【解決手段】本発明は、圧縮荷重を受けて弾性変形するシール部材10であって、本体部11と、本体部と一体に形成され、本体部よりも変形しやすい易変形部12、13と、易変形部よりも変形しやすく、易変形部を支持する複数の補強部18と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のシール部材10は、電気コネクタ30(
図4参照)と電子機器のケース50(
図6参照)との間の防水のために使用される。なお、本実施形態の各要素における幅方向X、高さ方向Yおよび厚さ方向Zは、図中に示すように定義する。
【0012】
[シール部材10]
シール部材10は、
図4、
図5、
図6に示すように、電気コネクタ30の側面部30aおよび底面部30bにわたって取り付けられる。そして、
図6(b)に示すように、シール部材10は、電子機器のケース50に電気コネクタ30を取り付けるときに、ケース50および電気コネクタ30の間に配置される。
【0013】
本実施形態のシール部材10は、例えば、射出成形により一体成形されたゴム製の部材である。シール部材10の全体形状は、
図1(a),(b)に示すように、図中上側が開いたU字状をなしている。
【0014】
シール部材10は、
図2に示すように、本体部11と、一対の第1フランジ部12と、一対の第2フランジ部13と、一対の鍔部14と、一対のリップ部15とを有している。
【0015】
第1フランジ部12は、本体部11の外周側(
図2の下側)において本体部11の両側面にそれぞれ突出するように形成されている。第2フランジ部13は、本体部11の内周側(
図2の上側)において本体部11の両側面にそれぞれ突出するように形成されている。第1フランジ部12および第2フランジ部13は、その間に溝17を設けることにより、本体部11に比べて高さ方向Yの寸法が小さく設定されている。つまり、第1フランジ部12および第2フランジ部13は、本体部11に対して片持ち梁状に接続される。したがって、第1フランジ部12および第2フランジ部13は、高さ方向Yの荷重を受けると容易に撓む易変形部の一例である。
【0016】
本体部11は、外周側の第1フランジ部12と、内周側の第2フランジ部13とを図中上下につないでいる。シール部材10において、本体部11、第1フランジ部12および第2フランジ部13の部分は、横断面形状が90度倒れた略H字状をなしている。本体部11は、高さ方向Yの寸法が第1フランジ部12および第2フランジ部13に比べて大きい。したがって、本体部11において、例えば第1フランジ部12および第2フランジ部13と同程度の高さ方向Yの荷重を受けたときの圧縮方向の変形量は微小である。
【0017】
鍔部14は、第2フランジ部13の両側にそれぞれ接続されている。鍔部14には、
図1(b)に示すように、受け孔14aおよびスリット14bが形成されている。受け孔14aおよびスリット14bは、
図5(a)に示すように、電気コネクタ30に設けられるピン35および突起36とそれぞれ係合し、電気コネクタ30にシール部材10を位置決めする機能を果たす。
【0018】
図1(b)に示すように、シール部材10の底面部10bの両端から湾曲して高さ方向Yに延長する一対のアーム部10aには、各々の鍔部14から内周方向に支持壁14cが形成されている。シール部材10の内周面には、横断面がC字状の係合凹部16が形成される。この係合凹部16は、シール部材10のアーム部10aにおいては支持壁14cおよび本体部11に臨み、シール部材10の底面部10bにおいては鍔部14および本体部11に臨む。係合凹部16には、電気コネクタ30の外周に設けられる後述の係合凸部34(
図8参照)が係合される。
【0019】
また、支持壁14cの外面には、
図1(a),(b)、
図4に示すように、高さ方向Yに沿って延長する案内溝14dが形成されている。案内溝14dは、電気コネクタ30に設けられる不図示のキーと係合する。案内溝14dは、電気コネクタ30にシール部材10を取り付けるときに、挿抜方向である高さ方向Yにシール部材10を案内するとともに、電気コネクタ30からシール部材10が幅方向Xに離脱しないように抜け止めする機能を果たす。
【0020】
第1フランジ部12および第2フランジ部13は、厚さ方向Zに沿って略平行に延長し、本体部11の両側面において本体部11よりも厚さ方向Zに突出している。そのため、シール部材10の両側面には、第1フランジ部12、第2フランジ部13および本体部11に臨み、厚さ方向Zにくぼんだ溝17が形成される。
図2においては、溝17の横断面が略V字状に形成されている例を示す。しかし、溝17の横断面は、例えばC字状、U字状、半円状等の他の形状であってもよい。
【0021】
シール部材10の底面部10bが高さ方向Yに圧縮されると、第1フランジ部12および第2フランジ部13が溝17の内側に向けて撓み、高さ方向Yにおいて溝17の間隔が小さくなるようにシール部材10が変形する。このとき、本体部11が圧縮されることに伴って、高さ方向Yには反力が生じる。
【0022】
シール部材10のアーム部10aにおいては、シール部材10の内周側から外周側の方向を圧縮方向として、底面部10bと同様にシール部材10が圧縮されて変形する。そのため、アーム部10aにおいては圧縮方向が高さ方向Yと一致しない。以下、シール部材10の圧縮については、特に断りのないかぎり底面部10bの場合を説明するものとする。
【0023】
図1(a)に示すように、溝17は、シール部材10の一端から他端にわたってシール部材10の延長方向に沿って形成されている。また、溝17の内側には、第1フランジ部12および第2フランジ部13に接続された複数のリブ18が配置されている。リブ18は、シール部材10の延長方向において所定間隔ごとに配置されている。このリブ18は、シール部材10が高さ方向Yに圧縮されたときに、高さ方向Yへの反力を調整する機能を果たす。リブ18は補強部の一例である。
【0024】
各々のリブ18は、
図3に示すように、第1要素18aと、第2要素18bとを有する。第1要素18aの一端は第1フランジ部12に接続され、第1要素18aの他端は第2要素18bの一端に接続されている。また、第2要素18bの他端は第2フランジ部13に接続されている。第1要素18aはシール部材10の高さ方向Yに対して傾いて配置され、第2要素18bはシール部材10の高さ方向Yに対して第1要素18aとは逆向きに傾いて配置される。第1要素18aおよび第2要素18bは、シール部材10の高さ方向Yの中央で折り返されて接続されている。第1要素18aの他端と第2要素18bの一端をつなぐ部分を折曲部18cとも称する。そのため、リブ18は、第1要素18aおよび第2要素18bが折れ曲がって接続された折線状に形成されている。
なお、リブ18の形状は折線状に限定されず、例えば円弧状などの湾曲した形状であってもよい。
【0025】
リブ18は、第1フランジ部12および第2フランジ部13を曲げによる弾性で支持している。第1フランジ部12および第2フランジ部13が溝17の内側に向けて撓むときに、第1要素18aおよび第2要素18bが撓むことで、リブ18は高さ方向Yに反力を生じさせる。
第1要素18aおよび第2要素18bがそれぞれ高さ方向Yに対して傾いているため、リブ18が高さ方向Yの荷重をうけると、第1要素18aおよび第2要素18bが倒れやすい。そのため、シール部材10が高さ方向Yに圧縮されると、第1フランジ部12および第2フランジ部13が溝17の内側に向けて撓む変形に伴って、リブ18は、第1要素18aと第2要素18bのなす角度が次第に小さくなって閉じるように変形する。リブ18は折り曲げられていることから、第1フランジ部12および第2フランジ部13よりも変形しやすく、第1フランジ部12および第2フランジ部13の変形を妨げない。
【0026】
各々のリブ18は、
図1(a)に示すように、シール部材10の図中右側の端部から底面部10bに向けて、アーム部10aにおけるリブ18の折れ曲がる方向が時計回りの方向に揃えられている。また、シール部材10の図中左側の端部から底面部10bに向けて、アーム部10aにおけるリブ18の折れ曲がる方向が反時計回りの方向に揃えられている。
【0027】
つまり、シール部材10においては、
図1(a)左側のリブ18の配置と、
図1(a)右側のリブ18の配置は左右対称となっている。シール部材10のリブ18を左右対称に配置することで、左右のアーム部10aにおける第1フランジ部12および第2フランジ部13の変形を均等にしやすい。
【0028】
また、シール部材10をケースに押し込むときには、シール部材10の底面部10bは、高さ方向Yからの圧縮荷重を受ける。一方、シール部材10のアーム部10aは高さ方向Yに沿って延長するので、シール部材10を押し込むときにシール部材の延長方向の荷重を受ける。本実施形態においては、上記のように、アーム部10aにおけるリブ18の折れ曲がる方向は、シール部材10の端部から底面部10bに向けて揃えられている。そのため、アーム部10aにおいてはシール部材10が押し込まれる方向にリブ18が折れ曲がりやすくなる。
【0029】
なお、
図1(a)ではシール部材10の一方の側面(電気コネクタ30の正面側)における溝17およびリブ18の配置を示すが、シール部材10の他方の側面(電気コネクタ30の背面側)における溝17およびリブ18の配置も一方の側面と同様である。
【0030】
一対のリップ部15は、
図2に示すように、本体部11の第1フランジ部12の外周側(
図2の下側)にそれぞれ立設される。
図1(a)に示すように、一対のリップ部15は、シール部材10の一端から他端にわたってシール部材10の延長方向に沿って形成されている。
また、本実施形態において、各々のリップ部15の横断面は二等辺三角形状をなしており、その底辺部分が第1フランジ部12に接続されている。なお、リップ部15の横断面は、二等辺三角形状に限定されることなく、例えば、不等辺三角形状などの他の形状であってもよい。
【0031】
リップ部15は、第1フランジ部12に支持されており、リップ部15の頂点15aは、
図2に示すように、厚さ方向Zにおいて溝17の形成されている領域に位置している。つまり、リップ部15の頂点15aは厚さ方向Zにおいて本体部11よりも外側に位置している。
そのため、厚さ方向Zにおいて、一対のリップ部15の頂点15aの間隔L1は、本体部11の幅L2より大きく設定される(L1>L2)。
【0032】
シール部材10が高さ方向Yに圧縮されると、第1フランジ部12は溝17の内側に向けて撓む。また、第1フランジ部12に支持されるリップ部15は、シール部材10の外側に倒れるように変形する。そのため、シール部材10が高さ方向Yに圧縮されると、一対のリップ部15は互いの先端の間隔が開くように変形する。
【0033】
[電気コネクタ30]
本実施形態の電気コネクタ30は、厚さ方向Zをコネクタ嵌合方向として、不図示の相手コネクタと嵌合する雄コネクタである。
図6(a),(b)に示すように、電気コネクタ30は、電子機器に実装される配線基板52の縁部に取り付けられる。
【0034】
電気コネクタ30のハウジング31は、例えば、電気絶縁性の樹脂材料(ポリブチレンテレフタラート等)を射出成形することで一体的に形成される。ハウジング31には、
図5(b)に示すように、電気コネクタ30の側面部30aおよび底面部30bにわたって、シール部材10を保持するシール保持部32が形成されている。また、ハウジング31の背面には、配線基板52への固定に用いられるねじ穴31aが設けられている。
【0035】
電気コネクタ30のハウジング31は、厚さ方向Zに延長する複数の雄コンタクト33をそれぞれ保持する。雄コンタクト33は、導電性を有する金属材料、例えば銅合金の板材を打ち抜き加工することで形成される。各々の雄コンタクト33は、ハウジング31の正面側から背面側に引き出され、背面側において配線基板52の不図示のスルーホールと電気的に接続されている。
【0036】
シール保持部32の内側には、シール保持部32の延長方向に沿って係合凸部34(
図8−
図10参照)が形成されている。また、シール保持部32の内側には、受け孔14aと係合するピン35と、スリット14bと係合する突起36がそれぞれ形成されている。
【0037】
電気コネクタ30のシール保持部32には、
図4に示すように、図中下側からシール部材10を取り付けることが可能である。本実施形態では、シール部材10を取り付けた状態の電気コネクタ30をコネクタ組立体40とも称する。
【0038】
[ケース50]
本実施形態のケース50は、
図6(a),(b)に示すように、図中上面側が開口した箱体であり、ケース50の内部には、配線基板52を収容することができる。ケース50の上面は蓋51により閉塞される。本実施形態のケース50および蓋51は、例えばアルミニウム合金等の金属材料で形成されるが、樹脂材料の射出成形によってケース50および蓋51を形成してもよい。
【0039】
ケース50には電気コネクタ30の外形に対応する切り欠き50aが形成されている。この切り欠き50aは、間口側が広く奥行側が狭い逆台形状である。
ケース50に配線基板52を収容するときには、コネクタ組立体40を
図6の上側から切り欠き50aに係合させて電気コネクタ30の正面側をケース50の外部に露出させることができる。このとき、コネクタ組立体40とケース50の切り欠き50aとの間は、電気コネクタ30に取り付けられたシール部材10によって防水性が確保される。
【0040】
また、コネクタ組立体40をケース50に取り付けた状態において、切り欠き50aに係合した電気コネクタ30の上面部30cと、ケース50の上面50bは面一になる。電気コネクタ30の上面部30cにはシール部材10は配置されていないが、
図7に示すように、電気コネクタ30の上面部30c、ケース50の上面50bと蓋51の間には、液状ガスケットの塗布によって防水層53が形成される。この防水層53により、電気コネクタ30の上面部30cと蓋51の間およびケース50の上面50bと蓋51の間で防水性が確保される。
【0041】
[電子機器の組み立て]
電子機器の組み立てでは、ケース50内に配線基板52を配置する。このとき、配線基板52に取り付けられたコネクタ組立体40をケース50の切り欠き50aに挿入する。
切り欠き50aの形状は、間口側が広く奥行側が狭い逆台形状である。したがって、切り欠き50aの間口にコネクタ組立体40のシール部材10を干渉させずに、電気コネクタ30を切り欠き50aに挿入できる。これにより、コネクタ組立体40を切り欠き50aに容易に配置できる。
【0042】
ケース50の切り欠き50aにコネクタ組立体40を配置すると、シール部材10のリップ部15がケース50に接触する。この状態においては、コネクタ組立体40の自重を除いてシール部材10には図中上側から力がかかっていない。そのため、電気コネクタ30の底面部30bにおいては、一対のリップ部15は高さ方向Yに沿って立った形状を保っている(
図8参照)。
【0043】
次に、電気コネクタ30の上面部30cおよびケース50の上面50bに液状ガスケットを塗布する。その後に、ケース50に蓋51を取り付ける。
ケース50に蓋51を取り付けると、コネクタ組立体40が蓋51に押されて切り欠き50aに押し込まれる。これにより、電気コネクタ30の底面部30bおよび側面部30aにおいては、シール部材10が以下のように変形する。
【0044】
電気コネクタ30の底面部30bにおけるシール部材10の変形の過程を
図11に模式的に示す。
図11においては、シール部材10の要素をモデル化して簡易に示している。
【0045】
図11(a)は、シール部材10が圧縮されていない初期状態を示している。
図11(a)に示した状態は、
図8に対応している。
【0046】
各々のリップ部15は、厚さ方向Zの寸法が本体部11よりも薄いので、本体部11と比べると撓みやすい。また、リップ部15は、溝17を形成することにより本体部11に比べて厚さ方向Zの寸法が小さい第1フランジ部12に支持されている。前述したように、第1フランジ部12は厚肉の本体部11と比べると容易に撓んで変形する。しかも、リップ部15の頂点15aは厚さ方向Zにおいて本体部11よりも外側に位置している。
【0047】
そのため、シール部材10が高さ方向Yに圧縮されると、
図9、
図11(b)に示すように、ケース50に接触しているリップ部15は、ケース50に接触する先端が互いに離れるように、つまり外に開くように弾性変形して傾き始める。第1フランジ部12は、リップ部15が傾くことに連動して荷重を受けるので、溝17の内側に向けてわずかに撓む。このとき、本体部11は圧縮変形しないか、圧縮変形しても微小である。
【0048】
そして、シール部材10がさらに高さ方向Yの荷重を受けると、
図11(c)に示すように、リップ部15はさらに傾いて倒れるように変形が進む。このように、電気コネクタ30のケース50への変位が大きくなるにつれて、リップ部15の先端における間隔が広くなる。
【0049】
また、ケース50の変位がさらに大きくなると、
図11(d)に示すように、第1フランジ部12および第2フランジ部13の撓みが限界に達し、リップ部15の変形も限界に達する。そうすると、本体部11に圧縮による変形が生じ、本体部11によるシール部材10の反力が生ずる。
【0050】
図10は、第1フランジ部12と第2フランジ部13が接し、第1フランジ部12と第2フランジ部13の撓みが限界に達した状態を示している。
図10の状態においては、第1フランジ部12と第2フランジ部13を合わせた高さ方向Yの寸法よりも、本体部11の高さ方向Yの寸法が大きい。よって、電気コネクタ30をケース50に近づけるように変位させると、本体部11がこの変位による荷重を受けて圧縮変形する。これにより、シール部材10の一対のリップ部15がいずれも外側に開いてケース50と接触し、シール部材10の第2フランジ部13がコネクタ組立体40の係合凸部34と接触する。このとき、本体部11が高さ方向Yに圧縮変形されることで、リップ部15がケース50に密着し、第2フランジ部13が係合凸部34と密着する。これにより、ケース50と電気コネクタ30との間の防水性が確保される。
【0051】
次に、電気コネクタ30の側面部30aにおけるシール部材10の変形を説明する。
シール部材10が図中上側から押されると、シール部材10が図中下側に移動することで、電気コネクタ30の側面部30aにおいてシール部材10と切り欠き50aとの間隔が小さくなる。これにより、電気コネクタ30の側面部30aにおいてもシール部材10が切り欠き50aに押し付けられて、底面部30bと同様にシール部材10が変形する。
【0052】
ここで、シール部材10をケースに押し込むときには、シール部材10の底面部10bは、高さ方向Yからの圧縮荷重を受ける。一方、シール部材10のアーム部10aは高さ方向Yに沿って延長するので、シール部材10を押し込むときにシール部材10の延長方向からの荷重を受ける。
本実施形態におけるシール部材10のリブ18は、シール部材10の端部から底面部10bに向けて、アーム部10aにおけるリブ18の折れ曲がる方向が揃えられている。つまり、電気コネクタ30の側面部30aにおいて、各々のリブ18はシール部材10が押し込まれる方向である図中下側に折れ曲がりやすい。そのため、電気コネクタ30の側面部30aにおいては、リブ18の折れ曲がりやすい方向とシール部材10が押し込まれる方向が一致するため、シール部材10が押し込まれたときに、アーム部10aのリブ18が折れ曲がりやすい。
【0053】
以下、
図12を参照しつつ、本実施形態のシール部材10の変形および反力の関係を説明する。ここで、
図12の縦軸はシール部材10を高さ方向Yに圧縮するときの荷重(反力)を示し、
図12の横軸はケース50がリップ部15に接触してからのシール部材10の高さ方向Yの変位量を示す。
【0054】
シール部材10は、
図12に示すように、変位量に対して反力が比例的に増加する初期弾性域S1と、初期弾性域S1に続く、変位量に対して反力がほとんど増加しない中間領域S2と、中間領域S2に続く、変位量に対して反力が比例的に増加する後期弾性域S3と、を発現する。
【0055】
初期弾性域S1は、シール部材10においてリップ部15の先端にケース50が接触してからのケース50の変位に伴って、リップ部15および第1フランジ部12、第2フランジ部13が上述した変形をする。初期弾性域S1は、例えば
図11(a)および(b)が対応する。
【0056】
中間領域S2は、リップ部15および第1フランジ部12、第2フランジ部13の変形がさらに進み、例えば、第1フランジ部12と第2フランジ部13が接して変形量が限界に達するまでの範囲である。この間は、ケース50の変位量を増やしても、リップ部15および第1フランジ部12、第2フランジ部13が極めて容易に変形するために、シール部材10の反力はほとんど増えない。
【0057】
後期弾性域S3においては、第1フランジ部12および第2フランジ部13の変形が限界に達した後に、ケース50をさらに変位させることにより、本体部11に反力が生じる。この本体部11の反力はケース50の高さ方向Yの変位量に比例して大きくなる。
【0058】
ここで、各領域における反力の大きさは、シール部材10の材料やリブ18の形状および寸法によって決定される。特に、領域S2においては本体部11とリブ18の圧縮によって反力が生じる。例えば、領域S2における反力を大きくする場合にはリブ18の本数を多くするか、各々のリブ18を厚くすればよい。領域S2における反力を小さくする場合にはリブ18の本数を少なくするか、各々のリブ18を薄くすればよい。このように、本実施形態においては、シール部材10のリブ18の形状および寸法を調整することで、シール部材10の材料を変更しなくともシール部材10の反力を容易に調整することができる。
【0059】
[効果]
以下、本実施形態のシール部材10の効果を述べる。
本実施形態のシール部材10は、ケース50にリップ部15が接してから第1フランジ部12、第2フランジ部13の変形が限界に達するまでは、リップ部15、第1フランジ部12および第2フランジ部13が本体部11より先行して変形する。シール部材10のリップ部15、第1フランジ部12および第2フランジ部13は、変形しやすいので、シール部材10に生ずる反力は小さい。よって、コネクタ組立体40をケース50に取り付ける作業に必要な力を抑えることができる。
【0060】
第1フランジ部12、第2フランジ部13の変形が限界に達してからは、リップ部15、第1フランジ部12および第2フランジ部13に代わって本体部11が弾性変形の対象となって反力を生じさせる。本体部11は、弾性変形しにくいので、リップ部15などに比べて大きな反力を生じさせる。これにより、シール部材10の防水性能を確保できる。
【0061】
また、第1フランジ部12および第2フランジ部13の間には、圧縮荷重を受けるリブ18が形成されている。第1フランジ部12および第2フランジ部13は、リブ18で支持されることで反力が生じるため、シール部材10の反力をリブ18で補うことができる。リブ18は、折り曲げられていることで第1フランジ部12および第2フランジ部13よりも変形しやすいので、第1フランジ部12および第2フランジ部13の変形を妨げることはない。
また、シール部材10に生ずる反力の大きさを、リブ18の形状および寸法で微調整することもできる。
【0062】
本実施形態のシール部材10において、一対のリップ部15は、本体部11の外周側において両側にそれぞれ突出した第1フランジ部12にそれぞれ支持されている。そして、横断面における一対のリップ部15の頂点15aは、本体部11よりも外側に位置している。そのため、本実施形態においては、厚さ方向Zにおいて、リップ部15同士の頂点15aの間隔L1は、本体部11の幅L2より大きく設定されている(L1>L2)。これにより、リップ部15に力がかかると第1フランジ部12の撓みに伴ってリップ部15は外側に倒れるように変形し、一対のリップ部15を互いの先端の間隔が開くように変形させることができる。
【0063】
また、本実施形態のシール部材10は全体形状がU字状に形成され、電気コネクタ30の底面部30bおよび側面部30aに取り付けられる。電子機器の組み立てにおいては、シール部材10の弾性変形により、コネクタ組立体40と切り欠き50aとの幅方向Xまたは高さ方向Yの寸法公差を吸収することもできる。
【0064】
また、本実施形態のシール部材10は、電気コネクタ30の底面部30bおよび側面部30aに取り付けられる。つまり、電子機器の組み立てにおいて、蓋51との接触面である電気コネクタ30の上面部30cには、反力を生じさせるシール部材10は配置されていない。そのため、電気コネクタ30の上面部30cとケース50の上面50bとで蓋51を取り付けるときの条件を揃えることができ、電子機器の組み立てにおける作業性を向上させることができる。
【0065】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択することや、他の構成に適宜変更することが可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、シール部材10を電気コネクタ30に取り付ける構成例を説明したが、シール部材10をケース50に取り付けるようにしてもよい。また、シール部材10のリップ部15を、電気コネクタ30との取付面に設けるようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、リップ部15の先端を外側に傾けるように予め形成してもよい。この場合には、リップ部15の頂点を本体部11よりも外側に位置させなくても、リップ部15を外側に傾くように変形させることができる。
【0068】
上記実施形態においては、本体部11の厚さ方向Zの両側(両端)に溝17を設けることで易変形部を設けた例を説明した。しかし、本発明の易変形部は本体部よりも薄肉な部分で構成されるものであればよく、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本体部11の厚さ方向Zの中央に溝(17)を設け、一対のリップ部15を内側に傾くようにしてもよい。この場合、厚さ方向Zの両側(両端)が中実な本体部11に該当する。