【解決手段】火災報知システムSは、設置されたエリアにおける異状の発生を感知する感知器2と、感知器2が送信した感知器信号を受信する受信機1と、を備える。感知器2は、感知器信号を送信する送信回路22と、送信回路22に感知器信号を送信させる感知器制御部25と、を有する。受信機1は、感知器2と受信機1との間を接続する伝送線路Tを流れる伝送電流を検出する伝送電流測定回路15と、感知器2から感知器信号を受信する受信回路13と、受信回路13が感知器信号を受信している間に伝送電流測定回路15が検出した伝送電流が所定の閾値未満である場合に、伝送線路Tに異常があると判定する受信機制御部17と、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[火災報知システムSの概要]
図1は、火災報知システムSの概要を示す図である。火災報知システムSは、火災を感知して、火災が発生したことを発報するシステムである。火災報知システムSは、受信機1と複数の感知器2(2A、2B、2C)とを備える。複数の感知器2は、火災センサ及び煙センサ等の各種のセンサを内蔵しており、設置されたエリアにおける異状の発生を感知する。受信機1と複数の感知器2それぞれとは、伝送線路Tを介してデータを送受信できるように接続されている。感知器2は、火災又は煙を感知した場合に、伝送線路Tを介して受信機1に異状の発生を示す感知器信号を送信し、受信機1は、感知器2が送信した感知器信号を受信する。受信機1及び感知器2は、例えばFSK(Frequency Shift Keying)伝送方式によりデータを送受信する。
【0016】
図2は、伝送方式の一例としてのFSK伝送方式が用いられる場合の伝送波形を模式的に示す図である。FSK伝送方式においては、データ0とデータ1とに、振幅が同一で周波数がそれぞれ異なる正弦波信号が割り当てられている。
【0017】
伝送線路Tは、一般的には、銅を主成分とする導電体により構成されている。銅線には、抵抗成分(R)、インダクタンス成分(L)及び容量成分(C)が含まれるので、伝送される信号が減衰したり、伝送波形が歪んだりする。インピーダンス(Z)は受信機1と感知器2との距離、すなわち伝送距離が長くなるほど増えてゆき、信号の減衰量を増大させる。
【0018】
図3及び
図4は、受信機1が受信する信号の電圧を模式的に表した図である。
図3は、受信機1と感知器2との距離が比較的小さい場合に受信機1が受信する信号の波形を示す図である。
図4は、受信機1と感知器2との距離が
図3よりも大きい場合に受信機1が受信する信号の波形を示す図である。
【0019】
図3においては、送信波高Vstと受信波高Vsrとが若干異なるものの、ほぼ同じ値を示している。インピーダンスZは、Z=R+jωL+1/jωCで表される。受信波高Vsrは、上記のR、L、Cの影響により、送信波高Vstよりも小さくなっている。
図4においては、伝送線路Tが有するR、L、Cの影響が大きくなるので、送信波高Vstと受信波高Vsrの差が
図3に示す場合よりも大きくなっている。
【0020】
図3及び
図4におけるアドレス1からアドレスnは、複数の感知器2それぞれに割り当てられており、アドレスの数字が大きくなればなるほど受信機1からの距離が大きくなり、受信波高Vsrが小さくなっている。このように、伝送距離が長くなればなるほど受信機1が受信する信号が減衰し、正常にデータを復調できない確率が高くなる。
【0021】
この現象は、伝送距離だけではなく、受信機1及び感知器2の設計仕様に合致しない電線が伝送線路Tとして使用されたり、受信機1と感知器2との間の途中での伝送線路Tの接続状態に不備があったり、伝送線路Tに水が付着することにより絶縁不良が生じたりすることによっても発生する。例えば、感知器2が伝送線路Tに接続される際、作業ミスによって、接続部が半接触状態になっている場合があり、この場合は、伝送線路Tと感知器2との接続抵抗が著しく大きくなる。
【0022】
本実施の形態の火災報知システムSにおいては、受信機1が、感知器2から受信する信号の大きさに基づいて、伝送線路Tの不具合を検出する。さらに、受信機1は、伝送線路Tの不具合を検出した場合に、不具合が生じている伝送線路Tを介して接続されている感知器2に対して伝送時の電流を増加させるように指示する。受信機1及び感知器2がこのように動作することで、伝送線路Tの状況によらず、受信機1が感知器2から受信した信号を適切に復調することができる。
【0023】
図5は、感知器2が伝送電流を増加させた場合の効果について説明するための図である。
図5(a)は、伝送電流を増加させる前の状態を示しており、受信機1が受信した感知器信号の波高値はA1である。
図5(b)は、伝送電流を増加させた後の状態を示しており、受信機1が受信した感知器信号の波高値が、
図5(a)における波高値A1よりもΔAだけ増加してA2になっている。
以下、受信機1及び感知器2の構成について詳細に説明する。
【0024】
[受信機1の構成]
図6は、受信機1の構成を示す図である。受信機1は、電源回路11と、ユーザIF部12と、受信回路13と、送信回路14と、伝送電流測定回路15と、電流/電圧変換回路16と、受信機制御部17とを有する。
【0025】
電源回路11は、受信機1が有する各回路に電力を発生する。
ユーザIF部12は、火災が発生したことを示す警報、及び伝送線路Tに異常があることを示す警報等を表示する表示部(例えばディスプレイ)、警報音を発生する音響発生部(例えばスピーカ)、及びユーザの操作を受け付ける操作部等のユーザインターフェースである。ユーザIF部12は、火災が発生したことを示す火災警報であるか、伝送線路Tに異常があることを示す線路不良警報であるかをユーザが判別できる態様で、ユーザに警報を通知する。ユーザIF部12は、例えば火災警報と線路不良警報とを異なる色で表示したり、異なる音の警報音を発生したりする。
【0026】
受信回路13は、感知器2から感知器信号を受信する受信機受信部として機能する回路である。受信回路13は、例えば、伝送線路Tを介して感知器2から受信した信号を増幅する増幅回路を有する。受信回路13は、例えば、インピーダンス変換を行うための差動増幅回路、バンドパスフィルタ及びインピーダンス整合回路等をさらに有してもよい。
【0027】
送信回路14は、感知器2に対して、受信機制御部17が生成した受信機信号を送信する受信機送信部として機能する回路である。
図7は、送信回路14の内部構成例を示す図である。送信回路14は、インピーダンス素子141、トランジスタ142及びインピーダンス素子143を有する。
図7においては、トランジスタ142がバイポーラトランジスタである場合を例示しているが、トランジスタ142は、電界効果トランジスタ等の他の種類のトランジスタであってもよい。
【0028】
インピーダンス素子141及びインピーダンス素子143は、例えば抵抗であるが、インダクタ又はキャパシタをさらに含んでもよい。インピーダンス素子141は、トランジスタ142が飽和状態になった場合に定格電流以上の電流が流れてトランジスタ142が故障することを防ぐための保護抵抗として機能する。
【0029】
トランジスタ142のベースは、例えば、受信機制御部17が有するD/A変換器に接続されている。トランジスタ142のエミッタは、インピーダンス素子143を介して接地されており、トランジスタ142のコレクタは、インピーダンス素子141を介して電流/電圧変換回路16に接続されている。トランジスタ142は、受信機制御部17から入力される電流の大きさに基づいてコレクタ−エミッタ間を流れる電流を変化させる。コレクタ−エミッタ間を流れる電流は、トランジスタ142が伝送線路Tから引き込む電流である。
【0030】
受信機制御部17がトランジスタ142のベースに印加する電圧をVb、ベース−エミッタ間電圧をVbe、トランジスタ142の固有増幅率をh、インピーダンス素子143のインピーダンス値をZとすると、伝送電流Iは、以下の式により表される。
I=h×(Vb−Vbe)/Z
したがって、受信機制御部17がトランジスタ142のベースに印加する電圧を変動させることにより、送信回路14がFSK信号を生成することができる。
【0031】
伝送電流測定回路15は、受信機1と感知器2との間を接続する伝送線路Tを流れる伝送電流を検出する検出部として機能する。
図8は、伝送電流測定回路15の内部構成例を示す図である。伝送電流測定回路15は、インピーダンス素子151及び増幅器152を有する。
【0032】
インピーダンス素子151は、受信機1と電流/電圧変換回路16との間に設けられたインピーダンスを有する素子であり、例えば抵抗である。インピーダンス素子151は、インダクタ又はキャパシタを有してもよい。増幅器152は、インピーダンス素子151の両端間の電位差を増幅する。増幅器152は、増幅した後の電位差に相当するアナログ信号を受信機制御部17に入力する。
【0033】
電流/電圧変換回路16は、送信回路14が引き込む電流の値に応じた大きさの電圧を伝送線路Tに発生させるための回路であり、電流変動に応じた電圧を発生するための電気素子として、例えば抵抗を有する。電流/電圧変換回路16が抵抗を有する場合、送信回路14が引き込む電流の値に応じた大きさの電圧降下が抵抗において生じることにより、伝送線路Tの電圧が変化する。電流/電圧変換回路16は、例えば送信回路14が流す正弦波状に変化する電流に対応する正弦波状の電圧を発生する。
【0034】
受信機制御部17は、受信機1の各部を制御する回路であり、例えばCPU(Central Processing Unit)及び記憶部を有する。記憶部は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)である。受信機制御部17は、例えば、受信回路13を介して感知器2から火災又は煙を感知したことを示す感知信号を受信した場合に、火災が発生したことをユーザIF部12に表示させたり、スピーカ(不図示)に警報音を発生させたりする。
【0035】
受信機制御部17は、A/D変換回路を有しており、増幅器152から入力されたアナログ信号をデジタル値に変換し、インピーダンス素子151の両端間の電位差の値を取得することにより伝送電流の大きさを特定する。また、受信機制御部17は、感知器2から送信されたデータを期待値と比較することにより、データが正常に受信されたか否かを判定してもよい。受信機制御部17の動作の詳細については後述する。
【0036】
[感知器2の構成]
図9は、感知器2の構成を示す図である。感知器2は、電源回路21と、送信回路22と、受信回路23と、センサ回路24と、感知器制御部25とを有する。
【0037】
電源回路21は、感知器2が有する各回路に電力を発生する。
送信回路22は、感知器制御部25が生成した感知器信号を受信機1に送信するための回路である。送信回路22は、例えば受信機1の送信回路14と同等の内部構成を有する。送信回路22は、伝送線路Tの状態を確認するためのモードである線路確認モードにおいて、受信機1から感知器信号を送信する要求を受けた場合、線路確認用の感知器信号を送信する。送信回路22は、線路確認用の感知器信号を送信する場合、伝送線路Tの特定インピーダンスの影響を最も受けやすい状態で伝送電流を確認できるようにするために、伝送線路Tで送信され得る感知器信号のうち、電流の振幅が最も高い頻度でトグルする信号(すなわち、最も周波数が高い信号)を送信することが好ましい。
【0038】
受信回路23は、受信機1が送信した信号を受信するための回路である。受信回路23は、例えば受信機1の受信回路13と同等の内部構成を有する。受信回路23は、受信した受信機信号を感知器制御部25に入力する。
【0039】
センサ回路24は、火災又は煙等の異常状態を感知するためのセンサを含む回路である。センサ回路24は、センサが出力する感知信号を感知器制御部25に入力する。
【0040】
感知器制御部25は、感知器2の各部を制御する回路であり、例えばCPU及び記憶部を有する。感知器制御部25は、例えば、センサ回路24から入力された異状検知信号に基づいて受信機1に感知器信号を送信するように送信回路22を制御したり、受信機1から受信した制御信号に基づいてセンサ回路24を制御したりする。
【0041】
記憶部は、例えばROM及びRAMであり、感知器2自身の識別情報である感知器ID(例えばアドレス)を記憶する。感知器制御部25は、受信回路23が受信した受信機信号に含まれる感知器IDが、記憶部に記憶された感知器IDと一致していることを条件として、送信回路22に感知器信号を送信させる。感知器制御部25がこのように動作することで、同一の伝送線路Tに複数の感知器2が接続されている場合であっても、複数の感知器2が同時に感知器信号を送信しないようにすることができる。
【0042】
[伝送線路Tの異常判定方法]
以下、受信機制御部17が伝送線路Tに異常が発生したと判定する方法を詳細に説明する。
受信機制御部17は、受信回路13が感知器信号を受信している間に伝送電流測定回路15が検出した伝送電流が所定の閾値未満である場合に、伝送線路Tに異常があると判定する。所定の閾値は、例えば、受信回路13が感知器信号を正常に受信できない確率が許容範囲を超える場合の伝送電流の値である。受信機制御部17は、伝送線路Tに異常があると判定した場合、伝送線路Tに異常があることをユーザIF部12に表示させたり、スピーカに警報音を発生させたりする。
【0043】
受信機1は、伝送線路Tの異常の有無を確認するための線路確認モードに設定された場合に、伝送線路Tに異常があると判定してもよい。線路確認モードにおいて、受信機制御部17は、感知器2に感知器信号を送信することを要求するための要求情報を含む受信機信号を送信回路14に送信させ、受信機信号を送信させた後に受信回路13が感知器信号を受信している間の伝送電流に基づいて、伝送線路Tに異常があると判定してもよい。
【0044】
受信機制御部17がこのような構成を有することで、受信機制御部17が常に伝送電流を監視するのではなく、要求情報を含む受信機信号を送信した後に、感知器信号を受信する可能性がある間に伝送電流を監視すればよいので、受信機制御部17の処理が軽減される。なお、線路確認モードへの移行は、火災報知システムSの管理者の操作によって行われてもよく、受信機1が定期的に線路確認モードを実行してもよい。
【0045】
受信機制御部17は、火災報知システムSに複数の感知器2が設けられている場合、複数の感知器2のそれぞれを識別するための識別情報(以下、感知器IDという)を含む受信機信号を送信回路14に送信させてもよい。受信機信号に感知器IDが含まれていることにより、受信機制御部17は、感知器2に対して個別の要求情報を送信することができる。
【0046】
受信機制御部17は、感知器IDを利用して、複数の感知器2のそれぞれとの間の伝送線路Tの異常の有無を、順番に確認することができる。具体的には、受信機制御部17は、感知器IDと、感知器信号を送信することを要求する要求情報とを含む受信機信号を、感知器IDを変化させながら、送信回路14に順次送信させる。受信機制御部17は、例えば、1つの受信機信号を送信回路14に送信させてから、当該受信機信号に応答する感知器信号を受信するまで待機した後に、異なる感知器IDを含む次の受信機信号を送信回路14に送信させる。
【0047】
受信機制御部17は、送信回路14に送信させた受信機信号に含まれる感知器IDに対応する感知器から感知器信号を受信している間の伝送電流に基づいて伝送線路Tに異常があるか否かを判定する。受信機制御部17は、伝送線路Tに異常があると判定した場合、送信回路14に送信させた受信機信号に含まれる感知器IDに対応する感知器を特定する情報とともに、警報をユーザIF部12が有する表示部に表示させる。例えば、ユーザIF部12は、複数の感知器2それぞれに対応する発光ダイオードを有しており、受信機制御部17は、一つの伝送線路Tに異常が発生したと判定した場合、異常が発生したと判定した伝送線路Tを介して接続されている感知器2に対応する発光ダイオードを点灯させる。
【0048】
受信機制御部17は、伝送電流の値によって異なる判定内容を出力するようにユーザIF部12を制御してもよい。
図10は、伝送電流の値と異常判定内容との関係を示す図である。
【0049】
受信機制御部17は、例えば、伝送電流が第1閾値未満(例えば
図10におけるα1未満)である場合に第1種別の警報を出力するようにユーザIF部12を制御する。受信機制御部17は、伝送電流が第1閾値以上、第1閾値よりも大きい第2閾値未満(例えば
図10におけるα1以上α3未満)である場合に第2種別の警報を出力するようにユーザIF部12を制御する。受信機制御部17は、伝送電流が第2閾値以上(
図10におけるα3以上)である場合に正常であると判定し、警報を出力しないようにユーザIF部12を制御する。受信機制御部17は、伝送電流が第2閾値よりも大きな第3閾値以上(
図10におけるα4以上)であり、伝送電流が過大である場合に警報を出力してもよい。
【0050】
第1種別の警報は、感知器2が故障していたり、感知器2が伝送線路Tに接続されていなかったりする場合等に出力される警報である。第2種別の警報は、感知器2は正常であると推定されるが、伝送線路Tに異常が発生していると推定される場合に発せられる警報である。
【0051】
受信機制御部17は、受信機信号を正常に受信できているか否かに基づいて、複数種類の第2種別の警報を出力するようにユーザIF部12を制御してもよい。受信機制御部17は、例えば、感知器信号を復調した後のデータ誤り率が許容範囲未満である場合(例えば
図10におけるα1以上α2未満の場合)、改善を勧告する内容の警報を出力するようにユーザIF部12を制御する。受信機制御部17は、感知器信号を復調した後のデータ誤り率が許容範囲以上である場合(例えば
図10におけるα2以上α3未満の場合)、伝送線路Tの確認を促す内容の警報を出力するようにユーザIF部12を制御する。このように、受信機制御部17が、伝送電流及びデータ誤り率に基づいて異なる種類の警報を出力するようにユーザIF部12を制御することで、ユーザが、伝送線路Tの状況を的確に把握し、適切な対応をすることが可能になる。
【0052】
[伝送電流の調整]
火災報知システムSは、伝送線路Tに異常があると判定した場合に、伝送電流を変化させるように動作してもよい。火災報知システムSは、例えば伝送電流が小さ過ぎる場合に、伝送電流を増加させるように動作し、伝送電流が大き過ぎる場合に、伝送電流を減少させるように動作する。具体的には、受信機制御部17が、伝送電流に基づいて伝送線路Tに異常があると判定した場合、感知器2に伝送電流を増加させることを要求する電流増加要求又は伝送電流を減少させることを要求する電流減少要求を含む受信機信号を送信回路14に送信させる。感知器2は、感知器信号を送信している間の伝送電流を調整する電流調整部を有しており、感知器制御部25は、電流増加要求を含む受信機信号を受信回路23が受信した場合に、電流調整部に伝送電流を変化(増加又は減少)させた状態で感知器信号を送信させる。
【0053】
図11は、感知器2が有する電流調整部の一例を示す図である。
図11は、送信回路22、受信回路23、感知器制御部25及び電流調整部27を示している。電流調整部27は、電流制限回路26及びスイッチ251を有する。
【0054】
送信回路22は、
図7に示した送信回路14と同様に、インピーダンス素子221、トランジスタ222及びインピーダンス素子223を有する。感知器制御部25は、電流制限回路26とともに電流調整部27を構成するスイッチ251を有する。電流制限回路26は、インピーダンス素子223とともにトランジスタ222のエミッタに接続されている。電流制限回路26は、感知器制御部25が有するスイッチ251の状態に基づいて、トランジスタ222のエミッタとグランドとの間でインピーダンス素子223と並列に接続された状態と、開放された状態とが切り替わる。
【0055】
スイッチ251が短絡した状態においては、トランジスタ222のエミッタとグランドとの間でインピーダンス素子223と電流制限回路26とが並列に接続された状態になる。スイッチ251が短絡していない状態においては、トランジスタ222のエミッタとグランドとの間にインピーダンス素子223が設けられており、電流制限回路26が設けられていない状態になる。その結果、スイッチ251が短絡した状態においては、伝送線路Tとグランドとの間のインピーダンスが、スイッチ251が短絡していない状態よりも小さくなり、トランジスタ222が引き込む電流が増加し、伝送電流が増加する。
【0056】
受信機制御部17は、伝送電流を増加させるための電流増加要求又は伝送電流を減少させるための電流減少要求を含む受信機信号を送信回路14に送信させる代わりに、伝送電流測定回路15が検出した伝送電流の大きさを示す受信機信号を送信回路14に送信させてもよい。この場合、感知器制御部25は、受信機信号が示す伝送電流の大きさに基づいて、電流調整部27に伝送電流を変化させる。電流制限回路26は、例えば可変抵抗であり、感知器制御部25は、伝送電流が第1閾値(例えば
図10におけるα1)以上第2閾値(例えば
図10におけるα3)未満である場合に、伝送電流が第2閾値になるように電流制限回路26の抵抗値を調整する。電流制限回路26が、複数の抵抗と、それぞれの抵抗から一以上の抵抗を選択するためのスイッチとを有してもよい。
【0057】
感知器制御部25は、伝送電流を減少させてもよい。例えば、感知器制御部25は、伝送電流が第2閾値よりも大きい第3閾値(例えば
図10におけるα4)以上である場合に、伝送電流が第2閾値以上第3閾値未満になるように電流制限回路26の抵抗値を調整してもよい。感知器制御部25が、伝送電流が基準値よりも大きい場合に伝送電流を減少させることで、受信機1が受信する受信機信号のレベルを安定化させることができるとともに、消費電力を削減することができる。
【0058】
[火災報知システムSの動作フローチャート]
図12は、受信機1の受信機制御部17が伝送電流を調整する制御を実行する動作のフローチャートである。受信機制御部17は、まずアドレスを1に設定し(S11)、アドレス1の感知器2に対して感知器信号の送信を要求する要求情報を送信する(S12)。受信機制御部17は、アドレス1の感知器2が感知器信号を送信している間の伝送電流を測定する(S13)。
【0059】
受信機制御部17は、測定した伝送電流が最小許容値(例えば
図10におけるα3)よりも小さいか否かを判定する(S14)。受信機制御部17は、測定した伝送電流が最小許容値よりも小さいと判定した場合(S14においてYES)、伝送電流を増加させるための要求情報を、アドレス1の感知器2に送信する(S15)。受信機制御部17は、測定した伝送電流が最小許容値以上であると判定した場合(S14においてNO)、測定した伝送電流が最大許容値(例えば
図10におけるα4)よりも大きいか否かを判定する(S16)。
【0060】
受信機制御部17は、測定した伝送電流が最大許容値よりも大きいと判定した場合(S16においてYES)、伝送電流を減少させるための要求情報を、アドレス1の感知器2に送信する(S17)。受信機制御部17は、測定した伝送電流が最大許容値以下であると判定した場合(例えば
図10におけるα3以上α4以下である場合)、アドレス1の感知器2に要求情報を送信せずに、S18に進む。
【0061】
続いて、受信機制御部17は、伝送電流を調整する対象となる感知器2のアドレスを次のアドレスにする(S18)。受信機制御部17は、全アドレスの感知器2に対する調整が終了したか否かを判定し(S19)、全アドレスの感知器2に対する調整が終了していない場合(S19においてNO)、S12からS18までの処理を繰り返す。受信機制御部17は、全アドレスの感知器2に対する調整が終了した場合(S19においてYES)、伝送電流の調整処理を終了する。
【0062】
図13は、感知器制御部25が伝送電流を調整する動作のフローチャートである。感知器制御部25は、受信機1から要求情報を受信すると(S21)、要求情報の内容を特定し、伝送電流を増加させる指示を要求情報が含むか否かを判定する(S22)。感知器制御部25は、伝送電流を増加させる指示を要求情報が含むと判定した場合(S22においてYES)、伝送電流調整回路を起動する(S23)。
図11に示した例の場合、感知器制御部25は、スイッチ251を導通状態にすることにより送信経路上の抵抗値を減少させて伝送電流を増加させる。
【0063】
感知器制御部25は、伝送電流を増加させる指示を要求情報が含まないと判定した場合(S22においてNO)、伝送電流を減少させる指示を要求情報が含むか否かを判定する(S24)。感知器制御部25は、伝送電流を減少させる指示を要求情報が含むと判定した場合(S24においてYES)、伝送電流調整回路を停止する(S25)。
図11に示した例の場合、感知器制御部25は、スイッチ251を非導通状態にすることにより送信経路上の抵抗値を増加させて伝送電流を減少させる。
【0064】
なお、感知器制御部25が伝送電流をさらに減少させることができるように、
図11に示すインピーダンス素子223とグランドとの間に、互いに並列に接続された抵抗とスイッチとがさらに設けられていてもよい。感知器制御部25は、定常状態においては当該スイッチを導通状態にする。感知器制御部25は、伝送電流を減少させる必要がある場合に当該スイッチを非導通状態にすることで、トランジスタ222のエミッタとグランドとの間の抵抗値を増加させ、伝送電流を減少させることができる。
【0065】
[火災報知システムSによる効果]
以上説明したとおり、受信機1は、感知器2が感知器信号を送信している間に伝送電流を測定し、伝送電流に異常がある場合に、異常があることを示す警報を発する。受信機1が警報を発することで、火災報知システムSの管理者が、受信機1と感知器2とを接続する伝送線路Tの不具合を早期に発見することができる。
【0066】
また、受信機1は、伝送電流に異常があることを検出した場合に、伝送電流が適正な値になるように、感知器2に伝送電流を調整させる。受信機1及び感知器2が連携して伝送電流を調整することにより、受信機1が受信する感知器信号の波高が略一定の値になるので、受信機1が感知器信号を正しく受信できる確率を高めることができる。
【0067】
また、受信機1が受信する感知器信号の波高が略一定の値になることにより、受信機1の受信回路の構成を簡易化することができる。一般的に、伝送電流の振幅及び周波数の変動量が大きい場合、受信回路が、能動的なフィルタ回路等の多段のアンプで構成された複雑な回路構成を要する場合が多い。しかし、本実施の形態によれば、伝送電流の振幅及び周波数の変動を抑制することができるので、受信回路を簡略化することができる。
【0068】
[変形例]
以上の説明においては、感知器2が感知器信号を送信している間の伝送電流を受信機1が監視し、伝送電流が小さい場合に、感知器2が伝送電流を増加させた。このような場合、伝送線路Tのインピーダンスが大き過ぎることで、受信機1が送信する受信機信号も減衰する。そこで、受信機制御部17は、伝送電流が閾値未満であると判定した場合に、受信機信号を送信する場合の伝送電流を増加させてもよい。一例として、受信機1が、
図11に示した電流調整部27のような回路を有し、受信機制御部17が、
図11におけるスイッチ251と同様のスイッチを切り替えて、送信回路14のインピーダンスを小さくすることにより、伝送電流を増加させることができる。
【0069】
また、感知器2が、
図6における伝送電流測定回路15と同等の伝送電流測定回路を有しており、感知器制御部25は、受信機信号を受信している間の伝送電流が閾値未満であると判定した場合に、電流を増加させることを要求する要求情報を含む感知器信号を受信機1に送信してもよい。この場合、受信機制御部17は、当該感知器信号を受信したことに応じて伝送電流を増加させる。
【0070】
感知器制御部25は、伝送電流測定回路が測定した伝送電流の値を含む感知器信号を受信機1に送信してもよい。この場合、受信機制御部17は、受信した感知器信号に含まれる伝送電流の値に基づいて伝送電流を増加させたり減少させたりする。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。