【解決手段】生体刺激用磁場発生装置は、ギャップ部Gを有するC環状のコア2と、コア2に巻回されたコイル3と、を備える。コア2は、ギャップ部Gの両側にあり互いに近接する方向に延在して対向する一対の対向延在部2cと、一対の対向延在部2cのそれぞれの外側に併設された一対の対辺部2bと、を有する。コイル3は、一対の対辺部2bのそれぞれに巻回されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明に係る製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0010】
<<概要>>
まず、本実施形態に係る磁場発生装置(生体刺激用磁場発生装置)1が備える磁場形成部Mの概要について、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁場形成部Mの上側斜視図であり、
図2は、磁場発生装置1の構成を説明する説明図である。
本発明の実施形態に係る生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1)は、ギャップ部Gを有するC環状のコア2と、コア2に巻回されたコイル3と、を備える。
コア2は、ギャップ部Gの両側にあり互いに近接する方向に延在して対向する一対の対向延在部2cと、一対の対向延在部2cのそれぞれの外側に併設された一対の対辺部2bと、を有する。
コイル3は、一対の対辺部2bのそれぞれに巻回されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、コイル3が一対の対辺部2bに巻回されていることで、コイル3からギャップ部Gの外方向きに生じる磁束が対向延在部2cから生じる磁束に重畳することになる。これにより、コア2及びコイル3から生じる磁束分布をギャップ部Gの外部に広げることができ、コイル3の発熱を抑制するために供給電力が低い条件下においても、生体深部に至る位置(10mm程度離れた位置)における磁束密度を高めることができる。
【0012】
なお、上記の「C環状」とは、全体として円弧状のもの又はU字状のものを示すものではなく、上記の記載のように、一対の対向延在部2cと一対の対辺部2bとを有し、一対の対向延在部2cと一対の対辺部2bとが交差して接続されている部位を含む形状をいう。
また、上記の「互いに近接する方向に延在して」とは、同一直線上に延在して近接するものの他、延長線上が交差する方向に傾斜して延在するものも含む。
また、上記の「対向する」とは、逆側を向いていないことを意味し、平行な面同士が向かい合っているものの他、傾斜して向かい合わせになっているものも含む。
また、「併設」とは、C環状のコイル3のギャップ部Gを中心とする両側に設けられていることを意味し、平行に直線的に設けられているもの以外に、傾斜して直線的に設けられているものや湾曲して設けられているものを含む。そして、一対の対辺部2bには、例えば、湾曲して形成されていることにより境目なく一体的に形成されているものも含む。
また、「ギャップ部」として、以下説明する実施形態においては、エアギャップの例を示しているが、コア2と比較して透磁率の低い樹脂材料等によってギャップ部を構成するようにしてもよい。
【0013】
(全体構成)
本実施形態に係る生体刺激用磁場発生装置(磁場発生装置1)の構成について
図2を主に参照して説明する。磁場発生装置1は、直流電源4が接続された第1回路C1と、磁場形成部Mが接続された第2回路C2と、を含んで構成されている。
第1回路C1は、直流電源4と、直流電源4に接続された回路内の通電のオンオフを切り替える半導体スイッチ5と、充電電流の大きさを調整する調整抵抗6と、充電用のコンデンサー7と、に接続されている。
第2回路C2は、LC回路であり、コンデンサー7と、コンデンサー7に接続された回路内の通電のオンオフを切り替える半導体スイッチ8と、磁場形成部Mに供給する電流の大きさを調整する調整抵抗9と、に接続されている。
【0014】
磁場発生装置1の作動方法としては、まず、半導体スイッチ5をオンにして、第1回路C1によりコンデンサー7を規定電圧に充電する。コンデンサー7への充電が完了したら、半導体スイッチ5をオフにする。
次に、半導体スイッチ8をオンにして、コンデンサー7に充電された電気を磁場形成部Mのコイル3に放電する。
第2回路C2にLC共振の電流が繰り返し流れ、コイル3(磁場形成部M)にから磁場が放出される。なお、半導体スイッチ5、8は、不図示の制御回路により制御される。
【0015】
(コアについて)
コア2は、
図1、
図3及び
図4に示すように、コイル3から生じた磁束をギャップ部Gに案内して、ギャップ部Gにおいて磁束を生じさせるものである。
図3は、磁場形成部Mの正面図であり、磁束密度の評価位置Pを説明する説明図、
図4は、磁場形成部Mの底面図である。
本実施形態に係るコア2は、積層された電磁鋼板によって構成されている。コア2は、
図3において、上下方向に平行に延在する一対の対辺部2bと、一対の対辺部2bの上端部から横方向のうち互いに近接する向きに延在する一対の対向延在部2cと、一対の対辺部2bの下端部同士を連結する接続部2aと、から構成されている。つまり、一対の対向延在部2cは、上下方向に延在する一対の対辺部2bの上端部から直交する横方向に延在している。また、一対の対辺部2bの間にギャップ部Gが設けられている。
コア2の外形は、一例として、
図3の正面視において縦60mm、横50mmであり、コア2の構成部位の断面に係る幅及び厚さは10mmである。このコア2の磁路長は、例えば180mmである。
【0016】
(コイルについて)
一対のコイル3は、一例として、高さ2mm、幅14mmの断面を有する平角線の絶縁被覆銅線で形成されたエッジワイズコイルであり、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向で、
図1及び
図3に示すようにコア2の対辺部2bに巻回されている。コイル3は、一対の対辺部2bのそれぞれに、一例として6ターンずつ、合計12ターン巻回されている。具体的には、コイル3におけるギャップ部G側の端部(上端部3b)は、対辺部2bに巻回されている。換言すると、上端部3bが、対向延在部2cに至る位置で巻回されていないことを意味する。
本実施形態に係る上端部3bは、
図1等に示すように、対辺部2bのうち、対向延在部2cに接続される部位である湾曲したコーナー部には巻回されていない。しかしながら、当該コーナー部に上端部3bが巻回されて、コイル3が終端していてもよい。
【0017】
上記構成によれば、対辺部2bに巻回されたコイル3の上端部3bから生じる磁束によって、コア2のギャップ部Gの外方における磁束密度を高めることができる。
なお、コイル3は、対辺部2bのみに巻回されているものに限定されず、対辺部2bに加えて接続部2a及び/又は対向延在部2cに巻回されていてもよい。
【0018】
特に、本実施形態に係るコイル3におけるギャップ部G側の端部(上端部3b)は、対向延在部2cの内側面2dに近接して配設されている。
ここで、「近接」とは、コイル3の巻線の1ターンのピッチ以内の距離にあることをいう。
上記構成によれば、コイル3の上端部3bがギャップ部Gに近接して配設されることになり、フリンジング効果によりギャップ部Gから内側のコイル3側に磁束が流れようとするが、その流れ込もうとする空間がコイル3の上端部3bにより埋められることになる。このため、対向延在部2cから生じた磁束が、上端部3bにより、コア2のギャップ部Gの外方に流れるように誘導されることになる。
より具体的には、コイル3の上端部3bから生じる磁束によって、対向延在部2cから生じる磁束をコア2のギャップ部Gの外方に押し上げるように誘導することができる。その結果、コア2のギャップ部Gから外方に離れた位置(磁場を印加したい生体の深部)の磁束密度をより高めることができ、より低い電力で従来と同等の磁場を印加することができる。
【0019】
さらに、コイル3の上端部3bが内側面2dに密着していると好適である。
このような構成によれば、内側面2dに当接させるようにしてコイル3の位置合わせを容易にすることができ、内側面2dによってコイル3の移動が制限されるため、その位置を保持しやすくなる。
【0020】
コイル3は、螺旋部3Xを少なくとも2箇所有し、2箇所の螺旋部3Xのそれぞれは、一対の対辺部2bのそれぞれに巻回された状態において、ギャップ部Gに対向する位置にある2箇所の螺旋部3Xの側面3Xaが密着している。
ここで「螺旋部3Xの側面3Xaが密着している」には、2箇所の螺旋部3Xを構成するそれぞれのワイヤ(巻線)同士の間において、これらが完全に密着しているものに限定されず、ワイヤ幅(巻線幅)の少なくとも一部が密着しているものも含まれる。
【0021】
上記構成によれば、コイル3における2箇所の螺旋部3Xの側面3Xaが密着していることにより、対向延在部2cから生じてギャップ部Gを通る磁束がコイル3側に漏れることを抑制できる。
また、コイル3は、平角線によって構成されていると、2箇所の螺旋部3Xの側面3Xaが面接触することにより密着しやすいため好適であるが、このような構成に限定されず、リッツ線のような断面円形状の撚線であってもよい。
【0022】
2箇所の螺旋部3Xは、
図4に示す下端部3aにおいて、一方の螺旋部3Xの正面部と他方の螺旋部3Xの背面部とを連結するように斜めに直線的に延在する連結部3Yによって連結されている。
このように、2箇所の螺旋部3Xと、これらを連結する連結部3Yと、によって構成されるコイル3は、
図4に示す底面視において8の字状に形成されている。このように、2箇所の螺旋部3Xが連結部3Yによって連結されていることで、磁路の閉ループ方向が同一である巻線方向に、2箇所の螺旋部3Xが巻回されることになる。このような構成により、コイル3は、2箇所の螺旋部3Xにおいて磁路の閉ループ方向が同一方向になるため、磁束を集中させやすく、良好な放熱性を有することになる。
なお、2箇所の螺旋部3Xは、連結部3Yによって連結されているものに限定されず、別個にコア2に巻回されて、別個の入力端子と出力端子とを備えるものであってもよい。
【0023】
上記のように、2箇所の螺旋部3Xが連結部3Yによって連結されて底面視において8の字状に形成されている構成や、2箇所の螺旋部3Xが別個に構成されているものであれば、2箇所の螺旋部3Xの側面3Xaを密着させやすい点で好適である。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、元々一つで構成された螺旋状のコイルを接続部2aに配設した後に、一対の対辺部2bに分配するように、中央から分けて配設されるものであってもよい。このような構成は、エッジワイズコイルではなく、変形しやすく等方性を有するリッツ線で構成されるコイルであると好適である。
【0024】
(ギャップについて)
次に、評価位置Pにおけるギャップ部Gの長さと磁束密度との関係、及びコイル3、13の巻回位置と磁束密度の関係について、実施例である磁場形成部Mを示す
図3に加えて、
図5及び表1を参照して説明する。
図5は、比較例である磁場形成部M1を示す上側斜視図である。
なお、評価位置Pは、交番磁界を生じさせる生体深部の位置として想定されるコア2のギャップ部Gの外周部から10mm離れた箇所である。
本実施例及び比較例においては、ギャップ部Gの幅が最大30mmから最小2mmまで異なる各種コア2を用いて、
図1に示すコイル3で構成される磁場形成部Mと、
図5に示すコイル13で構成される磁場形成部M1とを比較した。
【0025】
上記において説明したように、実施例としてのコイル3は、高さ2mm、幅14mmの断面を有する絶縁被覆銅線であり、一対の対辺部2bのそれぞれに6ターンずつ、合計12ターン、ギャップ部Gに一部が対向するように巻線されている。
比較例に係る磁場形成部M1は、コア2における接続部2aに巻回されたコイル13を備えるものである。
比較例としてのコイル13は、断面が高さ6mm、幅4.7mmの断面を有する絶縁被覆銅線であり、内層と外層とに6ターンずつ、合計12ターン、コア2の接続部2aに巻線されている。
【0026】
それぞれの磁場形成部M、M1は、コア2のギャップ部Gの長さが異なるため、同じターン数のコイル3、13を巻回してもインダクタンスが異なる。
そこで、いずれのコア2を有する磁場形成部M、M1でも同じインパルス状の交番電流を得る必要がある。インパルス幅(周波数)については、LC共振周波数(本実施形態においては2KHz)が同じになるように、直列に接続するコンデンサー7の容量を適宜調整した。パルス幅は0.5msecとした。
また、コイル3、13に流れるピーク電流(本実施形態においては300A)は、コンデンサー7に充電する際の充電電圧とコイル3、13とコンデンサー7間に直列に挿入された調整抵抗9で調整した。
【0027】
実施例の結果を下表に示す。磁束密度については、比較例1の場合の評価位置Pの磁束密度を基準として他の比較例、実施例の値を表している。本実施形態に係る磁路長は、上記のように180mmであり、コア2における一対の対辺部2bの対向する内縁間の距離である内縁間距離Wは30mmである。
【表1】
【0028】
<ギャップ部Gの長さと磁束密度の関係について>
この結果からわかるように、内縁間距離Wに対するギャップ部Gの長さの比を6.7%以上、100%以下として、実施例1〜7のようにコイル3をコア2の内側面2dに近接して形成することにより、評価位置Pにおける磁束密度が大幅に改善された。
換言すると、磁路長に対するギャップ部Gの長さの比を1.1%以上、16.7%以下として、実施例1〜7のようにコイル3をコア2の内側面2dに近接して形成することにより、評価位置Pにおける磁束密度が大幅に改善された。
内縁間距離Wに対するギャップ部Gの長さの比が6.7%以上(磁路長に対するギャップ部Gの長さの比が1.1%以上)の場合には、ギャップが狭くなりすぎず、磁束がギャップ部Gの外方に効率的に誘導されるため、評価位置Pの磁束を高めることができる。
また、磁路長に対するギャップ部Gの長さの比が16.7%以下の場合には、ギャップが広くなりすぎず発生する磁束が少なくないために、評価位置Pの磁束を高めることができる。
【0029】
特に、ギャップ部Gの長さは、一対の対辺部2bの内縁間距離Wに対して、10%以上、90%未満であると好適である。換言すると、本実施形態に係るコア2は、ギャップ部Gの長さが、磁路長に対して、2%以上、15%未満であると好適である。
このように、ギャップ部Gの長さが、対辺部2bの内縁間距離Wに対して、10%以上、90%未満であることで、評価位置P(生体の内部組織に届く位置)における磁束密度を効果的に高めることができる。
例えば、一対の対辺部が湾曲していたり、傾斜していたりする構成においては、この内縁間距離Wは、一対の対辺部の内縁間のうち、一対の対向延在部2cのそれぞれとの接続部位(上端部)における内縁間の距離である。
【0030】
上記実施形態においては、コイル3の下端部3aのみ、8の字状に形成されているものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、コイル3が、全体として2つの孔を有する8の字状に形成されており、一対の対辺部2bは、2つの孔にそれぞれ通されていてもよい。
上記構成によれば、8の字状に形成されていることで、螺旋状(環状)のものが2つ並んだものよりもギャップ部Gの内側に交差して延在でき、ギャップ部Gを通る磁束がコイル3側に漏れることを抑制することができる。
【0031】
<変形例>
上記実施形態においては、一対の対向延在部2cが、一対の対辺部2bの上端部から直交する方向に延在するものとして説明した。そして、対向延在部2cの内側面2dに近接してコイル3が配設されているものとして説明した。
このような構成によれば、対向延在部2cから生じる磁束が、ギャップ部Gよりも内側に向かうことを、対向延在部2cの内側面2dに近接して配設されたコイル3の上端部3bにより抑制することができる。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。
【0032】
次に、変形例に係る磁場形成部M2について、
図6を参照して説明する。
図6は、変形例に係る磁場形成部M2を示す正面図である。
磁場形成部M2を構成するコア22は、一対の対辺部2bの上端部から上方に傾斜しつつ互いに近接するように延在する対向延在部22cを有する。
コイル3は、対辺部2bの上端部において固定されており、対向延在部22cの内側面22dとコイル3との間には隙間が設けられている。
このような構成であっても、対向延在部22cが上方に傾斜していることにより、対向延在部22cから発せられる磁束を対向延在部22cの外方(上方)に向かわせることができることで生体深部位置における磁束密度を高めることができる。さらに、コイル3の上端部3bが上方に向いているため、コイル3の上端部3bから生じる磁束により、対向延在部22cから生じる磁束がコア22の内側に流れることを妨げることができる。
【0033】
上記各実施形態は、以下の技術思想のいずれかを包含する。
(1)ギャップ部を有するC環状のコアと、
該コアに巻回されたコイルと、を備え、
前記コアは、前記ギャップ部の両側にあり互いに近接する方向に延在して対向する一対の対向延在部と、該一対の対向延在部のそれぞれの外側に併設された一対の対辺部と、を有し、
前記コイルは、前記一対の対辺部のそれぞれに巻回されていることを特徴とする生体刺激用磁場発生装置。
(2)前記コイルにおける前記ギャップ部側の端部は、前記対辺部に巻回されている(1)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(3)前記コイルにおける前記ギャップ部側の端部は、前記対向延在部の内側面に近接して配設されている(2)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(4)前記コイルは、螺旋部を少なくとも2箇所有し、
2箇所の前記螺旋部のそれぞれは、前記一対の対辺部のそれぞれに巻回された状態において、前記ギャップ部に対向する位置にある2箇所の前記螺旋部の側面が密着している(3)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(5)前記コイルは、2つの孔を有する8の字状に形成されており、
前記一対の対辺部は、前記2つの孔にそれぞれ通されている(3)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(6)前記ギャップ部の長さは、前記一対の対辺部の内縁間の距離に対して、10%以上、90%未満である(1)から(5)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。