【解決手段】塩素化ポリオレフィン(A)と、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)、及び塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)からなる群から選ばれる何れか1つ以上と、ロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)、及び有機溶剤(D)とを含有するラミネート用印刷インキであって、前記ロジン(C1)及びロジン誘導体(C2)の酸価が200mgKOH/g以上である事を特徴とするラミネート用印刷インキ。
塩素化ポリオレフィン(A)と、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)、及び塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)からなる群から選ばれる何れか1つ以上と、ロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)、及び有機溶剤(D)とを含有するラミネート用印刷インキであって、
前記ロジン(C1)及びロジン誘導体(C2)の酸価が200mgKOH/g以上であることを特徴とするラミネート用印刷インキ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について詳細に説明する。なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「ラミネート用印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を、「%」は全て「質量%」を示す。
【0013】
本発明のラミネート用印刷インキは、塩素化ポリオレフィン(A)と、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)、及び塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)からなる群から選ばれる何れか1つ以上と、ロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)、及び有機溶剤(D)とを含有するラミネート用印刷インキであって、前記ロジン(C1)及びロジン誘導体(C2)の酸価が200mgKOH/g以上である事を特徴とする。
【0014】
本発明のラミネート用印刷インキで使用する塩素化ポリオレフィン(A)について説明する。前記塩素化ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィンに塩素原子を導入し得られるが、前記ポリオレフィンとしては、特に制限はなく例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン系不飽和炭化水素の共重合体、又は単独重合体からなる樹脂を使用する事ができる。前記共重合体としては、プロピレン−α−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、ポリエチレン、ポリ−4−メチル−1ペンテン等が一例として挙げる事ができる。
【0015】
前記塩素化ポリオレフィン(A)の製造方法としては、四塩化炭素等の有機溶剤にポリオレフィンを溶解して塩素化する溶液塩素化法、ポリオレフィンを水性懸濁状態で塩素化する方法、ポリオレフィンを塊状状態で塩素化する方法等、いずれであってもよい。
また、塩素化ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィンに、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と塩素が導入された酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂としていても良い。
更に、前記酸変性塩素化ポリオレフィンの製造方法としては例えば、ポリオレフィンをα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体にて酸変性して酸変性ポリオレフィンを得た後に、クロロホルム等の塩素系溶媒に溶解した後に塩素ガスを吹き込み、酸変性ポリオレフィンに塩素を導入してもよい。
【0016】
前記α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等を挙げる事が出来る。
【0017】
本発明のラミネート用印刷インキで使用する前記塩素化ポリオレフィン(A)は、塩素含有率が5〜50質量%の塩素化ポリオレフィンが好ましく用いられる。
前記塩素化ポリオレフィン(A)として代表的なものとして、塩素化ポリプロピレン樹脂を挙げる事ができる。前記塩素化ポリプロピレン樹脂としては塩素化度が30〜45%、重量平均分子量が5000〜50000であることが好ましい。
前記塩素化度とは、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%である。塩素化度が30%未満では有機溶剤に対する溶解度が低下する傾向にあり、45%を越えるとフィルム基材との密着性が低下する傾向が生じ易い。また重量平均分子量が5000未満ではフィルム基材への密着性の効果が得られにくく、また50000を越えると溶解性、特にエステル系溶剤、アルコール系溶剤への溶解性が低下する傾向が生じ易い。
【0018】
本発明のラミネート用印刷インキではエチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)、塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)からなる群から選ばれる何れか1つ以上を使用する事ができる。
前記エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)は、エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位とを特定量で含有する樹脂である。
前記エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)としては、酢酸ビニルの含有量が共重合体全体の20質量%以上50質量%以下のものが好ましい。酢酸ビニルの含有量が20質量%以上であれば、インキ皮膜の密着性、転移性を保持する傾向にあり、逆に、酢酸ビニルの含有量が50質量%以下であればインキのラミネート強度を保持する事ができる。
更に、酢酸ビニルの含有量が共重合体全体の30質量%以上40質量%以下であればより好ましい。
尚、酢酸ビニルから誘導される構成単位含有量は、JIS K7192:1999が規定する測定法に準じたものである。
【0019】
本発明で使用する塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)はさらに前記エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)に塩素原子が導入する事で塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)を得る事ができるものである。
【0020】
本発明のラミネート用印刷インキにおいては、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)、塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)の何れかを含有していればよく、またこれら2種、3種を併用してもよい。
特に本発明のラミネート用印刷インキにメチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤を使用する場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)および塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)を併用すると、版詰まり性、ラミネート強度、接着性の観点からさらに好ましい。エチレン酢酸ビニル共重合体と塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体との比率は、固形分重量比で10/90〜40/60であるとより好ましい。
【0021】
本発明のラミネート用印刷インキには、版詰まりに見られるインキ転移性の向上目的にロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)を含有する事を必須とする。
前記ロジン(C1)としては、ロジン、水添ロジン、酸変性ロジン、エステルロジンが挙げられる。
前記ロジンとしては、アビエチン酸、レボピマール酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、或いはジヒドロアビエチン酸など樹脂酸を主成分とするトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどの未変性ロジンが挙げられる。
前記未変性ロジンを各々水素化したものが水添ロジンとして使用できる。
前記、酸変性ロジンとしては、ディールズ・アルダー付加反応によりロジンにフマル酸を付加したフマロピマール酸 マレイン酸を付加したマレオピマール酸等が挙げられる。
前記、酸変性ロジン中でも、特にマレイン酸ロジンが好ましい。
前記エステル化ロジンとしては、ロジンとグリセリンをエステル化反応させて得られるグリセリンエステルや、ペンタエリスリトールとエステル化して得られるペンタエリスリトールエステルを挙げる事ができる。
【0022】
前記ロジン誘導体(C2)としては、上記ロジン類に(無水)マレイン酸、フマル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させた不飽和カルボン酸変性ロジンなどが使用できる。多価アルコールとしては、2価以上のアルコール性水酸基を有するものであればいずれも使用可能であって、具体的には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールなどが例示できる。
【0023】
本発明のラミネート用印刷インキで使用する前記ロジン(C1)、及びロジン誘導体(C2)としては、酸価200mgKOH/g以上である事を必須とする。
一般的に、ラミネート用印刷インキの着色原料として併用される顔料は表面極性が高いが為に、本願発明のラミネート用印刷インキで用いるバインダーでは、顔料表面に吸着しにくい。そして顔料成分を増量して高濃度にすると流動性が悪化する傾向にある。結果として、印刷する際のインキ粘度まで希釈する際の溶剤量が増えてしまい、高濃度の印刷が困難となり易い。
高酸価ロジン及びその誘導体がもつ酸基は、顔料表面への濡れ性に優れ、高顔料濃度でも流動性のよいインキを作ることができる。特に、最近では、インキを高濃度化することで、使用するインキ量を減らし、排出する有機溶剤量を削減したい要求がある上、美しい絵柄を再現するために、高濃度インキは有効である。
従って、前記酸価が200mgKOH/g以上、上限は400mgKOH以下のロジン及び/又はロジン誘導体であれば、高い顔料分散性により低粘度のインキを得る事ができ、高濃度印刷も印刷可能となる。
【0024】
本発明のラミネート用印刷インキで使用するロジン(C1)及びロジン誘導体(C2)について説明する。前記ロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)の総計がインキ全量の0.1〜5質量%の範囲である事が好ましい。ロジン(C1)及び/又はロジン誘導体(C2)の総計を0.1質量%以上添加する事でインキ皮膜の密着性、転移性を保持する傾向にあり、総計を5質量%以下とする事でインキのラミネート強度を保持する事ができる。
また、ロジン(C1)、及びロジン誘導体(C2)の軟化点は、100〜170℃が好ましい。前記軟化点が100℃以上であれば、インキ塗膜が柔らかくなりブロッキング性が低下する傾向が抑制でき、軟化点が170℃以下であれば、溶剤に対する溶解性が低下する傾向を回避でき、インキの貯蔵安定性も保持される傾向となる。
【0025】
本発明のラミネート用印刷インキで使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
中でも塩素化ポリオレフィン(A)、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)への溶解性の観点から、メチルシクロヘキサン/シクロヘキサン/メチルエチルケトン/酢酸エチルの混合液、又はトルエン/シクロヘキサン/メチルエチルケトンがより好ましい。また、乾燥調整のためにインキ全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤を使用しない事がより好ましい。
更に、臭気の観点からメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤の使用が敬遠される事がある。この際には、溶解性、インキ安定性の観点からエチレン酢酸ビニル共重合体(B1)や塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)よりも塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)を用いることが好ましい。
塩素化度は、5〜40の範囲のものが好ましい。この範囲にあると、顔料の分散性、ノンメチルシクロヘキサン溶剤に対する溶解性が良好となる。ここで、本発明における塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)の塩素化度とは、エチレン酢酸ビニル共重合体中の塩素原子の質量%である。
【0027】
本発明のラミネート用印刷インキで使用する顔料としては、着色顔料、白色顔料いずれでもよい。白色顔料を添加すれば、例えば裏刷りグラビア印刷を例に挙げれば、絵柄の背景に相当する白インキとしても使用することができる。
【0028】
本発明のラミネート用印刷インキに使用される着色顔料としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
【0029】
カラーインデックス名としては、
C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、42、74、83;
C.I.Pigment Orange 16;
C.I.Pigment Red 5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、81、101;
C.I.Pigment Violet 19、23;
C.I.Pigment Blue 23、15:1、15:3、15:4、17:1、18、27、29
C.I.Pigment Green 7、36、58、59;
C.I.Pigment Black 7;
C.I.Pigment White 4、6、18などが挙げられる。
【0030】
藍インキにはC.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)、黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment Yellow83、紅インキにはC.I.Pigment Red 57:1を用いることが好ましい。墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0031】
また、本発明のラミネート用印刷インキに使用される白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、等があげられる。
尚、前記顔料の平均粒径は、10〜400nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜350nm程度のものである。
また前記着色顔料の添加量としては、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、インキ全量の1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0032】
本発明では更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0033】
本発明のラミネート用印刷インキに必要に応じて併用される樹脂の例としては、前記塩素化ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体ロジン以外の樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総質量に対して1〜25質量%が好ましく、更に好ましくは2〜15質量%である。
【0034】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα−オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(LUBRIZOL)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。
【0035】
本発明のラミネート用印刷インキは、各樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を各樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0036】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0037】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば各樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0038】
基材として利用可能なプラスチックフィルムとしては、ポリプロピレン(PP)が中心となり使用されているが、特に限定は無く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
また、フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させる事ができ好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
また、印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の版を使用する印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。
また、本発明のラミネート用印刷インキは、練肉配合のベースインキの時点で、25℃でその粘度が離合社製ザーンカップ#4にて5〜19秒であればよく、より好ましくは8〜18秒である。ミリパスカル秒で粘度を示すと、25℃にて50〜240(mPa・s)の範囲であればよく、より好ましくは80〜220(mPa・s)の範囲である。
前記連肉配合のベースインキを適宜混合溶剤を用い印刷用インキに希釈・調整した際の粘度は、25℃で離合社製ザーンカップ#3にて13〜18秒の範囲、60〜100(mPa・s)の範囲が好ましい。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0040】
(エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)の樹脂溶液の調整)
エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)の樹脂溶液として、三井・デュポン ポリケミカル社製エバフレックスEV40W;酢酸ビニルから誘導される構成単位含有量41%に酢酸エチル/メチルエチルケトン/メチルシクロヘキサン=20/20/40の質量比率で加え、固形分20%になる様に溶解した樹脂溶液(B1L)を作製した。
【0041】
(塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)の樹脂溶液の調整)
塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)の樹脂溶液として、沾州北方塑料化工社製CEVA B−3(塩素化度30〜40)に酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルエチルケトン=20/20/40の質量比率で加え、固形分20%になる様に溶解した樹脂溶液(B2L)を作製した。
【0042】
(塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(B3)溶液の調整)
塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体であるRaloflex MP−45(BASF社製)20部、酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサン=20/20/40で混合した混合溶剤80部を加えて十分攪拌し、固形分20%の塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体の樹脂溶液(B3L)を作製した。
【0043】
(混合溶剤Iの調整)
ベースインキの練肉と、練肉後のインキ作製で使用する混合溶剤Iとして、質量比率で酢酸ノルマルプロピル/メチルエチルケトン/メチルシクロヘキサン=25/25/50で混合した混合溶剤Iを作製した。
【0044】
〔調整例1:藍顔料分散体の作製〕
藍顔料Fastogen BlueFA5380(DIC社製)10部、エチレン酢酸ビニル共重合体(B1)の樹脂溶液(B1L)15部、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(B2)の樹脂溶液(B2L)10部、混合溶液Iを15部加えマイティーミル(株式会社井上製作所製)にて練肉し、藍顔料分散体を作製した。
【0045】
〔調整例2:ロジン溶液(R1)の作製〕
ロジン誘導体(C2)であるパインクリスタルKE−604(酸価230mgKOH/g、荒川化学工業株式会社製)50部とイソプロピアルコール50部を加え十分攪拌し、ロジン溶液(R1)を作製した。
【0046】
〔調整例3:ロジン溶液(R2)の作製〕
ロジン(C1)としてマレイン酸ロジンであるマルキード#33(酸価310mgKOH/g、荒川化学工業株式会社製)50部とイソプロピアルコール50部を加え十分攪拌し、ロジン溶液(R2)を作製した。
【0047】
〔調整例4:ロジン溶液(R3)の作製〕
ロジン(C1)としてマレイン酸ロジンであるマルキードN0.5(酸価25mgKOH/g以下、荒川化学工業株式会社製)50部とエチルアルコール50部を加え十分攪拌し、ロジン溶液(R3)を作製した。
【0048】
〔調整例5:ロジン溶液(R4)の作製〕
ロジン誘導体(C2)であるパインクリスタルKR−614(酸価175mgKOH/g、荒川化学工業株式会社製)50部とイソプロピルアルコール50部を加え十分攪拌し、ロジン溶液(R4)を作製した。
【0049】
〔実施例1〕
藍顔料分散体12部、ロジン溶液(R1)1部、エチレン酢酸ビニル共重合体の樹脂溶液(B1L)15部、塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体溶液(B3L)15部、混合溶剤Iを15部の計58部を加え攪拌し藍ベースインキを作製した。
続いて、前記藍ベースインキに、塩素化ポリオレフィン(A)としてスーパークロン360T(塩素化度31、固形分60%(酢酸エチル溶剤使用)、CAS No.68442−33−1、塩素化ポリプロピレン、日本製紙株式会社製)5部、塩化ビニルとイソブチルビニルエーテルの共重合体溶液(B3L)8部、混合溶剤Iを29部加え、合計100部を十分攪拌し、藍インキを作製した。
【0050】
〔実施例2〜8〕
実施例2〜8についても、表1、2に示す配合に基付き、実施例1と同様の手順にて藍インキを作製した。尚、実施例6、8については、塩素化ポリオレフィン(A)であるスーパークロンE(塩素化度29.5、固形分20%(トルエン使用)、CAS No.68442−33−1、塩素化ポリピロピレン、日本製紙株式会社製)8部を、混合溶剤Iの他にトルエンを所定量添加した。
【0051】
〔比較例1〜4〕
比較例1〜4についても、表2に示す配合に基付き、実施例1と同様の手順にて藍インキを作製した。
【0052】
作製した実施例1〜8、及び比較例1〜4の藍インキを使用し、下記の手順に従って評価試験を行った。
【0053】
〔評価項目1:インキ粘度の確認〕
表1〜2に記載の配合量に基付く25℃での藍インキの粘度(単位:秒数)をザーンカップ#4(離合社製)で確認した。
【0054】
〔評価項目2:溶剤希釈率の算出〕
酢酸エチルでザーンカップ#4(離合社製)で最終的に15秒(25℃)になる様に調整した時の溶剤希釈率を算出した。
希釈率が高い場合、印刷時のインキに含まれる溶剤量が増加する為印刷物の色濃度が低くなり、希釈率が低い場合は色濃度が高くなる。溶剤希釈率は50%以下である事が好ましい。
【0055】
〔評価項目3:フィルムへの密着性〕
表1〜2に記載の藍インキの粘度をメチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン/エタノール=40/40/20(実施例6及び8については、トルエン/メチルエチルケトン/エタノール=40/40/20)でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深22μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、二軸延伸ポリプロピレンフィルムV(以下、OPPフィルム、東洋紡績株式会社製 P2161 厚さ20μm)のコロナ処理面側に印刷し、作製した印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を次の5段階で目視判定した。
5:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
4:印刷皮膜の70%以上〜90%未満がフィルムに残った。
3:印刷皮膜の50%以上〜70%未満がフィルムに残った。
2:印刷皮膜の30%以上〜50%未満がフィルムに残った。
1:印刷皮膜が30%未満しか残らなかった。
【0056】
〔評価項目4:ラミネート適性〕
二軸延伸ポリプロピレンフィルムV(OPPフィルム、東洋紡績株式会社製 P2161 厚さ20μm)で作製した印刷物をポリプロピレン樹脂製シートと熱ラミネートを行い、島津製作所製オートグラフを用いて、そのラミネート強度を測定した。
サンプル幅は15mm、測定時剥離速度は300mm/minとし、ラミネート強度を測定した。
ラミネート強度、1.0N/15mm以上が実用範囲である。
【0057】
〔評価項目5:濃度〕
評価項目2の二軸延伸ポリプロピレンフィルムV(OPPフィルム、東洋紡績株式会社製 P2161 厚さ20μm)で作製した印刷物に下に白紙をひき、非印刷面よりX−rite分光濃度計(エックスライト社製)にて色濃度C値を測定し、下記5段階で判定した。色濃度C値2.00以上が実用範囲である。
5:色濃度C値が、2.17以上
4:色濃度C値が、2.15以上
3:色濃度C値が、2.00以上
2:色濃度C値が、1.90以上
1:色濃度C値が、1.9未満
【0058】
各藍インキの配合、及び評価結果を表1、2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
以上の結果から、本発明のラミネート印刷インキはフィルム基材との密着性、ラミネート適性を保持しつつ、最終的にザーンカップ#4(離合社製)にて15秒に粘度を調整した印刷インキにて十分な濃度を兼備する結果となった。