特開2020-44875(P2020-44875A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-44875(P2020-44875A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20200303BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20200303BHJP
   F21S 41/64 20180101ALI20200303BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20200303BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20200303BHJP
   F21W 102/18 20180101ALN20200303BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20200303BHJP
【FI】
   B60Q1/04 Z
   F21S41/16
   F21S41/64
   F21V9/40 400
   F21W102:155
   F21W102:18
   F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-172553(P2018-172553)
(22)【出願日】2018年9月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 壮宜
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA03
3K339BA12
3K339BA23
3K339BA25
3K339BA28
3K339CA01
3K339DA05
3K339GB01
3K339HA01
3K339KA06
3K339LA06
3K339MA06
3K339MA10
3K339MC41
(57)【要約】
【課題】 環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い車両用灯具を提供することを目的とする。
【解決手段】 車両用灯具としての車両用前照灯1は、光を出射する光源52R,52G,52Bと、変更可能な位相変調パターンで光を回折し、当該位相変調パターンに基づく配光パターンとされた光を出射する位相変調素子54R,54G,54Bと、光源52R,52G,52Bの温度と位相変調素子54R,54G,54Bの温度とを検知する温度検知部75と、制御部71と、を備える。制御部71は、温度検知部75で検知される光源52R,52G,52Bの温度と位相変調素子54R,54G,54Bの温度とに基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光の配光パターンが所定の配光パターンになるように位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを制御する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
変更可能な位相変調パターンで前記光を回折し、前記位相変調パターンに基づく配光パターンとされた前記光を出射する位相変調素子と、
前記光源の温度と前記位相変調素子の温度とを検知する温度検知部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度検知部で検知される前記光源の温度と前記位相変調素子の温度とに基づいて、前記位相変調素子から出射する前記光の配光パターンが所定の配光パターンになるように前記位相変調素子の前記位相変調パターンを制御する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記温度検知部で検知される前記光源の温度と前記位相変調素子の温度との組み合わせのそれぞれに対して前記位相変調パターンを予め対応付けたテーブルに基づいて、前記制御部が前記位相変調パターンを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記温度検知部は、前記位相変調素子の温度を検知する素子温度センサを有し、
前記素子温度センサは、前記位相変調素子の入射面とは反対側に位置する面のうち、当該入射面における前記光の入射領域と重なる部分に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
互いに異なる波長の前記光を出射する前記光源を複数備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度検知部で検知される複数の前記光源のそれぞれの温度に基づいて、複数の前記光源のうち少なくとも1つの出力を調整する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記位相変調素子は、複数の前記光源ごとに設けられる
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
複数の前記光源のうち少なくとも2つの光源は、前記光の出射を所定の周期で切り替え、
前記少なくとも2つの光源から出射する複数の前記光は、共通の前記位相変調素子に入射する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記位相変調素子はLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相変調素子を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表する車両用灯具に関して、出射する光を所望の配光パターンとし得る様々な構成が検討されている。例えば、下記特許文献1には、位相変調素子の一種であるLCOSを用いて所望の配光パターンを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-115582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、位相変調素子として上記特許文献1のようにLCOSを使用する場合、環境温度が変化してLCOSの温度や光源の温度が変化すると、LCOSの液晶分子の配向が変化してLCOSの屈折率が変わったり、光源から出射する光の波長がシフトして、当該光のLCOSにおける屈折の仕方が変わったりする場合がある。この場合、LCOSから出射する光の配光パターンが所望の配光パターンから変化してしまうという懸念がある。
【0005】
なお、LCOSを使用した場合だけでなく、出射する光を所望の配光パターンとし得る他の位相変調素子を使用した場合にも、環境温度の変化によって配光パターンが変化してしまう問題が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い車両用灯具を提供しようとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、光を出射する光源と、変更可能な位相変調パターンで前記光を回折し、前記位相変調パターンに基づく配光パターンとされた前記光を出射する位相変調素子と、前記光源の温度と前記位相変調素子の温度とを検知する温度検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部で検知される前記光源の温度と前記位相変調素子の温度とに基づいて、前記位相変調素子から出射する前記光の配光パターンが所定の配光パターンになるように前記位相変調素子の前記位相変調パターンを制御することを特徴とするものである。
【0008】
この車両用灯具によれば、温度検知部で検知される光源の温度に基づいて制御部が位相変調素子の位相変調パターンを制御する。このため、環境温度の変化によって光の波長シフトが生じた場合でも、位相変調素子における当該光の屈折の仕方が変わることが抑制され得る。また、この車両用灯具によれば、温度検知部で検知される位相変調素子の温度に基づいて制御部が位相変調素子の位相変調パターンを制御する。このため、環境温度の変化によって位相変調素子の屈折率が変わることが抑制され得る。したがって、この車両用灯具によれば、環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い。
【0009】
なお、前記温度検知部で検知される前記光源の温度と前記位相変調素子の温度との組み合わせのそれぞれに対して前記位相変調パターンを予め対応付けたテーブルに基づいて、前記制御部が前記位相変調パターンを制御してもよい。
【0010】
所定の温度における位相変調パターンが予め定められた上記テーブルを用いることで、上記制御部による位相変調パターンの制御が容易になり得る。
【0011】
また、前記温度検知部は、前記位相変調素子の温度を検知する素子温度センサを有し、前記素子温度センサは、前記位相変調素子の入射面とは反対側に位置する面のうち、当該入射面における前記光の入射領域と重なる部分に取り付けられてもよい。
【0012】
この場合、位相変調素子の温度をより正確に検知することが可能になり得る。
【0013】
また、上記車両用灯具は、互いに異なる波長の前記光を出射する前記光源を複数備えてもよい。
【0014】
この場合、各光源から波長の異なる光が出射されることにより、所望の色の合成光を生成し得る。また、上述のように、温度検知部で検知される光源の温度及び位相変調素子の温度に基づいて、制御部が位相変調素子の位相変調パターンを制御するため、環境温度が変化した場合でも、上記合成光の配光パターンが所望の配光パターンになり易い。
【0015】
また、上述のように車両用灯具が光源を複数備える場合、前記制御部は、前記温度検知部で検知される複数の前記光源のそれぞれの温度に基づいて、複数の前記光源のうち少なくとも1つの出力を調整してもよい。
【0016】
このように上記制御部が光源の出力を制御することで、光源の温度が変化して当該光源から出射する光の波長がシフトしても、上記合成光のホワイトバランスが維持され得る。
【0017】
また、上述のように車両用灯具が光源を複数備える場合、前記位相変調素子は、複数の前記光源ごとに設けられてもよい。
【0018】
上記の様に位相変調素子を光源ごとに設けることで、位相変調パターンの制御を各位相変調素子ごとに独立して行い得る。このため、位相変調パターンの制御が容易になり得る。
【0019】
また、上述のように車両用灯具が光源を複数備える場合、複数の前記光源のうち少なくとも2つの光源は、前記光の出射を所定の周期で切り替え、前記少なくとも2つの光源から出射する複数の前記光は、共通の前記位相変調素子に入射してもよい。
【0020】
上記の様に少なくとも2つの光源からの光を受光する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることで、車両用灯具に設ける位相変調素子などの数を削減し得、部品数の削減やコストダウンを実現し得る。
【0021】
また、前記位相変調素子はLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされてもよい。
【0022】
LCOSは、液晶分子の配向パターンを変化させることで液晶層に屈折率差を生じさせる位相変調素子であり、環境温度の変化によって屈折率が変わり易い傾向がある。このため、上述のようにLCOSの位相変調パターンが制御されることで、環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明の車両用灯具によれば、環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い車両用灯具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具を概略的に示す縦断面図である。
図2図1に示す灯具ユニットの拡大図である。
図3図1に示す車両用灯具の一部と、灯具制御システムとを含むブロック図である。
図4図2に示す位相変調素子の正面図である。
図5図4に示す位相変調素子の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。
図6】ロービームの配光パターンを示す図である。
図7図3に示す灯具制御システムのテーブルを示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の灯具ユニットを図2と同様に示す図である。
図9】ハイビームの配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下に参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0026】
以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下に参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す図であり、車両用灯具の上下方向の断面を概略的に示す縦断面図である。本実施形態において、車両用灯具は車両用前照灯1とされる。図1に示すように、この車両用前照灯1は、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。
【0028】
筐体10は、ランプハウジング11と、フロントカバー12と、バックカバー13とを主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0029】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
【0030】
本実施形態の灯具ユニット20は、ヒートシンク30と、冷却ファン35と、カバー40と、光学系ユニット50とを主な構成要素として備える。なお、灯具ユニット20は、不図示の構成により筐体10に固定されている。光学系ユニット50で所望の光が生成され、当該光が灯具ユニット20から出射する。
【0031】
本実施形態では、ヒートシンク30は、概ね前後方向に延在する金属製のベース板31を有し、当該ベース板31の下方の面側には複数の放熱フィン32がベース板31と一体に設けられている。また、冷却ファン35は、放熱フィン32と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク30に固定されている。この冷却ファン35の回転による気流によりヒートシンク30は冷却される。また、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはカバー40が配置されている。
【0032】
カバー40は、ヒートシンク30のベース板31上に固定されている。カバー40は概ね矩形の形状をしており、例えばアルミニウム等の金属から成る。カバー40の内側の空間には、上記光学系ユニット50が収容されている。また、カバー40の前方には光学系ユニット50から出射する光が透過可能な開口40Hが形成されている。なお、カバー40の内壁は、黒アルマイト加工等による光吸収性とされることが好ましい。カバー40の内壁が光吸収性とされることで、意図しない反射や屈折等によりカバー40の内壁に照射された光が反射して開口40Hから意図しない方向に出射することを抑制することができる。
【0033】
図2は、上述した灯具ユニット20における光学系ユニット50の拡大図である。図2に示すように、本実施形態における光学系ユニット50は、第1光源52Rと、第2光源52Gと、第3光源52Bと、第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bと、合成光学系55と、を主な構成として備える。
【0034】
光源52R,52G,52Bと、位相変調素子54R,54G,54Bとは、図3に示す灯具制御システム70に接続される。なお、図3は、光源52R,52G,52B、位相変調素子54R,54G,54B、及び灯具制御システム70を含むブロック図である。
【0035】
第1光源52Rは、所定波長のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色成分のレーザ光を上方に出射する。第2光源52Gと第3光源52Bとは、それぞれ所定波長のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、第2光源52Gはパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色成分のレーザ光を後方に出射し、第3光源52Bはパワーのピーク波長が例えば445nmの青色成分のレーザ光を後方に出射する。本実施形態では、上記灯具制御システム70から光源52R,52G,52Bに電力が供給される。これら光源52R,52G,52Bは、不図示の構成によりカバー40に固定されている。
【0036】
図2に示すように、光源52Rには、光源52Rの温度を検知可能な光源温度センサ72Bが取り付けられている。同様に、光源52G,52Bには、光源温度センサ72G,72Bが取り付けられている。なお、光源温度センサ72R,72G,72Bとして使用するセンサは特に限定されないが、例えば、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタなどを使用してもよい。
【0037】
第1光源52Rの上方には、第1コリメートレンズ53Rが配置されている。第2光源52Gの後方には、第2コリメートレンズ53Gが配置されている。第3光源52Bの後方には、第3コリメートレンズ53Bが配置されている。これらコリメートレンズ53R,53G,53Bは、不図示の構成によりカバー40に固定されており、レーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向をコリメート可能とされる。
【0038】
なお、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズと、スロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとが個別に設けられることで、上記レーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向がコリメートされてもよい。
【0039】
第1位相変調素子54Rは、前後方向及び上下方向に対して略45°傾斜した状態で第1コリメートレンズ53Rの上方に配置されている。第2位相変調素子54Gは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°傾斜した状態で第2コリメートレンズ53Gの後方に配置されている。第3位相変調素子54Bは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°に傾斜した状態で第3コリメートレンズ53Bの後方に配置されている。本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる。
【0040】
位相変調素子54Rには、位相変調素子54Rの温度を検知可能な素子温度センサ73Rが取り付けられている。同様に、位相変調素子54G,54Bには、素子温度センサ73G,73Bが取り付けられている。本実施形態の素子温度センサ73R,73G,73Bは、位相変調素子54R,54G,54Bの入射面とは反対側に位置する面のうち、当該入射面におけるレーザ光の入射領域と重なる部分に取り付けられる。このような位置に素子温度センサ73R,73G,73Bを取り付けることで、レーザ光が入射して反射する領域の直近に素子温度センサ73R,73G,73Bが位置することとなり、レーザ光の照射による位相変調素子の温度上昇を正確に検知し得る。
【0041】
なお、素子温度センサ73R,73G,73Bとして使用するセンサは特に限定されないが、例えば、光源温度センサ72R,72G,72Bと同様に、NTCサーミスタなどを使用してもよい。
【0042】
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子54Rの前方かつ第2位相変調素子54Gの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと同一方向に略45°傾いた状態で配置される。この第1光学素子55fは、例えば、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタとされ、所定波長よりも長い波長の光を透過し、該所定波長よりも短い波長の光を反射するように上記酸化膜の種類や厚みが調整される。本実施形態において、第1光学素子55fは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光を透過し、第2光源52Gから出射する緑色成分の光を反射するように構成される。
【0043】
第2光学素子55sは、第1光学素子55fの前方かつ第3位相変調素子54Bの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと同一方向に略45°傾いた状態で配置される。この第2光学素子55sは、第1光学素子と同様に、波長選択フィルタとされる。本実施形態において、第2光学素子55sは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光及び第2光源52Gから出射する緑色成分の光を透過し、第3光源52Bから出射する波長445nmの青色成分の光を反射するように構成される。
【0044】
次に、上記第1位相変調素子54R、第2位相変調素子54G、及び第3位相変調素子54Bの構成について詳細に説明する。
【0045】
本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bは同様の構成とされる。このため、以下では第1位相変調素子54Rについてのみ詳細に説明し、第2位相変調素子54G及び第3位相変調素子54Bについては説明を適宜省略する。
【0046】
図4は、第1位相変調素子54Rの正面図である。図4に示すように、第1位相変調素子54Rは、正面視において略長方形に形成されており、第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色レーザ光が入射する略円形の入射領域53Aを含んでいる。また、第1位相変調素子54Rは、上記長方形内にマトリックス状に配置された複数の変調部を有している。上記入射領域53A内には、少なくとも1つの変調部が含まれる。各変調部は、マトリックス状に配置された複数のドットを含んでおり、入射する赤色レーザ光を反射しつつ回折し、回折された光を出射する。また、位相変調素子54Rには駆動回路60Rが電気的に接続されている。この駆動回路60Rは、上記位相変調素子54Rの短辺の一方側に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子54Rの長辺の一方側に接続されるデータ線駆動回路とを有する。
【0047】
図5は、図4に示す位相変調素子の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。図4に示すように、本実施形態の位相変調素子54Rは、シリコン基板62と、駆動回路層63と、複数の電極64と、反射膜65と、液晶層66と、透明電極67と、透光性基板68と、を主な構成として備える。
【0048】
複数の電極64は、シリコン基板62の一方の面側に上記各ドットに対応してマトリックス状に配置されている。すなわち、各ドットは対応する電極64を含んでいる。駆動回路層63は、図3に示す駆動回路60Rの走査線駆動回路及びデータ線駆動回路に接続される回路が配置される層であり、シリコン基板62と複数の電極64との間に配置される。透光性基板68は、シリコン基板62の一方の側で当該シリコン基板62と対向するように配置され、例えばガラス基板とされる。透明電極67は、透光性基板68のシリコン基板62側の面上に配置される。液晶層66は、複数の液晶分子66aを有し、複数の電極64と透明電極67との間に配置される。反射膜65は、複数の電極64と液晶層66との間に配置され、例えば誘電体多層膜とされる。コリメートレンズ53Rから出射するレーザ光は、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の面から入射する。
【0049】
図4に示すように、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の面から入射する光RLは、透明電極67及び液晶層66を透過し、反射膜65で反射され、液晶層66及び透明電極67を透過して透光性基板68から出射される。ここで、特定の電極64と透明電極67との間に電圧が印加されると、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の液晶分子66aの配向が変化する。この液晶分子66aの配光の変化により、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の屈折率が変化し、液晶層66を透過する光RLの光路長が変化する。上記のように、複数の電極64は、変調部の各ドットに対応して配置されているため、各ドットに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧が制御されることで、液晶分子66aの配向が変化し、各ドットから出射する光RLの位相の変化量が各ドットに応じて調整され得る。このように各ドットにおける液晶層66の屈折率が調整され、第1位相変調素子54Rの位相変調パターンが変化することで、第1位相変調素子54Rから出射する光が所定の配光パターンにされ得る。
【0050】
本実施形態の第1位相変調素子54Rは、各変調部から同じ位相変調パターンが形成されるように構成される。上述のように、入射領域53A内には少なくとも1つの変調部が含まれるため、赤色レーザ光が第1位相変調素子54Rに入射すると、当該赤色レーザ光は、上記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。以下、所定の配光パターンとされた位相変調素子54Rから出射する赤色レーザ光を第1の光DLRという。
【0051】
第1位相変調素子54Rと同様に、本実施形態の第2位相変調素子54Gは、各変調部から同じ位相変調パターンが形成されるように構成される。また、第2位相変調素子54Gの入射領域内には少なくとも1つの変調部が含まれる。このため、緑色レーザ光が第2位相変調素子54Gに入射すると、当該緑色レーザ光は、上記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。以下、所定の配光パターンとされた位相変調素子54Gから出射する緑色レーザ光を第2の光DLGという。
【0052】
第1位相変調素子54Rと同様に、本実施形態の第3位相変調素子54Bでは、各変調部から同じ位相変調パターンが形成されるように構成される。また、第3位相変調素子54Bの入射領域内には少なくとも1つの変調部が含まれる。このため、青色レーザ光が第3位相変調素子54Bに入射すると、当該青色レーザ光は、上記位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。以下、所定の配光パターンとされた位相変調素子54Bから出射する青色レーザ光を第3の光DLBという。
【0053】
以上のように、位相変調素子54R,54G,54Bは、変更可能な位相変調パターンで光を回折し、当該位相変調パターンに基づく配光パターンとされた光DLR,DLG,DLBを出射する。
【0054】
次に、上述した灯具制御システム70について説明する。本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bや光源52R,52G,52Bなどがこの灯具制御システム70によって制御される。
【0055】
図3に示すように、本実施形態における灯具制御システム70は、制御部71と、上述した第1位相変調素子54Rに接続される駆動回路60Rと、第2位相変調素子54Gに接続される駆動回路60Gと、第3位相変調素子54Bに接続される駆動回路60Bと、第1光源52Rに接続される電源回路61Rと、第2光源52Gに接続される電源回路61Gと、第3光源52Bに接続される電源回路61Bと、記憶部74と、温度検知部75と、を含む。なお、上記制御部71は、灯具ユニット20に備えられても良く、車両の電子制御装置の一部とされても良い。
【0056】
駆動回路60R,60G,60Bは、制御部71に接続されており、制御部71から入力する信号に基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bに印加する電圧を調整する。位相変調素子54R,54G,54Bは、駆動回路60R,60G,60Bによって印加される電圧に応じた位相変調パターンを形成する。本実施形態では、この位相変調パターンによって、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBが、それぞれロービームの配光パターンとされる。
【0057】
電源回路61R,61G,61Bは、制御部71と不図示の電源とに接続されている。これら電源回路61R,61G,61Bは、制御部71から入力する信号に基づいて、上記電源から光源52R,52G,52Bに電力を供給するとともに、電力量を調整する。
【0058】
温度検知部75は、光源52R,52G,52Bのそれぞれの温度と、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの温度とを検知する。この温度検知部75は、上述した光源温度センサ72R,72G,72Bと、上述した素子温度センサ73R,73G,73Bと、を含んでいる。光源温度センサ72Rは第1光源52Rの温度を検知するセンサであり、光源温度センサ72Gは第2光源52Gの温度を検知するセンサであり、光源温度センサ72Bは第3光源52Bの温度を検知するセンサである。また、素子温度センサ73Rは第1位相変調素子54Rの温度を検知するセンサであり、素子温度センサ73Gは第2位相変調素子54Gの温度を検知するセンサであり、素子温度センサ73Bは第3位相変調素子54Bの温度を検知するセンサである。光源温度センサ72R,72G,72B及び素子温度センサ73R,73G,73Bは、それぞれ制御部71に接続されており、検知した光源や位相変調素子の温度データを制御部71に出力する。
【0059】
なお、図2では、光源温度センサ72R,72G,72B及び素子温度センサ73R,73G,73Bが光源52R,52G,52B及び位相変調素子54R,54G,54Bに取り付けられている例が示されているが、検知対象の温度を検知することができるのであれば、光源52R,52G,52B及び位相変調素子54R,54G,54Bから離間して配置されてもよい。
【0060】
図3に示すように、記憶部74は、制御部71に接続されている。この記憶部74には、光源52R,52G,52Bや位相変調素子54R,54G,54Bを制御するためのテーブルなどが格納されており、記憶部74は、制御部71から入力された信号に基づいて、上記テーブルなどのデータを制御部71に出力する。
【0061】
次に、車両用前照灯1における光の出射について説明する。具体的には、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
【0062】
灯具制御システム70の電源回路61Rから第1光源52Rに電力が供給されると、第1光源52Rによって赤色レーザ光が生成される。図2に示すように、この赤色レーザ光は上方に出射し、第1コリメートレンズ53Rでコリメートされる。また、灯具制御システム70の電源回路61Gから第2光源52Gに電力が供給されると、第2光源52Gによって緑色レーザ光が生成され、この緑色レーザ光が後方に出射する。この緑色レーザ光は、第2コリメートレンズ53Gでコリメートされる。また、灯具制御システム70の電源回路61Bから第3光源52Bに電力が供給されると、第3光源52Bによって青色レーザ光が生成され、この青色レーザ光が後方に出射する。この青色レーザ光は、第3コリメートレンズ53Bでコリメートされる。
【0063】
コリメートされた赤色レーザ光は、コリメートレンズ53Rの上方に配置された第1位相変調素子54Rに入射し、第1位相変調素子54Rで回折されて第1の光DLRとなる。この第1の光DLRが第1位相変調素子54Rから前方に出射する。コリメートされた緑色レーザ光は、コリメートレンズ53Gの後方に配置された第2位相変調素子54Gに入射し、第2位相変調素子54Gで回折されて第2の光DLGとなる。この第2の光DLGが第2位相変調素子54Gから上方に出射する。コリメートされた青色レーザ光は、コリメートレンズ53Bの後方に配置された第3位相変調素子54Bに入射し、第3位相変調素子54Bで回折されて第3の光DLBとなる。この第3の光DLBが第3位相変調素子54Bから上方に出射する。
【0064】
赤色成分の光である第1の光DLRは、上述のように、位相変調素子54Rの前方に配置された第1光学素子55fを透過する。また、緑色成分の光である第2の光DLGは、上述のように、位相変調素子54Gの上方に配置された第1光学素子55fで反射する。このため、第2の光DLGは、第1光学素子55fで90度方向転換して前方に伝搬する。その結果、光DLR,DLGからなる第1合成光LS1が前方に伝搬する。
【0065】
第1光学素子55fの前方に配置された第2光学素子55sは、上述のように、赤色成分の光及び緑色成分の光を透過する。このため、第1合成光LS1は、第2光学素子55sを透過する。また、青色成分の光である第3の光DLBは、上述のように、位相変調素子54Bの上方に配置された第2光学素子55sで反射する。このため、第3の光DLBは、第2光学素子55sで90度方向転換して前方に伝搬する。その結果、光DLR,DLG,DLBからなる第2合成光LS2が前方に伝搬する。
【0066】
第2合成光を形成する光DLR,DLG,DLBは、上述のように、いずれもロービームの配光パターンを有している。このため、開口40Hから出射する第2合成光LS2が所定の距離だけ前方に伝搬することで、光DLR,DLG,DLBが重なり合い、図6に示すような白色光であるロービームLが形成され得る。なお、図6において、配光パターンは太線で示されており、直線Sは水平線を示す。また、領域LA1は最も光強度が大きい領域であり、領域LA2、領域LA3の順に光強度が小さくなる。
【0067】
ところで、車両用前照灯1の環境温度が変化すると、光源の温度や位相変調素子の温度が変化し得る。光源の温度が変化すると、当該光源から出射する光の波長がシフトし得るため、当該光の位相変調素子における屈折の仕方が変わり得る。また、位相変調素子であるLCOSの温度が変化すると、液晶分子の配向が変化して当該LCOSの位相変調パターンが変わり得るため、上記LCOSの屈折率が変化し得る。このため、ある環境下で上述のようなロービームLが形成されている場合でも、車両用前照灯1の環境温度が変化した場合には、ロービームLなどの所望の配光パターンが得られにくくなる。
【0068】
本実施形態における車両用前照灯1によれば、上述のテーブルに基づいて、所望の配光パターンが得られるように上記位相変調パターンが調整される。以下、これらのテーブルについて説明する。
【0069】
本実施形態における記憶部74には、図7に示す位相変調素子54Rの温度と光源52Rの温度とによって関連付けられるテーブルTB、位相変調素子54Gの温度と光源52Gの温度とによって関連付けられるテーブル、及び、位相変調素子54Bの温度と光源52Bの温度とによって関連付けられるテーブルが格納されている。
【0070】
図7に示すように、テーブルTBは、素子温度センサ73Rで検知される位相変調素子54Rの温度の3つの温度帯A〜Cと、光源温度センサ72Bで検知される光源52Rの温度の3つの温度帯a〜cとのそれぞれの組み合わせに対して、ロービームLが形成され得る位相変調パターンを予め対応付けたマトリクス状のテーブルとされる。以下、温度帯A〜Cと温度帯a〜cとのそれぞれの組み合わせを、検知温度(A,a)、検知温度(B,c)などと記載する。テーブルTBは、例えば検知温度(A,a)である場合、位相変調素子54Rの位相変調パターンがパターン1にされることで、光DLRの配光パターンが、ロービームLが形成され得る配光パターンになることを示している。本実施形態では、温度帯A,B,Cのうち、温度帯Aが最も低温域とされ、温度帯Cが最も高温域とされる。また、温度帯a,b,cのうち、温度帯aが最も低温域とされ、温度帯cが最も高温域とされる。
【0071】
なお、図7に示されるテーブルTBは、パターン1〜9の9つの位相変調パターンが、温度帯A〜Cと温度帯a〜cとの組み合わせのそれぞれに対応付けられたテーブルであるが、これは例示的なものであり、対応付けられる位相変調パターンの数は適宜変更することができる。例えば、位相変調素子54Rの温度の温度帯を2つ又は4つ以上に区分けし、光源52Rの温度の温度帯を2つ又は4つ以上に区分けすることで、対応付けられる位相変調パターンの数を変更することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、位相変調素子54Gの温度と光源52Gの温度とによって関連付けられる上記テーブルも、テーブルTBと同様に、素子温度センサ73Gで検知される位相変調素子54Gの温度の3つの温度帯と、光源温度センサ72Gで検知される光源52Gの温度の3つの温度帯とのそれぞれの組み合わせに対して、ロービームLが形成され得る位相変調パターンを予め対応付けたマトリクス状のテーブルとされる。また、位相変調素子54Bの温度と光源52Bの温度とによって関連付けられる上記テーブルも、テーブルTBと同様に、素子温度センサ73Bで検知される位相変調素子54Bの温度の3つの温度帯と、光源温度センサ72Bで検知される光源52Bの温度の3つの温度帯とのそれぞれの組み合わせに対して、ロービームLが形成され得る位相変調パターンを予め対応付けたマトリクス状のテーブルとされる。
【0073】
次に、上記テーブルに基づく灯具制御システム70の制御について説明する。
【0074】
例えば、検知温度(A,a)である場合に上述のロービームLが得られていたと仮定し、これを初期状態とする。この初期状態から車両用前照灯1の環境温度が変化して、位相変調素子54Rの温度が例えば温度帯Bに属する温度まで上昇すると、素子温度センサ73Rが上昇後の温度を検知する。また、上記環境温度が変化して、光源52Rの温度が例えば温度帯bに属する温度まで上昇すると、光源温度センサ72Rが上昇後の温度を検知する。上述のように、素子温度センサ73R及び光源温度センサ72Rは、検知した温度のデータ信号をそれぞれ制御部71に出力する。
【0075】
上記温度のデータ信号が制御部71に入力されると、制御部71は、記憶部74に記憶されたテーブルTBに基づいて、位相変調素子54Rの位相変調パターンを判断する。上述のように、素子温度センサ73Rが検知した温度は温度帯Bに属し、光源温度センサ72Rが検知した温度は温度帯bに属する。したがって、制御部71は、検知温度(B,b)に対応するパターン5が、新たな環境温度に適した位相変調素子54Rの位相変調パターンと判断する。つまり、パターン5がロービームLを形成するのに適した位相変調パターンであると判断する。こうして、制御部71は、位相変調パターンをパターン5に調整させる駆動信号を駆動回路60Rに出力する。なお、上述のように、この駆動回路60Rは位相変調素子54Rに接続されている。
【0076】
上記駆動信号に基づいて、駆動回路60Rは、位相変調素子54Rに印加される電圧を変化させる。その結果、位相変調素子54Rの液晶分子66aの配向が変化し、位相変調素子54Rの位相変調パターンが、初期状態のパターン1からパターン5に変わる。
【0077】
上記環境温度の変化によって、位相変調素子54G,54B及び光源52G,52Bの温度が他の温度帯に属する温度に変化した場合には、位相変調素子54G,54Bに対して、制御部71が上記と同様の制御を行う。その結果、位相変調素子54G,54Bの位相変調パターンが、新たな環境温度に適した位相変調パターンに変わる。つまり、光DLG,DLBの配光パターンがロービームLの配光パターンになり得る位相変調パターンに変わる。
【0078】
以上のように、位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンが新たな環境温度に適した位相変調パターンに変わることで、新たな環境温度においてもロービームLが形成され得る。
【0079】
なお、上記制御は例示的なものであり、制御部71が、温度検知部75で検知される光源52R,52G,52Bの温度と位相変調素子54R,54G,54Bの温度とに基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光の配光パターンがロービームLの配光パターンになるように位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを制御できるのであれば、その他任意のアルゴリズムを使用することができる。ただし、上記のようなテーブルを記憶部74に予め記憶させておくことで、制御部71は当該テーブルを適宜読み出して適切な位相変調パターンを判断し得る。このため、位相変調パターンの制御が容易になり得る。
【0080】
ところで、光源の温度が変化すると、上述のように、当該光源から出射する光に波長シフトが起こるため、ロービームLのホワイトバランスが崩れる傾向がある。しかし、例えば、光源52R,52G,52Bの出力比を所定の比率にすることで、上記ホワイトバランスを維持し得る。本実施形態における車両用前照灯1によれば、灯具制御システム70によって上記出力比が環境温度に応じて調整され、ロービームLのホワイトバランスが維持され得る。以下、この点について説明する。
【0081】
本実施形態における記憶部74には、光源52Rの温度と当該温度において光源52Rから出射する赤色レーザ光の波長とが予め対応付けられたテーブル、光源52Gの温度と当該温度において光源52Gから出射する緑色レーザ光の波長とが予め対応付けられたテーブル、及び光源52Bの温度と当該温度で光源52Bから出射する青色レーザ光の波長とが予め対応付けられたテーブルが格納されている。
【0082】
また、本実施形態では、赤色レーザ光の波長、緑色レーザ光の波長、及び青色レーザ光の波長がそれぞれ所定の波長である場合におけるホワイトバランスが維持され得る上記出力比が予め求められており、この出力比のデータが記憶部74に格納されている。例えば、記憶部74には、赤色レーザ光の波長がλR1nm、緑色レーザ光の波長がλG1nm、青色レーザ光の波長がλB1nmの場合における上記出力比のデータや、赤色レーザ光の波長がλR2nm、緑色レーザ光の波長がλG2nm、青色レーザ光の波長がλB2nmの場合における上記出力比のデータ等、赤、緑、及び青の各光の波長の組み合わせのそれぞれに対応する上記出力比のデータが複数格納されている。
【0083】
上述の初期状態から光源52R,52G,52Bの温度が変化すると、光源温度センサ72R,72G,72Bが変化後の光源52R,52G,52Bの温度を検知し、これらの温度のデータ信号を制御部71に出力する。
【0084】
光源温度センサ72Rからデータ信号が制御部71に入力されると、制御部71は、記憶部74に格納された上記テーブルから変化後の温度における赤色レーザ光の波長を判断する。同様に、制御部71は、変化後の温度における緑色レーザ光及び青色レーザ光の波長を判断する。制御部71は、赤、緑、及び青の各光の新たな波長を判断した後、当該新たな波長の組み合わせに対応する上記出力比のデータを記憶部74から読み出し、当該出力比データに対応する出力信号を電源回路61R,61G,61Bに出力する。
【0085】
電源回路61R,61G,61Bに上記出力信号が入力されると、電源回路61R,61G,61Bは、光源52R,52G,52Bの出力比が上記出力比データに対応する出力比になるように、光源52R,52G,52Bの少なくとも1つの出力を変化させる。このように光源52R,52G,52Bの出力比が環境温度に応じて調整される結果、新たな環境温度において、ロービームLのホワイトバランスが維持され得る。
【0086】
以上のように、本実施形態における車両用前照灯1によれば、制御部71が、温度検知部75で検知される光源52R,52G,52Bの温度と位相変調素子54R,54G,54Bの温度とに基づいて、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光の配光パターンが所定の配光パターンになるように位相変調素子54R,54G,54Bの位相変調パターンを制御する。このため、車両用前照灯1の環境温度が変化した場合でも、ロービームLのような所望の配光パターンが得られ易い。
【0087】
また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、制御部71が、温度検知部75で検知される光源52R,52G,52Bのそれぞれの温度に基づいて、光源52R,52G,52Bのうち少なくとも1つの出力を調整する。このため、車両用前照灯1の環境温度が変化した場合でも、車両用前照灯1から出射する光のホワイトバランスが維持され得る。
【0088】
また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、光源52R,52G,52Bに対して位相変調素子54R,54G,54Bが1対1対応で設けられるため、位相変調パターンの制御を位相変調素子54R,54B,54Gごとに独立して行い得る。このため、位相変調パターンの制御が容易になり得る。なお、本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bが1対1対応で設けられる例を説明したが、同色のレーザ光を出射する光源を複数設けてもよい。この場合には、当該同色のレーザ光を出射する複数の光源ごとに1つの位相変調素子を設けてもよい。
【0089】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0090】
図8は、本発明の第2実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20を図2と同様に示す図である。なお、図8では、理解を容易にするために、灯具ユニット20のヒートシンク30、カバー40等が省略されている。図8に示すように、第2実施形態における灯具ユニット20は、位相変調素子の数が1つである点において、光源ごとに位相変調素子が設けられる第1実施形態における灯具ユニット20と相違する。以下、第2実施形態における灯具ユニット20の構成について説明する。
【0091】
本実施形態において、第1光源52Rは赤色レーザ光を上方に出射し、第2光源52Gは緑色レーザ光を後方に出射し、第3光源52Bは青色レーザ光を後方に出射する。これら3つの光源52R,52G,52Bは、灯具制御システム70に接続されている。本実施形態において、灯具制御システム70の制御部71は、光源52Rが赤色レーザ光を出射している間は光源52G,52Bからの光を非出射とし、光源52Gが緑色レーザ光を出射している間は光源52R,52Bからの光を非出射とし、光源52Bが青色レーザ光を出射している間は光源52R,52Gからの光を非出射とする。すなわち、本実施形態における光源52R,52G,52Bは、制御部71の制御に基づいて、所定の周期で各光源からの光の出射を切り替える。
【0092】
なお、他の実施形態と同様に、光源52R,52G,52Bから出射したレーザ光は、コリメートレンズ53R,53G,53Bでコリメートされる。
【0093】
コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53G,53Bの後方には、合成光学系55が設けられている。すなわち、コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53Gの後方に第1光学素子55fが設けられ、第1光学素子55fの上方かつコリメートレンズ53Bの後方に第2光学素子55sが設けられる。これら光学素子55f,55sは、前後方向及び上下方向において略45°傾いて配置される。
【0094】
第2光学素子55sの上方には、1つの位相変調素子54Sが設けられている。この位相変調素子54Sは、合成光学系55を通過した赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光が入射可能な位置に配置される。本実施形態における位相変調素子54Sは、例えば反射型のLCOSとされる。この位相変調素子54Sは、前後方向及び上下方向において略45°傾いて配置されており、その傾き方向は光学素子55f,55sと反対方向とされる。
【0095】
位相変調素子54Sには、当該位相変調素子54Sの温度を検知する素子温度センサ73Sが取り付けられている。この素子温度センサ73Sは、第1実施形態の素子温度センサ73R,73G,73Bと同様に、位相変調素子54Sの入射面とは反対側に位置する面のうち、当該入射面におけるレーザ光の入射領域と重なる部分に取り付けられる。本実施形態における温度検知部75は、この素子温度センサ73Sと、光源温度センサ72R,72G,72Bとを含んでいる。素子温度センサ73Sは、検知した位相変調素子54Sの温度データを制御部71に出力する。
【0096】
次に、本実施形態の灯具ユニット20における光の出射について説明する。
【0097】
上述のように、本実施形態における光源52R,52G,52Bは、制御部71の制御に基づいて、所定の周期で各光源からの光の出射を切り替える。例えば、まず、第1光源52Rから赤色レーザ光が所定時間にわたって出射する。この間、光源52G,52Bからのレーザ光は非出射とされる。この赤色レーザ光は、コリメートレンズ53Rでコリメートされた後、合成光学系55を透過して位相変調素子54Sに入射する。
【0098】
位相変調素子54Sに赤色レーザ光が入射すると、この赤色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームLを形成する配光パターンを有する第1の光DLRが前方に出射する。
【0099】
所定の時間が経過すると、光源52Rからの光が非出射の状態になり、光源52Rから光が出射する代わりに、光源52Gから緑色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。この緑色レーザ光は、コリメートレンズ53Gでコリメートされた後、合成光学系55を透過して、位相変調素子54Sに入射する。
【0100】
位相変調素子54Sに緑色レーザ光が入射すると、この緑色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームLを形成する配光パターンを有する第2の光DLGが前方に出射する。
【0101】
さらに所定の時間が経過すると、光源52Gからの光が非出射の状態になり、光源52Gから光が出射する代わりに、光源52Bから青色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。この青色レーザ光は、コリメートレンズ53Bでコリメートされた後、合成光学系55を透過して、位相変調素子54Sに入射する。
【0102】
位相変調素子54Sに青色レーザ光が入射すると、この青色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームLを形成する配光パターンを有する第3の光DLBが前方に出射する。
【0103】
制御部71の上記制御により、上記光の出射サイクルが所定の周期で繰り返される。
【0104】
このように、制御部71が光源52R,52G,52Bからの光の出射を所定の周期で切り替えることで、光DLR,DLG,DLBが車両用前照灯1から所定の周期で切り替えられて出射する。この周期が人の視覚の時間分解能よりも短い場合、残像効果が生じ、人は異なる色の光があたかも合成されて照射されていると認識し得る。したがって、本実施形態における上記周期を人の時間分解能よりも短くすることで、人は、白色光であるロービームLが車両用前照灯1から出射されていると認識し得る。
【0105】
なお、人の視覚の時間分解能は概ね1/30sであるため、上記周期を1/30s以下とすることが好ましく、1/60s以下とすることがさらに好ましい。なお、上記周期が1/30sよりも大きい場合であっても上記残像効果が生じ得る。例えば、上記周期が1/15sであっても上記残像効果が生じ得る。
【0106】
このような本実施形態の車両用前照灯1によれば、以下のような作用効果が得られ得る。
【0107】
本実施形態における車両用前照灯1は、第1実施形態と同様に、灯具制御システム70を備える。このため、車両用前照灯1の環境温度が変化した場合でも、所望の配光パターンが得られ易く、また、出射する光のホワイトバランスが維持され得る。
【0108】
また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、光源52R,52G,52Bからのレーザ光が共通の位相変調素子54Sに入射するため、位相変調素子の数を1つにすることができる。また、位相変調素子の数が1つであるため、素子温度センサの数も1つにし得る。このため、部品数を削減し得、コストダウンを図り得る。
【0109】
なお、本実施形態では、光源52R,52G,52Bが光の出射を切り替える例を説明したが、光源52R,52G,52Bのうち少なくとも2つが光の出射を切り替えるようにしてもよい。例えば、光源52R,52Gが所定の周期で光の出射を切り替えるように第2実施形態を変形してもよい。この変形例では、光源52R,52Gからの赤色レーザ光及び緑色レーザ光を受光する位相変調素子と、光源52Bからの青色レーザ光を受光する位相変調素子54Bとの2つの位相変調素子から光学系ユニット50を構成し得る。
【0110】
以上、本発明について、第1及び第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
例えば、第1及び第2実施形態では、環境温度が変化した場合でも車両用前照灯1から出射する光のホワイトバランスが維持され得る例を説明したが、環境温度が変化した場合に上記ホワイトバランスが維持されることは必須の要素ではない。ホワイトバランスを維持する機能を省略することで、灯具制御システムなどの構成を簡便化し得る。
【0112】
また、第1及び第2実施形態では、車両用前照灯1が複数の光源を有している例を説明したが、光源は1つ以上あればよい。ただし、互いに異なる波長の光を出射する光源を複数設けることで、所望の色の光を生成し得る。
【0113】
また、第1及び第2実施形態では、位相変調素子としてLCOSを用いた例を説明したが、変更可能な位相変調パターンで光を回折し、当該位相変調パターンに基づく配光パターンとされた光を出射できるのであれば、その他の位相変調素子を用いてもよい。例えば、このような他の位相変調素子としてGLV(Grating Light Valve)を挙げ得る。このGLVは、シリコン基板上に複数の反射体が設けられた反射型の位相変調素子とされる。GLVによれば、複数の反射体のたわみを電気的に制御することによって、異なる回折パターンを形成し得る。
【0114】
また、第1及び第2実施形態では、位相変調素子が反射型である例を説明したが、透過型の位相変調素子を用いてもよい。
【0115】
また、第1及び第2実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームLを照射するものとされたが、本発明は特に限定されない。例えば、他の実施形態における車両用灯具は、図6において破線で示す領域、すなわち、ロービームLが照射される領域よりも上方の領域に、ロービームLよりも強度の低い光を照射するように構成されてもよい。このような低強度の光は、例えば標識認識用の光OHSとされる。この場合、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光に標識認識用の光OHSが含まれていることが好ましい。また、このような実施形態では、ロービームLと標識認識用の光OHSとで夜間照明用の配光パターンが形成されると理解することができる。なお、ここでいう「夜間」とは、単に「夜間」という意味に限定されず、トンネル等の暗所を含むものとする。また、他の別の実施形態における車両用灯具は、図9に示すようなハイビームHを照射するように構成されてもよい。なお、図9において、ハイビームHの配光パターンは太線で示されており、直線Sは水平線を表している。このハイビームHの配光パターンにおいて、領域HA1は光強度が強い領域であり、HA2はHA1よりも光強度が低い領域である。また、さらに別の実施形態では、本発明における車両用灯具を、画像を構成するものとして適用してもよい。このような場合、車両用灯具から出射する光の方向や、該車両における車両用灯具の取り付け位置は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の車両用灯具によれば、環境温度が変化した場合でも所望の配光パターンが得られ易い車両用灯具が提供され、自動車等の分野などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1・・・車両用前照灯(車両用灯具)
20・・・灯具ユニット
50・・・光学系ユニット
52R・・・第1光源
52G・・・第2光源
52B・・・第3光源
54R・・・第1位相変調素子
54G・・・第2位相変調素子
54B・・・第3位相変調素子
54S・・・位相変調素子
71・・・制御部
72R,72G,72B・・・光源温度センサ
73R,73G,73B・・・素子温度センサ
75・・・温度検知部
図1
図2
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図9