特開2020-44996(P2020-44996A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-44996(P2020-44996A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】サスペンションサブフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20200303BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20200303BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
   B60R19/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-175213(P2018-175213)
(22)【出願日】2018年9月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓之
(72)【発明者】
【氏名】田中 正顕
(72)【発明者】
【氏名】黒原 史博
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA06
3D203BA13
3D203BA19
3D203BB16
3D203BB17
3D203BB43
3D203CA23
3D203CA29
3D203CA32
3D203CA57
3D203CB03
3D203CB09
(57)【要約】
【課題】車両重量の増加を抑制しつつ、衝撃時にエクステンションフレームを用いたロードパスを機能させるとともに、衝撃荷重がエクステンションフレームだけでは吸収できないくらい大きいときには、サスペンションサブフレームを車体から離脱させる。
【解決手段】サスペンションサブフレーム構造は、前輪用のサスペンション部材60を支持するサスペンションサブフレーム110を有し、前記サスペンションサブフレーム110は、車体前方側から入力された衝撃荷重を車体後方側に伝達する本体部111と、該本体部111の近傍に配置されて車体に固定される被固定部124と、該被固定部124を前記本体部111に繋げる接続部121とを備え、前記接続部121は、車体前後方向の荷重に対する強度が前記本体部111および前記被固定部124よりも低い脆弱部121f、122gが設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用のサスペンション部材を支持するサスペンションサブフレームを有するサスペンションサブフレーム構造であって、
前記サスペンションサブフレームは、車体前方側から入力された衝撃荷重を車体後方側に伝達する本体部と、該本体部の近傍に配置されて車体に固定される被固定部と、該被固定部を前記本体部に繋げる接続部とを備え、
前記接続部に、車体前後方向の荷重に対する強度が前記本体部および前記被固定部よりも低い脆弱部が設けられていることを特徴とするサスペンションサブフレーム構造。
【請求項2】
前記サスペンションサブフレームに、前記本体部の前端部から車体前方側に延びるエクステンションフレームが連結されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【請求項3】
前記被固定部は、前記本体部の側方に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【請求項4】
前記本体部は、車体前後方向に連続する閉断面を構成しており、
前記被固定部は、締結用のボルトが挿通されるスリーブ部材であり、
前記接続部は、前記ボルトによって前記スリーブ部材の端面に結合された板部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【請求項5】
前記接続部における前記被固定部と前記本体部との間の部位に、補強部材が取り付けられており、
前記接続部における前記補強部材よりも前記被固定部側の部位に前記脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【請求項6】
前記脆弱部に、車体前方側から前記本体部への荷重入力時において前記本体部に対する前記被固定部の車体前方側への相対変位を許容するような破断を促進する破断促進部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサスペンションサブフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサスペンションサブフレーム構造に関し、自動車等の車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、車両の前後方向に延びて車体前部を構成する左右一対のフロントサイドフレームが設けられ、該フロントサイドフレームの下方に、前輪用の左右のサスペンションリンクを支持するためのサスペンションサブフレーム(以下、単に「サブフレーム」ともいう)が配設されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された車体前部構造のサブフレームは、フロントサイドフレームの下方に配置される左右辺部と、該左右辺部の前端を車幅方向に連結する前辺部とで、平面視で後方に開放したU字状に形成されている。このサブフレームは、左右辺部の後端部において、フロントサイドフレームに固定されている。このサブフレームには、前述の左右辺部の前端部から立ち上がって、フロントサイドフレームの下面に接続されるタワー部材が取り付けられている。タワー部材には、該タワー部材の上下方向の中間の位置から前方に延びる一対のエクステンションフレームが取り付けられている。
【0004】
特許文献1の構成において、車体前方からの衝撃荷重は、フロントサイドフレームに直接入力される主たるロードパスと、エクステンションフレームからタワー部材を経由してフロントサイドフレームに至るロードパスとに分散して伝達される。このように、エクステンションフレームを経由するロードパスを設けることで、衝撃荷重を分散させることができる。
【0005】
上述のエクステンションフレームは、車体前方からの衝撃荷重を受けて変形することで、この衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部材として機能し得る。そして、タワー部材は、このエクステンションフレームによる衝撃荷重の吸収を確実に機能させるために、エクステンションフレームを経由して入力される衝撃荷重を受け止める荷重受け部としての機能を有している。
【0006】
この特許文献1の車体前部構造では、エクステンションフレームがタワー部材の中間部に接続されている。そのため、車体前方からの衝撃荷重入力時にタワー部材の屈曲変形を抑制して、エクステンションフレームの衝撃吸収機能を十分に果たすためには、タワー部材を強固に構成する必要ある。しかしながら、タワー部材を強固にすることによる車両重量の増加が生じやすくなることから、車両重量の低減を図る上で改善の余地がある。
【0007】
そこで、タワー部材を廃止する代わりに、エクステンションフレームからサブフレームの左右辺部を経由し、左右辺部の後端部からフロントサイドフレームに至るようなロードパスを形成することが考えられる。この場合、エクステンションフレームの後端部を、前後方向の剛性の高いサブフレームの左右辺部の前端部に直結することが考えられる。これにより、サブフレームは、車体前方側からエクステンションフレームに入力される衝撃荷重を受け止める荷重受け部として機能し、エクステンションフレームによる衝撃吸収を促進させることができる。
【0008】
一方で、前後方向の荷重に対する剛性が高いサブフレームを上記のようにロードパスとして利用する場合、エクステンションフレームで吸収しきれなかった衝撃荷重がサブフレームを経由して車室側に伝達されることで、車室の変形を招きやすくなる。また、高剛性のサブフレームが位置する車体前後方向領域においてフロントサイドフレームの変形が阻害されやすくなり、フロントサイドフレームの衝撃吸収機能が阻害されることによっても、車室が変形しやすくなる。
【0009】
このような課題を解消するためには、エクステンションフレームの変形によって吸収しきれないような大きな荷重が入力されたときに、車体からのサブフレームの離脱を促進させ得る取付構造を採用することが考えられる。例えば、車体前方から衝撃荷重が入力されたときに後方へ倒れるような回転挙動を示す横置き式のパワートレインを搭載した車両では、パワートレインの回転挙動を利用してサブフレームを車体取付点から下方に離脱させ得るような取付構造を採用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−058856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、車体前方からの衝撃荷重入力時において、パワートレインは、上述のような回転挙動に限られず、車体後方側へスライドするような挙動など、パワートレインの搭載態様に応じた種々の挙動を示し得る。そのため、パワートレインの搭載態様によっては、上述したようなパワートレインの回転挙動を利用した取付構造を採用できず、この場合には、車体からのサブフレームの離脱を促進させるための新たな対策が求められる。
【0012】
そこで、本発明は、車体前方からの衝撃荷重入力時において、サスペンションサブフレームを経由するロードパスの形成を図りつつ、車室の変形を効果的に抑制できる全く新たなサスペンションサブフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
まず、請求項1に記載の発明は、
前輪用のサスペンション部材を支持するサスペンションサブフレームを有するサスペンションサブフレーム構造であって、
前記サスペンションサブフレームは、車体前方側から入力された衝撃荷重を車体後方側に伝達する本体部と、該本体部の近傍に配置されて車体に固定される被固定部と、該被固定部を前記本体部に繋げる接続部とを備え、
前記接続部に、車体前後方向の荷重に対する強度が前記本体部および前記被固定部よりも低い脆弱部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記サスペンションサブフレームに、前記本体部の前端部から車体前方側に延びるエクステンションフレームが連結されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または前記請求項2に記載の発明において、
前記被固定部は、前記本体部の側方に配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記本体部は、車体前後方向に連続する閉断面を構成しており、
前記被固定部は、締結用のボルトが挿通されるスリーブ部材であり、
前記接続部は、前記ボルトによって前記スリーブ部材の端面に結合された板部材であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
前記接続部における前記被固定部と前記本体部との間の部位に、補強部材が取り付けられており、
前記接続部における前記補強部材よりも前記被固定部側の部位に前記脆弱部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
前記脆弱部に、車体前方側から前記本体部への荷重入力時において前記本体部に対する前記被固定部の車体前方側への相対変位を許容するような破断を促進する破断促進部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、車体前方側から衝撃荷重が入力されたサスペンションサブフレームでは、本体部と被固定部との間の脆弱部において破断が促進される。そのため、被固定部に対する本体部の相対変位が促進されることで、車体からのサスペンションサブフレームの実質的な離脱を促進させることができる。これにより、車体前方側からの大きな衝撃荷重がサスペンションサブフレームを経由して車室に伝達されたり、サスペンションサブフレームが位置する車体前後方向領域におけるフロントサイドフレーム等の車体の変形がサスペンションサブフレームによって阻害されたりすることを抑制できる。したがって、入力荷重が比較的小さいときにはサスペンションサブフレームを経由したロードパスを利用した荷重分散を図りつつ、入力荷重が比較的大きいときには当該ロードパスを破断させることで、車室の変形を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、上述の脆弱部の破断は、車体前後方向の入力荷重によって生じ得る。そのため、上述した車体からサスペンションサブフレームの離脱に、パワートレインからの上下方向の入力荷重を必要としない。したがって、パワートレインの搭載態様によることなく、上記の車室変形抑制効果を得ることができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、車体前方側からエクステンションフレームに衝撃荷重が入力されたとき、エクステンションフレームの後端部に連結されたサスペンションサブフレームの本体部が荷重受け部として機能することで、エクステンションフレームの変形による衝撃吸収を効果的に果たすことができる。
【0022】
エクステンションフレームによって吸収できる衝撃荷重以上の荷重(以下、「所定以上の衝撃荷重」ともいう)が入力されるとき、仮にサスペンションサブフレームが車体に固定された状態が維持される場合、残りの衝撃荷重は、サスペンションサブフレームの本体部を経由して車室に伝達されることになる。
【0023】
しかしながら、請求項2に記載の発明によれば、サスペンションサブフレームが脆弱部において破断されることで、サスペンションサブフレームが車体から実質的に離脱するので、エクステンションフレームで吸収しきれなかった衝撃荷重が車室に伝達されることを効果的に抑制できる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、本体部の側方に被固定部が配置されているので、サスペンションサブフレームを上下方向にコンパクトに構成することができる。したがって、上下方向のレイアウト自由度の向上を図りつつ、上述の車室変形抑制効果を得ることができる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明によれば、車体前後方向に連続する閉断面を構成する本体部と、スリーブ部材からなる被固定部とに比べて低強度の板部材によって接続部が構成されている。これにより、接続部の破断が効果的に促進されることで、請求項1に記載の効果を実現することができる。
【0026】
また、請求項5に記載の発明によれば、接続部に補強部材が取り付けられているので、通常時におけるサスペンションサブフレームの取付強度を良好に確保しつつ、車体前方からの衝撃荷重入力時には、接続部における補強部材よりも被固定部側の部位において脆弱部の破断を促進することができる。
【0027】
さらに、補強部材は、本体部と被固定部との間に配置されているので、車体前方側からの衝撃荷重入力時に、本体部が被固定部に対して相対的に車体後方側へ変位するとき、被固定部と補強部材の干渉を容易に回避できる。したがって、被固定部に対する本体部の相対変位を利用した脆弱部の破断を効果的に実現できる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明によれば、車体前方側からサスペンションサブフレームの本体部に衝撃荷重が入力されるとき、脆弱部に設けられた破断促進部において、本体部に対する被固定部の車体前方側への相対変位を許容するような破断が促進されることで、車体に対してサスペンションサブフレームを車体後方側へスライドするように離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造を備えた車体前部の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造を備えた車体前部の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造の平面図である。
図4図3におけるサスペンションサブフレーム、エクステンションフレーム、および、第2クロスメンバの接合部の拡大図である。
図5図4における(a)A−A断面図、(b)B−B断面図、(c)C−C断面図、および(d)D−D断面図である。
図6】サスペンションサブフレーム、エクステンションフレーム、第2クロスメンバ、および、前側ブラケットの接合部の要部を拡大した底面図である。
図7図3におけるサスペンションサブフレームの取付部およびその周辺部を拡大して示す一部破断平面図である。
図8図7におけるE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造の詳細を説明する。
【0031】
図1図3を参照しながら、本実施形態のサスペンションサブフレーム構造を備えた前部車体構造1について説明する。
【0032】
図1および図2に示すように、前部車体構造1は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム20、20と、ダッシュパネル(図示せず)の前面に沿って配置されて両フロントサイドフレーム20、20間を連結するダッシュクロス30と、両フロントサイドフレーム20、20の下方に配置されるサスペンションサブフレーム構造体100とを備えている。
【0033】
この実施形態では、車両の駆動方式をフロントエンジンリア駆動(FR)としている。フロントサイドフレーム20、20間のエンジンルームEには、縦置きタイプのエンジン41と、その後部に連結されるトランスミッション42とを備えたパワートレイン4が配置されている(図3参照)。
【0034】
各フロントサイドフレーム20、20は、ダッシュクロス30から前方に向かって略水平に延びる前側直線部21、21と、前側直線部21、21の後端部から車体後方に向かって斜め下方に延びる傾斜部22、22と、傾斜部22、22の下端部からさらに後方に略水平に延びる後側直線部23、23とを有している。
【0035】
各フロントサイドフレーム20、20の前側直線部21、21は、車体幅方向内側に位置するインナパネル24、24と、車体幅方向外側に位置するアウタパネル25、25とを有し、これらが車体幅方向に接合されて構成されている。インナパネル24、24は、車体幅方向外側に開放された断面ハット形状をなし、アウタパネル25、25は、車体幅方向内側に開放された断面ハット形状をなすとともに、それぞれ車体前後方向に延びている。アウタパネル25、25と、インナパネル24、24とは、それぞれの上縁部間、および、それぞれの下縁部間で互いに接合されている。これによって、前側直線部21、21は、フレーム自体で、車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0036】
各フロントサイドフレーム20、20の傾斜部22、22は、上側に開放された断面ハット形状をなしている。傾斜部22、22は、ダッシュパネル31の形状に沿って車体後方側が低くなるように配置され、傾斜部22、22の上縁部は、ダッシュパネル31に接合されている。これにより、傾斜部22、22とダッシュパネル31との間には、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている(図8参照)。
【0037】
フロントサイドフレーム20、20の後側直線部23、23は、その後端部において、車体前後方向に延設された図示しないフロアフレームの前端部に接続されている。この後側直線部23、23およびフロアフレーム上には、図示しないフロアパネルが接合されており、このフロアパネルの前端縁はダッシュパネルに連接されている。後側直線部23、23およびフロアフレームは、上側に開放された断面ハット形状をなしており、フロアパネルとの間には、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。
【0038】
各フロントサイドフレーム20、20の前端には、セットプレート51、51および取付けプレート52、52を介して、車体前方からの衝撃荷重を吸収する筒状体等からなるメインクラッシュカン53、53が連結されている。左右一対のメインクラッシュカン53、53の前端面には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント54が取り付けられている。
【0039】
次に、図1および図2に加えて図3を参照しながら、前述のサスペンションサブフレーム構造体100について説明する。サスペンションサブフレーム構造体100は、フロントサイドフレーム20の下方に配置されるとともに前輪用のサスペンション部材としてのロアアーム60、60を支持する左右一対のサスペンションサブフレーム110、110と、該サスペンションサブフレーム110、110の前端に接合されて車体前方に延びる左右一対のエクステンションフレーム130、130と、左右のフレーム110、110、130、130間を連結する第1〜第3クロスメンバ140、150、160とを備えている。
【0040】
エクステンションフレーム130、130の前端部からは、それぞれサブクラッシュカン55、55が前方に延びている。サブクラッシュカン55、55よりも前方部には、車体幅方向に延びるサブバンパレインフォースメント58が設けられている。左右のサブクラッシュカン55、55は、サブバンパレインフォースメント58を介して互いに連結されている。
【0041】
サスペンションサブフレーム110、110に支持される各ロアアーム60は、車体幅方向に略平行に延びる前側アーム部61と、前側アーム部61の車体幅方向中間部から車体幅方向内側かつ後方へ略水平に延びる後側アーム部62とを有する。ロアアーム60は、全体として、平面視略L字形状に形成されている。
【0042】
ロアアーム60の車体幅方向の内側には、サスペンションサブフレーム110の比較的前側部分に連結する前側連結部61aと、サスペンションサブフレーム110の比較的後側部分に連結する後側連結部62aとが形成されている。前側連結部61aは、前側アーム部61の車体幅方向内側端部に設けられ、後側連結部62aは、後側アーム部62の後端部に設けられている。
【0043】
前側アーム部61の前側連結部61aは、サスペンションサブフレーム110の前端部とエクステンションフレーム130の後端部に跨がって取り付けられた前側ブラケット63によって、車体前後方向に延びる軸周りに揺動自在に支持されている。一方、後側アーム部62の後側連結部62aは、サスペンションサブフレーム110に取り付けられた後側ブラケット64によって、車体前後方向に延びる軸周りに揺動自在に支持されている。
【0044】
図4および図5に示すように、サスペンションサブフレーム110は、ロアアーム60を支持する本体部111を有している。サスペンションサブフレーム110の本体部111の前端部112には、エクステンションフレーム130の後端部が接続されている。なお、本体部111の後端部113は、後述する後側車体取付部X3を介してフロントサイドフレーム20に固定されている。
【0045】
サスペンションサブフレーム110の本体部111は、車体前後方向に延びるように配置された長尺部である。本体部111は、下側に開放する断面コ字状を有するアッパ部材114と、上側に開放する断面コ字状を有する下側のロア部材115とを備えている。アッパ部材114の下縁部とロア部材115の上縁部とは、例えば溶接によって互いに接合されている。本体部111は、アッパ部材114とロア部材115との間において、車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0046】
具体的には、アッパ部材114は、上面部114aと、車体幅方向の外側面部114bおよび内側面部114cとを備え、ロア部材115は、下面部115aと、車体幅方向の外側面部115bおよび内側面部115cとを備えている。アッパ部材114とロア部材115の外側面部114b、115bと、内側面部114c、115cとがそれぞれ接合されて、車体前後方向に連続する閉断面を形成している(図5(d)参照)。
【0047】
アッパ部材114と、ロア部材115とによって、サスペンションサブフレーム110の本体部111の前端部112には、開口部116(図5(a)参照)が形成されている。
【0048】
図5(a)および図5(c)に示すように、エクステンションフレーム130は、サスペンションサブフレーム110の本体部111同様に、下側に開放する断面コ字状を有する上側のアッパ部材131と、上側に開放する断面コ字状を有する下側のロア部材132とにより、フレーム自体で車体前後方向に連続する閉断面を形成している。
【0049】
具体的には、アッパ部材131は、上面部131aと、車体幅方向の外側面部131bおよび内側面部131cとを備え、ロア部材132は、下面部132aと、車体幅方向の外側面部132bおよび内側面部132cとを備えている。アッパ部材131とロア部材132の外側面部131b、132bと、内側面部131c、132cとがそれぞれ接合されて、車体前後方向に連続する閉断面を形成している(図5(c)参照)。
【0050】
なお、エクステンションフレーム130の後端部133は、この後端部133よりも前側の部位に比べて外径が小さくなるように形成されている。
【0051】
サスペンションサブフレーム110における本体部111の前端部112の開口部116(図5(a)参照)にエクステンションフレーム130の後端部133が差し込まれることで、両フレーム110、130が互いに連結されている。この両フレーム110、130間の接続部80では、例えば溶接等により両フレーム110、130が接合されている。これにより、エクステンションフレーム130と、サスペンションサブフレーム110とが車体前後方向に一体的に連なっている(図5(a)参照)。
【0052】
なお、本実施形態においては、エクステンションフレーム130は、サスペンションサブフレーム110よりも車体前後方向の入力荷重に対する剛性が低く設定されている。これにより、車体前後方向に連なるエクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に異なる機能を担わせることができる。具体的には、後側に位置する比較的高剛性のサスペンションサブフレーム110を荷重受け部として機能させ、前側に位置する比較的低剛性のエクステンションフレーム130に荷重吸収機能を発揮させることができる。
【0053】
次に、図3を参照しながら、サスペンションサブフレーム構造体100の左右のサスペンションサブフレーム110、110およびエクステンションフレーム130、130間に設けられた第1〜第3クロスメンバ140、150、160について説明する。
【0054】
左右一対のエクステンションフレーム130、130における前端部134、134には、このエクステンションフレーム130、130の前端部134、134同士を車体幅方向に橋渡しするように略直線状に延びるフレーム状の第1クロスメンバ140が取り付けられている。
【0055】
右側のサスペンションサブフレーム110とエクステンションフレーム130との接続部80、および、左側のサスペンションサブフレーム110とエクステンションフレーム130との接続部は、第2クロスメンバ150を介して互いに連結されている。
【0056】
第2クロスメンバ150は、左右のエクステンションフレーム130、130間を車体幅方向に延びて連結する前辺部151と、該前辺部151の左右両端部から車体後側に延びる左右辺部152、152と、左右辺部152、152間に配置された補強フレーム153とを有する。補強フレーム153は、左右辺部152、152の後端部間を車体幅方向に延びて連結する横フレーム部154と、該横フレーム部154と前辺部151との間を車体前後方向に延びて連結する縦フレーム部155とを有している。
【0057】
図5(b)に示すように、前辺部151は、車体幅方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状の前辺部アッパ部材156と、前辺部アッパ部材156の開放面を塞ぐプレート状のロア部材159とで構成されている。ロア部材159は、車体前後方向において前辺部アッパ部材156よりも広い幅を有し、前辺部アッパ部材156よりも後方に突出して配置されている。また、ロア部材159は、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110とに跨がる車体前後方向領域に配置されている。
【0058】
前辺部アッパ部材156は、上面部156aと、前面部156bと、後面部156cとを有している。前辺部アッパ部材156は、ロア部材159の上面159aに配置されるとともに、前面部156bが、ロア部材159の前端部159bに沿って配置されている。前面部156bおよび後面部156cの下端部が、ロア部材159の上面に接合されることによって、前辺部アッパ部材156とロア部材159との間に、車体幅方向に連続する閉断面が形成されている。
【0059】
図5(c)に示すように、前辺部アッパ部材156の上面部156aは、その車体幅方向両縁部156d、156dにおいて、エクステンションフレーム130、130の上面部131a、131aに接合されている。
【0060】
図5(c)および図5(d)に示すように、ロア部材159の車体幅方向の両端部159c、159cは、エクステンションフレーム130、130の下面部132a、132aと、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の下面部115a、115aとに接合されている。
【0061】
図5(d)に示すように、左右辺部152、152は、前述の前辺部アッパ部材156に一体に連なる左右辺部アッパ部材157、157と、前述のロア部材159とで構成されている。左右辺部アッパ部材157は、車体前後方向に延びるように配置され、その前端部において前辺部アッパ部材156に連なっている。これにより、前辺部アッパ部材156と左右辺部アッパ部材157、157とは、全体として、平面視において車体後方側に開口するU字状に形成されている(図3参照)。
【0062】
左右辺部アッパ部材157では、車体幅方向の外縁部157aに比べて、内縁部157bが低く配置されている。左右辺部アッパ部材157は、外縁部157aから内縁部157bに向かって次第に低くなる斜面部157cを有する。
【0063】
左右辺部アッパ部材157、157の内縁部157b、157bは、ロア部材159の上面159aに接合され、外縁部157a、157aは、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の上面部114a、114aに接合されている。
【0064】
これにより、左右辺部アッパ部材157、157と、ロア部材159と、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111の内側面部114c、115cとによって、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。
【0065】
図3に示すように、第2クロスメンバ150の左右辺部152、152は、平面視において、車体前方側に向かって次第に拡大された幅を有する。これにより、前辺部151と、左右辺部152、152との間のコーナ部に、円弧状の輪郭を有する補強部151A、151Aがそれぞれ形成されている。これにより、サスペンション装置のロアアーム60からの横力に対する剛性が高められているので、サスペンションサブフレーム110およびエクステンションフレーム130の車体幅方向内側への変形が抑制される。
【0066】
前述のように、第2クロスメンバ150は、第2クロスメンバ150の左右辺部152、152の後端部間を繋ぐ横フレーム部154と、該横フレーム部154の中間部と前辺部151の中間部とを繋ぐ縦フレーム部155によって、略T字状をなす補強フレーム153を備えている。
【0067】
図5(b)に示すように、横フレーム部154は、車体幅方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状に形成されている。一方、縦フレーム部155は、車体前後方向に延びるとともに下側に開放された断面コ字状に形成されている。
【0068】
横フレーム部154は、上面部154aと、車体前方の前面部154bと、車体後方の後面部154cとを有し、後面部154cは、ロア部材159の後端部159dに沿って配置されている。横フレーム部154の前面部154bおよび後面部154cは、ロア部材159の上面に接合されている。これにより、横フレーム部154とロア部材159との間に、車体幅方向に連続する閉断面が形成されている。なお、横フレーム部154の両側部154d、154eは、それぞれ左右辺部152、152の斜面部157c、157cに接合されている(図3、4参照)。
【0069】
縦フレーム部155は、上面部155aと、車体幅方向の両側面部155b、155bとを有し、両側面部155b、155bの下端部が、ロア部材159に接合されている。これにより、縦フレーム部155とロア部材159との間に、車体前後方向に連続する閉断面が形成されている。なお、縦フレーム部155の前端部155cは、前辺部151の後面部156cに接合されている。
【0070】
ここで、図4を参照しながら、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に対する第2クロスメンバ150の接合領域Zに関して、詳細に説明する。
【0071】
前述のように、第2クロスメンバ150の前辺部アッパ部材156の外縁部156d、156dおよび左右辺部アッパ部材157、157の外縁部157a、157aは、エクステンションフレーム130、130における後端部133、133の上面部131a、131aおよびサスペンションサブフレーム110、110における前端部112、112の上面部114a、114aにそれぞれ接合されている。
【0072】
ロア部材159の両端部159c、159cは、エクステンションフレーム130、130における後端部133、133の下面部132a、132aおよびサスペンションサブフレーム110、110における前端部112、112の下面部115a、115aに接合されている。
【0073】
これにより、第2クロスメンバ150が、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110との接続部80に跨がるとともに、車体幅方向内側から銜え込むように接合されているので、特に、両フレーム110、130間の接続部80の上下方向および車体幅方向内側への折れが抑制されている。
【0074】
また、エクステンションフレーム130の後端部133と、サスペンションサブフレーム110の前端部112の車体幅方向の外側面132b、131b、114b、115b側には、前述のように、サスペンション装置のロアアーム60が前側ブラケット63を介して支持されている。この前側ブラケット63は、図6の底面図に示すように、エクステンションフレーム130の後端部133と、サスペンションサブフレーム110の前端部112との車体幅方向の外側面132b、131b、114b、115b側の下面部115a、132aにおいて、両フレーム110、130に連続するように接合されている(W)。
【0075】
これにより、エクステンションフレーム130とサスペンションサブフレーム110との接続部80は、車体幅方向内側においては、第2クロスメンバ150の左右辺部152によって補強され、車体幅方向外側においては、前側ブラケット63によって補強されている。その結果、両フレーム130、110間の接続部80における折れ変形をより効果的に抑制することができる。なお、車体幅方向外側には、前側ブラケット63を用いることで、部品を追加することなく両フレーム110、130の接続部80の補強が果たされている。
【0076】
図4に示すように、第2クロスメンバ150の車体幅方向外側端部は、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に跨がって接合されている。すなわち、エクステンションフレーム130およびサスペンションサブフレーム110に対する第2クロスメンバ150の接合領域Zは、エクステンションフレーム130に接合されるエクステンションフレーム側接合領域81と、サスペンションサブフレーム110に接合されるサスペンションサブフレーム側接合領域82とを有している。
【0077】
この接合領域Zの車体前後方向の寸法は、サスペンションサブフレーム側接合領域82に比して、エクステンションフレーム側接合領域81が短く設定されている。
【0078】
エクステンションフレーム側接合領域81が必要以上に長く形成されることが回避されていることにより、車体前方からの衝撃荷重入力時におけるエクステンションフレーム130の変形が第2クロスメンバ150によって阻害されることが抑制されている。したがって、エクステンションフレーム130の衝撃吸収機能を良好に発揮することが可能となっている。
【0079】
一方、サスペンションサブフレーム側接合領域82が比較的長く形成されていることにより、車体前後方向の荷重に対するサスペンションサブフレーム110の強度および剛性の向上が図られている。そのため、車体前方からの衝撃荷重入力時において、サスペンションサブフレーム110、110が荷重受け部としての機能を良好に発揮することができ、これにより、エクステンションフレーム130、130が衝撃吸収機能を良好に発揮することが可能となっている。
【0080】
図3に示すように、サスペンションサブフレーム110、110の後端部113、113には、後端部113、113同士を車体幅方向に接続する第3クロスメンバ160が連結されている。第3クロスメンバ160は、車体幅方向に延びるプレート部材であり、サスペンションサブフレーム110、110の後端部113、113に複数のボルト161…161等によって、下方から固定されている。
【0081】
さらに、上述のサブフレーム構造100には、図2に示すように、フロントサイドフレーム20、20への取付部として、左右それぞれに、前側車体取付部X1、X1と、中間車体取付部X2、X2と、後側車体取付部X3、X3との3箇所ずつが設けられており、以下それぞれについて説明する。
【0082】
前側車体取付部X1は、エクステンションフレーム130の前端部134に取り付けられた接続部材71、71によって構成されている。具体的には、接続部材71は、その下部72がエクステンションフレーム130に接続されており、該接続箇所から上方に延在したタワー形状に形成されている。
【0083】
さらに接続部材71は、中空箱型形状に形成されており、その車体幅方向外側部分の上面部73が、マウントブッシュ74を介してフロントサイドフレーム20のアウタパネル25の下面25aに対して締結部材75によって取り付けられている。
【0084】
なお、接続部材71の縦壁状の前面76には、取り付けプレート57を介して、サブクラッシュカン55が接続されている。
【0085】
中間車体取付部X2は、パワートレインマウントブラケット(以下、単に「マウントブラケット」ともいう)90によって構成されている。マウントブラケット90には、パワートレイン4(図3参照)を弾性支持するためのエンジンマウント(図示せず)が収容されている。マウントブラケット90は、サスペンションサブフレーム110の本体部111に固定されている。なお、本実施形態において、マウントブラケット90は、アルミダイキャスト等の鋳造により一体成形されている。ただし、マウントブラケット90の材質はアルミニウムに限られるものでない。
【0086】
マウントブラケット90には、上方に開口した収容空間を有する中空状の収容部91が設けられている。収容部91は、例えば円筒状に形成されている。収容部91には、パワートレイン4側に備えられたパワートレイン側ブラケットに接続されるマウント支持構造体(図示せず)が収容されている。
【0087】
マウントブラケット90には、サスペンションサブフレーム構造体100に締結されるための複数の締結部92、93、94、が設けられている。複数の締結部92、93、94は、マウントブラケット90の前縁部に設けられた前側締結部92と、マウントブラケット90の後縁部に設けられた後側締結部93と、車体前後方向において前側締結部92と後側締結部93との間に設けられた中間締結部94とで構成されている。
【0088】
具体的に、これらの締結部92、93、94は、マウントブラケット90における収容部91の外周部91aの下端部から外側に延びる複数のフランジ部92a、93a、94aで構成されている。これらのフランジ部92a、93a、94aには、ボルト挿通孔(図示せず)が備えられており、該ボルト挿通孔に差し込まれるボルトによってサスペンションサブフレーム構造体100に締結されている。
【0089】
一方、サスペンションサブフレーム110には、マウントブラケット90の前側締結部92および後側締結部93の上述のボルト挿通孔に対応する位置に、該マウントブラケット90を取り付けるためのボルト締結孔111a、111bが設けられている(図4参照)。
【0090】
第2クロスメンバ150の左右辺部152には、中間締結部94のボルト挿通孔に対応する位置に、マウントブラケット90を取り付けるためのボルト締結孔152aが設けられている。中間締結部94は、車体前後方向において横フレーム部154と略同一の位置で、左右辺部152の後端近傍に締結されている。これにより、マウントブラケット90が車体幅方向内側に倒れるように変位すること(所謂「内倒れ」)が抑制されている。
【0091】
マウントブラケット90のボルト挿通孔およびサスペンションサブフレーム110および左右辺部152のボルト締結孔111a、111b、152aに挿通されたボルト92c、93c、94cは、サスペンションサブフレーム110および左右辺部152の下面115a、159に設けられた図示しないウェルドナットに螺合して締め付けられる。これにより、サスペンションサブフレーム110にマウントブラケット90が締結されている。
【0092】
マウントブラケット90には、収容部91の上壁面部91bの車体幅方向外縁から車体幅方向外側かつ上方に延出する張り出し部95が形成されている。張り出し部95における車体幅方向の外端部95aには、上方に突出するように柱状部95bが設けられている。この柱状部95bは、フロントサイドフレーム20における前側直線部21の後部で、アウタパネル25の下面25aにボルト95cによって取り付けられ、中間車体取付部X2を構成している。なお、中間車体取付部X2は、フロントサイドフレーム20に、ラバーブッシュ等の減衰要素を介することなく剛結合されている。
【0093】
図7および図8に示すように、後側車体取付部X3は、サスペンションサブフレーム110の本体部111の後端部113の側方に設けられている。
【0094】
後側車体取付部X3は、上側に配置される上側接続部としての上側プレート部材121と、下側に位置する下側接続部としての下側プレート部材122と、上側プレート部材121と下側プレート部材122との間に配置される補強部材123とを有している。
【0095】
上側プレート部材121および下側プレート部材122は、それぞれ車体上下方向に略直交するように、かつ、互いに平行に配置されている。上側プレート部材121と、下側プレート部材122は、それぞれ、サスペンションサブフレーム110の車体幅方向の外側面114b、115bと平行に延びる側縁部121a、122aと、車体後方に向かって車体幅方向外側に傾斜した方向に延びる前縁部121b、122bと、側縁部121a、122aと前縁部121b、122bの後端部を繋ぐ後縁部121c、122cとを有し、全体として平面視で略三角形状に形成されている。
【0096】
上側プレート部材121の後縁部121cには、該後縁部121cから車体下方に延びる上側接合部121dが設けられている。下側プレート部材122の後縁部122cには、該後縁部122cから車体上方に延びる下側接合部122dが設けられている。上側接合部121dおよび下側接合部122dは、互いに重なり合って溶接されており、これにより、上側プレート部材121と下側プレート部材122とが結合されている。
【0097】
上側プレート部材121および下側プレート部材122の側縁部121a、122aは、それぞれサスペンションサブフレーム110の本体部111における後部の上面114aおよび下面115aに接合されている。これにより、後側車体取付部X3が、サスペンションサブフレーム110の本体部111に接合されている。
【0098】
後側車体取付部X3の上側プレート部材121および下側プレート部材122には、サスペンションサブフレーム110の本体部111から車体幅方向外側に離間した位置にサスペンションサブフレーム110をフロントサイドフレーム20に締結するためのボルト挿通孔121e、122eが設けられている。
【0099】
補強部材123は、上側プレート部材121と下側プレート部材122を連結する部材である。補強部材123は、平面視において上側および下側プレート部材121、122の前縁部121b、122bに平行に延びる前部123aと、該前部123aの後端から車体後方に向かって延びる後部123bとを有し、これらの前部123aと後部123bによって平面視で略く字状に形成されている。補強部材123の後部123bは、サスペンションサブフレーム110の本体部111と、上側プレート部材121及び下側プレート部材122のボルト挿通孔121e、122eとの間の位置に設けられている。
【0100】
補強部材123の上端部123cおよび下端部123dは、それぞれ上側プレート部材121および下側プレート部材122に接合され、前端部123eは、サスペンションサブフレーム110の本体部111の側面114b、115bに接合されている。
【0101】
補強部材123の後部123bの下端部には、該下端部から車体幅方向内側に延びる舌片部123fが設けられており、後部123bは、舌片部123fで下側プレート122の上面に接合されている。なお、下側プレート部材122の舌片部123fに対応する位置には、作業用の開口部122fが設けられ、該開口部122fを通して下方側から舌片部123fを下側プレート部材122に接合することができるようになっている。
【0102】
上側プレート部材121と下側プレート部材122との間、かつ、両プレート121、122のボルト挿通孔121e、122eに対応する位置には、スペーサとしてスリーブ部材124が配置されている。スリーブ部材124は、ボルト125によってフロントサイドフレーム20に固定される被固定部とされている。
【0103】
スリーブ部材124は、その軸心が上側プレート部材121および下側プレート部材122に直交するように、本体部111の側方近傍に配置されている。スリーブ部材124の孔部124aは、上側プレート部材121および下側プレート部材122のボルト挿通孔121e、122eに位置合わせされている。スリーブ部材124の外周面124bには、前述の補強部材の後部123bの後縁部が例えば溶接によって接合されている。これにより、スリーブ部材124は、補強部材123を介して上側プレート部材121および下側プレート部材122に対して位置決めされている。
【0104】
一方、図8に示すように、フロントサイドフレーム20の傾斜部22の後端部には、後側車体取付部X3を固定するためのブラケット26が接合されている。該ブラケット26は、上側に開放される断面コ字状で形成され、底面部26aと両側面部26b、26bを備えている。
【0105】
ブラケット26は、フロントサイドフレーム20の下方に位置するとともに、このブラケット26の両側面部26b、26bが、フロントサイドフレーム20の傾斜部22の車体幅方向の両側面22b、22bに接合されている。
【0106】
ブラケット26の底面部26aには、後側車体取付部X3のボルト挿通孔121e、122eに対応する位置にボルト孔26cが設けられているとともに、その底面部26aの上面26dには、パイプ状のウェルドナット26eが接合されている。
【0107】
後側車体取付部X3では、下側プレート部材122のボルト挿通孔122eと、スリーブ部材124の孔124aと、上側プレート部材121のボルト挿通孔121eと、ブラケット26のボルト孔26cとにボルト125が下方から差し込まれ、該ボルト125の先端部がウェルドナット26eに螺合されることで、フロントサイドフレーム20の下面にサスペンションサブフレーム110が締結固定されている。
【0108】
かかる締結により、スリーブ部材124は、その上面において上側プレート部材121に固定され、下端面において下側プレート部材122に固定されている。これにより、スリーブ部材124は、上側プレート部材および下側プレート部材122を介して本体部111に接続されている。
【0109】
なお、フロントサイドフレーム20における傾斜部22の後端部の下面で、前述のウェルドナット26eに対応した位置には、孔部22aが設けられており、該孔部22aにウェルドナット26eの先端部を挿通させることで、ボルト125の倒れが抑制されている。
【0110】
次に、本実施形態に係るサスペンションサブフレーム構造体100を備えた車体前方側からの衝撃荷重入力時の挙動について説明する。
【0111】
まず、車体前方側からバンパレインフォースメント54に入力された衝撃荷重は、メインクラッシュカン53、53およびフロントサイドフレーム20、20を経由して車体後方側へ伝達される。また、車体前方側からサブバンパレインフォースメント58に入力された衝撃荷重は、サブクラッシュカン55、55、エクステンションフレーム130、130、およびサスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111および後側車体取付部X3、X3を経由してフロントサイドフレーム20、20に伝達される。このように、本実施形態によれば、車体後方側への荷重伝達を、2系統のロードパスに分散して行うことができる。
【0112】
また、車体前方側から比較的大きな衝撃荷重がバンパレインフォースメント54およびサブバンパレインフォースメント58に入力された時は、メインクラッシュカン53、53およびサブクラッシュカン55、55が潰されることで、衝撃吸収が果たされる。このクラッシュカン53、53、55、55の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム20、20およびエクステンションフレーム130、130の前端部に入力され、上記2系統のロードパスを経由して車体後方に向かって伝達される。
【0113】
より大きな衝撃荷重が車体前方側から入力されたときは、フロントサイドフレーム20、20およびエクステンションフレーム130、130変形されることで、衝撃荷重が吸収される。このとき、サスペンションサブフレーム110、110は、上述した閉断面構造により荷重受け部として効果的に機能するので、エクステンションフレーム130、130の衝撃吸収機能が高められている。
【0114】
また、このとき、中間車体取付部X2、X2では、フロントサイドフレーム20、20およびエクステンションフレーム130、130の変形によってボルト95c、95cが車体上下方向に変位することで、フロントサイドフレーム20、20からサスペンションサブフレーム110、110が比較的容易に離脱させられる。
【0115】
中間車体取付部X2、X2は、ラバーブッシュ等の減衰要素を介することなく剛結合されているので、車体前方からの衝撃荷重がラバーブッシュ等で吸収されずに接続部に入力される。本実施形態においては、中間車体取付部X2、X2を構成するマウントブラケット90は、アルミニウムによって形成されているため比較的強度が低く、車体前方からの衝撃荷重によってマウントブラケット90自体が破断しやすい。これにより、フロントサイドフレーム20、20からサスペンションサブフレーム110、110が比較的容易に離脱させられる。
【0116】
なお、前側車体取付部X1、X1では、マウントブッシュ74を介してフロントサイドフレーム20、20とエクステンションフレーム130、130と接続されているので、両者の接続は、中間取付部X2、X2に比べて解除され難らくなっているが、エクステンションフレーム130、130は、サスペンションサブフレーム110、110と異なり、荷重吸収機能を有しているため、フロントサイドフレーム20、20の変形を阻害することはない。
【0117】
さらに、エクステンションフレーム130、130の変形によっても吸収されない程度の大きな衝撃荷重(所定以上の衝撃荷重)がサスペンションサブフレーム110、110に入力された場合、サスペンションサブフレーム110110は、高剛性部であるので大きく変形することなく、パワートレイン4と共に、後退を開始し得る。
【0118】
このとき、後側車体取付部X3、X3では、サスペンションサブフレーム110、110の上側プレート部材121、121および下側プレート部材122、122は、本体部111、111と共に後退しようとする。
【0119】
一方、後側車体取付部X3、X3が取り付けられたフロントサイドフレーム20、20の傾斜部22、22の下端部は、車室の前端近傍を構成する車体部分であることから、変形が抑制されるように構成されている。そのため、後側車体取付部X3、X3の締結に用いられるボルト125、125は脱落し難くなっている。したがって、該ボルト125、125によってフロントサイドフレーム20、20にスリーブ部材124、124が固定された状態は維持されやすくなっている。
【0120】
したがって、車体前方側からエクステンションフレーム130を経由してサスペンションサブフレーム110の本体部111に衝撃荷重が入力された時、本体部111と共に後退する上側プレート部材121および下側プレート部材122に対して、スリーブ部材124およびボルト125は、図7の矢印Fに示すように車体前方側へ相対変位しようとする。
【0121】
ここで、サスペンションサブフレーム110において、スリーブ部材124を本体部111に繋げる上側プレート部材121および下側プレート部材122は、本体部111およびスリーブ部材124に比べて、車体前後方向の荷重に対する強度が低くなっている。特に、上側プレート部材121および下側プレート部材122における補強部材123よりもスリーブ部材124側の車体幅方向部分は、補強部材123による補強がなされていないことから、強度がより低い脆弱部121f、122gとなっている。
【0122】
また、上側プレート部材121および下側プレート部材122の各脆弱部121f、122gにおいて、ボルト125が挿通されたボルト挿通孔121e、122eは、ボルト125による上側プレート部材121および下側プレート部材122の破断を促進する破断促進部として機能し得る。
【0123】
したがって、上記のように上側プレート部材121および下側プレート部材122に対してスリーブ部材124およびボルト125が車体前方側へ相対変位しようとするとき(図7の矢印F参照)、該相対変位を許容するような上側プレート部材121および下側プレート部材122の破断が、脆弱部121f、122gにおけるボルト挿通孔121e、122eの前縁部とボルト125との干渉によって開始される。これにより、脆弱部121f、122gにおけるボルト挿通孔121e、122eよりも前方側部分をボルト125が突き破るような破断が促進される。
【0124】
このようにして、サスペンションサブフレーム110が本体部111とスリーブ部材124との間の脆弱部121f、122gにおいて破断することで、サスペンションサブフレーム110の後側車体締結部X3は、フロントサイドフレーム20から実質的に離脱する。
【0125】
その結果、衝撃荷重の吸収機能を失ったエクステンションフレーム130、130およびサスペンションサブフレーム110、110を車体から離脱させることができる。これにより、サスペンションサブフレーム110、110の後退による車室内側の変形を効果的に抑制することができる。
【0126】
なお、補強部材123、123は、サスペンションサブフレーム110、110の本体部111、111と、スリーブ部材124、124との間の位置に設けられているので、ボルト125、125およびスリーブ部材124、124が相対的に車体前方側へ変位するときに、スリーブ部材124、124と補強部材123、123の干渉を容易に回避することができる。
【0127】
なお、本実施形態においては、エクステンションフレームを備えたサスペンションサブフレーム構造について説明したが、本発明は、エクステンションフレームを備えないサスペンションサブフレーム構造にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上のように、本発明によれば、車両重量の増加を抑制しつつ、衝撃時にエクステンションフレームを用いたロードパスを機能させるとともに、衝撃荷重がエクステンションフレームだけでは吸収できないくらい大きいときには、サスペンションサブフレームを車体から離脱させることができるので、車両の車体の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0129】
60、60 ロアアーム(サスペンション部材)
100 サスペンションサブフレーム構造体
110、110 サスペンションサブフレーム
111、111 本体部
121、121 上側プレート部材(接続部)
122、122 下側プレート部材(接続部)
121f、121f、122g、122g 脆弱部
123、123 補強部材
124、124 スリーブ部材(被固定部)
125、125 ボルト
121e、122e、121e、122e ボルト挿通孔(破断促進部)
130、130 エクステンションフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8