特開2020-52910(P2020-52910A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-52910(P2020-52910A)
(43)【公開日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20200306BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-183959(P2018-183959)
(22)【出願日】2018年9月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀規
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】中村 颯月
(72)【発明者】
【氏名】河村 一利
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA03
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AC06
5G405AD02
5G405AD05
5G405BA08
5G405CA05
5G405CA22
5G405CA23
5G405CA30
5G405CA31
5G405CA51
(57)【要約】
【課題】火災受信機がP型受信機である場合でも、火災を検知した火災感知器をピンポイントで特定することが可能な火災報知システムを提供する。
【解決手段】警戒区域Rごとに配設された回線3に接続された単数又は複数の火災感知器2と、各警戒区域Rの回線3がそれぞれ接続されたP型受信機4とを備える火災報知システム1において、火災感知器2ごとに、火災感知器2が火災を検知した際にその固有情報Eを発信する発信装置6を備え、火災感知器2の固有情報Eと警戒区域Rにおける火災感知器の位置Fとを対応付ける対応表を記憶するサーバ8と、警戒区域Rに配置され、発信装置6から発信された固有情報Eをサーバ8に送信可能な送受信装置7とを備え、サーバ8は、送受信装置7から固有情報Eが送信されてくると、対応表に基づいて固有情報Eに対応する火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fを割り出して情報端末9に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒区域ごとに配設された回線に接続された単数又は複数の火災感知器と、前記各警戒区域の前記回線がそれぞれ接続されたP型受信機とを備える火災報知システムにおいて、
前記火災感知器ごとに、前記火災感知器が火災を検知した際に当該火災感知器の固有情報を発信する発信装置を備え、
前記火災感知器の固有情報と前記警戒区域における前記火災感知器の位置とを対応付ける対応表を記憶するサーバと、
前記警戒区域に配置され、前記発信装置から発信された前記固有情報を受信して前記サーバに送信可能な送受信装置と、を備え、
前記サーバは、前記送受信装置から前記固有情報が送信されてくると、前記対応表に基づいて前記固有情報に対応する前記火災感知器の前記警戒区域における位置を割り出し、割り出した前記位置の情報を情報端末に送信することを特徴とする火災報知システム。
【請求項2】
前記送受信装置は、前記発信装置から送信されてくる前記固有情報を受信可能な第1の通信部と、前記固有情報を前記サーバに送信可能な第2の通信部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記送受信装置は、IoTゲートウェイで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の火災報知システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記警戒区域の地図の情報を記憶しており、前記位置の情報とともに、前記固有情報に対応する前記火災感知器が属する前記警戒区域の地図の情報を前記情報端末に送信することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の火災報知システム。
【請求項5】
前記P型受信機は、前記火災感知器が火災を検知すると、通信装置を介して前記サーバに火災情報を送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の火災報知システム。
【請求項6】
保守点検時には、前記サーバは、前記位置の情報を前記情報端末には送信せず、保守点検用の情報端末にのみ前記位置の情報を送信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の火災報知システム。
【請求項7】
前記送受信装置は、前記保守点検用の情報端末の識別情報を読み出すと、当該識別情報と自らの識別情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記保守点検用の情報端末の識別情報と前記送受信装置の識別情報を受信すると、前記送受信装置の識別情報に基づいて保守点検作業が行われている点検領域を割り出すことを特徴とする請求項6に記載の火災報知システム。
【請求項8】
前記サーバは、前記送受信装置から送信されてきた前記火災感知器の前記固有情報に基づいて割り出した当該火災感知器の場所が前記点検領域外である場合には、前記保守点検用の情報端末を含む前記情報端末に、前記固有情報に対応する前記火災感知器の前記警戒区域における前記位置の情報を送信することを特徴とする請求項7に記載の火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システムに係り、特にP型受信機を備える火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の施設に設置されている火災報知システムでは、配置されている複数の火災感知器のうちのいずれかの火災感知器が火災を検知すると、それに応じて火災受信機が火災発報等を行うように構成される。
そして、火災受信機が火災発報すると、通常、防火管理者や守衛等が現場に急行して誤報でないかを確かめたり、初期消火や通報、避難等の対応をとる。
【0003】
複数の火災感知器と火災受信機との接続のしかたには種々の方式があるが、例えば、図8に示すように、警戒区域R1〜R4ごとに単数又は複数の火災感知器100が設置され、これらの火災感知器100が警戒区域R1〜R4ごとに配設された回線101にそれぞれ接続され、これらの回線101が火災受信機102に接続されるように構成されている場合がある。
なお、図8に示した例では、警戒区域R1〜R4が施設の1階から4階にそれぞれ設定されており、各警戒区域R1〜R4にそれぞれ火災感知器100が6個ずつ設置されている場合が示されている。
【0004】
この場合、火災受信機102が例えばR型受信機であれば、火災を検知した火災感知器から火災検知信号とともに当該火災感知器の固有情報等が火災受信機102に送信される。
そのため、火災受信機102には、火災を検知した火災感知器100の情報が表示されるため、防火管理者等は火災受信機102上の表示を見て、火災を検知した火災感知器100を容易に特定することができ、その火災感知器100が設置されている現場に急行して迅速に対応することができる。
【0005】
また、例えば、特許文献1には、火災受信機102が火災を検知した火災感知器100に関する固有情報を受信すると、サーバがそれと地図情報とを対応付けて本部端末や防火管理者等が携帯する携帯端末等に送信し、本部端末や携帯端末等に表示されている地図画面上に、火災を検知した火災感知器100の設置位置をピンポイントで表示する技術が開示されている(この場合、火災感知器100の設置位置が地図画面上に例えば×印で表される。)。
そして、この場合、防火管理者等は、携帯端末に表示されている地図画面を見れば、火災を検知した火災感知器の設置位置をピンポイントで把握することができ、そこに急行して迅速に適切な対応をとることができる。
【0006】
一方、火災受信機102が例えばP型受信機である場合、図9に例示するように、火災受信機102には、各警戒区域R1〜R4にそれぞれ対応する地区窓W1〜W4が設けられている。
そして、火災感知器100が火災を検知すると、火災受信機102は、スピーカー102Aから火災発報するとともに、火災を検知した火災感知器100が設置されている警戒区域R3に対応する地区窓W3を点灯させるなどして、当該警戒区域R3で火災感知器100により火災が検知されたこと報知するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018−106693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、火災受信機102がP型受信機の場合には、火災を検知した火災感知器から火災検知信号は送信されるが、当該火災感知器を特定するための固有情報は送信されない。
そのため、図9に例示したように、火災受信機102では、火災を検知した火災感知器100が設置されている警戒区域R3に対応する地区窓W3が点灯されるだけであり、当該警戒区域R3内のどの火災感知器100が火災を検知したかは表示されない。
【0009】
そのため、防火管理者等は、警戒区域R3のどの火災感知器100が火災を検知したかをピンポイントで把握することができないため、警戒区域R3(図8の例では施設の3階)に急行した後、火災が発生しているか否かを警戒区域R3内をくまなく探索して確認しなければならず、現場確認に時間がかかる。
そのため、誤報か否かを確かめたり初期消火や通報、避難等の対応をとるまでに時間がかかってしまう場合があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、火災受信機がP型受信機である場合でも、火災を検知した火災感知器をピンポイントで特定することが可能な火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本出願の第1の発明は、
警戒区域ごとに配設された回線に接続された単数又は複数の火災感知器と、前記各警戒区域の前記回線がそれぞれ接続されたP型受信機とを備える火災報知システムにおいて、
前記火災感知器ごとに、前記火災感知器が火災を検知した際に当該火災感知器の固有情報を発信する発信装置を備え、
前記火災感知器の固有情報と前記警戒区域における前記火災感知器の位置とを対応付ける対応表を記憶するサーバと、
前記警戒区域に配置され、前記発信装置から発信された前記固有情報を受信して前記サーバに送信可能な送受信装置と、を備え、
前記サーバは、前記送受信装置から前記固有情報が送信されてくると、前記対応表に基づいて前記固有情報に対応する前記火災感知器の前記警戒区域における位置を割り出し、割り出した前記位置の情報を情報端末に送信するようにしたものである。
上記火災報知システムによれば、火災受信機がP型受信機である場合でも、火災を検知した火災感知器をピンポイントで特定することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記送受信装置は、前記発信装置から送信されてくる前記固有情報を受信可能な第1の通信部と、前記固有情報を前記サーバに送信可能な第2の通信部とを有するように構成される。
これにより、送受信装置は、発信装置から送信されてくる固有情報を第1の通信部で的確に受信し、受信した固有情報を第2の通信部からサーバに的確に送信することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記送受信装置は、IoTゲートウェイで構成される。
これにより、送受信装置に新たに無線モジュールを取り付ける等の必要がない上、1台で複数の発信装置から固有情報をそれぞれ受信することができる。また、他の種々のIoTデバイスを通信ネットワークに接続することが可能となり、施設にIoTゲートウェイが設置されている場合にはそれを送受信装置として用いることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記サーバは、前記警戒区域の地図の情報を記憶しており、前記位置の情報とともに、前記固有情報に対応する前記火災感知器が属する前記警戒区域の地図の情報を前記情報端末に送信するように構成される。
これにより、防火管理者や守衛等が情報端末の表示画面上に表示された警戒区域の地図や地図上での火災感知器の位置の表示を見て、どの警戒区域のどの火災感知器が火災を検知したかを容易かつ明確に認識することができる。
【0015】
また、望ましくは、前記P型受信機は、前記火災感知器が火災を検知すると、通信装置を介して前記サーバに火災情報を送信するように構成される。
これにより、サーバは、通信装置を介してP型受信機から送信されてくる火災情報を1つのトリガーとして、位置の情報を情報端末に送信することができる。
【0016】
また、望ましくは、保守点検時には、前記サーバは、前記位置の情報を前記情報端末には送信せず、保守点検用の情報端末にのみ前記位置の情報を送信するように構成される。
保守点検時に、防災管理者や守衛等が所持する情報端末に、保守点検での擬似火災を検知した火災感知器の位置等が表示されると、防火管理者等が実際に火災が生じたと勘違いする等の事態が生じるおそれがあるが、保守点検時には防災管理者等が所持する情報端末には、擬似火災を検知した火災感知器の位置等を表示しないように構成すれば、上記のような事態が生じることを確実に防止することができる。
【0017】
また、望ましくは、前記送受信装置は、前記保守点検用の情報端末の識別情報を読み出すと、当該識別情報と自らの識別情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記保守点検用の情報端末の識別情報と前記送受信装置の識別情報を受信すると、前記送受信装置の識別情報に基づいて保守点検作業が行われている点検領域を割り出すように構成される。
これにより、保守点検作業員が持ち運ぶ保守点検用の情報端末の識別情報を各送受信装置が自動的に読み取っていくことを利用して、保守点検作業が行われている点検領域をサーバが正確に割り出して認識することができる。
【0018】
また、望ましくは、前記サーバは、前記送受信装置から送信されてきた前記火災感知器の前記固有情報に基づいて割り出した当該火災感知器の場所が前記点検領域外である場合には、前記保守点検用の情報端末を含む前記情報端末に、前記固有情報に対応する前記火災感知器の前記警戒区域における前記位置の情報を送信するように構成される。
これにより、保守点検作業が行われている点検領域ではない場所で火災が発生する等して火災感知器が作動した場合には、保守点検用の情報端末や防災管理者や守衛等の情報端末に火災を検知した火災感知器の位置等が表示される。そのため、保守点検作業中であっても、実際に火災が発生した場合には、防火管理者等が情報端末上の表示に基づいて実際に火災が発生した可能性があることを確実に認識し、その場所に急行し、初期消火や通報、避難等の対応をとることができる。また、誤報の場合には、誤報であると確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、火災受信機がP型受信機である場合でも、火災を検知した火災感知器をピンポイントで特定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る火災報知システムの構成を表す図である。
図2】発信装置や送受信装置の構成を表す図である。
図3】防火管理者や守衛等が所持する情報端末の表示画面上での表示例を表す図である。
図4】本実施形態に係る火災報知システムにおける情報や信号等の流れを表すシーケンス図である。
図5図3の表示画面上にさらに警戒区域に設置されている用具を表示したり消火栓等の設置場所を表示するように構成した場合の表示例を表す図である。
図6】保守点検時における本実施形態に係る火災報知システムの構成を表す図である。
図7】本実施形態に係る火災報知システムにおける保守点検時の情報や信号等の流れを表すシーケンス図である。
図8】P型受信機を備える従来の火災報知システムの構成例を表す図である。
図9】P型受信機の構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る火災報知システムの実施の形態について、詳細に説明する。
なお、以下においても、警戒区域Rが施設の1階から4階にそれぞれ設定されており(以下、警戒区域R1〜R4という。)、各警戒区域R1〜R4にそれぞれ火災感知器2が6個ずつ設置されている場合を例示して説明する。しかし、本発明はこの場合に限定されず、例えば警戒区域Rを各階ごとではなく、より狭い範囲に設定することも可能である。すなわち、警戒区域Rを、例えば各階の部屋ごとや各階の中央や東側、西側等のように設定することも可能である。
【0022】
[火災報知システム1の構成]
図1は、本実施形態に係る火災報知システムの構成を表す図である。本実施形態に係る火災報知システム1においても、図8に示した火災報知システムと同様に火災受信機としてP型受信機が用いられている。
そして、本実施形態においても、火災報知システム1は、警戒区域Rごとに配設された回線3に接続された単数又は複数の火災感知器2と、各警戒区域Rの回線3がそれぞれ接続されたP型受信機4とを備えている。なお、以下、P型受信機4を単に受信機4という場合がある。
【0023】
火災感知器2は、煙や熱等を検知すると、回線3を介して受信機4に火災検知信号Aを送信する。その際、本実施形態では、火災感知器2は煙や熱等を検知しても自らに関する固有情報は送信しない。
また、回線3は、上記のように火災を検知した火災感知器2が発する火災検知信号Aを受信機4に送信するほか、各火災感知器2への電力の供給等を行うようになっている。
【0024】
受信機4は、図8図9に示した火災報知システムに用いられているP型受信機と同じものが用いられており、いずれかの火災感知器2が火災を検知して火災検知信号Aを送信してくると、火災検知信号Aが送信されてきた回線3等に基づいて当該火災感知器2が属する警戒区域R(例えば警戒区域R3)を割り出し、火災発報したり、割り出した警戒区域Rに対応する地区窓W(例えば地区窓W3)を点灯させるなどして、当該警戒区域R3で火災感知器2により火災が検知されたこと報知するようになっている。
【0025】
また、本実施形態では、受信機4は、通信装置5や通信ネットワークNを介して後述するサーバ8に接続されており、上記のように火災感知器2から火災検知信号Aを受信すると、サーバ8に、火災情報Bと、火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域Rの情報(以下、警戒区域情報Cという。)を送信するようになっている。
この点については後で説明する。
【0026】
一方、本実施形態では、火災感知器2ごとに、火災感知器2が火災を検知した際に当該火災感知器2の固有情報Eを発信する発信装置6を備えている。
なお、発信装置6を、火災感知器2に取り付けられているように構成することも可能であり、火災感知器2と一体的に構成することも可能であり、あるいは発信装置6を火災感知器2の近傍等に設置するように構成することも可能である。
あるいは、どの火災感知器2が火災を検知したかを発信装置6が特定してその固有情報Eを発信することが可能であり、発信した固有情報Eを後述する送受信装置7が受信することができるようになっていればよく、発信装置6は必ずしも火災感知器2の近傍等になくてもよい。
【0027】
具体的には、発信装置6は、図2に示すように、制御部61と、固有情報格納部62と、通信部63とを備えている。
制御部61は、火災を検知した火災感知器2が受信機4に送信する火災検知信号Aを受信したり、火災を検知した際に火災感知器2に生じる電流や電圧等の変化を検出するなどして火災感知器2が火災を検知したことを検出すると、メモリ等で構成された固有情報格納部62から当該火災感知器2の固有情報Eを読み出す。
【0028】
この場合、固有情報Eとしては例えば火災感知器2の製造番号や初期値、アドレス値等を用いることが可能であり、火災感知器2を特定することができる情報であればよい。
そして、制御部61は、火災情報Dと読み出した火災感知器2の固有情報Eを、通信部63から例えばBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)等の近距離通信で発信する。本実施形態では、発信装置6は、このようにして、火災感知器2が火災を検知した際に火災情報Dと当該火災感知器2の固有情報Eを発信するようになっている。
【0029】
本実施形態では、警戒区域R1〜R4ごとに、少なくとも1つの送受信装置7が配置されている。そして、送受信装置7は、発信装置6から発信された火災情報Dと火災感知器2の固有情報Eを受信して、通信ネットワークNを介して後述するサーバ8に送信することができるようになっている。
なお、送受信装置7は、全ての発信装置6から発信された火災感知器2の固有情報E等がいずれかの送受信装置7で受信されるように数や位置等が決められる。その際、送受信装置7を火災感知器2と同じ数だけ、すなわち各火災感知器2に1つずつ送受信装置7を設けるように構成することも可能であるが、1つの送受信装置7で複数の火災感知器2(発信装置6)からの固有情報E等をそれぞれ受信することができるように構成すれば、火災報知システム1を構築するためのコストを抑えることが可能となり好ましい。
【0030】
送受信装置7は、図2に示すように、発信装置6から送信されてくる火災情報Dと火災感知器2の固有情報Eを受信可能な第1の通信部71と、受信した火災情報Dと固有情報Eを通信ネットワークNを介してサーバ8に送信可能な第2の通信部72とを有している。
そして、送受信装置7は、上記のようにして発信装置6から火災情報Dと火災を検知した火災感知器2の固有情報Eが送信されてくるとそれらを第1の通信部71で受信し、受信した火災情報Dと固有情報Eをネットワーク通信用のプロトコルに変換する等して、火災情報Dと固有情報Eを第2の通信部72から通信ネットワークNを介してサーバ8に送信するようになっている。
【0031】
送受信装置7は、例えばIoTゲートウェイで構成することが可能である。IoTゲートウェイは種々のIoTデバイスを通信ネットワークNに接続するために、通常、無線モジュールが内蔵されているため、新たに無線モジュールを取り付ける等の必要がない上、1台で複数の発信装置6から固有情報E等をそれぞれ受信することができる。
また、送受信装置7としてIoTゲートウェイを用いれば、他の種々のIoTデバイスを通信ネットワークNに接続することが可能となるとともに、施設にIoTゲートウェイが設置されている場合には、それを送受信装置7として用いることができる。
【0032】
サーバ8(図1参照)は、各火災感知器2の固有情報Eと警戒区域R1〜R4における火災感知器2の位置Fとを対応付ける対応表(図示省略)を記憶している。
そして、サーバ8は、本実施形態では、送受信装置7から火災情報Dと火災を検知した火災感知器2の固有情報Eが送信されてきて、受信機4からの火災情報Bと送受信装置7からの火災情報Dとが揃うと、情報端末9に情報を送信するための処理を開始するようになっている。
【0033】
すなわち、サーバ8は、上記のように送受信装置7から火災情報Dと火災を検知した火災感知器2の固有情報Eが送信されてくると、対応表に基づいて、送信されてきた固有情報Eに対応する火災感知器2の警戒区域R1〜R4における位置Fを割り出す。
なお、以下では、図1に示すように、警戒区域R3に属する火災感知器2が火災を検知したものとして説明する。
【0034】
そして、サーバ8は、上記のようにして、送信されてきた固有情報Eに対応する火災感知器2の警戒区域R3における位置Fを割り出すと、割り出した位置Fの情報を情報端末9に送信するようになっている。
また、本実施形態では、サーバ8は、各警戒区域R1〜R4の地図Gの情報も記憶しており、位置Fの情報とともに、送信されてきた固有情報Eに対応する火災感知器2(すなわち火災を検知した火災感知器2)が属する警戒区域R3の地図Gの情報も情報端末9に送信するようになっている。なお、以下、位置Fの情報と警戒区域Rの地図Gの情報とをまとめて発報場所情報Hという場合がある。
【0035】
本実施形態では、情報端末9は、防火管理者や守衛等が所持しているスマートフォンであり、サーバ8は、通信ネットワークNや基地局10を介して情報端末9に発報場所情報Hを送信するようになっている。
なお、情報端末9は、携帯電話やタブレット型の携帯端末等であってもよい。また、図1では、情報端末9が警戒区域R1〜R4の外に記載されているが、これは図を見やすくするためであり、情報端末9が警戒区域R1〜R4内で用いられることは言うまでもない。
【0036】
そして、情報端末9は、サーバ8から発報場所情報H(位置Fの情報と地図Gの情報)を受信すると、例えば図3に示すように、地図Gの情報に基づいて、表示画面91上に当該警戒区域R3(この場合は施設の3階)の地図Gを表示する。
そして、位置Fの情報に基づいて、火災を検知した火災感知器2の位置Fを所定の色で着色して表示する等して、地図G上の他の各火災感知器2(図中の○印参照)とは異なる態様で地図G上に表示するようになっている。
【0037】
なお、情報端末9は、火災を検知した火災感知器2の位置F等を表示画面91上に表示する際、それらを表示したことを防火管理者等が早急に気付くようにするために、表示と同時に音や振動等を発生させて報知するように構成することも可能である。
【0038】
本実施形態では、このように、情報端末9の表示画面91上に、火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域R3の地図Gを表示するとともに、その地図G上に火災を検知した火災感知器2の位置Fを表示する。
このように構成することで、防火管理者や守衛等が情報端末9の表示画面91上に表示された警戒区域Rの地図Gや地図G上での火災感知器2の位置Fの表示を見て、どの警戒区域R(この場合は警戒区域R3)のどの火災感知器2が火災を検知したかを容易かつ明確に認識することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、情報端末9は、表示画面91上に地図Gを表示するとともに、その下側に、どの警戒区域R(この場合は警戒区域R3(すなわち図3では「東棟3階」))で火災感知器2が作動したこと等を表すテキスト表示92も行うようになっている。
そのため、防火管理者や守衛等は、地図Gだけでなくテキスト表示92を見て、どの警戒区域R(この場合は警戒区域R3)のどの火災感知器2が火災を検知したかを明確かつ確実に認識することが可能となる。
【0040】
[作用]
次に、本実施形態に係る火災報知システム1の作用、すなわち情報や信号等の流れについて、図4に基づいて時系列的に説明する。
火災感知器2は、火災を検知すると、回線3を介して受信機4(P型受信機4)に火災検知信号Aを送信する。受信機4は、火災感知器2から火災検知信号Aを受信すると、火災発報等を行って火災が検知されたことを報知するとともに、火災情報Bと、火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域Rが警戒区域R3であるという警戒区域情報Cとを、通信装置5を介してサーバ8に送信する。
サーバ8は、火災情報Bと警戒区域情報Cを受信すると、メモリに保存して保持する。
【0041】
また、上記のように火災感知器2が火災を検知すると、それに対応する発信装置6が火災情報Dと当該火災感知器2の固有情報Eを発信する。そして、それらを送受信装置7が受信すると、送受信装置7は、火災情報Dと受信した火災感知器2の固有情報Eを、通信ネットワークNを介してサーバ8に送信する。サーバ8は火災情報Dと火災感知器2の固有情報Eを受信すると、メモリに保存して保持する。
そして、サーバ8は、受信機4からの火災情報Bと送受信装置7からの火災情報Dとが揃うと、警戒区域情報Cと記憶している対応表に基づいて、送信されてきた固有情報Eに対応する火災感知器2の警戒区域R3における位置Fを割り出す。
【0042】
そして、サーバ8は、送信されてきた固有情報に対応する火災感知器2(すなわち火災を検知した火災感知器2)の警戒区域R3における位置Fを割り出すと、割り出した位置Fの情報と警戒区域R3の地図Gの情報、すなわち発報場所情報Hを、防火管理者や守衛等が所持している情報端末9に送信する。
このようにして、図3に示したように、情報端末9の表示画面91上に、火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域R3の地図Gが表示され、地図G上に火災を検知した火災感知器2の位置Fが表示される。
【0043】
そして、防火管理者や守衛等が現場で対応し、処理を完了する等して無事が確認できた時点で、受信機4にして復旧の操作を行うと、図4に示すように、受信機4は、火災を検知した火災感知器2や、通信装置5を介してサーバ8に、それぞれ復旧信号Iを送信する。
そして、火災を検知した火災感知器2は、復旧信号Iを受信すると元の状態(火災を検知していない状態)に戻る。また、サーバ8は、復旧信号Iを受信すると、火災感知器2による火災の検知に伴って開始した一連の処理を終了する。
【0044】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る火災報知システム1によれば、P型受信機4が火災を検知した火災感知器2から固有情報を受信しなくても、当該火災感知器2に対応する発信装置6が当該火災感知器2の固有情報E等を発信し、送受信装置7を介して固有情報E等がサーバ8に送信される。
そして、サーバ8で、対応表に基づいてその固有情報Eに対応する火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fを割り出して情報端末9に送信する。
【0045】
そのため、情報端末9の表示画面91上で、火災を検知した火災感知器2の位置Fがピンポイントで表示されるため、本実施形態に係る火災報知システム1のように火災受信機がP型受信機である場合であっても、防火管理者や守衛等は、情報端末9上の表示を見ることで、火災を検知した火災感知器2をピンポイントで正確に特定することが可能となる。
そのため、防火管理者等は、警戒区域R3に急行した後、火災を検知した火災感知器2の近傍を探索して、誤報か否かを速やかに確かめたり、初期消火や通報、避難等の対応を迅速にとることが可能となり、現場確認や適切な対応を速やかに行うことが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態に係る火災報知システム1は、建物が新築された際など、火災報知システムを新たに導入する場合に採用することが可能であるが、既存のP型システム(P型受信機を備える火災報知システム)に適用することも可能である。
この場合、既存の各火災感知器2にそれぞれ新たに発信装置6を取り付けたり、各送受信装置7を配置したり、サーバ8を設けたりすることが必要になるが、例えば全ての火災感知器2を自ら固有情報を発信するタイプに替えたり火災受信機をR型受信機に替える(すなわち火災報知システムをまるごとR型システムに取り替える)よりは安価に火災報知システムを再構築することが可能となる。
【0047】
また、従来のP型システム(図8図9参照)では、火災感知器100が火災を検知して受信機102が火災発報した際、防火管理者や守衛等が受信機102の所に行き、点灯している地区窓Wを確認する等しないと、どの警戒区域Rで火災が検知されたかを認識することができなかった。
しかし、本実施形態に係る火災報知システム1では、防火管理者や守衛等が携帯する情報端末9上に、火災を検知した火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fが表示されるため、防火管理者等は受信機4の所に行かずに警戒区域Rに直行することが可能となる。そのため、本実施形態に係る火災報知システム1では、この点においても、防火管理者等は、より速やかに警戒区域Rに急行して現場確認や適切な対応をより速やかに行うことが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る火災報知システム1によれば、防火管理者や守衛等が所持する各情報端末9上に、火災を検知した火災感知器2の位置Fや警戒区域Rの情報等を表示させることができる。
そのため、複数の防火管理者等が情報端末9上の表示を見て互いにチェックしながら消火作業等を行うことが可能となり、消火作業等を安全かつ確実に行うことが可能となる。
【0049】
ところで、本実施形態に係る火災報知システム1では、上記のように、サーバ8は、火災が検知された場所を、受信機4から受信した警戒区域情報Cに基づいて、火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域R(上記の例では警戒区域R3)として認識するように構成されている。
しかし、例えば火災を検知した火災感知器2に対応する発信装置6から火災情報Dと火災感知器2の固有情報Eを受信した送受信装置7の受信可能範囲(以下、警戒領域rという。)として火災が検知された場所を認識するように構成することも可能である。
【0050】
この場合、警戒区域R内に複数の送受信装置7が配置されている場合は、1つの警戒区域R中に複数の警戒領域rが存在することになり、警戒領域rは警戒区域Rより狭い範囲になる。
そして、例えば対応表等において、各火災感知器2の固有情報Eと各警戒領域rとを予め対応付けておき、それに基づいて火災を検知した火災感知器2が属する警戒領域rを認識するように構成することも可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る火災報知システム1において、受信機4からサーバ8に警戒区域情報C等が送信されてきたが、発信装置6の故障等のために送受信装置7からサーバ8に火災を検知した火災感知器2の固有情報Eが送信されてこない場合には、例えば、サーバ8は、位置Fの情報を含まない発報場所情報H(すなわち火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域R3の地図Gの情報のみ)を情報端末9に送信するように構成することが可能である。
そして、この場合、例えば、情報端末9の表示画面91上に地図Gを表示するとともに、火災を検知した火災感知器2が特定できない旨のテキスト表示92等を行うように構成することが可能である。
【0052】
また、逆に、送受信装置7からサーバ8に火災を検知した火災感知器2の固有情報Eが送信されてきたが、受信機4から警戒区域情報C等が送信されてこない場合には、例えば、サーバ8は、発信装置6が誤作動したり送受信装置7が誤った信号を受信したとみなして、サーバ8から情報端末9に発報場所情報Hを送信しないように構成することが可能である。
あるいは、このような場合でも、サーバ8から情報端末9に発報場所情報Hを送信して地図Gや火災感知器2の位置Fを表示させるとともに、誤報の可能性がある旨のテキスト表示92を行うように構成することも可能である。
【0053】
[消火器等の用具の表示について]
なお、上記の火災報知システム1の構成を利用して、例えば、警戒区域R1〜R4内に備えられている消火器やヘルメット等の防災や消火、避難等に必要な用具をサーバ8で管理するように構成することが可能である。
また、上記のようにサーバ8から情報端末9に発報場所情報Hを送信する際に、サーバ8から用具の情報も情報端末9に送信して、情報端末9上に表示させるように構成することも可能である。
【0054】
具体的には、予め用具にICタグやセンサ等を取り付けておき、用具を警戒区域R(例えば警戒区域R3)に持ち込んで所定の設置場所に設置する。
すると、送受信装置7が用具のICタグ等から情報を読み取り、通信ネットワークNを介してサーバ8にその情報を送信する。そのため、用具の属性(「消火器」や「ヘルメット」等)や番号等の識別情報が送受信装置7を介してサーバ8に送信される。
【0055】
一方、本実施形態に係る火災報知システム1では、前述したように、火災感知器2が火災を検知した場合には、火災感知器2からの火災検知信号Aを受信した受信機4からサーバ8に警戒区域情報C等が送信される。また、発信装置6からサーバ8に当該火災感知器2の固有情報E等が発信される。そのため、サーバ8はそれらの情報に基づいて火災を検知した火災感知器2が属する警戒区域Rが警戒区域R3であることを特定することができた。
しかし、上記のように、用具が警戒区域R3に持ち込まれて設置されても、火災感知器2は作動しないため、受信機4からサーバ8に警戒区域情報Cは送信されない。
【0056】
そのため、用具が設置された警戒区域Rが警戒区域R3であることをサーバ8が特定することができるようにするために、例えば、当該用具が設置される警戒区域Rが警戒区域R3であることをICタグ等に書き込んでおくように構成することが可能である。
しかし、このように構成すると、例えば、警戒区域R3に設置した用具を他の警戒区域R(例えば警戒区域R2)に移して設置するごとにICタグ等を書き換えなければならなくなるが、書き換えの作業が面倒なものとなる上、書き換え忘れ等も問題が生じる可能性がある。
【0057】
そのため、この場合は、用具が警戒区域R3に持ち込まれて設置された用具のICタグ等から識別情報(属性や番号等)を読み取った送受信装置7が、サーバ8にその識別情報を送信する際に、送受信装置7自体の識別情報も同時に送信する。
また、サーバ8は、送受信装置7ごとに当該送受信装置7の識別情報と当該送受信装置7が配置されている警戒区域Rとを対応付けた対応表を有しておく。
【0058】
そして、サーバ8は、送受信装置7から用具の識別情報と当該送受信装置7の識別情報とが送信されてくると、この対応表に基づいて送受信装置7の識別情報から当該用具が警戒区域R(上記の場合は警戒区域R3)に設置されたことを認識して管理するように構成することが可能である。
なお、このように構成すると、用具が警戒区域Rに設置された場合には、サーバ8はそれを認識することができるが、用具が警戒区域Rから持ち出される等して警戒区域R内に存在しなくなった場合には、それを認識できない可能性がある。
【0059】
そこで、例えば、各送受信装置7で定期的に各用具のICタグ等を読み取ってサーバ8に送信するように構成することが可能である。
このように構成すると、サーバ8は、ある送受信装置7から送信されていたある用具の識別情報が送信されなくなった場合、それに基づいて、当該用具が、当該送受信装置7が配置されている警戒区域R内に存在しなくなったと認識することができる。
そのため、このように構成すれば、サーバ8は、各警戒区域Rごとに、当該警戒区域Rへの用具の設置の有無や種類(すなわちどの用具が設置されているか)を的確に管理することが可能となる。
【0060】
そして、上記のようにサーバ8から情報端末9に発報場所情報Hを送信する際に、当該警戒区域Rに設置されている各用具の情報も情報端末9に送信することで、例えば図5に示すように、情報端末9の表示画面91上に当該警戒区域Rの地図Gを表示させたり火災を検知した火災感知器2の位置Fを地図G上に表示させたりする際に、当該警戒区域Rに設置されている用具93も表示することが可能となる。
このように構成すれば、防火管理者等が情報端末9を見て火災を検知した火災感知器2の位置Fを把握する際に、当該警戒区域Rに消火器やヘルメット等の用具が設置されているか否かやどのような用具が設置されているかを一目瞭然に認識することが可能となり、初期消火や避難等の対応を適切にとることが可能となる。
【0061】
なお、図5では、情報端末9の表示画面91上に、消火器やヘルメット等の用具をイラストで表示する場合を示したが、文字や記号等で示すように構成してもよい。また、用具を所定の色で着色する等して表示するように構成することも可能である。
また、図5に示すように、当該警戒区域Rに消火栓等が設置されている場合には、情報端末9の表示画面91上にそれらの設置場所94が分かるように表示するように構成することも可能である。
【0062】
さらに、図示を省略するが、例えば、防火管理者等が所持する情報端末9の識別情報を送受信装置7が読み取って送受信装置7の識別情報等とともにサーバ8に送信するように構成すれば、情報端末9の表示画面91上に、表示されている警戒区域R内(あるいは前述した警戒領域r内)にどの情報端末9があるか、すなわち当該警戒区域R内(あるいは当該警戒領域r内)に誰(どの防火管理者等)がいるかを表示することが可能となる。
そのため、各防火管理者等が互いの位置を確認しあいながら、初期消火や避難等の対応を適切にとることが可能となる。
【0063】
[保守点検時における構成等について]
ところで、上記の本実施形態に係る火災報知システム1が、火災感知器2の保守点検時おいても上記の通常警戒時(図4等参照)と同様の処理を行うと、保守点検作業員が加熱試験器を火災感知器2に当てるなどして試験用の擬似火災を生じさせるたびに防火管理者や守衛等の情報端末9に警戒区域Rの地図G等が表示されてしまい、防火管理者等が実際に火災が発生したと勘違いするなど、好ましくない事態が生じかねない。
そのため、保守点検時に保守点検作業員が試験用の擬似火災を生じさせた際に、防火管理者等の情報端末9にはサーバ8から発報場所情報Hが送信されないように構成される必要がある。
【0064】
一方、保守点検時に、保守点検作業員が所持する保守点検用の情報端末上に、図3図5に示した防火管理者等が所持する情報端末9上の表示と同様の表示(警戒区域Rの地図Gや擬似火災を検知した火災感知器2の位置F等の表示)を行うように構成すれば、保守点検作業員が、保守点検用の情報端末上の表示を見ながら火災感知器2が正常に作動しているか否かを個別に確認することが可能となり、保守点検作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0065】
そこで、本実施形態では、サーバ8は、保守点検時には、試験用の擬似火災を検知した火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fの情報を、図6に示すように、基地局10を介して保守点検作業員が所持する保守点検用の情報端末11にのみ送信するようになっている。
サーバ8は、保守点検時には、試験用の擬似火災を検知した火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fの情報を、防災管理者等が所持する情報端末9には送信しない。
【0066】
以下、本実施形態に係る火災報知システム1における保守点検時の情報や信号等の流れについて、図7に基づいて時系列的に説明する。
保守点検作業員は、まず、保守点検用の情報端末11を操作して情報端末11からサーバ8に点検モード信号Jを送信する。なお、後述する点検モード解除信号Mの場合も同様であるが、点検モード信号Jを、保守点検用の情報端末11からサーバ8に送受信装置7等を介して送信するように構成することも可能である。
また、その保守点検作業員あるいは別の保守点検作業員等が、受信機4を操作する等して受信機4を点検モードに移行させる。
【0067】
そして、サーバ8は、保守点検作業が行われている点検領域Raを、以下のようにして把握するようになっている。
保守点検作業員が送受信装置7の受信可能範囲(すなわち前述した警戒領域r)に入ると、送受信装置7は、保守点検作業員が所持している保守点検用の情報端末11の識別情報Kを読み取る。そして、送受信装置7は、保守点検用の情報端末11の識別情報Kを読み取ると、読み取った情報端末11の識別情報Kと自らの識別情報Lとをサーバ8に送信する。
【0068】
そして、保守点検のために保守点検作業員が各送受信装置7の警戒領域r内を移動すると、各送受信装置7が次々と保守点検用の情報端末11の識別情報Kを読み取っていき、サーバ8に次々と送受信装置7の識別情報Lと情報端末11の識別情報Kが送信されてくる。
サーバ8は、送受信装置7の識別情報Lと警戒領域rとを対応付ける対応表を記憶している。
【0069】
そして、本実施形態では、サーバ8は、最後に保守点検用の情報端末11の識別情報Kを読み取って自らの識別情報Lとともに送信してきた送受信装置7に対応する警戒領域rに保守点検作業員がおり、その警戒領域rで保守点検作業が行われていると認識するようになっている。
すなわち、本実施形態では、サーバ8は、保守点検用の情報端末11の識別情報Kと送受信装置7の識別情報Lが送信されてくるとそれを保存していき、最後に識別情報Lを送信してきた送受信装置7に対応する警戒領域rが、保守点検作業が行われている点検領域Raであると認識するようになっている。
【0070】
このように、本実施形態では、サーバ8は、保守点検用の情報端末11の識別情報Kと送受信装置7の識別情報Lを受信すると、送受信装置7の識別情報L(最後に送信されてきた送受信装置7の識別情報L)に基づいて保守点検作業が行われている点検領域Raを割り出すようになっている。
そして、このように構成することで、保守点検作業員が持ち運ぶ保守点検用の情報端末11の識別情報Kを各送受信装置7が自動的に読み取っていくことを利用して、保守点検作業が行われている点検領域Raをサーバ8が正確に割り出して認識することができるようになっている。
【0071】
一方、保守点検作業の際に、保守点検作業員が加熱試験器12(図6参照)を火災感知器2に当てるなどして試験用の擬似火災を生じさせると、火災報知システム1では、前述した実際の火災の場合と同様の処理が行われる。
すなわち、図7に示すように、擬似火災を検知した火災感知器2から受信機4に火災検知信号Aが送信される。そして、火災検知信号Aを受信した受信機4が通信装置5を介してサーバ8に火災情報Bと警戒区域情報Cを送信する。
【0072】
また、発信装置6は、火災感知器2が擬似火災を検知すると火災情報Dと当該火災感知器2の固有情報Eを発信する。
そして、送受信装置7は、発信装置6から発信された火災情報Dと火災感知器2の固有情報Eを受信すると、通信ネットワークNを介して火災情報Dと当該火災感知器2の固有情報Eをサーバ8に送信する。
【0073】
そして、サーバ8は、それらの情報に基づいて試験用の擬似火災を検知した火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fを割り出す(前述した保守点検作業が行われている点検領域Raの割り出しも同時に行われる。)が、前述したように、サーバ8は、保守点検時には、割り出した試験用の擬似火災を検知した火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fの情報を、保守点検作業員が所持する保守点検用の情報端末11にのみ送信する。
防災管理者等が所持する情報端末9には送信しない。
【0074】
そして、受信機4は、通信装置5を介してサーバ8に警戒区域情報C等を送信すると、擬似火災を検知した火災感知器2に自動的に復旧信号Iを送信して、当該火災感知器2を元の状態(火災を検知していない状態)に戻す。
そして、以上の各処理が、保守点検作業員が火災感知器2に対して試験用の擬似火災を生じさせるごとに繰り返し行われる。
なお、送受信装置7による保守点検用の情報端末11の識別情報Kの読み取りやサーバ8への識別情報K、Lの送信は、保守点検作業(火災感知器2から受信機4への火災検知信号Aの送信から受信機4による復旧信号Iの送信まで)の前だけでなく、保守点検作業中に保守点検作業員が移動する際にも適宜行われる。
【0075】
そして、保守点検の対象の全ての火災感知器2について作業を終了すると、保守点検作業員は保守点検用の情報端末11を操作して情報端末11からサーバ8に点検モード解除信号Mを送信する。また、その保守点検作業員あるいは別の保守点検作業員等が、受信機4を操作する等して点検モードを解除する。
このようにして、火災報知システム1は、通常警戒状態に戻る。
【0076】
本実施形態に係る火災報知システム1は、以上のように構成されているため、火災感知器2が正常に作動していれば、保守点検作業員が加熱試験器12を火災感知器2に当てるなどして試験用の擬似火災を生じさせると、保守点検用の情報端末11上に図5に示したものと同様の表示がなされる。
そのため、保守点検作業員は、情報端末11上に表示された警戒区域R(保守点検作業が行われている警戒区域Ra)の地図Gや、地図G上に表示された擬似火災を検知した火災感知器2の位置Fを確認することで、その火災感知器2が正常に作動していることを容易かつ確実に確認することができる。
【0077】
また、保守点検時には、防災管理者等が所持する情報端末9には、警戒区域Rの地図Gや試験用の擬似火災を検知した火災感知器2の位置F等は表示されない。
そのため、防火管理者等が、保守点検時に、実際に火災が生じたと勘違いする等の事態が生じることを確実に防止することが可能となる。
【0078】
なお、保守点検用の情報端末11に擬似火災を検知した火災感知器2の位置Fを表示する際、擬似火災であることが分かるようにするために、例えば、実際の火災発生時に表示する際の色とは異なる色で表示するなど、実際の火災発生時とは異なる態様で擬似火災を検知した火災感知器2の位置Fを表示することが望ましい。
また、位置Fの表示の態様を変えずに、あるいは位置Fの表示の態様を変えるとともに、メッセージを表示するなどして実際の火災発生と区別がつけられるように構成することも可能である。
【0079】
また、上記のように、保守点検時の各火災感知器2の擬似的な発報情報がサーバ8内に格納されるため、それらの発報情報をもとに試験の点検表をサーバ8が自動的に作成するように構成することも可能である。
その場合、サーバ8が作成した点検表を、情報端末11上で保守点検作業員等が確認できるように構成されることが望ましい。
【0080】
[保守点検中に火災が発生した場合について]
ところで、火災感知器2の保守点検中に、実際に火災が生じた場合には、火災が発生したことが適切に検知されなければならない。
そして、保守点検作業が行われている警戒区域Raで実際に火災が発生した場合には、その警戒区域Raで保守点検作業を行っている保守点検作業員等がそれを認識することができる。また、仮に保守点検作業員が火災の発生に気づかない場合でも、火災の発生を検知した火災感知器2の位置Fが、保守点検用の情報端末11上に表示された警戒区域Raの地図G上に表示されるため、保守点検作業員等が火災の発生を認識できる。
【0081】
しかし、保守点検作業が行われている警戒区域Ra以外の警戒区域Rで実際に火災が発生した場合に、保守点検作業員がそれに気づくとは限らない。
そこで、本実施形態では、サーバ8は、点検作業中に、ある送受信装置7から火災感知器2の固有情報Eが送信されてきた際、送信されてきた火災感知器2の固有情報Eに基づいて割り出した当該火災感知器2が属する警戒区域Rが、上記のようにして割り出した保守点検作業が行われている点検領域Raを含まない警戒区域Rである場合には、保守点検用の情報端末11や防災管理者や守衛等が所持する情報端末9に、割り出した固有情報Eに対応する火災感知器2が属する警戒区域Rの地図Gの情報や火災感知器2の警戒区域Rにおける位置Fの情報を送信するようになっている。
【0082】
このように構成すれば、しかし、保守点検作業が行われている点検領域Raが属さない警戒区域Rで火災が発生する等して火災感知器2が作動した場合には、通常の火災発生時と同様に防災管理者や守衛、点検作業員等の情報端末9、11に警戒区域Rの地図Gや火災を検知した火災感知器2の位置Fが表示される。
そのため、保守点検作業中であっても、保守点検作業が行われている点検領域Raが属さない警戒区域Rで実際に火災が発生した場合には、防火管理者等が情報端末9、11上の表示に基づいて実際に火災が発生した可能性があることを確実に認識することが可能となり、当該警戒区域Rに急行して、初期消火や通報、避難等の対応をとることが可能となる。また、誤報の場合には、誤報であると確認することが可能となる。
【0083】
なお、例えば、上記のように、保守点検作業中に保守点検作業が行われている点検領域Raが属さない警戒区域Rで火災感知器2が作動した場合に、サーバ8等の点検モードが自動的に解除されるように構成することも可能である。
また、上記の実施形態では、点検モード信号Jをサーバ8のみ(あるいはサーバ8と受信機4)に送信するように構成されている場合について説明したが、例えば各送受信装置7等にも送信するように構成することも可能である。
【0084】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1 火災報知システム
2 火災感知器
3 回線
4 受信機(P型受信機)
6 発信装置
7 送受信装置
8 サーバ
9 情報端末
11 保守点検用の情報端末
71 第1の通信部
72 第2の通信部
E 固有情報
F 位置
G 地図
K 保守点検用の情報端末の識別情報
L 送受信装置の識別情報
R、R1〜R4 警戒区域
Ra 保守点検作業が行われている点検領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9