(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-45606(P2020-45606A)
(43)【公開日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】強度およびクリープ抵抗性を改良するための半径方向に勾配を有する完全に稠密な無機フィラメント
(51)【国際特許分類】
D01F 9/10 20060101AFI20200303BHJP
D01F 9/127 20060101ALI20200303BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20200303BHJP
【FI】
D01F9/10 A
D01F9/127
C08J5/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-220632(P2019-220632)
(22)【出願日】2019年12月5日
(62)【分割の表示】特願2017-538687(P2017-538687)の分割
【原出願日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】62/106,910
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】514185688
【氏名又は名称】フリー フォーム ファイバーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エル.シュナイター
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ペーニャ
(72)【発明者】
【氏名】ラムキラン ゴドグチンタ
(72)【発明者】
【氏名】カーク エル.ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ルウェリン ハリソン
【テーマコード(参考)】
4F072
4L037
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB11
4F072AB33
4F072AL02
4F072AL04
4L037CS29
4L037PA12
4L037PA15
4L037PA24
4L037PA28
(57)【要約】
【課題】従来技術の短所に対処し、さらなる利点を提供する。
【解決手段】単一材料のセラミック繊維を形成するステップを含む方法である。前記セラミック繊維は、前記繊維の中心およびその周りに、前記繊維の軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含んでいて、前記繊維の中心およびその周りの前記伸長した結晶の粒子から前記繊維の半径方向周縁部における等軸性の高い粒子へと、連続性を分断せずに滑らかに遷移しており、前記繊維は収束された熱源を用いた化学蒸着法(CVD)によって成長され、前記収束された熱源が、CVD前駆体ガスの存在下で、種基板または繊維先端に向けられて、前記繊維先端上に約10
5から10
6°K/cmの高い温度勾配を課すことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一材料のセラミック繊維を形成するステップを含む方法であって、前記セラミック繊維は、前記繊維の中心およびその周りに、前記繊維の軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含んでいて、前記繊維の中心およびその周りの前記伸長した結晶の粒子から前記繊維の半径方向周縁部における等軸性の高い粒子へと、連続性を分断せずに滑らかに遷移しており、前記繊維は収束された熱源を用いた化学蒸着法(CVD)によって成長され、前記収束された熱源が、CVD前駆体ガスの存在下で、種基板または繊維先端に向けられて、前記繊維先端上に約105から106°K/cmの高い温度勾配を課すことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記収束された熱源は、レーザー、電子ビーム、X線ビーム、電気アーク、または収束可能な有向性の熱出力の任意の他の供給源、またはそれらの複数に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック繊維が炭化ケイ素であり、前記CVD前駆体ガスがシランおよびエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック繊維が、25〜40ミクロン(μm)の直径で、長さ20nmおよび幅5nm、最大で長さ100nmおよび幅20nmの伸長したクリスタリットであり、繊維周縁部に向かって半径方向に移動するにつれてそれぞれ5〜20nmのサイズで、より等軸性になっている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
単一材料で形成された稠密なセラミック繊維であって、前記稠密なセラミック繊維は、前記繊維の中心およびその周りに、前記繊維の軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含んでいて、前記繊維の中心およびその周りの前記伸長した結晶の粒子から前記繊維の半径方向周縁部における等軸性の高い粒子へと、連続性を分断せずに滑らかに遷移していることを特徴とする、稠密なセラミック繊維。
【請求項6】
前記セラミック繊維が、25〜40ミクロン(μm)の直径で、長さ20nmおよび幅5nm、最大で長さ100nmおよび幅20nmの伸長したクリスタリットであり、繊維周縁部に向かって半径方向に移動するにつれてそれぞれ5〜20nmのサイズで、より等軸性になっている、請求項5に記載の繊維。
【請求項7】
複数の繊維を含む複合部品であって、前記複数の繊維のうちの繊維が、単一材料で形成された稠密なセラミック繊維であって、各繊維が、前記繊維の中心およびその周りに、前記繊維の軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含んでいて、前記繊維の中心およびその周りの前記伸長した結晶の粒子から前記繊維の半径方向周縁部における等軸性の高い粒子へと、連続性を分断せずに滑らかに遷移しており、前記複合部品が、セラミックマトリックス複合体、金属マトリックス複合体、またはポリマーマトリックス複合体であることを特徴とする複合部品。
【請求項8】
前記セラミック繊維が、25〜40ミクロン(μm)の直径で、長さ20nmおよび幅5nm、最大で長さ100nmおよび幅20nmの伸長したクリスタリットであり、繊維周縁部に向かって半径方向に移動するにつれてそれぞれ5〜20nmのサイズで、より等軸性になっている、請求項7に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権益
本発明は、NSF第IIB期の契約番号1152698、「デジタル紡糸口金(digital spinneret)」により支援された。
【0002】
本発明は独特な高性能セラミックおよび他の無機繊維、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能繊維(HPF)は、並外れた強度、剛性、耐熱性、および/または耐薬品性を有する先端材料を必要とする、軍事および航空宇宙(ターボ機械、ロケット、先端構造)、自動車、生体医療、エネルギー、およびその他の用途等の数多くの特殊用途における使用を拡張するために提案されている。HPFは、既存の金属フィラメントまたは炭素、ガラス、植物性もしくは鉱物性繊維、または合成ポリマー繊維により満たされない、極度の材料特性の組合せが必要とされるときに希求される。HPF複合体システムは一般に、「マトリックス」中に分散された、複数の被覆繊維を含む。繊維がセラミックで、マトリックスがセラミックである場合、生成した複合体構造はセラミックマトリックス複合体またはCMCと通常呼ばれる。マトリックスが金属である場合、生成した複合体構造は金属マトリックス複合体またはMMCと呼ばれる。マトリックスがポリマー由来である場合、複合体はポリマーマトリックス複合体またはPMCである。
【0004】
複合体は、繊維とマトリックスとの成分の特性からそれらの全体の機械的特性を受け継ぐ。特に、MMCとCMCの設計者によって最も高く評価された繊維特性は、ヤング率によって測定される剛性、繊維に引張破壊まで荷重をかけて測定される引張強度、およびクリープ抵抗性もしくは高温負荷中の「伸長」に対する抵抗性である。
【0005】
既存の市販の無機繊維は、対象とする原子(ともに液体を生成する他の成分と共に)を含む液体のポリマー前駆物質を紡糸口金に通過させるプロセスによって製造され、これは前駆体液体が押し出される複数個の穴を備えたシャワーヘッドを連想させる構造である。揮発性化学種はこのプロセスで蒸発分離され、それによって、残存する不要成分が除去されるよう炉または窯に輸送される「環境に優しい」繊維を製造する。これらの成分は単に漸近的にしか除去することができず、そのため不要成分が繊維に残存し、それによって、繊維特性、特に高温における残存力に悪影響を与え、剛性、引張強度およびクリープ抵抗性等の他の特性に影響する繊維微細構造にも悪影響を与えることを意味する。
【0006】
紡糸口金プロセスによって製造された繊維は、不要成分を含む非結晶性材料で囲まれた、大部分は等軸性の結晶性材料の島となって概して現れる。結晶は、結晶粒が特定の伸びやアスペクト比を示さず、ランダムに配向し繊維の全体にわたって分散しているという点で一般に等軸性である。結晶性材料と非結晶性材料とのこの組合せは、プロセス、後工程および対象とする繊維材料システム(例えば炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン等)に関連した一連の剛性、引張強度およびクリープ抵抗特性をもたらし、それらすべては、本発明によって改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,786,023号明細書
【特許文献2】米国特許第5,399,430号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の短所に対処し、さらなる利点を提供する。本発明において、一態様は、繊維の結晶微細構造における主な改良である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
著しく改良された特性を有する繊維は、化学蒸着法(CVD)または物理蒸着法(PVD)のプロセスによって製造することができる。特に、MaxwellおよびPegna(特許文献1は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、レーザー支援CVD(LCVD)と呼ばれるプロセスを用いて、適切な前駆体ガスと共にレーザーを使用して有向性の固形材料の積み重ねをもたらし得ることを教示している。Nordineら(特許文献2は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、LCVDならびに液体および/または気体の前駆体を用いて、無機繊維を製造することができることを教示している。
【0010】
CVD処理によって生ずる繊維特性を調査するために、本発明者らによって多くの研究が過去5年間に行われた。特に、ある処理レジメン(成長中の繊維成長表面における前駆体ガスおよび温度勾配)では、内部の結晶微細構造が連続性を分断せずに半径方向に変えられ分散されるという点で、生成した繊維が「複合体」構造を示すことが見出された。具体的には、これらのCVDパラメータレジメンで製造された繊維は、繊維の中心ならびにその近辺において伸長した結晶の粒子の構造であり、繊維周縁部に向かって半径方向外側に移動するにつれて、ますます、等軸性の高い粒子(全方向においてほぼ等しい寸法を有す)となるナノ結晶粒の構造を示す。これは、長い滞留時間を伴う熱的に誘導されたCVD成長中に、繊維の中心で見出されるより高い温度によるものであり、繊維の中心は、より半径方向外側の位置での温度および滞留時間と比較して粒子の成長のために十分に高い温度を受けることが理解される。
【0011】
この「複合体」構造により製造された繊維は、完全に稠密であり、材料についての理論的な最大値に近い剛性(ヤング率)および、市販の紡糸口金で製造された繊維で見られるものをはるかに超える引張強度を有することが見出された。さらに、そのような繊維の比較クリープ試験は、かなり良好な性能も示す。特に、LCVDによって形成された炭化ケイ素(SiC)フィラメントの実験は、400GPa台の曲げヤング率を示す。半径方向の粒度分布を考慮に入れると、450〜550GPaの引張ヤング率を期待することができる。3から4GPaの間の引張強度を測定した。これは、Hi−Nicalon Type−S(登録商標)と呼ばれる、最も性能の優れている市販のSiC繊維のうちの1つについては、それぞれ420GPaおよび2.6GPaと比較することができる。NASA屈曲応力緩和(BSR)試験を用いるクリープ抵抗性測定は、Hi−Nicalon Type−Sと比較してLCVD由来の繊維について著しく性能が優れていることもまた表している。
【0012】
その点に関して、本発明は1つの態様において、繊維の中心およびその周りに、繊維軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含み、その結晶の粒子は、繊維の半径方向周縁部に向かってより等軸性の高い粒子に滑らかに遷移していることを特徴とする稠密なセラミックおよび/または他の無機繊維である。
【0013】
本発明は、別の態様において、セラミックおよび/または他の無機繊維(または複数の繊維)を形成するステップを含む方法であって、繊維の中心およびその周りに、繊維軸に沿って配向している、伸長した結晶の粒子を含み、前記結晶粒は、繊維の半径方向周縁部に向かってより等軸性の高い粒子に滑らかに遷移していることを特徴とする方法である。繊維は化学蒸着法(CVD)によって成長されることができる。熱エネルギーの収束された供給源を、CVD前駆体ガスの存在下で、種基板または繊維先端に向けられて、繊維先端上に約10
5から10
6°K/cmの高い温度勾配を課することができ、収束された熱源は、レーザー、電子ビーム、X線ビーム、電気アークもしくは収束可能な有向性の熱出力の任意の他の供給源、またはそれらの複数に由来する。
【0014】
繊維を含む複合部品は、セラミックマトリックス複合体、金属マトリックス複合体またはポリマーマトリックス複合体として形成されてもよい。
【0015】
さらなる特質および利点が、本発明の技法により実現される。本発明のその他の実施形態および態様は、本明細書中で詳細に記述されており、請求されている発明の一部とみなされる。
【0016】
本発明とみなされる主題は、明細書の結論で特に指摘され、明確に請求される。本発明の前述のおよび他の目的、特徴、および利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】反応チャンバ[30]、シード繊維(seed fiber)[50]、収束されたレーザー光線[60]および繊維押出ガイド[40]を例示する、レーザー支援CVD反応器[20]の概略図である。
【
図2】繊維[100]、繊維の中心軸およびその周りに配置された完全に稠密な伸長した結晶の粒子[110]の領域、ならびに繊維の半径方向の端の近くに配置された完全に稠密な等軸性の結晶粒[120]の領域を例示する、本発明の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
半径方向に勾配を有する完全に稠密な無機フィラメントを製造することが可能な方法の1つの例示を、以下に開示する。当業者は、他の技術、例えば、アーク源からの収束された光エネルギーまたは収束された電子ビームもしくはX線ビームを用いて、繊維先端での局所的な前駆体の分解および機能的に勾配を有する結晶粒の成長のために局部加熱を提供することが可能であることを理解するであろう。
【0019】
図1は、無機フィラメントを製造するためのレーザー支援CVD法の簡単かつ好適な実施形態を示す。シード繊維[50]を、適切な前駆体ガスを含むチャンバ[30]へ導入する。収束させたレーザービーム[60]を、チャンバの窓を通して繊維先端[50]に向ける。繊維先端を、ガスが先端で局所的に分解し、その結果化学蒸着を引き起こさせるのに十分な温度にまで加熱する。繊維は、前駆体ガスおよび局所的な繊維の温度勾配によって決定された速度でレーザーに向かって成長することになり、繊維がその速度でレーザーから引き離されれば、それによって、レーザー焦点の中で繊維先端が維持されるので、レーザーが繊維先端を加熱し、CVD成長を供給する十分な前駆体ガスがある間は、ガスから連続的な固体のモノフィラメントを引き出すことができることは明白である。収束されたアーク源または収束された電子ビームもしくはX線ビーム等の任意の有向性の収束された熱源を、レーザーの代わりに使用することができることが理解されるであろう。
図2は、繊維[100]、繊維の中心軸およびその周りに配置された完全に稠密な伸長した結晶の粒子[110]の領域、ならびに繊維の半径方向の端の近くに配置された完全に稠密な等軸性の結晶粒[120]の領域を例示する、本発明の概略図である。
【0020】
具体的には、シリコン原子の供給源としてシランを用い炭素の供与体としてエチレン(それぞれトリクロロシランとメタン等の他のガスを用いてもよいが)を用い、1センチメートル当たり約10
8から10
9ケルビン度(°K/cm)の収束された温度勾配を種基板に課することによって、超高純度の純粋なバルクの炭化ケイ素のそれに近い優れた機械的特性を示す炭化ケイ素フィラメントを成長させることができることが分かった。このようなフィラメントは、約400GPaの曲げヤング率、および3〜5GPaの引張強度を示す。透過型電子顕微鏡(TEM)技術を用いて、このように製造された繊維を調査すると、繊維は繊維の中心で繊維軸に沿って配向している伸長した粒子の構造の完全に稠密な3−Cのβ炭化ケイ素であり、繊維周縁部へ注目を向けるにつれて粒子がより等軸性になっていることが分かる。ある意味では、この繊維は半径によって変化する粒子構造を持った「複合体」構造である。
【0021】
シラン、エチレン、および10
5から10
6°K/cmの成長温度勾配を用いるLCVDによって製造された炭化ケイ素フィラメントの場合、得られた繊維は、直径が約25〜40ミクロン(μm)で、長さ約20nmおよび幅5nm、最大で長さ100nmおよび幅20nmの伸長したクリスタリットである。クリスタリットは、繊維周縁部に向かって半径方向に移動するにつれてそれぞれ約5〜20nmのサイズで、より等軸性になる。
【0022】
同様に、ホウ素の供与体として三塩化ホウ素を、炭素用にエチレンを用い(それぞれジボランとメタン等の他のガスを用いてもよいが)、また基板上に10
8から10
9°K/cmの温度勾配を課することによって、炭化ケイ素に見られるような、すなわち、繊維の中心近くで伸長した粒子であり周縁部へ向かってより等軸性の高い粒子である、類似の粒子構造を示す完全に稠密な炭化ホウ素繊維が成長することになる。ホウ素および炭化タングステン等の他の材料の無機繊維は同様の粒子構造および分布で作製することができる。そのような粒子構造および分布を示す種々様々の繊維を作製するために、繊維は適切な前駆体および熱エネルギー源からの適切な温度勾配のみを必要とする。
【0023】
伸長した粒子は、成長中のフィラメントの形状および温度プロフィールのために生じることが理解される。繊維の中心は、繊維軸に沿った粒子の成長を可能にするこの技術を用いたCVD成長中は長時間にわたって高温であるが、繊維周縁部へ向かって温度滞留時間が短くなることにより、結果として生じるより小さくより等軸性の高い粒子とともに粒子の成長が阻害される傾向がある。
【0024】
セラミックおよび他の無機固体の機械的特性がバルク固体内の結晶特性および密度の強関数であることがよく知られている。具体的には、稠密に充填され、一様に分散された同様のサイズの等軸性の結晶粒を備えたセラミックまたは他の無機固体については、粒度が約5〜10nmの限界まで減少するにつれて、引張強度は増加する傾向がある。さらに、材料が単結晶形である場合、所与のセラミックまたは他の無機固体用の材料の剛性が最も高いこともよく知られている。本発明では、両方の微細な稠密に充填されたクリスタリットは稠密に充填された伸長した単結晶の粒子と同様に存在し、それによって繊維に3つの条件(完全に稠密、微細な等軸性の粒子および伸長した結晶)のすべての利点、つまりより高い剛性ならびにより高い引張強度を付与する。高温クリープに関する理論は、無機繊維のクリープ挙動について強固な予測をするのにまだ不十分であるが、実験は、そのような「複合体」繊維のクリープ挙動が液体前駆物質/紡糸口金プロセスによって製造された繊維より優れていることを示している。
【0025】
本発明の独特な特徴は、紡糸口金プロセスによって製造された繊維と比較して完全に稠密であり、しかも、中心近くの伸長した粒子および半径方向周縁部へ向かうより等軸性の高い粒子を備えた「複合体」粒子構造を有し、それによって他のそのような繊維と比較して改良された剛性、引張強度および高温クリープ抵抗性を示すセラミックまたは他の無機フィラメントもしくは無機繊維を含む。
【0026】
本発明の利点は、同一材料(例えば炭化ケイ素、炭化ホウ素、ホウ素、炭化タングステン、等)の純粋なバルク固体に関連したものに近い剛性、引張強度および高温クリープ抵抗性を備えた完全に稠密な繊維を含む。
【0027】
さらなる利点は、本発明の主題である繊維を用いて、CMC、MMCおよび/またはPMC複合部品に効力を生じることである。そのような部品は、改良された剛性、クリープ抵抗性および破壊靭性を示すと予想され、いずれも複合部品の重要な性能の尺度である。
【0028】
本発明の付加的な利点は、繊維の中心およびその周りにおいて伸長した結晶の粒子から、半径方向外側へのより等軸性の高い粒子への遷移が、連続性を殆ど分断せずにまたは全く分断せずに滑らかであることである。これは、それを荷重下で破断させる可能性がある繊維内での応力の集中を防ぐのに役立つ。