【解決手段】マイクロ流体デバイス1は、単層で細胞を収容する寸法を有する複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20を撮像し有するための透明の基板10を備える。細胞チャネルのそれぞれの第1の端部22は、第1の流体ポート31と流体連結する第1の端部32および第2の流体ポート33と流体連結する第2の端部34を有する流れ入力チャネル30と流体連結する。細胞チャネルのそれぞれの第2の端部24は、流れ出力チャネル50と流体連結する第2の端部44を有するそれぞれの第1の洗浄チャネル40の第1の端部42と流体連結する。流れ出力チャネルは、第3の流体ポート51と流体連結する。洗浄チャネル40は、小さ過ぎて細胞を収容できない寸法を有する。
前記基板(10)は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル(20)の少なくとも1つの組(2A、2B)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記細菌細胞をロードすることは、細菌細胞をマイクロ流体デバイス(1)の細胞チャネル(20)にロードして、細胞チャネル(20)内の細菌細胞を捕捉することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
前記細胞チャネル(20)は、前記流れ入力チャネル(30;30A、30B)と流体連結するそれぞれの第1の端部(22)と、流れ出力チャネル(50;50A、50B)と流体連結するそれぞれの第2の端部(24)とを含み、
前記細胞チャネル(20)は、それぞれの第2の端部(24)に関連するチャネル制限を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記基板(10)は、第1の流れ入力チャネル(30A)または第2の流れ入力チャネル(30B)と流体連結する第1の端部(23)と、第1の流れ出力チャネル(50A)または第2の流れ出力チャネル(50B)と流体連結する第2の端部(25)とを有する少なくとも1つの参照チャネル(21)を含み、
前記少なくとも1つの参照チャネル(21)は、標的細胞が少なくとも1つの参照チャネル(21)に入るのを防ぐために、それぞれの第1の端部(23)に関連するそれぞれのチャネル制限を有する、
請求項8〜12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
前記基板(10)は、少なくともN番目の細胞チャネル(20)毎にそれぞれのチャネル識別子(11)を有し、前記それぞれのチャネル識別子(11)は、撮像によって可視化される、請求項8〜15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
前記基板(10)は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル(20)の第1の組(2A)と、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル(20)の第2の組(2B)とを含む、請求項8〜16のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
前記細菌細胞をロードすることは、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス(1)の共通の入力ポート(33A、33B、33C)に細菌細胞をロードすることを含む、請求項18に記載のマイクロ流体デバイス。
前記第1の組(2A)の細胞チャネル(20)内の細菌細胞を、抗生物質を含む培養媒体に曝すことは、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス(1)の第1の入力ポート(31A、31A’)に抗生物質を含む培養媒体を加え、前記第1の組(2A)の細胞チャネル(20)内の細菌細胞を、抗生物質を含む培養媒体に曝すことを含み、
前記第2の組(2B)の細胞チャネル(20)内の細菌細胞を、抗生物質を欠いている培養媒体に曝すことは、請求項9に記載のマイクロ流体デバイス(1)の第2の入力ポート(31B、31B')に抗生物質を欠いている培養媒体を加え、前記第2の組(2B)の細胞チャネル(20)内の細菌細胞を、抗生物質を欠いている培養媒体に曝すことを含む、
請求項18又は19に記載の方法。
細胞チャネル(20)、流れ入力チャネル(30;30A、30B)及び流れ出力チャネル(50; 50A、50B)の少なくとも1つの組(2A、2B)を有する基板(10)を含むマイクロ流体デバイス(1)の細胞チャネル(20)内に細菌細胞をロードすることであって、ここで前記流れ入力チャネル(30;30A、30B)は、細胞チャネル(20)を介して流れ出力チャネル(50; 50A、50B)と流体連結されており、細胞チャネル(20)は、細胞チャネル(20)に入る細菌細胞が流れ出力チャネル(50; 50A、50B)に到達するのを防止するためのそれぞれのチャネル制限を含む、前記マイクロ流体デバイス(1)の細胞チャネル(20)内に細菌細胞をロードすることと、
細胞チャネル(20)内の細胞を増殖させることと、
細胞チャネル(20)内の細胞の表現型特徴をリアルタイムで監視することとを含む、
細胞の表現型特徴づけのための方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面全体を通して、同じ参照番号は類似または対応する要素に使用される。
【0018】
本実施形態は、一般にマイクロ流体デバイスに関し、より詳細には細胞を培養し監視するように構成されたマイクロ流体デバイスに関する。
【0019】
実施形態のマイクロ流体デバイスは、一定条件下または可変条件下で長期の細胞培養を促進する。マイクロ流体デバイスは、細胞を容易にロードし、増殖条件を迅速に切り替え、生物剤または化学剤を追加または交換できる。
【0020】
実施形態のマイクロ流体デバイスは、単一細胞の培養および実験に使用できる。このような適用では、個々の細胞は、入力試料内の他の細胞から分離して保持される。例えば、マイクロ流体デバイスを使用して、複数の細胞株ライブラリ内のそれぞれの細胞株の細胞を他の細胞株の細胞から分離して保持し培養できる。それゆえ各細胞株は、マイクロ流体デバイス内でそれぞれの空間的に画定され分離された細胞チャネルを有し、その中で細胞を増殖し研究できる。
【0021】
実施形態の一態様はマイクロ流体デバイス(培養装置とも呼ばれる)に関する。マイクロ流体デバイスは、単層で細胞を収容する寸法を有する、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルを撮像し有するための透明な基板を備える。複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれの第1の端部は、流れ入力チャネル(流れチャネルとも呼ばれる)と流体連結する。流れ入力チャネルは、第1の流体ポート(流体源とも呼ばれる)と流体連結する第1の端部、および第2の流体ポート(流体シンクとも呼ばれる)と流体連結する第2の端部を有する。複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれの第2の端部は、流れ出力チャネル(シンクチャネルとも呼ばれる)と流体連結する第2の端部を有する、それぞれの第1の洗浄チャネルの第1の端部と流体連結する。流れ出力チャネルは、第3の流体ポート(洗浄シンクとも呼ばれる)と流体連結する。第1の洗浄チャネルは、小さ過ぎて細胞を収容できない寸法を有する。
【0022】
次にマイクロ流体デバイスの様々な実装の実施形態について、図面を参照してさらに説明する。
【0023】
一実施形態では、マイクロ流体デバイス1(
図1参照)は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20を撮像し有するための透明な基板10を備える。細胞チャネル20は、単層で細胞が収まる寸法を有する。細胞チャネル20のそれぞれの第1の端部22は、第1の端部32内の第1の流体ポート31および第2の端部34内の第2の流体ポート33を有する、流れ入力チャネル30と流体連結する。第1の洗浄チャネル40は好ましくは存在し、細胞チャネル20のそれぞれの第2の端部24から流れ出力チャネル50に延在する。それゆえ第1の洗浄チャネル40は、細胞チャネル20の第2の端部24と流体連結する第1の端部42、および流れ出力チャネル50と流体連結する第2の反対側の端部44を有する。流れ出力チャネル50は、第3の流体ポート51と流体連結する。
【0024】
基板10は複数の細胞チャネル20を有し、その中で細胞が培養される。細胞チャネル20は、
図1に示されるように、さらに
図2に示されるように
図1のA−A線に沿って切断した断面図に示されるように平行に配置されてもよい。このような場合、細胞チャネル20のそれぞれの第1の端部22は、流れ入力チャネル30と流体連結し、かつこの流れ入力チャネル30から延在する。細胞チャネル20の総数を増やすために、細胞チャネル20は流れ入力チャネル30の長手方向側部の両側から延在してもよく、それによって流れ入力チャネル30の片側のみに細胞チャネル20を有するのと比べて、細胞チャネル20の数が実質的に2倍になる(
図5参照)。
【0025】
図5では、マイクロ流体デバイス1の基板10は細胞チャネル20の2組2Aおよび2Bを有する。このような2A、2Bの各組の細胞チャネル20は、2つの端部32、34内に第1および第2の流体ポート31、33を備える、共通の流体入力チャネル30に流体連結したそれらのそれぞれの第1の端部を有する。しかし各組2A、2Bは、
図5に示されるようにそれぞれの流れ出力チャネル50A、50Bを有する。それゆえ第1の組2A内の第1の洗浄チャネル40の第2の端部は第1の流れ出力チャネル50Aと流体連結するのに対して、第2の組2B内の第1の洗浄チャネル40の第2の端部は、第2の流れ出力チャネル50Bと流体連結する。これらの2つの流れ出力チャネル50A、50Bは、好ましくは共通の第3の出力ポート51を共有する。
【0026】
図5のマイクロ流体デバイス1は、
図1に示されるように2組2A、2Bを基本的に多重化したものである。これは、2組2A、2Bの細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40が、その第1の端部32内で第1の流体ポート31に連結されその第2の端部34内で第2の流体ポート33に連結される、共通の流れ入力チャネル30を共有することを意味する。各組2A、2Bの細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40は、それぞれの流れ出力チャネル50A、50Bで終了し、流れ出力チャネル50A、50Bは相互連結され、共通の第3の流体ポート51に連結される。
【0027】
第1の組2A(図の左側)内の細胞チャネル20内に存在する細胞は、第2の組2B(図の右側)内の細胞チャネル20内に存在する細胞と同じ培養媒体および試薬および化学的入力に第1の流体ポート31で曝される。
【0028】
また
図6〜
図7および
図10に関連して本明細書にさらに説明されるように、細胞チャネル20および流れ入力チャネル30のより複雑な配置も基板10内で可能である。重要な特徴は、各細胞チャネル20が流れ入力チャネル30と流体連結する端部22を有すること、および細胞チャネル20が分離されて、細胞が1つの細胞チャネル20から逃れて別の細胞チャネル20に入ることを防止することである。
【0029】
細胞チャネル20は、単層で細胞を収容する寸法である。これは、細胞チャネル20の高さまたは直径が、監視される細胞の直径とほぼ同じであるかわずかに大きいように選択されることを意味する。例えば細胞チャネル20は、細胞が細胞の直径に実質的に一致するチャネル側面を有する、
図2に示されるような実質的に正方形の断面であってよい。別法として細胞チャネル20は、細胞の直径と実質的に一致する直径を有する、円形またはU字形の断面を有してよい。また細胞を細胞チャネル20内で、好ましくは単層で、生着可能に培養できる限り、他の断面構成も可能である。これは、細胞チャネル20は細胞数個分の幅であってよいが、好ましくは細胞1個分のみの高さであり得ることを示唆する。この場合、細胞は、セル1個より幅が広くてもよいが好ましくは依然として単層である2D単層を形成する細胞チャネル20内で増殖できる。
【0030】
流れ入力チャネル30は、好ましくは監視される細胞の直径より非常に大きい寸法を有する。これは、流れ入力チャネル30に入るあらゆる細胞が、流れ入力チャネル30を通って通常は第2の流体ポート33に向かって流され、好ましくは連続した培養媒体の流れにより第1の流体ポート31から流れチャネル30を通って第2の流れポート33に向かって流されることを意味する。したがって一実施形態では、流れ入力チャネル30は、細胞が流れ入力チャネル30を通って流れることができるように充分に大きい寸法を有する。
【0031】
流れ入力チャネル30および細胞チャネル20の断面寸法の差をさらに活用して、マイクロ流体デバイス1に加えた生物試料内で細胞を互いから分離させることができる。例えば生物試料は、流体入力チャネル30を通って流れる際に細胞が細胞チャネル20に入ることができるように充分に小さいサイズを有する関心対象の細胞を含んでもよい。生物試料は、大き過ぎて細胞チャネル20に入れないが依然として充分に小さいので流れ入力チャネル30を通ることができる、より大きい細胞をさらに含んでもよい。生物試料が第1の入力ポート31などを通ってマイクロ流体デバイス1に入力されると、サイズ分離が得られ、ここで大きい細胞は第1の流体ポート31から第2の流体ポート33へと向かう流れ入力チャネル30内で細胞チャネル20を通過する。しかし、より小さい標的細胞は細胞チャネル20内で捕捉される。
【0032】
加えてまたは別法として生物試料が、第1の洗浄チャネル40に入るのに充分に小さいサイズを有する、非常に小さい細胞を含む場合、追加または別法のサイズ分離が得られる。したがって標的細胞は細胞チャネル20に入るが、サイズが大き過ぎることに起因して第1の洗浄チャネル40に入れないのに対して、非常に小さい細胞は細胞チャネル20に入り、さらに第1の洗浄チャネル40に入って流れ出力チャネル50に流れる。これらの小さい細胞は次いで第3の流体ポート51を通ってマイクロ流体デバイス1から出る。
【0033】
したがって大きい細胞は決して細胞チャネル20に入らないが、流れ入力チャネル30を通って流され、第2の流れポート33を通って出る。小さい細胞は細胞チャネル20内にとどまらないが、むしろ細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40を通って流れ、さらに流れ出力チャネル50および第3の流体ポート51を通る。したがって適正なサイズおよび寸法の標的細胞のみが、細胞チャネル20に入って捕捉される。
【0034】
細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40の実際の寸法は、マイクロ流体デバイス1内で増殖され監視されるべき特定の型の細胞に基づいて選択され設計され得る。
【0035】
概して細胞株ライブラリなどの細胞は、それぞれの細胞株の細胞などの細胞を各細胞チャネル20内に加えることによって播種される。それによって細胞を細胞チャネル20の長さに沿って単層で増殖できる。一実施形態では、それによって各細胞チャネル20は単一の細胞株および遺伝子型の細胞を含有する。細胞チャネル20内の細胞は、細胞チャネル20が細胞1個分の幅である場合、糸に通した真珠のように見える。細胞チャネル20がより幅広い場合、細胞は細胞チャネル20内に2D層を形成する。
【0036】
増殖して細胞チャネル20の第1の端部22を通過して軽減する細胞は、流れ入力チャネル30に入り、それによって洗い流される。第2の、細胞チャネル20の反対側の端部24は第1の洗浄チャネル40に連結され、第1の洗浄チャネル40は、細胞が細胞チャネル20の第2の端部24から逃れて第1の洗浄チャネル40に入るのを防止する寸法である。
【0037】
一実施形態では、第1の洗浄チャネル40はその全長に沿って、すなわち細胞チャネル20の第2の端部24に連結された第1の端部42から流れ出力チャネル50に連結された第2の端部44まで、小さい寸法を有することができる。代替実施形態では、第1の洗浄チャネル40は、細胞チャネル20内に存在する細胞が増殖するかチャネル制限を通過して第1の洗浄チャネル40内へと流れるには小さすぎるか狭すぎる寸法を有する、チャネル制限を備える。このチャネル制限は、次いで第1の洗浄チャネル40の第1の端部42に存在する。この実施形態では、第1の洗浄チャネル40の残りの部分は、細胞チャネル20と実質的に同じ寸法を有してもよい。したがってチャネル制限は細胞に対して有効なブロックまたは障害であるが、培養媒体およびあらゆる化学物質、試薬もしくは溶剤はチャネル障害を通過してさらに第1の洗浄チャネル40および流れ出力チャネル50内に流れることができる。
【0038】
これらの例示的実施形態はどちらも、細胞チャネル20内に存在する標的サイズの細胞が増殖するか細胞チャネル20の第2の端部24を通過して第1の洗浄チャネル40内へと流れることを防止する所望の効果を実現する。
【0039】
一実施形態では(
図3参照)、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の各細胞チャネル20は、その長手方向側部26、28の少なくとも1つに沿って、流れ入力チャネル30と流体連結する第1の端部62および流れ出力チャネル50と流体連結する第2の端部64を有するそれぞれの第2の洗浄チャネル60に隣接される。第2の洗浄チャネル60は、小さ過ぎて細胞を収容できない寸法を有する。
【0040】
この実施形態では、各細胞チャネル20は、細胞チャネル20と流体連結し、その長手方向側部26、28の1つに沿って配置される、少なくとも1つの第2の洗浄チャネル60を有する。
図3に示されるような実施形態は、各細胞チャネル20の長手方向側部26、28の両方に沿って配置される第2の洗浄チャネル60を有する。
【0041】
一実施形態では、第1の洗浄チャネル40および第2の洗浄チャネル60は相互連結されてもよく、それによって
図3に示されるように細胞チャネル20の周囲に連続する洗浄層を形成する。したがって細胞チャネル20の第2の端部24から第2の洗浄チャネル60の第2の端部64までの第2の洗浄チャネル60の一部は、第1の洗浄チャネル40に隣接して相互連結されてもよい。
【0042】
第2の洗浄チャネル60(または洗浄層)の寸法、例えば深さまたは高さは、小さすぎて細胞を収容できない。これは、細胞チャネル20内に存在する細胞は隣接した第2の洗浄チャネル60に入ることができないが、細胞チャネル20内に残ることを意味する。
【0043】
図4は、A−A線に沿った
図3のマイクロ流体デバイス1の断面図である。この図は、細胞チャネル20に比べて第2の洗浄チャネル60の深さが比較的浅いことを明確に示す。第2の洗浄チャネル60は、正方形、長方形、円形、U字形などのあらゆる断面構成を有してもよい。
【0044】
特定の実施形態では、第1および第2の洗浄チャネル40、60は、基板10内で同じ深さを有する。
【0045】
細胞チャネル20は、流れ入力チャネル30におけるその第1の端部22からその第2の端部24にわたり、好ましくは実質的に同じ深さを有する。この深さは、細胞が細胞チャネル20内で単層であることができるように、好ましくは細胞の直径に一致する、またはわずかに大きい。細胞チャネル20の第2の端部24における深さは、細胞チャネル20の第2の端部24から流れ出力チャネル50に延在する第1の洗浄チャネル40に入る際に、より浅い。このより浅い深さは、好ましくは細胞の直径より小さく、細胞チャネル20内に存在する細胞が第1の洗浄チャネル40に入ることを防止する。
【0046】
図3および
図4に示されるような一実施形態では、基板10は、その安定性を増すために、基板10の全厚さを通して延在する構造または部分15を好ましくは備える。
図3および
図4は、細胞チャネル20の長手方向長さに沿っていくつかの第2の洗浄チャネル60の間に提供される支柱の形態でのこのような構造15を示す。これらの支柱15は、洗浄層を支持し流体流れが可能な限り、あらゆる形状を有していてよい。支柱15は、例えば長方形、星形、円形または三角形であり、規則的または不規則に配置されてよい。これらの構造15は、図に示されるように分離された構造であり洗浄層全体を通して、すなわち第2の洗浄チャネル60の間の流体流れを促進し得る。代替手法では、図に示される支柱の各カラムは、流れ入力チャネル30と流れ出力チャネル50との間で全長にわたり延在する単一構造を形成する。このような解決策はより安定した基板10をもたらすであろうが、流体流れの効率が悪いという犠牲を払うことになる。
【0047】
細胞チャネル20ならびに第1および第2の洗浄チャネル40、60は、
図2および
図4に示さるたように好ましくは開チャネルである。これは、カバー板70が好ましくは基板10上に配置されて、細胞チャネル20ならびに第1および第2の洗浄チャネル40、60に対する蓋を形成し、それらを封止することを意味する。カバー板70はしたがって基板10の主表面12上に配置される。
【0048】
次に本明細書でマイクロ流体デバイス1の作動について短く説明する。
【0049】
細胞のロード中、培養媒体とともに細胞は第1の流体ポート31または第2の流体ポート33に入り、流れ入力チャネル30の中に流れる。好ましい実施形態では、すべての流体ポート31、33、51は開いており培養媒体および細胞が細胞チャネル20の中に押し込まれるようにする。過剰な細胞、または大き過ぎて細胞チャネル20内に適合できない細胞は、細胞チャネル20および第2の洗浄チャネル60(存在する場合)の深さが細胞を流れ出力チャネル50に到達させ第3の流体ポート51に到達させるには浅過ぎるので、第2の流体ポート33または第1の流体ポート31を通って洗い流される。培養媒体は、第2の流体ポート33または第1の流体ポート31および第3の流体ポート51の両方からマイクロ流体デバイス1を出る。マイクロ流体デバイス1のサイズ選択容量を使用して、細胞チャネル20に、例えば非常に大きい血液細胞から分離される細菌を播種できる。
【0050】
マイクロ流体デバイス1の作動中、培養媒体は上に説明されたように第1の流体ポート31に入る。第1の実施形態では、第2の流体ポート33および第3の流体ポート51は開いている。これは、培養媒体が第2の流体ポート33だけでなく第3の流体ポート51も通って出ることを意味する。これは、培養媒体、検査薬、および試薬が細胞チャネル20内のすべての細胞に有効に到達することを意味する。過剰な細胞は流れ入力チャネル30の中に流れ、さらに第2の流体ポート33から流れ出るのに対して、媒体はすべての細胞の上を流れ、流れ出力チャネル50に入り、第3の流体ポート51から出て、すべての細胞に新鮮な培養媒体または試薬を供給し続ける。
【0051】
第2の実施形態では、第3の流体ポート51は閉じているので、培養媒体および過剰な細胞はどちらも第2の流体ポート33を通って出る。これは、第1の実施形態に比べて細胞チャネル20内の細胞の上を流れる細胞媒体の効率が概して低い実施形態である。
【0052】
増殖ステップ、洗浄ステップ、および反応ステップにおいて、第3の流体ポート51は好ましくは開いている。これは、培養媒体、洗浄流体または液体および反応試薬を含む溶液が第1の流体ポート31に入り、流れ入力チャネル30、細胞チャネル20、および第1の洗浄チャネル40(および任意の第2の洗浄チャネル60)を通り、流れ出力チャネル50および第3の流体ポート51に向かって流れることを意味する。別の実施形態では、第2の流体ポート33は増殖ステップ、および洗浄ステップ中に開いている。このような場合、培養媒体、洗浄流体または液体、および反応試薬を含む溶液は、第3の流体ポート51または第2の流体ポート33を通って出てもよい。
【0053】
図6は、共通の第2の流体ポート33および第3の流体ポート51を共有するが、分離した、すなわち個々の第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dを有する、細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40の複数の、すなわち少なくとも2つの、組2A、2B、2C、2Dを有する、マイクロ流体デバイス1の実施形態を示す。これは、細胞チャネル20の別の組2B、2C、2Dに存在する細胞と比べて、異なる培養媒体および/または試薬もしくは化学薬品を細胞チャネル20の組2Aの1つの中に存在する細胞に入力できることを意味する。
【0054】
したがって一実施形態では、マイクロ流体デバイス1の基板10は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の複数の組2A、2B、2C、2D、複数の流れ入力チャネル30A、30B、30C、30D、ならびに複数の流れ出力チャネル50A、50B、50C、50Dを有する。複数の組2A、2B、2C、2Dの各組2A、2B、2C、2D内の複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20のそれぞれの第1の端部22は、複数の流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dのそれぞれの流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dと流体連結する。複数の組2A、2B、2C、2Dの各組2A、2B、2C、2D内の第1の洗浄チャネル40のそれぞれの第2の端部44は、複数の流れ出力チャネル50A、50B、50C、50Dのそれぞれの流れ出力チャネル50A、50B、50C、50Dと流体連結する。
【0055】
複数の流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dの各流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dのそれぞれの第1の端部32A、32B、32C、32Dは、それぞれの第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dと流体連結する。それに応じて複数の流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dの各流れ入力チャネル30A、30B、30C、30Dのそれぞれの第2の端部34A、34B、34C、34Dは、共通の第2の流体ポート33と流体連結する。さらに、複数の流れ出力チャネル50A、50B、50C、50Dの各流れ出力チャネル50A、50B、50C、50Dは、共通の第3の流体ポート51と流体連結する。
【0056】
図6のマイクロ流体デバイス1は、細胞チャネル20の複数の、すなわち少なくとも2つの、組2A、2B、2C、2Dを有する例示的実施形態に過ぎないとみなされるべきである。これは、マイクロ流体デバイス1の変形がこのような組をM個もつ基板を有してよく、この場合Mは2以上の整数値であることを意味する。
【0057】
図7は、
図6のマイクロ流体デバイス1を使用する実施形態を概略的に示す。一実施形態では、ロード中、細胞および培養媒体は第2の流体ポート33に入り、培養媒体は第3の流体ポート51を通って、かつ異なる第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dを通って流れ出る。過剰な細胞は第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dを通って流れ出る。別の実施形態では、細胞は、個々の第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dを通って入り、過剰な細胞は共通の第2の流体ポート33を通って出て、培養媒体は共通の第2の流体ポート33および共通の第3の流体ポート51を通って出る。
【0058】
マイクロ流体デバイス1の作動中、培養媒体は別個の第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dに好ましくは入り、それによって異なる培養媒体を異なる組2A、2B、2C、2Dの細胞チャネル20および第1の洗浄チャネル40に到達させることができる。過剰な細胞は共通の第2の流体ポート33を通って洗い流され、培養媒体は共通の第3の流体ポート51から、かつ共通の第2の流体ポート33を通しても流れ出る。
【0059】
同じ培養媒体が細胞チャネル20のすべての組2A、2B、2C、2Dに使用され、化学薬品、試薬または他の溶剤を異なる組2A、2B、2C、2Dへ個々に追加する必要がない場合は、培養媒体の流れは代わりに共通の第2の流体ポート33から共通の第3の流体ポート51および別個の第1の流体ポート31A、31B、31C、31Dに向かってよい。
【0060】
図10は、
図6および
図7に関連して上に説明されたマイクロ流体デバイス1の変形を概略的に示す。この実施形態では、複数の流れ入力チャネル30A、30B、30Cの各流れ入力チャネル30A、30B、30Cのそれぞれの第1の端部32A、32B、32Cは、複数のそれぞれの第1の流体ポート31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’と流体連結する。複数の流れ入力チャネル30A、30B、30Cの各流れ入力チャネル30A、30B、30Cのそれぞれの第2の端部34A、34B、34Cは、複数の共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cと流体連結する。
【0061】
これは、この実施形態では各流れ入力チャネル30A、30B、30Cは、複数の別個の第1の流体ポート31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’、および複数の共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cと流体連結することを意味する。それによって複数の共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cは細胞チャネルのすべての組2A、2B、2Cによって共有されるのに対して、細胞チャネルのこのような各組2A、2B、2Cは、その独自の群の複数の第1の流体ポート31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’を有する。
【0062】
細胞チャネルの組2A、2B、2C毎に複数の第1の流体ポート31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’および複数の共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cの使用により、全く同一のマイクロ流体デバイス1を異なるモードで作動できる。
【0063】
第1のこのような作動モードは、複数の特定の細胞株を使用することを含む。このような場合、異なる細胞株は、過剰な細胞の出口として共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cの少なくとも1つを備える第1の流体ポート31A、31B、31C(または31A’、31B’、31C’)内のマイクロ流体デバイス1にロードされるのに対して、培養媒体は、共通の第3の流体ポート51および開いた共通の第2の流体ポート(複数可)33A、33B、33Cを通ってマイクロ流体デバイス1から出る。作動中、培養媒体およびあらゆる試薬、化学薬品または溶剤は、ロード中に細胞の老廃物に対して使用されなかった共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cの少なくとも1つから流され、共通の第3の流体ポート51および第1の流体ポート31A’、31B’、31C’(または31A、31B、31C)を通ってマイクロ流体デバイス1を出ていく。
【0064】
特定の好ましい実施形態では、ロード中に細胞および培養媒体入力ポートとして各第1の流体ポートの対31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’の一方の第1の流体ポート31A、31B、31Cを使用し、作動中に培養媒体出力ポートとして各第1の流体ポートの対31A、31A’、31B、31B’、31C、31C’の他方の第1の流体ポート31A’、31B’、31C’を使用することが好ましい。それに応じて、ロード中に細胞および培養媒体出力ポートとして複数の共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cの1つの共通の第2の流体ポート33Aを使用し、作動中に培養媒体および試薬、化学薬品または溶剤入力ポートとして別の共通の第2の流体ポート33Cを使用することが好ましい。このような手法により、様々な流体ポートを汚染する危険性が低減し、特に培養媒体および培養媒体とともに作動中に使用される試薬、化学薬品または溶剤、ならびにロード中に追加された細胞を汚染する危険性が低減する。
【0065】
第2の作動モードは、単一細胞株または細胞株ライブラリの使用を含む。このような場合、細胞株または細胞株ライブラリは、過剰な細胞および培養媒体のための出力ポートとしてそれぞれの第1の流体ポート31A’、31B’、31C’(または31A、31B、31C)、および培養媒体のための出力ポートとして共通の第3の流体ポート51を使用して、少なくとも1つ、好ましくは1つの共通の第2の流体ポート33Aを通ってロードされる。作動中に、異なる培養媒体および/または異なる試薬、化学薬品または溶剤を他方のそれぞれの第1の流体ポート31A、31B、31C(または31A’、31B’、31C’)で入力できる。次いで共通の第2の流体ポート33B、33Cの少なくとも1つおよび共通の第3の流体ポート51は、異なる培養媒体および/または異なる試薬、化学薬品または溶剤のための出力ポートとして使用される。
【0066】
特定の実施形態では、複数の流れ入力チャネル30A、30B、30Cの各流れ入力チャネル30A、30B、30Cのそれぞれの第2の端部34A、34B、34Cは、それぞれの相互連結チャネル36A、36B、36Cを通って共通の第2の流体ポート(複数可)33A、33B、33Cと流体連結する。一実施形態では、各々の相互連結チャネル36A、36B、36Cは実質的に同じチャネル長を有する。
【0067】
したがって一実施形態では、流れ入力チャネル30A、30B、30Cの各々の第2の端部34A、34B、34Cから共通の第2の流体ポート33(
図6参照)またはポート33A、33B、33C(
図10参照)までのチャネル距離は、好ましくは細胞チャネルの各組の2A、2B、2Cと同じ距離である。これは、相互連結チャネル36A、36B、36Cを使用して、
図10に示されるようにそれぞれの流体入力チャネル30A、30B、30Cと共通の第2の流体ポート(複数可)33A、33B、33Cとの間で基板10上の物理的距離の差を補完することを意味する。このような同じ距離は、流れの上の圧力を細胞チャネルの各組2A、2B、2Cで同じに保つ。
【0068】
図11は、箱A内に存在する
図10に示されるマイクロ流体デバイスの部分の拡大を概略的に示す。それに応じて
図12は、箱B内に存在する
図11に示されるマイクロ流体デバイスの部分の拡大を概略的に示す。この
図12は、マイクロ流体デバイスの2つの任意だが好ましい特徴を示す。
【0069】
第1に、各細胞チャネル20は、それぞれのチャネル識別子11を好ましくは有する。
図12は、様々な細胞チャネル20に対するそれぞれのチャネル番号としてチャネル識別子11を示す。例えば細胞チャネル20は、10,000(または9,999)個の細胞チャネル20をもつマイクロ流体デバイス1に対して0000(または0001)から9999までの番号を付されてよい。数以外の識別記号をチャネル識別子11として使用できる。
【0070】
したがって一実施形態では(
図9および
図12参照)、マイクロ流体デバイスの基板10は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の各空間的に画定され分離された細胞チャネル20に対するそれぞれのチャネル識別子11を備える。それぞれのチャネル識別子11は撮像によって可視化される。
【0071】
すべての細胞チャネル20がそれぞれのチャネル識別子11を有する必要は必ずしもない。したがって一実施形態では、基板10は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の少なくともN番目の空間的に画定され分離された細胞チャネル20毎に、それぞれのチャネル識別子11を備える。パラメータNは、限定ではないが例示として1、2、5、10、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100などの、1以上のあらゆる整数値を有してよい。
【0072】
したがってチャネル識別子11は、例えばマイクロ流体デバイス1の細胞チャネル20内に存在する細胞の写真を撮る、または映像を録画する顕微鏡または撮像装置を使用して、好ましくは目で見ることができる。これは、所与の細胞チャネル20内に存在する細胞をチャネル識別子11によって識別できることを意味する。
【0073】
第2に、マイクロ流体デバイスは、好ましくは参照チャネル21を備える(
図8および
図12参照)。例えば基板10内の全てのn番目の細胞チャネル20を、何らかの画定された整数値nに対する参照チャネル21で置換できる。別法として第1および/または最後の細胞チャネル20は、参照チャネル21の形態であってよい。さらなる変形は、基板10内の何らかの選択された細胞チャネルの位置(複数可)に1つまたは複数の参照チャネル21を有することである。
【0074】
参照チャネル21は、細胞が参照チャネル21の中に入り増殖するのを防止するように設計される。これは、非常に小さいので細胞が参照チャネル21に入ることができない、参照チャネル21の寸法を有することによって実現できる。別法として、チャネル制限は、参照チャネル21の端部に、またはその付近に存在してよい。このようなチャネル制限はしたがって、細胞が参照チャネル21に入ることを防止するが、依然として培養媒体およびあらゆる化学薬品、試薬または溶剤を参照チャネル21に入らせ、参照チャネル21を通って流れさせる。
【0075】
参照チャネル21を使用して、マイクロ流体デバイスおよびその中に存在する細胞を撮像する間になど、背景データ、制御データまたは参照データを獲得できる。例えば、特定の蛍光特性または吸収特性を有する化学薬品を細胞に加えて細胞の特定の特徴を決定または監視できる。このような場合、参照チャネル21から獲得された蛍光または吸収の記録を、異なる細胞チャネル20における蛍光または吸収を決定する際に背景参照または制御参照として使用できる。したがって参照チャネル21を、背景除去目的に使用できる。別の例は、位相差顕微鏡を使用して細胞を監視する場合であり、この場合は参照チャネルの特徴の位相差画像を使用して非細胞背景を説明できる。
【0076】
図8は、そのような参照チャネル21の一実施形態を示す。この実施形態では、基板10は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の2つの隣接した空間的に画定され分離された細胞チャネル20の間に実質的に平行に配置される、少なくとも1つの参照チャネル21を有する。少なくとも1つの参照チャネル21のそれぞれの第1の端部23は流れ入力チャネル30と流体連結し、かつ細胞がそれぞれの第1の端部23から少なくとも1つの参照チャネル21に入ることを防止するように配置される細胞ブロック27を備える。少なくとも1つの参照チャネル21のそれぞれの第2の端部25は、流れ出力チャネル50と流体連結する第2の端部44を有する、それぞれの第1の洗浄チャネル40の第1の端部42と流体連結する。
【0077】
この実施形態では、参照チャネル21は、延伸および寸法に関しては細胞チャネル20と実質的に同じだが、1つの大きな違いがある。参照チャネル21は、それらのそれぞれの第1の端部23に細胞ブロック27を備える。この細胞ブロック27は、チャネル制限、または参照チャネル21の残余部より小さい寸法を有するチャネル部の形態であってよい。チャネル制限またはより小さい寸法の部分は、そうでなければ細胞チャネル20に入ることができる細胞に対して、小さ過ぎるまたは狭過ぎるように選択される。それゆえこれらの細胞は第1の端部23から参照チャネル21に入ることができない。参照チャネル21の第2の端部25は、細胞チャネル20としてそれぞれの第1の洗浄チャネル40に連結される。これは、細胞が第1の洗浄チャネル40の選択された寸法または大きさに起因して、第2の端部25から参照チャネル21に入れないことを意味する。
【0078】
図12は、参照チャネル21の別の実施形態を示す。この実施形態では、基板10は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル20の2つの隣接した空間的に画定され分離された細胞チャネル20の間に実質的に平行に配置される、少なくとも1つの参照チャネル21を有する。少なくとも1つの参照チャネル21のそれぞれの第1の端部23は流れ入力チャネル30Aと流体連結し、かつ細胞がそれぞれの第1の端部23から少なくとも1つの参照チャネル21に入ることを防止するように配置されるチャネル制限29を備える。少なくとも1つの参照チャネル21のそれぞれの第2の端部25は流れ出力チャネル50Aと流体連結し、かつ細胞がそれぞれの第2の端部25から少なくとも1つの参照チャネル21に入ることを防止するように配置されるチャネル制限29を備える。
【0079】
この実施形態では、各参照チャネル21はしたがって、参照チャネル21の各端部23、25の一方に、またはその付近に2つのチャネル制限29を備える。参照チャネル21の残余部の寸法はしたがって、細胞チャネル20の寸法と実質的に同じであってよい。
【0080】
上に説明された実施形態では、参照チャネル21は、2つの隣接した細胞チャネル20の間に配置されるように説明されている。他の実施形態では、参照チャネル21は、それがその2つの長手方向側部の一方に沿った細胞チャネル20を欠くように、細胞チャネル20の1組の2Aのいずれかの端部に存在してもよい。また互いに隣接して配置される2つの参照チャネル21を有することも可能である。
【0081】
しかし、例えば基板10内の全てのn番目のチャネル位置に参照チャネル21を有することによって、細胞チャネルの組2Aにわたって一様に分配された参照チャネル21を有することが概して好ましい。
【0082】
図13は、実施形態のマイクロ流体デバイスを鋳造するために使用できる鋳型のSEM画像である。図は、チャネル番号としてチャネル識別子を示し、参照チャネルおよび細胞チャネルと対応する第1の洗浄チャネルとの間の界面を画定するために使用されるチャネル制限を示す。
【0083】
図14は、時間内に2つの異なる点で撮られた、実施形態によるマイクロ流体デバイス中で増殖する大腸菌細胞の位相差画像を示す。第1の洗浄チャネルと細胞チャネルとの間の界面でのチャネル制限の形態でなどの、より小さい寸法の第1の洗浄チャネルは、大腸菌細胞が図の左へと増殖する、すなわち第1の洗浄チャネルに入るのを有効に防止する。図の底部のチャネルは、空の参照チャネルである。参照チャネルの両端部における二重制限は、いかなる大腸菌細胞も参照チャネルに入るのを防止する。チャネル識別子は位相差画像で見ることができ、それによって個々の細胞チャネルおよびその中で増殖する大腸菌細胞を識別できる。
【0084】
マイクロ流体デバイスの基板は、プラスチック材料など、任意の透明材料で作成されてよく、その中に細胞チャネル、第1の洗浄チャネル、第1の流体ポート、第2の流体ポート、流れ入力チャネル、流れ出力チャネル、および第3の流体ポートを構成する構造を画定できる。適切な材料の非限定例には、ZEON Chemicals L.P.により市販される環状オレフィン重合体(COP)であるZEONEX(登録商標)およびZEONOR(登録商標)、ならびにTopas Advanced Polymersにより市販される環状オレフィン共重合体(COC)であるTOPAS(登録商標)が含まれる。これらの材料は、透過および背景蛍光の観点から優れた光学特徴を有する。またこれらの材料は、加熱されると良好な流れ特徴も有し、したがってマイクロ流体デバイスの基板の形成を可能にする小さい構造を複製できる。
【0085】
基板に適切な材料の他の例には、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ(p−フェニレンスルファイド)(PPS)が含まれる。
【0086】
図2および
図4に示されるカバー板は、様々な材料で製造されてもよく、好ましくは撮像できるように透明である。非限定例にはガラスおよびプラスチック材料が含まれる。
【0087】
作動時に、マイクロ流体デバイスは、流体マニホールドに好ましくは連結されてマイクロ流体デバイスおよび流体マニホールドを備える培養システムを形成する。流体マニホールドは、少なくとも1つのコンピュータで制御されるポンプを使用して、培養媒体およびあらゆる試薬、化学薬品または溶剤を細胞チャネルに分配するように構成される。流体マニホールドは、コンピュータで制御され予めプログラミングされたポンプを使用して、培養媒体の交換、試薬、化学薬品または溶剤の分配ができるように好ましくは構成される。特定の実施形態では、試薬、化学薬品または溶剤および細胞培養媒体を、実験の間中異なる温度で維持できる。
【0088】
図16は、一実施形態によるマイクロ流体デバイスにロードする方法を示す流れ図である。方法は、ステップS1において細胞および培養媒体をマイクロ流体デバイスの第1の流体ポートおよび第2の流体ポートの一方に入力して細胞および培養媒体をマイクロ流体デバイスの流れ入力チャネルを通って複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルの中に流すことができるようにすることを含む。複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれの第1の端部は、第1の流体ポートに流体連結する第1の端部および第2の流体ポートに流体連結する第2の端部を有する、流れ入力チャネルと流体連結する。次のステップS2は、第1の流体ポートおよび第2の流体ポートの他方を通って過剰な細胞を出力することを含み、ステップS3は、第1の流体ポートおよび第2の流体ポートの他方を通り、流れ出力チャネルと流体連結する第3のポートを通って培養媒体を出力することを含む。複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれの第2の端部は、流れ出力チャネルと流体連結する第2の端部を有する、それぞれの第1の洗浄チャネルの第1の端部と流体連結する。第1の洗浄チャネルは、小さ過ぎて細胞を収容できない寸法を有する。
【0089】
ステップS2およびステップS3は、入力細胞および培養媒体がマイクロ流体デバイスおよびその様々なチャネルに入るのと同時に概して行われる。
【0090】
実施形態のマイクロ流体デバイスは、様々な適用に使用できる。このような適用の一例は、抗生物質感受性試験(AST)(antibiotic susceptibility testing)である。例えば、
図10に示されるマイクロ流体デバイス1をこの目的に使用できる。このような場合、試料株を、例えば過剰な細胞および培養媒体のための出力ポートとして第1の流体ポート31A’、31B’、31C’を使用する共通の第2の流体ポート33A、および培養媒体のため、また細胞を細胞チャネルの中に吸引するための出力ポートとして共通の第3の流体ポート51からロードできる。一例では、ロード中に培養媒体は共通の第2の流体ポート33Cから共通の第2の流体ポート33Bに流されて共通の第2の流体ポート33Cが汚染するのを防止する。細胞をロードした後、培養媒体は、出力ポートとして第1の流体ポート31A’、31B’、31C’および共通の第3の流体ポート51を使用して、共通の第2の流体ポート33Cから好ましくは流れる。この段階で細胞チャネル内の細胞の増殖を、異なる細胞チャネル内の細胞を撮像しながら、0分〜数日の間中監視できる。AST試験は、異なる抗生物質を、または同じ抗生物質を異なる濃度で細胞チャネルの異なる組の2A、2B、2Cの中に、入力ポートとして第1の流体ポート31A、31B、31Cを使用する一方で、出力ポートとして共通の第2の流体ポート33A、33B、33Cおよび共通の第3の流体ポート51を使用して流すことによって開始する。感受性は、異なる細胞チャネル内の抗生物質への表現型応答によって監視される。例えば、自動画像分析ルーチンを使用して位相差における長さ延伸を監視するだけで、平均増殖率および増殖率の細胞間の分布を決定できる。これらの測定は、数分以内に分単位の表現型変化を決定できるように、多くの細胞チャネル内の細胞にわたる平均を求めることができる。また表現型変化は、DNAの圧縮または膜構造もしくは完全性の変化などの、形態における変化であってもよい。いくつかの表現型変化は、蛍光チャネル内で観察できる4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)およびSYTOX(登録商標)蛍光染色などの検査薬の追加によって最もよく観察できる。
【0091】
表現型ASTの後にin situで遺伝子型決定をする試験を実施できる。この試験では、重要な遺伝子、DNA配列またはRNA種の有無または量を、例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)(fluorescence in situ hybridization)、例えばループ介在等温増幅(LAMP)(loop mediated isothermal amplification)を使用するin situ配列増幅もしくは等温増幅、または1つもしくは複数の特定の錠型プローブのハイブリダイゼーションおよびライゲーションに続くローリングサークル増幅(RCA)(rolling circle amplification)によって決定する。
【0092】
図15は、AST試験中にマイクロ流体デバイスを撮った位相差画像であり、ここではクロラムフェニコール感受性(最小抑制濃度(MIC)≒4μg/ml)およびクロラムフェニコール耐性(MIC>12μg/ml)の大腸菌株が、
図10に対応するマイクロ流体デバイス内の異なる細胞チャネルでロードされた。細胞をロードした後、両方の株を6μg/mlのクロラムフェニコールに曝した。15分後に撮られた画像は、クロラムフェニコール感受性株がクロラムフェニコール耐性株よりはるかに増殖が少ないことを明確に示している。
【0093】
図17は、3つの異なる大腸菌株がエリスロマイシンに120μg/mlで0分曝された際の平均増殖率を示し、ここでこの3つの株は
図10に対応するマイクロ流体デバイス1内の細胞チャネル20のそれぞれの組2A、2B、2Cにロードされる。「x」で示される耐性株は256μg/mlのMICを有するのに対して、円形および菱形で示される非耐性株は約12μg/mlのMICを有する。図は、耐性株が20分未満で感受性株から区別できることを明確に示す。
【0094】
図18は、
図1に対応するマイクロ流体デバイス1内の細胞チャネル20のそれぞれの組2A、2B、2Cにロードされたシプロフロキサシン(DA20859 Eco gyrA1−S83L gyrA2−D87N parC−S80I MIC約30μg/ml)に耐性である大腸菌株に対する、位相差の低速度画像によって決定された際の、平均増殖率応答を示す。大腸菌株を(1)「x」で記された薬品なし、(2)菱形で記されたエリスロマイシン120μg/ml、または(3)円形で記されたシプロフロキサシン10μg/mlに曝した。時点0分は処理の開始に対応する。株が影響を受ける薬品(エリスロマイシン)での処理に対応する曲線を、処理しない曲線から10分未満で区別できる。株が影響を受ける薬品での処理に対応する曲線を、株が耐性のある薬品(シプロフロキサシン)に対応する曲線から15分未満で区別できる。
【0095】
したがって一実施形態は、抗生物質感受性試験のための方法に関する。方法は、細菌細胞を、実施形態によるマイクロ流体デバイスの複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内にロードすることを含む。また方法は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルの異なる空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細菌細胞を、異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質に曝すことも含む。方法は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細菌細胞のそれぞれの表現型特徴に基づいて、細菌細胞の抗生物質感受性を決定することをさらに含む。
【0096】
したがってそれぞれの表現型特徴は、細菌細胞に対して監視され決定され、この場合この表現型特徴は細菌細胞の抗生物質感受性を表す。好ましい実施形態では、表現型特徴は、好ましくは複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細菌細胞のそれぞれの増殖率、それぞれの核様体圧縮度、それぞれの代謝活性度およびそれぞれの膜統合度の少なくとも1つである。
【0097】
実施形態のマイクロ流体デバイスは、細菌細胞、古細菌細胞、たとえば酵母細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞などの真核細胞を含むがこれに限定されない、様々な型の細胞を培養し監視するために使用できる。
【0098】
実施形態のマイクロ流体デバイスは、細胞株ライブラリなどの細胞を特徴づけるために使用できる。特徴づけは、細胞株の少なくとも1つの表現型特徴を決定する形態、および/または細胞株の遺伝物質をin situで遺伝子型決定する形態であってよい。細胞株のライブラリの表現型特徴決定およびin situ遺伝子型決定の一例は、同時係属の国際特許出願第PCT/SE2015/050227号に開示されている。特に、マイクロ流体デバイスは、監視された表現型特徴およびin situで決定された遺伝子型を高度に並行な方法で次いで連結させる。これは、監視された表現型特徴を細胞株の異なる遺伝子型に連結するために、異なる遺伝子型をもつ細胞株の膨大なライブラリをマイクロ流体デバイス内で並行して処理できることを意味する。
【0099】
細胞株のライブラリは、遺伝子工学内の様々な技法に従って獲得できる。例えば、多重自動ゲノム工学(MAGE)(Multiplex Automated Genomic Engineering)を使用して、1日当たり数百万の異なる突然変異ゲノムを生成できる(Wangら、Nature、2009年、460、894〜898ページ)。細胞のライブラリを生成するために使用できる他の技法には、クラスター化し規則的にスペーサーが挿入される短いパリンドロームリピート(CRISPR)(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)関連タンパク質9(Cas9)(Wangら、Sciencee、2014年、343、80〜84ページ、Koike−Yusaら、Nature Biotechnology、2014年、32、309〜312ページ、Zhouら、Nature、2014年、509、487〜491ページ)または大規模なRNA干渉(Bernsら、Nature、2004年、428、431〜437ページ)が含まれる。
【0100】
次いでマイクロ流体デバイスは、ライブラリ内の各細胞株の細胞を他の細胞株または他の遺伝子型の細胞から分離して保持し培養できる。それゆえ各細胞株は、その中で細胞が増殖し研究され得るマイクロ流体デバイス内に、それぞれが空間的に画定され分離された細胞チャネルを有する。
【0101】
マイクロ流体デバイス内の空間的に画定され分離された細胞チャネルで培養された細胞は、物理的および/または化学的刺激もしくは溶剤への細胞の応答を監視するために、様々な物理的および/または化学的刺激もしくは溶剤に洗い流されることなく好ましくは曝され得る。例えば、栄養物、薬品、抗生物質、遺伝子発現誘導因子または抑制体などの様々な化学検査薬を培養媒体に加え、それによって細胞を接触させることができる。様々な検査薬への異なる細胞株の細胞の応答の観点から、細胞株の表現型特徴を、例えば顕微鏡を使用して、次いで決定できる。それに応じて、温度、pH、圧力、流れ、気体、露光度または細胞が曝される機械的応力を変化させることができ、そのような変化する物理的条件に対する異なる細胞株の細胞の応答を、例えば顕微鏡を使用して決定できる。
【0102】
細胞株は、それらの遺伝物質の少なくとも一部に異なる可変領域を有することによって表されるように、異なる遺伝子型を有する。可変領域は、細胞株のゲノム中に通常存在する。別法として可変領域は、プラスミドまたはベクトルなどの可動遺伝因子中に存在し、それゆえ必ずしも細胞のゲノム中に安定して組み込まれる必要はない。以下で、ゲノム中に存在する可変領域に関して実施形態を主に論じる。しかし本明細書に記載された可変領域およびさらなるDNA因子が代わりに細胞株のプラスミドまたは他の可動遺伝因子中に存在する、代替実施形態も可能である。可変領域またはその一部はまた、トランスポゾン、ウイルスまたはファージなどの不安定な遺伝因子中に存在する可能性もある。このようなコード化は、例えば細胞を固定する前にdsDNAゲノムから可変領域の一部を特異的に削除または環状化することにより、in situでの配列決定のために細胞を固定する前に可変配列を増幅する観点から、時として有利である。
【0103】
また一実施形態では、方法は、マイクロ流体デバイス内で空間的に画定され分離された細胞チャネルで細胞株の細胞をランダムに播種することを含む。細胞をランダムに播種することは、各細胞チャネルが同じ遺伝子型の細胞、すなわち同じ細胞株の細胞のみを備えるように好ましくは実行される。
【0104】
この実施形態の利点は、細胞の遺伝的同一性、すなわち遺伝子型が、マイクロ流体デバイス内に細胞を播種する前に決定され既知である必要がないことである。したがって、各細胞株の遺伝的同一性を知る必要があり方法全体を通して各遺伝子型の位置を継続的に監視するという観点から、播種する前に仕分けされた細胞ライブラリ内に細胞を保持する必要はない。これは、本実施形態が際立って対照的に、遺伝子型のいかなる認識もなしに表現型の特徴を並行してまず分析し、次いで遺伝子型を決定し、それらを表現型の特徴に連結させることを意味する。
【0105】
ライブラリ内の各細胞株に対して決定される表現型特徴は、好ましくはライブラリ内の各遺伝子型に対応する表現型特徴である。したがってライブラリ内の細胞は、異なる遺伝子型、すなわち細胞株毎にそれぞれの遺伝子型を有する細胞である。遺伝子型における違いは、細胞が各々の遺伝子型に対応する異なる表現型特徴を有することを示唆する。
【0106】
一実施形態では、細胞の表現型特徴は顕微鏡を使用して決定される。表現型を監視し決定するための顕微鏡は、従来技術に比べていくつかの利点を有する。例えば蛍光顕微鏡は、多くの世代にわたる細胞系列の広範なタイムラプス、単一分子検出感受性、および何らかの増殖条件の変更に対する経時的な応答を監視することが可能である。
【0107】
顕微鏡を使用する実施形態により監視し決定できる表現型特徴の非限定だが具体的な例には、細胞形態、リボ核酸(RNA)もしくはタンパク質などの様々な分子の空間的および/または時間的発現パターン、特定の代謝物のレベル、例えば異なる物理的もしくは化学的刺激もしくは溶剤の追加に応答する寿命または増殖率の変化、遺伝子発現レベルにおける細胞間の変動、胚発生、レポータータンパク質の輝度またはRNAアプタマーなどが含まれる。
【0108】
したがって細胞株の表現型特徴づけは、必要であれば長時間にわたって顕微鏡下で並行して実行できる。表現型特徴づけは、ライブラリ内の様々な細胞株の遺伝子型を知ることなくさらに実行できる。極めて対照的に、表現型特徴づけは、マイクロ流体デバイス内の各空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれの表現型特徴を代わりに決定する。例えば細胞株に対して決定される関連表現型特徴は、検査薬の添加後に、可変遺伝子調節領域またはコード配列を備える蛍光レポータータンパク質に対する標的遺伝子の遺伝子発現であると仮定する。このような場合、顕微鏡を使用してマイクロ流体デバイスを通して画像を撮ることができ、そこでそれぞれの遺伝子発現レベルを視覚的に決定できる。個々の遺伝子発現レベルを次いで定量化してマイクロ流体デバイス内の各細胞チャネルに対するそれぞれの値を得ることができる。したがって表現型特徴づけの決定の出力は、マイクロ流体デバイス内の各細胞チャネルに対する1つまたは複数のそれぞれの値のリストまたはマトリックスであり得る。各細胞チャネルが本明細書で先に説明したようにそれぞれのチャネル識別子に割り当てられる場合は、細胞チャネル内の細胞に対して測定された表現型特徴をその細胞チャネルに割り当てられたチャネル識別子と次に関連付けることができる。
【0109】
一実施形態では、表現型特徴を決定することは、顕微鏡を使用してマイクロ流体デバイス内の細胞を培養中に各細胞株の表現型特徴を決定することを含む。実施形態で使用できる顕微鏡検査技法の例には、例えば明視野顕微鏡法、位相差顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、光シート顕微鏡法、またはあらゆる型の超解像度撮像技術、例えば誘導放出抑制(STED)(stimulated emission depletion)顕微鏡法、光活性化局在性顕微鏡法(PALM)(photo−activated localization microscopy)、走査型近接場光顕微鏡法(NSOM)(near−field scanning optical microscopy)、4Pi顕微鏡法、構造化照明顕微鏡法(SIM)(structured illumination microscopy)、基底状態抑制(GSD)(ground state depletion)顕微鏡法、スペクトル精密距離顕微鏡法(SPDM)(spectral precision distance microscopy)、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)(stochastic optical reconstruction microscopy)などが含まれる。さらに、細胞間単一分子追跡法(SPT)(Intracellular Single Particle Tracking)または蛍光相互作用分光法(FCS)(Fluorescence Correlation Spectroscopy)も使用できる。顕微鏡分析は、固定の時間位置で、またはタイムラプス撮像を使用して行うことができる。
【0110】
原子間力顕微鏡を使用する機械的特性の測定、指示染料または微小電極を使用する膜電位の測定、撮像質量分析法または特定のバイオセンサーアレイを使用する小分子分泌の測定などの、表現型の他の測定も可能である。培養デバイスに直接連結される近接場光アレイ検出器も可能である。
【0111】
一旦細胞株の表現型特徴が決定されると、細胞はマイクロ流体デバイス内の細胞チャネル内に好ましくは定着される。細胞定着は、当技術分野に周知の技法に従って実行できる。例えば、ホルムアルデヒド、メタノール、またはエタノールを細胞定着に使用できる。非限定的例では、細胞は4%のホルムアルデヒドで約15分間、または3%(w/v)のパラホルムアルデヒドでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて約30分間定着される。
【0112】
一実施形態では、定着された細胞はin situで遺伝子型決定する前に透過処理される。細胞透過化のために従来利用される様々な手順を、実施形態に従って使用できる。例えばTriton(トリトン)X−100(0.25%のTritonX−100など)または非イオン界面活性剤などの別の活性剤を使用できる。別法としてエタノール、例えば70%のエタノールを細胞透過化に使用できる。さらなる例には塩酸、例えば0.1Mの塩酸が含まれ、細菌細胞壁を分解するためにペプシン、例えば0.01%のペプシンなどのプロテアーゼまたはリゾチームと任意に組み合わせられる。
【0113】
in situ遺伝子型決定は、マイクロ流体デバイス内の細胞チャネルにおける各細胞株の可変領域の少なくとも一部をin situ遺伝子型決定することを含む。それゆえ必ずしも各細胞株の可変領域全体をin situ遺伝子型決定する必要はない。それゆえ本明細書に使用される場合、in situ配列決定は、可変領域の少なくとも一部または実際に可変領域全体をin situで配列決定することを含む。in situ配列決定は、異なる細胞株間の可変領域内のあらゆるヌクレオチドの差異を示す情報を好ましくは出力し、この場合これらのヌクレオチドの差異は異なる表現型をもたらす。
【0114】
一実施形態では、in situ遺伝子型決定は、例えばScience、2014年、343(6177)、1360〜1363ページに説明されているように、蛍光in situ配列決定(FISSEQ)(fluorescent in situ sequencing)技法に基づく。つまり、FISSEQにおいて細胞内のcDNAの単位複製配列が、逆転写酵素および逆転写(RT)(reverse transcription)中のアミノアリルデオキシウリジン5’−三リン酸塩(dUTP)の組み込みを使用して定着された細胞内に生成される。cDNAは、4nmのスペーサーを有するアミン反応性リンカーであるBS(PEG)9を使用して再定着される。cDNAの断片が次いで環状化された後、ローリングサークル増幅(RCA)(rolling circle amplification)が行われる。BA(PEG)9を次いで使用して、アミノアリルdUTPを含有するRCA単位複製配列を架橋する。ライゲーションによるSOLiDシークエンシングを次いで使用してRCA単位複製配列内の関連配列を配列決定して、可変領域のヌクレオチド配列を得ることができる。
【0115】
一実施形態では、可変領域をin situで遺伝子型決定することは、マイクロ流体デバイス内の細胞チャネル内の可変領域または少なくともその一部のライゲーションによってin situ配列決定することを好ましくは含む。ライゲーションによって配列決定することは、塩基対ミスマッチに対するデオキシリボ核酸(DNA)リガーゼの感受性に依存する。概して、配列決定される可変領域は好ましくは、アンカープライマー結合配列として機能する公知の配列が少なくとも1つの端部上に隣接する、一本鎖DNA配列の形態である。公知の配列に相補的であるアンカープライマーは、公知の配列に結合される。
【0116】
通常8〜9塩基長のプローブオリゴヌクレチドの混合プールが次いで、配列決定される位置に従って、取り入れられ、通常蛍光染料で標識される。これらの標識されたオリゴヌクレチドはアンカープライマーに隣接した可変領域にハイブリダイズし、DNAリガーゼは、そのヌクレオチド配列が未知の可変領域に一致する場合、オリゴヌクレチドをアンカープライマーに優先的に接合する。分子によって生成された蛍光に基づいて、可変領域のこの位置における塩基の識別を推測できる。
【0117】
オリゴヌクレチドプローブはまた切断可能な連鎖で構成されてもよく、標識を識別後にこれを切断できる。これは標識を取り除き、かつライゲーションされたプローブの端部上に5’−リン酸を再生し、それによってライゲーションの新しいラウンドが可能になる。ライゲーションおよび切断のこの循環を数回繰り返してより長い配列を読むことができる。この技法は可変領域ですべての第Q塩基を配列決定し、この場合Qは切断後に残されるプローブの長さである。可変領域内の抜かされた位置を配列決定するために、アンカープライマーおよびライゲーションされたオリゴヌクレチドは可変領域を取り去られてもよく、ライゲーションによる配列決定の別のラウンドが、1塩基以上短いアンカープライマーで開始される。
【0118】
別の技法は、標識がプローブ内の異なる位置に対応する単一ライゲーションのラウンドを繰り返すことであり、続いてアンカープライマーおよびライゲーションされたプローブを取り去る。
【0119】
ライゲーションによる配列決定は、標識によってブロックされるオリゴヌクレチドプローブの端部に依存して、いずれかの方向(5’−3’または3’−5’)に進み得る。
【0120】
一実施形態では、配列決定される配列は好ましくは、可変領域から獲得したRNA転写物の逆転写によって獲得されるcDNA配列である。この実施形態では、可変領域は、アンカープライマーが結合する少なくとも1つの公知の配列が隣接する。
【0121】
ライゲーションによる配列決定は、マイクロ流体デバイス内の細胞チャネル中の可変領域または少なくともその一部のライゲーションによりin situで配列決定を実現するために、定着された細胞上で実行できる。例えばScience 2014年、343、1360〜1363ページ、およびNature Methods2013年、10、857〜860ページを参照されたい。これらの教示はライゲーションによるin situで配列決定を実行することに関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
つまり一変形では、可変領域またはバーコードから獲得したRNAは、逆転写によりcDNAに複製され、続いてRNaseを使用してmRNA鎖を分解する。第1の実施形態では、鋳型プローブは、ライゲーションによる配列決定のために標的にされる塩基上でプローブ端部の間に空隙を有してcDNAに結合する。この空隙はDNA重合およびDNAライゲーションによって充填されて、DNA環を生み出す。第2の実施形態では、cDNA環化はssDNAライゲーションのみによって実行される。第3の実施形態では、可変配列の少なくとも一部および隣接するDNAを含むdsDNAは、例えば制限酵素またはトランスポーゼースにより周辺DNAから切除される。次いで切除されたdsDNAはエンドヌクレアーゼによりssDNAへと消化されて、自己ハイブリダイズおよびライゲーションして環状DNAを形成し得る。
【0123】
一変形では、配列決定される可変領域は、染色体要素または可動遺伝因子のいずれかのdsDNAから直接増幅される。この場合dsDNAは可変領域に近接した制限酵素で切断され、dsDNAはエクソヌクレアーゼにより一本鎖にされる。このssDNAを、cDNAに対し通常働くが、RNAを発現する必要がない方法によって増幅できる。この方法は、可変領域付近のDNA領域を設計するための制限を緩和する。例えば、可変領域をギャップフィル鋳型反応によって充填できる。
【0124】
ギャップフィルの代替として、比較的長い可変領域(10〜25bp)を使用し、ssDNAオリゴヌクレチドの組を可変領域にハイブリダイズすることができる。オリゴヌクレチドの結合エネルギーは、特定のオリゴヌクレチドのみが選択されたハイブリダイゼーションおよびライゲーション温度で結合するように選択される。例えばライブラリが、4
15〜10
9の変異物が可能であるはずである、15pbの可変領域でコードされる4000の変異物を含む場合、クロスハイブリダイズするプローブがないように4000の変異を採取できる。オリゴヌクレオチドおよび鋳型プローブのハイブリダイゼーション後に、プローブは増幅できる環へとライゲーションされる。
【0125】
いずれの場合も、形成されたDNA環は、ライゲーションにより配列決定に供されるローリングサークル産物(RCP)(rolling circle product)を生成する、ターゲット−プライムドローリングサークル増幅(RCA)(target−primed rolling circle amplification)によって増幅される。アンカープライマーが標的配列の隣にハイブリダイズされた後、オリゴヌクレオチドプローブをライゲーションする。一実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、8個のランダム位置(N)および1個の固定位置(A、C、G、またはT)を備える、9マーの4個のライブラリからなる。各ライブラリは4つの蛍光染料の1つで標識される。固定位置で最もよく一致するオリゴヌクレオチドプローブが、その蛍光標識とともにライゲーションによって組み込まれる。試料は撮像され、各RCPは一致した塩基に対応する色を表示する。オリゴヌクレオチドプローブが洗い流された後、隣接した塩基に対してオリゴヌクレオチドプローブを増幅する。所望の数の塩基が読み取られるまで、ライゲーション、洗浄、撮像、および除去のステップが反復される。
【0126】
別の実施形態では、in situ遺伝子型決定は、マイクロ流体デバイス内の細胞チャネルにおける可変領域またはその少なくとも一部の合成によりin situ配列決定することを含む。
【0127】
例えば、さらなる重合をブロックする停止剤を含有する、4つの型の改変dNTPが加えられる。停止剤はまた、カメラによって検出できる蛍光標識も含有する。組み込まれていないヌクレオチドは洗い流され、蛍光的に標識されたヌクレオチドの画像が撮られる。停止剤とともに蛍光標識がDNAから化学的に除去され、配列決定の次の循環が可能になる。
【0128】
in situ遺伝子型決定の結果は、好ましくは各細胞株に対する可変領域または少なくともその一部のヌクレオチド配列である。各ヌクレオチド配列は、マイクロ流体デバイス内のそれぞれの細胞チャネルに、例えばチャネル識別子を使用することによってさらに連結される。これは、遺伝子型決定が、ライゲーションまたは合成によるin situ配列決定などの、in situ遺伝子型決定として実行されるので可能である。in situはここでは、遺伝子型決定が、その場でまたは適所で、すなわちマイクロ流体デバイス内の細胞チャネルにおいて実行されることを示唆する。
【0129】
先に説明された表現型決定の出力は、チャネル識別子によって識別された各細胞チャネルに対して決定された表現型特徴(複数可)を一覧にしたリストまたはマトリックスの形態でなどの、マイクロ流体デバイス内の各細胞チャネルに対するそれぞれの決定された表現型特徴であった。in situ遺伝子型決定の出力は、マイクロ流体デバイス内の各細胞チャネルにおいて可変領域に対して決定されるヌクレオチド配列である。この出力はまた、チャネル識別子によって識別された各細胞チャネルに対して決定されたヌクレオチド配列を一覧にしたリストまたはマトリックスの形態であってもよい。
【0130】
各々の表現型特徴を次いで、マイクロ流体デバイス内の細胞チャネルに基づいて各々の遺伝子型と連結または関連付けることができる。例えば、細胞チャネル番号Pにおける細胞株の細胞に対して決定された表現型特徴は、この細胞株の細胞の遺伝子型の結果であり、この遺伝子型は、細胞チャネル番号Pに対して決定されたヌクレオチド配列から獲得される。それゆえ表現型と遺伝子型の連結は、単にマイクロ流体デバイス内の各細胞チャネルに対して決定された表現型特徴と遺伝子型を一致させることによって実現できる。
【0131】
上に説明された適用では、実施形態のマイクロ流体デバイスは、細胞株ライブラリの組み合わされた表現型およびin situ遺伝子型の決定のために使用される。マイクロ流体デバイスは、別法として単に表現型決定または単にin situ遺伝子型の決定のために使用されてもよい。それゆえ、マイクロ流体デバイスにロードされた細胞の表現型およびin situ遺伝子型の決定の両方を実行する必要はない。
【0132】
実施形態の一態様はしたがって、細胞をin situで遺伝子型決定するための方法に関する。方法は、実施形態によるマイクロ流体デバイスの複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルに細胞をロードすることを含む。方法はまた、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネルに細胞を定着させることも含む。方法は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細胞をin situで遺伝子型決定することをさらに含む。
【0133】
実施形態の別の態様は、細胞の表現型の特徴づけのための方法に関する。方法は、実施形態によるマイクロ流体デバイスの複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内に細胞をロードすることを含む。方法はまた、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内で細胞を増殖または培養することも含む。方法は、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細胞の表現型特徴をリアルタイムで監視することをさらに含む。
【0134】
実施形態のさらなる態様は、細胞株の遺伝物質の少なくとも一部に異なる可変領域を有する、複数の細胞株のライブラリを特徴づける方法に関する。方法は、実施形態によるマイクロ流体デバイスの複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内にライブラリの細胞株の細胞をロードすることを含む。方法はまた、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細胞株の細胞を増殖または培養することも含む。方法は、マイクロ流体デバイス内の各細胞株の表現型特徴を、複数の空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細胞株の細胞のそれぞれの表現型特徴を好ましくはリアルタイムで監視することによって決定することをさらに含む。加えて方法は、マイクロ流体デバイス内に空間的に画定され分離された細胞チャネル内の細胞株の細胞を定着させることを含む。方法は、マイクロ流体デバイス内に空間的に画定され分離された細胞チャネル内の各細胞株の可変領域をin situで遺伝子型決定することをさらに含む。最後に方法は、マイクロ流体デバイス内に空間的に画定され分離された細胞チャネルに基づいて、好ましくはマイクロ流体デバイスの基板内に空間的に画定され分離された細胞チャネルのそれぞれのチャネル識別子またはそれぞれの位置に基づいて、各々の表現型特徴を各々の遺伝子型に連結させることを含む。
【0135】
上に説明された実施形態は、本発明のいくつかの説明用例として理解されるべきである。様々な修正、組合せ、および変更が本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態になされてもよいことが当業者には理解されよう。特に異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な他の構成内で組み合わされることが可能である。しかし本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。