【実施例】
【0066】
以下、実施例を含む試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0067】
<1.抽出条件の検討>
1、昆布類エキスの調製
(1)比較例1
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに水450gを添加し、ウォーターバスにて温度85℃、常圧の条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2(商品名、ADVANTEC社製)でろ過し、その液部を採取して比較例1のコンブエキスを得た。
【0068】
(2)比較例2
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに水450gを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して比較例2のコンブエキスを得た。
【0069】
(3)比較例3
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに2質量%乳酸水溶液450gを添加し、ウォーターバスにて温度85℃、常圧の条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して比較例3のコンブエキスを得た。
【0070】
(4)実施例1
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに2質量%乳酸水溶液450gを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して実施例1のコンブエキスを得た。
【0071】
(5)実施例2
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに2質量%乳酸水溶液450gを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.8に調整した後、プロテアーゼM(商品名、天野エンザイム社製、エンド型・エキソ型プロテアーゼ)0.65gを加え、45℃、120分間酵素処理した。得られた酵素処理液を90℃10分間加熱処理して酵素を失活させた後、48質量%苛性ソーダ又は18質量%塩酸を加えpH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して実施例2のコンブエキスを得た。
【0072】
2、コンブ由来固形分回収率の測定
上記で得られたコンブエキスの回収質量を計量した。また常圧加熱減量法(105℃4時間)で原料コンブと回収コンブエキスの固形量、及び回収コンブエキスの乳酸由来固形量を、さらに電位差滴定法で原料コンブと回収コンブエキスの塩分を測定した。原料コンブの固形量(塩分除く)と回収コンブエキスの固形量(乳酸由来固形量と塩分除く)から、コンブ由来固形分回収率を計算した。
【0073】
結果を表1に示した。
【0074】
3、官能評価
上記比較例1〜3、実施例1,2のエキス各2gを、100mLの熱水にてそれぞれ希釈し、香気(昆布らしさ)、呈味(旨味)について官能評価を行い、更に総合評価を行った。官能評価は8名のパネラーにより行い、香気及び呈味について、比較例1を0点とし、これを基準として、−5点を比較例1より非常に劣ってる、0点を比較例1と同程度、5点を比較例1より非常に優れている、とした−5〜5点の10段階で評価し、8名の平均を求めた。香気評価と呈味評価の平均値を合計し、×:2点未満、△:2〜4点、○:5〜7点、◎:8〜10点、の4段階で総合評価として評価した。
【0075】
この結果を表1に示す。表1の結果から、抽出溶媒として、乳酸水溶液を用い、0.19MPaの加圧、115℃の加熱条件下で抽出した実施例1,2のコンブエキスは、香気、呈味が良好で、総合評価も高かった。更に、酵素処理を行った実施例2では、呈味が更に良好であった。
【0076】
【表1】
【0077】
4、多糖類及びオリゴ糖、ヘキサナール、タンパク質及びペプチドの測定
(1)多糖類、オリゴ糖の測定
レイン・エイノン法にて全糖(T−S)を、フェーリング・レーマン・シュール法にて還元糖(D−S)を測定し、T−S値からD−S値を引いた値を多糖類及びオリゴ糖の含量とした。
【0078】
(2)ヘキサナールの測定
Agilent社製のガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)によって、各エキスに含まれるヘキサナール含有量を測定した。試料1gを水19gで希釈した溶液5gをバイアル中に移し、KClを1.5g、標準物質のシクロヘキサノールを一定量添加後、50℃で1時間撹拌し、密閉したバイアル中の揮発性成分をツイスターに吸着させた。ツイスターは速やかにGC/MS分析機に供し、クロマトグラフィーを行い、香気成分信号ピークを積分して、溶液中に含まれるヘキサナール成分由来ピークのエリア面積を求めた。またスタンダードとしてヘキサナール(Sigma Aldrich社)を水で希釈し4種類の適当な濃度に調整し、同様の方法で溶液中に含まれるヘキサナール成分由来ピークのエリア面積を求めた。スタンダードの濃度とエリア面積から検量線を作成し、各エキスに含まれるヘキサナール含有量を計算した。
【0079】
(3)タンパク質、ペプチドの測定
KJEL−AUTO(なかやま理化制作所社製)を用いて、セミミクロケルダール法にて全窒素(T−N)を、後述するホルモール法にてホルモール態窒素(F−N)を測定し、T−N値からF−N値を引いた値に、タンパク質換算計数6.25を掛けた値を、タンパク質及びペプチドの含量とした。
【0080】
ホルモール法:試料5gを100mLのメスフラスコに入れ蒸留水で定容し、そのうち40mLを量りとり、pH計で測定しながら0.1規定NaOH溶液を用いてpH8.2に調整し、これにあらかじめpH8.2に調整したホルムアルデヒド液40mLを加えた。酸性に変化した後に再度0.1規定NaOH溶液でpH8.2になるまで中和滴定(tmL)を行い、以下の計算式より求めた。
F−N(質量%)=t×0.0014×F×100÷(5×40)×100
F:0.1規定NaOHのファクター
t:中和滴定に要した0.1規定NaOH溶液の量
【0081】
【表2】
【0082】
<2.有機酸濃度の検討>
1、コンブエキスの調製(実施例3〜7)
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)15gに各濃度の乳酸水溶液100mLを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して実施例3〜7のコンブエキスを得た。
【0083】
2、官能評価
上記<1.抽出条件の検討>と同様に、実施例3〜7のエキス各2gを100mLの熱水にてそれぞれ希釈し、香気(昆布らしさ)、呈味(旨味)について官能評価を行い、更に総合評価を行った。
【0084】
この結果を表3に示す。表3の結果から、抽出溶媒として、1〜20質量%の濃度の乳酸水溶液を用い、抽出した実施例3〜7のコンブエキスは、香気、呈味が良好で、総合評価も高かった。
【0085】
【表3】
【0086】
<3.有機酸の種類の検討>
1、コンブエキスの調製(実施例8〜13)
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)15gに2質量%の各有機酸水溶液100mLを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して実施例8〜13のコンブエキスを得た。
【0087】
2、官能評価
上記<1.抽出条件の検討>と同様に、実施例8〜13のエキス各2gを、100mLの熱水にてそれぞれ希釈し、香気(昆布らしさ)、呈味(旨味)について官能評価を行い、更に総合評価を行った。
【0088】
この結果を表4に示す。表4の結果から、抽出溶媒として、乳酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸の各種有機酸水溶液を用い、抽出した実施例8〜13のコンブエキスは、香気、呈味が良好で、総合評価も高かった。
【0089】
【表4】
【0090】
<4.酵素の種類の検討>
1、コンブエキスの調製(実施例14〜16)
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)15gに2質量%乳酸水溶液100mLを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.8に調整した後、各プロテアーゼを0.15g加え、45℃、120分間酵素処理した。得られた酵素処理液を90℃10分間加熱処理して酵素を失活させた後、48質量%苛性ソーダ又は18質量%塩酸を加えpH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取して実施例14〜16のコンブエキスを得た。
【0091】
2、官能評価
上記<1.抽出条件の検討>と同様に、実施例14〜16のエキス各2gを、100mLの熱水にてそれぞれ希釈し、香気(昆布らしさ)、呈味(旨味)について官能評価を行い、更に総合評価を行った。
【0092】
この結果を表5に示す。表5の結果から、特に、エキソ型プロテアーゼを含む酵素で処理を施した実施例16のコンブエキスは、香気、呈味が良好で、総合評価も高かった。
【0093】
【表5】
【0094】
<5.風味改善効果の検討>
1、コンブエキスの調製
5mm幅の細片状に切断したコンブ混合品(リシリコンブ、ミツイシコンブ)70gに2質量%乳酸水溶液450gを添加し、オートクレーブにて温度115℃、圧力0.19MPaの条件で60分間加熱処理を行った。更に48質量%苛性ソーダを加え、pH5.8に調整した後、プロテアーゼM(商品名、天野エンザイム社製、エンド型・エキソ型プロテアーゼ)を0.65g加え、45℃、120分間酵素処理した。得られた酵素処理液を90℃10分間加熱処理して酵素を失活させた後、48質量%苛性ソーダ又は18質量%塩酸を加えpH5.2に調整した後、定性ろ紙No.2でろ過し、その液部を採取してコンブエキス(固形分含量10.0質量%)を得た。
【0095】
2−1.人参、キャベツ、大根、きゅうり、及び茄子での効果
人参、キャベツ、大根、きゅうり、及び茄子をざく切りにした。醤油と酢からなる調味料にコンブエキスを添加し、このコンブエキス含有調味料をコンブエキス添加量が野菜質量の1質量%(固形分として0.1質量%)となるようそれぞれの野菜と混合し、冷蔵庫で数時間漬けて漬物を作製した。
【0096】
この漬物を食したところ、人参については青臭みが抑制され、甘みが増加していた。キャベツ、大根、きゅうり、及び茄子については青臭みが抑制されていた。
【0097】
2−2.ピーマン、水菜、キャベツ、及びきゅうりでの効果
ピーマン、水菜、キャベツ、及びきゅうりを千切りにした。野菜質量の1質量%(固形分として0.1質量%)のコンブエキスを、そのままそれぞれの野菜に添加、混合し、サラダAを作製した。また、醤油、塩、酢、砂糖からなるドレッシングにコンブエキスを添加し、このコンブエキス含有ドレッシングをコンブエキス添加量が野菜質量の0.05質量%(固形分として0.005質量%)となるようそれぞれの野菜と混合し、サラダBを作製した。
【0098】
サラダAとサラダBのいずれも、ピーマンについては青臭み、苦味、エグ味、渋味が抑制され、甘みが増加していた。水菜については、青臭み、苦味、エグ味、渋味が抑制されていた。キャベツ、きゅうりについては、青臭みが抑制されていた。
【0099】
2−3.かぼちゃでの効果
市販の粉末かぼちゃスープに規定量の湯を添加し溶解後、スープ質量の1質量%(固形分として0.1質量%)のコンブエキスを添加、混合し、スープを作製した。
【0100】
スープを食したところ、かぼちゃの青臭みが抑制され、甘みが増加していた。
【0101】
2−4.春菊での効果
春菊を一口大に切り、電子レンジで加熱後、春菊質量の1質量%(固形分として0.1質量%)のコンブエキスを春菊に添加、混合し、サラダを作製した。
【0102】
春菊を食したところ、春菊の青臭み、苦味、エグ味、渋味が抑制されていた。
【0103】
2−5.ごぼうでの効果
コンブエキス1質量%(固形分として0.1質量%)の水溶液に、乱切りしたごぼうを10分間漬けてあく抜きした後、水を捨て、電子レンジで加熱した。
【0104】
ごぼうを食したところ、ごぼうの土臭さが抑制されていた。
【0105】
2−6.豆乳での効果
市販の豆乳飲料に、飲料の0.3質量%(固形分として0.03質量%)のコンブエキスを飲料に添加し、混合した。
【0106】
豆乳飲料は、青臭み、豆っぽさが抑制され、甘味、乳感が増加していた。
【0107】
2−7.青汁での効果
市販の青汁粉末に規定量の水を添加し溶解後、青汁質量の0.5質量%(固形分として0.05質量%)のコンブエキスを青汁に添加、混合した。
【0108】
青汁は、青臭み、粉っぽさ、苦味が抑制され、甘味が増加していた。
【0109】
2−8.乾燥野菜での効果
砂糖、醤油、味醂、及び水からなる調味料にコンブエキスを添加し、このコンブエキス含有調味料をコンブエキス添加量が切干大根質量の2質量%(固形分として0.2質量%)となるよう、水戻しした切干大根を油で炒めたものに添加し、煮込み、煮物を作製した。また、市販のフリーズドライ味噌汁に規定量の湯を添加し溶解後、味噌汁の1.0質量%(固形分として0.1質量%)のコンブエキスを添加・混合し、味噌汁を作製した。
【0110】
煮物、味噌汁のいずれも、野菜の乾燥臭が抑制されていた。
【0111】
2−9.カット野菜での効果
市販のカット野菜に、野菜質量の1質量%(固形分として0.1質量%)のコンブエキスを、そのまま添加、混合し、サラダを作製した。
【0112】
サラダは、野菜の異臭(こもった臭い)が抑制されていた。
【0113】
2−10.乳飲料
市販の乳飲料に、飲料の0.1質量%(固形分として0.01質量%)のコンブエキスを飲料に添加し、混合した。
【0114】
乳飲料は、粉っぽさ(粉ミルク感)が抑制され、甘味、乳感が増加していた。
【0115】
2−11.スポーツ飲料
市販のスポーツ飲料に、飲料の0.1質量%(固形分として0.01質量%)のコンブエキスを飲料に添加し、混合した。
【0116】
スポーツ飲料は、苦味、渋味が抑制されていた。
【0117】
2−12.黒酢飲料
市販の黒酢飲料に、飲料の0.5質量%(固形分として0.05質量%)のコンブエキスを飲料に添加し、混合した。
【0118】
黒酢飲料は、酢カドが抑制され、甘味が増加していた。
【0119】
2−13.あさり
市販の粉末クラムチャウダーに規定量の湯を添加し溶解後、スープの0.3質量%(固形分として0.03質量%)のコンブエキスをスープに添加、混合し、スープを作製した。
【0120】
スープを食したところ、貝の生臭さが抑制され、貝の旨味(コハク酸)が増加していた。
【0121】
2−14.肉
牛豚合挽き肉、みじん切りした玉ねぎ、卵、パン粉、牛乳、塩、及びコショウからなるハンバーグの種に、種の0.5質量%(固形分として0.05質量%)のコンブエキスを種に添加、混合し、この種をフライパンで焼き、ハンバーグを作製した。
【0122】
ハンバーグは、肉臭さ、獣臭が抑制されていた。