(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-53382(P2020-53382A)
(43)【公開日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】カリウム二次電池用正極活物質およびカリウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20200306BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20200306BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20200306BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M10/054
H01M4/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-236396(P2018-236396)
(22)【出願日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115032
(32)【優先日】2018年9月27日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518450038
【氏名又は名称】インダストリー−アカデミー コーオペレイション コー オブ スンチョン ナショナル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ピョ,ミョン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ス−チョル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ16
5H029HJ02
5H050AA07
5H050BA15
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB12
5H050GA18
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サイクル特性に優れたカリウム二次電池用正極活物質とこれを含むカリウム二次電池の提供。
【解決手段】下記式1の組成からなり、四面体サイトに遷移金属(TM)が位置し、空間群がPbcaである結晶構造を有する正極活物質。[式1]K
xTMO
2(0.7≦x≦1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる1種以上である)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1の組成からなり、
四面体サイトに遷移金属(TM)が位置し、
空間群がPbcaである結晶構造を有する、カリウム二次電池用正極活物質。
[式1]
KxTMO2
(0.7≦x≦1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる1種以上である)
【請求項2】
前記正極活物質は、遷移金属(TM)としてFeを含み、
KFeO2からなる単相状態と、KFeO2とKとFeを含む酸化物の2相状態で相分離が行われ、
充放電過程に前記2相状態と単相状態の可逆的な相転移(phase transition)が起こる、請求項1に記載のカリウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記KとFeを含む酸化物は、下記式2の組成を有する、請求項2に記載のカリウム二次電池用正極活物質。
[式2]
KxFe1−yTMyO2
(0.7≦x<1.0、0≦y<1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、CoおよびNiの中から選ばれる1種以上である)
【請求項4】
前記正極活物質は、充放電過程に空間群がPbcaである結晶構造を維持する、請求項1に記載のカリウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質の充放電前の物質は、KFeO2である、請求項2に記載のカリウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質の最初の充電は、K+イオンを含む電解質中で行われる、請求項1に記載のカリウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
正極と、前記正極と所定の間隔をもって配置される負極と、前記正極と負極との間に配置される分離膜と、前記正極と負極および分離膜の間に充填される電解質とを含み、
前記正極は、請求項1〜6のいずれかに記載の正極活物質を含む、カリウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウム二次電池用正極活物質とこれを含むカリウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
石油および石炭のような化石燃料の枯渇と、化石燃料の使用による環境汚染に起因して、生産されたエネルギーの効率的使用が要求されており、太陽光エネルギーや風力エネルギーのような環境親和的な方式で生産するエネルギーは、生産量が一定でないため、生産されたエネルギーを貯蔵して必要な需要に対応するようにする大容量二次電池に対する関心が高まっている。
【0003】
現在まで二次電池として最も注目されているものは、リチウムイオン電池であるが、リチウムイオン電池は、高い密度で長期間にわたって電気エネルギーの充放電が可能で、移動用電子機器と電気自動車の電源用としての使用が急速に増大していると共に、発電所で生産された電力を貯蔵したり太陽光エネルギーや風力エネルギーのような方式で生産された電気エネルギーを効率的に管理するためのESS(Energy Storagy System)用に広く使用されている。
【0004】
ところが、リチウムイオン電池に使用されるリチウムは、限定された資源が特定地域に偏在しているため、価格が高いだけでなく、増大している電池およびエネルギー貯蔵装置に対する需要に対応しにくいという問題点がある。
【0005】
このような問題点を解決するために、リチウムを主原料として使用しない非リチウム二次電池に対する関心が高まっており、非リチウム二次電池は、リチウムを除いたアルカリ金属、アルカリ土類金属、3A族金属、遷移金属等を使用する。
【0006】
アルカリ金属イオンであるNa
+、K
+に基づく二次電池は、賦存量が多くて、価格がリチウムイオン電池に比べて顕著に安いため、特にESS用電池に好適に使用することができる。
【0007】
このうち、ナトリウムイオン電池用正極活物質としては、O3、P2、P3形態の層状構造の金属酸化物、開放型骨格構造を有するプルシアンブルー、リン酸塩、蛍光リン酸塩、ピロリン酸塩、硫化物等が開発されているが、まだ十分な水準の容量、寿命等を満たす物質は稀である。
【0008】
カリウムは、リチウムと電位が類似しており、カリウムイオンの移動度に優れていて、二次電池への潜在性は相当するが、現在までほとんど注目されていない。これにより、カリウム二次電池用正極活物質としては、主として下記特許文献に開示されたプルシアンブルー類似物質(KFe
IIIFe
II(CN)
6)に対する研究が活発に行われており、K
xTiS
2、K
xCoO
2、K
xMnO
2等の物質も、正極活物質に使用することができると報告されているが、リチウム二次電池またはナトリウム二次電池と比較すれば、カリウム二次電池用正極活物質は、ほとんど研究が行われていない。
【0009】
また、相対的に大きさが大きいK
+イオンの挿入/脱離は、電気化学的安定性および高率特性を低下させ、このような傾向は、結晶質無機物質でさらに明確に現れるが、これは、K
+イオンの挿入/脱離に伴う相対的に大きな寸法変化によって結晶構造を健全な状態に維持することが難しいことに起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許登録第9385370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、サイクル特性に優れたカリウム二次電池用正極活物質と、この物質を含むカリウム二次電池を提供することを解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための本発明の一態様は、下記式1の組成からなり、四面体サイトに遷移金属(TM)が位置し、空間群がPbcaである結晶構造を有する、カリウム二次電池用正極活物質を提供する。
[式1]
K
xTMO
2
(0.7≦x≦1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる1種以上である)
また、前記課題を解決するための本発明の他の態様は、正極と、前記正極と所定の間隔をもって配置される負極と、前記正極と負極との間に配置される分離膜と、前記正極と負極および分離膜の間に充填される電解質とを含み、前記正極は、前記正極活物質を含むカリウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による正極活物質は、空間群がPbcaである結晶構造を有するものであり、充放電過程に前記結晶構造を維持し、イオンの大きさがLi
+やNa
+に比べて大きいK
+イオンが挿入/脱離される過程で層状構造に比べて結晶構造の変化が少なく、K
+イオンが容易に移動できる結晶構造を具備しているため、優れたサイクル特性を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による正極活物質の結晶構造を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の一実施例によって合成されたKFeO
2を正極活物質として使用して、K
+イオンを含む電解質で1回の充放電と2回の充電を行って得た充放電プロファイルである。
【
図3】本発明の一実施例によって合成されたKFeO
2を正極活物質として使用して、Li
+イオンを含む電解質で1回の充放電と2回の充電を行って得た充放電プロファイルである。
【
図4】本発明の一実施例によって合成されたKFeO
2を正極活物質として使用して、Na
+イオンを含む電解質で1回の充放電と2回の充電を行って得た充放電プロファイルである。
【
図5】本発明の一実施例によって合成されたKFeO
2をK
+イオンを含む電解質で1回の充放電を行ったときに得たサンプルのXRD分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示的な具現例による正極活物質とこれを含む正極を具備したカリウム二次電池についてより詳細に説明する。しかしながら、下記具現例は、例示として提示されるものであり、これにより本発明が制限されず、本発明は、後述する請求の範囲の範疇によって定義される。
【0016】
本発明者らは、カリウム二次電池用正極活物質として開発された従来の物質が有する低いサイクル安定性と速度特性を向上させるために研究した結果、下記式1の組成からなり、四面体サイトに遷移金属(TM)が位置し、空間群がPbcaである結晶構造を有する酸化物をカリウム二次電池用正極活物質として使用する場合、K
+イオンの挿入/脱離過程に発生する構造的変化を減らし、優れたサイクル安定性を期待することができることを明らかにし、本発明に至るようになった。
[式1]
K
xTMO
2
(0.7≦x≦1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiから選ばれる1種以上である)
以上のように、本発明によるK
xTMO
2は、Pbcaの空間群を有する結晶構造を具備することを特徴とするが、この結晶構造は、層状構造を有するATMO
2(ここで、Aは、アルカリ金属)とは異なって、四面体サイトに遷移金属元素が位置する構造である。
図1は、本発明の一実施例による正極活物質であるPbcaの結晶構造を有するKFeO2の結晶構造を模式的に示す図であり、紫色の円は、K
+イオンを示し、茶色の四面体に遷移金属(TM)である鉄(Fe)が位置することが分かる。このような結晶構造は、イオンの大きさがLi
+やNa
+に比べて相対的に大きいK
+イオンが正極活物質に挿入または脱挿入される過程で層状構造に比べて構造の変化が小さくなり、K
+イオンが容易に移動することができるようになって、優れたサイクル特性を期待することができる。
【0017】
また、本発明による正極活物質は、前記遷移金属(TM)としてFeを含み、KFeO
2からなる単相状態と、KFeO
2とKとFeを含む酸化物の2相状態に相分離がなされ、充放電過程に前記2相状態と単相状態の可逆的な相転移(phase transition)が起こり得る。
【0018】
また、本発明による正極活物質において、前記KとFeを含む酸化物は、下記式2の組成を有することができる。
[式2]
K
xFe
1−yTM
yO
2
(0.7≦x<1.0、0≦y<1.0であり、TMは、Ti、V、Cr、Mn、CoおよびNiの中から選ばれる1種以上である)
また、前記正極活物質において、式2の酸化物がKFeO
2であるときの結晶構造とK
0.7FeO
2であるときの結晶構造は、いずれも空間群がPbcaであるKAlO
2型であってもよい。すなわち、充放電過程に前記正極活物質は、同じ結晶構造を維持することができるため、構造的安定性に優れている。
【0019】
また、前記正極活物質の最初充電は、好ましくはK
+イオンを含む電解質中で行われ得る。
【0020】
また、本発明は、正極と、前記正極と所定の間隔をもって配置される負極と、前記正極と負極との間に配置される分離膜と、前記正極と負極および分離膜の間に充填される電解質とを含み、前記正極は、前述した正極活物質を含むことができる。
【0021】
前記正極は、集電体と、該集電体上に形成される正極活物質層とを含んでなり得る。
【0022】
前記集電体は、金属集電体を使用することができ、例えばアルミニウム箔を使用することができる。
【0023】
前記正極活物質層は、上記の組成を有する正極活物質粉末と、導電材、結合剤および溶媒が混合された形態の組成物で用意されて、成形されて、前記金属集電体上にラミネーションされるか、前記金属集電体にコーティングされる形態で正極が製造され得る。しかしながら、前記列挙された方法に限定されるわけではなく、前記方法以外の形態であっもてよい。前記導電材としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子等を使用することができるが、これらに限定されず、当該技術分野において導電材として使用することができるものであれば、すべて使用することができる。例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ハーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等を使用することができる。前記結合剤としては、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド(PVDF(登録商標))、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびその混合物またはスチレンブタジエンゴム系ポリマー等を使用することができるが、これらに限定されず、当該技術分野において結合剤として使用することができるものであれば、すべて使用することができる。前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトンまたは水等を使用することができるが、これらに限定されず、当該技術分野において使用することができるものであれば、すべて使用することができる。前記正極活物質、導電剤、結合剤および溶媒の含量は、カリウム二次電池に要求される特性に応じてその含量を調節することができ、必要に応じては、一つ以上を使用しなくてもよい。
【0024】
前記負極は、集電体と、該集電体上に形成される負極活物質層とを含んでなり得る。
【0025】
前記負極活物質層は、負極活物質粉末、導電材、結合剤および溶媒を混合して用意した後、金属集電体上に直接コーティングされて乾燥されるか、負極活物質組成物を別途の基板上にキャストした後、基板から分離して、金属集電体上にラミネーションする方法で製造され得る。
【0026】
前記負極活物質としては、カリウム二次電池に使用されて、カリウムイオンの可逆的挿入/脱離が可能な物質であれば、特に制限されず、例えば、カリウム金属、カリウム合金、炭素系物質等がある。
【0027】
前記炭素系物質の場合、従来のリチウム二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質であれば、すべて使用することができる。例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記結晶質炭素は、例えば無定形、板状、フレーク、球形または繊維型の天然黒鉛;または人造黒鉛であり、前記非晶質炭素は、例えばソフトカーボン(低温焼成炭素)またはハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成したコークス等であってもよい。
【0028】
前記負極活物質、導電材、結合剤および溶媒の含量は、カリウム二次電池の用途および構成によって前記導電材、結合剤および溶媒の含量が調節されたり、一部の成分が省略され得る。
【0029】
前記分離膜は、電解質に含まれたイオンの移動に対して抵抗が低いながらも、電解液の含湿特性が良好なものが好ましい。
【0030】
このような分離膜としては、例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組合せの中から選ばれるものであって、不織布または織布形態であってもよく、リチウムイオン電池に多く使用されるポリエチレン、ポリプロピレン等がありえる。
【0031】
前記電解質は、非水系電解質であり、好ましくは有機物からなり得、前記有機物には、カリウム塩が溶解していてもよい。
【0032】
前記有機溶媒は、この技術分野において有機溶媒として使用することができるものであれば、すべて使用することができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−ジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはこれらの混合物等である。
前記カリウム塩も、この技術分野においてカリウム塩として使用することができるものであれば、特に制限なしに使用することができる。
【0033】
また、前記電解質は、有機固体電解質、無機固体電解質等の固体電解質であってもよい。固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体等を使用することができる。
前記無機固体電解質としては、例えば、ボロン酸化物であってもよいが、これに限定されず、当該技術分野において固体電解質として使用することができるものであれば、すべて可能である。前記固体電解質は、スパッタリング等の方法で前記負極上に形成され得る。
前記正極、負極、分離膜および電解質は、リチウム二次電池のように、一般的な電池の製造方法と同一にケースに収容されて最終的に電池に製作される。
【0034】
この際、前記正極、負極および分離膜は、積層されてワインディグされるか、多層でフォールディングする方法でケースに収容した後、ケース内に電解質を注入して密封する方法で製造される。前記ケースの材質は、金属、プラスチック等、多様な材料の物質を使用することができ、ケースの形態も、円筒形、角形、パウチ型等多様な形態からなり得る。
以下の実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものと解釈されてはならない。
[実施例]
本発明による正極活物質は、固相法を利用して製造した。まず、原料粉末としてK
2CO
3粉末とFe
2O
3粉末を攪拌器を使用して均質に混合し、アルミナチューブ炉に装入して焼成する方法で合成した。焼成は、900℃で12時間の間行われ、この際、雰囲気ガスとしては、アルゴンを使用した。このように合成させて、カリウム(K)と鉄(Fe)の酸化物を得た。
【0035】
また、合成された粉末70重量%、アセチレンブラック10重量%、PTFE 20重量%をアルゴンを充填したグローブボックスで混合し、アルミニウム箔がコーティングされた電極フィルムをパンチして、2mg/cm
2で称量して製造したのであり、ガラスフィルターと金属カリウムを負極として使用し、KFSI(カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド)1Mをジメトキシエタン(DME)に含ませた電解液を使用してコインセルを製造した。
【0036】
このように合成された物質と充放電サイクル中に得たサンプルの結晶構造は、XRDを通じて分析し、物質の成分は、ICP−AESとEDXを具備したFESEMを使用して分析し、物質の化学的状態および組成は、XPSを使用して分析した。また、物質の成分は、ICP−AESとEDXを具備したFESEMを使用して分析し、物質の化学的状態および組成は、XPSを使用して分析した。
【0037】
上記の分析法を利用して合成された粉末の成分を分析した結果、本発明の実施例によって合成された物質は、KFeO
2であることを確認した。また、この正極活物質をK
+イオンを含む電解質で最初の充電を行った後の正極活物質の組成は、K
0.7FeO
2であることを確認した。
【0038】
また、コインセルを通じて本発明により合成されたKFeO
2を正極活物質として使用して、それぞれLi
+イオン、Na
+イオン、K
+イオンを含む電解質で1回の充放電と2回の充電を行った結果、
図2〜
図4に示した充放電プロファイルを得た。
【0039】
図2から確認されるように、1.0MのKFSIのDMEのKFeO
2は、可逆的なK
+の挿入/脱離挙動を示した。すなわち、本発明の実施例によるKFeO
2は、カリウム二次電池用正極活物質として使用可能であることを確認した。また、1.0MのKFSI(カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド)DMEで充放電を通じて最終的に59mAh/gの放電容量を具現した。
【0040】
一方、
図3は、Li
+イオンを含む電解質で充放電した結果を示す図であるが、KFeO
2は、EC:DECと1.0MのLiPF6の2.0〜4.0VのLi/Li
+で酸化反応を起こしたが、以後の放電は、Li
+挿入では、リチウムが挿入されていないため、即時的電位降下を示して、電池として使用することができないことを確認した。
【0041】
また、
図4は、Na
+イオンを含む電解質で充放電した結果を示す図であるが、KFeO
2は、PCと1.0MのNaClO
4の2.0V〜4.0VのNa/Na
+で酸化反応を起こしたが、以後の放電は、Na
+挿入では、ナトリウム(Na)が挿入されていないため、即時的電位降下を示して、電池として使用することができないことを確認した。
図5は、KFeO
2をK
+イオンを含む電解質で1回の充放電を行う過程を通じて得たサンプルのXRD分析結果を示す図である。
図5から確認されるように、最初に合成されたKFeO
2粉末(pristine KFeO
2)のXRDパターンは、ICSD 180530のXRDパターンと一致し、繰り返される充放電が行われても、相転移なしに、最初の結晶構造状態が維持されていることが確認される。また、
図5には示していないが、100回の充放電以後の正極活物質のXRDおよびXPS分析でも、最初の結晶構造状態が維持されることが確認された。
【0042】
本発明は未来創造科学部が支援し財団法人韓国研究財団が主管した未来素材ディスカバリー事業(課題番号:2015M3D1A1069710、課題名:ヒューリスティックス電算ベース次世代二次電池開発研究)から支援を受けて行われた研究結果である。