(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-4800(P2020-4800A)
(43)【公開日】2020年1月9日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/06 20060101AFI20191206BHJP
H01G 9/035 20060101ALI20191206BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20191206BHJP
H01G 9/08 20060101ALN20191206BHJP
【FI】
H01G9/06 Z
H01G9/035
H01G9/028 E
H01G9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-121130(P2018-121130)
(22)【出願日】2018年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】595122132
【氏名又は名称】サン電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】細木 雅和
(72)【発明者】
【氏名】來海 肇
(72)【発明者】
【氏名】長池 優也
(72)【発明者】
【氏名】阿立 貴久
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経時的なESRの増加を抑制できる電解コンデンサを提供する。
【解決手段】周壁3bの一端を端壁3aにより閉塞して他端に開口部3cを有した有底筒状の本体ケース3と、第1電極体と第2電極体とをセパレータを介して巻回されるとともに本体ケースに収納されるコンデンサ素子10と、開口部3cを封口する封口体5とを備え、第1電極体と第2電極体との間に導電性高分子及び所定の液剤を配した電解コンデンサにおいて、酸化抑制剤を保持した絶縁シート4を端壁3aとコンデンサ素子10との間に設けた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁の一端を端壁により閉塞して他端に開口部を有した有底筒状の本体ケースと、第1電極体と第2電極体とをセパレータを介して巻回されるとともに前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、前記開口部を封口する封口体とを備え、前記第1電極体と前記第2電極体との間に導電性高分子及び所定の液剤を配した電解コンデンサにおいて、酸化抑制剤を保持した絶縁シートを前記端壁と前記コンデンサ素子との間に設けたことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記液剤が有機酸または無機酸のアミン塩、有機酸または無機酸のアミジン塩のいずれかの電解質を溶解した電解液を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記液剤が支持電解質を持たない低導電性液を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記液剤が前記コンデンサ素子に含浸され、前記絶縁シートが前記端壁上に配される底面部と、前記底面部から折曲して前記周壁上に配される側面部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記液剤が前記コンデンサ素子に含浸され、前記絶縁シートが前記端壁上に配される底面部と、前記底面部から折曲して前記周壁上に配される側面部とを有するとともに、前記側面部の単位面積当たりの前記酸化抑制剤の保持量が、前記底面部の単位面積当たりの前記酸化抑制剤の保持量よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記絶縁シートが矩形または平行四辺形に形成され、前記絶縁シートの少なくとも一の対角線が前記本体ケースの内径よりも大きいことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記酸化抑制剤が、ビタミン類酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、糖類酸化防止剤のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質に導電性高分子を含む電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサは特許文献1に開示されている。この電解コンデンサは本体ケース、コンデンサ素子及び封口体を備えている。本体ケースは金属によって有底筒状に形成され、円筒状の周壁の一端を端壁により閉塞して他端に開口部を開口する。
【0003】
コンデンサ素子は誘電体被膜が形成された陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回され、本体ケースに収納される。誘電体被膜と対向陰極箔との間には電解質として導電性高分子が配されるとともに電解液が含浸される。また、陽極箔及び対向陰極箔にはそれぞれリード端子が接続される。
【0004】
コンデンサ素子を収納した本体ケースの開口部はゴム等の封口体により封口される。この時、リード端子は封口体を貫通して本体ケース外に引き出される。
【0005】
上記構成の電解コンデンサによると、コンデンサ素子が電解質に導電性高分子を含むため、電解コンデンサのESRを低くすることができる。また、電解液により誘電体被膜の欠陥が修復され、電解コンデンサの耐電圧を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−10657号公報(第4頁−第13頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電解コンデンサによると、本体ケース内には封口時に空気が閉じ込められる。また、本体ケースと封口体との間やリード端子と封口体との間から空気等の酸化性物質が経時的に本体ケース内に侵入する。このため、電解コンデンサを長期使用すると導電性高分子が酸化して電解コンデンサのESRが高くなる問題があった。
【0008】
本発明は、経時的なESRの増加を抑制できる電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、周壁の一端を端壁により閉塞して他端に開口部を有した有底筒状の本体ケースと、第1電極体と第2電極体とをセパレータを介して巻回されるとともに前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、前記開口部を封口する封口体とを備え、前記第1電極体と前記第2電極体との間に導電性高分子及び所定の液剤を配した電解コンデンサにおいて、酸化抑制剤を保持した絶縁シートを前記端壁と前記コンデンサ素子との間に設けたことを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記液剤が有機酸または無機酸のアミン塩、有機酸または無機酸のアミジン塩のいずれかの電解質を溶解した電解液を含むことを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記液剤が支持電解質を持たない低導電性液を含むことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記液剤が前記コンデンサ素子に含浸され、前記絶縁シートが前記端壁上に配される底面部と、前記底面部から折曲して前記周壁上に配される側面部とを有することを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記液剤が前記コンデンサ素子に含浸され、前記絶縁シートが前記端壁上に配される底面部と、前記底面部から折曲して前記周壁上に配される側面部とを有するとともに、前記側面部の単位面積当たりの前記酸化抑制剤の保持量が、前記底面部の単位面積当たりの前記酸化抑制剤の保持量よりも大きいことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記絶縁シートが矩形または平行四辺形に形成され、前記絶縁シートの少なくとも一の対角線が前記本体ケースの内径よりも大きいことを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の電解コンデンサにおいて、前記酸化抑制剤が、ビタミン類酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、糖類酸化防止剤のいずれかを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、本体ケースの端壁とコンデンサ素子との間に配した絶縁シートが酸化抑制剤を保持するので、導電性高分子の酸化が抑制される。従って、電解コンデンサの経時的なESRの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサを上方から見た斜視図
【
図2】本発明の実施形態に係る電解コンデンサを下方から見た斜視図
【
図3】本発明の実施形態に係る電解コンデンサのコンデンサ本体を示す正面断面図
【
図4】本発明の実施形態に係る電解コンデンサのコンデンサ素子を示す斜視図
【
図5】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの絶縁シートの設置状態を示す斜視図
【
図6】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの絶縁シートの設置状態を示す斜視図
【
図7】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの絶縁シートを示す平面図
【
図8】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの絶縁シートの製造時の状態を説明する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2は一実施形態の電解コンデンサ1を上方から見た斜視図及び下方から見た斜視図を示している。電解コンデンサ1はコンデンサ本体2と座板6とを備えている。座板6は合成樹脂により形成され、コンデンサ本体2を保持する。座板6には一対の貫通孔6a及び貫通孔6bが設けられる。後述するコンデンサ本体2に設けられたリード端子7、8は貫通孔6a、6bに挿通して折曲され、回路基板に半田付けされる。
【0019】
図3はコンデンサ本体2の正面断面図を示している。コンデンサ本体2は本体ケース3、コンデンサ素子10、絶縁シート4及び封口体5を備えている。本体ケース3はアルミニウム等の金属により断面円形の有底筒状に形成され、円筒状の周壁3bの一端を端壁3aにより閉塞して他端に開口部3cを開口する。
【0020】
コンデンサ素子10は本体ケース3に収納され、後述する第1電極体11及び第2電極体12(
図4参照)にそれぞれ接続されたリード端子7、8が延出される。絶縁シート4は本体ケース3の端壁3aとコンデンサ素子10との間に配される。絶縁シート4によって本体ケース3を介した第1電極体11と第2電極体12との短絡が防止される。
【0021】
封口体5はゴム等の絶縁体の弾性材料の成形品により一対の貫通孔5a、5bを有した円板状に形成される。本体ケース3の開口部3cに封口体5を配した状態で本体ケース3の周面に絞り加工を施して凹部3dが形成される。これにより、封口体5が固定され、本体ケース3の開口部3cが封口体5により封口される。この時、本体ケース3に収納されたコンデンサ素子10のリード端子7、8が圧入によって貫通孔5a、5bに挿通され、コンデンサ素子10が固定される。
【0022】
図4はコンデンサ素子10の斜視図を示している。コンデンサ素子10は長尺状の第1電極体11と長尺状の第2電極体12とを絶縁体のセパレータ13を介して巻回して形成される。第1電極体11または第2電極体12の終端は巻止めテープ14によって固定される。
【0023】
第1電極体11はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属から成っている。第1電極体11の表面には化成処理によって酸化物の誘電体皮膜(不図示)が形成される。第2電極体12はセパレータ13を介して第1電極体11に対向し、アルミニウム等により形成される。
【0024】
リード端子7は誘電体被膜を有した第1電極体11に接続され、リード端子8は第2電極体12に接続される。尚、第1電極体11及び第2電極体12に誘電体被膜を設けてもよい。
【0025】
第1電極体11と第2電極体12との間には導電性高分子が配される。導電性高分子の分散液にコンデンサ素子10を所定時間浸漬した後に乾燥することにより、導電性高分子を第1電極体11と第2電極体12との間に配することができる。導電性高分子によって電解コンデンサ1のESRを低くすることができる。
【0026】
導電性高分子として、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体等を用いることができる。ポリエチレンジオキシチオフェンは電気伝導率が高いためより望ましい。
【0027】
また、所定の液剤にコンデンサ素子10を所定時間浸漬することにより、液剤がコンデンサ素子10に含浸される。これにより、第1電極体11と第2電極体12との間には液剤が配される。
【0028】
コンデンサ素子10に所定の液剤を含浸すると、電解コンデンサ1の耐電圧を高くすることができる。コンデンサ素子10に含浸する液剤には電解質を溶解した電解液または支持電解質を持たない低導電性液が用いられる。液剤は電解コンデンサ1の使用温度域(例えば、−30℃〜150℃)よりも沸点が高く、融点が低くなっている。
【0029】
電解コンデンサ1の耐電圧を高くする低導電性液として、γ―ブチロラクトン、スルホラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリグリセリン、ポリグリセリンのポリアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、多価アルコール(ソルビタン等)の脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸等を用いることができる。
【0030】
また、電解コンデンサ1の耐電圧を高くする電解液として、極性の高い溶媒に有機酸または無機酸のアミン塩、有機酸または無機酸のアミジン塩のいずれかの電解質を溶解した電解液を用いることができる。極性の高い溶媒は上記低導電性液に例示した各液剤から選択することができる。
【0031】
第1電極体11と第2電極体12との間に電解液を配することにより電解コンデンサ1のESRをより低くすることができる。また、電解液の酸化作用により第1電極体11の誘電体被膜の欠陥が修復されるため、電解コンデンサ1の耐電圧を高くできるとともに漏れ電流を低くすることができる。
【0032】
尚、コンデンサ素子10に複数の液剤を含浸してもよい。この時、電解液と、電解液の溶媒よりも沸点が高く溶媒に非相溶性の液剤とをコンデンサ素子10に含浸するとより望ましい。これにより、電解液の溶媒の蒸散速度が遅くなり、150℃を超える高温環境下でも電解コンデンサ1の長寿命化を図ることができる。
【0033】
図5は絶縁シート4の平面図を示している。
図6及び
図7は絶縁シート4の設置状態の斜視図を示している。
図6は本体ケース3の内側を見た図を示しており、
図7は本体ケース3を省いたコンデンサ素子10の上部を示している。
【0034】
絶縁シート4は天然セルロース繊維または合成樹脂繊維を積層した基材に酸化抑制剤を保持し、正方形に形成される。絶縁シート4の対角線は本体ケース3の内径よりも大きくなっている。このため、絶縁シート4は本体ケース3の端壁3a(
図3参照)上に配される底面部4aと、底面部4aから折曲して周壁3b上に配される側面部4bとを有する。
【0035】
絶縁シート4に保持される酸化抑制剤として、ビタミン類酸化防止剤(ビタミンC等)、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、糖類酸化防止剤等の1種または複数種を用いることができる。
【0036】
本体ケース3内の雰囲気中にはコンデンサ本体2の封口時に閉じ込められる空気や、経年使用により侵入する空気等の酸化性物質が含まれる。本体ケース3内の雰囲気中の酸化性物質は絶縁シート4に保持される酸化抑制剤によって補足または酸化性の低い化合物に化学変化する。これにより、導電性高分子の酸化を抑制することができる。
【0037】
また、コンデンサ素子10に含浸される液剤に酸化性物質が含まれる場合がある。液剤は絶縁シート4の底面部4aとコンデンサ素子10の軸方向端面との接触領域から絶縁シート4に対流する。このため、液剤内の酸化性物質は酸化抑制剤によって補足または酸化性の低い化合物に化学変化し、導電性高分子の酸化が抑制される。
【0038】
絶縁シート4に保持される酸化抑制剤は底面部4aとコンデンサ素子10の軸方向端面との接触領域から液剤に溶出する。絶縁シート4の側面部4bはコンデンサ素子10の軸方向端面に接触しないため、酸化抑制剤の溶出が少ない。このため、側面部4bを設けることにより、酸化抑制剤が絶縁シート4に長期間保持される。これにより、導電性高分子の酸化を長期間抑制することができる。
【0039】
尚、コンデンサ素子10に含浸される液剤に対して不溶性または低溶解性の酸化抑制剤を用いてもよい。
【0040】
また、コンデンサ素子10に含浸される液剤が電解液を含む場合は、誘電体被膜の欠陥が生じた際に電解液により第1電極体11が酸化して誘電体被膜が修復される。この時、絶縁シート4に保持される酸化抑制剤によって電解液による誘電体被膜の修復作用が低下する。
【0041】
このため、絶縁シート4の側面部4bの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量を、底面部4aの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量よりも大きくしている。これにより、コンデンサ素子10の軸方向端面に面した底面部4aから液剤への溶出量が少なくなり、誘電体被膜の近傍における酸化抑制剤の濃度を低くすることができる。従って、電解液による誘電体被膜の修復作用を高く維持することができる。
【0042】
また、酸化抑制剤の保持による底面部4aの硬化が抑制されるため、天然セルロース繊維または合成樹脂繊維の積層体に液剤が浸透して底面部4aの軟質性が維持される。これにより、コンデンサ素子10の軸方向端面が当接した底面部4aが緩衝材として機能し、コンデンサ素子10の破損を防止することができる。
【0043】
前述の
図5は絶縁シート4上の酸化防止剤の分布を表わしており、図中、黒色の濃度が高くなるに従って酸化防止剤の密度が高くなっている。同図に示すように、本実施形態では絶縁シート4の一辺に平行なX方向の中心部から端部に向かって酸化防止剤の密度を高くしている。これにより、側面部4bの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量を、底面部4aの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量よりも大きくすることができる。
【0044】
図8は本実施形態の絶縁シート4の製造時の状態を説明する斜視図である。絶縁シート4の基材は長尺のテープ状体4’に加工され、巻回してテープ状体4’のロールが形成される。次に、テープ状体4’のロールは酸化抑制剤の溶液に浸漬され、酸化抑制剤の溶液を含浸した後に溶液から取り出して乾燥される。
【0045】
この時、ロールの径方向に隣接するテープ状体4’は密接するため、酸化抑制剤の溶液の溶媒はロールの軸方向から抜け出す。このため、溶媒に溶けた酸化抑制剤は溶媒とともにテープ状体4’内をロールの軸方向に移動し、軸方向(X方向)の中心部よりも端部の酸化抑制剤の密度が高くなる。そして、テープ状体4’を長手方向に垂直な切断線Dで切断することにより、
図5に示す酸化抑制剤の分布を有した正方形の絶縁シート4が得られる。
【0046】
尚、絶縁シート4を正方形以外の矩形に形成してもよく、テープ状体4’を長手方向に対して傾斜した切断線Dにより切断した平行四辺形(菱形を含む)に形成してもよい。この場合も上記と同様に、絶縁シート4の少なくとも一の対角線を本体ケース3の内径よりも大きくして底面部4a及び側面部4bを形成することができる。
【0047】
本実施形態によると、本体ケース3の端壁3aとコンデンサ素子10との間に配した絶縁シート4が酸化抑制剤を保持するので、導電性高分子の酸化が抑制される。従って、電解コンデンサ1の経時的なESRの増加を抑制することができる。
【0048】
また、コンデンサ素子10に含浸される液剤が有機酸または無機酸のアミン塩、有機酸または無機酸のアミジン塩のいずれかの電解質を溶解した電解液を含むと、電解コンデンサ1のESRをより低くすることができる。加えて、電解液の酸化作用により誘電体被膜の欠陥が修復され、電解コンデンサ1の耐電圧を確実に高くできるとともに漏れ電流を低くすることができる。
【0049】
また、コンデンサ素子10に含浸される液剤が支持電解質を持たない低導電性液を含むと、電解コンデンサ1の耐電圧を容易に高くできる。
【0050】
また、絶縁シート4が本体ケース3の端壁3a上に配される底面部4aと、底面部4aから折曲して本体ケース3の周壁3b上に配される側面部4bとを有する。これにより、側面部4bから液剤に溶出する酸化抑制剤が少ないため酸化抑制剤が絶縁シート4に長期間保持され、導電性高分子の酸化を長期間抑制することができる。
【0051】
また、電解液を含む液剤がコンデンサ素子10に含浸される場合に、側面部4bの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量を、底面部4aの単位面積当たりの酸化抑制剤の保持量よりも大きくしている。これにより、底面部4aから液剤への溶出量が少ないため誘電体被膜の近傍における酸化抑制剤の濃度を低くすることができ、電解液による誘電体被膜の修復作用を高く維持することができる。
【0052】
また、絶縁シート4が矩形または平行四辺形に形成され、絶縁シート4の少なくとも一の対角線が本体ケース3の内径よりも大きいので、底面部4a及び側面部4bを有した絶縁シート4を容易に実現することができる。
【0053】
また、絶縁シート4に保持される酸化抑制剤が、ビタミン類酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、糖類酸化防止剤のいずれかを含むので、酸化抑制剤を保持する絶縁シート4を容易に実現することができる。
【0054】
本実施形態において、コンデンサ素子10に液剤を含浸しているが、本体ケース3内に充填した液剤にコンデンサ素子10を浸漬してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電解コンデンサ及び電解コンデンサを制御回路に実装した自動車、電子機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ本体
3 本体ケース
3a 端壁
3b 周壁
3c 開口部
3d 凹部
4 絶縁シート
4a 底面部
4b 側面部
4’ テープ状体
5 封口体
6 座板
7、8 リード端子
10 コンデンサ素子
11 第1電極体
12 第2電極体
13 セパレータ
14 巻止めテープ
D 切断線