特開2020-53548(P2020-53548A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-53548(P2020-53548A)
(43)【公開日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】シール構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20200306BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20200306BHJP
【FI】
   H05K5/02 L
   H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-181280(P2018-181280)
(22)【出願日】2018年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佑介
【テーマコード(参考)】
4E360
5E087
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360AB33
4E360AB34
4E360BA03
4E360BD03
4E360CA02
4E360EA03
4E360EC05
4E360ED03
4E360EE02
4E360FA02
4E360FA14
4E360GA23
4E360GA29
4E360GA53
4E360GB92
4E360GC08
4E360GC14
5E087LL04
5E087LL13
5E087MM08
5E087MM14
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】シール部材による気密性を確保できることを前提として、電気コネクタのハウジングに対する挿入力を小さくできるシール構造を提供すること。
【解決手段】本発明のシール構造10は、シール部材27が介在することにより電気コネクタ2と筐体4の間に設けられる。シール構造10は、互いに間隔を空けて対向して配置される一対の第一シール部11A,11Bと、第一シール部11A,11Bの一方の端部同士を繋ぐ第二シール部12と、を備える。本発明のシール構造10は、一対の第一シール部11A,11Bが、第二シール部12から離れるのにつれて間隔が広がる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材が介在することにより電気コネクタと筐体の間に設けられるシール構造であって、
互いに間隔を空けて対向して配置される一対の第一シール部と、
一対の前記第一シール部のそれぞれの一方の端部を繋ぐ第二シール部と、を備え、
一対の前記第一シール部は、前記第二シール部から離れるのにつれて間隔が広がる、
ことを特徴とするシール構造。
【請求項2】
一対の前記第一シール部のそれぞれの延長方向の寸法が同じか、又は、異なる、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記第二シール部の垂線に対する、一対の前記第一シール部のそれぞれの傾斜角が同じか、又は、異なる、
請求項1又は請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記傾斜角は、
前記第一シール部及び前記電気コネクタの一方又は双方が、前記第二シール部の垂線に対して傾くことにより形成される、
請求項3に記載のシール構造。
【請求項5】
前記シール部材は、
一対の前記第一シール部のそれぞれの一方の前記端部に対する他方の前記端部が自由端となる、U字状の形態を有している、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項6】
前記シール部材は、
予め前記電気コネクタに装着されている、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のシール構造。
【請求項7】
電気コネクタと、
前記電気コネクタが装着される筐体と、
シール部材が介在することにより前記電気コネクタと前記筐体の間に設けられる、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のシール構造と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性が要求される電気コネクタに適用されるのに好適なシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジンルーム内に設置される車載用の電子機器は、水の浸入を防ぐ必要がある。そこで、電子機器を構成する要素にシール構造を採用している。
シール構造が適用される具体例として、例えば特許文献1及び特許文献2は、電気コネクタと電気コネクタが装着される筐体の間にゴム製のシール部材を介在させる構造を開示する。このシール構造は、圧縮されたシール部材が電気コネクタとハウジングの間に介在することにより、電気コネクタとハウジングの間を外部から気密に封止する。
【0003】
特許文献1及び特許文献2を含め、従来のシール部材は、平面視して環状でかつ矩形の形態を有している。筐体は電気コネクタが装着される装着溝を備えており、この装着溝に向けて電気コネクタが挿入される。電気コネクタをハウジングに装着するには、シール部材を装着溝に位置合わせしてから、シール部材ともども電気コネクタが装着溝に挿入され、装着は、電気コネクタを装着溝の奥まで押し込むことで完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−047432号公報
【特許文献2】特開2014−187099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防水性を確保するためにシール部材は電気コネクタと筐体の間で圧縮されている。電気コネクタを装着する過程において、シール部材が装着溝に臨む筐体と接触することによって摩擦力が生じる。この摩擦力は、シール部材を備える電気コネクタを筐体に装着する際の、電気コネクタを挿入するのに必要な挿入力を大きくする。シール部材の圧縮量を小さくすれば摩擦力を小さくできるが、これでは防水に必要な気密性が得られなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、シール部材による気密性を確保できることを前提として、電気コネクタのハウジングに対する挿入力を小さくできるシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シール部材が介在することにより電気コネクタと筐体の間に設けられるシール構造に関する。
本発明のシール構造は、互いに間隔を空けて対向して配置される一対の第一シール部と、一対の第一シール部のそれぞれの一方の端部を繋ぐ第二シール部と、を備える。
本発明のシール構造は、一対の第一シール部が、第二シール部から離れるのにつれて間隔が広がることを特徴とする。
【0008】
本発明のシール構造において、一対の第一シール部のそれぞれの延長方向の寸法が同じであってもよいし、異なってもよい。
本発明のシール構造において、第二シール部の垂線に対する、一対の第一シール部のそれぞれの傾斜角が同じであってもよいし、又は、異なってもよい。
この傾斜角は、第一シール部及び電気コネクタの一方又は双方が、第二シール部の垂線に対して傾くことにより形成される。
【0009】
本発明のシール構造において、一対の第一シール部のそれぞれの一方の端部に対する他方の端部が自由端となる、U字状の形態を有するシール部材を用いることができる。
本発明のシール構造において、シール部材は、予め電気コネクタに装着されていることが好ましい。
【0010】
本発明は、電気コネクタと、電気コネクタが装着される筐体と、シール部材が介在することにより電気コネクタと筐体の間に設けられるシール構造と、を備える電子機器を提供する。この電子機器は、シール構造として、上述した本発明のシール構造を適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシール構造は、一対の第一シール部が、第二シール部から離れるのにつれて間隔が広がるように構成されている。したがって、本発明のシール構造は、電気コネクタを筐体の装着溝に挿入する際に、装着溝の奥に達する直前までは摩擦力を生じさせないか、生じたとしても小さく抑えることができる。これにより、本発明によれば、電気コネクタの挿入力を小さくできるのに加えて、シール部材の圧縮を小さく抑える必要がないので、所望する防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電子機器の分解斜視図である。
図2図1の電子機器に適用される本実施形態のシール構造を簡略化して示した図であり、(a)〜(d)の順に挿入の作業が進む。
図3図1の電子機器に適用される他のシール構造を簡略化して示した図であり、(a)〜(c)の順に挿入が進む。
図4図1の電子機器に適用される他のシール構造を簡略化して示した図であり、(a)〜(c)の順に作業が進む。
図5図1の電子機器に適用されるさらに他のシール構造を簡略化して示す図である。
図6】従来のシール構造を簡略化して示した図であり、(a)〜(d)の順に挿入の作業が進む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るシール構造10は、図1に示すように、電気コネクタ2と回路基板3との組立体と、この組立体の回路基板3を収容する筐体4と、を備える電子機器1に適用される。電子機器1は、例えば自動車のエンジンルームの内部に配置されるものであり、シール構造10を介して電気コネクタ2が筐体4に装着された防水機能を有している。このシール構造10は、筐体4の装着溝43への電気コネクタ2の挿入力が小さい。
以下、電子機器1の構成要素の概要を説明した後に、シール構造10について詳しく説明する。
【0014】
〔電気コネクタ2〕
電気コネクタ2は、図1に示すように、ハウジング21と、ハウジング21に保持される複数のコンタクト29と、を備えている。
ハウジング21は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成されている。ハウジング21は、基部22と、この基部22から前方に向けて突出する二つのフード23A,23Bとを一体的に備えている。フード23A,23Bは、電気コネクタ2と相互に嵌合される相手コネクタを受容する。
本実施形態の電気コネクタ2は、基部22を基準にしてフード23A,23Bが突出する側を前方という。また、電気コネクタ2において、幅方向W、奥行方向L及び上下方向Hは、図1に示すとおりに定義されるものとする。
【0015】
ハウジング21は、筐体4との間にシール構造10を構成するために、シール収容溝24を備えている。シール収容溝24は、ハウジング21の上面を除いて形成されており、全体としてU字状をなしている。U字状の形態は、シール部材27がU字状であることに対応する。シール収容溝24は、幅方向Wの両端に設けられる側溝24A,24Bと、側溝24Aと側溝24Bの下端を繋ぐ下溝24Cの三つの部分からなる。側溝24Aと側溝24Bは上端から下端に向けて、両者の間隔が狭くなるように設けられている(図2(a)参照)。このU字状のシール収容溝24にU字状のシール部材27が収容される。
【0016】
電気コネクタ2は、図1に示すように、複数のコンタクト29を備えている。コンタクト29は、導電性を有する金属材料、例えば銅合金からなる。このコンタクト29は、基部22を貫通して、その一方側がフード23A,23Bの内部に配置され、他方側は後方に引き出され、回路基板3に形成された図示しない導体パターンに電気的に接続されている。
【0017】
〔回路基板3〕
回路基板3は、コンタクト29と電気的に接続される。回路基板3は、種々の電子部品が実装され、例えばエンジン、その他の制御を行う。
回路基板3は、電気コネクタ2の基部22とは略直交して配設されている。回路基板3は、電気コネクタ2に対して上方に偏位して設けられており、電気コネクタ2が筐体4に装着されると筐体4の開口を覆う。
【0018】
〔筐体4〕
筐体4は、箱状の本体41と偏平な蓋45とから構成される。
本体41は、上端が開口されているとともに、側壁42に電気コネクタ2が装着される装着溝43が形成されている。この装着溝43は、幅方向Wの間隔が上端から下端に向けて狭くなるように形成されている。本体41は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。
蓋45は、本体41に例えば締結具により固定されることにより、本体41の開口を塞ぐとともに、本体41と組み合わされて筐体4を構成する。蓋45は、例えばアルミニウム合金からなるダイカスト部材にて構成されるが、防水性を確保するために、本体41との間に加えて電気コネクタ2との間にシール部材が介在される。このシール部材には、液状ガスケットが好適に用いられる。
【0019】
筐体4の所定位置に電気コネクタ2と回路基板3からなる組立体が装着されると、電気コネクタ2のフード23A,23Bは筐体4の外部に露出するが、シール収容溝24よりも後方は筐体4の内部に収容される。筐体4の内部には、電気コネクタ2の基部22を貫通するコンタクト29が収容され、このコンタクト29と電気的に接続される回路基板3もまた筐体4内部に収容される。
シール収容溝24に保持されるシール部材27が装着溝43に臨む装着縁44に押し付けられることで、シール構造が確立される。これにより、筐体4の内部に収容されるコンタクト29、回路基板3は、外部からの水の浸入に対して防水される。
【0020】
〔シール構造〕
次に、電気コネクタ2を筐体4に装着する経過を示す図2を参照して本実施形態におけるシール構造を説明する。
図2(a)に示すように、シール収容溝24にシール部材27が保持された電気コネクタ2を筐体4の本体41に対向させる。なお、シール部材27は、電気コネクタ2と筐体4との間に介在して防水機能を発揮できる限りその材質は任意であるが、一例としてシリコーンゴム、ブチルゴムを用いることができる。シール部材27は、単体としてみれば、互いに間隔を空けて対向して配置される側部27A,27Bと、側部27A,27Bの一方の端部同士を繋ぐ下部27Cとを備えている。シール部材27は、側部27A,27Bの他方の端部のそれぞれが自由端となる、U字状の形態を有している。
【0021】
ここで、シール収容溝24は、側溝24A,24Bが下溝24Cに対する垂線P1に対して角度αだけ傾いて形成されている。これに追従して、シール部材27も垂線P1に対して角度αだけ傾いている。以下この角度を傾斜角αという。
また、本体41に形成される装着溝43は、側縁44A,44Bが下縁44Cに対する垂線P2に対して角度βだけ傾いて形成されている。以下この角度を傾斜角βというが、本実施形態は傾斜角αと傾斜角βが同じに設定されている。
【0022】
図2(b)、(c)に示すように、電気コネクタ2を装着溝43に挿入する。ところが、シール部材27に傾斜角αが設けられるとともに、装着溝43に傾斜角βが設けられていので、電気コネクタ2の幅方向Wの寸法よりも、装着溝43の幅方向Wの開口寸法が大きい。したがって、すでにシール部材27が装着溝43の下縁44Cの近くまで挿入されているにも関わらず、シール部材27の側部27A,27Bは、装着溝43に臨む側縁44A,44Bに接しない。これにより、電気コネクタ2を装着溝43の相当の深さまで挿入したとしても、側部27Aと側縁44Aの間、及び,側部27Bと側縁44Bの間に、摩擦力は生じない。
【0023】
電気コネクタ2を下縁44C、つまり装着溝43の奥まで挿入すれば、奥に達する直前には側部27A,27Bがそれぞれ側縁44A,44Bに接する。これにより側部27Aと側縁44Aの間、及び,側部27Bと側縁44Bの間に、摩擦力が生ずる。
【0024】
側部27Aと側縁44Aが密着することにより第一シール部11Aが構成され、側部27Bと側縁44Bが密着することにより第一シール部11Bが構成される。一対の第一シール部11Aと第一シール部11Bは所定の間隔を空けて対向して配置される。また、一対の第一シール部11Aと第一シール部11Bの一端同士を第二シール部12が繋いでいる。下部27Cと下縁44Cが密着することにより第二シール部12が構成される。第一シール部11A,11Bと第二シール部12により本実施形態のシール構造10が構成される。
ここで、第一シール部11Aにおける上端と第一シール部11Bの上端を仮想線で結ぶと、第一シール部11A,11B、第二シール部12及び仮想線は台形を構成する。第一シール部11Aと第一シール部11Bは、台形における脚(きゃく)に相当する。脚を構成する第一シール部11Aと第一シール部11Bは、第二シール部12から離れるにつれて両者の間隔が広がる。本実施形態においては、第一シール部11Aと第一シール部11Bの延長方向の寸法が等しい当脚台形が台形の一例として示されている。もっとも、これは好ましい形態であるが、本発明は第一シール部11Aと第一シール部11Bの延長方向の寸法が異なっていてもよい。
【0025】
なお、図2(a)〜(d)は、電気コネクタ2と筐体4の中心が一致する位置合わせ状態が維持されながら装着が完了する例を示しているが、現実の装着作業においては電気コネクタ2と筐体4が位置ずれすることもある。仮に位置ずれを起こしたとしても、側部27A,27Bの一方が側縁44A,44Bの一方に触れる、つまり片当たりが生じるだけであるから、摩擦力が生じても小さい。
【0026】
〔効 果〕
以下、本実施形態に係るシール構造10が奏する効果について説明する。
第一シール部11A,11Aと第二シール部12からなるシール構造10が構成される直前まで、側部27A,27Bがそれぞれ側縁44A,44Bに接触しないので、摩擦力が生じないか生じたとしても微小である。これにより、装着開始から装着完了の直前までの間の挿入力を激減できる。しかも、装着完了の時点では、電気コネクタ2と筐体4の間のシール部材27に圧縮による必要な弾性力を持たせることができるので、防水性能を確保できる。シール部材27を圧縮させる際には、シール部材27と筐体4の間に摩擦力は生じる。しかし、摩擦力が生じるのは極めて短時間に限られるので、装着の全工程からすると、挿入力を小さく抑えることができると言える。
【0027】
ここで、特許文献1に記載される、傾斜角を設けない矩形のシール部材101を装着溝103に装着させる経過を図6に示している。図6(a)〜(d)に示すように、シール部材101は装着溝103に挿入されるとすぐに筐体105に接触する。これ以降、装着完了までの間、シール部材101は筐体105に接触し続けるので摩擦力が生じる。したがって、従来のシール構造は、装着開始から装着完了までの間に生じる摩擦力に対応する挿入力が必要である。
【0028】
また、この摩擦力によって、シール部材101は所定の装着位置から位置ずれを起こしたり、極端な場合には所定の装着位置から脱落したりすることもある。例えば、シール部材101と筐体105の間に生じる摩擦力により、シール部材101は上方に向けた引張力を受けて変形して筐体105との間に隙間ができ、面同士の一様な接触が得られなくなるおそれがある。
これに対して本実施形態によれば、摩擦力は装着完了の直前から生ずるだけであるから、シール部材27が位置ずれを起こしたり脱落したりするおそれがない。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
以上で説明した実施形態は、シール部材27の傾斜角αと装着溝43の傾斜角βが同じに設定されており、これは本発明において好ましい形態であるが、本発明はこれに限定されない。図3に示すように、シール部材27の傾斜角αを装着溝43の傾斜角βよりも大きくできるし、この逆に、図4に示すように、シール部材27の傾斜角αを装着溝43の傾斜角βよりも小さくできる。
【0030】
傾斜角αが傾斜角βよりも大きいと、図3(a)、(b)に示すように、シール部材27の挿入の初期に側部27A(27B)が側縁44A(44B)に接触する。ところが、接触した部分よりも先端側においては、側部27A(27B)は側縁44A(44B)から離れているので、摩擦力が生じるとしても部分的である。その後、電気コネクタ2を装着溝43の奥まで挿入すれば、シール部材27は電気コネクタ2と筐体4の間で必要な弾性力を持つことができるので、防水性能を確保できる。
【0031】
図4(a)〜(c)に示すように、傾斜角αが傾斜角βよりも小さいと、基本的には傾斜角αと傾斜角βが同じのと同様の挙動を示し、装着完了の直前まで側部27A(27B)は側縁44A(44B)に接触しない。その後、電気コネクタ2を装着溝43の奥まで挿入すれば、シール部材27は電気コネクタ2と筐体4の間で必要な弾性力を持つことができるので、防水性能を確保できる。ここで注意を要するのは、傾斜角αが傾斜角βよりも小さいと側部27A(27B)の上端部分に生じる弾性力が小さくなるが、それでも防水性能を確保できるように、側部27A(27B)の肉厚を調整する必要がある。
【0032】
また、以上で説明した実施形態は、シール部材27がU字状をなしているが、本発明はこれに限定されず、図5(a)に示すように、電気コネクタ2の周囲を取り囲む環状のシール部材28を用いることができる。
【0033】
また、以上で説明した実施形態は、シール収容溝24の側溝24A,24Bに傾斜角αを設け、シール部材27の肉厚を一定にすることで、シール収容溝24に保持されたシール部材27にも傾斜角αを設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5(b)に示すように、シール収容溝24は矩形に形成するが、シール部材27の側部27A,27Bを下端から上端に向けて肉厚を連続的に厚くすることによって、側部27A,27Bに傾斜角αを設けてもよい。つまり本発明は、電気コネクタ2に保持されている状態で、側部27A,27Bに傾斜角αが設けられる形態を広く包含する。
【0034】
また、以上で説明した実施形態は、シール部材27が電気コネクタ2に予め装着されていたが、本発明はこれに限定されず、図5(c)に示すように、筐体4の装着溝43にシール部材27を予め装着しておいてもよい。
【0035】
また、以上で説明した実施形態は、シール部材27が設けられる側溝24A,24Bの両方に傾斜角αを設け、装着溝43の側縁44A,44Bの両方に傾斜角βを設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、傾斜角αを側溝24Aの側だけに設け、傾斜角βを側縁44Aの側だけに設けることもできる。つまり、本発明は、第二シール部12の垂線P2に対して、一対の第一シール部11A,11Bのそれぞれの傾斜角が異なっていてもよい。この形態であっても、装着完了の直前まで、側部27A,27Bが側縁44A,44Bに接触しないという作用を得ることができる。
【0036】
また、以上で説明した実施形態は、側部27A,27B及び側縁44A,44Bが直線として描かれているが、本発明はこれに限定されず、側部27A,27B及び側縁44A,44Bの表面が円弧面などの曲面をなしていてもよい。この形態であっても、装着完了の直前まで、側部27A,27Bが側縁44A,44Bに接触しないという作用を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 電子機器
2 電気コネクタ
3 回路基板
4 筐体
10 シール構造
21 ハウジング
22 基部
23A,23B フード
24 シール収容溝
24A,24B 側溝
24C 下溝
27,28 シール部材
27A,27B 側部
29 コンタクト
41 本体
42 側壁
43 装着溝
44 装着縁
44A,44B 側縁
44C 下縁
45 蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6