【解決手段】生体刺激用の磁場発生装置1は、永久磁石2と、永久磁石2から発生する磁束の経路である磁路の少なくとも一部を形成し、磁性材料で構成された対向する一対のアーム3と、磁路を形成する一部位を他の部位から相対的に周期的に移動させ、又は磁路を遮断する遮断部を周期的に移動させて、磁路の導通と遮断とを切り替える駆動部(モーター4)と、を備える。一対のアーム3の先端部の間に発生する交番磁界により、生体に刺激を付与する。
前記複数の永久磁石及び前記複数の磁性体は、前記駆動部によって回転する前記第1保持部材又は前記第2保持部材の任意のいずれの状態においても、前記複数の永久磁石のそれぞれの中心と前記複数の磁性体又は前記一対のアームのそれぞれの中心とが同時に重ならない位置にあり、
前記駆動部による前記第1保持部材又は前記第2保持部材の回転方向において、前記複数の永久磁石のうち少なくとも一の永久磁石に対して最も近くにある前記磁性体又は前記一対のアームが、前記一の永久磁石に対して回転元側に位置するときに、他の一の永久磁石の最も近くにある前記磁性体又は前記一対のアームは、前記他の一の永久磁石に対して回転先側に位置する請求項3に記載の生体刺激用磁場発生装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明に係る製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0010】
<<概要>>
まず、本実施形態に係る磁場発生装置(生体刺激用磁場発生装置)1の概要について、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁場発生装置1の上側斜視図、
図2は、アーム3のエアギャップから磁界MFが生じている状態を説明する説明図である。
【0011】
磁場発生装置1(生体刺激用磁場発生装置)は、永久磁石2(2a、2b)と、永久磁石2から発生する磁束の経路である磁路の少なくとも一部を形成し、磁性材料で構成された対向する一対のアーム3と、磁路を形成する一部位(永久磁石2)を他の部位(アーム3)から相対的に周期的に移動させ、又は磁路を遮断する遮断部を周期的に移動させて、磁路の導通と遮断とを切り替える駆動部(モーター4)と、を備える。一対のアーム3の先端部の間に発生する交番磁界MFにより、生体に刺激を付与することを特徴とする。
【0012】
本実施形態に係る「遮断部」は、アーム3の基端部3aに対向する磁石保持板5の部位のうち、永久磁石2が設けられていない部位である。つまり、本実施形態において、モーター4は、回転軸4aに固定された磁石保持板5を回転させることにより、磁路を形成する永久磁石2と、磁路を遮断する遮断部とを同時に移動させている。
本発明はこのような構成に限定されず、永久磁石2のみを移動させたり、アルミニウム等の透磁率の低い部材を遮断部として、遮断部のみを移動させたりして、磁路を形成、消滅させて交番磁界MFを形成するようにしてもよい。
また、以下の実施形態においては、一対のアーム3の「エアギャップ」において交番磁界MFを生じさせるものとして説明するが、エアギャップに限定されない。例えば、樹脂材等の透磁率の低い部材が一対のアーム3の間に設けられていることによって、アーム3の外部に交番磁界MFを生じさせるものであってもよい。
【0013】
上記のように、不図示のコイルを用いる交番電流ではなく、永久磁石2と磁性材料で構成されたアーム3による交番磁界MFにより生体を刺激できることで、コイルのジュール熱の発熱が生じることなく、安定して動作させることができる。
なお、「駆動部」としては、モーター4の他、手動によって永久磁石2を移動させる方向に駆動力を生じさせるものを含む。
また、詳細については後述するが、「移動」は、本実施形態に係る回転の他に、直線的又は曲線的等の往復動を含む概念である。
【0014】
<<第1実施形態>>
<構成>
本実施形態に係る磁場発生装置(生体刺激用磁場発生装置)1の構成について
図1及び
図2を主に参照して説明する。
磁場発生装置1は、交番磁界を形成する磁場形成部M1を備える。磁場形成部M1は、2個の永久磁石2と、永久磁石2に対向する位置に設けられた一対のアーム3と、2個の永久磁石2を保持する磁石保持板5と、磁石保持板5を回転駆動するモーター4と、から構成されている。
【0015】
本実施形態に係る永久磁石2は、ネオジム磁石で構成されており、0.01T〜3T程度の磁束密度を有し、1辺が約6mmの正方形の面を有して約10mmの長さを有する。
一対のアーム3は、永久磁石2との組み合わせによって磁路を形成する部材であり、磁場発生装置1に設けられた不図示の固定部材に固定されており、基端部3aが永久磁石2に対向可能な位置、換言すると回転軸4aからの距離が等しい位置に配設されている。
一対のアーム3の先端部3bは、先端に向かうに連れて互いに近接するように傾斜しながらも、エアギャップを形成するように離間しており、永久磁石2が基端部3aに対向する位置にあるときに、先端部3b間に磁界MFが形成されるように構成されている。
磁石保持板5は、永久磁石2のS極を厚さ方向の一方側、N極を厚さ方向の他方側に露出させて永久磁石2を保持している。
モーター4は、磁石保持板5における2個の永久磁石2の間の中間部分に固定された回転軸4aを有する。回転軸4aは、磁性体保持板7に形成された挿通孔7aを挿通して、磁石保持板5に固定されている。
【0016】
<動作>
上記構成に係る磁場発生装置1は、モーター4が磁石保持板5を回転駆動することにより、永久磁石2がアーム3の基端部3aに対向する位置にあるときに、永久磁石2から生じる磁束がアーム3を流れて、アーム3の先端部3b間に磁界MFが生じることになる。
そして、永久磁石2がアーム3の基端部3aから離間すると、アーム3を流れていた磁束が消滅する。磁石保持板5の回転により、永久磁石2とアーム3による磁路の形成、遮断が周期的に繰り返されることによって、アーム3の先端部3b間に交番磁界MFが生じることになり、生体に交番磁界MFによる刺激を付与することができる。
なお、本実施形態において、永久磁石2は2個である旨説明したが、永久磁石2は、1個であっても、3個以上であってもよい。
【0017】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態に係る磁場発生装置1Aについて、
図3〜
図6を主に参照して説明する。
図3は、第2実施形態に係る磁場発生装置1Aを説明する説明図、
図4は、永久磁石2、アーム3及び磁性体6の配置を説明する
図3のIV-IV断面図である。
図5は、
図4に示す状態から磁石保持板5を時計回りに回転させた状態を説明する
図3のIV-IV断面図に対応する図、
図6は、
図5に示す状態から磁石保持板5を時計回りに回転させた状態を説明する
図3のIV-IV断面図に対応する図である。
【0018】
<構成>
第2実施形態に係る磁場発生装置1Aは、交番磁界MFを形成する磁場形成部M2を備える。磁場形成部M2は、永久磁石2と、一対のアーム3と、駆動部(モーター4)と、永久磁石2が露出する状態で永久磁石2を保持する第1保持部材(磁石保持板5)と、複数の磁性体6と、複数の磁性体6を保持する第2保持部材(磁性体保持板7)と、を備える。
【0019】
本実施形態において、磁石保持板5は、円板状に形成されている。磁性体保持板7は角板状に形成されており、磁石保持板5を厚さ方向両側から挟むように2枚配設されており、不図示の固定部材に固定されている。
また、本実施形態に係る磁性体保持板7には、磁性体6の他に、仮想円8上に基端部3aが位置するように、アーム3が固定されている。
また、磁性体6は、2枚の磁性体保持板7の表面から磁石保持板5側に向けて突出するように磁性体保持板7に埋設されている。磁性体6は、永久磁石2の表面に摺接する位置まで突出するように磁性体保持板7に埋設されている。本実施形態に係る磁性体6は、8個設けられており、磁性体保持板7における仮想円8上において、一対のアーム3の基端部3aと一対のアーム3の基端部3aに隣接する磁性体6との間隔、及び隣接する磁性体6同士の間隔は等しい。つまり、磁性材料で構成された磁性体6及びアーム3は、仮想円8上において均等に配設されている。
【0020】
駆動部(モーター4)は、第1保持部材(磁石保持板5)と第2保持部材(磁性体保持板7)との一方(磁石保持板5)を他方(磁性体保持板7)に対して相対的に回転させる。
永久磁石2は、モーター4による第1保持部材(磁石保持板5)の回転軸4aを中心とする仮想円8上に複数(本実施形態においては2個)配設されている。
永久磁石2が複数配設されていることで、磁石保持板5が回転すると、複数の永久磁石2とアーム3との間で磁束経路が複数回形成されることとなり、交番磁界の周期を短くしてその周波数を高めることができる。
【0021】
複数の永久磁石2及び複数の磁性体6は、駆動部(モーター4)によって回転する第1保持部材(磁石保持板5)又は第2保持部材(磁性体保持板7)の任意のいずれの状態においても、複数の永久磁石2のそれぞれの中心と複数の磁性体6又は一対のアーム3の基端部3aのそれぞれの中心とが同時に重ならない位置にある。
図5に示すように、モーター4による磁石保持板5又は磁性体保持板7の回転方向において、複数の永久磁石2のうち少なくとも一の永久磁石2aに対して最も近くにある(磁性体6又は)一対のアーム3の基端部3aが、一の永久磁石2aに対して回転元側に位置するときに、他の一の永久磁石2bの最も近くにある磁性体6b(又は一対のアーム3の基端部3a)は、他の一の永久磁石2bに対して回転先側に位置する。
【0022】
上記構成によれば、複数の永久磁石2の中心と複数の磁性体6又は一対のアーム3の中心とが同時に重ならずに、回転の妨げとなることを防止できる。特に、上記の配置関係で永久磁石2と磁性体6又は一対のアーム3とが配設されていることで、複数の永久磁石2が、磁石保持板5又は磁性体保持板7の回転を制限する方向に複数の磁性体6を引くことを防止できる。
【0023】
<動作>
磁場形成部M2の動作について詳細に説明すると、モーター4は、複数の磁性体6に摺接可能な軌道上に永久磁石2が位置するように、第1保持部材(磁石保持板5)と第2保持部材(磁性体保持板7)との一方を他方に対して相対的に周期的に移動させる。本実施形態においては、モーター4は、磁石保持板5を磁性体保持板7に対して相対的に周期的に回転させる。
磁石保持板5が
図5に示す状態にあるときに、永久磁石2aには、アーム3の基端部3aを引き寄せようとする磁力であって、磁石保持板5の時計回りの回転を阻害する方向の力が生じる。一方で、この状態の時、永久磁石2bには、磁性体6bを引き寄せようとする磁力であって、磁石保持板5を時計回りに回転させようとする力が生じることになる。このため、永久磁石2bによって、永久磁石2aによる磁石保持板5の回転動力の低下が抑制されている。
【0024】
そして、磁石保持板5が
図6に示す状態にあるときに、永久磁石2bには、磁性体6bに対向する状態を維持しようとする磁力であって、磁石保持板5の時計回りの回転を阻害する方向の力が生じる。一方で、この状態の時、永久磁石2aには、磁性体6aを引き寄せようとする磁力であって、磁石保持板5を時計回りに回転させようとする力が生じることになる。このため、永久磁石2aによって、永久磁石2bによる磁石保持板5の回転動力の低下が抑制されている。
このようにして、磁石保持板5の回転の脈動(コギング)が生じることが抑制されている。
【0025】
上記のように、複数の磁性体6が設けられていることで、永久磁石2が、アーム3の基端部3aに対向する位置から、アーム3の基端部3aから対向しない位置に離間する際の回転速度の磁石保持板5の脈動を、磁石保持板5の全周回において抑制することができる。つまり、磁石保持板5の回転速度を安定させやすくなり、一対のアーム3の先端部3bから生じる交番磁界MFを安定させることができる。
【0026】
磁場発生装置1、1Aは、駆動部(モーター4)を制御する制御部(コントローラC)を更に備えていてもよい。コントローラCは、第1の交番磁界を所定時間生じさせた後に、第1の交番磁界とは異なる周波数の第2の交番磁界を生じさせるように、第1保持部材の回転速度を変更する制御を行う。具体的には、回転軸4aの回転速度を変更して、交番磁界MFの周波数を変更する。例えば、5ヘルツ、10ヘルツ、50ヘルツの順に10秒間のインターバルをおいて変更する。
このような構成によれば、被検者の刺激慣れを防いで、心地よい刺激を付与することができる。
なお、
図14に示して後述するように、モーター4が磁性体保持板27を回転させる構成においては、コントローラCは、磁性体保持板27の回転速度を変更する制御を行うようにすればよい。
【0027】
また、磁場発生装置1、1Aは、電位検出用のセンサ9を更に備え、制御部(コントローラC)は、センサ9から検出された電位に基づいて、第1保持部材(磁石保持板5)又は第2保持部材(磁性体保持板7)の回転数及び/又は回転時間についてフィードバック制御を行うようにしてもよい。
上記構成によれば、コントローラCが、センサ9から検出された電位(厳密には、生体への磁束の付与前後で、センサ9から検出された電位差)に基づいてフィードバック制御を行うことにより、生体の筋電位を検出して、作用する筋肉の神経電位に基づいた制御が可能となる。
つまり、作用する筋肉の神経電位に基づいて、異なる種類の刺激を付与可能なように、交番磁界MFの強さ(パルスの周波数)や刺激付与の時間を調整することができる。
また、コントローラCは、センサ9から検出された電位差から、例えば刺激している神経の部位や被検者の年齢や性別を判断して、上記の刺激付与の種類を変更するようにしてもよい。
【0028】
上記実施形態においては、磁性体保持板7が、磁石保持板5を厚さ方向両側から挟むように2枚配設されているものとして説明した。このように構成されていることで、永久磁石2が磁性体6を引き付ける力を大きくしつつ、バランスよく磁石保持板5を回転させることができるため好適である。しかしながら、このような構成に限定されず、磁性体保持板7が1枚配設されており、磁石保持板5の厚さ方向一方側からのみ、磁性体6が永久磁石2に摺接する構成であってもよい。
【0029】
<変形例>
次に、
図7及び
図8を参照して、第2実施形態の変形例に係る永久磁石2、磁性体6の配置について説明する。
図7は、第1変形例に係る永久磁石2及び磁性体6の配置を説明する
図3のIV-IV断面に対応する断面図、
図8は、第2変形例に係る永久磁石2(2c、2d、2e)及び磁性体6の配置を説明する
図3のIV-IV断面に対応する断面図である。
【0030】
図7に示すように、第1変形例に係る磁性体6は、4個設けられており、磁性体保持板7における仮想円8上において、一対のアーム3の基端部3aと一対のアーム3の基端部3aに隣接する磁性体6との間隔、及び隣接する磁性体6同士の間隔は等しい。つまり、磁性材料で構成された磁性体6及びアーム3は、仮想円8上において均等に配設されている。
図8に示すように、第2変形例に係る磁性体6は、6個設けられており、磁性体保持板7における仮想円8上において、一対のアーム3の基端部3aと一対のアーム3の基端部3aに隣接する磁性体6との間隔、及び隣接する磁性体6同士の間隔は等しい。つまり、磁性材料で構成された磁性体6及びアーム3は、仮想円8上において均等に配設されている。
【0031】
図8に示すように、複数の永久磁石2(2c、2d、2e)及び複数の磁性体6は、駆動部(モーター4)によって回転する第1保持部材(磁石保持板5)又は第2保持部材(磁性体保持板7)の任意のいずれの状態においても、複数の永久磁石2のそれぞれの中心と複数の磁性体6又は一対のアーム3の基端部3aのそれぞれの中心とが同時に重ならない位置にある。
そして、モーター4による磁石保持板5(又は磁性体保持板7)の回転方向において、複数の永久磁石2(2c、2d、2e)のうち少なくとも一の永久磁石2eに対して最も近くにある磁性体6(又は一対のアーム3の基端部3a)が、一の永久磁石2eに対して回転元側に位置するときに、他の一の永久磁石2cの最も近くにある磁性体6(又は一対のアーム3の基端部3a)は、他の一の永久磁石2cに対して回転先側に位置する。
【0032】
このように、3つの永久磁石2を備える構成であっても、複数の永久磁石2の中心と複数の磁性体6又は一対のアーム3の中心とが同時に重ならず、上記の配置関係で永久磁石2と磁性体6又は一対のアーム3とが配設されていることで、複数の永久磁石2が、磁石保持板5又は磁性体保持板7の回転を制限する方向に複数の磁性体6を引くことを防止できる。
【0033】
特に、磁石保持板5(又は磁性体保持板7)の回転中心を中心とした場合において、隣接する永久磁石2同士の円周方向の最短距離は、アーム3の基端部3a又は磁性体6の円周方向長さ(直径)以上であり、且つ、隣接するアーム3の基端部3a又は磁性体6同士の円周方向の最短距離は、永久磁石2の円周方向長さ(直径)以上である。
このような構成によれば、隣接する永久磁石2の双方がアーム3の基端部3a又は磁性体6を同時に吸着することを避けることができ、隣接するアーム3の基端部3a又は磁性体6の双方が永久磁石2に同時に吸着されることを避けることができる。このため、磁石保持板5(又は磁性体保持板7)の回転を円滑にすることができる。
【0034】
図4、
図7及び
図8に示すように、仮想円8上において、永久磁石2は複数配設されている。そして、仮想円8上において、一対のアーム3と一対のアーム3に隣接する磁性体6との間隔、及び隣接する磁性体6同士の間隔は等しい。さらに、永久磁石2の個数をm、一対のアーム3と磁性体6とを合わせた個数をnとし、k、lを任意の自然数としたときに、m≠kn、n≠lmとなっている。
上記構成によれば、複数の永久磁石2の中心と、アーム3又は磁性体6の複数の中心とが同時に重なることを回避することができ、コギングが生じることを抑制できる。
【0035】
<<第3実施形態>>
次に、第3実施形態に係る磁場形成部M3について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、第3実施形態に係る永久磁石2及び磁性体6の配置を説明する説明図、
図10は、
図9に示す状態からアーム3に対して相対的に、磁石保持板5及び磁性体保持板7の位置をずらした状態を説明する説明図である。
【0036】
本実施形態に係る磁場形成部M3は、内周側に
図4に示す配置で永久磁石2a、2bが設けられ、外周側に
図8に示す配置で永久磁石2c、2d、2eが設けられている構成である。
つまり、永久磁石2は、回転軸4aまでの径方向の長さが異なる仮想円8から成る複数のトラック10、11上に異なる個数で配設されている。
本実施形態に係る磁場発生装置1Aは、第1保持部材(磁石保持板5)及び第2保持部材(磁性体保持板7)を相対的に仮想円8の径方向に移動させる移動機構(アクチュエータ12)を更に備える。
アクチュエータ12は、磁石保持板5及び磁性体保持板7を仮想円8の径方向に移動させて、複数のトラック10、11のうち、異なるトラック10、11上にある永久磁石2と一対のアーム3とによって磁路を形成する。
なお、磁石保持板5及び磁性体保持板7と一対のアーム3とを相対的に移動させることが可能であればよく、アクチュエータ12によって、磁石保持板5及び磁性体保持板7を仮想円8の径方向に移動させるものに限定されない。つまり、アクチュエータ12によって、一対のアーム3を仮想円8の径方向に移動させるものであってもよい。
【0037】
仮想円8の径方向において、磁石保持板5及び磁性体保持板7、又は一対のアーム3の位置を調整して、一対のアーム3との関係で磁路を形成する永久磁石2のトラック10、11を変更することで、交番磁界のパルス幅を変更することができる。
つまり、径方向外側の永久磁石2c、2d、2eは、径方向内側の磁石2a、2bよりも、回転軸4aから離れた位置にあることにより一対のアーム3を通り過ぎるスピードが速い。このため、一対のアーム3との関係で磁路を形成する時間(パルス幅)が少なくなる。よって、アーム3の基端部3aが通るトラック10、11を変更することで、パルス幅の調整を行うことができる。
【0038】
特に、本実施形態に係る永久磁石2は、複数のトラック10、11上に異なる数で配設されている。具体的には、トラック10上には2個、トラック11上には3個配設されている。
このような構成によれば、アーム3に対する磁石保持板5及び磁性体保持板7、又は磁石保持板5及び磁性体保持板7に対するアーム3の径方向の位置を調整して、一対のアーム3との関係で磁路を形成する永久磁石2のトラック10、11を変更することで、交番磁界のパルス間隔及び周波数を変更することができる。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、複数のトラックのそれぞれに、同じ数だけ配設されていてもよく、1つのトラック上の永久磁石2の数を異なるものとしたり、更に複数のトラックが設けられていてもよい。
【0039】
本実施形態に係る制御部(コントローラC)は、アクチュエータ12を制御可能に接続されている。
コントローラCは、第1の交番磁界を所定時間生じさせた後に、第1の交番磁界とは異なる周波数の第2の交番磁界を生じさせるように、アーム3に対する磁石保持板5及び磁性体保持板7、又は磁石保持板5及び磁性体保持板7に対するアーム3の径方向の位置を変更する制御を行う。
例えば、アーム3に対する磁石保持板5及び磁性体保持板7の径方向の位置を変更して、永久磁石2とアーム3とによって磁路が形成される回数(パルス間隔)を変更する。
このような構成によれば、被検者の刺激慣れを防いで、心地よい刺激を付与することができる。特に、回転軸4aの回転速度を変更する場合と比較して、変更前後で所定のパルス幅を確保しつつ、急激にパルス間隔を変更することも可能となる。
【0040】
また、磁場発生装置1Aは、電位検出用のセンサ9を更に備え、制御部(コントローラC)は、センサ9から検出された電位に基づいて、第1保持部材(磁石保持板5)又は第2保持部材(磁性体保持板7)の回転数及び/又は回転時間についてフィードバック制御を行うようにしてもよい。
上記構成によれば、コントローラCが、センサ9から検出された電位に基づいて、アーム3の基端部3aが通過するトラック10、11を選択する等のフィードバック制御を行うことにより、生体の筋電位を検出して、作用する筋肉の神経電位に基づいた制御が可能となる。
つまり、作用する筋肉の神経電位に基づいて、筋肉に疲労レベルに応じた刺激を付与可能なように、交番磁界の強さ(パルスの周波数、パルス間隔、パルス幅)や刺激付与の時間(刺激の付与を行わないインターバル時間)を調整することができる。
【0041】
<<第4実施形態>>
次に、
図11を主に参照して、第4実施形態に係る永久磁石2、アーム3の基端部3a及び潤滑液14を収容するボックス13について説明する。
図11は、第4実施形態に係るボックス13の構成を説明する説明図である。
【0042】
本実施形態に係る磁場発生装置1、1Aは、永久磁石2(及び磁性体6)と一対のアーム3の基端部3aとを少なくとも収容するボックス13を更に備える。
ボックス13は、底板13aと、天板13bと、側板13cとを備える。底板13aには、アーム3が貫通した状態で固定されており、側板13cに形成された挿通孔13dに挿通孔7aが通されており、側板13cの内面に磁性体保持板7が固定されている。
【0043】
ボックス13内には、空気よりも透磁率の高い潤滑液14が収容されており、潤滑液14は、永久磁石2と一対のアーム3の基端部3a(及び磁性体6)との間に満たされている。
潤滑液14によって、永久磁石2とアーム3の基端部3aとの間のエアギャップによる磁束密度の低下を抑制でき、永久磁石2とアーム3の基端部3a(及び磁性体6)とが摺接することにより、互いの摺接面が摩耗することを防止できる。そして、両者間の摩擦を低減して熱の発生を抑制できるとともに、酸化を防止できる。
【0044】
また、永久磁石2と一対のアーム3(及び磁性体6)の基端部3aとの間に、磁性流体である潤滑液14が設けられていてもよい。
磁性流体である潤滑液14を設けることで、永久磁石2が磁性体6及びアーム3の基端部3aに摺接したとしても、その磁性により、永久磁石2の周りに潤滑液14を留めることができることになる。このため、潤滑液を少量に抑えることができ、特にボックス13を用いずとも、永久磁石2と一対のアーム3の基端部3a(及び磁性体6)との間に磁性流体を留めることができる。
なお、本発明に係る潤滑液は、エアギャップによる磁束密度の低下を抑制し、摺接抵抗を抑制できれば磁性流体であるものに限定されない。
【0045】
<<第5実施形態>>
次に、
図12及び
図13を主に参照して、第5実施形態に係る磁場形成部M4について説明する。
図12は、第5実施形態に係る磁場形成部M4を説明する説明図であって、
図12(a)は、磁界MFが発生している状態を示す図であり、
図12(b)は、磁界MFが消滅している状態を示す図である。
図13は、
図12(a)、(b)にそれぞれ対応する図であって、
図13(a)は、偏心カム15が永久磁石2をアーム3の基端部3aに対向する位置まで押し下げている状態を示す、
図12(a)のXIIIA方向矢視の説明図である。
図13(b)は、圧縮バネ17の付勢により、アーム3の基端部3aから離間する位置まで永久磁石2が押し上げられている状態を示す、
図12(b)のXIIIB方向矢視の説明図である。
なお、
図12においては、後述する偏心カム15及びスライダ16の形状を明確に示すため、
図13に示す圧縮バネ17及びボックス18の図示を省略している。
【0046】
本実施形態に係る磁場形成部M4は、磁路を形成する一部位(永久磁石2)を他の部位(アーム3)から相対的に周期的に直線的に移動させ、又は磁路を遮断する遮断部を周期的に直線的に移動させて、磁路の導通と遮断とを切り替える構成を有する。
【0047】
磁場形成部M4は、偏心カム15と、偏心カム15の周囲の側面に摺接して往復動可能なスライダ16と、スライダ16を回転軸4aに向けて付勢する圧縮バネ17と、これらを収容しつつ、スライダ16の往復動をガイドするボックス18と、を備える。
偏心カム15は、長尺の板片であり、偏心カム15の厚さ方向にモーター4の回転軸4aが挿し込まれて接続されている。偏心カム15には、長尺方向において偏った位置に回転中心としての回転軸4aが接続されている。
スライダ16は、永久磁石2を保持する棒状部材である。スライダ16は、モーター4によって回転する偏心カム15に摺接すること、及び圧縮バネ17によって、回転軸4a側に向けて付勢されることによって、回転軸4aに近接及び離間する方向に直線的に往復動可能に構成されている。
つまり、モーター4及び偏心カム15は、永久磁石2を直線的に往復動させる駆動部として機能する。
【0048】
モーター4により偏心カム15を回転させたときに、
図13(a)に示すように、偏心カム15がスライダ16に当接する側に延在し、圧縮バネ17を最も圧縮させているときに、永久磁石2がアーム3の基端部3aに対向する位置となる。このとき、永久磁石2とアーム3により磁路が形成されることにより、先端部3bに磁界MFが発生する。偏心カム15の回転動作において、永久磁石2が基端部3aから離間した位置にあるときには、先端部3bに磁界MFが発生しないことになる。
つまり、磁界MFは、偏心カム15一回転につき一回生じることになる。
【0049】
上記実施形態においては、下死点にあるときに永久磁石2とアーム3の基端部3aが対向する例を説明したが、本発明は、このような構成に限定されない。
例えば、スライダ16の往復動の動作領域の下端ではなく、中央部において、永久磁石2がアーム3の基端部3aに対向する位置となるようにすれば、磁界MFは、偏心カム15一回転につき二回生じることになる。
さらに、永久磁石2をスライダ16に複数設けるようにすれば、偏心カム15の回転当たりの磁界MFの発生回数を多くすることができる。
【0050】
<<第6実施形態>>
次に、第6実施形態に係る磁場形成部M5について、
図14を主に参照して説明する。
図14は、第6実施形態に係る磁場形成部M5を説明する説明図である。
図3等を参照して説明した上記実施形態に係る磁場形成部M2、M3においては、モーター4によって、永久磁石2を保持する磁石保持板5を、磁性体6を保持する磁性体保持板7に対して回転させるものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
本実施形態に係る磁場形成部M5は、磁性体6を保持する磁性体保持板27を、永久磁石2を保持する磁石保持板25に対して回転させる構成を備える。
【0051】
具体的には、磁場形成部M5(生体刺激用磁場発生装置)は、磁路を形成する一部位(磁性体6)を他の部位(永久磁石2)から相対的に周期的に移動させ、又は磁路を遮断する遮断部を周期的に移動させて、磁路の導通と遮断とを切り替える駆動部(モーター4)を備える。
さらに、磁場形成部M5は、上記のように、永久磁石2を保持する磁石保持板25と、複数の磁性体6を保持する磁性体保持板27と、一対のアーム3と、磁石保持板25及び磁性体保持板27並びにアーム3の一部を収容するボックス23と、を備える。
本実施形態に係る「遮断部」とは、アーム3の基端部3aに対向する仮想円8上にある磁性体保持板27の部位のうち、磁性体6が設けられていない部位である。
【0052】
本実施形態に係る磁石保持板25は、永久磁石2を2個保持しており、ボックス23の底板23aと、天板23bとに上下を固定されている。なお、永久磁石2の数は任意に選択可能である。
磁性体保持板27は、複数の磁性体6を保持している構成については
図3に示す磁性体保持板7の構成と同様である。一方で、磁性体保持板27は、不図示の固定部材によって固定されておらず、モーター4の回転軸4aが中央部に固定されていることによって、回転可能に構成されている。
回転軸4aは、ボックス23の側板23cの挿通孔23dを挿通して、磁性体保持板27に接続されている。
一対のアーム3は、底板23aを貫通した状態で底板23aに固定されており、一のアーム3の基端部3aは、永久磁石2に対向する位置に配設されており、他のアーム3の基端部3aは、磁性体6に対向可能な位置(磁性体6の周回軌道上)に配設されている。
磁性体保持板27内には、潤滑液14が収容されており、基端部3aと永久磁石2、永久磁石2と磁性体6、磁性体6と基端部3aとの間に満たされている。
【0053】
本実施形態に係る駆動部(モーター4)は、複数の磁性体6に摺接可能な軌道上に永久磁石2が位置するように、第1保持部材(磁石保持板25)と第2保持部材(磁性体保持板27)との一方を他方に対して相対的に周期的に移動させる。より具体的には、モーター4は、磁性体保持板27を磁石保持板25に対して相対的に周期的に回転させる。
磁石保持板25に対して磁性体保持板27を回転させることによって、
図3に示す磁場形成部M2と同様に、アーム3の先端部3bから交番磁界MFを生じさせることができる。
【0054】
上記各実施形態は、以下の技術思想のいずれかを包含する。
(1)永久磁石と、
該永久磁石から発生する磁束の経路である磁路の少なくとも一部を形成し、磁性材料で構成された対向する一対のアームと、
前記磁路を形成する一部位を他の部位から相対的に周期的に移動させ、又は前記磁路を遮断する遮断部を周期的に移動させて、前記磁路の導通と遮断とを切り替える駆動部と、を備え、
前記一対のアームの先端部の間に発生する交番磁界により、生体に刺激を付与することを特徴とする生体刺激用磁場発生装置。
(2)前記永久磁石が露出する状態で、前記永久磁石を保持する第1保持部材と、
複数の磁性体と、
該複数の磁性体を保持する第2保持部材と、を更に備え、
前記駆動部は、前記複数の磁性体に摺接可能な軌道上に前記永久磁石が位置するように、前記第1保持部材と前記第2保持部材との一方を他方に対して相対的に周期的に移動させる(1)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(3)前記駆動部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との一方を他方に対して相対的に回転させ、
前記永久磁石は、前記駆動部による前記第1保持部材の回転軸を中心とする仮想円上に複数配設されている(2)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(4)前記複数の永久磁石及び前記複数の磁性体は、前記駆動部によって回転する前記第1保持部材又は前記第2保持部材の任意のいずれの状態においても、前記複数の永久磁石のそれぞれの中心と前記複数の磁性体又は前記一対のアームのそれぞれの中心とが同時に重ならない位置にあり、
前記駆動部による前記第1保持部材又は前記第2保持部材の回転方向において、前記複数の永久磁石のうち少なくとも一の永久磁石に対して最も近くにある前記磁性体又は前記一対のアームが、前記一の永久磁石に対して回転元側に位置するときに、他の一の永久磁石の最も近くにある前記磁性体又は前記一対のアームは、前記他の一の永久磁石に対して回転先側に位置する(3)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(5)前記仮想円上において、前記永久磁石は複数配設されており、
前記仮想円上において、前記一対のアームと前記一対のアームに隣接する前記磁性体との間隔、及び隣接する前記磁性体同士の間隔は等しく、
前記永久磁石の個数をm、前記一対のアームと前記磁性体とを合わせた個数をnとし、k、lを任意の自然数としたときに、
m≠kn
n≠lm
となる、(3)又は(4)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(6)前記永久磁石は、前記回転軸までの径方向の長さが異なる前記仮想円から成る複数のトラック上に配設されており、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材、又は前記一対のアームを相対的に前記仮想円の径方向に移動させる移動機構を更に備え、
該移動機構は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材、又は前記一対のアームを前記仮想円の径方向に移動させて、前記複数のトラックのうち、異なるトラック上にある前記永久磁石と前記一対のアームとによって前記磁路を形成する(3)から(5)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(7)前記永久磁石は、前記複数のトラック上に異なる数で配設されている(6)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(8)前記永久磁石と前記一対のアームの基端部とを少なくとも収容するボックスを更に備え、
該ボックス内に、空気よりも透磁率の高い潤滑液が収容されており、
該潤滑液は、前記永久磁石と前記一対のアームの基端部との間に満たされている(1)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(9)前記永久磁石と前記一対のアームの基端部との間に、磁性流体である潤滑液が設けられている(1)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(10)前記駆動部を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、第1の交番磁界を所定時間生じさせた後に、前記第1の交番磁界とは異なる周波数の第2の交番磁界を生じさせるように、前記第1保持部材又は前記第2保持部材の回転速度を変更する制御を行う(2)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(11)電位検出用のセンサを更に備え、
前記制御部は、前記センサから検出された電位に基づいて、前記第1保持部材又は第2保持部材の回転数及び/又は回転時間についてフィードバック制御を行う(10)に記載の生体刺激用磁場発生装置。
(12)前記第1保持部材又は前記第2保持部材の回転中心を中心とした場合において、隣接する前記永久磁石同士の円周方向の最短距離は、前記アームの基端部又は前記磁性体の円周方向長さ以上であり、且つ、隣接する前記アームの基端部又は前記磁性体同士の円周方向の最短距離は、前記永久磁石の円周方向長さ以上である(3)から(7)のいずれか一項に記載の生体刺激用磁場発生装置。