空間S3に入り込み難くすることができる。
【0061】
本実施形態の第2吸湿剤40は、固形状の乾燥剤であり、乾燥剤粉末を、表面が耐水性を有する固形物としたものである。そして、本実施形態では、第2吸湿剤40は、ケース部材30の内周面Fに接着剤による接着により固定している。
【0062】
ここで、第2吸湿剤40は、小型化、低発塵性、設置の容易性などから固形物とした。固形物の形状は特に制限されないが、錠剤型、各種板状形状、円筒形状、立方体、直方体などの形状が例示できる。成形容易性、形状保持製の観点から、錠剤型、特に円筒板状型が好ましい。また、接着剤による接着性を考慮して、錠剤型でも端面は曲面でなく、平面である円筒形板状型が好ましい。本実施形態では、図8に示すように、錠剤型、あるいは円筒形板状型とした。
【0063】
また、第2吸湿剤40は、その一部断面構造を模式的に表す図9に示すように、乾燥剤粉末41aと、バインダー41bとを混練して圧縮成形した固形吸湿剤本体41と、コート層42とからなる。図示では、固形吸湿剤本体41及びコート層42を模式的に示し、固形吸湿剤本体41が乾燥剤粉末41aとバインダー41bとからなる状態を誇張して表しているが、これは一例を模式的に示したものであり、このような状態のものに限定されるものではない。乾燥剤粉末41aは、A型シリカゲル、B型シリカゲルなどのシリカゲルや、シリカゲルとアルミナの混合物であるアロフェン形粘土、ゼオライト、活性炭などから選択される少なくとも1種からなる。バインダー41bは、乾燥剤粉末41aの吸湿性を保持したまま結着するものであれば、特に限定されないが、鉱物系粘土、珪藻土などの無機系バインダー、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂などの樹脂バインダーなどを挙げることができる。
【0064】
コート層42は、耐水性があり、水蒸気透過性のある樹脂で形成されたものであり、このような樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル・シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、完全ケン化型のポリビニルアルコール樹脂などを挙げることができる。ここで、アクリル樹脂は、耐水性が高いが、水蒸気透過性も良好で、また、水系溶媒に分散処理を行いやすいため、低VOC(揮発性有機化合物)処理が可能であり、塗布方法も容易であるので好ましい。また、エポキシ樹脂はコート層42の硬度が高くなるので、第2吸湿剤40のハンドリング性、表面耐久性が高くなる点で好ましい。なお、例えば、水蒸気透過性があるが、耐水性がない樹脂としては、セルロース等の水溶性樹脂を挙げることができ、これらの樹脂はコート層42の材料としては不適切である。
【0065】
図10は、コート層42を形成する前の固形吸湿剤本体41の模式図であるが、固形吸湿剤本体41は、鉱物性粘土などからなるバインダー41bが吸湿などして変質すると、結着力が低下し、脱離する虞がある。また、このような固形吸湿剤本体41は、製造後、表面に粉塵が付着しているので、精密機器の製造を行うクリーンルーム内などに持ち込むためには洗浄等を行う必要があるが、洗浄に耐え得る耐水性を備えていない。一例として、固形吸湿剤を純水に入れ超音波洗浄を行うと、固形吸湿剤の表面だけが急激に吸湿・膨張することでひび割れが発生するなど不具合が生じる場合がある。また、他の例として、表面に透湿性は高いが耐水性のないコーティングを行った固形吸湿剤は、流水を当てるだけで表面のコーディングが溶出するなどの不具合が生じる。
【0066】
本実施形態の第2吸湿剤40は、コート層42で覆われているので、吸湿しても変質することなく安定した表面が保たれる。すなわち、表面に耐水性があるコート層があることで、表面だけが急激に吸湿・膨張することでひび割れが発生したり、表面のコーティングが溶出したりする虞が低減される。そして、表面に充分な安定性があるため、経年劣化による乾燥剤粉末41aやバインダー41bの飛散を抑制することができる。更に、コート層42により表面に耐水性を備えているので、純水中の超音波洗浄や流水洗浄を行っても表面が変質することがないため、表面に付着したダスト・異物を効果的に除去することが可能となる。
【0067】
以上説明したように、第2吸湿剤40は、表面が耐水性を有する固形物としたことにより、単位体積当たりの吸湿性を向上せることができ、精密機器内の小さな空間に容易に保持することができる。
【0068】
また、表面が耐水性を有する必要があるとしたのは、洗浄ができるためである。通常、精密機器の組み立ては、クリーンルーム又はそれに相当する粉塵のないクリーンな場所で行うので、第2吸湿剤40自体を超音波洗浄等して用いる必要がある。
【0069】
ここで、耐水性とは、40℃の水に10分程度浸しても、表面の諸物性(表面硬度、タック性、表面粗さ)が変質しないことを意味する。また、これにより、第2吸湿剤40の表面洗浄が可能となる。本実施形態では、純水中で超音波洗浄した後、純水の流水で洗浄後、例えば、135℃で4時間乾燥したものを用いた。本実施形態の第2吸湿剤40は、コート層42を有するので、耐湿性に優れたものである。このように、コート層42を設ける処理は、耐水性を付与する処理であるが、耐水性を付与することができるのであれば、コーティング以外の耐水性処理を施してもよい。
【0070】
コーティング以外の耐水性処理としては、吸湿剤を圧縮成形で製造する工程で、表面近傍の部分だけを樹脂粉末で構成したり、透湿性フィルムで包んだりする等の方法がある。
【0071】
また、第2吸湿剤40は、低発塵性であることが好ましい。ここで、低発塵性とは、例えば、ヒタレックスA−2450(日立化成株式会社製)の粘着テープを第2吸湿剤40の表面に粘着して剥がした際に、粉塵がほとんど剥がれない状態をいう。例えば、観察される粉塵が1cmあたり1〜3個程度であれば、低発塵性とするが、全く観察されないのが好ましい。また、吸湿した後の経年劣化後も同様に低発塵性であることが好ましい。本実施形態の第2吸湿剤40は、コート層42を有するので、洗浄後は発塵性はない。ここで、粉塵、又は塵とは、数μm〜50μm程度の大きさのものをいう。このような塵は、ノズルを詰まらせる虞がある。
【0072】
また、第2吸湿剤40は、樹脂材料からなるコート層42を有するので、樹脂部材との接着する際の接着剤を容易に選定でき、容易に接着を図ることができる。また、固形吸湿剤本体41が吸湿して経年劣化した後でも、コート層42は経年劣化が極めて小さいので、接合不良とはならないという利点がある。
【0073】
なお、このような接着性の観点からは、接着面のみにコート層42を設けてもよいが、耐水性、低発塵性の観点からは、固形吸湿剤本体41の全表面にコート層42を設けるのが好ましい。
【0074】
さらに、コート層42は、水蒸気透過性を有する必要があるが、第2吸湿剤40として、40℃で90%RHの環境下に放置した際の質量増加量である吸湿性が2〜200mg/hであることが好ましい。吸湿性がこれより小さいと十分な吸湿作用が発揮できず、また、吸湿性がこれより大きいと、製造工程での吸湿が大きすぎて、早期に飽和状態となってしまう可能性があり、好ましくない。
【0075】
特に、インクジェットヘッド、内視鏡などの小型の精密機器に内蔵する吸湿剤は、乾燥させたい容積が小さいために、大きな吸湿性を必要としない。そのため、表面を耐水性のある材料でコーティングし膜厚を制御することで、適正な吸湿性を得ることも可能である。また、適正な吸湿性を得ることにより、これらの精密機器を製造する工程において、精密機器に内蔵される前の吸湿剤が外気に暴露されることにより損失する吸湿量を低減することも可能となる。例えば、発明者が制作したインクジェットヘッドでは、内蔵する吸湿剤の吸湿性は2〜10mg/hあればよく、コーティングにより吸湿性を抑えた吸湿剤が好適であった。
【0076】
また、コート層42は、表面の表面算術粗さRaが1μm〜15μmであることが好ましい。このような表面を有することにより、洗浄が容易となり、また、洗浄後に粉塵が表面に付着するのが回避される。また、表面粗さがこれより大きいと、発塵性が大きくなる傾向となる。例えば、図10に示すようなコート層42を設ける前の表面の表面算術粗さRaは、一般的には、20μm〜50μm程度である。
【0077】
このようなコート層42の厚さは、例えば、2μm〜100μm程度である。例えば、アクリル樹脂を用いてこのような厚さでコート層42を形成した場合、上述した吸湿性を有するものとすることができる。
【0078】
なお、コート層42を有さない場合でも、バインダー41bを樹脂バインダーとした場合、耐水性、低発塵性を満足できる可能性があり、また、さらに、乾燥剤粉末41aを経年劣化しても発塵し難い材料を用い、表面粗さが小さい成形体とすることにより、低発塵性をさらに向上させ得る。樹脂バインダーを用いてできるだけ平坦な表面に成形した場合、表面の表面算術粗さRaを5μm〜15μm程度とすることができる。
【0079】
このような第2吸湿剤40の製造方法の一例は以下の通りである。
まず、乾燥剤粉末41aとバインダー41bと必要に応じて溶媒を添加して混練し、混練物を圧縮成形し、必要に応じて乾燥、焼成することにより固形吸湿剤本体41とする。
【0080】
次に、固形吸湿剤本体41にコート層42を設ける。コート層42の形成方法としては、ディップ法、筆塗り法、スプレー法などを用いることができる。
【0081】
その後、機器内に設置する前に、純水で超音波洗浄し、乾燥することで第2吸湿剤40とする。例えば、乾燥は、60℃・24時間、又は135℃・4時間程度である。これにより、本発明の表面耐水性があり、付着粉塵がなく、発塵性もない第2吸湿剤40となる。
【0082】
このように本実施形態の第2吸湿剤40を製造するためには、(1)圧縮成形工程、(2)耐水性処理工程、特に、コーティング工程、(3)不純物を含まない水系溶媒での洗浄工程、(4)水系溶媒の揮発(乾燥)工程とを具備する必要がある。ここで、不純物を含まない水系溶媒とは、蒸発後に塵が析出しない水系溶媒であり、水系溶媒は、純水又は純水にアルコールやグリコール類などの水溶性有機溶媒を添加したもの、又は水溶性有機溶媒を主体としたものなどをいう。
【0083】
これにより、耐水性を有し、低発塵性で、収容空間S2内の小さな空間に容易に搭載可能な第2吸湿剤40を製造することが可能となる。
【0084】
本実施形態の2つの第2吸湿剤40のそれぞれは、乾燥剤粉末41aとして、低温でも安定した吸湿性を維持できるA型シリカゲルを用いた。ただし、第2吸湿剤40は、収容空間S2に入り込んだ湿気を吸収できるものであればよい。本実施形態のように、乾燥剤粉末41aをA型シリカゲルで構成することで、低温環境下でも効果的に吸湿できる。なお、B型シリカゲルや他の吸湿剤料で乾燥剤粉末41aを構成してもよい。
【0085】
乾燥剤粉末41aとしては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、生石灰などの化学反応型の吸湿剤ではなく、シリカゲル、ゼオライト、アロフェンなどの物理吸着型の乾燥剤を用いることが望ましい。物理吸着型の乾燥剤粉末41aは化学的に安定で吸湿による化学反応は生じないことから、表面コーティングの際に乾燥剤粉末41aが変質することを防止するとともに、長期使用で乾燥剤粉末41aが吸湿により変質・変形してしまうことを防ぐことができる。
【0086】
また、2つの第2吸湿剤40のうち、一方の乾燥剤粉末41aをA型シリカゲルで構成し、他方の乾燥剤粉末41aを気体吸着剤で構成してもよい。気体吸着剤は、A型シリカゲルなどよりも高いガス吸着能力を有する。これによれば、第1連通孔32から収容空間S2に入り込んだ湿気だけでなく、硫黄系ガスや塩素系ガスなども吸着できる。硫黄系ガスや塩素系ガスなどは、ケース部材30内の電気的接続部や圧電素子74の第1電極742および第2電極746などを腐食させる虞がある。この点、本実施形態によれば、このような硫黄系ガスや塩素系ガスは、収容空間S2で吸着されるので、第2連通孔784から封止空間S3に入り込むことを抑制できる。したがって、第1連通孔32から入り込んだ硫黄系ガスや塩素系ガスから圧電素子74を保護することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、第2吸湿剤40は、小型化、低発塵性、設置の容易性などから固形物としたが、これに限定されず、粒状又は粉末状の吸湿剤を袋体などの収容したものを用いてもよい。
【0088】
但し、何れの場合にも、第2吸湿剤40は、シリカゲル、ゼオライト、アロフェンなどの物理吸着型の乾燥剤を用いることが望ましい。物理吸着型の乾燥剤は化学的に安定で吸湿による化学反応は生じないことから、長期使用で吸湿により変質・変形してしまうことを防ぐことができる。
【0089】
また、図7に示すように本実施形態の第2吸湿剤40は、第1連通孔32よりも第2連通孔784に近い位置にあるから、第1連通孔32に近い位置に第2吸湿剤40がある場合に比較して、収容空間S2の外側の湿気を第1連通孔32から吸い込んで吸湿することを抑制できる。したがって、第2吸湿剤40の吸湿能力を維持できる時間を延ばすことができる。また、第2連通孔784に近い位置に第2吸湿剤40があるから、第2連通孔784から遠い位置に第2吸湿剤40がある場合に比較して、第2連通孔784から湿気が入り込み難くすることができる。
【0090】
また、本実施形態の第1連通孔32は、鉛直方向(Z方向)において第2連通孔784よりも高い位置にあり、第2吸湿剤40は、鉛直方向において第1連通孔32と第2連通孔784との間にある。例えば、第1連通孔32から収容空間S2に入り込んだ湿気による水分が、温度低下によって第1連通孔32と第2連通孔784との間で結露してケース部材30の内周面Fに結露滴Hdが付着することがあるが、その場合、その後に再び温度が上昇して結露滴Hdが蒸発して湿気が高くなってしまう虞がある。ところが、結露滴Hdが蒸発するとその水分は鉛直方向に上昇するが、上述した構成によれば、第1連通孔32と第2連通孔784との間にある第2吸湿剤40で結露的が蒸発して湿気を効率よく吸湿できる。したがって、ケース部材30の内周面Fに結露滴Hdが蒸発したとしても、それによる湿気が第2連通孔784に入り込むことを抑制できるので、多湿環境下においても装置の信頼性を維持できる。
【0091】
また、図7に示すように、本実施形態の収容空間S2は、鉛直方向において第2連通孔784よりも低い底面36を有する凹部S21を備える。図7の凹部S21は、液体吐出部70の周囲に配置され、液体吐出部70の外周面(Z方向に沿う面)と、ケース部材30の内周面Fのうち液体吐出部70の外周面に対面する部分と、底面36とで囲まれた環状の溝である。この構成によれば、ケース部材30の内周面Fに付着した結露滴Hdが、ケース部材30の内周面を伝って下方に移動したとしても、収容空間S2の凹部S21でトラップできる。しかも、その凹部S21は、鉛直方向において第2連通孔784よりも低い底面36を有するから、結露滴Hdを第2連通孔784よりも低い位置で凹部S21に溜めることができるので、結露滴Hdが第2連通孔784に入り込むことを抑制できる。なお、凹部S21の形状は、環状でなくてもよい。また、凹部S21の位置も液体吐出部70の周囲に限られない。
【0092】
本実施形態のケース部材30の材質は、封止体78よりも熱伝導率の高い材質である。このような構成にすることで、温度が低下した場合に、収容空間S2に入り込んだ湿気による水分を収容空間S2におけるケース部材30の内周面Fに積極的に結露させることができる。これにより、封止空間S3の湿度を下げることができるので、封止空間S3において結露し難くすることができる。さらに温度が上昇した場合に、ケース部材30の内周面Fに結露した結露滴Hdは収容空間S2で再蒸発するので、第2吸湿剤40によって吸湿され易くなる。また、ケース部材30を樹脂材料で構成し、その内周面Fに水分の透過を抑制するコート層を形成するようにしてもよい。コート層としては、湿気を結露し易い材料、例えばフロロサーフ(株式会社フロロテクノロジー 登録商標)などの断湿コーティング材があげられる。この構成によれば、ケース部材30の内周面Fに積極的に結露させることができるケース部材30を安価に製造できる。
【0093】
また、図7に示すように本実施形態の収容空間S2には、発熱源になり得る駆動回路80が配置されるので、収容空間S2の方が封止空間S3よりも温度が上昇し易くなるから、収容空間S2の飽和水蒸気許容量が増加して水分蒸発量が増え易くなる。この点、本実施形態では、周囲の温度が上昇し易い駆動回路80が配置される収容空間S2に第2吸湿剤40があるから、水分蒸発量が増え易い収容空間S2の湿気を効率的に吸湿できる。
【0094】
また、本実施形態の封止空間S3の容積は、収容空間S2の容積よりも小さい。例えば封止空間S3の容積が1〜10mmであるのに対して、収容空間S2の容積は10,000〜400,000mmである。このように、収容空間S2の容積に対する封止空間S3の容積を小さくするほど、もし結露が発生したとしても、封止空間S3での結露量を収容空間S2での結露量よりも大幅に少なくできる。これにより、結露による圧電素子74の特性劣化を低減できる。逆に、収容空間S2の容積は、封止空間S3の容積よりも大きいから、収容空間S2に配置する第2吸湿剤40を大きくし易いので、第2吸湿剤40による吸湿効果を高めることができる。
【0095】
さらに、本実施形態では、収容空間S2と第1連通孔32を介して連通するユニット空間S1には、第1吸湿剤50が配置されているので、第1連通孔32を介して収容空間S2に侵入する空気は低湿度なものであるから、第2吸湿剤40の寿命がかなり高寿命となり、また、収容空間S2および封止空間S3をより確実に低湿度状態に保つことができ、多湿環境下においても装置の信頼性をさらに確実に維持できる。
【0096】
また、収容空間S2の第2吸湿剤40が吸湿した後、収容空間S2が低湿度状態になると、第2吸湿剤40が水分を放出することがあるが、この水分は第1連通孔32を介してユニット空間S1に侵入し、第1吸湿剤50により吸湿されるので、第1吸湿剤50により、第2吸湿剤40の吸湿性能が回復するという効果がある。
【0097】
なお、このような効果は、第2吸湿剤40が吸湿した水分を放出する可能性がある物理吸着型であり、第1吸湿剤50の吸湿性能が、第2吸湿剤40の吸湿性能より高い場合に有効に発揮される。よって、第2吸湿剤40が物理吸着型であり、第1吸湿剤50が化学反応型であるのが好ましい。
【0098】
図11には、吸湿状態の吸湿剤と他の吸湿剤とを略密閉空間で併置したときの吸湿状態の変化を示すグラフである。試験対象は吸湿状態にある物理吸着型の吸湿剤(セカード:商品名)であり、グラフ1は、吸湿状態の物理吸着型の吸湿剤の吸湿率を表す。グラフ2は、吸湿状態の物理吸着型の吸湿剤と、化学反応型の吸湿剤(三菱ガス化学社製のRP剤)とを略密閉空間で併置したときの物理吸着型の吸湿剤の吸湿率の変化であり、グラフ3は、吸湿状態の物理吸着型の吸湿剤と、物理吸着型の吸湿剤(シリカゲル)とを略密閉空間で併置したときの物理吸着型の吸湿剤の吸湿率の変化を見たものである。グラフ2、3は共に、物理吸着型の吸湿剤の吸湿率が低下するが、化学反応型の吸湿剤と併置したグラフ2の方が、吸湿率がより低下し、よりよく乾燥されていることが判る。
【0099】
また、第2吸湿剤40を物理吸着型、第1吸湿剤50を化学反応型にすることで、第1吸湿剤50の吸湿過程で、万一腐食性ガスが発生した場合に、第2吸湿剤40が腐食性ガスを物理吸着して液体吐出ヘッド26の駆動回路に悪影響を生じさせないため、信頼性が高い液体吐出ヘッドユニット27を得ることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、第2吸湿剤40は、小型化、低発塵性、設置の容易性などから固形物としたが、これに限定されず、粒状又は粉末状の吸湿剤を袋体などの収容したものを用いてもよい。
【0101】
但し、何れの場合にも、第2吸湿剤40は、シリカゲル、ゼオライト、アロフェンなどの物理吸着型の乾燥剤を用いることが望ましい。物理吸着型の乾燥剤は化学的に安定で吸湿による化学反応は生じないことから、長期使用で吸湿により変質・変形してしまうことを防ぐことができる。
【0102】
<第4実施形態>
図12および図13には、第4実施形態に係る液体吐出ユニットの断面図を示す。本実施形態は、ユニットカバー29に乾燥気体開口が供給可能な気体供給用開口93が設けられており、気体供給用開口93に給気管95を介して供給機構90を接続した構成とした以外は、第1実施形態〜第3実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。なお、図示は第3実施形態と同様な構成を示す。
【0103】
本実施形態の液体吐出装置100は、供給機構90および給気管95を介して気体供給用開口93から乾燥気体をユニット空間S1内に供給し、ユニット空間S1を低湿度に保つものであるが、このような乾燥気体の供給機構90を備えるようにすることにより、第1吸湿剤50を配置してユニット空間S1内の湿度をより確実に低湿度に保つことができ、圧電体素子を確実に低湿度に保つことができ、圧電体素子の低湿度化に効果を発揮する。なお、本実施形態では、気体供給用開口93をユニットカバー29の上面部291に設けたが、側面部292の何れか一面に設けてもよい。
【0104】
また、供給機構90から乾燥気体を供給することにより、第1吸湿剤50自体の乾燥を行うことができ、例えば、第1吸湿剤50が化学反応型吸湿剤であっても、吸湿性能の回復を図ることができる。よって、第1吸湿剤50によるユニット空間S1の低湿化、さらには、第1吸湿剤50および第2吸湿剤40を介してのユニット空間S1および収容空間S2さらには封止空間S3の低湿化をより確実に行うことができる。
【0105】
以下、供給機構90による乾燥気体の供給の一例をさらに説明する。
供給機構90は、ユニット空間S1に乾燥気体を供給する。乾燥気体は、水蒸気量が4g/m(好ましくは3g/m、より好ましくは1g/m)以下の気体である。例えばドライエアー(乾燥空気)が乾燥気体として利用される。具体的には、供給機構90は、空気を送出するポンプ等の送出機と、送出機が送出する空気を除湿する除湿機とを含む。供給機構90は、ユニットカバー29(例えば上面部291)に形成された気体供給用開口93に対してチューブ等の給気管95により接続される。供給機構90から送出された乾燥気体は、給気管95を介してユニット空間S1に供給される。
【0106】
なお、ユニットカバー29の上面部291には、貫通孔293が形成される。ユニットカバー29のユニット空間S1とユニットカバー29の外部とは、貫通孔293を介して連通する。貫通孔293は、ユニットカバー29の外部からユニット空間S1に外気を流入させるとともに、ユニットカバー29の外部にユニット空間S1の空気を排出する。
【0107】
供給機構90は、ユニット空間S1の湿度Mcが目標値以下になるようにユニット空間S1に乾燥気体を供給する。具体的には、目標値は、7g/m(好適には4g/m)である。温度が約25℃であり、かつ、相対湿度が約30%である環境において湿度Mcが7g/mになる。
【0108】
本実施形態の供給機構90は、キャリッジ242と共にユニットカバー29が移動機構24により移動している状態(以下「移動状態」という)と、ユニットカバー29が停止している状態(以下「停止状態」)とにおいて乾燥気体をユニット空間S1に供給する。供給機構90がユニット空間S1に乾燥気体を供給する量(以下「供給量」という)は、移動状態と停止状態とで相違する。供給機構90は、制御ユニット20による制御のもとで、移動状態と停止状態とで乾燥気体の供給量(m/min)を変化させる。
【0109】
移動状態および停止状態において、乾燥気体の湿度Mdとユニットカバー29の外部の湿度Moとユニット空間S1の湿度Mcとの間には、以下の式(1)の関係が成立する、という知見が得られた。記号Fdは、ユニット空間S1内の湿度Mcを目標値に維持するための供給量(以下「目標供給量」という)であり、記号Foは、ユニットカバー29の外部からユニット空間S1に流入する外気の進入量(m/min)である。なお、湿度(Md,Mo,Mc)は、絶対湿度である。
【0110】
Fd×Md+Fo×Mo=(Fd+Fo)×Mc …(1)
式(1)から理解される通り、供給機構90からユニット空間S1に進入する単位時間当たりの水分量(Fd×Md)と、ユニットカバー29の外部からユニット空間S1に進入する単位時間当たりの水分量(Fo×Mo)との和が、ユニットカバー29のユニット空間S1における水分量((Fd+F o)×Mc)と等しい。乾燥気体の目標供給量Fdは、式(1)を変形した以下の式(2)から算出される。
【0111】
Fd={Fo/(Mc−Md)}×Mo+(Mc×Fo)/(Md−Mc) …(2)
式(2)から算出される目標供給量Fd以上の供給量で乾燥気体を供給することで、ユニット空間S1の湿度Mcを目標値(例えば7g/m)以下にすることができる。また、乾燥気体の供給量は、目標供給量Fdの2倍以下に設定される。
【0112】
数式(2)の湿度Mcは、目標値に設定される。式(2)の湿度Md、湿度Moおよび進入量Foは、液体吐出装置100の仕様および液体吐出装置100の設置環境に応じて決定される。湿度Mdは、例えば4g/m以下に設定される。好適には、3g/m以下に湿度Mdが設定され、より好適には、1g/m以下に湿度Mdが設定される。湿度Mo は、例えば液体吐出装置100が設置される環境の最大湿度に設定される。例えば湿度計により湿度Moが計測される。進入量Foは、例えば、隙間Aの面積、貫通孔293の面積、および、ユニットカバー29の移動速度応じて設定される。すなわち、隙間Aの面積、貫通孔293の面積、および、ユニットカバー29の移動速度に応じた供給量で乾燥気体が供給されるとも換言される。なお、進入量Foは、例えば、隙間Aの面積、貫通孔293の面積、および、ユニットカバー29の移動速度を含む既知の条件のもとで、湿度Md、湿度Mo、湿度Mcおよび乾燥気体の供給量を測定し、式(1)に代入することで実験的に導出することも可能である。すなわち、進入量Foは、隙間Aの面積、貫通孔293の面積、および、ユニットカバー29の移動速度に依存する。
【0113】
以上に設定した供給量でユニット空間S1に乾燥気体を供給することで、ユニット空間S1から隙間Aを介してユニットカバー29の外部に流出する気体の流速が0.01m/sec以上になる。ユニット空間S1から外部に流出する気体の流速が0.01m/sec以上になることで、ノズルNからのインクの噴射に起因した霧状の液滴(ミスト)が、ユニットカバー29と液体吐出ヘッド26との隙間Aからユニットカバー29のユニット空間S1に進入することが抑制できる。したがって、ユニットカバー29のユニット空間S1の湿度Mcをより低減できるという利点がある。なお、液滴の評価は、光沢性のPM写真用紙(セイコーエプソン株式会社製)を20mm×10mm角に切り取った試験片をユニットカバー29内に設置し、400%でベタ印刷を3時間行ったあとの試験片の表面を光学顕微鏡で観察することにより、ユニット空間S1に対する液滴の進入を低減できることが確認できた。
【0114】
また、ユニットカバー29の外部に流出する気体の流速を0.01m/sec以上にすることで、特に、試験片上の着弾径が3μm以下の微小液滴がユニット空間S1に進入することが抑制されるという知見が発明者の実験により得られた。サイズが大きい液滴は、隙間Aおよび貫通孔293から進入するものの直進性が高いために、その多くがユニットカバー29の内壁面に付着する。すなわち、収容空間S2までは進入しにくい。一方、微小液滴は直進性が低いため、ユニット空間S1で浮遊して収容空間S2に進入し駆動回路80等の電気的な要素に付着しやすい。また、微小液滴は体積に対する表面積が相対的に大きいため、乾燥および固化しやく、電気的な接続の不良を生じさせやすい。したがって、ユニット空間S1への微小液滴の進入を抑制することで、液体吐出装置100をより安定して稼働させることが可能となる。
【0115】
停止状態においては、移動状態よりもユニットカバー29のユニット空間S1に外気が進入しにくいから、移動状態の供給量よりも少ない供給量でユニット空間S1の湿度Mcを低減できる。したがって、停止状態において、供給機構90は、移動状態の供給量よりも少ない供給量でユニット空間S1に乾燥気体を供給する。具体的には、停止状態の供給量は、移動状態の供給量の200分の1より大きく、かつ、20分の1より小さい。
【0116】
以上に説明した通り、第1実施形態では、ユニットカバー29における開口O1の内周面との間に隙間Aがあくように液体吐出ヘッド26がユニットカバー29に支持されるから、液体吐出ヘッド26を容易に交換することができる。また、隙間Aが形成されることにより、ユニットカバー29に対して液体吐出ヘッド26の位置を容易に調整することができる。他方、ユニットカバー29と液体吐出ヘッド26との間に隙間Aが形成される構成では、当該隙間Aからユニットカバー29のユニット空間S1に外気が流入し、ユニットカバー29の内部が高湿になると、高湿に起因して液体吐出ヘッド26に不具合が発生するという問題がある。ユニットカバー29のユニット空間S1に乾燥気体が供給される第1実施形態の構成によれば、ユニットカバー29のユニット空間S1の湿度Mcが低減される。したがって、液体吐出ヘッド26の容易な交換を実現しながら、高湿に起因した液体吐出ヘッド26の不具合を低減できる。
【0117】
第1実施形態では、ユニット空間S1の湿度Mcが7g/m以下になるようにユニット空間S1に乾燥気体が供給されるから、ユニット空間S1の湿度Mcを有効に低減できる。また、第1実施形態では、移動状態と停止状態とにおいて乾燥気体がユニット空間S1に供給されるから、移動状態だけでなく停止状態においてもユニット空間S1の湿度Mcを低減できるという利点がある。さらには、停止状態における乾燥気体の供給量が移動状態における乾燥気体の供給量よりも少ないから、停止状態に移動状態と同様の供給量で乾燥気体を供給する構成と比較して、液体吐出装置100を省電力化することができる。
【0118】
ケース部材30に第1連通孔32が形成される本実施形態の構成によれば、ユニット空間S1の乾燥の効果が第1連通孔32を介して収容空間S2にまで波及する。また、第1連通孔32が形成されない構成であっても、ケース部材30の構成部材が水分透過性のある材質の場合、ユニット空間S1の乾燥の効果は収容空間S2まで波及する。したがって、収容空間S2内に収容された液体吐出部70と駆動回路80とについて、高湿に起因した不具合を低減することができる。
【0119】
<変形例>
以上に例示した態様および実施形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示や上述の態様から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0120】
(1)上述した実施形態では、液体吐出ヘッドユニット27を搭載したキャリッジ242をX方向に沿って反復的に往復させるシリアルヘッドを例示したが、液体吐出ヘッドユニット27を媒体11の全幅にわたり配列したラインヘッドにも本発明を適用可能である。
【0121】
図14には、ラインヘッドを採用した液体吐出装置100Aの概略構成を示す。図14に示すように、液体吐出装置100Aは、装置本体2と、複数の液体吐出ヘッド26Aを具備すると共に装置本体2に固定された液体吐出ヘッドユニット27Aと、媒体12を搬送する搬送手段4と、液体吐出ヘッドユニット27Aと相対向する媒体12を支持する支持部材7と、を具備する。
【0122】
このようなラインヘッドを有する液体吐出装置100Aにおいても、第1吸湿剤50、さらには、第1吸湿剤50および第2吸湿剤40を設けることにより、液体吐出部70と駆動回路80とについて、高湿に起因した不具合を低減することができる。
【0123】
(2)上述した実施形態では、圧力室に機械的な振動を付与する圧電素子74を利用した圧電方式の液体吐出ヘッド26を例示したが、加熱により圧力室の内部に気泡を発生させる発熱素子を利用した熱方式の液体吐出ヘッドを採用することも可能である。
【0124】
(3)上述した実施形態で例示した液体吐出装置100Aは、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置10の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等を形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、液体の一種として生体有機物の溶液を吐出するチップ製造装置としても利用される。
【符号の説明】
【0125】
11,12…媒体、14…液体容器、22…吐出面、24…移動機構、26…液体吐出ヘッド、27…液体吐出ヘッドユニット、28…固定板、29…ユニットカバー、30…ケース部材、32…第1連通孔、36…底面、40…第2吸湿剤、50…第1吸湿剤、70…液体吐出部、80… 駆動回路、100、100A…液体吐出装置、702…吐出部、71…流路基板、712…開口部、714…分岐流路、716…連通流路、72…圧力室基板、722…開口部、73…振動板、74…圧電素子、742…第1電極、744…圧電体、746…第2電極、75…支持体、752…収容部、754…導入流路、76…ノズル板、78…封止体、782…凹部、784…第2連通孔、F…内周面、Hd…結露滴、N…ノズル、S1…ユニット空間、S2…収容空間、S21…凹部、S3…封止空間、SC…圧力室、SR… 共通液室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14