(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-56199(P2020-56199A)
(43)【公開日】2020年4月9日
(54)【発明の名称】軒樋継手
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20200313BHJP
【FI】
E04D13/068 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-186665(P2018-186665)
(22)【出願日】2018年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】寸法誤差が大きい軒樋を接続しても、雨水等が漏れにくい軒手継手を提供する。
【解決手段】雨水等が流れる流路31を備える軒樋3同士を接続する軒樋継手1において、軟質材で形成されている継手本体10と、継手本体10に外嵌するカバー部材20とを備え、継手本体10は、軒樋3の長手方向の端部32が挿入される挿入凹部11が設けられ、挿入凹部11は、挿入された軒樋3の端部32における内面31を密着するように覆う流路側内壁面11aと、挿入された軒樋3の端部32における外面33を覆う外側内壁面11bとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水等が流れる流路を備える軒樋同士を接続する軒樋継手において、
軟質材で形成されている継手本体と、該継手本体に外嵌するカバー部材とを備え、
前記継手本体は、前記軒樋の長手方向の端部が挿入される挿入凹部が設けられ、
該挿入凹部は、挿入された前記軒樋の前記端部における内面を密着するように覆う流路側内壁面と、挿入された前記軒樋の前記端部における外面を覆う外側内壁面とを有することを特徴とする軒樋継手。
【請求項2】
請求項1において、
前記外側内壁面は、内方へ突出する突部が形成されていることを特徴とする軒樋継手。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記カバー部材は、内面に内方へ突出する突出部が形成されていることを特徴とする軒樋継手。
【請求項4】
請求項1乃至3において、
前記カバー部材の外面と前記軒樋の外面は同じ色とされることを特徴とする軒樋継手。
【請求項5】
請求項1乃至4において、
前記カバー部材の外面と前記軒樋の外面には、相互に連続する模様が施されていることを特徴とする軒樋継手。
【請求項6】
請求項1乃至5において
前記挿入凹部は、前記流路側内壁面と前記外側内壁面との間に介在する仕切り部が形成されていることを特徴とする軒樋継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等が流れる流路を備える軒樋同士を接続する軒樋継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軒樋同士を接続する軒樋継手が知られている(たとえば、特許文献1)。このような軒樋継手は、軒樋継手の外面が軒樋の内面に沿った形状に形成され、軒樋継手の外面と軒樋との内面との間に接着剤が塗布されることにより、水密性が高まり、雨水等が軒樋継手と軒樋との境目から漏れないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4452394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような軒樋継手が使用される場合、水密性の低下を防ぐために、接続される軒樋は、押出成形等によって寸法誤差を小さくし、高い精度で形成される必要がある。しかしながら、ステンレス材等の折曲形成された軒樋は、予期しない大きな寸法誤差が起きてしまうことが多々ある。そのため、寸法誤差の大きい軒樋を、特許文献1のような軒樋継手を用いて接続すると、軒樋の内面と軒樋継手の外面との間に隙間ができ、雨水等が漏れる接続不良が発生してしまう。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みて提案されたものであり、その目的は、寸法誤差が大きい軒樋を接続しても、雨水等が漏れにくい軒手継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の軒樋継手は、雨水等が流れる流路を備える軒樋同士を接続する軒樋継手において、軟質材で形成されている継手本体と、該継手本体に外嵌するカバー部材とを備え、前記継手本体は、前記軒樋の長手方向の端部が挿入される挿入凹部が設けられ、該挿入凹部は、挿入された前記軒樋の前記端部における内面を密着するように覆う流路側内壁面と、挿入された前記軒樋の前記端部における外面を覆う外側内壁面とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の軒樋継手は、前記外側内壁面が、内方へ突出する突部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の軒樋継手は、前記カバー部材が、内面に内方へ突出する突出部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の軒樋継手は、前記カバー部材の外面と前記軒樋の外面は同じ色とされることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の軒樋継手は、前記カバー部材の外面と前記軒樋の外面には、相互に連続する模様が施されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の軒樋継手は、前記挿入凹部が、前記流路側内壁面と前記外側内壁面との間に介在する仕切り部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の軒樋継手は、上述した構成とされているため、寸法誤差の大きい軒樋であっても、軟質材で形成された継手本体が、軒樋の端部の内面の寸法のずれを吸収して流路側内壁面が密着するので、水密性を保つ。
【0013】
請求項2に記載の軒樋継手は、上述した構成とされるため、突部が抜け止めの効果を発揮し、さらに軒樋継手の流路側内壁面と軒樋の外面との密着性を高める。
【0014】
請求項3に記載の軒樋継手は、上述した構成とされるため、突出部が軒樋継手を外側から押さえるため、滑り止めの効果を発揮し、さらに軒樋継手の流路側内壁面と軒樋の外面との密着性を高める。
【0015】
請求項4に記載の軒樋継手は、上述した構成とされるため、カバー部材が目立ちにくくなる。
【0016】
請求項5に記載の軒樋継手は、上述した構成とされるため、カバー部材が目立ちにくくなる。
【0017】
請求項6に記載の軒樋継手は、上述した構成とされるため、仕切り部が軒樋を挿入凹部に挿入させる際のストッパーとなり、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は、本実施形態の軒樋継手を用いて軒樋同士を接続させる前の状態を示す斜視図、(b)は接続状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、カバー部材を取り付ける例を示した模式説明図、(b)は、カバー部材を取り付ける他の例を示した模式説明図、(c)は、カバー部材が取り付けられる前の状態を示す模式断面図、(d)は、カバー部材が取り付けられた状態を示す模式断面図、(e)は、他の実施形態におけるカバー部材が取り付けられた状態を示す模式断面図である。
【
図3】(a)は、他の実施形態におけるカバー部材が取り付けられる前の状態を示す正面図、(b)は他の実施形態におけるカバー部材が取り付けられた状態の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態に係る軒樋継手について、図面を参照して説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。まず、基本構成について説明する。
【0020】
軒樋継手1は、雨水等が流れる流路(内面)31を備える軒樋3同士を接続する軒樋継手1において、軟質材で形成されている継手本体10と、継手本体10に外嵌するカバー部材20とを備え、継手本体10は、軒樋3の長手方向の端部32が挿入される挿入凹部11が設けられ、挿入凹部11は、挿入凹部11内に挿入された軒樋3の端部32における内面31を密着するように覆う流路側内壁面11aと、挿入された軒樋3の端部32における外面33を覆う外側内壁面11bとを有する。
【0021】
次に、
図1の軒樋継手1について、詳述する。
【0022】
軒樋3は長尺状に形成されており、本実施形態では前耳部3a、後耳部3bを有した形状に形成されている。軒樋3はステンレス材で形成され、1枚の板材を折曲加工して形成されている。そのため、わずかではあるが、軒樋3は予期せぬ寸法上の誤差が生じている。なお、軒樋3の形状は、図示しているものに限定されることは無く、また、前耳部3a、後耳部3bが形成されていなくてもよい。
【0023】
継手本体10は、軟質材であるシリコーン樹脂で軒樋3と類似した形状に形成されている。継手本体10は、雨水等が流れる流路10aを有し、軒樋3を挿入するための挿入凹部11が形成されている。挿入凹部11は、流路側内壁面11aが、軒樋3の流路(内面)31に密着するように、軒樋3の流路31の形状に略沿った形状に形成されている。また、外側内壁面11bが、軒樋3の端部32が挿入凹部11に挿入された状態で、軒樋3の外面33に近接又は当接するように覆うような形状となっている。そして、流路側内壁面11aと外側内壁面11bとの間に介在し、両者に接続されている仕切り部11cが継手本体10と同じ材質で形成されている。仕切り部11cが流路側内壁面11aと外側内壁面11bに接続されているため、継手本体10の形が崩れにくくなっている。なお、継手本体10を形成する材料はシリコーン樹脂に限定されることは無く、その他の合成樹脂やゴム材等、軟質材であればよい。また、仕切り部11cは、流路側内壁面11aと外側内壁面11bのどちらか片方のみに接続されている構成であってもよい。そして、仕切り部11cは、挿入凹部11の長手方向の中央以外の設けられてもよく、仕切り部11cは、挿入凹部11の幅方向の断面形状と略同じ形状に図示されているが、これに限定されることはない。
【0024】
カバー部材20は、軒樋3と同じ材質で形成されていることが望ましく、本実施形態ではステンレス材の薄板で形成されている。カバー部材20の内面21は、継手本体10の外面13に沿った形状に形成され、内面21には、内面21から内方へ突出し、内面21の幅方向(長手方向に直交する方向)に沿って延びる形状の突出部21aが形成されている。そして前耳掛部22aには、折曲自在の爪部24が複数形成されている。
【0025】
次に軒樋継手1を用いて、軒樋3,3を接続する手順について説明する。なお、図面において左側の軒樋3を3Aとし、他方の軒樋3を3Bとして説明する。
【0026】
継手本体10の挿入凹部11に軒樋3Aの長手方向の端部32を挿入させる。この際、軒樋3Aの端部32が挿入凹部11内の仕切り部11cに接触するまで挿入させる。同様にして、他方の軒樋3Bの長手方向の端部32を、挿入凹部11内の仕切り部11cに接触するまで挿入させる。仕切り部11cが継手本体10の長手方向の中央に設けられているので、軒樋3A,3Bの端部32が仕切り部11cに接触するまで挿入させるだけで、軒樋3A,3Bがバランスよく挿入され、組み立て時の作業効率が向上する。
【0027】
上記のようにして軒樋3A,3Bの端部32,32を継手本体10の挿入凹部11に挿入した後、カバー部材20を継手本体10に外嵌させる。
図2(a)に示すように、軒樋3の後耳部3bを覆う部位である継手本体10の後耳覆部12bに、カバー部材20の後耳掛部22bを引っ掛け、それを支点にしてカバー部材20を回転させて前耳掛部22aが、軒樋3の前耳部3aを覆う部位である継手本体10の前耳覆部12aを覆うようにして外嵌させる。そして、前耳掛部22aの先端に設けられた爪部24を前耳覆部12aの内面12aaの形状に合わせて折り曲げる。これにより、
図1(b)の状態になり、軒樋継手1による軒樋3A,3Bの接続は完了する。このとき、
図2(c)の状態から、カバー部材20の内面21に形成された突出部21aが継手本体10の外面13を押圧するので、
図2(d)に示すように、挿入凹部11の外側内壁面11bに突出部Aが形成される。これにより、軒樋3A,3Bの外面33を突出部Aが外方から押圧し、抜け止めの効果を発揮するので、軒樋3A,3Bが長手方向にずれにくくなり、継手本体10の流路側内壁面11aと軒樋3A,3Bの外面33との密着性を高める。
【0028】
本実施形態の軒樋継手1は、継手本体10が軟質材であるシリコーン樹脂によって形成されている。そのため、例えば、軒樋3Aは許容寸法内に形成され、軒樋3Bが許容寸法を越える寸法誤差で形成されていても、軟質材である継手本体10が弾性変形することでその誤差を吸収して、軒樋3A,3Bを接続することができる。そのため、軒樋3A,3Bの許容寸法が大きくすることができる。また、接着剤等を用いなくても、継手本体10、カバー部材20を固定することができる。
【0029】
なお、カバー部材20を継手本体10に外嵌させる方法は上記に限定されず、例えばカバー部材20が弾性変形する材質であれば、
図2(b)に示すような方法でもよい。カバー部材20を幅方向(長手方向と直交する方向)に押し広げ、それにより拡げられた空間200に継手本体10を装着した軒樋3が配された後、カバー部材20を押し広げる外力を抜いて初期状態に復帰させることで、カバー部材20が継手本体10を挟持し、継手本体10にカバー部材20が外嵌される。この場合、カバー部材20の突出部21aのカバー部材20の底面に設けられている部分は、
図2(b)に示すように、間隔を空けて長手方向に延びる切り込み21bが幅方向に連続して形成されるのが望ましい。これにより、カバー部材20の底面を曲げやすくなる。
【0030】
図2(c)の実施形態では、カバー部材20の内面21に突出部21aが形成されておらず、挿入凹部11の外側内壁面11bに、内方へ突出する突部11baが適宜間隔を空けて複数形成されている。カバー部材20により継手本体10が外方から押圧されることにより、突部11baが軒樋3A,3Bの外面33を押圧する抜け止めの効果を発揮するので、軒樋3A,3Bが長手方向にずれにくくなり、継手本体10の流路側内壁面11aと軒樋3A,3Bの外面33との密着性を高める。
【0031】
図3の実施形態について説明する。
図3の軒樋3A,3Bの外面33,33には、模様33a,33aが形成されている。模様33aは、長手方向に延びる帯状の模様である。そして、軒樋継手1のカバー部材20の外面23には、軒樋3A,3Bの外面33,33に形成された模様33a,33aと同様の模様23aが形成されている。
【0032】
図3(a)に示すように、軒樋3A,3Bが接続されている継手本体10にカバー部材20を外嵌させる。継手本体10には模様は形成されていないが、カバー部材20の外面23に模様23aが形成されているので、
図2(b)に示すように、軒樋3A,3Bの模様33aが、カバー部材20の模様23aにより、途切れずに長手方向に連続する帯状の模様Bが形成される。なお、模様Bは長手方向に延びる帯状のものに限定されることは無く、例えば縞模様であってもよい。また、模様Bを設けずに、特徴的な彩色を軒樋3A,3Bに施し、カバー部材20の外面23に同色で着色してもよい。また、軒樋3A,3Bの外面33に長手方向に変化するグラデーションが施されているならば、その変化に合わせたグラデーションをカバー部材20の外面23に施されてもよい。
【0033】
本発明の軒樋継手1は、軒樋3が耳部を有するものに適用されることに限定されることは無い。また、図中において、継手本体10とカバー部材20の長手方向の寸法が略同じように示されているが、これに限定されることはない。たとえば、カバー部材20の長手方向の寸法が、継手本体10より大きく形成されていれば、外部から継手本体10がより視認しにくくなる。そして、カバー部材20に爪部24は前耳掛部22aのみに形成されているが、後耳掛部22bにも設けてもよく、後耳のみに爪部を設けてもよく、爪部が設けられていないカバー部材であってもよい。また、カバー部材を継手本体10に固定する方法はこれに限定されることはない。
【符号の説明】
【0034】
1 軒樋継手
10 継手本体
11 挿入凹部
11a 流路側内壁面
11b 外側内壁面
20 カバー部材
3,3A,3B 軒樋
31 流路(内面)
32 端部
33 外面