特開2020-53555(P2020-53555A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-53555(P2020-53555A)
(43)【公開日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20200306BHJP
【FI】
   H01F17/04 A
   H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-181522(P2018-181522)
(22)【出願日】2018年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】519315280
【氏名又は名称】NJコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真
(72)【発明者】
【氏名】有隅 博詔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA08
5E070CA02
5E070CA16
5E070EA05
(57)【要約】
【課題】コストアップを招くことなく、コイルとコアとの相対位置を正確に合わせることができるコイル部品を提供する。
【解決手段】UI型コア2によって形成される閉磁路内にコイル3が配置されてなるコイル部品1aであって、コアは、上面に前後方向に溝11が形成されてなるU字コア部材21の上方にギャップ23を介して積層されているI字コア部材22とからなり、コイルは、板状の導電体からなり、前後方向と左右方向とに平行な面を有して溝内に配置されるコイル部31と、当該コイル部の前端と後端とに連続してU字コア部材の前方と後方とに突出するリード端子部32とを有し、上方から見て、前記コイル部の左右の縁辺と、前記U字コア部材における前記溝の左右の縁辺とが、突起33と切欠13とによって互いに係合し合う形状に形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UI型コアによって形成される閉磁路内にコイルが配置されてなるコイル部品であって、
互いに直交する三方向をそれぞれ上下方向、前後方向、左右方向として、
前記コアは、上面に前後方向に溝が形成されてなるU字コア部材と、前記U字コア部材の上方にギャップを介して積層されているI字コア部材とからなり、
前記コイルは、板状の導電体からなり、前後方向と左右方向とに平行な面を有して前記U字コア部材の前記溝内に配置されるコイル部と、当該コイル部の前端と後端とに連続して前記U字コア部材の前方と後方とに突出するリード端子部とを有し、
上方から見て、前記コイル部の左右の縁辺と、前記U字コア部材における前記溝の左右の縁辺とが、突起と切欠とによって互いに係合し合う形状に形成されている、
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品であって、前記コイル部の左右縁辺に突起が形成され、前記溝の左右の縁辺に当該突起と係合する切欠が形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル部品であって、上下方向から見て、前記突起と前記切欠とが、前後対称に配置されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のコイル部品であって、前記コイル部の左右それぞれの縁辺と前記溝の左右それぞれの縁辺とが複数の箇所で係合し合う形状に形成されていることを特徴とするコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割可能なコアを備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品には、UI型コアと、平板状の導電体(銅板など)からなるコイルとを用いたものがある。図1A図1Bに、平板状の導電体からなるコイル103を備えたコイル部品101の一例を示した。図1Aはコイル部品101の外観を示す斜視図であり、図1Bは、コイル部品101の分解斜視図である。コイル部品101は、図1Aに示したように、ギャップ23を介して対向する二つのコア部材(121、22)からなるコア102の外方に、コイル103の端部がリード端子部32として突出している。
【0003】
ここで、三次元直交座標系における三つの座標軸方向を、上下、前後、及び左右方向とし、コア102に対するリード端子部32の突出方向を前後方向とする。また、二つのコア部材(121、22)の対向方向を上下方向とし、U字状のコア部材(以下、U字コア部材121とも言う)の上方にI字状のコア部材(以下、I字コア部材22とも言う)が配置されていることとして上下の各方向を規定することとすると、コイル103は、図1Bに示したように、左右方向に巻軸100を有する。そして、前後左右方向に平行な面を有する平板状のコイル部131の前端と後端とに下方に向かうリード端子部32が連続してなり、左右方向から見ると、コの字を伏せた形状となっている。
【0004】
コア102を構成する二つのコア部材(121、22)のうち、下方に配置されるU字コア部材121は、上面に下方を底部として前後方向に延びる溝11が左右中央に形成されて、前後方向から見ると凹字状に成形されている。そして、このU字コア部材121の上方に平板状のI字コア部材22が積層されている。また、二つのコア部材(121、22)の間には、ギャップ23を設けるために、絶縁性を有するテープなどからなるスペーサー4が配置されている。
【0005】
コイル103は、コイル部131の下面がU字コア部材121の溝11の底面に接した状態で、当該溝11内に配置されている。組み立てられた状態にあるコイル部品101では、コイル部131の下面とU字コア部材121の溝11の底面、及び二つのコア部材(121、22)は、互いに分離しないように接着剤によって接着されている。
【0006】
なお、以下の特許文献1には、分割可能なコア102を有するコイル部品や、コイル部品101の材料や製造方法などについて記載され、以下の特許文献2には、コの字状のコイル103を有するコイル部品について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−177614号公報
【特許文献2】特開2000−315610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1A図1Bに示した従来のコイル部品101は、コイル103のコイル部131が、前後方向に直線的に形成されているU字コア部材121の溝11内に配置されており、図1Bに示したように、コイル部131の前後方向の長さD1は、U字コア部材121の前後方向の長さD2よりも長い。そのため、コイル部品101の組み立て過程において、コイル103と溝11の底面とを接着する接着剤が硬化するまでは、コイル103が前後方向にずれる可能性がある。図2に、コイル103が前後一方にずれた状態にあるコイル部品101を示した。このように、コイル103がコア102に対して前後方向にずれてしまうと、例えば、コイル部品101が実装される配線基板において、コア102を配置する位置が決められているような場合では、コイル部品101をその配線基板に実装することが困難になる。
【0009】
そのため、従来のコイル部品101の組立工程では、コイル103とU字コア部材121との相対的な位置を正確に合わせるために、専用の治具や装置を用いていた。したがって、従来のコイル部品101では、組立コストを低減させることが難しかった。
【0010】
そこで本発明は、組み立て工程において、コストアップを招くことなく、コイルとコアとの相対位置を正確に合わせることができるコイル部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、UI型コアによって形成される閉磁路内にコイルが配置されてなるコイル部品であって、
互いに直交する三方向をそれぞれ上下方向、前後方向、左右方向として、
前記コアは、上面に前後方向に溝が形成されてなるU字コア部材と、前記U字コア部材の上方にギャップを介して積層されているI字コア部材とからなり、
前記コイルは、板状の導電体からなり、前後方向と左右方向とに平行な面を有して前記U字コア部材の前記溝内に配置されるコイル部と、当該コイル部の前端と後端とに連続して前記U字コア部材の前方と後方とに突出するリード端子部とを有し、
上方から見て、前記コイル部の左右の縁辺と、前記U字コア部材における前記溝の左右の縁辺とが、突起と切欠とによって互いに係合し合う形状に形成されている、
ことを特徴とするコイル部品としている。
【0012】
前記コイル部の左右縁辺に突起が形成され、前記溝の左右の縁辺に当該突起と係合する切欠が形成されているコイル部品とすることもできる。好ましくは、上下方向から見て、前記突起と前記切欠とが、前後対称に配置されているコイル部品とすることである。コイル部の左右それぞれの縁辺と前記溝の左右それぞれの縁辺とが複数の箇所で係合し合う形状に形成されているコイル部品とすればより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組み立て工程において、コストアップを招くことなく、コイルとコアとの相対位置を正確に合わせることができるコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】UI型コアと平板状の導電体からなるコイルとを備えた従来のコイル部品の外観を示す図である。
図1B】上記従来のコイル部品の分解斜視図である。
図2】上記従来のコイル部品における問題点を示す図である。
図3】本発明の実施例に係るコイル部品の分解斜視図である。
図4A】本発明の他の実施例に係るコイル部品を示す図である。
図4B】上記他の実施例に係るコイル部品が備えるコイルの作製方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面においては、同一又は類似の部分に同一の符号を付すことによって、重複する説明を省略することがある。また、図面によっては、説明の際に不要な符号を省略することがある。
【0016】
===実施例===
本発明の実施例に係るコイル部品は、図1A図1Bに示した従来のコイル部品101と同様の基本構造を有する。すなわち、ギャップを介して上下方向で対面するI字コア部材とU字コア部材とからなるUI型のコアによって形成された閉磁路内に、帯状の導電体の端部を下方に屈曲させてなるコの字型の一巻きコイルが配置されてなる。しかし、実施例に係るコイル部品は、組み立て工程において専用の治具や装置を用いなくても、コイルとコアとの相対位置を正確に合わせることができる構造を有している。
【0017】
図3に、本発明の実施例に係るコイル部品1aの分解斜視図を示した。なお、図3においても、図1A図1Bと同様に、上下、前後、左右の各方向を規定することとする。したがって、図3は、コイル部品1aを上前方から見たときの分解斜視図である。
【0018】
図3に示したように、実施例に係るコイル部品1aは、コイル部31の前後両端側に左右方向に突出する突起33が形成されてなるコイル3を備えている。また、U字コア部材21の溝11の前後両端には、その突起33に係合する切欠13が左右対称に形成されている。
【0019】
コイル部品1aは、このような構造のコイル3とU字コア部材21とを備えることで、組み立てに際し、コイル3の突起33とU字コア部材21の溝11に形成された切欠13とを係合させるだけで、コイル3とU字コア部材21との位置が合致した状態で組み付けられる。すなわち、実施例に係るコイル部品1aでは、位置合わせ用の治具や装置を用いて組み立てる必要がない。もちろん、コイル3やコア2は、従来のコイル部品101と同様にして作製することができる。例えば、コイル3は、プレス加工などによって突起33を有する帯状に打ち抜かれた導電体を、さらにプレス加工などによって屈曲させることで作製することができる。コア2も、従来のコイル部品101と同様にして作製することができる。すなわち、粉体状の磁性体材料を、金型を用いて所定の形状に成形したものを焼成するだけで作製することができる。したがって、実施例に係るコイル部品1aは、組み立て工程において、コストアップを招くことなく、コイル3とコア2との相対位置を正確に合わせることができる。
【0020】
===その他の実施例===
上述した実施例についての説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。本発明は、上記実施例の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。
【0021】
上記実施例におけるコイル3は、一枚の平板状の導電体から形成された一巻きコイル3であったが、コイル3は複数巻きであってもよい。そこで、他の実施例に係るコイル部品として、複数巻きコイルを備えたコイル部品を挙げる。図4A及び図4Bに、他の実施例に係るコイル部品1bを示した。図4Aは、他の実施例に係るコイル部品1bの構成を示す図であり、ここでは、I字コア部材22を省略している。図4Bは、複数巻きコイル3の作製方法を説明するための図である。
【0022】
図4Aに示したように、他の実施例に係るコイル部品1bでは、左右方向に幅狭の二つの一巻きコイル3bが間隙41を介して左右方向に並べられて、二巻き分の複数巻きコイル3が形成されている。図4Aに示した複数巻きコイル3の作製方法としては、図4Bに示したように、所定の幅を有する1本のスリット42が左右中央に形成された板状の導電体113を作製する。
【0023】
次いで、この導電体113のコイル部31をU字コア部材21の溝11内に配置するとともに、接着などの方法により、U字コア部材21と導電体113とを固定する。そして、図4Bにおいて破線で示した位置43で導電体113を切断する。それによって、図4Aに示したように、幅狭の一巻きコイル3bが間隙41を介して左右に二つ並んでなる二巻き分のコイル3が形成される。なお、I字コア部材22をU字コア部材21の上方にスペーサー4を介して積層するとともに、これらのコア部材(21、22)を接着する工程については、導電体113を上記位置43で切断する工程の前、あるいは後に行えばよい。このようにして、図4Aに示したコイル部品1bが完成する。
【0024】
実施例に係るコイル部品1aでは、コイル部31の四隅に突起33が形成されている。すなわち、コイル部31の突起33及び溝11の切欠13は、それぞれ、前後及び左右で対称となる位置に形成されている。そのため、コイル部品1aの組み立て時に、コイル3とU字コア部材21との前後及び左右の相対的な位置関係を意識せずに、コイル部31を溝11に無造作に落とし込んでも、突起33と、U字コア部材21の溝11の左右両端の前後に形成された切欠13とが容易に係合するようになっている。
【0025】
また、実施例に係るコイル部品1aでは、コイル部31の左右それぞれの縁辺と、溝11の左右それぞれの縁辺とが二箇所で係合し合っている。そのため、コイル部31と溝11とが、前後方向と左右方向とを含む同一平面内においてガタツキが抑制された状態で係合し、より確実に位置ずれを防止することができる。もちろん、突起33がコイル部31の前後の縁辺に少なくとも一つ形成され、その突起33に係合する切欠13が溝11の前後の縁辺に形成されていれば、コイル3の前後方向へのずれを防止することができる。
【0026】
コイル3のコイル部31とU字コア部材21の溝11との係合構造は、適宜に変更できる。例えば、コイル部31に突起33に代えて凹部を形成し、U字コア部材21の溝11の前後の縁辺に、切欠13に代えてコイル部31の凹部に係合する凸部を形成してもよい。なお、実施例に係るコイル部品1aでは、コイル部31側に突起33が形成されているため、コイル部31の一部において幅員が縮小した場合も抵抗値が増大しない。したがって、実施例のコイル部品1aは、従来のコイル部品101と同様に大電流にも対応できるものとなっている。
【0027】
コイル3におけるリード端子部32は、コア2の前端及び後端から、前方及び後方に突出していればよく、コイル部31の前後両端から下方に屈曲していなくてもよい。例えば、左右方向から見て前後方向に直線状に突出していてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1a,1b,101 コイル部品、2,102 UI型コア(コア)、
3,3b,103 コイル、4 スペーサー、11 溝、13 切欠、
21,121 U字コア部材、22 I字コア部材、23 ギャップ、
31,131 コイル部、32 リード端子部、33 突起、41 間隙、
42 スリット、43 切断位置、100 巻軸、
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B