(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-55856(P2020-55856A)
(43)【公開日】2020年4月9日
(54)【発明の名称】経口薬剤用補助手段としての組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20200313BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20200313BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20200313BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20200313BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20200313BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20200313BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20200313BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20200313BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/06
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-222563(P2019-222563)
(22)【出願日】2019年12月10日
(62)【分割の表示】特願2017-242100(P2017-242100)の分割
【原出願日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】2010552
(32)【優先日】2013年4月2日
(33)【優先権主張国】NL
(71)【出願人】
【識別番号】515275063
【氏名又は名称】パックスツリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ブルーインス,ロン
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA51
4C076BB01
4C076DD21A
4C076DD23A
4C076DD25A
4C076DD41R
4C076DD43A
4C076DD43Z
4C076DD67T
4C076DD69T
4C076EE30G
4C076EE30T
4C076EE41T
4C076EE58T
4C076FF68
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固形の経口薬剤の摂取を楽にするゼリー、および固形の経口薬剤の摂取を楽にする目的の補助手段としての組成物の提供。
【解決手段】イオタ−カラギーナン、クエン酸およびマルトデキストリンを含むゼリーの形態の組成物、組成物中の前記マルトデキストリンの量は、前記組成物の合計質量に対し、1.3−1.8質量%の範囲にあり、流動が始まるまで、試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用するBrookfield DX3TRVTレオメーターを用いて測定して前記組成物が20℃で15Pa以上の降伏応力を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオタ−カラギーナン、クエン酸およびマルトデキストリンを含むゼリーの形態の組成物であって、前記組成物中の前記マルトデキストリンの量は、前記組成物の合計質量に対し、1.3〜1.8質量%の範囲にあり、流動が始まるまで、試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用するBrookfield DX3TRVTレオメーターを用いて測定して前記組成物が20℃で15Pa以上の降伏応力を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
ゼリーの形態の組成物であって、前記組成物の合計質量に対し、0.5〜2.0質量%のマルトデキストリン、0.8質量%のイオタ−カラギーナン、0.055質量%のアスパルテーム、0.070質量%のクエン酸、0.80%のソルビン酸カリウム、および、0.005%の塩化カルシウムを含み、
流動が始まるまで、試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用するBrookfield DX3TRVTレオメーターを用いて測定して前記組成物が20℃で15Pa以上の降伏応力を有することを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記組成物が、流動が始まるまで、前記試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用するBrookfield DX3TRVTレオメーターを用いて測定して組成物が20℃で35−50Paの範囲の降伏応力を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の合計質量に対し、1.5質量%のマルトデキストリン、0.8質量%のイオタ−カラギーナン、0.055質量%のアスパルテーム、0.070質量%のクエン酸、0.80%のソルビン酸カリウム、および、0.00〜0.04%の塩化カルシウムを含み、
流動が始まるまで、試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用するBrookfield DX3TRVTレオメーターを用いて測定して前記組成物が20℃で15Pa以上の降伏応力を有することを特徴とする組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記クエン酸の量が前記組成物の合計質量に対し、0.05〜0.16質量%、好ましくは0.6質量%であることを特徴とする、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項6】
クエン酸が、前記組成物のpHが4.8〜6.5の範囲、好ましくは5.5となる量で前記組成物に含まれることを特徴とする、請求項1,3又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物がさらに、前記組成物のCaイオン活動度が<500ppm、好ましくは10ppmから100ppm、より好ましくは20ppmから80ppmとなるような量のカルシウム封鎖剤を含むことを特徴とする、請求項1,3又は5に記載の組成物。
【請求項8】
前記カルシウム封鎖剤が塩化カルシウムであることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カルシウム封鎖剤が炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記塩化カルシウムが、前記組成物の合計質量に対して0.4質量%未満、好ましくは0.005−0.015質量%の量で前記組成物に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記イオタ−カラギーナンの量が前記組成物の合計質量に対し、0.5〜2質量%、好ましくは0.7〜1.0質量%であることを特徴とする、請求項1,3又は5に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、さらに前記組成物の合計質量に対して80〜99質量%、好ましくは84〜97質量%の量の水を含むことを特徴とする、請求項1,3,5〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、オレンジ風味、レモン風味、ライム風味およびミント風味から成る群から選択された一つの風味を前記組成物に与える香味剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1,3,5〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、蔗糖、アスパルテーム、スクラロース、ステビア及びイヌリンから成る群から選択された甘味料をさらに含むことを特徴とする、請求項1,3,5〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、スピラントール、ジャンブ含油樹脂、寒天、イナゴマメ、カルボキシメチルセルロース、および、キサンタンガムが前記組成物中に存在しないことを特徴とする、請求項1,3,5〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記組成物の合計質量に対して、0.8質量%のイオタ−カラギーナン、0.06〜0.07質量%のクエン酸、1.5質量%のマルトデキストリンと0.005質量%の塩化カルシウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物の合計質量に対して0.005〜0.4質量%、好ましくは0.005〜0.015質量%の塩化カルシウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
固形の経口薬剤を被覆するための組成物であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経口薬剤を摂取する技術分野に関する。本発明は、組成物であって、具体的には、その使用が固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであるゼリー、およびそう明示された目的の補助手段としてのそのような組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ある人々、とりわけ幼児および高齢者は、経口薬剤を摂取する場合、嚥下の問題を経験する。この問題は、嚥下困難および/または口内乾燥症(唾液分泌減退、口内乾燥)などのある種の条件によって引き起こされる場合があり、また、それには心身医学的原因、例えば生理的な異常、または嚥下されるカプセル剤またはピルの寸法もしくは味に関係する嫌悪があり得る。
【0003】
プリアンブルによる幾つかの組成物が先行技術から公知である。以下は、固体薬剤の嚥下および服用を強めるための、ゼリーまたはゼリー状組成物の使用に関する。嚥下を容易にする公知の一組成物は、修飾された予備ゼラチン化澱粉、糖アルコールおよび水溶性食物繊維の混合物を含む。別の公知の組成物は、服用/嚥下の機能を改善するための2種の多糖類および1種のキサンタンガムおよび/または1種のカラギーナンの組み合わせを含む。なお別の公知の組成物は、ゼラチンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む潤滑ゼリーを含む、薬剤のための被膜を含む。なお別の公知の組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナン、および唾液分泌剤としてクエン酸を含む。
【0004】
目下のところ、公知の組成物すべて、具体的には、その使用が固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであるゼリー、およびそう明示された目的の補助手段としてのそのような組成物の使用は、それ自体で不都合を有する。公知の一組成物は、それを散剤形態のみの薬剤と混合することに限定されている。別の公知の組成物の使用は、意図する薬剤と混合すると不安定な懸濁液をもたらす。また別の公知の組成物は、薬剤の活性物質のすべての有効な規格およびすべての投薬のために毎回、毎回、調製されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】蘭国特許公開1039241号明細書
【特許文献2】蘭国特許公開2010552
【特許文献3】特開2003−104912号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/128285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としてであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の別の目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としてであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、その組成物は、ピル、カプセル剤、錠剤および散剤を含むすべての公知の固形の経口薬剤と混合することができる。
【0008】
本発明のさらなる目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の補助手段としての使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、その組成物は、経口薬剤と混合すると嚥下または服用することができる安定な懸濁液を提供することができる。
【0009】
本発明のさらなる目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の補助手段としての使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、その組成物は、嚥下される経口薬剤の活性物質のすべての有効な規格およびすべての投薬のために調製する必要はない。
【0010】
本発明のまた別の目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としてであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、その組成物の製造は、プリアンブルによる公知の組成物より安い。
【0011】
本発明のまた別の目的は、代替組成物、具体的にはゼリーを提供することであり、その組成物の補助手段としての使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、その組成物は、公知の補助手段、具体的にはゼリーの幾つかのさらなる不都合を回避し、その組成物の補助手段としての使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含む。
【0012】
1つまたは複数の上記に明示された目的は、イオタ−カラギーナン、クエン酸およびマルトデキストリンを含むゼリーの形態の組成物を用いて達成される。この組成物において、イオタ−カラギーナンはゼリー化剤として作用し、クエン酸は唾液分泌剤として作用する。
【0013】
1つまたは複数の上記に明示された目的は、組成物、具体的にはゼリーを用いて達成され、その組成物の使用は、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としてであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、本発明の一態様において本組成物がマルトデキストリンをさらに含むことを特徴とする。関連する技術的利点は、固形の経口薬剤が本組成物で被覆された場合、マルトデキストリンの添加が、薬剤の懸濁を維持する組成物の能力を改善することである。
【0014】
好ましくは、本組成物は、組成物の合計質量の1−4質量%のマルトデキストリンを含む。これは、固形の経口薬剤が口中で沈降するまでの時間が十分長いという技術的な利点を提示する。特定の実施形態において、本組成物は、組成物の合計質量の1.3−1.8質量%の範囲のマルトデキストリンを含む。最も好ましくは、本組成物は、組成物の合計質量の1.5質量%のマルトデキストリンを含む。これは、最適の静置時間という利点を提示し、それによって、嚥下に対する非常に強い嫌悪感を有する人々すら、口中の組成物中に懸濁した固形の経口薬剤を嚥下するのに十分な時間を与える。
【0015】
特許文献1(D1)は、唾液分泌ミックス中に含まれるイオタ−カラギーナン、クエン酸およびマルトデキストリンを含むゼリーを開示している。ゼリーは、薬剤が口へ持ち込まれる前の固体薬剤を被覆するために使用することができる。ゼリーは、固形の経口薬剤の摂取を容易にする(5ページ、1行目−7ページ、21行目)。唾液分泌ミックス中に含まれるマルトデキストリンは、組成物の合計質量の1.14質量%の量と計算される。
【0016】
本発明は、特に降伏応力の態様に関して、D1の開示を超える選択発明を示す。降伏応力は、組成物の粘性を壊すのに必要とする力または応力であり、固体薬剤がそれを包む組成物(ゼリー)の層から分離することを可能にする。降伏応力が大きいほど、(ゼリー)組成物はその記載される機能が効果的である。比較試験のデータは、後で
図6−7に関連して記載される。このデータは、上の段落[0008]で述べたマルトデキストリンの添加の技術的利点を実証する(これは、優先権が主張されている特許文献2の段落[0006]に対応する)。
【0017】
本発明は、ゼリー組成物の粘性が重要であるだけではなく、その粘弾性挙動もまた重要であることを示す。カラギーナンゲルが粘弾性挙動を示すことは先行技術から公知である。しかしながら、今まで知られていなかったことは、マルトデキストリンなどの澱粉および澱粉誘導体のものなどのポリマー状構造が、降伏応力を、ある意味で予想外に高めるような影響を及ぼすことである。
【0018】
本発明の別の態様によると、本組成物は、組成物の合計質量の0.05から0.10質量%のクエン酸を含む。関連する技術的利点は、クエン酸が組成物に中性から弱酸性の味を与え、その味の範囲が、経口薬剤を使用するほとんどの人々から許容されるということである。
【0019】
好ましくは、本組成物は、組成物の合計質量の0.05−0.1質量%の範囲、好ましくは0.06質量%のクエン酸を含む。関連する技術的利点は、組成物のpHを4.8−6.5の範囲、好ましくは5.0−6.0の範囲に、最も好ましくはpHが5.5となるように調節することができることである。
【0020】
本発明のまた別の態様によると、本組成物はカルシウム封鎖剤を含む。関連する技術的利点は、この封鎖剤が組成物のpHを調節する助けをすることである。別の関連する技術的利点は、この封鎖剤が組成物中のCaイオン活動度を調節する助けをすることである。ある量のCaイオン活動度は、組成物の所望の粘性をその製造中、およびまたその使用中、すなわち口中で維持するために有益である。
【0021】
カラギーナンゼリー中でのカルシウムの使用、それ自体は、先行技術から公知である。例えば、特許文献3(D2)によると、カルシウムイオンが継粉防止剤(段落0020)として使用されている。この開示は、組成物中のカラギーナンの量の0.01−10倍量(重量で)でCa
2+を含有するイオン性物質に関する。また、特許文献4(D3)において、カルシウムまたはカリウムイオンなどの金属イオンの水溶性塩(例えば塩化物、リン酸塩もしくは硫酸などの無機酸塩、または乳酸もしくはクエン酸などの有機酸塩)の組成物への包含は、組成物をゼリー化し、ゼリー安定性を高めるために効果的であることが開示されている(段落0041−0044)。
【0022】
カルシウム封鎖剤はカルシウムイオンを供給する。いかなる理論によっても束縛される意図はないが、本発明者は、カルシウムがその硫酸塩基としてカラギーナン分子間にイオン性架橋を形成するので、カルシウムイオンは、確かに、他の二価金属イオンのように、ゼリーの構造を強化すると考えられる。塩化カルシウムに加えて、他のカルシウム封鎖剤とは、とりわけ炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムである。本発明による組成物への炭酸カルシウムの添加は、pHを高め、そのため、当業者は、pHを4.8−5.8の望ましい値に下げるためにクエン酸の添加を企図するであろう。代替物はすべて、当然、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としての組成物の使用に関する保健条例との適合性から免れず、そういうものとして、当業者によって作業場での修正を必要とし得る。
【0023】
本発明によるイオタ−カラギーナン、クエン酸およびマルトデキストリンを含む組成物中にカルシウム封鎖剤を包含する態様は、D1の開示の観点からD2およびD3の開示を超える新規性および進歩性を示す。D2は、継粉防止剤としてカルシウムイオンの使用を開示し、D3は、ゼリー化剤としてのカルシウムイオンの使用を開示している。カルシウム封鎖剤の包含は、組成物のより大きい降伏応力を与える。降伏応力が大きいほど、組成物(ゼリー)は記載された機能が効果的である。塩化カルシウムを用いる、および用いない比較試験のデータは、後の
図8−9に関連して記載される。このデータは、上記段落[0015]中で述べたカルシウム封鎖剤の包含の技術的利点を実証する(それは、優先権が主張される特許文献2の段落[0009]と同じである)。
【0024】
本組成物は、組成物のCaイオン活動度が<500ppmとなるような量のカルシウム封鎖剤を含む。好ましくは、本組成物は、組成物のCaイオン活動度が10ppmから100ppmの間となるような量のカルシウム封鎖剤を含む。より好ましくは、本組成物は、組成物のCaイオン活動度が20ppmから80ppmの間となるような量のカルシウム封鎖剤を含む。
【0025】
好ましくは、本組成物中に含まれるカルシウム封鎖剤はクエン酸の塩である。組成物に中性から弱酸性の味を与えるために組成物が既にクエン酸を含む必要があるので、このことは有利である。必要とされるクエン酸の量は、4.8から5.8の間のpHを保持するために必要となる量である。実際に、加えられるクエン酸の量は、組成物の合計質量の0.05−0.1質量%の水準である。いかなる理論によっても束縛される意図はないが、本発明者は以下の説明を提示する。イオタ−カラギーナンの製造中に、水酸化カリウムがpHの調節のために使用される。本発明の組成物用のこのイオタ−カラギーナンの使用によって、組成物中に約3000ppmのカリウムが含まれることになる。そのため、クエン酸を添加すると、第1の事例において、クエン酸カリウムが形成され、すべてのカリウムが結合するまで、カルシウムはイオタ−カラギーナンの硫酸塩基に結合する。異なる起源からのイオタ−カラギーナンを使用すると、組成物中に含まれるカリウムの量が異なるか、または同等で、4.8から5.8の間のpHを保持するために必要なクエン酸の量が多少変動し得ることは明らかなはずである。
【0026】
また好ましくは、代替として、組成物中に含まれるカルシウム封鎖剤は塩化カルシウムである。これは、容易に入手可能で、より安価な代替封鎖剤という利点を提示する。好ましくは、組成物中に含まれる塩化カルシウムの量は、組成物の合計質量に対して0.4質量%未満である。より好ましくは、組成物中に含まれる塩化カルシウムの量は、組成物に対して0.0−0.2質量%の範囲にある。最も好ましくは、組成物中に含まれる塩化カルシウムの量は、組成物の合計質量に対して0.005質量%−0.015質量%である。これは、変化のある要件による組成物の保存寿命を適合させるという技術的利点を提示する。
【発明の効果】
【0027】
本発明による組成物は、適切に経口摂取することができる任意の種類の薬剤の吸収のために使用することができるので、普遍的な資格がある。特に、この組成物は、固形薬剤、特にピル、錠剤およびカプセル剤および散剤の形態の嚥下および経口投与を容易にするのに向いている。
【0028】
本発明による組成物は、活性治療薬または予防物質を含まず、したがって、単一形態、投薬または活性物質が何を含んでいようとも、固形のすべての薬剤とともに使用することができる。
【0029】
本組成物の一実施形態によると、これは、口中の唾液および/または粘膜と接触するとき潤滑性を発揮するゼリー化ペーストの形態で提供される。この特性は唾液分泌剤の存在によって強められる。本発明による組成物は、例えば匙上で本組成物および薬剤を混ぜて口へ入れた後、薬剤の吸収を容易にするために使用することができる。薬剤は、薬局で入手可能な、本草薬の市販形態で使用することができる。実際に、薬剤の吸収中に、本組成物は、カプセル剤、ピル、錠剤または散剤の嚥下のために一般に使用される水に代わる。本発明による組成物は、薬剤吸収問題で苦しむ人々、とりわけ小児および高齢者のために、ならびに失語症および/または口内乾燥症に苦しむ人々のために特に意図される。
【0030】
本発明による組成物は、とりわけ口に持ち込む前に、錠剤、ピル、カプセル剤または散剤の形態の固形薬剤を被覆するために使用することができる。錠剤、ピル、カプセル剤もしくは散剤の形態の薬剤の操作または修正は必要でない。錠剤、ピル、カプセル剤または散剤は、組成物が前者を被覆するために十分な量の組成物中に単純に入れられる。本発明による組成物は、完全にそのままの形態の錠剤、ピル、カプセル剤または散剤の形態の薬剤と一緒にし、ピルもしくは錠剤の粉砕、またはカプセル剤の開封によるようなこの薬剤の修正は行わない。組成物と薬剤を一緒にするのは、患者自身によって口へ薬剤を導入する直前に行うことができる。ピル、錠剤、カプセル剤または散剤は、その商品化された形態で、本発明による組成物中で摂取される。吸収の直前に、自立した単一形態の薬剤は、本発明による組成物に入れられ、次いで、口へ持ち込まれる。ピル、錠剤またはカプセル剤の形態の薬剤は、口に組成物を導入する前または後に、別々に口へ持ち込むことができる。例えば、口中に薬剤を直接入れ、続いて、水を使用するのと同じように組成物を摂取することができる。特に、口中への導入の前または後に薬剤が本発明による組成物中にそのままの形態で組み込まれる場合、カプセル剤の開封またはピルまたは錠剤の破砕は必要とされない。
【0031】
本発明の一実施形態によると、組成物はクエン酸を含む。その機能の1つは唾液分泌剤として作用することである。別の機能は、組成物に中性から弱酸性の味を与えることである。代替として、口中の唾液産生を刺激する他の1または数種の化合物は、組成物中の量を完全にまたは一部の程度にクエン酸を置き換えることができる。代替の例はアスコルビン酸である。
【0032】
さらなる実施形態によると、クエン酸は、組成物の合計質量に対して0.05−0.10質量%、好ましくは0.05−0.08質量%、最も好ましくは0.06質量%の量で組成物中に含まれる。
【0033】
また別の実施形態によると、組成物は、4.8−6.5、好ましくは5.0−6.0の範囲、最も好ましくは5.5であるpHを得るような量のクエン酸を含む。
【0034】
別の実施形態によると、本組成物は、組成物の合計質量に対して、0.5−2.0質量%、好ましくは0.7−1.0質量%の量のイオタ−カラギーナンを含む。
【0035】
【0036】
イオタ−カラギーナンと組み合わせて別のゼリー化剤を使用することは可能である。このゼリー化剤は、別の多糖類、例えばセルロースまたは寒天であってもよい。ゼリー化剤は、それが組成物の流動学的性質を変えるのを防止するために、カラギーナンの合計質量に対するその質量百分率が、50%未満、好ましくは30%、より好ましくは10%未満となるような量で組成物中に存在しなければならない。一実施形態によると、イオタ−カラギーナンは組成物中に含まれる唯一のゼリー化剤である。
【0037】
別の実施形態によると、組成物は特定の粘弾性を有する。特に、本発明によるゼリーの変形の周波数に対する粘弾性成分、貯蔵G’および損失G”の測定(例えばAnton PaarからのRheolab MCR 301を用いて1%の一定振幅で22℃で測定して)は、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”より大きいことを示す。式タンジェントデルタ=G”/G’として表現される2つの弾性率(G’およびG”)間の関係は、均等に0.1から100s
−1の間の周波数の範囲で、好ましくは常に1未満である。特に、タンジェントデルタは0.10から0.65の間にある。さらに、タンジェントデルタの値は、周波数の増加に対して有利に増加する。そのような粘弾性特性は、組成物の形成を安定な弾性物質として決定する。これらの特性は、十分な量のイオタ−カラギーナンの存在により得られる。
【0038】
本発明の上記およびさらに好ましい実施形態および技術的利点が、ここで、例として添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】組成物の合計質量に対して異なる量の異なる型のカラギーナンを含む組成物の力学的なスペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。
【
図2】組成物の合計質量に対して異なる量の異なる型のカラギーナンを含む組成物の力学的なスペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。
【
図3】組成物の合計質量に対して異なる量の異なる型のカラギーナンを含む組成物の力学的なスペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。
【
図4】組成物の合計質量に対して異なる量の異なる型のカラギーナンを含む組成物の力学的なスペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。
【
図5】組成物の合計質量に対して異なる量の異なる型のカラギーナンを含む組成物の力学的なスペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。
【
図6】粘度に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するマルトデキストリンの量および性質の関数として描く。
【
図7】降伏応力に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するマルトデキストリンの量および性質の関数として描く。
【
図8】粘度に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するカルシウムの量および性質の関数として描く。
【
図9】降伏応力に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するカルシウムの量および性質の関数として描く。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1−3は、組成物の合計質量に対して2質量%の量の様々な型のカラギーナンを含む組成物の力学的スペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。これらの図は、周波数に対する貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の間の違いを様々な組成物について説明する。
【0041】
図1はカッパ‐カラギーナンを含む組成物に関する。貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”より大きいことは明らかである。G’およびG”の間の違いは、周波数に対して安定ではなく、それは、組成物が非常に脆いことを意味する。
【0042】
図2はラムダ−カラギーナンを含む組成物に関する。貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の間に注目すべき違いがないことは明らかである。この組成物はゼリー化しないので、これは予想される結果である。
【0043】
図3はイオタ−カラギーナンを含む組成物に関する。貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”よりはるかに大きいことは明らかである。2つの弾性率(G’およびG”)の間の違いは、周波数の全範囲において安定したままであり、これは、安定な弾性成分を有する組成物の形成があることを意味する。
【0044】
図4は、組成物の合計質量に対して0.7質量%の量のイオタ−カラギーナンを含む組成物の力学的スペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。これは、より高い周波数でさえ安定なゼリー化条件を示す。
【0045】
図5は、どちらも組成物の合計質量に対して0.5質量%の量のイオタ−カラギーナンに加えて、0.2質量%の量のセルロースを含む組成物の力学的スペクトル(変形の周波数に対するG’およびG”の値)を描く。より高い周波数でゼリー化条件はないことを示す。
【0046】
図4および5によると、相対質量で0.7%の量のイオタ−カラギーナンを含む組成物は、0.6から0.17に変化するタンジェントデルタを有し、これは、それによりすべての周波数でゼリー化構造を与える。相対質量で0.5%の量のイオタ−カラギーナン、および相対質量で0.2%の量のセルロースを含む組成物について、平均タンジェントデルタは、1.12から0.25に変化し、これは組成物がより高い周波数でゼリー化しない構造を与えることを意味する。相対質量で0.7%の量のイオタ−カラギーナンを含む組成物にセルロースを添加しても、より高い周波数でゼリー化構造を保証しない。
【0047】
図6および7は、それぞれ粘度および降伏応力に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するマルトデキストリンの量および性質の関数として描く。
【0048】
試験する組成物の降伏応力は、制御された応力レオメーター、この事例においては、Brookfield DX3TRVTレオメーターの使用によって行った。この型の機器は、流動が始まるまで、試料に力の量を徐々に増すように制御された応力傾斜を利用する。この比較のために、可変項は組成物中のマルトデキストリンの量であった。組成物は以下を含んでいた:
−水:残部
−イオタ−カラギーナン:0.800%
−アスパルテーム:0.055%
−クエン酸:0.070%
−マルトデキストリン:0.00から2.00%
−ソルビン酸カリウム:0.800%
−塩化カルシウム:0.005%
測定結果は次の通りである:
【表1】
図6は、組成物の粘度を組成物中のマルトデキストリンの百分率(質量)の関数として示す。粘度は、最適な1.5%あたりに明瞭な構成を有することがわかる。試験組成物の降伏応力の測定は、組成物中のマルトデキストリンの量との驚くべき関係を示す。
図7は、降伏応力が、マルトデキストリンの量の増加とともに増加し、およそ1.3−1.8%の範囲に最適値を有することを示す。著しく異なる対照として、次に、およそ1.14質量%と算定される量のマルトデキストリンを含む唾液分泌ミックス(Firmenich)を含むD1の組成物は、5Paの降伏応力を有する。
【0049】
D1による組成物の降伏応力と比較して本発明による組成物の降伏応力のほぼ8倍の増加の可能な説明は、以下の通りである。唾液分泌ミックス(Firmenich)は5つの成分:2種の色付け剤、クエン酸、マルトデキストリンおよび修飾澱粉を含む。
図6−7に示すように、カラギーナンを含むがマルトデキストリンは含まない組成物は、特定量のマルトデキストリンを含む組成物より降伏応力が低い。
【0050】
図8−9は、それぞれ粘度および降伏応力に関する本発明による幾つかの組成物の比較試験の結果を、組成物中に存在するカルシウムの量および性質の関数として描く。塩化カルシウムが、組成物の降伏応力に、あるとしても、どんな影響を及ぼすかは今まで知られていなかった。マルトデキストリンの量を1.5質量%の最適値(
図6および7に示す結果に基づいて)で保持し、塩化カルシウムの量を0.0質量%から2.0質量%の間で変化させることによって一連の組成物を試験した。組成物は以下を含んでいた:
−水:残部
−イオタ−カラギーナン:0.800%
−アスパルテーム:0.055%
−クエン酸:pHを4.8−5.8に保持するのに十分な量、実際には約0.05−0.1%
−マルトデキストリン:1.50%
−ソルビン酸カリウム:0.800%
−塩化カルシウム:0.0−2.0%
測定結果は次の通りである:
【表2】
粘度および降伏応力の両方に関して最適値は、塩化カルシウムの0.0−0.4質量%の範囲と示される。最も好ましくは、組成物中に含まれる塩化カルシウムの量は、組成物の合計質量に対して0.01質量%である。結果を
図8−9に描く。
【0051】
約0.3質量%の塩化カルシウムを含む組成物が比較的低粘度であることの可能な説明は、クエン酸カルシウムの形成であり得るが、カラギーナン分子間に働く静電気力またはイオン力を用いたマトリックス形成に対して十分な遊離カルシウムイオンが存在しないことである。クエン酸を添加すると、第1の事例において、クエン酸カリウムが形成され、カリウムがすべて結合するまで、カルシウムはイオタ−カラギーナンの硫酸塩基に結合するという上で述べた説明に言及される。事実は依然その通りであり、試験した実施形態によると塩化カルシウムを添加すると、粘度は少なくとも12,000mPa.s@20℃のレベルであり、先行技術D1による組成物の降伏応力(5Pa@20℃)と比較して、上記のようにおよそ8倍の驚くべき組成物の降伏応力(約40Pa以上@20℃)の増加を有する。
【0052】
カルシウム封鎖剤としての塩化カルシウムの代替は、とりわけ炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムである。本発明による組成物への炭酸カルシウムの添加はpHを高め、そのため、当業者は、pHを4.8−5.8の望ましい値に下げるためにクエン酸の添加を企図するであろう。代替カルシウム封鎖剤はすべて、当然、固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段としての組成物の使用に関する保健条例との適合性から免れず、そういうものとして、当業者によって作業場での修正を必要とし得る。
【0053】
本発明の一態様によると、組成物の流動性および粘性の間で適切な釣り合いが必要である。経口薬剤を摂取する人の喉部においては、組成物は容易に流動しても、あまり容易に人の気管に流れ込んではならないと考えられる。したがって、組成物を注ぐ場合、糸のように動作の継続をすぐに止められるように、組成物は短すぎず長すぎない適切な舌触りを有することが望ましい。さらに、組成物が口蓋に粘着すると嚥下の繰り返しを誘発することを考慮すると、組成物は、好ましくは非粘着性、そうでなければわずかに粘着性の口当たりを有することが望ましい。当然のことながら、口当たりはわずかしか粘着性があってはならないが、第1の嚥下後に繰り返す強い嚥下が不快感を引き起こす場合があり、ある種の状況においては嚥下困難な患者に危険でさえある場合がある。
【0054】
固形の経口薬剤の摂取を楽にする補助手段として本発明による組成物を製造し使用するうちに、イオタ−カラギーナンは、強すぎる粘着特性を示さない安定な粘性のある網目を提供すること、および経時的に最も長期の保管安定性を提供することがわかった。本文脈における安定性とは、組成物が相分離(例えば凝集、離液または沈殿)を示さないことを意味する。本発明による組成物中の澱粉の欠如は、澱粉が、嚥下困難患者の唾液からのアミラーゼによる分解に対し組成物を高感度にし、それにより組成物の安定性(粘度の)を低下させることを考慮すると、重要な特徴である。
【0055】
本発明の別の態様によると、組成物の貯蔵中の相分離、すなわち層の形成および粘性の変化は望ましくない。起こり得る問題は、結果として塩の沈殿を起こすカルシウム−酸複合体の形成があり得る。そのような問題を回避するには、pHを調節するために、また組成物中のCaイオン活動度を調節するために、カルシウム封鎖剤、例えば塩化カルシウムまたはクエン酸の塩が組成物中に含まれる。特定量のCaイオン活動度は、製造およびその後の使用中に組成物の所望の粘性を維持するために有益である。Caイオンの存在は、組成物中のポリマーがCaイオンのまわりに自己再配置するのを助ける。Caイオンは、また組成物中のカラギーナン分子のより良好な配向を可能にする。好ましくは、Caイオン活動度は、10ppmから100ppmの間、より好ましくは20ppmから80ppmの間にある。不溶性カルシウム塩の形成および沈殿を時間内に防止するためには、しかし、カルシウム封鎖剤は注意して投薬されるべきである。一般には、
図9に示す結果によって証明されるように少ないほどよい。塩化カルシウムがカルシウム封鎖剤である場合、組成物中のその好ましい量は、組成物の合計質量の0.005質量%である。
【0056】
本発明の組成物の相分離の回避に可能な代替溶液は、陰イオン(水)可溶性繊維の使用にある。陰イオン(水)可溶性繊維はカルシウムと結合し、それにより組成物のpHの最適化の助けをすることができ、組成物の粘度を増す助けをすることができる。したがって、陰イオン(水)可溶性繊維の例は当業者によく知られている。
【0057】
先行技術D1による組成物の実施形態によると、組成物は、組成物の合計質量に対して80−99質量%、好ましくは84−97質量%の量の水を含む。水の量を選べば、イオタ−カラギーナンの性質および量、および場合によって追加のゼリー化剤の量と組み合わせて、組成物の粘度の調節が可能になる。本発明による組成物は、Anton PaarからのPhysica MC1レオメーターで測定(1分20rpm22℃で測定)して500−4,500mPa・s、好ましくは700−2,000mPa・sの粘度を有する。異なる温度で異なる型のレオメーター(Brookfield DX3TRVT)を使用して、段落[0048]および[0050]に述べた実施形態の粘度の測定を行ったことが指摘される。本発明による組成物の実施形態に関して、粘度に対する目標値は、Brookfieldレオメーター(20rpmで1分、スピンドル4)を使用して測定して20℃でおよそ6,000−10,000mPa.s、好ましくはより高い。
【0058】
本発明のさらなる実施形態によると、本組成物は保存剤を含む。適切な保存剤の例は、ソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウムである。好ましくは、保存剤はソルビン酸カリウムであり、組成物の合計質量に対して0.2−1.0質量%の量で含まれ、より好ましくは0.4−0.8質量%の量、さらにより好ましくは0.6−0.8質量%の量で含まれる。
【0059】
さらなる実施形態によると、本組成物は、好ましくはオレンジ、レモン、ライム、赤色果物(例えばチェリーおよびイチゴ)またはミント風味の代わりの香味剤を含む。香味剤は、組成物の合計質量に対して0.05−0.20質量%の量、好ましくは0.07−0.10質量%の量で含まれる。
【0060】
さらなる実施形態によると、組成物は、蔗糖、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、イヌリンおよびその誘導体の群から選ばれる甘味剤を含む。例えば、甘味剤が蔗糖である場合、それは、組成物の合計質量に対して15−20質量%、好ましくは12−13質量%の量で組成物中に含まれるべきである。甘味剤がアスパルテームである場合、それは、組成物の合計質量に対して0.03−0.06質量%の量で組成物中に含まれるべきである。
【0061】
特定の一実施形態によると、本発明による組成物は以下のものを含む(量はすべて組成物の合計質量に対する質量%):
−イオタ−カラギーナン 0.5−2%、好ましくは0.7−1.0%
−クエン酸 0.05−0.10%、好ましくは0.05−0.08%
−マルトデキストリン 1.0−2.0%、好ましくは1.3−1.8%
−ソルビン酸カリウム 0.4−0.8%、好ましくは0.6−0.8%
−蔗糖 15−20%、好ましくは12−13%
−香味剤 0.05−0.20%、好ましくは0.07−0.10%
−水 およそ80−90%、例えば85%
【0062】
別の実施形態によると、本発明による組成物は以下を含む。(量はすべて組成物の合計質量に対する質量%):
−イオタ−カラギーナン 0.5−2.0%、好ましくは0.7−1.0%
−クエン酸 0.05−0.10%、好ましくは0.05−0.08%
−マルトデキストリン 1.0−2.0%、好ましくは1.3−1.8%
−ソルビン酸カリウム 0.4−0.8%、好ましくは0.6から0.8%
−アスパルテーム 0.03−0.06%
−香味剤 0.05−0.20%、好ましくは0.07−0.10%
−水 およそ95−99%、例えば98%
【0063】
別の実施形態によると、本発明による組成物は、1種または複数のヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、スピラントール、ジャンブ含油樹脂および寒天の欠如を特徴とする。
【0064】
別の実施形態によると、本発明による組成物は、1種または複数のイナゴマメ、カルボキシメチルセルロースおよびキサンタンガムの欠如を特徴とする。
【0066】
本発明による組成物は、60℃付近の温度でイオタ−カラギーナンを水に溶解することにより、簡単な方法で調製することができる。組成物中に含まれる他の成分は、組成物の形成中にまだ高温であるとき、または組成物が室温であるときに加えることができるが、これは組成物中のそのような成分の耐熱性、および溶解可能性に依存する。
【0067】
組成物の製造の非制限的な例は以下に与えられる。製造ステップはおよそ以下の通りである:ビーカーに水およびソルビン酸カリウムを秤量し、次いで、磁気撹拌機で撹拌しながら60℃に加熱する。着色剤を必要とする場合、この段階で加えるべきである。次に、ビーカーにゼリー化剤を秤量する。水がその温度になり、ソルビン酸カリウムが完全に溶解したら、タービン中にビーカーを入れて、700rpmで揺動し始める。次いで、ビーカーの内容にゼリー化剤を加えて、揺動を1,500rpmの速度に上げる。20分間揺動を続ける。組成物が室温に戻ったら、マルトデキストリン、クエン酸およびカルシウム封鎖剤を秤量し、ビーカーの内容にこれらを加える。内容を揺動し続け、所望の香味剤を加える。
【0068】
本発明は、このように、組成物であって、具体的には、その使用が固形の経口薬剤の摂取を楽にすることであるゼリー、およびそう明示された目的の補助手段としてのそのような組成物の使用を提供する。本発明は、一態様において、組成物であって、具体的には、その組成物の補助手段としての使用が、固形の経口薬剤の摂取を楽にするゼリーであり、その組成物は、ゼリー化剤としてイオタ−カラギーナンおよび唾液分泌剤としてクエン酸を含み、組成物が1.3%−1.8%のマルトデキストリンをさらに含むという点を特徴とする。別の態様において、本組成物は、組成物のCaイオン活動度の調節のためにカルシウム封鎖剤を含む。一実施形態において、本組成物は、すべて組成物の合計質量に対して0.7−1.0質量%のイオタ−カラギーナン、0.06質量%のクエン酸、1.5質量%のマルトデキストリン、および組成物のCaイオン活動度が20ppmから80ppmの間になるような量のカルシウム封鎖剤を含む。