【課題】 特にガラス基材等の基材に対する密着性に優れ、しかも、十分な硬度を有し、傷つきにくい印刷層を形成できる活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、0〜150℃のガラス転移温度を有する脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と、−100〜0℃のガラス転移温度を有する水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)と、(メタ)アクリル当量が100〜250である3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、全量に対して、15質量%超〜30質量%以下であることを特徴とするものである。
0〜150℃のガラス転移温度を有する脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と、−100〜0℃のガラス転移温度を有する水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)と、(メタ)アクリル当量が100〜250である3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、全量に対して、15質量%超〜30質量%以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
前記脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と前記水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)の含有比率が、99/1〜75/25(質量比)であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
前記脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)のガラス転移温度が、30〜80℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
シランカップリング剤(E)を2.5質量%以下の範囲で含むか、または、シランカップリング剤を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、0〜150℃のガラス転移温度を有する脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と、−100〜0℃のガラス転移温度を有する水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)と、(メタ)アクリル当量が100〜250である3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)と、光重合開始剤(D)とを含み、多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、インク組成物の全量に対して、15質量%超〜30質量%以下であるものである。
【0013】
本発明において、脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)及び水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)のガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で重合、測定した各々の(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度を指す。
−ガラス転移温度(Tg)測定法−
単官能(メタ)アクリレートモノマーの重合は、一般的な溶液重合法により行う。10質量%の単官能(メタ)アクリレートモノマーのトルエン溶液に、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル5質量%を加え、60℃で6時間攪拌して、ポリマーを合成して、単離する。得られたポリマーのガラス転移温度を、Seiko Instruments社製DSC120Uを用い、JIS K7121に準拠した方法で求める。
【0014】
本発明において用いる脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)は、アクリレート基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリレート基(CH
2=CCH
3COO−)を1分子中に1個有する脂環式化合物であり、0〜150℃のガラス転移温度(Tg)を有するものである。脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)のガラス転移温度は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。また、脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)のガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがより好ましい。脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)のガラス転移温度が上記の範囲内であると、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性がより優れることがある。
【0015】
脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシルアクリレート(Tg:15℃)、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:45℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(Tg:18℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:66℃)等が挙げられる。中でも、ガラス基材等に対する密着性の点から、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレートが好ましい。
【0016】
脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において用いる水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)は、アクリレート基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリレート基(CH
2=CCH
3COO−)を1分子中に1個有し、水酸基(−OH)を1分子中に1個以上、好ましくは1〜2個有する化合物であり、−100〜0℃のガラス転移温度(Tg)を有するものである。水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)のガラス転移温度は、−100℃以上であることが好ましい。また、水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)のガラス転移温度は、0℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることがより好ましい。水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)のガラス転移温度が上記の範囲内であると、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性がより優れることがある。
【0018】
水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート(Tg:−15℃)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:−32℃)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(Tg:−7℃)等が挙げられる。また、水酸基を含有する、低粘度(例えば25℃での粘度が250mPa・s以下)のモノアクリレートオリゴマーまたはモノメタクリレートオリゴマーも用いることができる。
【0019】
水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)の含有比率は、特に限定されるものではないが、99/1〜75/25(質量比)であることが好ましく、95/5〜80/20(質量比)であることがより好ましい。脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)の含有比率が上記の範囲内であると、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性や、その他の特性がより優れることがある。
【0021】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)との合計含有量は、特に限定されるものではないが、通常、インク組成物の全質量に対して60〜90質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明において用いる3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)は、アクリレート基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリレート基(CH
2=CCH
3COO−)を1分子中に3個以上、好ましくは3〜16個有し、(メタ)アクリル当量が100〜250である化合物である。多官能(メタ)アクリレート(C)の(メタ)アクリル当量が100未満では、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性が低下する。一方、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度を低く保ち、良好な吐出安定性を得ることができる点から、また、得られる膜(インクジェット印刷層)の硬度の点から、多官能(メタ)アクリレート(C)の(メタ)アクリル当量は250以下であり、通常、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。また、ある実施態様においては、多官能(メタ)アクリレート(C)は、得られる膜(インクジェット印刷層)の硬度の点から、4官能以上、すなわち(メタ)アクリレート基を1分子中に4個以上有することが好ましいことがある。
【0023】
多官能(メタ)アクリレート(C)としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。また、低粘度(例えば25℃での粘度が500mPa・s以下)の3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー[エステル結合(−COO−)を含有するアクリレートオリゴマー]またはポリエステルメタクリレートオリゴマー[エステル結合(−COO−)を含有するメタクリレートオリゴマー]や、その他のアクリレートオリゴマーまたはメタクリレートオリゴマー等も用いることができる。中でも、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートが好ましい。
【0024】
多官能(メタ)アクリレート(C)としては、特に限定されるものではないが、特にオリゴマーの場合、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましく、400〜2000であることがより好ましい。なお、ここで、重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0025】
多官能(メタ)アクリレート(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、15質量%超〜30質量%以下であり、17質量%〜25質量%であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、インク組成物の全質量に対して、15質量%以下では、得られる膜(インクジェット印刷層)の硬度を高める効果が十分には得られない。また、多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、インク組成物の全質量に対して、30質量%を超えると、インク組成物の粘度を低く保つことが難しくなり、吐出安定性が低下してくることがある。また、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性が低下してくることがある。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の重合性モノマーをさらに含むこともできる。その含有量は、通常、インク組成物の全質量に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、少なくとも1種の光重合開始剤(D)をさらに含む。光重合開始剤(D)は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって、上記の重合性モノマー及びオリゴマーの重合を開始させる作用を有するものである。
【0029】
本発明において用いる光重合開始剤(D)としては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物など、一般的に用いられている、公知のものいずれも用いることができる。
【0030】
光重合開始剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、光重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量中、1〜25質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が1質量%未満であると、印刷層が硬化不良となることがあり、光重合開始剤(D)の含有量が25質量%を超えると、低温時に析出物が発生して、インクの吐出が不安定になることがある。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、必要に応じて、光安定剤や、重合禁止剤等をさらに含むこともできる。
【0034】
光安定剤は、紫外線を吸収し、紫外線による劣化を防止する作用を有するものであり、特に限定されず、例えば、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンジリデンカンファー系化合物、無機微粒子など、一般的に用いられている、公知のものいずれも用いることができる。光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
重合禁止剤は、光重合開始剤により発生する活性ラジカルと反応し、重合反応が起こることを防止する機能を有するものであり、特に限定されず、例えば、ハイドロキノン系化合物、フェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ニトロソ系化合物、N−オキシル系化合物など、一般的に用いられている、公知のものいずれも用いることができる。重合禁止剤も、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤(E)をさらに含むことができる。
【0037】
シランカップリング剤(E)としては、特に限定されず、公知のものいずれも用いることができ、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤(E)としては、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が好ましい。
【0038】
シランカップリング剤(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物がシランカップリング剤(E)を含む場合、シランカップリング剤(E)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、2.5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。インク組成物がシランカップリング剤(E)を含むことで、得られる膜(インクジェット印刷層)のガラス基材等に対する密着性が向上することがあるが、シランカップリング剤(E)の含有量が2.5質量%を超えると、得られる膜(インクジェット印刷層)の硬度が低下して、十分な硬度を維持できなくなる。ある実施態様においては、シランカップリング剤(E)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上であることが好ましいことがある。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、必要に応じて、色材(F)をさらに含むことができる。
【0041】
色材(F)としては、特に限定されず、公知の顔料や染料等のいずれも用いることができる。耐候性の点からは、色材(F)は、顔料であることが好ましい。
【0042】
用いる顔料は、無機顔料であっても、有機顔料であってもよい。顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化チタン、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられる。
【0043】
色材(F)(顔料や染料等)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、色材(F)の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、インク組成物の全質量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
色材(F)として顔料を用いる場合、吐出安定性の点から、顔料粒子は、通常、体積平均粒子径が0.05〜0.4μmであり、且つ、体積最大粒子径が0.2〜1μmであることが好ましい。なお、体積平均粒子径、及び体積最大粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器によって測定できる。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、必要に応じて、顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに含むことができる。
【0047】
顔料分散剤としては、特に限定されず、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等の極性基を側鎖に有するポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等の高分子分散剤など、一般的に用いられている、公知の分散剤いずれも用いることができる。
【0048】
顔料分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
顔料分散剤を用いる場合、顔料分散剤の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、インク組成物の全質量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、必要に応じて、その他のインク組成物に通常用いられている各種添加剤、例えば、酸化防止剤、表面調整剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、非反応性ポリマー、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体等を含むことができる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、公知の方法により調製することができ、例えば、脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、光重合開始剤(D)、及び、必要に応じて添加されるシランカップリング剤(E)、色材(F)、その他の各種添加剤を混合し、必要に応じて、フィルター、例えば、使用するインクジェットプリントヘッドのノズル径の約1/10以下のポアサイズを持つフィルターを用い、得られた混合物を濾過することによって、調製することができる。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、特に限定されないが、通常、その40℃における粘度が、5〜25mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましい。インク組成物の40℃における粘度が上記の範囲内であれば、良好な吐出安定性が得られる。なお、インク組成物の粘度は、レオメーターを用いて測定することができる。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、特に限定されないが、通常、その25℃における表面張力が20〜35mN/mであることが好ましい。インク組成物の25℃における表面張力が上記の範囲内であれば、良好な吐出安定性が得られる。なお、インク組成物の表面張力は、プレート法により測定することができる。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用いて印刷物を製造するには、例えば、インクジェットプリンタによって、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材表面に吐出させ、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって、これを硬化させて、印刷層を形成する。
【0055】
印刷手段であるインクジェットプリンタとしては、種々のインクジェットプリンタを使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式またはピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、大型インクジェットプリンタ、例えば、工業ラインで生産される物品への印刷を目的としたインクジェットプリンタにも好適に適用できる。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、インクジェットプリンタによる印刷後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、硬化させることによって、印刷層を形成することができる。インク組成物を硬化させるために照射する活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤(D)の吸収波長と重複していることが好ましく、用いる光重合開始剤(D)に応じて適宜選択することができる。ある実施態様においては、照射する活性エネルギー線の主波長が、360〜425nmであることが好ましい。
【0057】
上記のように、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、ガラス基材への印刷に特に好適に用いることができるが、その他の種々の基材への印刷にも好適に用いることができる。本発明において好適に用いることができる基材の材質としては、ガラスの他に、例えば、陶器や磁器、琺瑯、タイル、陶板、陶器瓦、セラミックス等が挙げられる。基材の形状としては、例えば、板状等が挙げられるが、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択される。また、基材は、所望により、表面に下塗り塗料が塗布されたものであってもよい。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、画像形成用インク(着色インク)として用いることもできるし、プライマーインクとして用いることもできる。プライマーインクとして用いる場合には、基材上に形成された、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の硬化膜(印刷層)の上に、さらに、活性エネルギー線硬化型着色インク(画像形成用インク)を用いて印刷層(加飾層)が形成される。本発明の一態様によれば、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、ガラス等の基材に対する密着性に優れることに加えて、加飾層を形成するために用いる活性エネルギー線硬化型着色インクに対する付着性にも優れる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例及び比較例において、測定・評価は次の方法で行った。
【0061】
<粘度の測定>
調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の40℃における粘度を、アントンパール社製レオメーターMCR−301を用いて測定した。
【0062】
<吐出安定性の評価>
調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用い、インクジェットプリンタによって、ガラス基材(日本テストパネル社製、フロート板ガラス)上に画像を印刷し、その吐出安定性を目視で観察して、以下の基準に従って評価した。
○:ノズル詰まりを起こすことなく、画像を所定の位置に印刷することができる。
△:ノズル詰まりは発生しないが、わずかに飛行曲りが発生する。
×:ノズル詰まりが発生して、画像に抜けが生じ、更には、インクを所定の位置に付着できず、綺麗な画像を印刷することができない。
【0063】
<ガラス基材に対する密着性の評価>
調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用い、インクジェットプリンタによって、ガラス基材(日本テストパネル社製、フロート板ガラス)上に画像を印刷し、その後、紫外線LEDランプを用いて主波長380〜390nmの活性エネルギー線を照射することで画像(基材上のインク組成物)を硬化し、印刷層(厚さ:約8μm)を形成した。そして、印刷層に1mm幅100マスのクロスカットを施し、セロハンテープを十分に接着させた後に剥離して、以下の基準に従って、ガラス基材に対する密着性を評価した。
◎:カット部に剥離が確認されない。
○:カット部に10%未満の剥離が確認できる。
△:カット部に10%以上で且つ25%以下の剥離が確認できる。
×:カット部全面(100%)に剥離が確認できる。
【0064】
<耐擦り傷性の評価>
調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を用い、ガラス基材に対する密着性の評価と同様にして、ガラス基材上に印刷層(厚さ:約8μm)を形成した。そして、耐擦り傷性の試験として、スチールウールNo.0000を用いて、250g/cm
2の加重で印刷層の表面を10往復し、傷の有無を目視で観察して、以下の基準に従って評価した。
○:傷なし。
△:5本以内の傷が確認できる。
×:全面に傷が確認できる。
【0065】
<実施例1>
t−ブチルシクロヘキシルアクリレート(Tg:45℃)64.35質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(Tg:−32℃)6.60質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(アクリル当量:116.5)20.00質量部、アシルホスフィン系光重合開始剤(IGM RESINS社製Omnirad TPO)8.00質量部、シリコン系表面調整剤(BYK社製BYK−UV3500)0.05質量部、及びシランカップリング剤の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM403)1.00質量部を混合し、これをビーズミルで練合して均質にし、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を調製した。
【0066】
次いで、上記の方法により、調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度の測定、吐出安定性の評価、印刷層のガラス基材に対する密着性の評価、耐擦り傷性の評価を行った。その結果を表1に示す。成分(A)のt−ブチルシクロヘキシルアクリレート及び成分(B)の4−ヒドロキシブチルアクリレートのガラス転移温度(Tg)、成分(C)のジトリメチロールプロパンテトラアクリレートのアクリル当量も併せて表1に示す。
【0067】
<実施例2〜32、比較例1〜4>
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の種類を表1〜表4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を調製した。なお、表1〜表5中の数値は質量部であり、表中の略称は次のとおりである。
CN2303:サートマー・ジャパン社製CN2303(ポリエステルアクリレートオリゴマー、官能基数:16、アクリル当量:122)
EBECRYL4666:ダイセルオルネクス社製EBECRYL4666(ウレタンアクリレートオリゴマー、官能基数:4、アクリル当量:275)
EBECRYL4501:ダイセルオルネクス社製EBECRYL4501(ウレタンアクリレートオリゴマー、官能基数:4、アクリル当量:500)
Omnirad TPO:IGM RESINS社製Omnirad TPO(アシルホスフィン系光重合開始剤)
シアン顔料 C.I.ピグメントブルー15:4 :BASF社製Heliogen Blue L7080(フタロシアニンブルー)
カーボンブラック MA100:三菱化学社製カーボンブラック MA100
Disperbyk−168:ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk−168(顔料・湿潤分散剤)
BYK−UV3500:BYK社製BYK−UV3500(シリコン系表面調整剤)
また、成分(B)の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトンは、ダイセル社製プラクセルFA2Dである。
【0068】
次いで、上記の方法により、調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度の測定、吐出安定性の評価、印刷層のガラス基材に対する密着性の評価、耐擦り傷性の評価を行った。その結果を表1〜表5に示す。成分(A)及び成分(B)のガラス転移温度(Tg)、成分(C)のアクリル当量も併せて表1〜表5に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
表1〜表5から明らかなように、0〜150℃のガラス転移温度を有する脂環式単官能(メタ)アクリレート(A)と、−100〜0℃のガラス転移温度を有する水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(B)と、(メタ)アクリル当量が100〜250である3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)とを用いることにより、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の粘度を低く保ち、良好な吐出安定性を維持しながら、ガラス基材に対する密着性に優れ、しかも、十分な硬度を有し、傷つきにくい膜(インクジェット印刷層)を形成することができる。