160℃での溶融粘度(η1)が20000mPa.s以下であり、180℃での溶融粘度(η2)が10000mPa.s以下であり、且つ、160℃での溶融粘度(η1)と180℃での溶融粘度(η2)との比(η1/η2)が1.0〜5.0である、
−40℃から130℃の温度範囲で測定される粘弾性測定において、50℃以上の温度範囲での、温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との交点の温度が80℃以上である、請求項1に記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
熱可塑性樹脂(A)は、オレフィン系ブロック共重合体(OBC)、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、及び、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
液状軟化剤(B)は、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び炭化水素系合成オイルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
液状軟化剤(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して100〜500質量部である、請求項1〜4のいずれかに記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
更に、パラフィン系ワックス、酢酸ビニル系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、及びフィッシャートロプシュワックスからなる群より選択される少なくとも1種のワックス(C)を含有し、ワックス(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
更に、天然由来の粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤、及び石油樹脂系粘着付与剤の水素添加物からなる群より選択される少なくとも1種の粘着付与剤(D)を含有し、粘着付与剤(D)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して150質量部以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
更に、トリエチレングリコールトリベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、スクロースベンゾエート、ペンタエリトリトールテトラベンゾエート、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールトリベンゾエートペンタエリトリトールテトラベンゾエート、及びネオペンチルグリコールジベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の固体軟化剤(E)を含有し、固体軟化剤(E)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して60質量部以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤(以下、単に「ホットメルトコーティング剤」とも表す。)は、熱可塑性樹脂(A)と、液状軟化剤(B)とを含有し、160℃での溶融粘度(η1)が20000mPa.s以下であり、180℃での溶融粘度(η2)が10000mPa.s以下であり、且つ、160℃での溶融粘度(η1)と180℃での溶融粘度(η2)との比(η1/η2)が1.0〜5.0である電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤である。本発明のホットメルトコーティング剤は、上記構成であるので、塗布時の発泡抑制性に優れ、塗布後の硬化時間が短く、タックフリー性及び耐ブリードアウト性に優れている。このため、吐出機を用いて塗布可能であり、発泡抑制性に優れるため基板上の電子部品の絶縁性の低下を抑制することができ、塗布後短時間で固化してタックフリーになるため、工程の効率化が可能であり、優れた耐ブリードアウト性も示すことができる。
【0016】
以下、本発明のホットメルトコーティング剤について詳細に説明する。
【0017】
(熱可塑性樹脂(A))
熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いることができる。これらの中でも、より一層電気絶縁性及び防湿性に優れる点で、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリスチレン系樹脂がより好ましい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体;スチレン系単量体と、エチレン単量体、プロピレン単量体、ブチレン単量体等のオレフィン系単量体とのブロック共重合体であるスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0020】
スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、より具体的には、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられる。
【0021】
また、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物を用いてもよい。スチレン系ブロック共重合体の水素添加物としては、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合させ、得られたブロック共重合体における共役ジエン化合物に基づくブロックの全部又は一部が水素添加されたブロック共重合体が挙げられる。当該スチレン系ブロック共重合体の水素添加物としては、具体的には、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン/スチレン−スチレン共重合体(「SEBSS」)、スチレン−エチレン/プロピレン/スチレン−スチレン共重合体(「SEPSS」)等が挙げられる。これらの中でも、ホットメルトコーティング剤の耐ブリードアウト性がより一層向上する点で、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)が好ましく、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)がより好ましい。
【0022】
上記スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等は、トリブロック構造が主構造であるものを用いることが好ましい。ここで、トリブロック構造とは、スチレン系ブロック共重合体の構造上において、末端のスチレン単位がエンドブロック相となり、上記共重合体のそれぞれにおいて、エチレン/ブチレン単位、エチレン/プロピレン単位、エチレン/エチレン/プロピレン単位がミッドブロック相となるスチレン系ブロック共重合体であり、A−B−A型とも表される。これらのトリブロック構造が主構造であるスチレン系ブロック共重合体を用いると、本発明のホットメルトコーティング剤が後述する粘着付与剤(D)を含有する場合、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングと電子回路実装基板との密着性がより一層向上する。
【0023】
スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20000〜200000が好ましい。スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、塗布時の発泡抑制性がより一層向上する。
【0024】
本明細書において、スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値である。
【0025】
上記スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置:Waters社製 商品名「ACQUITY APC」
測定条件:カラム
・ACQUITY APC XT45 1.7μm×1本
・ACQUITY APC XT125 2.5μm×1本
・ACQUITY APC XT450 2.5μm×1本
移動相:テトラヒドロフラン 0.8mL/分
サンプル濃度:0.2質量%
検出器:示差屈折率(RI)検出器
標準物質:ポリスチレン(Waters社製 分子量:266〜1,800,000) カラム温度:40℃
RI検出器温度:40℃
【0026】
スチレン系ブロック共重合体としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)としては、クレイトン社製 商品名「Gー1650」、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)としては、クラレ社製 商品名「セプトン2004」、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)としては、クラレ社製 商品名「セプトン4033」等が挙げられる。
【0027】
スチレン系ブロック共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、スチレン系ブロック共重合体を100質量%として10質量%以上が好ましく20質量%以上がより好ましい。スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量の下限が上記範囲であると、本発明のホットメルトコーティング剤の塗布後の硬化時間がより一層短くなり、タックフリー性がより一層向上する。また、スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、スチレン系ブロック共重合体を100質量%として50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量の上限が上記範囲であると、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングと電子回路実装基板との密着性がより一層向上する。
【0029】
なお、本明細書において、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、スチレン系ブロック共重合体中のスチレンブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0030】
また、本明細書における、スチレン系ブロック共重合体中のスチレン含有量の算出方法は、例えば、JIS K6239に準じたプロトン核磁気共鳴法や赤外分光法を用いる方法が挙げられる。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のオレフィン系共重合体が挙げられ、また、これらの樹脂のブロック共重合体であるオレフィン系ブロック共重合体が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系ブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えば、オレフィンブロックコポリマー(OBC)として、ダウケミカル社製 商品名「インフューズD9807」等が挙げられる。
【0033】
本発明のホットメルトコーティング剤中の熱可塑性樹脂(A)の含有量は、ホットメルトコーティング剤を100質量%として15質量%以上が好ましく19質量%以上がより好ましい。ホットメルトコーティング剤中の熱可塑性樹脂(A)の含有量の下限が上記範囲であると、本発明のホットメルトコーティング剤の塗布後の硬化時間がより一層短くなり、タックフリー性がより一層向上する。また、本発明のホットメルトコーティング剤中の熱可塑性樹脂(A)の含有量は、ホットメルトコーティング剤を100質量%として34質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。ホットメルトコーティング剤中の熱可塑性樹脂(A)の含有量の上限が上記範囲であると、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングと電子回路実装基板との密着性がより一層向上する。
【0034】
(液状軟化剤(B))
本発明のホットメルトコーティング剤は、液状軟化剤(B)を含有する。なお、本明細書において、「液状」とは、常温(5〜35℃)において流動性を示す状態である。
【0035】
液状軟化剤(B)としては特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成オイル等が挙げられる。なかでも、加熱安定性により一層優れる点で、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、及び炭化水素系合成オイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び炭化水素系合成オイルがより好ましい。塗工適性がより一層向上する点で、パラフィン系プロセスオイルが更に好ましい。
【0036】
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製「PW−32」、出光興産社製「ダイアナフレシアS32」、出光興産社製「PS−32」、出光興産社製「PS−90」等が挙げられる。パラフィン系プロセスオイルを用いることにより、ホットメルトコーティング剤の低温での溶融粘度の上昇が抑制されて、160℃における溶融粘度(η1)と180℃における溶融粘度(η2)との比(η1/η2)をより一層低下させることができ、塗布時の発泡抑制性がより一層向上する。
【0037】
液状軟化剤(B)の動粘度は、40℃において30mm
2/S以上が好ましく、50mm
2/S以上がより好ましく、70mm
2/S以上が更に好ましく、90mm
2/S以上が特に好ましい。動粘度の下限が上記範囲であることにより、本発明のホットメルトコーティング剤の−40℃から130℃の温度範囲で測定される粘弾性測定において、50℃以上の温度範囲での、温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との交点の温度が低くなり過ぎず、耐高温フロー性がより一層向上する。また、上記パラフィン系プロセスオイルの動粘度の上限は特に限定されず、450mm
2/S以下が好ましく、300mm
2/S以下がより好ましく、200mm
2/S以下が更に好ましく、150mm
2/S以下が特に好ましい。
【0038】
本明細書において、動粘度は、JIS Z8803に記載の粘度計及び測定方法により測定される値である。例えば単一円筒回転粘度計を用いた場合、液体の粘度の値をηとすると、
[動粘度](mm
2/S)=η(mPa.s)/(液体の密度)(g/cm
2)
の式により算出することができる。
【0039】
本明細書において、密度はJIS Z8804に記載の方法により測定される値である。
【0040】
本明細書において、耐高温フロー性とは、以下の特性である。すなわち、ホットメルトコーティング剤が高温に暴露された際、溶融してフローが始まる。当該フローは電子回路実装基板上に塗布されたホットメルトコーティング剤が基板から流れだすことを意味する。すなわち耐高温フロー性とは高温での環境下(例えば80℃以上)において、ホットメルトコーティング剤が溶融してフローするか否かの指標である。ホットメルトコーティング剤は通常、軟化点を有するが、実際には軟化点よりも低い温度域で溶融してフローが開始されるため、軟化点と耐高温フロー性とは区別する必要がある。そのため、使用される電子回路実装基板が高温域の温度になるのであれば、耐高温フロー性がその環境温度以上である必要がある。耐高温フロー性は、電子回路実装回路基板に塗布されるホットメルトコーティング剤として好適かどうかの指標とすることができる。
【0041】
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製「N−90」、出光興産社製「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製「ダイアナフレシアU46」、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルNR」等が挙げられる。
【0042】
流動パラフィンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、MORESCO社製「P−100」、Sonneborn社製「Kaydol」等が挙げられる。
【0043】
炭化水素系合成オイルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学社製「ルーカントHC−10」、三井化学社製「ルーカントHC−20」等が挙げられる。
【0044】
上記液状軟化剤(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
本発明のホットメルトコーティング剤中の液状軟化剤(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として100質量部以上が好ましく、110質量部以上がより好ましく、120質量部以上が更に好ましい。液状軟化剤(B)の含有量の下限が上記範囲であると、ホットメルトコーティング剤の発泡抑制性がより一層向上し、塗布時において搭載電子部品のリードワイヤー部分の発泡がより一層抑制され易くなる。また、本発明のホットメルトコーティング剤中の液状軟化剤(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として500質量部以下が好ましく、450質量部以下がより好ましく、400質量部以下が更に好ましく、300質量部以下が特に好ましく、200質量部以下が最も好ましい。液状軟化剤(B)の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルトコーティング剤の溶融粘度の低下がより一層抑制され、発泡抑制性がより一層向上する。また、液状軟化剤(B)の含有量の上限が上記範囲であることにより、本発明のホットメルトコーティング剤の−40℃から130℃の温度範囲で測定される粘弾性測定において、50℃以上の温度範囲での、温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との交点の温度が低くなり過ぎず、高温フロー性がより一層向上するため、電子回路実装基板上に塗布されたホットメルトコーティング剤の高温時のフローがより一層抑制される。更に、液状軟化剤(B)の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルトコーティング剤の電気特性である誘電正接の増加がより一層抑制され、電子回路実装基板用途としてより一層好適に用いることができる。
【0046】
(ワックス(C))
本発明のホットメルトコーティング剤は、ワックス(C)を含有していてもよい。ワックス(C)を含有することにより、160℃での溶融粘度(η1)と180℃での溶融粘度(η2)の比(η1/η2)をより一層低下させることができ、塗布時の発泡抑制性がより一層向上し、且つ、タックフリー性がより一層向上する。
【0047】
ワックス(C)としては特に限定されず、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物系ワックス;ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィン系ワックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックス等の酢酸ビニル系ワックスが挙げられる。これらの中でも、発泡抑制性がより一層向上する点で、酢酸ビニル系ワックス、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましく、パラフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックスがより好ましい。
【0048】
ワックス(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
ワックス(C)としては、市販品を用いることができる。パラフィン系ワックスの市販品としては、ペトロチャイナ社製「64−66C」、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、日本精鑞社製「SX105」が挙げられる。
【0050】
ワックス(C)の融点は60℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。ワックス(C)の融点の下限が上記範囲であることにより、本発明のホットメルトコーティング剤の−40℃から130℃の温度範囲で測定される粘弾性測定において、50℃以上の温度範囲での、温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との交点の温度が低くなり過ぎず、耐高温フロー性がより一層向上するため、電子回路実装基板上に塗布されたホットメルトコーティング剤の高温時のフローがより一層抑制される。また、ワックス(C)の融点の上限は特に限定されず、115℃程度である。
【0051】
本発明のホットメルトコーティング剤中のワックス(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましい。ワックス(C)の含有量の上限が上記範囲内であると、ホットメルトコーティング剤が、より一層硬くなり難くなり、脆くなり難くなる。また、
上記ワックス(C)の含有量の下限は特に限定されず、0質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。ワックス(C)の含有量の下限が上記範囲であると、塗布時における発泡抑制性がより一層向上し、実装基板の絶縁信頼性がより一層向上する。
【0052】
(粘着付与剤(D))
本発明のホットメルトコーティング剤は、粘着付与剤(D)を含有していてもよい。粘着付与剤(D)を含有することにより、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングと電子回路実装基板との密着性がより一層向上する。
【0053】
粘着付与剤としては、天然由来の粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤の水素添加物を好適に用いることができる。
【0054】
天然由来の粘着性付与剤としては、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤等が挙げられる。
【0055】
ロジン系粘着付与剤としては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン;重合ロジン;不均化ロジン;水素添加ロジン;マレイン酸変性ロジン;フマール酸変性ロジン等が挙げられる。また、これらのロジン系粘着付与剤をエステル化したエステル化ロジン系粘着付与剤を用いることができ、具体的には、ロジン系粘着付与剤のグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステルが挙げられる。
【0056】
テルペン系粘着付与剤としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等の変性テルペン樹脂等が挙げられる。
【0057】
石油樹脂系粘着付与剤としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂が挙げられる。また、これらの石油樹脂に水素を添加した水添石油樹脂が挙げられ、具体的には、水添C5系樹脂、水添C9系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂、水添C5C9系樹脂等が挙げられる。
【0058】
上記C5系石油樹脂は、石油のC5留分を原料とした石油樹脂である。上記C9系石油樹脂は、石油のC9留分を原料とした石油樹脂である。また、上記C5C9系石油樹脂は、石油のC5留分及びC9留分を原料とした石油樹脂である。C5留分としてはシクロペンタジエン、イソプレン、ペンタンなどが挙げられる。C9留分としてはスチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂としては、C5留分の1種であるシクロペンタジエンに由来するジシクロペンタジエン(DCPD)を骨格中に含むものを好適に用いることができる。
【0059】
粘着付与剤(D)としては、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングと電子回路実装基板との密着性がより一層向上する点で、テルペン系粘着付与剤及びその水素添加物が好ましい。
【0060】
粘着付与剤(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
粘着付与剤(D)としては、市販品を用いることができる。テルペン系粘着付与剤の市販品としては、ヤスハラケミカル社製テルペン樹脂「YSレジンTO−125」が挙げられる。テルペン系粘着付与剤である変性テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製テルペンフェノール樹脂「YSポリスター」、アリゾナケミカル社製「シルバレス1150」、石油樹脂系粘着付与剤である水添石油樹脂としては、出光興産社製「アイマーブP−145」が挙げられる。
【0062】
本発明のホットメルトコーティング剤中の粘着付与剤(D)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として180質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、130質量部以下が更に好ましい。粘着付与剤(D)の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルトコーティング剤のタックフリー性がより一層向上する。また、上記粘着付与剤(D)の含有量の下限は特に限定されず、0質量部であってもよいし、90質量部であってもよい。
【0063】
(固体軟化剤(E))
本発明のホットメルトコーティング剤は、固体軟化剤(E)を含有していてもよい。固体軟化剤(E)を含有することにより、本発明のホットメルトコーティング剤により形成されるコーティングの耐高温フロー性をより一層向上させることができる。
【0064】
固体軟化剤(E)としては特に限定されず、例えば、トリエチレングリコールトリベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、スクロースベンゾエート、ペンタエリトリトールテトラベンゾエート、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、グリセロールトリベンゾエート、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールトリベンゾエートペンタエリトリトールテトラベンゾエート、ネオペンチルグリコールジベンゾエート等が挙げられる。
【0065】
固体軟化剤(E)としては、ホットメルトコーティング剤中で再結晶する固体軟化剤が好ましく、このような固体軟化剤としては、シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート等の、常温で固体の安息香酸エステル系可塑剤が挙げられる。また、固体軟化剤(E)としては、周囲温度で固体であり、軟化点が60℃を越える固体軟化剤がより好ましい。このような固体軟化剤としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(シスおよびトランス異性体を含む)が挙げられる。
【0066】
固体軟化剤(E)としては、市販品を用いることができる。シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートの市販品としては、EASTMAN社製「ベンゾフレックス352」が挙げられる。
【0067】
固体軟化剤(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
本発明のホットメルトコーティング剤中の固体軟化剤(E)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として60質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。固体軟化剤(E)の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルトコーティング剤の耐高温フロー性がより一層向上する。また、上記固体軟化剤(E)の含有量の下限は特に限定されず、0質量部であってもよいし、20質量部であってもよい。
【0069】
(酸化防止剤(F))
本発明のホットメルトコーティング剤は、酸化防止剤(F)を含有していてもよい。
【0070】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0071】
酸化防止剤(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
本発明のホットメルトコーティング剤中の酸化防止剤(F)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)を100質量部として2質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。また、上記酸化防止剤(F)の含有量の下限は特に限定されず、0質量部であってもよいし、0.5質量部であってもよい。
【0073】
(他の添加剤)
本発明のホットメルトコーティング剤は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、他の添加剤を含有していてもよい。上記他の添加剤としては、着色顔料、難燃剤等が挙げられる。
【0074】
着色顔料としては、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0075】
難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤、メラニン系難燃剤、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0076】
本発明のホットメルトコーティング剤中の上記他の添加剤の含有量の合計は、上記熱可塑性樹脂(A)を100質量部として、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、上記他の添加剤の含有量の合計は、上記熱可塑性樹脂(A)を100質量部として、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。上記他の添加剤の含有量の合計を上記範囲とすることにより、本発明のホットメルトコーティング剤が、塗布時の発泡抑制性により一層優れ、塗布後の硬化時間がより一層短くなり、タックフリー性及び耐ブリードアウト性により一層優れるとともに、本発明のホットメルトコーティング剤に所望の性能を付与することができる。
【0077】
本発明のホットメルトコーティング剤は、160℃での溶融粘度(η1)が20000mPa・s以下である。η1が20000mPa・sを超えると、本発明のホットメルトコーティング剤が、吐出機で塗布する際に塗工に適した粘度とならず、部品のリードワイヤー部における気泡の発生が抑制できず、良好な塗膜が得られないため、電子部品の信頼性が低下し、発泡抑制性に劣る。ホットメルトコーティング剤の160℃での溶融粘度(η1)は、16000mPa.s以下が好ましく、15000mPa.s以下がより好ましい。また、ホットメルトコーティング剤の160℃での溶融粘度(η1)は、1000mPa.s以上が好ましく、6000mPa.s以上がより好ましい。
【0078】
本発明のホットメルトコーティング剤は、180℃での溶融粘度(η2)が10000mPa・s以下である。η2が10000mPa・sを超えると、本発明のホットメルトコーティング剤が、吐出機で塗布する際に塗工に適した粘度とならず、部品のリードワイヤー部における気泡の発生が抑制できず、良好な塗膜が得られないため、電子部品の信頼性が低下し、発泡抑制性に劣る。ホットメルトコーティング剤の180℃での溶融粘度(η2)は、6000mPa.s以下が好ましく、4000mPa.s以下がより好ましい。また、ホットメルトコーティング剤の180℃での溶融粘度(η2)は、500mPa.s以上が好ましく、2000mPa.s以上がより好ましい。
【0079】
本明細書において、「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルトコーティング剤の粘度である。160℃での溶融粘度(η1)及び180℃での溶融粘度(η2)は、ホットメルトコーティング剤を加熱溶融し、160℃及び180℃における溶融状態の粘度を、それぞれブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定することにより測定される値である。
【0080】
本発明のホットメルトコーティング剤は、160℃での溶融粘度(η1)と180℃での溶融粘度(η2)との比(η1/η2)が1.0〜5.0である。η1/η2が5.0を超えると、本発明のホットメルトコーティング剤の塗布時の発泡抑制性が低下する。また、η1/η2は、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましく、3.0以下が特に好ましい。また、η1/η2は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。
【0081】
本明細書において、160℃での溶融粘度(η1)と180℃での溶融粘度(η2)との比(η1/η2)は、以下の測定方法により測定される値である。即ち、ホットメルトコーティング剤を加熱溶融し、160℃及び180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定し、それぞれη1及びη2とする。測定結果に基づいて、160℃及び180℃での溶融粘度の比η1/η2を算出することにより測定される値である。
【0082】
本発明のホットメルトコーティング剤は、−40℃から130℃の温度範囲で測定される粘弾性測定において、50℃以上の温度範囲での、温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との交点(以下、単に「交点」とも表す。)の温度が、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。上記交点の温度の下限が上記範囲であることにより、耐高温フロー性がより一層向上し、電子回路実装基板により一層好適に使用できる。また、上記交点の上限は特に限定されず、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0083】
上記交点の温度は、以下の方法により測定することができる。すなわち、ホットメルトコーティング剤を180℃で加熱溶融させ、離型処理されたPETフィルム上に垂らす。次いで、別の離型処理されたPETフィルムを用意し、ホットメルトコーティング剤上に、離型処理された面がホットメルトコーティング剤に接触するよう重ね合わせ、厚みが1mmとなるように熱プレスで圧縮する。次いで、ホットメルトコーティング剤をPETフィルム間に挟んだ状態で23℃の条件下で24時間静置する。次いで、離型フィルムを除去して動的粘弾性測定用試料を作製する。
【0084】
上述のようにして作製された試料を用いて、動的粘弾性測定装置により周波数1Hzの回転せん断モードで、−40℃から130℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分の昇温条件で動的粘弾性測定(昇温過程)を行う。測定により得られた温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との、50℃以上の温度範囲での交点の温度(℃)を測定する。
【0085】
なお、動的粘弾性測定装置としては特に限定されないが、例えば、ティーエーインスツルメント社製ローテェーショナルレオメーター(商品名「AR−G2」)等が挙げられる。
【0086】
上記交点の温度を調整するには、例えば、下記の方法によればよい。具体的には、上記交点の温度を大きく調整するには、融点が高く分子量分布がシャープなワックスを使用すればよく、また、動粘度の高い液状軟化剤を使用すればよい。上記交点の温度を小さく調整するには、融点が低く分子量分布がブロードなワックスを使用すればよく、また、動粘度の低い液状軟化剤を使用すればよい。
【0087】
本発明のホットメルトコーティング剤は、電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤である。電子回路実装基板に搭載されている電子部品としては特に限定されず、例えば、ICチップ等が挙げられる。本発明のホットメルトコーティング剤は、電子部品としてICチップが搭載されている電子回路実装基板に用いるのに好適である。一般に、電子部品がICチップである場合、電子回路実装基板上にホットメルトコーティング剤を塗布すると、ICチップのリードワイヤー部のピッチ隙間から、塗布時に空気が押し出され、泡状となって表出して、絶縁信頼性を低下させる要因となる。本発明のホットメルトコーティング剤は、上述の構成であるので、塗布時の発泡抑制性に優れており、且つ、塗布後の硬化時間が短く、タックフリー性及び耐ブリードアウト性に優れているので、電子回路実装基板用ホットメルトコーティング剤として有用に用いることができる。
【0088】
本発明のホットメルトコーティング剤は、常温(5〜35℃)で固体である。本発明のホットメルトコーティング剤は、上記温度範囲で固体であることにより、塗布後の硬化時間が短く、タックフリー性に優れている。
【0089】
本発明のホットメルトコーティング剤を用いて電子回路実装基板をコーティングする方法としては特に限定されず、従来公知の方法によりコーティングすることができる。このような方法としては、例えば、本発明のホットメルトコーティング剤を150〜180℃程度の温度で溶融させ、吐出機を用いて電子回路実装基板の表面に吐出させ、コーティングを形成する方法が挙げられる。
【0090】
コーティングの厚みは700μm以上が好ましく1000μm以上がより好ましく、1500μm以上が更に好ましい。塗膜の厚みの下限が上記範囲であると、コーティングされた電子回路実装基板の絶縁信頼性がより一層向上する。また、塗膜の厚みは4000μm以下が好ましく3000μm以下がより好ましく、2000μm以下が更に好ましい。塗膜の厚みの上限が上記範囲であると、タック性がより一層向上する。本発明のホットメルトコーティング剤は、上記厚みの範囲であり、コーティングを行う際に電子回路実装基板に枠(ケース)を設ける必要がない点で、ポッティング組成物とは相違する。
【0091】
本発明のホットメルトコーティング剤は、溶剤を含有しないことが好ましい。溶剤を含有しないことにより、塗布後の乾燥工程が不要になり、塗布後の硬化時間をより一層短くすることができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0093】
なお、実施例及び比較例で用いた原料は以下のとおりである。
【0094】
熱可塑性樹脂(A)
(A1)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)(トリブロック構造のSEBS):クレイトンポリマー社製 G−1650(スチレン含有量30質量%、Mw80900)
(A2)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)(ジブロック構造の含有量が約70%のジブロック構造が主体のSEBS):クレイトンポリマー社製 G−1726(スチレン含有量30質量%、Mw31300)
(A3)スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS):旭化成社製 アサプレンT−438(スチレン含有量30質量%、Mw57200)
(A4)オレフィンブロックコポリマー(OBC):ダウケミカル社製 インフューズD9807
(A5)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)(トリブロック構造のSEBS):旭化成社製 N504(スチレン含有量32質量%、Mw240000)
【0095】
液状軟化剤(B)
(B1)パラフィン系プロセスオイル:出光興産社製 PS−90 動粘度90mm
2/S(40℃)
(B2)パラフィン系プロセスオイル:出光興産社製 PS−32 動粘度32mm
2/S(40℃)
(B3)ナフテン系プロセスオイル:出光興産社製 N−90 動粘度90mm
2/S(40℃)
【0096】
ワックス(C)
(C1)パラフィンワックス:ペトロチャイナ社製 Paraffin Wax 64−66C
(C2)フィッシャートロプシュワックス:日本精鑞社製 SX105
【0097】
粘着付与剤(D)
(D1)テルペンフェノール樹脂:アリゾナケミカル社製 シルバレス1150(軟化点150℃)
(D2)水添石油樹脂:出光興産社製 アイマーブP−145(軟化点145℃)
【0098】
固体軟化剤(E)
(E1)1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート:イーストマン・ケミカル社製 ベンゾフレックス352
【0099】
酸化防止剤(F)
(F1)フェノール系酸化防止剤 Evernox 10
【0100】
(実施例及び比較例)
上述した原料を、それぞれ表1に示した配合量で、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入した。150℃で90分間加熱しながら混練し、固体になるまで冷却して、ホットメルトコーティング剤を製造した。
【0101】
得られたホットメルトコーティング剤について、以下の測定条件により特性を評価した。
【0102】
(溶融粘度)
ホットメルト接着剤を加熱溶融し、160℃及び180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)を用いて測定し、それぞれη1及びη2とした。また、測定結果に基づいて、160℃の粘度(η1)と180℃の粘度(η2)との比(η1/η2)を算出した。
【0103】
(動的粘弾性)
動的粘弾性測定用試料を、以下のようにして作製した。すなわち、ホットメルトコーティング剤を180℃で加熱溶融させ、離型処理されたPETフィルム上に垂らした。次いで、別の離型処理されたPETフィルムを用意し、ホットメルトコーティング剤上に、離型処理された面がホットメルトコーティング剤に接触するよう重ね合わせ、厚みが1mmとなるように熱プレスで圧縮した。次いで、ホットメルトコーティング剤をPETフィルム間に挟んだ状態で23℃の条件下で24時間静置した。次いで、離型フィルムを除去して動的粘弾性測定用試料を作製した。
【0104】
上述のようにして作製された試料を用いて、動的粘弾性測定装置により周波数1Hzの回転せん断モードで、−40℃から130℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分の昇温条件で動的粘弾性測定(昇温過程)を行った。測定により得られた温度−貯蔵弾性率G'曲線と、温度−損失弾性率G''曲線との、50℃以上の温度範囲での交点の温度(℃)を測定した。
【0105】
(発泡抑制性)
吐出装置(ノードソン社製、メルター(クリスタルブルー)、アプリケーター(ミニブルーII)、3軸ロボット(w/4XPロボット))を用意した。当該吐出装置に、ICチップが搭載された電子回路実装基板上にホットメルトコーティング剤を全面塗布するプログラミングを行った。次いで、当該吐出装置を用いて塗布温度160℃、ノズル径1.3mm、塗布スピード40mm/S、塗布圧21barの条件で、実装回路基板にホットメルトコーティング剤を膜厚が2000μmになるように全面塗布した。ICチップのリードワイヤー部分の発泡を観察し、下記評価基準に従って評価した。なお、△以上の評価であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:発泡がみられない
○:わずかに発泡がみられるが微細であり、リードワイヤーのピッチ間にまたがっていない
△:発泡がみられるが、リードワイヤーのピッチ間にまたがっておらず、絶縁性に影響がない程度である
×:発泡があり、且つ、ピッチ間にまたがっている
【0106】
(タック性)
上記発泡抑制性の測定方法と同一の方法により、実装回路基板にホットメルトコーティング剤を全面塗布した。30分経過後、塗布したホットメルトコーティング剤の表面に指を押し付けて、下記評価基準に従って評価した。なお、△以上の評価であれば実使用において問題ないと評価される。
○:ベタつきが全くない
△:若干ベタつきがあるが、ホットメルトコーティング剤が指に付着しない
×:ベタつきがあり、指にホットメルト剤が付着する
【0107】
(耐高温フロー性)
70cm×150cmの鋼板上に、180℃に加熱溶融したホットメルトコーティング剤を垂らした。次いで、剥離処理されたPETフィルムをホットメルトコーティング剤上に剥離面がホットメルトコーティング剤に接触するように重ね合わせ、厚みが2mmとなるように熱プレスで圧縮した。常温まで冷却し、ホットメルトコーティング剤の中央部分に一直線状に切り込みを入れて2つの領域に分割し、切り込みが入れられた中央部から片方の領域のホットメルトコーティング剤を端面部まで取き、試料を作製した。上記試料を80℃に加温されたオーブン内に垂直に立てかけ、24時間後に切り込みからのホットメルトコーティング剤の垂れ度合いを測定し、下記評価基準に従って評価した。なお、△以上の評価であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:垂れが全くない
○:垂れが切り込みから1mm未満である
△:垂れが切り込みから1mm〜2mmである
×:垂れが切り込みから2mmを超える
【0108】
(耐ブリードアウト性)
上記発泡抑制性の測定方法で用いた吐出装置と同一の装置により、塗膜の厚みが2mm、面積が5cm×5cm四方になるようにして、離型処理されたPETフィルム上に160℃の温度でホットメルトコーティング剤を塗布し、塗膜を形成した。次いで、当該塗膜をPETフィルムから外し、上質紙上に置いて、23℃の温度条件下で3時間養生した。養生後の塗膜の状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。なお、△以上の評価であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:液状軟化剤のブリードアウトによる滲みがみられない
○:液状軟化剤のブリードアウトによる滲みがわずかにみられる
△:液状軟化剤のブリードアウトがみられるが、問題ない程度である
×:塗膜の形状以上の範囲の上質紙にまで液状軟化剤のブリードアウトによる滲みがみられる
【0109】
結果を表1に示す。なお、表1において、比較例1では、熱可塑性樹脂(A1)が溶融しなかったため評価ができなかった。
【0110】
【表1】