【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含むセロハンシートと、DHBを含まないセロハンシートとを準備し、それぞれをITOスライドガラスに導電性両面テープを用いて接着した。
テープ部分に厚さ10μmのラット脳の凍結切片を貼り付けた。
これをイメージング質量顕微鏡(商品名iMScope;島津製作所社製)を用いて正(ポジティブ)イオンモードにて解析した。結果を
図1及び2に示す。
【0028】
図1a)は上記得られたラット脳の凍結切片の電子顕微鏡写真を示す図である。また、
図2は、
図1a)に対応するイメージング質量分析画像であって、m/z:798.5のピークの強度をAU(任意強度)で表してイメージングした画像である。
図1a)中、ROI(Region Of Interest)矩形1は、DHB(+)切片(+)の領域を示し、
ROI矩形2は、DHB(−)切片(+)の領域を示し、
ROI矩形3は、DHB(+)切片(−)の領域を示し、
ROI矩形4は、DHB(−)切片(−)の領域を示す。
図1b)における1は、ROI矩形1におけるMSスペクトルを示し、2は、ROI矩形2におけるMSスペクトルを示し、3は、ROI矩形3におけるMSスペクトルを示し、4は、ROI矩形4におけるMSスペクトルを示す。
図1b)の1及び2の比較から、DHBを含むシートを用いることにより生体分子のイオン化が促進されていることが分かる。
特に、
図1b)の1及び3の比較から、DHBを含むシートを用いることにより、ラット脳切片におけるm/z:798.5の生体分子(リン脂質の一種)由来のピークが検出されたことが分かる。
【0029】
また、
図2から、m/z:798.5の生体分子(リン脂質の一種)の切片中における分布の濃淡が分かる。
【0030】
<実施例2>ポジティブイオンモード
厚さ10μmのラット脳の凍結切片を貼り付けた各種シート(No.585、GA5905、No.500、No.5035K、No.5919MLW、VR−5300、GR−5331(いずれも日東電工社製))をそれぞれITOスライドガラスに接着してイメージング質量顕微鏡(商品名iMScope;島津製作所社製)を用いてポジティブイオンモードにてm/z650〜900の範囲のマススペクトルを測定した。分析条件は、以下の通りであり、下記(1)〜(4)のように各種レーザー強度にて測定した。
【0031】
(レーザー照射条件)
レーザー照射回数:200ショット
レーザー繰り返し周波数:1000Hz
照射径:最小
(質量分析条件)
サンプル電圧:3.5kV
検出器電圧:2.1kV
MS段階:1
積算回数:1回/ピクセル
【0032】
また、比較例としてDHBを含むマトリックスを用いてMALDI法によっても厚さ10μmのラット脳のマススペクトルを測定した。
【0033】
(1)レーザー強度35の場合
図3は、レーザー強度35(%)の場合の測定結果を示す図であり、a)はシートVR−5300を、b)はシートGR−5331をそれぞれ用いた場合、c)は比較例としてMALDI法による場合の測定結果を示す図である。
【0034】
図3a)〜c)に示した結果から明らかなように、MALDI法による比較例はベースラインに数多のノイズピークが観測されるのに対し、シートVR−5300を用いた実施例、シートGR−5331を用いた実施例はいずれも、ノイズピークがほとんどみられず、S/N比が向上していることが分かる。また、MALDI法による比較例における生体分子由来と思われるm/z:772.5付近、798.5付近のピークとは、異なる多くの生体分子由来と思われるピークが、シートVR−5300を用いた実施例、シートGR−5331を用いた実施例において検出された。それらピークは上記各種シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0035】
比較例として、ラット脳の凍結切片を貼り付けていない各種シート(No.585、GA5905、No.500、No.5035K、No.5919MLW、VR−5300、GR−5331)をそれぞれITOスライドガラスに接着したこと以外は上記と同様にポジティブイオンモードにてマススペクトルを測定した。
図4は、比較例としてラット脳の凍結切片を貼り付けずに、レーザー強度35(%)にてマススペクトルを測定した結果を示す図であり、a)はシートNo.585を、b)はシートGA5905を、c)はシートNo.500を、d)はシートNo.5035Kを、e)はシートNo.5919MLWを、f)はシートVR−5300を、g)はシートGR−5331をそれぞれ用いた場合の測定結果を示す図である。
【0036】
図4a)〜g)に示した結果から明らかなように、
図3a)及びb)に示した実施例の結果とは異なり、ラット脳の凍結切片を貼り付けない各種シート(No.585、GA5905、No.500、No.5035K、No.5919MLW、VR−5300、GR−5331)では全くピークが観察されないことが分かる。
なお、
図4g)に観られるm/z:707付近、810.6付近のピークはスパイクノイズと考えられる。
【0037】
(2)レーザー強度40の場合
図5は、レーザー強度40(%)の場合の測定結果を示す図であり、a)はシートNo.500を、b)はシートNo.5919MLWを、c)はシートGR−5331をそれぞれ用いた場合、d)は比較例としてMALDI法による場合の測定結果を示す図である。
【0038】
図5a)〜d)に示した結果から明らかなように、MALDI法による比較例はベースラインに数多のノイズピークが観測されるのに対し、シートNo.500を用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例、シートGR−5331を用いた実施例はいずれも、ノイズピークがほとんどみられず、S/N比が向上していることが分かる。また、MALDI法による比較例における生体分子由来と思われるm/z:772.5付近、798.5付近のピークとは、異なる多くの生体分子由来と思われるピークが、シートNo.500を用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例、シートGR−5331を用いた実施例において検出された。それらピークは上記各種シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0039】
(3)レーザー強度45の場合
図6は、レーザー強度45(%)の場合の測定結果を示す図であり、a)はシートNo.585を、b)はシートNo.5035Kを、c)はシートNo.5919MLWをそれぞれ用いた場合、d)は比較例としてMALDI法による場合の測定結果を示す図である。
【0040】
図6a)〜d)に示した結果から明らかなように、MALDI法による比較例はベースラインに数多のノイズピークが観測されるのに対し、シートNo.585を用いた実施例、シートNo.5035Kを用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例はいずれも、ノイズピークがほとんどみられず、S/N比が向上していることが分かる。また、MALDI法による比較例における生体分子由来と思われるm/z:772.5付近、798.5付近のピークとは、異なる多くの生体分子由来と思われるピークが、シートNo.585を用いた実施例、シートNo.5035Kを用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例において検出された。それらピークは上記各種シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0041】
(4)レーザー強度50の場合
図7は、レーザー強度50(%)の場合の測定結果を示す図であり、a)はシートNo.500を、b)はシートNo.5035Kを、c)はシートNo.5919MLWを、d)はシートVR−5300をそれぞれ用いた場合、e)は比較例としてMALDI法による場合の測定結果を示す図である。
【0042】
図7a)〜e)に示した結果から明らかなように、MALDI法による比較例はベースラインに数多のノイズピークが観測されるのに対し、シートNo.500を用いた実施例、シートNo.5035Kを用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例、シートVR−5300を用いた実施例はいずれも、ノイズピークがほとんどみられず、S/N比が向上していることが分かる。また、MALDI法による比較例における生体分子由来と思われるm/z:772.5付近、798.5付近のピークとは、異なる多くの生体分子由来と思われるピークが、シートNo.500を用いた実施例、シートNo.5035Kを用いた実施例、シートNo.5919MLWを用いた実施例、シートVR−5300を用いた実施例において検出された。それらピークは上記各種シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0043】
<実施例3>ネガティブイオンモード
測定モードをネガティブイオンモードに変更し、レーザー強度を30に変更すること以外は実施例2と同様にしてマススペクトルを測定した。
比較例として9−アミノアクリジン(9AA)を含むマトリックスを用いてMALDI法によってもラット脳のマススペクトルを測定した。
【0044】
図8は、ネガティブイオンモードにてレーザー強度30(%)の場合の測定結果を示す図であり、a)はシートNo.5919MLWを用いた場合、b)は比較例としてMALDI法による場合の測定結果を示す図である。
【0045】
図8a)及びb)に示した結果から明らかなように、MALDI法による比較例はベースラインに数多のノイズピークが観測されるのに対し、シートNo.5919MLWを用いた実施例は、ノイズピークがほとんどみられず、S/N比が向上していることが分かる。また、MALDI法による比較例における生体分子由来と思われるピークとは、異なる多くの生体分子由来と思われるピークが、シートNo.5919MLWを用いた実施例、シートGR−5331を用いた実施例において検出された。それらピークは上記各種シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0046】
<実施例4>DESIポジティブイオンモード
厚さ10μmのラット脳の凍結切片を貼り付けた各種シート(No.585、GA5905、No.500、No.5035K、No.5919MLW、VR−5300、GR−5331(いずれも日東電工社製))をそれぞれITOスライドガラスに接着してイメージング質量分析計(商品名Xevo G2−XS;日本ウォーターズ社製)を用いてDESIにてm/z50〜1200の範囲のマススペクトルを測定した。分析条件は、以下の通りであり、下記(1)〜(7)のように各種シートを用いて測定した。
【0047】
(条件)
ポジティブイオンモード
溶媒:98%メタノール
溶媒流速:2μL/分
インレット温度:120℃
窒素ガス圧:0.4MPa
スプレーインパクト角:80°
キャピラリー電圧:4kV
ピクセルサイズ:100μm
スキャン速度:200μm/秒
結果を
図9〜15におけるa)に示す。
【0048】
比較例として、ラット脳の凍結切片を貼り付けていない各種シート(No.585、GA5905、No.500、No.5035K、No.5919MLW、VR−5300、GR−5331)をそれぞれITOスライドガラスに接着したこと以外は上記と同様にDESIポジティブイオンモードにてマススペクトルを測定した。結果を
図9〜15におけるb)に示す。
【0049】
また、別の比較例として、シートを使用せずに、厚さ10μmのラット脳の凍結切片を直接貼り付けたこと以外は上記と同様にDESIポジティブイオンモードにてマススペクトルを測定した。結果を
図9〜15におけるc)に示す。
【0050】
(1)シートNo.585を使用
図9a)は、シートNo.585を用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0051】
図9a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:546付近、826.6付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0052】
(2)シートGA5905を使用
図10a)は、シートGA5905を用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0053】
図10a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:212.9付近、826.6付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0054】
(3)シートNo.500を使用
図11a)は、シートNo.500を用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0055】
図11a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:337.2付近、441.2付近、485.3付近、589.3付近、633.4付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0056】
(4)シートNo.5035Kを使用
図12a)は、シートNo.5035Kを用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0057】
図12a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:208付近、407.3付近、408.3付近、592.4付近、959.8付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0058】
(5)シートNo.5919MLWを使用
図13a)は、シートNo.5919MLWを用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0059】
図13a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:209.1付近、591.4付近、955.6付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0060】
(6)シートVR−5300を使用
図14a)は、シートVR−5300を用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0061】
図14a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:826.6付近のピークがa)に示した実施例において検出された。このピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0062】
(7)シートGR−5331を使用
図15a)は、シートGR−5331を用いたDESIポジティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0063】
図15a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:341.2付近、437.3付近、826.6付近、872.6付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0064】
<実施例5>DESIネガティブイオンモード
測定モードをネガティブイオンモードに変更すること以外は実施例4と同様にしてDESIにてマススペクトルを測定した。
【0065】
(1)シートNo.585を使用
図16a)は、シートNo.585を用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0066】
図16a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:346.1付近のピークがa)に示した実施例において検出された。このピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0067】
(2)シートGA5905を使用
図17a)は、シートGA5905を用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0068】
図17a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:215付近、396.3付近、834.5付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0069】
(3)シートNo.500を使用
図18a)は、シートNo.500を用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0070】
図18a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:215付近、396.3付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0071】
(4)シートNo.5035Kを使用
図19a)は、シートNo.5035Kを用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0072】
図19a)〜c)に示した結果から明らかなように、c)に示したシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの比較例の測定結果に比べて、a)に示した実施例のピーク強度はおおよそ半分程度になったものの、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:346.1付近、834.5付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0073】
(5)シートNo.5919MLWを使用
図20a)は、シートNo.5919MLWを用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0074】
図20a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:346.1付近、834.5付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0075】
(6)シートVR−5300を使用
図21a)は、シートVR−5300を用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0076】
図21a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:346.1付近、385.3付近、459.3付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。
【0077】
(7)シートGR−5331を使用
図22a)は、シートGR−5331を用いたDESIネガティブイオンモードの測定結果を示す図であり、b)はラット脳の凍結切片を貼り付けていないシートのみの測定結果を示す図であり、c)はシートを使用していないラット脳の凍結切片のみの測定結果を示す図である。
【0078】
図22a)〜c)に示した結果から明らかなように、b)及びc)に示した比較例では観察されない生体分子由来と思われるm/z:395.5付近、396.3付近のピークがa)に示した実施例において検出された。これらピークは上記シートが、プロトン供与性基、プロトン受容性基、電子供与性基及び電子受容性基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を含む樹脂を含むことにより増強されたピークと考えられ、分析検出データの精度、再現性及び定量性を向上し得るといえる。